2016年7月13日水曜日

とと姉ちゃん(87)言葉の力の持つ怖さ~常子が落とした財布を届ける花山だが…

花山(唐沢寿明)「コーヒーは好きか?」 
常子(高畑充希)「えっ?」 
花山「よく飲むのかと聞いている」 
常子「いや…あまり」 
花山「私は…母親が好きでね…それで私も好きになった…座りなさい」 
「はい」と常子がカウンターの席に座る 
コーヒーを淹れながら語る花山「うちは貧しい家でね
母親が女手一つで私たち兄弟を育ててくれたんだ
生きていくのがやっとで母は毎日とても苦しそうな顔をしていた
だが私が10歳のある日、母の顔が突然変わってね
元始 女性は太陽であった 真正の人であった…」
常子が微笑む「平塚らいてう」
花山「そうだ、らいてうの青鞜を読み母はようやく明るくなったんだ
言葉には人を救う不思議な力があるんだと子ども心に感じてね」
花山が常子の前にコーヒーを置く
「私もそんなふうにペンで力のある言葉を生み出し
人を救ったり人の役に立つ仕事をしたいと…
そうして言葉や絵の仕事に就くようになったんだ
やがて戦争が始まり私も召集されたんだが戦地で結核を患い帰国した
…戦う事がお国のため人々のためになると思っていた私は
役に立てなかった自分を責めた
そんな時に内務省で宣伝の仕事の誘いを受けたんだ
これは運命だと思った…」
常子「それで人のお役に立とうと?」
花山「お国が勝てば全ての国民が幸せになれる…
それから私は戦地で戦う友のため
国のために尽くそうとペンをとり言葉を選んだ、ポスターも書いた
…何の疑いもなく一億一心の旗を振って
戦争に勝つ事だけを考えて仕事をしてきた
だが去年の8月15日…その時初めて気付いたんだ
小さい頃から何よりも正しくて
優先して守るべき大事なものがあると言われていた事が
実は間違っていたんじゃないかと…
そしてそれまで言葉には人を救う力があるものだと思ってばかりいて
言葉の力の持つ怖さの方に無自覚のまま
それに関わってきてしまったのではないかとね」
常子「怖さ?」
花山「そうだ…焼夷弾は分かるよな?」
常子「はい、戦時中さんざん見ましたから」
花山「どんなものだと教わった?」
常子「あ…家々を燃やすために作られたから落ちてきたらすぐに消すようにと」
花山「そう、爆弾は怖いが焼夷弾は恐るるに足らず…
という言葉を教えられただろう?」
常子「はい」
花山「その言葉は印刷され回覧板で回され皆それを目にした
新聞や雑誌の記事にもなった
だがそれは誤った言葉だったんだ
爆弾は怖いが焼夷弾は恐るるに足らず?
とんでもない!
焼夷弾も恐ろしい爆弾に変わりはなかった
それを伝えてしまうと誰も火を消そうとせず逃げてしまう
火災はますます広がる
それを恐れてあえて誤った言葉を教えた…
それを信じた人々はどうした?
落ちてきた焼夷弾の火を消そうと必死で
焼夷弾は怖くないと信じ込んだ子どもたちが…
老人が!女たちが!
バカ正直にバケツで水を運んだ!
…気が付いた時は逃げ道はなかった
最初から逃げていれば無駄に死なずに済んだのに…
私ももし戦時中に
焼夷弾は怖くないと書けと言われていたら書いていただろう
そうしたらそれを信じた無辜の命をどれだけ奪っていたか分からん
言葉の力は恐ろしい…子どもの頃から人の役に立ちたくて
人を救いたくてペンを握ってきたはずだったのに…
そんな事も分からずに戦時中言葉に関わってきてしまった
…そして終戦になって
信じてきた事の全てが間違っていた事に気付かされた時
もうペンは握らないと決めた…
これが全てだ
さあもう帰ってくれ…」
常子「…分かりました…今日は帰ります」
花山「今日は…じゃない!二度と…来るな」
首を振る常子「やっぱり諦められません…
花山さん、私はどうしても女の人の役に立つ雑誌が作りたいんです
たくさんの女の人たちが今、この戦後の日本で
物がない、お金もない、仕事もない…
先行きが見えないこのひどい状況の中で必死にもがきながら生きています
そんな皆さんの毎日の苦しい暮らしに
少しでも明かりを灯せるような雑誌を作りたいんです
…コーヒーありがとうございました、また来ます」
花山「来んでいい!」
常子が出て行った後、カウンターに手をつき首を振る花山
と、床に財布が落ちている事に気付く
慌てて表に出るが常子の姿はもうない
がまぐちの財布を開いてみると内側に常子の名前と住所が書いてある

せつ(西尾まり)「雨漏りが?」
君子(木村多江)「ええ、すごいんです」
せつ「だったらちょうどいいわ
今うち大工さんが来てるの、戸の立てつけが悪くて
うちのが終わったら君子さんとこ寄るよう言っとくわ」
君子「いいんですか?」
せつ「いいのいいの」
君子「あ…でも…」
せつ「お代なら大丈夫よ、うちの親戚筋だから気にしないで
今の世の中持ちつ持たれつよ」
君子「ありがとうございます」
せつ「じゃあ大工さんに伝えとくね」
君子「はい、すみません」
せつ「またね」
君子「はい」
君子が家に入るとすぐに住所を写したメモを手に花山が現れる
表札を確認する花山「ごめんください」
「は~い」と、玄関の戸を開ける君子
花山「あの…こちらは小橋さんのお宅ですか?」
君子「あら…随分お早いんですね」
花山「はい?」
君子「お待ちしておりました、よろしくお願い致します」
花山「待っていた?私をですか?」
君子「ええ、さあさあどうぞどうぞこちらへ」
「いや…」と首をひねりながら家に上がる花山
居間の天井を見上げる君子「これなんです」
花山「何がです?」
君子「天井です」
天井には大きな雨漏りのシミがある
花山「随分ガタが来ているようだが」
君子「さすが分かるんですね」
花山「そりゃあ見れば分かりますよ
天井の他にも家のあちこちが傷んでる」
君子「そうなんですよ
女しかいないものでどうしても手入れが行き届かなくて」
花山「はぁ…」
君子「あっ、すみません、ではお願いします」と、どこかへ行こうとする
花山「いや、ちょっと待って下さい」
君子「すみません、私夕飯の支度が」
花山「いやいや待って下さいお願いとは一体…」
(美子の声)「ただいま帰りました」
君子「あっ、お帰りなさい」
美子(杉咲花)「かか、遅くなってごめんなさい」
君子「ううん」
美子「雑誌はまり姉ちゃんに任せて手伝いに戻ってきました」
君子「あらいいのに」
美子「だって雨漏りの修理は?」
君子「それがね、大工さんに来て頂けたの」
驚いた顔で花山が振り向く
美子「そうなんですか…よろしくお願いします」
花山「いや私は…」
美子「私も手伝います」
「そうじゃない!あの…何か勘違いをなさっているようですが
私は雨漏りの修理になど…」
と、天井のシミを見た花山が「こんなにしやがって…」と呟く
怪訝な顔をする君子と美子
突然「あぁ~!」と頭をかきむしる花山に驚く君子たち
美子「あの…」
怒りを抑えるように花山「道具はどこだい?」
美子「道具?」
花山「金づちやらの大工道具だよ」
美子「大工さんなのに持ってないんですか?」
花山「いいから持ってきなさい!」
「はい!」と慌てて道具を取りにいく美子
花山「このちゃぶ台どかします」
「あっ、はい」と様子がおかしいとは思いながらも花山とちゃぶ台を運ぶ君子

破れているのか口が開いているカバンを提げて歩く常子
おそらく家に向かっているのだろうか

(つづく)

8月15日全てに気付いた…とは何に気付いたという事なのか?
花山の話が長いので解りにくいが大きく分けて2つだろうか
一つ目は小さい頃から何よりも正しくて優先して守るべき大事なもの
(暗に天皇の事を言ってる?)があると言われていた事が
実は間違っていたんじゃないかと気付いた事
二つ目は言葉の力の持つ怖さに気付いたという事
そしてそんな事も分からずに戦時中言葉に関わる仕事をしてしまった事に
責任を感じているからペンを握るのをやめたという事だろう

常子の「また来ます」に笑った
確かに理由を聞いたら帰るとは約束したが
二度と来ないとは約束してないからなw

久しぶりに君子の大ボケがさく裂した
いつ以来だろう?
1話で常子を受け止めるためにざるを持ってきたのが印象的で
大ボケキャラだと思っていたが
その後はそういうシーンはそんなにはなかったかなあ

花山も最初に「小橋さんのお宅ですか?」じゃなくて
「小橋常子さんのお宅ですか」と言わなければダメだろう
小橋なのは表札を見れば分かるんだし…
まあそれだと君子がボケられないけどねw

それよりも一番不自然なのが美子だ
帰宅したら居間の真ん中に知らない男が仁王立ちしているのに
君子が大工だと紹介するまで
まるで目に入らないかのように君子と普通に会話してしまっている
花山は幽霊じゃないんだからっ!

天井のシミを見て「こんなにしやがって」
と、花山が修理をする気になったのは几帳面な性格だから?
物が傾いていたり配置が乱れていると
すぐに直さないと落ち着かない人物設定なのはこのエピソードのためかしら

初対面時に策を弄して花山にイラストを描かせた常子だが
財布を落としたのはわざとじゃなくてガチみたい
ラストで常子のカバンが破れているからだ
呑気に歩く常子の顔が花山の言ったマヌケ面に見えるw




2016年7月12日火曜日

とと姉ちゃん(86)関元から花山の過去を聞かされる常子~8月15日全てに気付いた…とは?

花山が出て行ってしまった店でコーヒーを飲む常子(高畑充希) 
「あの…お二人はどういう?」 
関元(寺田農)「うん?ああ…息子と彼がね戦友だったんだ」 
常子「戦友?」 
関元「うん、陸軍の同じ部隊でね…入隊以来なぜか気が合ったそうだ 
花山君はね、帝大出なのに幹部候補生を志願しなかった 
で、息子と同じただの二等兵から始めて相当大変だったそうだ
猛訓練でメチャクチャに…
兵隊たちが死んでもすぐに代わりの兵隊が来る 
一銭五厘の葉書一枚で替えはいくらでも集まると…
とことんひどい扱いを受けたそうだ 
そんな中で息子と花山君は絆を深めていったらしいが
彼は満州で結核にかかってね、病気除隊になったんだよ 
その時、息子や戦友たちを残して一人帰国する事に
後ろめたさを感じていたらしい…
戻ってくると少しでもお国のために役立とうと
内務省の宣伝の仕事を引き受けたと言っていた 
花山君が内地に戻ったあと
息子も満期除隊になってひとたびは帰ってきたんだ 
そんな縁で戦争が終わったあと
この店を手伝ってくれないかと言われて…
きっと身寄りのない僕を案じて声をかけてくれたんだろう 
あっ…ハハッ…息子は結局戦死したんだ
除隊後1年で再召集され南方で…
一銭五厘の命だが僕にとっては掛けがえのないただ一人の息子だった
終戦後花山君はすぐに弔問に来てくれてね…
息子の遺影を前にずっと泣いていたよ
泣いてる姿を見たのはあれが初めてだった
その時に彼が言ったんだ
8月15日全てに気付いた…と」
常子「8月15日…何に気付いたんですか?」
関元「その時は…とても聞く気になれなかった」

厳しい顔つきで闇市を歩く花山(唐沢寿明) 

自室で花山の描いたイラストを眺め何かを思う常子 

<鞠子と美子は闇市の一角に場所を見つけ
売れ残った雑誌を売り出したのですが…>

美子(杉咲花)「まさか半額近く値下げしても売れないなんて…」
鞠子(相楽樹)「まだ定着してないからよ
ここで売り続けたらいずれお客さんも…」
美子「そうかなあ…」
鞠子「これなら手間賃も払わないで済むし」
と、2人組の闇市の男が現れショバ代を要求してくるのだが
露天商組合の水田(伊藤淳史)が頭を下げてその場を切り抜ける
水田「駄目じゃないですか、勝手に店出しちゃ」
鞠子「すみません、知らなかったもので」
水田「いいですか?まず露店組合の入会金として10円かかります
そこに組合費が月3円、支部費月2円、1日のゴミ銭として1円、
道路占有税1円で直接税が50銭から2円
つまり最低でも37円が月々かかる訳です」
美子「37円?」
水田「別の輩に絡まれないうちに引きあげて下さい」
美子「でも…この本売らないと…」
水田「そうは言っても…」
鞠子「お金を作らないと次の雑誌を出せないんです
なんとかなりませんか?」
目をのぞき込み懇願する鞠子に水田「分かりました!
格安で置かせてくれる露店を探してみましょう」
「ありがとうございます」と、笑顔になった鞠子に
「あっ、いえ…」と水田が相好を崩す

おでん屋のような店
五反田(及川光博)「戦争が終わって花山さんは思うところあって
ペンをおく事にしたのか」
常子「おそらくそういう事だと思います」
五反田「それでどうするつもり?花山さんの事はもう諦めるの?
…僕はあの人にこの業界に残ってほしいんだ
だから花山さんに助言をもらうように言ったのさ」
常子「えっ?」
五反田「いや、もちろん君の役に立つと思ったからでもある
だけど花山さんの心を変えるきっかけにもなると思ったんだ」
常子「どうして私が行ったら花山さんが変わるんですか?」
五反田「君の事…覚えてたんだ
人をけなす事しか知らないあの人は
昔から興味のない人間にはとことん冷たいんだよ
それが君の事は覚えてたんだよ
裸足で走るなんて面白い女だってさ」
常子「ああ…その事ですか」
五反田「いや、他にも
私の意地悪にめげず食らいついてきた、いい根性をしてる…ってさ」
常子「そうでしたか…」
五反田「だからまだ諦めるのは早いんじゃない?
花山さんも心のどこかでは君が食らいついてくるのを待ってるんじゃない?」
常子「いや…今回は本気で帰れとおっしゃってました…
でも…私、諦めたくありません」

少し小高い場所からバラック造りの貧しい暮らしを眺めている花山

三枝子(奥貫薫)が木箱の蓋を開け
中にある筆記用具(おそらく花山のもの)を見て何かを思う

珈琲屋
例によって絵の額縁やテーブルの位置を微調整している花山
関元「後でやっておくよ」
花山「いえ、すぐやらないと落ち着かないんです
傾いていたり配置が乱れていると気になってしまって」
関元「昨日のあの娘…」
花山「はい?」
関元「なかなか面白い娘だね」
顔をそむける花山
関元「フフッ、花山君もそう思ってんだろう?」
花山「いえ私は…」
「フフフ…じゃあ」と関元が買い出しに出かける

花山がテーブルの調整を続けているとドアの開く音がする
外に立っているのは常子だ
頭を下げて挨拶する常子
花山「どうしてここにいる?何しに来た?」
店に入りドアを閉める常子「もう一度お話しさせて頂けませんか?」
花山「君が粘り強い根性の持ち主なのは知っている
だがこんな時に発揮せんでいい!」
常子「昨日ご老人から伺いました」
花山「ご老人?」
常子「8月15日全てに気付いた…って」
常子を睨んでいた花山が後ろを向く
常子「一体何に気付かれたんですか?」
棚の食器を調整しているような花山
常子「教えて下さい!なぜペンを握らないのか」
「…うるさい女だな君は」と振り向いた花山
「帰れと怒鳴りつけたいところだがそれでは君は帰らない分かってる」
常子(照れたように笑って)「随分お詳しい…」
花山「うれしそうにするんじゃない!」
常子「すみません」
花山「はぁ…いいか?理由を聞いたら帰ると約束しろ、ならば教えてやる」
常子「…」
花山「では言わん!ずっとそこで待つがいい、コーヒーをどんどん頼め!」
カップを「はい、はい、」とカウンターに並べる花山
常子「分かりました!…教えて下さい、お聞きしたら帰ります」
対峙する花山と常子

(つづく)

今回は何だか説明回だった
関元が花山の過去を語り
水田が露店を出す決まりを語り
五反田が常子に花山を薦めた理由を語った

あの賢い鞠子が場所代の事を知らなかったとか絶対不自然だろw
もしかしたらすっ呆けて嘘ついてるのかな?
まあでも鞠子のやる気モードは継続中みたいで安心した

五反田が語る花山の人物像
「人をけなす事しか知らない…昔から興味のない人間にはとことん冷たい」
これってただのイヤな奴じゃないのw
まあ本人も「私の意地悪にもめげず…」と語っているから
性格が悪いという自覚はあるみたい

常子が照れて花山のツッコミ「うれしそうにするんじゃない!」に笑った

2016年7月11日月曜日

とと姉ちゃん(85)的確な指摘をする花山を常子は編集長に迎えたいと思うが…

昭和二十一年七月 

雨が降る中、傘をさした常子(高畑充希)がメモの住所をたよりに家を探している 
「花山」の表札を見つける常子 
「はいはいお手紙届いてるかなあ?」と腕に抱いた女の子に話しかけながら
三枝子(花山の妻・奥貫薫)が玄関の戸を開ける 
常子を見る三枝子「どちら様?」 
常子「あっ…あの…私」 

タイトル、主題歌イン 

花山家居間
常子「茜ちゃん2歳…3歳ですか?」
三枝子「3歳です…ほらきちんとご挨拶なさい」
常子「うん?」
茜は常子の方を見ないで三枝子に抱きつく
「フフフフ…」と幸せそうに笑っている三枝子
常子「照れ屋さんなんですね」
三枝子「甘えん坊でいつもこんな感じで」
と、「ただいま」と花山(唐沢寿明)が帰ってくる
挨拶する常子「お邪魔しております
私、5年前に一度お目にかかった事がある…」
部屋の入口で仁王立ちの花山「覚えてる、甲東出版の小橋常子だ」
常子「あ…ああ…でも今はそちらを辞めて…」
花山「知ってる、何だ?用件を言いたまえ」
封筒から「スタアの装ひ」を取り出す常子
「あの…私、雑誌を作ったんです母と妹2人で
ですが…思うように売れずどうしたらいいか行き詰ってしまって
五反田さんに相談したところ花山さんを紹介して頂いたんです
お力を貸して頂けないでしょうか」
花山「力など貸さん帰れ、五反田も余計な事を」
三枝子「あなた…」
花山「(三枝子に)お前も素性の分からぬ者を勝手に家に上げるな
強盗や詐欺の類いだったらどうする?
(常子を見て)ああいう害のなさそうなまぬけ面でも油断するな」
三枝子「(常子に)ごめんなさいね」
常子「いえ」
三枝子「今お茶いれますね」
常子「あっ、ありがとうございます」
三枝子が部屋を出ていき、雑誌を手に立ち上がった常子が
「あの…せめてこの雑誌の駄目なところを一度だけでも見て頂けませんか?」
花山「駄目なところしかない」
常子「そんな見もしないで…」
花山「たまたま闇市で買ったんだ」
常子「えっ?どうして…」と笑顔になり「そうなんですか?」
花山「買った事を後悔したよ
何を見せたいんだ?文章か?洋服か?テーマは何だ!?
どのページを見ても同じような割り付けで飽き飽きする
紙も劣悪で手触りも悪い
こんなものに7円払うならちり紙を100枚買う事を勧めるね!
そもそも君は読者を想像できていない
外国人や一握りの令嬢が着るような浮世離れした洋服を見せて何になる?
周りを見てみろ!
焼け野原の中、食う物も着る物も最低限しかない中で生きてるんだ
作り方を載せたところで材料などどうやって手に入れる?
型紙も載せないで読者が本当に作れると思うのか?」
ぐうの音も出ないというよりはそんな事考えもしなかったという顔の常子
花山「もういいだろ…帰れ」

五反田(及川光博)「でもよかったじゃないか、結局助言はもらえたんだろ?」
常子「的確で圧倒されました」
五反田「才能は抜群だ、ただ…僕が仕事の依頼をした際言われたんだ…
二度とペンは握らないとね」
常子「どうしてですか?」
五反田「何だか疲れたって濁された…
今は品川で珈琲屋を始めたらしい」
常子「花山さん…私たちの編集長になって下さいませんかね…」

小橋家
「どうしたもんじゃろのぉ…」と呟く常子
君子(木村多江)「花山さんって方の事?」
常子「ええ」
鞠子(相楽樹)「いいんじゃないの?無理して編集長をやって頂かなくても」
常子「う~ん…でも花山さんの指摘ってすごく的を射ていると思わない?」
美子(杉咲花)「う~ん…確かに」
鞠子「けど、私の文章のよさが分からないだけかもしれないし
そもそもその方は断ったんでしょ?」
常子「まあ…そうなんだけどね」
ちゃぶ台の上に受けた鉢に雨漏りの滴が落ちる
天井を見上げる常子「晴れたら雨漏りの修繕しないとね」
君子「いいのいいの、うちの事は私に任せて
あなたは花山さんのところに伺ったら?」
常子「ん?」
君子「どうしても諦められないんでしょ?」
笑顔になって「はい」と答える常子

花山家の食卓
立ち上がった花山が柱にかかった花差しを微調整する
三枝子「あ…すみません」
花山「いや」
三枝子「昼間いらっしゃった小橋さんって…」
花山「うん?」
三枝子「お母様と妹さん…女だけで雑誌を作ってるっておっしゃってましたけど
それで暮らしていけるんですかね?」
花山「人の心配している余裕などないだろ」
三枝子「そうですけど何だか気になって」
調整に満足した花山が花差しを指さし「よし」
席に戻った花沢「今度、長澤に会おうと思う」
三枝子「長澤さん?」
花山「古くからの知人だ
一緒に衣料の事業をやらないかと誘われている」
三枝子「事業をなさるの?」
花山「まだ決めた訳じゃない、話を聞いてみるだけだ」
三枝子「そうですか」
花山「どのみち今の暮らしはもう少しよくせねばな
今のままの貧しい食事では茜が不憫でね」

<鞠子と美子は売れ残った雑誌を手に闇市に向かったのですが…>

書店の男「あんたらか、またあの雑誌かい?
懲りないね、あんなに売れ残ったのに」
美子「7円から4円に値下げすればまだ売れると思うんです」
鞠子「なので置いて頂けませんか?」
男「安くするのは構わねえがこっちがもらう額は変わんねえよ」
鞠子「じゃあ今までどおり3円って事ですか?
そんなに払ったら利益なんてないんです…3円なんて…」
男「嫌なら置き場所はない、帰んな!」

住所のメモを手に花山の珈琲屋を訪ねる常子
壁には花山が描いたようなかわいらしい家のイラストが飾ってある
「ああ、いらっしゃい」と老人(関元・寺田農)が顔を出す
関元「あっ、好きな席にどうぞ」
カウンターの前の席に腰かける常子
関元「うちはコーヒーしかないから」
常子「あ…はい…あの…花山さんはいらっしゃいますか?」
関元「ん?ああ…マスター!お客さんだよ」
花山が現れる「また君か…」
関元「お水持ってきますね」
花山「接客など結構です、客じゃありませんから」
関元「えっ?」
常子「すみませんコーヒーを1つ」
花山「何?」
常子「注文しましたから私はもう客です」
関元「ホホホ…コーヒーね…フフフ」と外に出る
花山「昨日の話なら何度来ても同じ事だ」
棚の食器が気になるような花山
常子「昨日の話ではありません
昨日は雑誌の助言を頂きたく伺いました
今日は雑誌の編集長として入って頂きたく参ったんです」
花山「どういう頭を持てばそうなる?
助言するのを断った人間が編集長になる訳などなかろう!」
常子「ですからそこを説得しようと」
花山「無駄だ帰れ」
常子「帰りません…
花山さんとお会いするといつもこのやり取りですね…
最初にお会いした時も先日のお宅でも」
花山「君が来てほしくない時に来るからだ」
常子「ではいつ伺えば?」
花山「私の葬儀だ」
常子「えっ?」
花山「死んでいれば君の話を聞かなくて済む」
常子「はぁ…」

外にも話が聞こえたようで湯を沸かしている関元が笑う

常子「本当に失礼な物言いをなさいますね」
棚に並べた食器の微調整が終わり「よし…」と外へ向かう花山
常子「二度とペンを握らないのはなぜなんですか?」
花山の足が止まる
常子「本当の理由を…教えて頂けませんか?」
振り向く花山「聞いてどうする?」
常子「どうしても花山さんと一緒に雑誌を作らせて頂きたいんです」
花山「そんな事は知らん、大体君は身勝手すぎる何度も押しかけてきて」
常子「申し訳ございません…
でも花山さんほどの才能がありながらご自身で身を引かれる…」
花山「帰れ目障りだ」
常子「花山さん…」
花山「何も話す気はない出ていけ!」
ふてぶてしく席に座る常子
うなずく花山「分かった、君が帰らんのなら私が帰る」
立ち上がる常子
外の関元に「あとは頼みます」と声をかけ花山が店を出ていく
黙ってその後ろ姿を見つめ途方に暮れる常子

(つづく)

害のなさそうなまぬけ面w
花山うまい事言う!

花山が妻子に優しいのはなんだか意外だった
もっと亭主関白で妻にモラハラとか言葉責めしてそうなイメージだが

「私の文章のよさが分からないだけかも…」
心配性で冷静な鞠子だけど自分の才能には絶対の自信を持ってるんだなw

書店の男は場所代で7円の中から3円も取っていたのか!

花山は内務省のシーンでも壁に張った標語を微調整していたが
あの指さして「よし」はこれからもずっとやるんだろうか?
あんな神経質な人がいたら鬱陶しいしドラマで毎回見せられるのも…
あの癖みたいなの治ってくれないかなあ

初対面の69話では常子が「賭け」の話で一本取ったんだけど
今回は「葬儀」の話で花山の勝ちかな
この2人のとんち合戦みたいなのもずっと続くのだろうか?