2016年6月18日土曜日

とと姉ちゃん(66)常子、出版と出会う

青柳家で挨拶する小橋一家 
神妙な顔の常子「本日からお世話になります、何とぞよろしくお願い致します」 
君子(木村多江)鞠子(相楽樹)美子(杉咲花)「お願い致します」 
清(大野拓朗)「ちょっとちょっと堅苦しいよぉ!」と、笑う 
滝子(大地真央)「ここは元からあんたらの家なんだから
何の遠慮もいらないよ」 
隈井(片岡鶴太郎)「ねえ…」と、滝子も隈井も笑顔だが一同が隈井を見る 
隈井「うん?何ですか?あっしの顔に何かついてますか?」 
清「いや~泣かないのかと思ってねえ
やっど君子ざんだちが帰っでぎで…って(泣きまねの仕草)
いつもなら感激しそうなのに」
滝子「泣きたきゃ泣いていいんだよ」
隈井「何言ってんですか、3つや4つのガキじゃあるまいしね
しょっちゅうビービービービー泣いたりしませんよ!」
美子「それに今までも会ってたし私たちが戻ってきたからって
感激するような事じゃないわよ」
常子「でもぉ離れていても隈井さんが気遣って下さっていたからこそっ
今の私たちがあるんですものねえ~」と、君子を見る
君子(気持ちを込めて)「そうね、隈井さんには感激してもしきれないわよね」
鞠子(やはり気持ちを込めて)「ええ、本当に」
「ううっ…」と、泣きかけた隈井
「やめて下さいよ!あっしを泣かそう泣かそうとすんのは!全くもう!」
(一同笑う)
清「あっ、それはそうと常子ちゃん働き口はどうするの?」
常子「あ…早々に見つけるつもりです」
滝子「…昔だったら一つや二つ見繕ってあげられたんだが…」
常子「ご心配いりません
曲がりなりにも3年間職業婦人として勤めてきたんです
きっと私を必要としてくれる職場もあると思います」
隈井「ううっ…偉いねえ…けなげじゃありませんか…」と、泣いている
清「え~!」(そこで泣くのかよ!)
(一同笑う)

小橋一家の新しい部屋だろうか
欄間に竹蔵の家訓を掲げる常子「よし…」
と、踏み台を降り「あ…ミシン運んじゃいましょうか」と家族に振り向く
3人は座って常子を見つめている
常子「えっ、何?みんな」
君子「心配してたのよ、鞠子も美子も…
あなたが仕事を失ってからいつになく落ち込んでたから」
常子「ああ…」
君子「でも、もう大丈夫そうね」
美子「さっきのとと姉ちゃん、とと姉ちゃんみたいだった」
常子「え?私はいつも私よ」と、笑う
鞠子「そんな事なかったよ」
常子「あっ…そう?う~ん…じゃあ多分
富江ちゃんと長谷川さんの祝言だったり
森田屋の皆さんとのお別れの中で元気になれたんだと思う」
君子「そう」
常子「真っすぐに生きても報われない事ばかり…
(早乙女の言葉…でも負けないで下さい)
私が会社をクビになった時
はなむけとして贈られたんですが受け止めきれなくて…
でも今ならあの言葉にうなずく事ができます…ようやく」
君子「そう」
鞠子「私ね、こんな日が来ると思って
とと姉のために用意してたものがあるの」
常子「えっ、何?」
美子「私も」
常子「えっ、何何何?何?」
鞠子「私はこれ」と、手書きのノートを見せる
「新聞毎日見て求人広告控えてたの
こっちはタイピストでこっちはそれ以外」と、ページをめくる
「せっかくタイピストの技術があるんだから
それを生かせた方がいいかなあと思って」
常子「ありがとう、こんなにたくさん」
鞠子「いえいえ、よっちゃんは何?」
美子「あ…いや…」と、モノを隠すそぶり
鞠子「何尻込みしてるのよ」
常子「ん?」
前に出た美子が「はい」と、常子に紙包みを手渡す
常子が開けてみると中身は求人広告の切り抜きだ
美子「まり姉ちゃんと全く一緒…
私も求人広告切り抜いてきた」
家族で可笑しそうに笑う
常子「ありがとう、よっちゃん」
君子「姉妹そろって考える事は同じね」
鞠子「もう~まねしたでしょ」
美子「違うよ!」

<翌日から常子の仕事探しは始まりました>

面接を受ける常子「和文タイプの経験は3年6か月です」
担当者「今は英文しかいらないよ」

別の会社の面接を受ける常子「タイプだけでなく書類の整理も…」
担当者「必要ないね」

また別の…常子「え~っと…」
担当者「不採用!」
常子「え?」

<タイピストの枠は埋まっていたり
経営状況の悪化で雇い入れをやめていたりと
常子を雇う会社は見つかりません
常子はこだわるのをやめ
タイピスト以外の職種にも手を延ばすのですが…
それでも厳しい答えしか返ってきませんでした
戦争が長引いたため以前と比べ女性の就職は
厳しい状況だったのです
とうとう鞠子と美子が探してくれた会社も最後の1か所>

面接を受ける常子「雇って下さるんですか?」
担当者「事務仕事だけどねえ…」と、立ち上がり部屋のドアを閉め
「明日からでも入ってくれる?」
常子「よかった…もうこちらに断られたらどうしようかと…」
担当者が常子の後ろに回り「で、雇う代わりと言ってはなんだけど…」
常子「はい…」
担当者「給金は月11円ね」と、席に戻る
常子「11円?」
担当者「うん」
常子「えっ、ちょっと待って下さい、求人には確か月30円と」
担当者「本当の給金書いたら誰も応募してこないでしょお」
常子「月11円じゃ家族4人暮らしていけません」
担当者「嫌ならいいんだよ
けど何もないよりマシじゃないかなあ?」
常子「考えさせて下さい…」

部屋のちゃぶ台に突っ伏した常子「11円…ん~…」
と、自分が立てた3つの目標に目をやり「ん~…」と畳にだれる
「う~ん…」と考え込んでから何かを思いだしたように座り直し
傍らの新聞包みを台に置く
包みを開く常子「最後の一個か…」
と、包装紙を開いてキャラメルを口に放り込む
笑顔になる常子「フフフ…」と台にもたれていると
新聞包みの求人広告が目に留まる
「事務員急募 男女問はず 月二十五圓 住所… 甲東出版」
慌てて立ち上がり新聞紙を持ったまま家を飛び出す常子

求人広告の住所を見ながら道を走る

レンガ造りの建物の前で立ち止まる常子「ここか…」
「甲東出版」の看板が見える「出版…」

扉を開き中に入る常子「ごめんくださ~い」
扉を閉めて「あの~すみません」
返事はない
と、すごい勢いで外から扉を開けて男(五反田・及川光博)が入ってくる
机の書類を手に取る男「あった…やはりここだったか、あ~あ」
常子「あの…」
男「うおおおっ!」と驚いてから常子を見て
「あっ…もしかして君、求人見て来た?」
常子「はい」
男「ちょうどいい、ついてきて」

奥の倉庫のような部屋
本のページを探し出した男「この項、検閲で削除が出たんだ」
と常子に見せ「ここを全部切り取ってこの紙を挟み込んでくれ」
と一枚の紙を見せる
常子「えっ?これ全部ですか?」
目の前には山のように本が積まれている
男「よ~し、やるぞ~…急な話で困ってたんだよ」
常子「あの…私は…」と求人広告を見せる
壁の時計を見ていた男「4時までにやらなきゃいけないんだ」
(時刻は1時30分)「早くしよう」
常子「…分かりました」

本のページに定規を当てて破り取る男と常子
そこに紙を挟み込む

壁の時計は3時47分
男「おい、そっちはどうだい」
常子「あ~あと20部ほどで終わります」
時計を見る男「うん、なんとか時間に間に合ったな
君のおかげで助かったよ」
常子「はい、お役に立ててよかったです」
常子を見る男「あれ?」
常子「何でしょう?」
「あれ~?」と眼鏡に手をやり机を回って常子に近づく男
「慌てていて気付かなかったけれど
君、よく見るとかわいらしい顔をしているな」
常子「はっ?」
男「言われるだろ?」
常子「いえ全然」
男「ふ~ん…君の周りにいた男は見る目がないんだねえ
こんなにもすてきな女性を見逃すなんてさ」
「フフフフ」と、含み笑いのような常子
恰幅のいい男(谷・山口智充)が部屋に入ってくる
谷「五反田!そういうのは終わってからにしろ」
五反田「しゃ…社長」
谷「聞いたぞ、削除が出たって
女なんか口説いてたら間に合わんだろうが」
五反田「ご安心下さい、この子のおかげでなんとか」
谷「ああ…手伝って頂いてたんですか
てっきり五反田が連れ込んだ女かと…これは申し訳ない」と頭を下げ
(五反田に)「で、どちらのお嬢さんだ?」
五反田「あっ、そういえば君名前は?」
谷「何だお前、名前も聞かずに手伝わせてたのかよ」
常子「あ…小橋常子と申します」
谷「社長兼編集長の谷です」
五反田「僕は五反田一郎です…
彼女、うちの求人広告を見て来てくれたんですよ」
谷「そうかい!」
常子「出版のお仕事は初心者なんですが
一生懸命頑張りますので雇って頂けないでしょうか?」と、頭を下げる
谷「あっ…上げて、上げて上げて!
お願いしたいのはこっちの方なんだから」
常子「えっ?」
谷「求人広告見て何人か来てくれたんだけど
みんなすぐ辞めちゃってねえ困ってたんだよ」
常子「あっ…じゃああの…雇って頂けるんですか?」
谷「もちろん」
常子「おぉ~」と、満面の笑みで机を叩き「あ…あのあのあの…」
と慌てたように新聞紙を手に取り机に広げ
「お給金ってこの求人に書いてたとおりですか?」
五反田「当然でしょ」
常子「よかった…」
谷「ただうちは人使いが荒いから覚悟してね」
常子「はい、一生懸命切り取ります!」
苦笑する谷「あ…それは困るんだなあ
なるべく検閲で削除なんか出したくないんだから」
常子「あ…ああ…そうか」
(一同笑う)
五反田「おっ、いかんいかん」と作業に戻る
谷「じゃあよろしく」
常子「お願いします」

<これが戦後常子の一生の仕事となる出版との出会いでした>

はつらつと作業に戻る常子

(つづく)

隈井を泣かせようとするシーン
珍しく君子がコントに乗っかってたね
ここのところ落ち込んでいた常子を心配するカットが多かった君子は
「ねえ~」と振ってくる常子が元気になってきてるのが嬉しくて
柄にもなく乗っちゃったのかなw

早乙女の最後の言葉にネガティブで返したのは気になってたんだけど
復調した常子を描くときのためにあれはあったのかもね

30円で募集しといて11円はないわあ~
なんかドアを閉めて常子の背後に回るから
セクハラみたいな事するのかと思ってたら…

鞠子と美子の集めた広告は全滅だったのに
坂田のくれたキャラメルを包んだ新聞紙に当たりがあるとは…
あのキャラメルはきっと妹たちや富江にでもあげたんだろうと
想像していたんだけど少なくとも一個は残していたんだねw

五反田はいかにもミッチーがやりそうな役だ
常子を口説くようなそぶりだったけど
常子は軽く受け流しているように見えた
清に初めて会った時に「かわいい」と言われた時に比べたら
常子も随分と大人になったもんだなあと思った


2016年6月17日金曜日

とと姉ちゃん(65)富江と長谷川の祝言~森田屋との別れ

金屏風の前の富江(川栄李奈)と長谷川(浜野謙太) 
美子(杉咲花)が盃を持つ富江にお神酒を注ぐ  
鞠子(相楽樹)「富江ちゃんきれい」 
常子(高畑充希)と君子(木村多江)が笑顔でうなずく 
長谷川「俺は幸せもんだ…」 
富江が長谷川を見て微笑む 

<深川を去る事になった森田屋最後の大仕事
富江と長谷川の祝言が始まりました>

森田家長谷川家の写真撮影(長谷川の両親と思われる男女もいる)

タイトル、主題歌イン

厨房で割烹着を着て大豆を煎る照代(平岩紙)
「私がやります照代さん」と、常子が声をかける
照代「いいの、常子ちゃんはみんなと楽しんでて」
常子「いや照代さんこそゆっくりして下さい
花嫁さんのお母さんなんですから」
照れたように笑う照代「常子ちゃんみたいに外で働いている人には
分からないでしょうけど四六時中家で家事をしているとねぇ
寝ている時以外は手や体を動かさないと落ち着かないのよ
…あっ、嫌みで言ってるんじゃないのよ
それが、当たり前の事だから」
常子「でも…私も落ち着かないです」
口に手を当てて笑う照代「フフッ、じゃあお酒運んでくれる?」

酔って頬の赤い隈井(片岡鶴太郎)が唄う♬「高砂や~」

富江「そういえば鞠ちゃん、木戸さんとはどうだったの?」
鞠子「どうって?」
美子「まり姉…」
鞠子「美子はどうなのよ」

酔った男(根本)「君子さんはいい人いないんですかい?ねえ」
と、君子の肩に手を置く
隈井が根本の頭を扇子で叩く「コラ!いいかげんにしとけや
お前君子お嬢様になんて事言ってんだバカ野郎お前
お前はな不潔なんだよバカ野郎」
君子は笑っている

お銚子を持って滝子(大地真央)の隣に座るまつ(秋野暢子)
「一杯どうだい?」
滝子「それじゃあ遠慮なく」
酒を注ぐまつ「あんた幸せもんだねえ…あんないい子たち孫に持って」
滝子「あんただって幸せだよ
孫だけじゃなく今度はひ孫までできるんだから」
まつ「フフフ…」
滝子「せいぜい長生きする事だね」

隈井「おい花婿!ちょっとお前堅い話でもしてみろお前!」
清(大野拓朗)「こうやってせっかく祝ってやってんだから
ひと言ぐらいみんなに挨拶しろぉ!」
長谷川「分かりました」
「よっ大統領!」
「面白い事言えよ!」
「待ってました~!」
「頑張れ頑張れ!」
酔っているのか緊張しているのか立ち上がると足がふらつく長谷川
呼吸も荒い
「僭越ながらご挨拶を、え~…
お…お礼代わりと言っちゃなんですが
あっしから皆さんにこんな言葉をお贈りしたい…たいと思いました…
と思います…」
「頑張れ頑張れ!」
長谷川「人生は柳のようにあれ…」
隈井「どじょうでもいるのか?バカ野郎」
長谷川「…長い人生の中、嵐が起こり強い風が吹きすさぶ
そんな状況が来ても柳のようにしなやかに耐え抜けば
やがて青く晴れ渡る青空が戻ってくるって…そういう事です」
長谷川の話に何かを感じたのか少し口の開く常子
隈井「やればできるじゃねえか!」
拍手する一同
緊張して疲れたのかホッとした笑顔で座り込んだ長谷川の手を富江が握る
長谷川も手を重ねる
「おっ!」
「いいねえ!」
「おいおいおいおい!コラコラコラ!手なんか握り合うんじゃねえよ!」
と、2人に突進する宗吉(ピエール瀧)を皆が止める
富江「やめてよ父ちゃん、夫婦が手を握り合って何が悪いのよ!」
長谷川「富江、言い過ぎだよ富江」
皆に押さえつけられた宗吉の顔が歪む「富江って呼ぶな!」

富江の前に座る3姉妹
常子「富江ちゃんもいよいよ今日から奥さんか」
鞠子「お母さんにもなるんだね」
美子「まだ信じられないなあ」
富江「私だって…」
常子「不安とかある?」
富江「母ちゃん見てると自分もあんなふうになれるのかなあって…」
美子「照代さん?」
富江「うん…家族の誰よりも早く起きて
家の事も店の事も子育ても全部やって
夜は誰よりも遅くに寝てずっとずっと働きづめで…」
鞠子「会社勤めの人もお店やってる人もみんなお休みがあるけど
照代さんにはお休みがないんだもんね」
富江「でもね、私やってみたいの
長谷川さんやおなかの赤ちゃんのためにも
母ちゃんみたいな奥さんになりたいしお母さんになりたい」と、笑う
たまらないっ…といった笑顔で常子
「ん~長谷川さんは幸せ者だなあ!富江ちゃんにそこまで言わせるなんて」
美子「そもそも何で長谷川さんの事を好きになったの?」
鞠子「私も知りたい、答えが出せない問題なんてなかったけど
この件だけはどれだけ考えても分からないの」
失笑する常子
富江も笑っている「ひどい事言わないでよ、きっかけは鞠ちゃんの制服かな」
鞠子「えっ?」
富江「私が制服借りた日あったでしょ?」
鞠子「うん」

(富江の回想)
厨房でぬか床をさわる富江
長谷川「富江さん」
富江「はい」
照れながら長谷川「…制服…鞠子ちゃんより似合ってた」
恥ずかしそうな笑顔の富江

富江「私…それが妙にうれしくて
自分をちゃんと見てくれてる人がいるって
それ以来意識するようになって」
うなずく3姉妹
鞠子「あぁあぁそうですか」
富江「あらおかんむり?」と、笑う
鞠子「私が似合ってないおかげでのご結婚おめでとう」
鞠子を見て常子「おかんむり?」
鞠子「別に」

<少しずつ常子は仕事を失ったつらさから立ち直りつつありました>

笑顔で話す常子を後ろから見ている君子

<雲一つない秋晴れのその日
森田屋は引っ越しを迎えました>

重い机を運ぶ3姉妹

荷物が運び出されがらんとした厨房に入る常子「準備ができました」
寂しそうに佇むまつ「あぁ…」
と、かまちに腰を下ろし「何にも無くなっちまったこの家見てたら
本当にここで暮らしてたのかなあって思っちまって…
ここでずっと弁当作り続けたかったなあ…
毎日毎日ごはん炊いて魚焼いて盛りつけして
そんな当たり前の暮らししたかっただけなのに…
何言ってんだ…私」と、涙を拭いながら
「やだやだ、柄にもなく感傷にふけっちゃって
こんなぼろ家の思い入れなんか語るだなんてね」
宗吉が静かにやって来てまつの隣に腰を下ろす
「…母ちゃん…すまなかったな」
宗吉に優しく微笑むまつ「うん…」
宗吉が立ち上がって部屋を出る
まつを見る常子「時々様子見に来ます…
大家さんに頼んでお掃除とかお手入れとかさせてもらいます
皆さんが戻ってくるまで」
まつ「ありがたい話だけど結構さ
今度東京に帰ってくる時はもっといいうちに暮らすから」と、笑う
常子「フフッ」
まつ「さあ…行くか」

玄関の表札をはずすまつ
出立する森田屋を見送る小橋一家
と、滝子が駆けつける
まつ「あらまあ、わざわざ見送りお暇ですこと」
滝子「いやぁ、仕事で通りかかっただけですの
それよりお怪我のほうは平気ですの?」
まつ「怪我?」
滝子「ええ、おでこに何やら深い傷が…」
額のあたりを押さえるまつ
滝子「あっ、皴か」
笑いをこらえる常子
まつ「雪が積もって大変でしたねえ」
滝子「雪?」
まつ「頭の上が真っ白…あ~白髪か」
一同から笑いが起こりまつと滝子も笑っている
君子「皆さん、本当にお世話になりました」
富江「生まれたらお知らせするね」
「うん」とうなずいた常子が
「元気に生まれてくるんだぞ」と、富江の腹を押さえる
まつ「私らいつか必ず自分らの暮らしを取り戻す
だからあんたも強く生きるんだよ
いいね?とと姉ちゃん!」
笑顔でうなずく常子「はい」
後ろで空を見上げている宗吉「オラ~しめっぽい挨拶は終わったか?
別れの挨拶なんてのはなチャッチャと済ましゃいいんだよ
じゃあな!またいつか会おうぜ!」と、常子たちに手を上げる
常子「はい、いつか必ず」
振り向いて歩き始める宗吉
照代「あ~ちょっと!」
まつ「勝手に行くんじゃないよ!」
まつが頭を下げる
常子たちも頭を下げる
まつ「さあ、行こう」と、歩き出す森田屋の面々

<家族のように過ごしてきた森田屋の人々と別れ
常子は再出発の時を迎えました>

晴れやかな笑顔で見送る常子

(つづく)

酒癖が悪いのは隈井だけじゃなくて清もなんだね
「せっかく祝ってやってんだから」って暴言だろw
しかし長谷川がいい挨拶をしてそれに応えた
仕事を失って人生の岐路に立つ常子の心にも響いたみたいだ

隈井と清だけじゃなくて鞠子も失礼だった
長谷川を好きになった理由を難問扱いにするなんてw
でもその理由が長谷川の言葉「鞠ちゃんより似合ってた」
だったという見事な返し技をくらっておかんむりだったね

まつの「ありがたい話だけど結構~もっといいうちに暮らすから」は
いかにも江戸っ子って感じでいいセリフだった

最後にまつと滝子の嫌みの応酬と
宗吉の「チャッチャと」が聞けて良かった
これはファンサービスなんだろうか
次回から森田屋の面々がいないと思うと寂しい気もするが
森田屋の皆さんお疲れさまでした…って…
宗吉と常子が「またいつか…必ず」と言っていたから
どこかで少しくらいは再登場もあるのかな?

2016年6月16日木曜日

とと姉ちゃん(64)森田屋最後の大仕事

富江(川栄李奈)のお腹の子の父親が長谷川(浜野謙太)だと知り
激高する宗吉(ピエール瀧)「て~めえ、ぶち殺す」 
逃げ回る長谷川を捕まえた宗吉がスタンディングのスリーパーホールド 
一同が宗吉を止めようとする 
長谷川「堪忍してつかあさい!」 
宗吉「てめえの首引っこ抜いて…」 

タイトル、主題歌イン 

宗吉「…三枚におろしてやる~!」
と、富江が鍋の底をしゃもじで叩いて
「父ちゃんこの人の話も聞いてあげて!」 
常子(高畑充希)「落ち着いて下さい大将」
少し冷静になる宗吉「いつからだ!いつから富江と!」
長谷川「あっ…え…あ…」
富江「もうすぐ1年」
美子(杉咲花)「そんなに前から?」
鞠子(相楽樹)「気付かなかった」
宗吉が照代(平岩紙)を見る「おめえはいつ知った?」
照代「私も知ったのは先週です…富江の具合がおかしいから…」
富江「父ちゃんお願い、おなかの子のためにも認めて下さい!」
と、頭を下げる
長谷川「あっしからもお願えしやす、どうか結婚さして下せえ!」
と、頭を下げ「お…お父さん」
その言葉で再び激高する宗吉
「て~めえにお父さんなんて言われたかないんだ!オラ!」
と、長谷川を追い回し「うるせえ~!」と叫ぶ
まつ(秋野暢子)「もういい加減にしなさい!
お前もそうだったじゃないか!」
長谷川「そうなんですか?」
(小橋一家も)「えっ?」
急におとなしくなり精気が抜けたような顔の宗吉
場が落ち着いたので話を本筋に戻す照代
「お母さん、つまりはこういう事情もあるんです
富江と赤ちゃんのために高崎で暮らした方がいいと思うんです
お願いします、どうか了承して下さい!」と、頭を下げる
富江と長谷川も並んで頭を下げている
背中を向けたままのまつ「一晩…考えさせてもらうよ
頭がおかしくなっちまう…」と、疲れたように奥へと向かう

<そして翌朝…>

朝食の席
君子(木村多江)「まつさん、どうですかね?」
照代「一晩じゃ結論は出ないかもしれないわ
でも承諾して頂くまで何度でもお願いするつもりです」
「おはようさん」と、まつが姿を見せる
(一同)「おはようございます」
まつ「朝飯前に…片づけちまおうかね」と、席に座り
「江戸っ子にとっちゃこの年で上州のからっ風に吹かれるのは酷だよ」
宗吉「母ちゃん…」
まつ「だけどね、背に腹は代えられない
何より身重の富江に腹いっぱい食わして滋養つけてやりたいしね…
かわいいひ孫のためにからっ風だって何だって耐え忍んでやるよ」
宗吉「えっ…じゃあ…」
まつ「ああ、行こうじゃないか高崎に」
ほっとしたような宗吉たち
小橋一家も安心したような表情だ
まつ(照代に)「あんたが店や富江の事を思って真剣に考えた提案だ
私も乗らせてもらうよ」
照代「ありがとうございます」と、頭を下げる
富江も畳に手をつく「ばあちゃん、ありがとうございます!」
まつ(宗吉に)「だからほれあんたも、2人の結婚認めてやんなさい!」
宗吉「ああ…」と、仕方ないというようにうなずく
一同に笑いが漏れる
長谷川「本当ですか?」
富江「ありがとう」
美子「よかったね」
富江「うん…元気な子産まなきゃ」
鞠子「そうだ!お二人の祝言あげませんか?」
富江「祝言?」
鞠子「森田屋の皆さんの門出をお祝いするためにも」
長谷川「そりゃうれしいけどさぁ…でもなあ…」
宗吉「ろくな材料が手に入んねえんだぞ
それにこんなご時世だ、ぜいたくはできねえ」
鞠子「けど、やらないのもさみしいじゃないですか」
宗吉「そりゃそうだけどよ…」
美子「私もやりたい」
君子「お手伝いさせて下さい」
照代がまつを見る「お母さん」
まつ「…森田屋最後の大仕事だ
みんな、しっかりやるんだよ」
(一同)「はい!」

森田屋の表、「都合により本日休業」の貼り紙

張り切る宗吉の声とワクワクしているような鞠子と美子

お部屋でひとり、机に立てた目標に目をやる常子
2階に来た君子がそんな常子を見る
「常子、どうしたの?お仕事の事?」
常子「はい」
君子「焦らなくても祝言とお引っ越しが済んで
落ち着いてからでもいいんじゃない?」
常子「…不安なんです…私が女学校を出た時とは
世間の風向きも違いますし本当に見つかるのかなあって」
君子「探す前から怖がってたら何も始まらないじゃない
それに今日は仕事の事は一旦忘れてしっかりお祝いしてあげなきゃ
森田屋の皆さんと一緒に過ごすのもあと僅かなのよ」
常子「はい」と、うなずく

<厳しい食糧事情の中、祝言の準備は進められました>

厨房
宗吉「あとは卵焼きなんだがなあ
さすがにこれだけじゃなあ…」と、鉢の中の5つほどの卵を見る
常子「仕方ないですよ、量は増やせませんからねぇ」
宗吉「うん…」
常子「どうしたもんじゃろのぉ…」
そこへ「フッフッフッフッ」と現れたまつが山芋を見せて「任しとき」
すった山芋に卵を合わせて焼く
まつ「こうすればかさも増えるし仕上がりもふっくらする」

着々と料理の準備が進む厨房に美子がやって来る
「お待たせしました」
常子「あっ、出来た?」
まつ「出来たって?」
常子が包みを開く(中は花嫁衣裳)
まつ「ありゃ~!」
宗吉「こりゃすげえな!」
美子「小谷さんのとこからお借りして
富江ちゃんの寸法に合わせて裄だけ直したんです」
宗吉「ほう~美子が?」
美子「はい」
まつ「こんな立派なもんを…用意してもらってありがとう…ありがとう…」
宗吉「よし、じゃああとは最後の仕上げだな…
鯛の尾頭付きが手に入らなかったからなぁ、代わりの魚で代用だ」
と、皆に魚を見せてさばこうとするがそこへ長谷川が現れる
「そいつはあっしにやらせてもらえませんか?」
宗吉「…駄目だ」
まつ「宗吉」
宗吉「俺はおめえの事をまだ一人前とは認めちゃいねえ」
長谷川「分かってます…だからやらせてほしいんです
高崎に行くからには今までどおりって訳にはいきません
大将が用意して下すったその魚フッコでしょ?
フッコは将来スズキになる出世魚で縁起がいい
あっしもいつまでも半人前のままじゃなく
必ず一人前になって家族を守りやす!
大将の気持ちしかと受け止めました
だからお願えしやす!あっしにやらして下せえ!」
宗吉が包丁を置く
「今まで教えた事ができなかったらぶん殴るからな」
嬉しそうな長谷川「はい!」
一同が見守る中、包丁を手にして魚をさばく

控室
花嫁衣裳を着た富江の口に照代が紅を入れている
常子が部屋の外に来て声をかける
「何かお手伝いできる事ありますか?」
照代「大丈夫よ、着付けはもう終わったから見てあげて」
「失礼します」と、襖を開けて富江を見る常子「きれい…」
常子に見せるように立ち上がっている富江も笑顔だ
照代「おなか苦しくない?締め過ぎてたら言ってちょうだい」
と、照代に振り返りその場に座る富江
照代「富江?」
富江「母ちゃん…ありがとう」
照代「フフフ…何よ急に改まって」
富江「だって母ちゃんがいなかったら長谷川さんと一緒になる事だって…」

(富江の回想1)
富江と長谷川の2人を前に照代
「何にも心配いらないよ、私がなんとかするからね…
あなたたちは今までどおりにするんだよ」

(富江の回想2)
夜、階段を下りてきた富江が厨房にいる宗吉と照代の会話を聞く
照代「長谷川さんのどこが気に入らないんですか?」
宗吉「おめえは富江を長谷川に持っていかれてもいいのか?」
照代「当たり前じゃないですか、富江が選んだ人なんですから」

照代「母親が子どものために何かするのは当たり前の事よ
あなたもその子が生まれたら同じ事をするわ」

<こうして宗吉、照代の思いを受けて富江と長谷川の祝言が始まります>

照代と富江を見て和んだような笑顔でうなずく常子

(つづく)

今回はほぼ全編森田屋劇場だった
まつの「お前もそうだったじゃないか!」で急に動きが止まる宗吉w
照代もちょっとバツが悪そうだった
「お前もそう」とはつまり、でき婚で親への報告も後という事なのだろう

仕事が見つかるか不安でまだ本調子ではない常子だけど
久しぶりに「どうしたもんじゃろのぉ~」が出た
最近シリアス展開が続いていたからなのだが
これも常子復調の兆しかもしれない

富江の回想1のシーン
秘密を打ち明けられた照代が
(これは…お母さんを説得するのに利用できるかもしれない…)
と思ったのではないかと、ちょっとブラックな想像をしてしまったw

2016年6月15日水曜日

とと姉ちゃん(63)失業する常子と高崎移転を決める森田屋

浄書室 
机のタイプライターに布カバーをかけた常子(高畑充希)が前に出る 
同僚たちに一礼する常子「お世話になりました」 
立ち上がり一礼を返す早乙女(真野恵里菜)「ご苦労さまでした」 
常子「早乙女さんのおかげでここまでやってくる事ができました」 
早乙女「このご時世、まっすぐに生きていても報われない事ばかりだと思うの
でも負けないで下さい…決して」 
常子「今の私はその言葉を受け止める事ができません…失礼します」
と、礼をして部屋を出る 

廊下で給仕の坂田(斉藤暁)が声をかける「聞いたよ」
と、常子に新聞紙の包みを手渡す 
開けてみるとキャラメルの粒が20程あるだろうか 
坂田「ありったけのキャラメル集めたんだ」 
ほんの少し微笑む常子「いつもありがとうございました」
と、頭を下げて振り向き廊下の先を歩いていき角を曲がる…

タイトル、主題歌イン 

お寺で気持ちを落ち着けるように木の壁にもたれている常子
鐘の音が聞こえる
「よし…」と呟いた常子が歩きはじめる

森田屋厨房
うなだれるように腰かけている宗吉(ピエール瀧)
「はぁ~分かった…俺が話す」
照代(平岩紙)「あなた…」
宗吉「もうそれしかねえだろ」
うなずく照代
と、戸が開く音がして「ただいま帰りました~!」と常子が戻ってくる
驚いたような照代「お帰りなさい」
宗吉「お~お帰り」
照代「今日は早いのね」
常子(明るく可笑しそうに)「はい、会社クビになっちゃったんで」
(2人)「えっ!?」

居間での夕食
大きく開けた口にナスの煮物を入れる常子
小橋一家は箸を止めて常子を見ている
まつ(秋野暢子)「ひっどい話だねえ、そんな理由で…」
常子「考え方によっちゃよかったんです
これ以上悪くなりようがありませんから、フフッ」と笑う
しかし一同は沈んだ面持ちで食事が進まないようだ
常子「もう!皆さん暗くならないで下さい
必ず、次の働き口見つけてみせます」
美子(杉咲花)「無理しないでよとと姉ちゃん」
常子「うん?」
美子「とと姉ちゃんが一番つらいはずだもん
無理して振る舞わなくたって…」
常子「ううん、そんな事ないよ、意外にへっちゃらでさ、フフッ」
美子「私働く、学校やめて」
常子「うん?」
鞠子(相楽樹)「私も」
常子から笑顔が消える「それだけはやめて
それじゃあ何のためにここまで…」
笑顔に戻る常子「お願い、うん?」
と、大きく口を開けて一人おいしそうに食事に戻る

<常子が会社を辞めてから10日がたちました>

常子が青柳商店に滝子(大地真央)を訪ねると
陸軍に呼び出されて不在だという
そこにちょうど戻ってきた滝子が倒れ込んでしまう

布団に寝かされた滝子
その横に座る常子、清(大野拓朗)、隈井(片岡鶴太郎)
隈井「陸軍からの通達って…何かあったんですか?」
滝子「お国のために死んでくれとさ…
支那との戦争が長引いたせいで大陸では軍用資材として使われる木材が
慢性的に不足してるらしくてね
統制価格の半額で木材を供出するよう強制されたよ」
清「半額!?」
隈井「メチャクチャな…」
常子「おばあ様たちはそれを承諾されたんですか?」
滝子「軍に逆らう事ができるかい?…
そうだこうしちゃいられない…商店会の寄り合いが」
と、布団に起き上がる
皆が止めるが「いいや、深川で商いする者たちの寄り合いだよ
私が行かないでどうするんだい!」

寄り合いの席
商店主たちに混ざって常子も座っている
宗吉「えっ?あの女将さんが心労で?」
常子「ええ、心配でついてきてしまいました」
まつ「私だっていつ卒倒するか分かりゃしないよ」
宗吉「母ちゃん…」
滝子「え~幹事月なので今日は青柳が仕切らせてもらいます」
清「はい…問題は多々ございますが
こうして深川で商いをやっているのも何かの縁
この厳しいご時世の中皆さんで助け合って…」
と、出席者から陸軍の通達には対応できないので
商売替えするとの申し出がある
そんな事をするとあちこち飛び火して深川全体が沈むという声
場は言い合う声で混乱するが
材木商の飯田が店を畳むと報告する
まつ「ご冗談を末五郎さん
この界隈一の老舗がそんな弱気でどうするんですか」
飯田「冗談であってほしいのはわしもだよ、だがこのご時勢では…」
まつ「うちの最後の五八様なんですよ!」
宗吉がまつを止める「母ちゃん」
飯田「まつさん、あんたんとこにゃ世話になったが
これで終わりにさせてもらうよ、本当にすまねえ」
照代が宗吉に促す「あなた、あの話…」
宗吉「えっ?…いや…とてもじゃねえが今は…」
滝子「他に商売替えを考えている者は?…いないかい…それじゃあ…」
照代「待って下さい!…うちも店を畳もうと思っております」
常子「えっ?」
目を見開いて驚くまつ「えっ?…な…何だって?」
照代「森田屋はこの深川から高崎に移転するつもりです」

森田屋厨房
まつ「こんな話があるかい!」
照代「お母さん!」
君子(木村多江)「何があったの?」
常子「寄り合いで森田屋が高崎に移転すると照代さんがおっしゃって…」
君子「えっ…本当なんですか?」
照代「突然でごめんなさい…それしかもう私たちには…」
まつ「勝手な事言うんじゃないよ!」
照代「お母さん、聞いて下さい!」
まつ「誰がお前の話なんか聞くもんか…私の承諾なしに勝手に…」
照代「お母さんは反対なさると思っていました
だから強引でもこうするしか…」
まつ「私は認めないよ!」と照代を押しのけて宗吉に詰め寄る
「照代に何吹き込まれたか分かんないけど…目覚ましとくれよ
お前は母ちゃんの気持ち分かってくれるよな?」
宗吉「俺は照代に賛成だ」
まつ「宗吉…」
宗吉「もとより母ちゃんに言わねえで
寄り合いで言いだそうって決めたのも俺だ
本当は俺が話すつもりだったんだが土壇場で意気地なくしちまって…
見かねた照代が代わりに…」
まつが宗吉の頬を3回平手で張る
「この親不孝もん!不孝もん!不孝もん!」
後ろを振り向くまつ「富江…長谷川…あんたらも知ってたのか?」
富江(川栄李奈)「うん…」
長谷川(浜野謙太)「昨日大将から…」
泣き出すまつ「あ~やだやだぁ~!長生きはしたくないもんだ…
この年になって一族郎党に裏切られるなんて…
あぁ~思いもしなかったよ~!」
照代「お母さんお願いします!ここの家賃すら払えないんですよ
続けていくのはもう無理なんです!
高崎のある群馬は今、軍需産業で景気がいいんです
働き盛りの人が大勢いてあっちなら弁当を買ってくれる人も多いし
大口の注文だって増えるはずです」
宗吉「はら、章男さん…照代の兄貴の
あの人向こうで洋食屋開いて大当たりしてるのさ
その店手伝ってほしいって俺たちに
時流が変わりゃまた東京でやれる日も戻ってくらぁな
それまで一旦高崎に引っ込もうや」
照代(小橋一家に)「皆さんも相談もなしにごめんなさいね」
常子「いえ…」
君子「うちはごやっかいになっている身ですから」
宗吉「…悪いな」
鞠子「でも私たちはどこへ行けば…」
照代「それなんだけどこれから手を尽くして空き家を…」
君子「いいえ、おばあ様のところにごやっかいになりましょう」
常子「私たちの事は心配なさらないで下さい」
照代「ありがとう」
宗吉「すまねえ」
まつ「移転が決まったみたいな事言うんじゃないよ
はぁ~驚いた、あたしゃ行くなんて言ってないのに」
宗吉「母ちゃん!いい加減へそ曲げるのやめろよ!」
まつ「あ~今の言葉でもっともっとへそが曲がったね!
どうしても高崎行きたいんだったら私殺してから行きな!」
照代「お母さんお願いします!
どうしても今行くべきだと思うんです!」
まつ「高崎が景気がいいだのこの森田屋には関係ないよ!
高崎の た の字も聞くのは嫌だ!嫌だ!」
照代「今…照代のお腹には赤ちゃんがいるんです」
まつが振り向いて照代を見る
宗吉も「?」と照代を見る
小橋一家が富江を見る「えっ?」
宗吉「おい、今何つった?」
照代「みごもってるんですよ富江」
まつ「えっ…」
常子「本当なの?」
難しそうな顔でうなずく富江「はい」
宗吉「そんなの聞いてねえぞ!相手はどこのどいつだ!え?」
困った顔の富江
長谷川が突然「すいやせん大将~!」と、頭を下げて調理帽子を取り
土下座をして「富江さんと結婚さして下せえ!」
混乱しているのか茫然としているような顔の宗吉
目をまるくして口が半分開き驚いた顔の常子

(つづく)

冒頭のシーン、多田の姿はなかった
不在だった理由はいろいろ想像できるけど(劇中で)
それよりも常子が去っていくあのシーンにはいないほうがいいという
演出的な判断のように思う
常子に励ましの言葉を贈る早乙女だけど
常子はネガティブで返したねw
キャラメルおじさんは最後までいい人だった

お寺で気持ちを切り替えて帰宅した常子の
「はい、会社クビになっちゃったんで」は何度観てもいい
予告で観た時はえらい軽いなあ~と思ってたんだけど
そうじゃなかったんだね
その後の夕食のシーンでも元気に振る舞ってた常子は
やっぱり前向きなとと姉ちゃんだ

照代の謎が解けたね
ここのところ不在だったのは高崎に行っていろいろ準備してたのだろう
前回の「いえ、私たちの家の事ですから」も
もしかしたら君子たちの事が邪魔なのかなあと思ってたんだけど
たぶんそうじゃなくて
森田屋と小橋一家は別々の道を歩かなくてはいけないという
照代の気持ちというよりはドラマの展開上の予告演出というか
レトリックみたいなものだったんじゃないかな?

それにしても森田屋さんは相変わらず人が良い
君子たちに何度も頭を下げて「これから手を尽くして空き家を…」
とまで言ってた
これはすごい考えすぎかもしれないけど
NHKって左寄りだってよく耳にするでしょ
労働者の権利はそれほど大切なのであ~る…と言いたいのかなあと
ちょっと思ったw

富江の妊娠
そうきたか…
長谷川が食事中とかに富江に関して変な事言う時に
富江が宗吉の様子を横目でそっと窺ってたのはこういう事だったんだね











2016年6月14日火曜日

とと姉ちゃん(62)お竜に救われる常子~多田の裏切り

2人の男に押さえつけられ絶対絶命の常子(高畑充希)だったが
派手な色の服を着た女(志田未来)が出てきて男たちをはねのける 
客たちがざわめく「お竜じゃねえか?」「お竜?」 
さらにお竜の仲間の若者2人も加勢する 
銀太「上等だぁ!」 
洋介「まとめて面倒見てやるよ!」 
店は大乱闘になる 
常子の手を引くお竜「大丈夫か?」 
常子「ありがとうございます…マフラー…私のマフラーがどこかに…」 
乱闘する男たちの足元にマフラーを見つけた常子が取りに向かう 
警官たちが駆けつけて来たのを見てお竜はその場を離れる 
男の誰かが「悪いのはあの女だ!」と叫ぶ 
警察官「お前が原因か?」と、常子を捕らえる 
常子「いや、私は何も」 
警察官「事情は署の方で聞く」 
常子「ちょっ…ちょっと待って下さい…待って…ちょっと…」
と、引っ張られていく 
ビアホールの床に残されたマフラー…

タイトル、主題歌イン

取調室の常子
上官「事情は分かった、帰ってよし
身なりもしっかりしているし嘘はないだろう」
警官に持ち物のカバンを返される常子「あ…あとマフラーが」
警官「マフラー?そんなものは知らん」
常子「あるはずです、お店で無くしてしまって」
上官「では見つかったら知らせる、勤め先を言え」
常子「銀座の鳥巣商事です」

警察署を出て夜道を帰る常子に誰かが声をかける
「お勤めご苦労さん」
見るとお竜だ、後ろには銀太と洋介もいる
常子「あなた…」
「これあんたのだろ?」と、お竜がマフラーを差し出す
駆け寄る常子「あっ…ありがとうございます」と受け取る
お竜「大事なものなのかい?」
常子「妹が編んでくれたんです」と、嬉しそうな常子
お竜「職業婦人なんて男に媚売って
お高くとまったやつらばかりだと思ってたけど
変わったのもいるんだね」と、3人は去っていく
マフラーを抱きしめる常子

再び夜道を歩き出した常子が足を止める「何か?」
後ろに銀太が後をつけてきている
「この辺りは暗いからお竜が大通りまで送れって」
振り向く常子「お竜?あ…さっきの方お竜さんっておっしゃるんですか?」
銀太「いいからとっとと歩いてくれよ」
歩きながら常子「どうして離れて歩くんですか?」
銀太「あんたみたいないいとこの子が
俺みたいなのと並んで歩いてたら何言われるか分かんねえだろ」
常子「別にいいとこの子じゃ…」
銀太「俺やお竜とは別世界の人さ…
あんたみたいに恵まれた人が羨ましいよ」

常子が帰宅するとまつ(秋野暢子)の怒鳴り声が奥から聞こえる
「この飲んだくれ!」
思わず「すいません」と謝る常子
中をのぞくとまつは宗吉(ピエール瀧)に言っていたようだ
「君子さんの給金も払えないっていうのに
有り金はたいて飲んでくるやつがあるか~!」
と、おたまを振り上げるまつを
君子(木村多江)と鞠子(相楽樹)と美子(杉咲花)が押さえ
宗吉を長谷川(浜野謙太)が止めている
酔った宗吉の大声に
具合が悪くて寝ていたらしい富江(川栄李奈)も起きてくる
まつ「もうよしなさ~い!」
宗吉「いいか~?魚も手に入らねえ
米の飯は店で出しちゃいけねえ!
あげく今日!ひいきの五八様も潰れちまった…チクショー!
…俺が何をしたっていうんだよ!
世間に顔向けできねえような事…
何一つしちゃいねえんだぜ…」と、座り込み嗚咽する
宗吉の泣き声を聞いている一同
戸が開き「遅くなりました~」と、照代(平岩紙)が戻ってくる
泣き崩れる宗吉と散らかった部屋を見て照代
「…あ~あ、割れちゃって…片づけないと」
君子「私も手伝います」
照代「いえ、私たちの家の事ですから」

お部屋の布団の中で横になる小橋一家
常子「照代さんの怖い笑顔…久々に見た気がする」
鞠子「まさか離縁とか考えてるんじゃ…」
美子「宗吉さんと?」
鞠子「出かけてたのも誰かに相談しに行ってたとか」
布団に身を起こす君子「詮索するのはやめなさい…
それより常子遅かったわね」
常子も体を起こす「あ…ごめんなさい
会社の方にビアホールに誘われて」
鞠子「ビアホール?」
美子「何かごちそう食べたの?」と、2人も起き上がる
常子「ううん、ビール1杯だけ…どうしても断れなくて
ごめんね私だけこんな時に」
君子「謝る事なんてないのよ、あなたが稼いだお金なんだから
それにおつきあいも大事ですよ
いつもお世話になっている方なんでしょ?」
常子「はい、とてもよくして下さる方です」
君子「そう」
常子「本当に私…恵まれてますね」

翌、出勤した常子に同僚たちがよそよそしい
常子「多田さん、何かあったの?」
多田(我妻三輪子)は常子の顔が見れない
常子「…多田さん?」
早乙女(真野恵里菜)が常子を呼びに来る

山岸(田口浩正)のデスク
早乙女「課長、小橋さんをお連れしました」
山岸「ああ」
常子「お呼びでしょうか?」
山岸「単刀直入に言うよ、君はクビだ」
常子「えっ?」
山岸「聞こえなかったのか?君はクビだと言っているんだ」
常子「えっ…なぜですか?どうして私が…」
山岸「警察沙汰を起こすような恥さらしな社員は
我が社には不必要だからだ」
常子「警察沙汰…」
山岸「今朝警察から連絡が入ったそうだ
昨夜の事件の事実関係の確認とやらで」
常子「あの…事件って何の事…」
山岸「とぼけるつもりか!
ビアホールで乱闘騒ぎを起こしたそうじゃないか」
常子「あ…その場にいたのは確かですが
私たちは言いがかりをつけられて…」
山岸「酔っ払った君が男性客に因縁をつけたと聞いているが」
常子「えっ?誰がそんなデマを…
あっ、多田さんなら事情を知っています、彼女に聞いてみて下さい」
山岸が笑いだす「その多田かをるが君から手を出したと言っているんだ
まあ、理由はどうあれ警察沙汰を起こした事には変わりない
荷物をまとめて出ていきなさい」
「そんな…」と、後ろの早乙女に振り向く常子
早乙女が目を伏せる
山岸に食い下がる常子「待って下さい、私がクビになったら
誰が家族を支えていけばいいんですか?
母はお給金を止められて妹たちの学費も稼がなきゃいけないんです!
私が稼がないと家族を養えないんです!
お願いします、どうかもう一度考え直して下さい!」
山岸「クビは決定した事なんだよ
君の家庭の事情が私なんかが知ったこっちゃない!」
常子「どうかもう一度考え直して下さい!」
山岸「会社中に君の不祥事はもう知れ渡ってんだ」
そして立ち上がり「ここに残る事はもう諦めなさい」
と、常子を押しのけてどこかへ行ってしまう
常子「待って下さい!待って下さい!」
早乙女が常子を止める「小橋さん」
常子「早乙女さん止めないで下さい!私は課長に話が…」
早乙女「何を言っても無駄です!」

廊下を歩く常子と早乙女
常子「納得できません」
早乙女「前にも話したでしょ?私たちの代わりはいくらでもいるの
今までどれだけ会社に尽くしてきたかなんて関係ない
女だというだけで軽く見られる」
2人の足が止まる
多田が現れ「小橋さん…小橋さん…ごめんなさい」
常子「…クビになりました…どうして?
どうして課長に嘘をついたんですか?」
多田「あなたと私どちらかが会社を辞めなければならなかったのよ」
常子「えっ?」

前回の備室の会話の続き
山岸「あの…和文タイピストでしたら2人おりますので
どちらかを切れば問題ないかと」

多田「重役の方の知り合いを入れるために1人クビにすると
課長が話しているのを聞いてしまって…
本当にあなたに悪いと思ってる
でも、あなたが私でも同じ事をしたと思うわ
私は辞める訳にはいかないの!
私のお給金がなかったら幼い妹や弟は食べる事すらできない!
あなたなら分かってくれるでしょ?ねっ」
と、常子の右手を両手で握る
目を伏せている常子「それは…しかたありませんね」
多田は常子の顔を覗き込んでいる
常子「…と言えるほど私は人間が出来ていません」
激しく瞬きをする多田が目を伏せ常子の手を離す
目を伏せたままの常子
「早乙女さんや多田さんに出会えてすごく幸せでした
私は周りの人に恵まれているなあって思ってました
なのに…私はこれからどうすればいいんですか…」
と、その場を離れる
動けない多田
早乙女が常子を追う
廊下の先で窓に顔を押し当てて泣いている常子
早乙女はかける言葉もなくうつむく
顔に手を当てて泣き続ける常子

(つづく)

お竜たちに助けられた常子だけど
銀太に「あんたみたいに恵まれた人が羨ましい」と言われる
銀太は生まれ育ちの事を言ったのだが
君子に会社の人の事を聞かれた常子は早乙女や多田を思い
「本当に私…恵まれてますね」
しかしラストで常子はその多田の裏切りを知る事になる

「それは…しかたありませんね」で
やっぱり常子は朝ドラヒロイン(^^♪と思って観てたら
「…と言えるほど私は人間ができていません」
あのいつも明るくて前向きで元気な常子が…
公式のインタビューだかで高畑が
「青春篇ではそれまで描かれなかった常子のネガティブな部分を…」
みたいな事を言ってたんだけど、このシーンの事なのかもしれないね
人間生きてれば人を憎んだり恨んだりする事もあるから…

照代はまた出かけていたけど何をしているのだろう?
もちろん森田屋の経営が苦しい事と何か関係があるのだろうが…
照代の「いえ、私たちの家の事ですから」はどう解釈すればいいのだろう?

帰宅した常子がまつの「この飲んだくれ!」に
「ごめんなさい」と謝るところ可愛かった

2016年6月13日月曜日

とと姉ちゃん(61)経営が苦しくなる森田屋~不良にからまれた常子は絶体絶命!?

昭和十五年十月 
洗面所で並んで歯磨きをする3姉妹 
君子(木村多江)が顔を出す
「美子、ハンケチ洗濯に出てないけどカバンの中じゃない?」 
美子(杉咲花)「おばあ様のとこに忘れてきたかも」 
鞠子(相楽樹)「また行ってたの?」 
美子「小僧さんに足袋繕ってって頼まれたから」 
鞠子「もうすぐ試験でしょ?毎日裁縫ばかりじゃ…ねえ?」 
常子(高畑充希)「うん?そんなにガミガミ言わなくても
よっちゃんだって分かってるわよ」と、歯を磨き終わり2階へ向かう 
鞠子「前だったら勉強しなさいって頭ごなしに怒ってたのに」 
美子「とと姉ちゃん大人になったんだね」 
鞠子「生意気言って」 
常子の姿を目で追っている君子 

2階のお部屋で仏壇の父に手を合わせる常子「行ってきます」 
そして立ち上がり机の上の3つの目標を見る 

タイトル、主題歌イン 

浄書室
タイプを終えた常子が隣の多田(我妻三輪子)を見る
「終わったのでお手伝いしましょうか?」
多田「手伝うもなにも原稿がないのよ」
常子「あっ…でもさっきこう手をこう…」
多田「ああ…何もしてないと眠くなっちゃうから練習してたの」
常子「あ~…最近めっきり仕事減りましたよね」
多田「相当苦しいってうわさよ
戦争のせいでアメリカへの輸出が禁止になったでしょ?」
常子「ええ」
多田「このままじゃこの中の誰かがクビを切られるかも…」
常子「やめて下さいよ」と笑う
多田「だってどう考えても真っ先にクビを切られるのは女からだわ」

<時代のせいでそれまでどおりにいかなくなっているのは
常子の会社だけではありません>

田畑乾物店前
宗吉(ピエール瀧)「5倍の値段じゃねえかよ!」
田畑「表のは全部売れちまったんだからしかたないだろ」
宗吉「何が売れちまっただよ
どうせ公定価格に回す方はちょっとにして
最初から高く売りつけようって魂胆だったんだろ!」
田畑「言っとくけどな、お上の決めた値段どおりやってたら
商売になんねえんだよ
このご時世5倍でも買うやつはいる
気に入らないんならほか当たってくれよ」
慌てる宗吉「そんな事言うやつじゃなかったじゃねえかよ、え?
ただでさえ材料が入ってこねえでうちはせっぱ詰まってんだよ
頼む…俺とお前の仲じゃねえか」
田畑「うちだってな、もうけがなけりゃ家族食わしていけねえんだ
根元んとこみてえに廃業しちまうんだ
このままじゃ明日は我が身だよ」

<日中戦争が長期化し食糧や生活に必要な物資が
全て軍事優先となったため庶民は欠乏していました
政府は経済統制のため価格等統制令を発布し
国が定めた価格以上での物資の販売を禁止します>

食堂で酒を注文する宗吉
店主「このご時世で昼間っから酒なんか出せる訳ねえだろ」
と、皿を置く
宗吉「何だよこれ?」
店主「うどん寿司だよ、米も出せねえし商売上がったりだ
あんたんとこでもどうよ」
宗吉「こんなもん出せる訳ねえだろ!」

<しかしどの業界も裏で闇価格での販売を行う者も少なくありませんでした
それは木材業界も同様で…>

青柳商店
滝子(大地真央)「お国に盾つこうってのかい!?」
清(大野拓朗)「お母さん声が大きいですよ誰かに聞かれでもしたら…」
滝子「人に知られてまずいような商売するんじゃないよ!」
清「ですからそれは産地で高い値で仕入れた材を国の…」
滝子「お縄にでもなったら200年守ってきた青柳の信用はガタ落ちさ!」
隈井(片岡鶴太郎)「…女将さん…生意気申しますが
清さんは間違っちゃいねえと思います
今年に入って3人も兵隊にとられうちもかなり混乱しています
おっしゃっている事も重々分かりますが…」
滝子「青柳の看板を背負ってるのは私だよ…
私に従ってもらう」
店の者が部屋に来る「女将さん、組合長の小谷さんがお呼びです」
滝子「後にしておくれ」
「いや、どうやら陸軍からの通達があるようでして」
滝子の表情が変わる

帰宅した常子が森田屋前の田丸履物店の閉店の挨拶の貼り紙を見る
沈んだ気持ちになった常子が元気を出して「ただいま帰りました!」
と、戸を開けると目の前に宗吉とまつ(秋野暢子)が座っている
常子「えっ?」
まつ「えっ?」
宗吉「あ…ハハハハ…待ってたぜ常子…ちょっとな話があるんだ」

居間には小橋一家に富江(川栄李奈)と長谷川(浜野謙太)もいる
宗吉「いや~大事な話でよ、全員がいる前で話してえんだ」
鞠子「じゃあ照代さんは?」
美子「朝から出払ったままですか?」
宗吉「いや~…あいつはいいんだ」
まつが宗吉にうながす「ほら早くしな」
宗吉「ん~…」
まつ「ほら!」
(長い間)
まつ「ほら!」
居住まいを正した宗吉が「すまねえ!」と、頭を下げる
隣のまつも一緒に頭を下げている
宗吉「今月の給金しばらく待ってほしいんだ」
君子「えっ?」
長谷川がお茶をこぼす「あっ、あっ…」
(一同)「あ~!」
常子「しばらくって…いつまでですか?」
宗吉「それが…何ともな…」
畳に手をついているまつ「急な事で申し訳ないと思ってるよ」
宗吉「仕入れができねえとろくな弁当も作れねえ
そうなると余計注文も減るってな具合でな…
情けねえ話だがここの家賃も払いきれてねえありさまでよ…」
まつ「いや、今までどおり賄いは用意する
だから…せめて給金だけでも…」
顔を合わせるまつと宗吉「なあ?」と、頭を下げる
君子「分かりました」
顔を上げる宗吉「本当かい?」
常子「私も同じ気持ちです」
まつ「本当にすまないねえ」と、手を合わせて一家を拝む
宗吉「心配かけちまって悪いなあ」
君子「いいえ」
宗吉「よしじゃあ…飯にするか」
まつ「あっ、そうだなごはんにしよう」
宗吉「そうだ、アハハハハ…」

一家のお部屋 4人で布団を作りながら
美子「本当にいいの?かかタダ働きになっちゃうのよ」
君子「クビになってもおかしくないの
置いてもらえるだけでもありがたい事じゃない」
鞠子「私も心配」
常子「心配いらないわ、私が働いてちゃんと稼ぐから、トォッ!」
と、布団を投げる
美子「頼もしい!」
鞠子「お~!」

<常子は一家の大黒柱としてこれまで以上に仕事に励みました>

タイムカードを打って帰ろうとする常子を多田が呼び止める
「待って小橋さん!」
常子「あっ、私何か忘れ物でもしました?」
多田「違うの、あの…これからビアホールでもどう?」
常子「あ~…行きたいところですが
今ちょっとぜいたくはできなくて」
多田「そう…弟の事で相談がしたかったんだけど」
常子「弟さん?」
多田「下の5人が反抗的でさぁ」
常子「あ~うちの妹も少し前までそうでした」
多田「最近はうまくいってるの?」
笑顔の常子「このマフラーも妹が編んでくれたんです」
多田「へえ~羨ましいなあ…
ねえ、どうすればいいか聞かせてくれない?
憂さ晴らしも兼ねて…どうしても駄目?」
常子「…少しだけなら」
多田「ありがとう!じゃあカバン取ってくるからここで待ってて」

浄書室に戻った多田が備室での上司の会話を聞いてしまう
佃部長(斉藤洋介)「山岸君、ちょっとお願いがあってね」
山岸課長(田口浩正)「はい、お願いですね」
佃「上野常務から姪っ子頼まれていたんだ」
山岸「えっ、頼まれたとおっしゃいますと?」
佃「うちに採用しろって事だよ」
山岸「ああ…しかし現在は人員削減も叫ばれており…」
佃「そんな事は分かってる、そこをなんとかするのが君の仕事だろう」
山岸「あぁ…はい…」
佃「だったら誰か切りゃあいいじゃないか」
山岸「あぁ…」

常子のところに足取りも重く戻る多田
常子「随分日も短くなりましたよね、もう薄暗い…多田さん?」
多田「あ…お待たせしてごめんなさい、行きましょうか」
常子「はい…」

ビアホールの2人
常子「こんなに賑わってるなんて知りませんでした
お弁当屋さんは苦しいのに」
多田「どんなご時世でもお酒がある場所に人が集まるんじゃない?
むしろ苦しい時こそかも」
常子「分からなくはないかも…
でも今日は一杯だけにしておきます」
と、ジョッキのビールを飲む2人
すると2人連れの若い男がからんでくる
帽子の男「いいご身分だなあ!女のくせにビールで乾杯か」
横分けの男「おねえちゃんたちさては職業婦人様か?」
常子(多田に)「気にしないで飲みましょう」
多田「でも…」
「女だったらこっち来て酌でもしろよ」
「お~い聞こえねえのか?」
横分け「それとも女じゃねえのかな?」と、多田の体に触る
多田「あっ、やめて下さい!」
横分け「一丁前に嫌がるんじゃねえよ!」
常子が立ち上がり「やめて下さい」と男を突き飛ばす
横分け「生意気に…少しばかり賃金がいいからって図に乗るんじゃねえよ」
常子「図に乗ってなど…」
帽子「おしゃれなどする余裕がよくあるもんだなあ」
常子「ぜいたくはしていません」
帽子「これだってそうじゃねえか…これも」
と、椅子に置いてある常子のカバンとマフラーをつまみ床に落とす
常子「やめて下さい」と、男ともみ合いになる
男の足がマフラーを踏みつける
マフラーを拾い上げ胸に押し当てる常子
男「きったねえマフラーがそんなに大事か?」
と、常子からマフラーを取り上げる帽子の男
常子が男に平手打ちをする
ビアホールがどよめく
男が「何だてめえ!」と常子を突き飛ばす
「返して…返して…」と、帽子の男に向かっていく常子
横分けが常子を羽交い絞めにする
常子「ちょっと…」
多田が逃げ出す
男「女のくせにふざけやがって!表でかわいがってやる!」
「やめて!」と、絶体絶命の常子

(つづく)

青柳商店の経営が立ちいかなくなるフラグが立ったね
下の者の話を聞かずに自分の主張を通したら
ドラマでは大体ダメになるよね

照代はどうしたんだろ?
宗吉は言葉を濁してたけど…
富江の表情も暗かったし大事なければいいのだが
長谷川がお茶をこぼしたのはシーンの緊張をほぐす演出的なもので
深い意味はないのだろうと思う
それにしても森田屋の面々は人が良く描かれている
君子が言っているように「置いてもらえるだけでもありがたい」
というのが本当のところだろう

常子の営業課の手伝いの件では救世主のような佃部長だったが
今回はブラックな一面を見せていた
彼自身も上司から無理を押し付けられて困っている立場なのだろうが…

ビアホールの不良は最悪
常子が大事にしているマフラーを踏みつけるなんて…
今まで辛いときや迷った時に常子は竹蔵との約束を思い出していたが
星野との別れを決意した前週
常子は「とととの約束は関係ありません」と言っている
もしかしたらマフラーは竹蔵との約束の代わりに
常子がとと姉ちゃんとして今後生きていく
新しい心の支え(理由)になったのかもしれない
もしそうなら星野との別れを決意させた決定的な要因は
美子のくれたマフラーなのかもしれないね