2016年9月20日火曜日

とと姉ちゃん(146)孫たちとふれあい娘たちの幼い頃を思い出す君子

昭和三十九年十月 
(ラジオ)「昨夜東京オリンピック注目の女子バレーボール決勝戦が行われ
東洋の魔女が3対0でソビエトを破り金メダルを獲得しました
日本女子としては実に28年ぶりの…」 
部屋の布団の上で君子(木村多江)があなたの暮しを読んでいる
(記事・砂時計は正確か) 
部屋の外から家族らの「行ってきます」と「行ってらっしゃい」が聞こえてくる 
玄関に向かい「行ってらっしゃい…」と穏やかな笑顔で呟く君子 

タイトル、主題歌イン 

真由美の髪をとかしているたまきがせきをする
振り向く真由美「たまきちゃん大丈夫?」
たまき「うん…ちょっと風邪っぽくて」
さらにせきをするたまき
君子が心配そうに部屋をのぞく「たまき」
たまき「おばあ様寝てなきゃ」
君子「いいのよ…それよりあなた風邪ひいたって…」
たまき「平気ですよ、大した事なさそうですし」
たまきの額に手のひらを当てる君子「どこが平気なの…熱があるじゃない
(部屋の外に向かい)鞠子!」(鞠子の返事「はあい!」)
たまき「大丈夫ですってこのくらい」
君子「ほら、私がやるから(真由美の世話は)休んでなさい」
「準備できた?」と鞠子(相楽樹)がやってくる「かかどうしました?」
君子「たまきが熱があるみたいなのよ」
鞠子「えっ」
君子「部屋で休ませた方がいいわ」
たまきの額に手を当てる鞠子「そうします…たまき…」
たまき「はい」(と立ち上がり鞠子と部屋を出ていく)
(ラジオ)♬「明日がある明日がある明日があるさ~」
たまきの代わりに櫛を持つ君子
真由美「私、髪やってもらうの好き」
君子「アハハ、そう?何だか小さい頃の美子を思い出すわ」
真由美「お母さんの?」
真由美の髪をすく君子「うん、美子もね…同じ髪形だったのよ
毎日欠かさずやってたの…さあできた」
真由美「ありがとう」
君子「こちらこそありがとう」
部屋に戻ってくる鞠子「え~っと…」
君子「氷枕用意しなくちゃね」
鞠子「ええ私が」
君子「鞠子は子どもたち送っていきなさい」
鞠子「けどかかだって…」
君子「心配ないわ…今日は調子がいいの」
鞠子「…すみません…お願いします…潤、真由美、行きましょう」
(2人)「はい」
君子「行ってらっしゃい」
(3人)「行ってきます」

布団に寝かされたたまきの額に君子が手ぬぐいをのせている
目を開き君子を見るたまき「ごめんなさい…おばあ様もご病気なのに」
君子「今日はおばあ様よりあなたの方が重病人よ…
そういえば昔…鞠子も体調を崩した事があったわね…
あれは確か戦時中の大変な時だったわ」
たまき「お母さんが?」
君子「あなたは常子に似ているところがあるけどやっぱり鞠子似ね」
たまき「お母さんに似てますか?」
君子「ええ…勉強を始めたら止まらないでしょう
決めた事をやり抜こうとするところも似ているし
ちょっと頑固なところもそっくり…フフフフ」
たまき「そうなんだ」
たまきの両頬に手を当てる君子「昔ね…母が私が具合が悪い時に
こうして優しく手を当ててくれたの
少~し心も体も楽になるような気がしない?」
うなずくたまき「うん…」
優しい笑顔でたまきの顔をのぞきこんでいる君子

夜、玄関に常子と美子と水田が帰宅する
美子(杉咲花)「あら、風邪ひいたの」
鞠子「ええ」
水田(伊藤淳史)「何で早く言わないの(と慌てて部屋に向かい)たまき!」
鞠子「今寝てますから!」(水田の動きが止まりスローになる)
常子(高畑充希)「それでもう大丈夫なの?」
鞠子「うん、もう熱は下がったから」
常子「そう、よかった」
美子「でも子どもたちの面倒も見ながらで大変だったでしょう」
鞠子「ううん、かかがいろいろ手伝ってくれるから」
美子「えっ?」
常子「かかが?」

台所で南(上杉柊平)たちと夕食の準備をしている君子
常子「かか」
美子「寝てなくていいんですか?」
君子「たまきのごはんを作りたくなっちゃったの…
これどうかしら?」(と飾り切りをしたニンジンを見せる)
南「きれいですね」
真由美「すご~い!」
君子「見た目も楽しい方がいいと思って」
南「きっと喜びますよ」
君子「まあ…じゃあもっと切るわね」
南「お願いします」
楽しそうにニンジンを切る君子を見つめる常子が医師の告知を思い出す
常子「…私も手伝います」

夕食を運ぶ鞠子「たまき、具合はどう?
(身を起こしたたまきに)食べられそう?」
たまき「うん」
鞠子がたまきに椀を手渡す
粥飯の上には飾り切りのニンジン
たまき「わぁ…きれい」
鞠子「おばあ様お手製よ」
最初にニンジンを食べるたまき「おいしい」(と微笑む)
元気そうになった娘を見て微笑む鞠子

君子が真由美に手拭いの畳み方を教えているようだ
(隣で潤はお絵描きをしている)
真由美「こう?」
君子「そうよ、角と角をしっかり合わせて…そうそう…あ~いいわね」
台所からそれを見て微笑む常子
戻ってきた鞠子「あっ、みんなありがとう…さあごはんにしましょう」
常子「そうね」
鞠子「ほら潤も!」
潤「もうちょっと」
水田「後にしなさい」
潤「は~い」(と立ち上がる)
美子「あれ?ゴミはちゃんと捨てるんじゃなかったっけ?」
「分かったよ…」と潤が描いていた絵を手に取る
君子「潤、これおばあ様に頂戴」
潤「いいよ」(と家の中に9人の笑顔が描かれた絵を手渡す)
君子「ありがとう」(と絵を眺め大切そうに折る)
常子の「頂きます」で夕食が始まるが君子は箸を取らず
食事をする家族を幸せそうな笑顔で眺めている

眠っているたまきの部屋の戸が開けられ明かりが差し込む

君子の手を取り階段を下りる常子「たまき大丈夫そうでしたね」
君子「ああ…そうね…よかったわ(と下に着き)ありがとう」
廊下を歩く君子が鼻歌を歌う(♬明日があるさ)
部屋に入り常子が君子を見つめる
君子「どうかした?」
常子「いえ…昔からかかが鼻歌を歌う時は悲しげな時が多かったので」
君子「あらそうだったかしら私…
あ…知らず知らずのうちに心配かけてたのね…ごめんなさい」
常子「いえいえ」(と君子の腕をさする)
君子「でもこれは違うの…うれしい時の鼻歌」
(2人)「フフフフフ」
君子「うれしくてね…懐かしくなったの(と仏壇の前に座り)
髪をといてあげて料理をしてみんなでにぎやかに笑い合って
…あと何回みんなでごはんを食べられるのかしら」
常子「…(辛い表情になりかける)もう…かか何をおっしゃってるんですか
そんなの数えだしたら切りがありませんよ」
君子「そうね(と常子に振り向き)今日はぐっすり眠れそうよ」
常子がうなずく
君子「おやすみ」
常子「おやすみなさい」
(2人)「フフフ」
立ち上がった常子が部屋を出て戸を閉める
と、部屋でまた君子が鼻歌を歌う
常子の歩みが止まる

美しい月

昭和三十九年十二月

<君子の病状は悪くなる一方でこのころには一日の大半を
床で過ごすようになっておりました>

編集部で働く綾(阿部純子)がどこか元気のない美子、水田、常子を見つめる

一家の大きな家
(ラジオ)♬「つたの絡まるチャペルで祈りを捧げた日~」
長卓でアイロンがけをしている鞠子
(子どもたちはそれぞれ勉強したり遊んだりしている)
と、玄関で常子と美子の「ただいま帰りました」という声がする
「え~早いわね…は~い!お帰りなさい!」
と玄関に向かい驚く鞠子「花山さん!」
花山(唐沢寿明)「やあ、しばらく」
子どもたちも「こんにちは!」と玄関に集まる
花山「こ~んにちは~」(と、なぜか幽霊のように挨拶する)
笑う常子「かかのお見舞いに来て下さったの」
鞠子「そうでしたか、お忙しいのにありがとうございます」
美子「さあどうぞどうぞ」
「ああ」と家に上がる花山

(つづく)

前回、なぜあんなにしょぼい砂時計の試験なんかやってるんだろうと思ったら
どうやら砂時計は君子の残りの命を暗示する演出という事らしい
今回の冒頭で君子がその記事を読んでいるのは
「砂時計は正確か」がそのまま君子の命が医師の告知通りに終わるのか…
に対応しているといったところだろうか?

ならば♬「明日があるさ~」は君子には逆に明日がない事の
♬「祈りを捧げた日~」は常子たちにはもう祈る事しかできない事の
暗示なのだろうか?

そこまでこじつけて考えるとラストの花山の幽霊のマネ(おそらくアドリブ)は
君子の死期が近い事を考えるとシャレになっていないと思えてくるw

0 件のコメント:

コメントを投稿