2016年8月6日土曜日

とと姉ちゃん(108)あなたの暮し社は順調に成長する~水田にプロポーズされた鞠子は…

営業中のキッチン森田屋 
カウンターの席に座る常子(高畑充希)が新聞を読んでいる

昭和二十五年 

<常子にとって毎日、新聞にくまなく目を通す事は
雑誌作りのための大事な習慣になっていました> 

照代(平岩紙)「どう?気になるニュースはあった?」 
常子「ん~…今日は…後楽園球場でナイター設備を完備…ですかね」 
照代「そんな事まで気にするの?」 
常子「はい、あなたの暮しに直接関係なくても
流行を知れば読者が気になる事が分かりますから
それにこのニュース、戦時中の灯火管制があった頃からしたら
もう考えられません」 
照代「そうよねえ…」 
宗吉(ピエール瀧)「随分と変わってきたよな
食材だっていろいろ手に入るようになってきたしな」 
照代「少しずつ暮らしが変わりつつあるのねえ」 
宗吉「お前んとこの雑誌が一役買ってんじゃねえか?」 
常子「いやそんな…お役に立ててればうれしいですけど」 
照代「立ってるわよ!みんな毎号楽しみにしてるんだもの
部数だって伸びてるんでしょ?」 
笑みがこぼれて新聞で口元を隠す常子
「宗吉さんが料理監修して下さっているおかげです」 
宗吉「よせやい、そんなおだてなくても頑張ってやるよ」 
「よろしくお願いします」と頭を下げた常子が腕の時計を見て
「あっ…あ~いけないもうこんな時間だ…原稿取りに行かないと」
と店を飛び出す 
バックを手に道を駆ける常子 

タイトル、主題歌イン 

<「あなたの暮し」の出版部数は順調に推移して社員も増やし
(扇田弘栄と島倉勝)経営も確固たるものになってきておりました>

デスクの電話が鳴り応対する常子

<順調なのは売り上げだけではなく…>

水田(伊藤淳史)「常子さん受話器相手にあんなに頭下げちゃって…」
鞠子(相楽樹)「あら、水田さんだっていつもあんな感じですよ」
水田「え…いつもって…鞠子さんそんなに僕の事を見てたんですか?」
鞠子「何ですか!意地悪言わないで下さい」
2人を観察している美子(杉咲花)
水田「いや…意地悪なんてそんなとんでもない」
常子も2人を見て口を手で押さえる

夜、食事中の小橋家(鞠子は不在)
美子「まだなのかしら」
常子「まだって?」
美子「まり姉ちゃんの結婚…もうおつきあいして随分たつわ
水田さんがそろそろはっきりするべきよ」
君子(木村多江)「美子…」
常子「水田さんには水田さんの考えがあるのよ」
美子「いや、こういう時はやっぱり周りの配慮が肝心だと思うの
しっかり背中を押してあげないと…」
常子と君子が笑う
君子「もう余計な事はよしなさいよ
周囲がとやかく言う事じゃないんですから」
美子「じゃあかかは2人がいつまでも結婚しないままでいいんですか?」
君子「それは…」
美子「まり姉ちゃんだって待ってると思うの…水田さんの言葉」
「うん…」と常子がうなずく

夜道を歩く鞠子と水田
「あの…ずっと言おうと思っていた事があるんですけど…」
少し緊張する鞠子「はい…」
2人の足が止まり見つめ合う(小橋家玄関前に到着)
水田(鞠子の足元を見て)「あ…その赤い靴すてきですね」
鞠子「えっ…?ああ…あっ、これですか?ありがとうございます
実は水田さんと『赤い靴』を見に行ったあと、つい買っちゃったんです」
水田「あの映画で赤い靴がはやっているらしいですからね」
鞠子「男の方なのによくご存じですね」
水田「鞠子さんのおかげです
鞠子さんとおつきあいしてからいろいろな事を知るようになりました」
鞠子「私もそうです…水田さんのおかげで楽しく過ごす事ができています
いつもありがとうございます」
水田「あ…いえ………鞠子さん」(息が荒い)
鞠子「はい」
水田「……おやすみなさい」
鞠子「…おやすみなさい」
うなだれるように礼をして帰っていく水田と横目で見送る鞠子

事務所で美子と水田がお弁当を食べている
美子「昨夜は何を食べに行ったんですか?」
水田「昨日は鞠子さんの好きなおそばを」
美子「おいしかったですか?」(常子も弁当を手にやってくる)
水田「鞠子さんと一緒ならどんなものでもおいしいです
常子と美子が口を押えて笑う
美子「仲のいいこと……だったらそろそろ結婚…」
常子「よっちゃ…!よっちゃん」
常子を見て美子が「はい…」とうなずく
水田「どうしました?」
美子「いえ、何でもありません」
と、編集長室のドアが開き出てきた花山(唐沢寿明)
「水田君、鞠子さんとの結婚はいつだ?」
せきこむ水田「えっ?いや…」
花山「次号で新婚女性に役立つ家事のやり方を伝えようと思ってね」
水田「そうですか…あの…ですが僕たちはまだ…」
美子「結婚したくないんですか?」(常子も興味津々で水田を見る)
水田「いえ、もちろんしたいですよ、今すぐにでも!」
美子「だったら求婚すればいいじゃないですか」
気迫の表情で常子「ええ!」
水田「でももし断られたらと思うと…」
美子「そんな事ありませんよ!ねえ緑さん」
緑(悠木千帆)「ええ、お似合いの2人だと思います」(常子もうなずく)
美子「ほらもう絶対大丈夫ですって
花山さんもそう思いますよね?」
花山「そんなもの知らん
本人が断られると思うならそうなんじゃないのか?」
「はぁ…やっぱり…」と水田がうなだれる
美子が花山の前に行きジェスチャアで(水田をなんとかしろ)
花山「大丈夫じゃないか?君たちは好き合ってるように見える」
水田「えっ…本当ですか!?」
「何度も言わせんでくれ忙しいんだ!」と花山が部屋に戻る
水田「いつも冷静な花山さんが言うなら間違いないですよね
何だか勇気が湧いてきました…」
美子「よかった…」
水田「早速今晩、鞠子さんにプロポーズします!」
思わず立ち上がる常子「今晩!?」
水田「はい…!思い立ったが吉日…ですから」
気合の表情の美子「頑張って下さいね」

並んで歩く鞠子と水田
鞠子「今月小津安二郎の新作が公開になるんです
姉妹の話なので見てみたいのですがご興味あれば一緒に…水田さん?」
「はい」と立ち止まる水田
笑う鞠子「どうかしました?ずっとうわの空で」
言いよどむ水田「……鞠子さん」
鞠子「はい」
水田「僕と夫婦になって下さい…僕と結婚して下さいませ!
あっ!ませ…なんて気取った口調にするつもりなかったのに…
すみません……でも…どうですか?お受け頂けませんか?…鞠子さん」
鞠子「…いいんですか?…私なんかで」
水田「なんか…って…鞠子さんほどすてきな方はいません!」
首を振る鞠子「嘘です…私なんかどこがいいんでしょうか」
水田「あなたの全てを愛しています」
鞠子「……水田さん」
水田「はい」
鞠子「少し考えさせてもらってもいいですか?」
水田「…」
鞠子「…今は…お返事する事ができません…すみません」(と去っていく)
ため息をつく水田

小橋家
美子「まり姉ちゃんどんな顔して帰ってくるかなあ」
常子「ニヤニヤじゃない?」
美子「そうよねえ」
常子「ねっ」
美子「私ですらそうなんだもん」
常子「フフフ」
料理を運んでくる君子(木村多江)「あなたたちが盛り上がってどうするのよ
まだ正式に結婚が決まった訳じゃないんだから」
常子(料理の巻き寿司を見て)「…それにしては今日豪勢じゃないですか?」
美子「結婚のお祝いみたい」
君子「ついつい…ねえ」
常子「おいしそう」
「ただいま帰りました」と鞠子が帰ってくる
鞠子「遅くなってすみません」
常子「まあまあまあまあ、座って座って座って(と鞠子の腕を引っ張り)
鞠ちゃんが帰ってこないと話にならないんだから」
鞠子「何が?」
美子「それでどうだった?」
鞠子「どうって何が?」
美子「だから私たちに何か言う事あるでしょ?」
鞠子「…ただいま…?」
美子「じゃなくて…」
鞠子(料理を見て)「あっ、どうしたの?いつもより…
何かおめでたい事でもありました?」
君子「えっ…あ~そういう訳じゃないんだけど…(かなりとぼける)」
「おいしそう~着替えてまいります」と鞠子が部屋を出る
常子「あれ?…えっ、どういう事?」
顔を寄せ合う3人
君子「求婚されたようには見えなかったわ」
美子「もしかして水田さん言えなかったんじゃ…」
常子「ええっ~…」

事務所でそろばんをはじく水田「はぁ…」
美子「ため息なんかついて幸せが逃げちゃいますよ」
水田「もうとっくに逃げてますから」
美子「またそんな悲観的な事…」
水田「実は…昨日鞠子さんに求婚をして…」
美子「したんですか?」(常子も目がまんまる)
水田「はい」
常子「で…で…鞠ちゃんは」
水田「少し考えさせてほしい…と」
美子「どうして…」
水田「僕と人生を共にしていいのか不安になったんでしょう
僕なんか気が小さくて頼りなくて何をやらせても下手くそな男ですから
僕がきっと嫌になったんです…だから鞠子さんは…」
常子「考え過ぎですって、そんな事気にしてたら
そもそもおつきあいしてませんから」
水田「ではどうして…すぐに返事してくれなかったんでしょうか?」
常子「それは…」

ぼんやりと道を歩く鞠子が女の子連れの3人家族を見て微笑む

<鞠子の気持ちは大きく揺れていたのです>

家族連れの背中を見つめている鞠子

(つづく)

冒頭のシーンで「あなたの暮し」の部数が伸びてるんでしょ?と聞かれて
口元を隠していやらしく笑う常子が可愛い
まだ大金持ちではないかもしれないが余裕はできたのだろう
常子はずっとお金で苦労してきたからもうそろそろ楽になってほしい

鞠子の恋の進展にやきもきする美子と冷静を装う君子と常子
が、実は気が気じゃなかった常子とごちそうを作ってしまう君子
このあたりの常子の表情やとぼける君子が面白い

「気が小さくて頼りなくて何をやっても下手くそ…」と自虐の水田に
「考え過ぎですって、そんな事気にしてたらそもそもおつきあいしてませんから」
と言う常子のセリフはよく考えたら失礼だよね
普通なら「そんな事ありませんよ、みんな水田さんを頼りにしています」
と言いそうなところだが「そんな事気にしてたら…」では
水田の自己否定を肯定する事になってしまっているw
常子はこういうところが間抜けで可愛い

あの時代なら結婚するなら順番からいって
姉の常子が先に…と家族なら考えそうなものだが
常子は妹を嫁に出すと公言しているからそれは問題ないのかな
だから鞠子が返事を保留した理由もそれではないと思う
ではなぜ鞠子はすぐに返事が出来なかったのだろう?

3姉妹のイメージカラーは常子が青、鞠子が赤、美子が桜色
映画の影響で鞠子が赤い靴を履いていたのは不自然ではないが
何かそれ以上の意味があるのだろうか?
『赤い靴』は1948年のイギリス映画で
童話の赤い靴のバレエ劇に主演する少女が恋愛とバレエの間で悩むが
成功して劇中の少女のようにバレエを続けなければ
(踊り続けなければ)ならなくなる悲劇的なお話らしい
これを今の鞠子に当てはめると雑誌が成功を続ける事と恋の成就は
両立しないという事なのだろうか?

もうひとつのヒントはラストシーンで
家族連れを見送る鞠子の寂しそうな表情だろう
父を早くに亡くした事が何か関係しているのだろうか?
例えばどんなに幸せな結婚をしても
相手がととのように突然死んでしまうかも…
心配性な鞠子はそれが怖くて結婚に踏み出せないとか…
そんな時は水田が走ってくるトラックの前に飛び出して
「僕は死にましぇん!」と叫んだら神ドラマだけどね!

次週予告は鞠子、鞠子、鞠子、鞠子、最後だけ常子
タイトルも「鞠子、平塚らいてうに会う」w
もう来週から鞠子がヒロインじゃん!
過去の朝ドラで結婚しなかったヒロインはいないらしいから
次週だけ鞠子を主役にして伝統を守るって算段なのだろうか?

2016年8月5日金曜日

とと姉ちゃん(107)ホットケーキの記事が完成~鞠子と水田の恋もホットに進展!?

宗吉の店の厨房 
ボウルの小麦粉を溶く水田(伊藤淳史)
「あの…やっぱり僕でないと駄目ですか?料理はからきし…」 
花山(唐沢寿明)「いいから、原稿どおりに作業を続けなさい」 
水田「はい」 
原稿を手に花山「次に泡立てた卵の白身を
牛乳と卵黄の入ったボウルに入れ混ぜ合わせます」 
「こうかな?」と中身を合わせるが 
鞠子「(相楽樹)「あ~そうじゃなくて…」 
花山「口を出さない!」 
鞠子「はい」 
花山「そこに小麦粉とふくらし粉を加えて固くなるまでかき混ぜます」
水田が粉をドサッと投入する 
鞠子「うわぁ…」 
花山「かき混ぜて早く、繊細にね繊細に」 
超不安な顔で見守る常子(高畑充希) 

タイトル、主題歌イン 

水田の作ったホットケーキを試食する一同
常子「あぁ…う~んこれは」
美子(杉咲花)「お世辞にもおいしいとは…」
水田「僕は言われたとおりに作っただけです」
宗吉(ピエール瀧)「だからよ小麦粉は一度に入れちゃ駄目なんだって」
水田「いや、そんな事言われなかったし…」
宗吉「それになんだよこりゃ…カチンカチンじゃねえかよ」
水田「だって固くなるまでかき混ぜるっていうから…」
宗吉「固すぎなんだよ」
花山「鞠子さん、もう分かったね?」
うなずく鞠子「書いてあるものの受け取り方が人によって違う…」
花山「ご名答!固くなるまでと書かれていてもその判断は人によって違う
だが料理記事を読んで100人いたら100人が同じように
作れなきゃいけないと思わないか?」
常子「そうですね」
美子「でもそれは難しいですよね」
花山「今世の中にある雑誌ではどれも
料理の作り方は文章だけで表現されている
しかしそれでは限界がある、そこで必要となるのが…」
美子「写真ですか?」
鞠子「そうか…最初と最後の写真があれば調理の変化が見えますね」
花山「フフフ、惜しかったな」
鞠子「えっ?」
花山「写真は2枚では足りない
何枚も使って調理工程をそのつど見せるんだ
粉を混ぜる段階、フライパンに入れる段階、ひっくり返す段階
そのつど見せれば読者は分かりやすいじゃないか
つまり料理の分解写真だ!」
宗吉「分解写真…」
水田「なるほど!」
美子「そんな記事今まで見た事ないです」
鞠子「ええ、革命的な記事になりそうね」
常子「そうね」
花山「よし、早速撮影を始めよう」
 
調理服姿の常子がホットケーキを作り花山がカメラを構える
工程ごとにシャッターが押されていく
宗吉「それにしても何だかすごいな…花山っていう人」
「そうなんです、ええ」と誇らしげな美子
それを見て笑った鞠子と水田の目が合うがなんだか気まずそうな2人

小橋家
君子(木村多江)「じゃあお店で撮影を?」
照代(平岩紙)「そうなの」
君子「それはご迷惑をおかけしてすみません」
照代「いいのよ、うちのも楽しんでやってるみたいだし
私もお店にいるとつい考えちゃうから」
君子「もう一度宗吉さんと話し合ってみてはいかがですか?」
照代「さんざん話したんだけどうちのは洋食の店を出す…
私は深川でやっていた仕出し屋にしよう…で譲らないんでね…
片仮名で キッチンモリタ って店にしたいらしいんだけど
私はどうしても納得できないのよ」
君子「照代さんの気持ちも分かります」
照代「やっぱり…亡くなったお母さんに申し訳なくて…
でもうちのは今は洋食がもうかる…の一点張りだから」

<数日後、写真入りの記事はできあがり早速試作が行われました>

宗吉の店
例の元女給メンバーたちが記事の解説と写真を見ながらホットケーキを作る
それぞれに完成して試食する一同
綾(阿部純子)「うん!ふっくらしておいしいです」
(一同)「うん!」
「うまく出来るもんだねえ」
「うん本当!」
(一同)「おいしいねぇ」
美子「大成功」
鞠子「うん」
常子もうなずく「これで記事は完成ですね」
花山「これで誰が作ってもおいしいホットケーキが作れるだろう」
試食する綾たちを寂しそうに見つめる常子
花山「まだ不安かね?」
常子「これが最後のあなたの暮しになるかもしれませんから…」

写真入りの記事を眺める照代
「ああ…なるほど…これなら分かりやすいわねぇ」
宗吉「ああ、常子たちはすごいもんを作ってると思うぞ」
照代「ええ」

店に飾られた福助人形

宗吉「なあ…」
照代「はい」
宗吉「この店の事なんだがな…
あいつら見てて気付いたんだ
そもそも親から受け継いで料理作ってきたのは
客にうまいもんを届けたかったからだ
うまけりゃ洋食和食にこだわる必要はねえと思ってな…
両方出そうじゃねえか」
照代「両方?」
宗吉「うん、和食洋食何でもござれの キッチン森田屋 だ」
照代「キッチンモリタヤ?」
宗吉「キッチンが片仮名で、漢字で森田屋だ……どうだ?」
うなずいた照代が声を弾ませ「いいじゃない」
ほっとしたように笑う宗吉「そうか…」

美しい満月

<そしていよいよ発売日
常子の不安をよそに分解写真による調理解説は大きな話題となり…>

編集長室で知恵の輪を解く花山のところに3姉妹と水田が駆け込んでくる
常子「売れました、売れてます!」
水田「昨日までで15,000部を越えました
このままの調子だと次号の製作費も捻出できる計算になります!」
鞠子「会社が潰れなくて済むんです!」
知恵の輪を操りながら花山「そうか」
美子「次も続けられるんです!花山さんうれしくないんですか?」
花山「そんな事で一喜一憂してもなあ…
ひとまず次号の構想が無駄にならずに済みそうだから喜んではおくか」
常子たちが顔を見合わせて笑う

花山家
三枝子(奥貫薫)がホットケーキを茜に食べさせている
茜「おいしい」
三枝子「じゃあお母さんも一口…うん本当においしい」
茜「お父さんありがとう、ホットケーキ考えてくれて」
「フフフ…ああ、まあな」と微笑む花山
笑顔の三枝子「嘘はいけません…思いついたのはあなたじゃないでしょ」
花山が「う~ん…」と頭に手をやり「常子さんによろしく言っておくよ、茜」
「へっ?」と首を傾げる茜

闇市の飲食店、鞠子が落ち着かない様子で座っている
水田が「お待たせしました」と現れる
立ち上がる鞠子「いえ…こちらこそお呼び立てしてしまって」
店を見て水田「おでん屋…ですか?」
鞠子「よっちゃんに教えてもらったんです」
「最後の晩餐ですね」と水田が椅子に腰かける
鞠子「えっ?」
水田「いいんです、僕なんかに気を遣って頂かなくても」
「おっしゃってる事がよく…」と鞠子も腰かける
水田「僕と話す事などもうないでしょう…
先日交際を迫った事で2人の関係は壊れてしまいました
それ以来ずっと…」
突然立ち上がる鞠子「先日のその申し出の事ですが
(水田を見れなくて下を向いている)正式にお受けしたいと思って…」
「はぁ…ですよね」と、「え~っ!?」と驚いて立ち上がる水田
「そ…それって…おつきあいして頂けるという事でしょうか?」
「何度も言わせないで下さい」と鞠子が腰を下ろす
同じく腰を下ろし水田「だって…もう嫌われてしまったのかと」
鞠子「お断りした時言いましたよね?
今は社内がこんな時ですから…って」
水田「それは建て前で本音は嫌っているのだと…」
鞠子「どこまで悲観的な方なんですか?」
水田「あの告白以来…
鞠子さんは僕を避けてしゃべらないようになっていきました」
鞠子「それはだって…意識してしまって…
私…器用じゃないんです」
水田「では…本当に僕と?」
水田を見つめて微笑んだ鞠子が強くうなずく
水田「あぁ…アハハハハハハ!(店に振り向き)おやっさん!おでん山盛りで!」
店主「はいよ!」
水田「じゃああの…か…乾杯」
鞠子「乾杯」

小橋家
君子、常子、美子の前にホットケーキの皿が並んでいる
美子「どうですか?」
君子「うんうん、おいしい」

<こうして大きな苦難を乗り越えた「あなたの暮し」は
新たな読者の獲得に成功し主婦の強い味方として受け入れられていきました>

おいしそうにホットケーキを食べる常子と美子

(つづく)

鞠子は水田を意識してしゃべりにくくなっているはずなのに
冒頭の調理シーンでは水田にツッコミ入れまくってるよねw
母性本能恐るべしっ

2人の恋愛は常子がまとめてくれるんだと予想していたけど
鞠子は自力で一歩踏み出したね
水田に「どこまで悲観的な方なんですか?」と言う鞠子だけど
戦時中にネガティブモードに入っていた事を考えると似たもの同志とも思える

2人がそんな時に家族とホットケーキを食べている常子は鞠子に負けているw
一瞬だけだが鞠子が本作のヒロインに思えてしまった
やはり恋愛要素は重要だね
常子にも同世代のお相手が現れるといいのだが…

相変わらず花山の家の外と中でのキャラが違い過ぎる
登場人物の誰かに早くそこを突っ込んでほしいのだが
なにかそれでひとつのエピソードにでもなるのだろうか?





2016年8月4日木曜日

とと姉ちゃん(106)常子と花山…2人じゃないと作れないもの

花山家居間 
三枝子(奥貫薫)が出してくれた水を飲む美子(杉咲花) 
花山(唐沢寿明)「慣れない酒など飲んで…」 
美子「酔ってはいません」 
花山「酔っ払いほどそう言うんだ…(三枝子に)先に休んでいなさい」 
三枝子「はい…失礼します」 
三枝子が部屋を出ると花山「君の言いたい事などわかる
あなたの暮しが最後になるかもしれないから最後に私と…という事だろう?
君らの思い出作りに協力する気などない」
谷(山口智充)「あなたの暮しは花山さんにとっても大事な雑誌でしょう?」
花山「何を言われようが私に戻る気は…」
美子「自分でおっしゃった事は守って下さい」
花山「何?」
美子「花山さん教えて下さいましたよね?
自分が出した企画は最後まで責任を持てと…
だったら最後までやり遂げて下さい
次の企画は花山さんが出した小麦粉の新しい料理なんですから」
花山「小麦粉…?まさか君たちは私の企画を盗んだのか?」
美子「私が悪いんです…花山さんの考えた企画が掲載される事になれば
とと姉ちゃんと花山さんがもう一度話し合う機会が出来ると思ったんです
でも…その…花山さんの企画だと明かす前に
次の出版が最後になりそうになって…
出版の準備をしているとやっぱりとと姉ちゃんには
花山さんが必要だと思ったんです
あなたの暮しは花山さんがいらっしゃらないと成り立たないんだって
だからお願いします…戻って企画を完成させて下さい!」(と頭を下げる)
腕を組みうつむき目を閉じ話を聞いていた花山
「随分勝手な言いぐさだな…断る」
顔を上げた美子「…分かりました…諦めます」
谷「おい、いいのか?」
美子がバックから新品の鉛筆を2本取り出し膳の上に置く
花山「これは?」
美子「闇市で探されていた鉛筆です
私が気に入ったものを2本選びました
お気に召さなければ誰かにあげて下さい
(谷に向き直り)谷さんわざわざありがとうございました」
そして「失礼します」と立ち上がり部屋を出て行く
谷「おい…おい君!」
花山は動かない
ため息をつく谷「花山さんの気持ちも分かりますが
広告も載せない事になったんだし戻ってやってもいいんじゃないですか?
やりたい事を全部やれる編集長なんていません
それに小橋君のところ以上に好きな事をやらせてくれる環境なんか
ないでしょう…
花山さんは小橋君とだから
小橋君は花山さんとだからあなたの暮しはできるんだ」
花山「おっしゃる事は分かります
…が、あの子が気持ちを改めない限り…」
それを聞いて一計を案じたような表情の谷「ああ…それなら
もう小橋君は気持ちを改めてますよ」
花山が谷を見る
目を逸らせて谷「あ…実は妹さんだけじゃなく小橋君からも
泣きつかれてるんですよ…
どうしても花山さんを説得してほしいと」
花山「彼女が?」
谷「ええ、自分の過ちに気付いて謝罪したいらしいんですよね
今になって花山さんの言ってた事が身にしみて分かったんでしょうねえ
あっ、だいぶん泣き腫らした顔してましたよ」
花山「そうですか…」

あなたの暮し社
原稿を確認する宗吉「よし、ホットケーキの作り方はこれで間違いねえ」
鞠子(相楽樹)「そうですか…」
常子(高畑充希)「ご苦労さまでした…」
宗吉「お~いお前ら!お通夜みてえな顔すんじゃねえよ!」
ため息をついた美子のそばにいき宗吉「どうした?美子
まだ廃刊と決まった訳じゃないだろ?ん?」
と、「よう」と谷が現れる
常子「谷さん!どうされたんですか?」
谷「まあ…ちょっとね」と廊下に振り向き「皆さんおそろいですよ」
すると入口に花山が姿を見せる
水田(伊藤淳史)「え~!」
目を伏せる常子
美子が前に出る「花山さん」
花山「しばらく来ない間にここも変わったな」
常子(強がる感じで)「そうですか?特には変わりないと思いますが」
部屋を指さし花山「あそこの机が曲がってる!そこの机も
私が毎日帰る前に直していたのに」
常子「私はあまりそういう事は気にしませんので」
花山「広告を載せないと決めたそうだね」
常子(毅然と)「はい」
花山「だから最初から言ったんだ!結局君はその場しのぎの考えで
余計に事態を悪化させただけじゃないか」
常子「申し訳ありません、ただ…
私は社長として最善の方法を選んできたつもりです
わざわざそんな事をおっしゃりにここまでいらしたんですか?」
花山「何を言っている!君が私に謝罪したいというから
ここに来たんじゃないか」
常子「何で私が謝らなければならないんです?」
花山「私に戻ってきてほしいからだ」
常子「何をおっしゃってるんですか?誰がそんな事…」
花山「やせ我慢をするな、私に戻ってきてほしいと
谷さんに泣きついたんだろ?泣き腫らした顔をして!」
常子「そんな事は言ってません!」
花山(谷に)「言ってた話と違うじゃないか!」
谷「あ…脚色だよ…脚色
(常子と花山を指でさし)お互い素直になれないから俺なりのプレゼント」
花山「全く不愉快だ!失礼する」
美子「待って下さい」
常子「お帰りになる前にお伝えしたい事があります
次の号でものすごくいい企画を美子が思いついたんです
私たちだけでも今まで以上の雑誌を作ってみせますから…」
美子「それは違うの…小麦粉の企画は花山さんの発案なの」
驚いて美子を見る常子「どういう事?」
美子「私が花山さんから企画の話を聞いててそれをみんなに…ごめんなさい」
常子「…」
谷「あ…それで…その小麦粉を使った料理ってのは?」
鞠子「ホットケーキです」
花山「ホットケーキ?」
宗吉「ああ…パンの代用品になってどの家庭でも簡単に作れる」
花山「ああ…確かにいいアイデアだな…結局私は何も思いつかなかった」
水田「そうか…花山さんでもそうなんですね…
ホットケーキには2人じゃなきゃたどりつけなかったって事ですよね」
鞠子「うん、やっぱり2人じゃなきゃ作れないって事ですね」
美子「花山さんお願いします…戻ってきて下さい
(常子の背中を押し)とと姉ちゃんからもお願いして」
宗吉「あ~辛気くせえのは嫌なんだよ
ま~るく収めようぜ、ホットケーキみてえによ」
谷「小橋君…折れるべき時には折れる事も社長業の秘訣だよ」
常子「私は折れません」
鞠子「とと姉!」
常子「花山さん……この度は申し訳ありませんでした!(と頭を深く下げる)
あなたの暮しの理念を決して折らないためには
花山さんがどうしても必要なんです
今回の出版が最後になってしまうかもしれませんが
どうかもう一度だけ帰ってきて頂けませんか?お願いします!」
鞠子と美子も「お願いします!」と並んで頭を下げる
水田となぜか宗吉までが頭を下げる
花山「うん…まあ…そこまで言われてはしかたがないね」
一同が顔を上げる
涙ぐむ常子「今…花山さんがおっしゃっていた広告をとる事の恐ろしさを
身にしみて感じております
ですがあの時あの判断をしなければ5号でおそらく潰れていたでしょう
私はこの会社と雑誌を守らなければなりません
ですからこれからぶつかる事もあるとは思いますが
私は販売拡大と管理に一生懸命努力していきたいと思います
花山さんは一切の妥協をせずによりよい雑誌作りに集中して下さい」
花山「分かった」
常子「今後ともよろしくお願いします!」
(鞠子と美子)「お願いします」
花山「こちらこそぉ」
常子が笑顔になる
美子「谷さん、ご尽力頂きありがとうございました」
谷「何言ってんだ…礼なんていらないよ」
美子(常子たちに)「ゆうべ一緒に花山さんを説得しに行って下さったの」
常子「そうだったんですか、ありがとうございました」
谷「本当にもういいって、礼ならもう貰ってるしね」
美子「えっ?」
谷「君が買った一本…あの鉛筆…そしてもう一本は
花山さんが気に入ったんだとさ」
「そうなんですか?」と嬉しそうに笑う美子
花山は余計な事を言うなという感じでしかめ面だ
谷「小橋君、皆さん、これからも応援してますよ」
礼を言う一同

会議の席
どっかりと腰を下ろす花山「さあ時間がない、作業はどこまで進んでる?」
鞠子がドヤ顔でホットケーキの原稿を見せるが「これでは駄目だ」と花山
鞠子「えっ?」
花山「やはり私がいなくては何もできないようだねぇ」
鞠子「どうしてです?どこが悪いか具体的に言って下さい」
花山「どこ…ではない、全部駄目だ!」
鞠子「そんな…」
水田「ひどいなあ…そんな言い方…」
緑(悠木千帆)「何か久しぶり…この感じ」
美子たちも微笑む「やっぱりこれがないと我が社じゃないわ」
宗吉(小声で)「そうなのか?常子」
常子「ええ」
宗吉を見る花山「あなたは?」
宗吉「ああ…俺ですかい、こいつらとは昔からの知り合いで」
常子「近所にお店を出される料理人の森田宗吉さんです
料理記事の監修もして頂いてます」
花山「そうでしたか…突然で申し訳ない、今からお店へ伺っても?」
宗吉「今からですかい…?構わねえけど…」
花山「それから…君にも協力してもらおう」
水田「え…僕ですか?」

<花山が何を企んでいるのか…常子は戸惑いながらも
ワクワクとした思いが込み上げているのを感じていました>

穏やかな笑顔で花山を見つめている常子

(つづく)

思慕する花山が会社に戻るようにと頑張った美子には少し酷だが
花山が戻る気になったのは常子が泣き腫らした顔で謝りたいと泣きついた
…という谷の嘘だったね
常子にとってそうであるように花山にとって常子は特別な存在のようだ

花山が事務所に登場するシーンはとても面白かった
まず強がる常子が可愛い!
最初はバツが悪くて目を伏せるが心の中では嬉ションしてただろうにw
そして花山が部屋を指して机の位置がどーのこーの言うの笑った
花山らしいし彼なりの照れ隠しなのかもしれない

谷に「折れる事も…」と言われた常子が
「私は折れません」と意外な事を言ったのは後のセリフから
「あなたの暮し」の理念を折る事はできません…という意味だろうね
(これは花山への謝罪になっている)

最終的には常子が詫びて花山は復職した訳だが
あのあたりは花山よりも常子の方が大人なのかなあと感じた

ラストシーンでまた以前のように
一同が花山に振り回される終わり方も良かった



2016年8月3日水曜日

とと姉ちゃん(105)会社の存続か?雑誌の理念か?常子の下した決断は…

夜、あなたの暮し社 
水田(伊藤淳史)「すみません!僕が常子さんをたきつけて
広告を出そうと言ったばかりにこんな事に…」 
常子(高畑充希)「水田さんのせいではありません
決断したのは私ですから」 
水田「結局花山さんの心配していた通りになってしまって…」 
常子「…鞠子とはどうなんですか?」 
水田「えっ?」 
常子「ずっと気になっていたんです
ひょっとして鞠子の事、好いて下さっているのかなって…」 
水田「あっ、いや…実は…はい、そうなんです」 
笑顔の常子「そうでしたか」 
水田「ですが…鞠子さんに思いを伝えたんです」 
常子「えっ?それで?」 
水田「断られました、会社が大変な時なのでと…
それがあくまでも建て前な事は鈍感な僕にでも分かります」 
常子「そうですか…」 
水田「ええ…あっ、誤解しないで下さい
この会社に入りたかったのは鞠子さん目当てとかそういうのではありません
この雑誌が掲げている理念に共感したからですから」 
常子「ありがとうございます」 
水田「では今日はこれで失礼します」 
水田が帰り一人になった事務所で
花山と新雑誌の理念を語り合った日の事を思い出す常子 

タイトル、主題歌イン 

朝、事務所の机に突っ伏して眠る常子の肩にひざ掛けがかかっている 
目が覚めて顔を起こした常子に鞠子(相楽樹)「あ~やっと起きた」
常子に振り向く美子(杉咲花)「あ~おはよう」
常子「えっ、2人とも何してるの?」
鞠子「何してるの?…じゃないでしょ
朝まで帰ってこないから心配したんだからね」
腕時計を見る常子「あ~ごめん…考え事してたら寝ちゃってた」
鞠子「もしかしてポワソン・ア・ラ・アメリカンって料理取り上げるかどうか?」
常子「うん…どうしたもんじゃろのぉ…」
美子「私たちは決めたから」
常子「ん?」
美子「私たちは社員として、とと姉ちゃんがあの料理を取り上げた方が
会社のためになると判断するならそれに従います」
鞠子がうなずく
常子「ありがとう」

袴田料理学校
常子「社内で検討したのですが
アメリカンはあなたの暮しで紹介する料理としてはふさわしくない
という事になりまして…
ご連絡が遅れてしまって大変申し訳ないのですがご希望に沿えません」
久「どういう事です?アメリカンを記事にできないというんですか?」
常子「あなたの暮しは庶民の暮らしの役に立つ事を目標に創刊された雑誌です
アメリカンという料理はあまりにもお金と手間がかかり過ぎるんです」
久「困りますよ、松平さんは約束にとても厳しいお方だ
もし約束を破ったら我が校の経営に影響する可能性だってあるんです
そんな事なら広告はやめさせてもらいますがそれでもいいんですか?」
常子「その覚悟で参りました
読者のためにならない記事を載せてしまっては
あなたの暮しの目的や私たちの思いを曲げる事になってしまいます」
話を聞いていた辰紀「あんたたちの思いなんぞどうだっていいんだ
倒産間近の雑誌社が偉そうに…調べはついてる
我が校からの広告費がないと首が回らんのだろう?
だったら私たちの言う事聞いた方がいいんじゃないのかね」
常子「いえ、お断り致します」
久の肩に手をかけ辰紀「息子が珍しく張り切っとるから黙っていたが…
最初から女社長の会社に期待などしてなかった…出ていきなさい
仕事の邪魔だ!」

事務所
水田「遅いですね常子さん」
鞠子「水田さん」
水田「はい」
鞠子「さっき言いましたよね?とと姉を笑顔で迎えようって」
水田「あ…すみません」
美子「緑さんもお願いしますね」
緑(悠木千帆)「はい」
と、戻ってきた常子が全員を集める

常子の前に並ぶ一同
常子「先方にこちらの気持ちを伝えてきました
やはり広告の件はなしになりました」
鞠子「そうですか」
美子「よかったじゃない」
緑「これですっきりしましたね」
水田「そうですよ、もう覚悟はできてました」
常子「水田さんも緑さんも…勝手に決めてしまってすみませんでした
でも…やっぱり花山さんとあなたの暮しを初めに作った時の思いを
踏みにじりたくなかったんです」
水田「もちろんです…僕も同じ気持ちです」
緑「私もです」
常子「今までいろいろと助けて下さりありがとうございました…
広告を断った以上最悪の事態を考えなければなりません
今まで通りの売り上げではこの出版社は潰れてしまいますから」
バッグから2枚のメモを取り出し水田と緑にそれぞれ渡す常子
「水田さんと緑さんの新しい就職先です
以前勤めていた出版社の社長に相談して就職先を紹介して頂きました
そちらに谷さんの連絡先も書いてありますので
ご興味あるところがありましたら連絡してみて下さい
お二人でしたらすぐに次の勤め先も決まると思います
鞠ちゃんもよっちゃんも今までありがとう
ごめんね…こんな結果になってしまって」
鞠子「やめてよ…まだ潰れるって決まった訳じゃないんだから」
美子「そうよ…次の号はどうするの?」
常子「こんな事になってしまって無理をさせて悪いけど
次号もきちんと作り上げたいと思っています
力を貸してほしいの…お願いします」
鞠子「もちろん」
美子「投げ出す訳ないじゃない」
常子「ありがとう」
水田「僕も最後までやらせて頂きます」
常子「いや…水田さんをこれ以上巻き込む訳にはいきません」
水田「お願いします、やりたいんです」
緑「私もやります、常子さん」
常子「…ありがとうございます」
美子「じゃあ…花山さんに戻ってきて頂きましょうよ
もう広告も載せないんだから花山さんだって戻ってきて下さると思うわ」
常子「それはよしましょう」
美子「どうして?」
常子「潰れかけの出版社に戻って頂くのはご迷惑がかかる事だわ」

闇市の飲食店
美子「突然お訪ねしてしまって申し訳ありませんでした」
谷(山口智充)「驚いたよ、社の前に立ってるなんて…
まさか小橋君の妹さんとは…」
美子が花山の事を相談する
「あなたの暮しが終わってしまうんです…
一緒になって作ってきて下さった花山さんがいらっしゃらないなんて…」

夜、遅くまで編集作業をしている常子と鞠子

男の手が花山家のガラス戸を叩く
花山(唐沢寿明)が玄関を開けると谷が立っている
「花山さん、夜分にすみません」
花山「どうしました?」
谷「実は…この子が話があるそうなんです」
谷の後ろには美子が立っている
花山「何の話か見当がつきますが聞く気にはなれません、お引き取りを」
と閉めようとした戸を「いやいや!」と谷が手で押さえ
「あなたの暮しが終わるかもしれません」
花山を真っすぐに見つめる美子
黙って谷を見ている厳しい表情の花山

(つづく)

常子が水田に「鞠子の事好いて下さって…」て訊ねてた
ひょっして…とか常子は言ってたけどバレバレだったもんねw
鞠子は大学進学の件も一人でずっと悩んでいたけど
この恋愛も常子が何かのアクションを起こして成就するのだろうか?

君子の説教ですっかり物分かりがよくなってしまった美子だが
あの説教は地味に鞠子にも効いていたんだね
広告推しの鞠子だったが美子と同じに常子に従うと決めたみたいだ

辰紀にビックリした
あんなにキツイ人だったとは…
初登場時の「うん、そうね」の2連発は何だったのだろう?
親バカだから息子の久が張り切っていたので機嫌がよかったという事か

谷と美子は中華のCMでも共演してるよね
美子がお酒を口にしてまずそうにしていたけど
CMの延長で大きくなった娘と飲んでいるように見えてしまったw


2016年8月2日火曜日

とと姉ちゃん(104)社長兼編集長として奮闘するも折々に花山の言葉を思い出してしまう常子

「さあ遠慮しないで召し上がって下さいね」と照代(平岩紙)が料理を並べる 
「頂きます」と試食する綾たち 
綾(阿部純子)「うん、おいしいです」 
梢(佐藤仁美)「うん、初めて食べたよこんなの」 
お蝶(早織)「世の中にはこんなにうまいもんがあるんだねえ」 
さくら(森絵梨佳)「カフェーのメニューにもなかったですわ」 
照代「カフェー?」 
宗吉(ピエール瀧)「カフェーって…あの女給さんのいるカフェーかい?」 
鞠子(相楽樹)「はい、皆さんカフェーで働いている方々なんです」 
宗吉「はぁ~どうりできれいどころが多い訳だ」 
綾「でも今はもうカフェーじゃないんです
昼間のお仕事が見つかって、皆さんも」(うなずく元女給一同) 
梢「私はまだ働いてるよ、新橋の浪漫ってお店
よかったらいらして」(と宗吉を見る) 
宗吉「そりゃあ一度行ってみねえとなあ」
照代が宗吉を見て「そうですねえ」
宗吉(照代に怯み)「で…料理の方はお気に召しましたかい?」
さくら「ええ、味は申し分ありません
でもこれを紹介しても喜ばれるかどうか…」
梢「そうだねえ…」
綾「これじゃあ難しいかもしれませんね」
美子(杉咲花)「どういう事でしょうか?」
艶子(谷澤恵里香)「この料理、小麦粉以外に…」
宗吉「ああ、それは牛肉と西洋まつたけと…」
弓子(寺島咲)「そんなのどうやって手に入れるのさ」
綾「たとえ手に入れたとしてもこんな手の込んだ料理とても作れません」
お蝶「働いてると料理に時間をとれないんだよ」
鞠子「なるほど…」(うなずく3姉妹)
鞠子(宗吉に)「何か手軽にできるものってないですか?」
宗吉「ん~しかしなあ…
小麦粉を使って手軽にできる料理って言われてもなあ…
パンだって家庭で焼けるもんでもねえしなあ…」
梢「…ったく欧米人も気が利かないねえ
パンみたいな小難しいのじゃなくて
混ぜて焼くだけみたいな料理を発明してくれりゃあいいのにねぇ」
常子(高畑充希)「混ぜて焼くだけ……ホットケーキ!」
美子「えっ、ホットケーキってあの…昔、百貨店で食べた茶色くて円い?」
常子「そうそう」
宗吉「ホットケーキはおやつだろ?主食じゃねえのにいいのか?」
常子「でもシロップかけなければパンと同じじゃないですか?」
鞠子「確かにおなかにもたまるわね」
常子「ねえ」(美子もうなずく)
鞠子「でも本当に混ぜて焼くだけで出来るんですか?」
宗吉「あんなもん簡単だよ、誰でも家で焼けるぞぉ」
(一同)「え~?」

夜、あなたの暮し社
宗吉「小麦粉をダマにならないようかき混ぜる」
鞠子がそれをメモにとる
立ち上がり事務所を眺める宗吉
「しっかし…常子がここの社長で編集長とはなあ…大したもんだ」
美子「編集長はもともと花山さんという方なんです
今はしかたなくとと姉ちゃんがやってます」
鞠子「よっちゃん…」
席に戻った宗吉が「お~鞠子」と、水田の机を指さし
「さっきそこにいたあいつどこ行った?」
鞠子「水田さんですか?今はもろもろの支払いに…」
宗吉「お前とうわさになってるのってひょっとしてそいつか?」
鞠子「違います!水田さんとはそんなんじゃありません
(メモを宗吉に見せて)ご確認願います、小麦粉の分量合ってます?」

「アクセサリーの挿絵、出来ました」と美子が常子にイラストを提出する
常子「ご苦労さま…(とイラストを眺め)手作りの温かみを出したいから
全体的にこう…もう少し優しい色合いにして
それから原稿とのバランスも考え直してくれるかな」
美子「そんな一度に言われても無理よ
それに全体的に…とかではなくてもっと具体的に説明して」
常子「ごめん…」
常子のデスクの前に腰かける美子
「大体今後の編集作業どうするつもりなの?
原稿確認や割り付けや印刷の色の具合…
全部花山さんがいなくてできるの?」
常子「…」
と、袴田料理学校の久が常子に紹介したいからと
大東商事の松平という男を連れて事務所を訪れる
松平「あなたの暮しは家内ともども毎号楽しみに読んでおります」
常子「恐れ多いです」
松平「次号には家内が考案した料理が掲載されるというから
とっても楽しみにしているんですよ」
常子「は?」
久が慌てたように「松平さん、私は小橋さんと打ち合わせがありますので
先にお店の方に…」と松平を送り出す

「申し訳ない!」と頭を下げる久
向い側には3姉妹が並んで座っている
常子「一体どういう事です?」
久「実は松平さんに我が校は多大な融資を受けておりまして
最近あなたの暮しに広告を出し懇意にしていると話したところ
是非奥様が考えた ぽあそん あ ら あめりかん という創作料理を
次号に載せてほしいと言われまして思わず約束を…
これがその作り方です」(と懐から封筒を取り出して机に置く)
鞠子「ぽあそんあらあめりかん…?」
美子「載せると言ってしまったんですか?」
久「申し訳ありません、これを断るといろいろと面倒な問題が…
今回だけは私の顔を立てると思ってよろしくお願いします!」
常子が花山の言葉を思い出す「甘いよ常子さん」

宗吉の店
「一応作ってはみたけどな…」と3姉妹に料理を出す宗吉
鞠子「これがポワソン・ア・ラ・アメリカン…」
水田(伊藤淳史)「豪華ですね」
美子「車エビにタイですものね」
照代「材料を手に入れるだけでも一苦労よね」
常子「しかも完成まで半日かぁ…」
宗吉「ああ、随分手間のかかる料理だぞぉ
魚介類を煮込んでからパイ生地で包んで天火で焼くんだ」
鞠子「パイ生地…」
宗吉「とてもじゃねえが家庭で作れる代物じゃねえぞぉ」
鞠子「とと姉どうする?本当に記事にするの?」
美子「迷う事ないよ
花山さんだったら我々が作ってるのは庶民のための雑誌だ
こんなメニュー取り上げてはいかん…っておっしゃるに決まってるわ」
水田「それはこの料理を記事にするのを断るって事ですよね?」
鞠子「記事を断ったら料理学校は広告をやめるって言ってくるんじゃない?」
美子「それでいいじゃない、もう広告は載せない
今まで通りにすればいいだけよ」
水田「いや…ちょっと待って下さい
次号で入る広告料を計上して予算を組んでみましたが
それでも会社を維持するには精いっぱいです」
美子「じゃあ…」
水田「もしこの料理を載せないで広告料が入らないという事になれば
次の号があなたの暮しの最終号になってしまう可能性が高いんです」
鞠子「だったらこれを記事にして会社を存続させる…
それしかないんじゃない?」(と常子を見る)
常子「うん…」
鞠子「…そろそろ時間じゃない?」
腕時計を見る常子「あっ、本当だ…
あ…じゃあ鞠ちゃんは坪内先生のところに
よっちゃんは菊池先生のところに原稿取りに行ってもらってもいい?」
鞠子「分かった」
水田「僕は一足先に会社に戻ります」
常子「お願いします」
鞠子が立ち上がり宗吉夫婦に「ありがとうございました」と挨拶するが
美子は黙り込んだまま動かない
鞠子「よっちゃん、行くわよ」
立ち上がり「失礼します」と挨拶する美子

3人が出て行きひとりになった常子に照代が紅茶?を出す
照代「本当に驚いちゃうわ、常子ちゃんが雑誌作りの社長さんだなんて
雑誌を作りたいなんて前から言ってたっけ?」
常子「いえ、この世界に入ったのはたまたまなんです」
照代「それでどうして作る事に?」
常子「ん~…自分で雑誌をと思ったのは
戦後の混乱の中で必死に生きようとする女の人のために
何かできないかなって」
宗吉「それであれだろう、豊かな暮らしを取り戻す手助けをってなぁ
雑誌に書いてあった」
常子「ええ」
宗吉「豊かな暮らしってのがいいじゃねえか
よくそんな事思いついたなあ」
常子「それは花山さんのおかげです」
照代「花山さんって…辞められた編集長さん?」
常子「はい、花山さんと一緒に働く事で
ようやく自分のやりたい事にたどりつけたんです」
宗吉「そうか…その花山って人と出会ったから
今の雑誌を作る事ができたって訳か」
うなずく常子

鞠子と美子が帰宅する
君子「常子は?お仕事?」
鞠子「鈴木先生の原稿が書き上がるまでお宅で待たせて頂くと」
君子「そう…遅くまで大変ねえ」
鞠子「とと姉は社長と編集長どっちもですからね」
美子「自業自得じゃない、自分が花山さんを追い出したから」
鞠子「まだ言ってるの?」
美子「だってそうでしょ?花山さんのおっしゃる通りにしないから
こんな事になっちゃったんじゃない、とと姉ちゃんは自分勝手なのよ」
君子「美子ぉ…あなたが怒っているのは妹として?それとも社員として?
常子が気に入らない事をしたからといって怒っているなら
それはただの姉妹げんかよ
花山さんの事は会社の問題でしょ
会社のために社長と力を合わせる事が社員には大事なんじゃないの?」
美子「…」

原稿を書く作家の前に座る常子が
花山と2人で新しい雑誌作りを誓いあった日の事を思い出す
鈴木「君…君!」
「あ…はい…はい」と我に返る常子
鈴木「何をボ~ッとしてるんだ、書き上がったよほら」
常子が「ありがとうございます」と原稿を受け取る

<自分たちでやると心に決めたはずなのに
常子の頭に花山の言葉が回り続けていました>

心ここにあらずという顔で原稿を確認している常子

(つづく)

女給を続けているのは梢だけのようだ
別に職業差別をするつもりはないが
綾が転職していてなんだかほっとした

料理学校に融資するほどの資産家の松平夫婦がなぜ
「あなたの暮し」のような貧乏くさい(失礼!)雑誌を購読しているのか疑問だが
訳の分からん創作料理をゴリ押ししてくるとはとにかくけしからん

常子が宗吉夫婦に自分で雑誌を作る事になった経緯を説明していたけど
大金持ちになれるかもって思った件が抜けてるよ!
理念の部分だけかっこよく説明していたねw
(まあそれで花山がいたからこそ…って改めて気付く流れなのだが)

水田に広告料が入らなければ次号が最終号だと指摘されて
君子には説教されて美子は常子へのわだかまりを解消できるのだろうか?
君子はいい事言ったみたいだけど「社員として…」と言われてもねw(美子的に)
82話で「で…どう?私たち3人でやってみない?」と
起業する常子に軽いノリで誘われた美子にしてみれば
自分が「社員」だっていう意識はなかったかもしれないよね
給金だってたぶんちゃんと貰えてないだろうし
そもそも社長のこと「とと姉ちゃん」て呼んでるくらいだw

2016年8月1日月曜日

とと姉ちゃん(103)会社を去った花山抜きで小麦粉料理の企画を進める常子たち

どこかの空き店舗のガラス戸を開け通りを眺める常子(高畑充希)
「ここでお店なさるんですね」 
照代(平岩紙)「そうなのよ」 
常子「人通りも多いし立地もいいですね」 
宗吉(ピエール瀧)「広さも2人でやるにはちょうどいいだろう」 
常子「はい」 
鞠子(相楽樹)「開店準備でお忙しいところ申し訳ないんですけど
お力をお貸し頂けません?」 
宗吉「お力?」 
鞠子「小麦粉を使った料理、洋食で何かありませんか?」 
宗吉「まあいろいろあるけど…何だって俺にそんな事…」 
常子「雑誌の企画で家庭でも手軽にできる
小麦粉を使った料理を紹介したいんです」 
美子(杉咲花)「料理の事は料理の専門家にお聞きするのが一番いいと
姉が申しておりまして」(と鞠子の肩を掴む) 
鞠子「雑誌作りに協力して頂けませんか?」 
照代「いいわよ、ねっ?」(と宗吉を見る) 
宗吉「おう…」 
 
夜、あなたの暮し社
「じゃあ私はお先に」と美子が笑顔で退社していく
水田(伊藤淳史)「機嫌が直ってよかった」
鞠子「今日のところはって感じですけど」
常子「これからは花山さんなしでやっていかなきゃいけないから
甘い物でもごちそうしてご機嫌とらないとね」
水田「あっ、そうですね」
常子「何かおいしそうなものがあったら
買ってきておいてもらってもいいですか?」
水田「分かりました」
常子「鞠ちゃんと相談してよっちゃんの好きそうなものを」
水田「あ…はい」

帰り道の鞠子と水田
「心配してたんです常子さんの事
信頼していた花山さんが辞めてしまって気落ちするのではないかって…
平気そうでよかった」
鞠子「とと姉はいつもああなんです」
水田「えっ?」
鞠子「周りが困っている時ほど自分がどんなにつらくても
明るく振る舞って元気づけようとしてくれる
…というかしてしまう…というか
だから多分、今とてもつらいんだと思います」

事務所で残務をする常子が雑誌と会社の名前を花山と決めた件を回想する
花山のいない左隣のデスクを見つめる常子

鞠子「私、夫婦みたいって思ってたんです」
水田「えっ?」
鞠子「とと姉と花山さんが」
水田「ああ…」
鞠子「もちろん恋愛感情がある訳ではありませんけど…
2人は同じものが見えているというか
そんなつながりみたいなものを感じてたんですけどね」
水田「信頼し合っていたからこそ関係が修復できないほど
ぶつかり合ってしまったのかもしれないですね」(2人の足が止まる)
鞠子「これからどうなっていくんでしょう…
美子にはあんな事言いましたけど本当は私すごく不安で…」
水田が鞠子を強く見つめる
「…そんな悲しい顔はやめて下さい
僕が精いっぱい支えますから」
微笑む鞠子「ありがとうございます水田さん…頼りにしています」
その言葉でさらに目を見開き鞠子を見る水田
鞠子「…といっても無理なさらないで下さいね(歩き始める鞠子)
お気持ちはうれしいですけど…」
と、路上で固まったままの水田に振り向く鞠子「えっ?…どうしました?」
鞠子の方に向き水田「鞠子さん!」
鞠子「はい」
鞠子に駆け寄る水田「僕と…僕とおつきあいして頂けないでしょうか?」
鞠子「えっ?」
水田「お願いします!鞠子さん僕と…」
鞠子「どうしてこんな時に!」
水田「僕にもよく分かりません、盛り上がってしまって」
鞠子「あっ、いやあの…私…
とにかく今は社内がこんな時ですから」(と挨拶で頭を下げて走り去る)
見送る水田「あぁ~…何やってんだ…」(とガックリ膝をつく)

3姉妹が注視する中、事務所でそろばんをはじく水田
「変わりませんね、雑誌自体の売り上げは横ばいのままです」
常子「横ばいですか…」
鞠子「前の号より落ちてないだけよかったじゃない」
水田「そうですよね!」
常子「じゃあ…もし広告を載せてなかったら?」
水田「間違いなく次の号は出せなかったと思われます」
鞠子「正解だったのよ、広告載せて」
常子「うん…」
美子「でも花山さんもういらっしゃらないのよ
雑誌の売り上げはこのまま維持できるのかしら」
常子「それは…」
と、電話が鳴り呼び出され袴田料理学校に向かう常子

久「おかげさまで広告の評判もよく入学の申し込みも増えました」
常子「それはよかったです」
久「で、父と話をした結果
次号は裏表紙の裏表2面でお願いしたいと思います
広告費は2倍お支払いしますから」
常子「2倍?よろしいんですか?」
辰紀「まあそれくらいは構わん」
常子「そんなに…頂けません」
久「いえ、こちらとしては末永くおつきあいができればよいなと」
常子「となると契約の内容に変更が…」
久「そこはこれまでどおり小橋社長の思うようにやって頂ければ結構です」
常子「そうですか…ありがとうございます」

宗吉の店
美子「ちょっと待って…次号も広告載せるの?」
常子「ん~悪い話ではないし…」
美子「それじゃ花山さんのおっしゃっていたとおりじゃない
一度広告を取ったらやめられなくなるって」
鞠子「よっちゃん!」
宗吉と照代もやってくる
「おい大丈夫なのか?お前ら…
小麦粉を使った新しい料理考えんだろ?」
常子「すみません
(美子に)今は料理作りに集中しましょう」
美子「…はい」

宗吉が厨房で説明を始めるが照代が遅れてくる
宗吉「んだよ…まだゆうべの事引きずってんのか?」
美子「ゆうべの事って?」
宗吉「ああ…いや」
照代「ゆうべこの人と言い合いになっちゃって」
常子「言い合い?」
照代「今更なんだけど分からなくなっちゃってね
ここでお店を開いていいのか」
宗吉「その事は何度も話してきたろう?」
照代「このまま仕出し屋森田屋の看板を潰してしまっていいのかどうか…
私たちが今やるべき事はお母さんが一生懸命守ってきた森田屋を
また始める事なんじゃないかしらって」
宗吉「いいか?これからは洋食の時代だ
今にどの家庭でも洋食を食べるようになる
そっちの方が儲かるに決まってんだ」
照代「でも儲かる事だけが大切ではないでしょう?」
宗吉「そんな事言ったって儲からなきゃやっていけねえだろう!」
鞠子「あのう…」
宗吉「ああ…悪いな…みっともねえとこ見せちまって」
鞠子「出直しましょうか?」
照代「あっ、いいの!少し聞いてもらってすっきりしたから…ごめんなさい
さあ、始めましょうか」
(一同)「はい」
宗吉「お前たちの悩みを解消するようなもんを
俺がチャッチャと考えてきてやったぞ」
美子「本当ですか?」
宗吉「ああ任しとけ、まずはな…」
と、表で「ごめんください」と声がする
常子「少々お待ち下さい、ちょうどいらっしゃいました」

店の前に並ぶカフェー「浪漫」の女給一同
宗吉「こちらのお嬢さん方は?」
鞠子「読者代表としていろいろと意見を参考にさせてもらってるんです」
常子「どんな料理が求められているか知るために
試食して頂こうと思ってお越し頂きました」
綾(阿部純子)「よろしくお願い致します」
(その他一同)「お願いします」
梢(佐藤仁美)「おいしい料理をお願いね」
笑顔の宗吉「お任せあれ、ハハハハハ…あれ?こちらは確か常子の女学校の…」
綾「はい、御無沙汰しております
その節は本当にありがとうございました」
照代「あら~すっかり大人になってぇ」
宗吉「ああ、お仲間もきれいな方ばかりで…
ハハハハ!こりゃ気合いが入っちゃうな、ハハハハハ…」
照代(宗吉を見て)「本当ですね」
宗吉「さて…作り始めるとしようかな」

花山家
帰宅した花山(唐沢寿明)に三枝子(奥貫薫)「ご苦労さまでございました」
花山「うん」
三枝子「お仕事の方はいかがでした?」
花山「出版社を方々回ってみたがなかなかね…」
三枝子「是非にとおっしゃってた三光出版さんも駄目だったんですか?」
花山「ああ、あそこはこちらから断ってしまったよ
編集者をただの駒としか思っていない」
三枝子「あ…そうですか」
花山「ほら茜、小麦粉をパンにしてもらってきたぞ」(と紙袋を渡す)
茜「ありがとうございます」
三枝子「お金の方は大丈夫なんですか?」
花山「たまにはいいだろう、金の事だけ気にしていると心まで貧しくなる…
(茜に)食べなさい」
茜「頂きます」(とパンにかじりつく)
三枝子「おいしい?」
茜「うん!」

<あなたの暮し出版を辞めてしまっても
新しい小麦粉料理について考えてしまう花山でした>

幸せそうに笑う妻と娘を眺めている花山

(つづく)

まず鞠子の「夫婦みたい」という言葉を自分たちの事?と勘違いして
(それはすぐに常子と花山の事だと分かったが)
さらに「私すごく不安で」と鞠子が弱っているので
「精いっぱい支えます」と言ったら「頼りにしています」と言われた
男の自分から見ると水田がこのタイミングで交際を申し込んだのは
そんなに無理じゃないと思うのだが
「どうしてこんな時に」っていかにも女の人が言いそうだw
まさかじらしている訳でもないのだろうが鞠子はもったいつけるね

照代はこの前、小橋家で沈んだ表情も見せていたが
まつが守ってきた森田屋の看板にこだわりがあったんだね
義理固い人だ

外では傍若無人で変人ぶりを見せつける花山が
家庭では相変わらずの優しい父親だ
ポン酢のCMのからみで明るく良いパパのイメージを壊したくないから
それが脚本にも作用しているのかとつい考えてしまう