2016年10月1日土曜日

とと姉ちゃん(156)最終話 私はとと姉ちゃんでいられて幸せです 

常子の家 
家族全員が揃い食卓を囲んでいる 
(笑顔の一同)「乾杯~!」 

<あなたの暮しは長年の功績が認められ雑誌の最高栄誉といわれる
日本出版文化賞を受賞したのです> 

長卓にはちらし寿司、おはぎ、ポテトサラダなどが並んでいる 
常子(高畑充希)に拍手を送る一同(常子が礼で応える) 
たまき(吉本実優)「常子おばさん、この度は受賞おめでとうございます!」 
(一同)「おめでとうございます!」 
常子「ありがとうございます」 
真由美「ありがとうは私のセリフです」 
常子「えっ?」 
真由美「常子おばさんのおかげでこ~んなごちそうが食べられるんだもん」
常子「ああ…」(と一同とともに笑う)
美子(杉咲花)「いつになったら花より団子じゃなくなるのかしら?」
鞠子(相楽樹)「よっちゃんだってず~っとそうだったじゃない」
真由美「お母さんもそうだったの?」
美子(鞠子に)「どうして余計な事言うのよ」
鞠子「ごめんごめん」
(一同の笑い)
常子「ではそろそろ頂きましょうか」
(一同)「はい」
常子「頂きます」
(一同)「頂きます」(一同の礼)
水田(伊藤淳史)「あっ、常子さん取りますよ」
常子「あ…ありがとうございます」
小皿に料理を取り分ける水田「潤、こういう時にな
ず~っと女性に気を遣えるかどうかがモテるかどうかの分かれ道だからな
どうぞ」(と常子の前に皿を置く)
常子「ありがとう」
潤「あっ、そう」
水田「おい、真面目に聞いておきなさい大事な事だぞ(と南を見て)なあ?」
微妙な表情の南(上杉柊平)「そう…ですねぇ」
水田「まあこの家に育てばいやがおうにも身につく事になるか…」
たまき「どういう意味よそれ!」
鞠子「それじゃ私たちが無理やりやらせてるみたいじゃない」
水田「いや…違う違う違う違う!ごめんごめんごめん…ごめん!
(南に)ほら…謝ってよ」
笑う南「僕は謝りませんよ、言ってないですもの」
水田「潤…怖いぞ…アハハハハ!」
鞠子(潤を見て)「もうから揚げしか食べてないんだから」
一同の笑いの中、卵焼きを口に入れる常子

タイトルイン

夜になってもガヤガヤと仕事が続いている編集部
作業で机に目を落としながら常子「そうそう水田さん、昨日言っていた…」
と目を向けるとさっきまでそこにいた部員たちの姿が見えない
突然静まり返った部屋を立ち上がって見回す常子
不思議な面持ちで階段を下りていくと
一人の男が背中を向けて暗い試験室でボードを眺めている
常子が部屋の照明を点け静かに男に近づき「あの…」
みかんを手で揉んでいるその男が振り向き常子が固まる
「やあ常子」
目の前に死んだはずの竹蔵(西島秀俊)が立っている
常子「とと?」
常子に近づく竹蔵「どうかしましたか?」
常子「いえ…少し驚いてしまって…」
竹蔵「そうですよね…突然こんなふうに現れては驚くのも無理はありません」
常子「ととはあのころのままですね」
さらに近づく竹蔵「常子は大きくなりましたね」
恥ずかしそうに笑う常子「大きくなったといいますか…年を取りました
今ではととよりも年上です、とてもご自分の娘とは思えないでしょう」
竹蔵「いくつになっても常子は僕の娘です」
常子「そうでしょうか」
笑顔の竹蔵「そうですよ」
常子も嬉しそうに笑顔でうなずく
部屋を見渡す竹蔵「ここが常子の作った会社なんですね?」
常子「はい」
竹蔵「案内してくれませんか?」
常子「はい、喜んで(と部屋で手を広げ)こちらは商品試験をする場所です
今は扇風機の性能を調べる試験をしています」
竹蔵「暮らしに役立つための商品試験ですね」
常子「はい、47名の社員以外にもテスターさんがいらっしゃって
150名ほどの方がこの会社に関わって下さっています」
竹蔵「そんなに大勢が?」
常子「はい…とと、2階も見て頂けませんか?」
竹蔵「はい」
常子「こちらです」

編集部に上がる常子「もともとは鞠子と美子と
それから編集長の花山さんと4人だけで始めた会社だったんです」
常子が額に飾られたその頃の3姉妹の写真を竹蔵に手渡す
それをまじまじと見つめる竹蔵「鞠子も美子も立派になりましたね」
嬉しそうに笑う竹蔵に常子「はい」
写真を常子に返し編集部を見回す竹蔵「よくぞここまで…」
常子「いろんな方と出会って助けて頂きました…
皆さん一人一人のお力添えがあったからこうして…
(と竹蔵の様子に心配そうな表情になり)とと?」
涙を流し息遣いも荒くなっている竹蔵「ここまで来るのには…
…相当な苦労があったでしょう」
常子「ええ…まあ(と、笑顔を作り)平坦な道のりではなかったですけれど」
竹蔵「僕が常子に父親代わりを託したために
随分と苦労をさせてしまったね…すまなかった」(と頭を下げる)
常子「そんな事はありません…とと…私ととの代わりだから
とと姉ちゃんって呼ばれてるんです」
竹蔵「とと姉ちゃん…」
うなずく常子「はい…出版社を起こして女の人の役に立つ雑誌を作りたいって
夢が持てたのも私がとと姉ちゃんだからです
それに鞠ちゃんもよっちゃんも結婚して子どもも3人授かって
今では8人で暮らす大家族ですよ
もう毎日がにぎやかで楽しくて…
みんなと過ごすささやかな日常が私の生きる糧です(竹蔵が微笑む)
私はとと姉ちゃんでいられて幸せです」
常子に近寄る竹蔵「常子」
常子「はい」
竹蔵「頑張ったね」
竹蔵が常子の頭に右手を置く
涙目で竹蔵を見つめる常子
竹蔵が常子の髪を撫で「ありがとう」
涙をこぼして笑い出す常子「フフフフ…フフッ」
と、子どものように涙を鼻でぬぐう
幸せそうに笑う常子

ベッドで眠る常子が目を開く
おぼつかない表情で身を起こすと窓の外からは小鳥の鳴き声と
家族の笑い声が聞こえてくる
カーテンを開ける常子

庭の木の下に集まっている一同
木に登った潤が「おじさんこれは?」と南に何かを手渡し
南「おっ、いいじゃないか~」
鞠子「今年も随分実をつけてくれたわね」
たまき「こんだけあったらジャムご近所さんに配ってもまだ余りそうね」
鞠子「そうね」

その様子を眺めていた常子がふと机に目を向ける
椅子に座り3つの目標の短冊(家族を守る)を手に取り見つめる常子
そして残りの2枚(鞠子美子を嫁に出す・家を建てる)も手に取り
3つを重ねて机の引き出しにしまう

昭和六十三年夏

<時は流れ昭和63年>

会社の入り口に入る常子「行ってらっしゃい」
麦わら帽子を被りベビーカーを押してすれ違う何人ものスタッフ
「行ってまいりま~す」
「行ってきます」
常子「はい、言ってらっしゃい」
(一同)「お帰りなさい!」
常子「ただいま~ご苦労さまです」
階段を上がり編集部に入る常子「ただいま戻りました!」
(一同)「お帰りなさい!」
常子が席に着くと「とと姉ちゃん、確認お願いします」と
美子が書類を持ってくる
常子「はいはい」
美子「それと…お客様よ」
向こうで振り向く鞠子
常子「フフフ…鞠ちゃん」
歩いてきてお重を見せる鞠子「ちょっとかんぴょう巻きの差し入れをね」
常子「いつもありがとう」
鞠子「取材に出てたんでしょ?社長さん自らよく働くわねえ」
笑う常子「休んでる方が疲れちゃうのよ」
と、「常子さん!」と若い社員がやってくる
常子「はいはい」
社員「すみませ~ん!桜井先生の原稿なんですが…
僕がテーマを間違えてお伝えしてしまっていたようで…」
ざわめく編集部

主題歌イン

常子「だったら一からやり直しじゃない!」
美子「気難しい方だから応じて下さるかしら…」
常子「どうしたもんじゃろのぉ…」
社員「取り急ぎ先生にお詫びの電話を致します」
立ち上がる常子「あ~あ~!電話じゃ駄目よ!」
社員「へっ?」
常子「お詫びだろうが原稿依頼だろうが
ちゃんとお目にかかってお伝えしないと
先生には私がお詫びに行ってきます(とカバンを肩にかけ駆け出し)
行ってきます」
(エンドロールが流れる)
社員「常子さん」
美子「とと姉ちゃん!」
常子を目で追い階段下を見る一同
鞠子「呆れた…あれじゃ花山さんとやってた時と一緒じゃない」
美子「花山さんも苦笑いしてるわね」
2人が編集部に飾られた花山と3姉妹の写真に振り向く

主題歌が流れる中、東京タワーに向かって通りを駆ける常子

(おわり)

冒頭の食事のシーンは家族それぞれにセリフを用意したのと
後半の伏線になるにぎやかな家族の描写かな

竹蔵が出るのは予告で知っていたが幻視するような感じだと
勝手に想像していて夢オチは逆に意外だった
考えればそれが一番自然なのかもしれない
(夢オチを予想しなかったのは心のどこかで
それは反則だと思っているからかもしれない
夢の話ならばいくらでも視聴者をミスリードする事もできるからだ)

このドラマでは常子が父との約束に縛られ犠牲になったのでは…
とどうしても考えてしまうがそこのところを補完するようなシーンがあった
まず竹蔵がすまなかったと謝り
常子はだからこそ、とと姉ちゃんになったからこそ夢を持てたのだと答える
今では大家族でにぎやかで楽しくて私はとと姉ちゃんでいられて幸せだと…

ちなみにこのとと姉ちゃんでいられて幸せ…だというフレーズは
最終回にあたって主演の高畑にかけているというか
シャレみたいな意味にもなっていると思う

目が覚めた常子が3つの目標を引き出しにしまったのは
竹蔵に褒めてもらった事でその責任を果たせたと思ったからだろう

ラストのエピソードはデジャブかと思ったw
1話の冒頭のエピ(昭和33年)といろいろそっくりで
焼き直したというか踏襲したというか…
まあ最初と最後は同じで…というところだろうか
最後に駆けていく常子(推定68歳)は1話ほどではないが
結構な速さで走っていたと思うw

これで常子の物語はおしまいだが
個人的に一番印象に残っているシーンは
五反田が常子に出征を告げたシーンかなあ…

次回作「べっぴんさん」は視聴はする予定ですがレビューはしません
(冬場の早起きは苦手だし…)
半年間おつきあい頂きありがとうございました
またどこかでお会いできれば幸いです

2016年9月30日金曜日

とと姉ちゃん(155)花山死す!~日本出版文化賞を受賞してテレビ出演を果たす常子

前回から二日後 

美子(杉咲花)「えっ?花山さんの原稿まだ入稿してないの?」 
常子(高畑充希)「ええ、まだあるわ」 
綾(阿部純子)「いつもに比べて随分のんびりしてるのね」 
常子「いつ花山さんが『やはり直したい』って言ってくるかわからないでしょ?」 
美子「そうね、花山さんならそういう連絡がありそうね」 
3人が編集部への階段を上がっていくと電話が鳴る 
水田(伊藤淳史)「はい、あなたの暮し出版です…」 
それを見て笑顔の美子「もしかして…」 
常子「フフフ」 
水田「はい…お待ち下さい…常子さん」 
常子「はい」 
水田「花山さんの奥様からです…」 
常子「…」と受話器を受け取り「お電話代わりました…常子です」 
(三枝子)「常子さん…お忙しいところすみません…
先ほど花山が息を引き取りました」 
常子「…分かりました…すぐに伺います…(編集部員たちが異変を察知して
立ち上がる)失礼します…(と受話器を置き)水田さん…」 
うなずく水田「こちらの事は僕が…常子さんと美子さんはすぐに」 
常子「お願いします」と社員たちが立ちつくす中、美子と外出の支度をする 

タイトル、主題歌イン 

花山家
ダイニングではみのりがお絵描き(花山の顔)をしている
茜に案内される常子と美子がその向かいの部屋の前に立つ
茜(水谷果穂)「どうぞ」(と戸を開ける)
一礼して中に入る常子と美子
部屋のベッドでは花山(唐沢寿明)が静かに眠り
その横に三枝子(奥貫薫)が寄り添っている
着座する常子たち
常子「この度はご愁傷さまでございました」(礼を交わす)
三枝子「…ごめんなさい…容体が急変してね…間に合わなかったわ」
首を振る常子「いえ…お知らせ下さりありがとうございます…」
三枝子「花山の顔見てあげて下さい…(花山に)あなた…
常子さんと美子さんがいらして下さいましたよ」
花山の傍に寄る常子と美子
美子が泣き声を上げる
三枝子「あの日…常子さんが帰られたあと花山は満足そうでした
これからこの国がどうなっていくのかは分からないけれど
あなたの暮しは常子さんに任せておけば大丈夫だとも申しておりました」
常子の両頬を涙が伝う「そんなふうに褒めて下さったのは…
初めてですね…花山さん」
泣き続ける美子
部屋の戸が開き画用紙を手にしたみのりが「じいじ!」と駆けてくる
「絵、描けたよ!起きて!じいじ起きて!」
常子が堪らず顔を覆う
茜「みのり、じいじは眠っているから…もう少し寝かせてあげよう…」
みのり「うん…」
号泣する常子

夜、常子の家
原稿を手にした常子がリビングにやってくる
美子「それ…」
常子「三枝子さんからお預かりした花山さんの最後の原稿よ」
それぞれが原稿を手にして美子「花山さんの字…」
「うん?」と何かに気付いたたまき(吉本実優)が
「これ…」と常子に一部を渡す
それを手に常子「…!?」
読み上げる常子「美子さん、初めて出会った頃きつく責める私の言葉に…」
(花山の声)「必死に涙を堪えていた君の顔は今でも覚えている
それから私が一時期会社を辞めた時、説得しに来た時の顔もね
君の情熱がなければあなたの暮しはあの時終わっていたかもしれない
鞠子さん、今でも君が仕事を続けていたらどうなっていただろうと考える
だが君は結婚で大きな幸せと
たまきさんというすばらしい娘さんを得る事ができた
たまきさんはきっと会社を支えるいい編集者になるだろう
常子さん、君に感謝を伝えるには原稿用紙が何枚必要だろうね
たくさんの事を君に教えた
それと共にたくさんの事を君に教えられた
君がいなければ今の私はいなかった…
ありがとう…」
原稿用紙の「ありがとう」の文字を見つめる常子
「ねえ見て」と美子が1枚のイラストを見せる
常子「うわぁ…」
そこには3姉妹をはじめ、水田や綾などの編集部員たちが描かれている
美子「そっくり」
常子「水田さんこれ…アハハ」

<花山が亡くなってふたつきがたった頃>

編集部
花山が遺した編集部員たちのイラストが額に入れられ飾られている
その位置をまるで生前の花山のように几帳面に微調整している美子
納得してうなずいた美子が「よし」と手を打つ
綾「美子さん、もうすぐ始まりますよ」
笑顔でうなずく美子「はい」
部員たちは部屋の隅のテレビの前に集まっている
美子がデスクの椅子に座る
島倉「美子さんは見なくてもいいんですか?」
美子「あ…毎日会ってますからわざわざテレビで見なくたって…」
「いや、またまた…美子さんほら早く」
「本当は緊張してるんでしょ?」
笑う美子「そんな事ない」

テレビ局のスタジオ
「開始10分前で~す!」
(一同)「はい」

<あなたの暮しは長年の功績が認められ
雑誌の最高栄誉といわれる日本出版文化賞を受賞しました>

スタジオの隅で出番を待つ緊張した様子の常子が左手で右肩をさすり
「花山さん花山さん…どうしたもんじゃろのぉ…」と語りかける
それで少し落ち着いたのか安心したように微笑む常子
「小橋さん」
振り向く常子「はい」
司会の沢(阿川佐和子)「よろしくお願いします、そろそろこちらに」
立ち上がる常子「よろしくお願い致します」

「よいしょよいしょよいしょ」と仏壇の竹蔵と君子の写真を持ち
「え~っと始まりますからね…一番いい所で見ましょうかね」
と写真をテレビの前のテーブルに置いた鞠子が「よいしょ
あ~疲れた」と腰を伸ばしてからテレビのスイッチを入れる
「あ~もうこっちまで緊張してきちゃった」
テレビの画面には「時代のスケッチ」のタイトル
拍手をする鞠子「あ~始まった!」

編集部の一同「お~!」と拍手が起こる
「静かに、静かに!聞こえないだろ」
やはり気になるのか遠くからテレビをのぞく美子
(画面の沢)「皆様こんにちは、『時代のスケッチ』の時間です
司会の沢静子でございます
さて今日は皆様よくご存じの雑誌あなたの暮しを通して…」

スタジオ
沢「…戦後の日本の人々の生活を豊かにした事が評価されまして
日本出版文化賞を受賞なさいました
あなたの暮し出版社長でいらっしゃる小橋常子さんにおいで頂いております
いろいろお話を伺っていきたいと存じます
どうぞよろしくお願い致します」
常子「あ…はい…よろしくお願い致します」

編集部
気をもんでいる様子の康恵(佐藤仁美)「表情が硬いねぇ」
綾「常子さん、しっかり!」

鞠子「とと姉…緊張し過ぎ…(写真に)ねえ…とと…かか」
(画面の常子)「ひとえに私たちを支えて下さり応援して下さった
読者の方のおかげだと思っております
私たちの編集長の花山も草葉の陰で喜んでいると思います」
(沢)「あなたの暮しは第1号から2世紀第35号まで出版されている訳ですけれど
この誌面作りに一貫した方針が感じられるんですが
そこら辺はどのようにお考えなのかお聞かせ頂けますか?」
(常子)「はい、花山も私たちもとにかく庶民の生活暮らしを
何よりも大切に考えてまいりました…」

スタジオ
常子「戦争で奪われた豊かな暮らしを取り戻し
その暮らしの役に立つ生活の知恵を提案していければと
そしてそれが暮らしの中心にいる女の人たちの
役に立つ雑誌になっていければと…
今も昔もただただその事だけを念頭に置いてやってきております」

(沢)「あなたの暮しはにとってやはり戦争の影響というのは
大きくあるのですね」
(常子)「そうですね…戦後生まれの方々はご存じないかもしれませんが
当時はおうちのフライパンなんかも供出しましたからね」
(沢)そうでしたね、本当にそうでしたね」
編集部に飾られたあなたの暮しのバックナンバー
花山が最後に描いた女性のイラストの35号と
防空頭巾とフライパンが描かれた戦争体験談の特集号(32号)

(つづく)

ビックリ!
花山はナレ死じゃなかったw
臨終には間に合わなかったとはいえ死者との対面を描くとは…
竹蔵も滝子も君子もそうだったんだからナレ死でよかったんじゃないのか?

みのりの「じいじ起きて!」で常子が号泣するのは
ベタだけどまあ良かったかな
あそこで視聴者も泣きやすかった事だろう

美子の額縁を微調整しての「よし」もグッドw

戦争特集号の表紙がフライパンだったのはうっかりしていたが
これは花山が常子に説得されて新雑誌の起ち上げを決意したシーンで
穴の開いたフライパンを持っていたのを回収したという事だったのかな?

2016年9月29日木曜日

とと姉ちゃん(154)読者への遺言を常子に託す花山

病室のベッドの上、届けられた読者からの手紙を手に花山(唐沢寿明)
「ありがたいね…我々の思いに共感してもらえた」 
常子(高畑充希)「これでやっとゆっくりできますね」 
花山「ん?」 
美子(杉咲花)「またおうちに戻られるんですよね?
まずはお体を治さないと」(常子がうなずく) 
花山「次号があるだろう、準備を始めんと」 
静かに花山を見つめる常子と美子 
花山「フッ…安心しなさい、決して無理はせんよ~」(とふざけた感じ) 
可笑しそうに顔を崩して笑う常子「はい」 

タイトル、主題歌イン 

昭和五十年一月 

<次号の出版に向けて編集部員たちは会社と花山家を行き来して
仕事を進めていました> 

席に着いた扇田がため息をつく
向かいに座る美子が楽しそうに「花山さんに怒鳴られたんですね?」
扇田「分かります?」
島倉「私も昨日行ったら『やり直せ!』って」
一同が笑う
木立「僕なんか『辞めちまえ!』ですよ
「私も」
「私もです」
扇田「この会社入って何回花山さんに怒鳴られたんだろう
ちゃんと数かぞえておけばよかったな」
島倉「だけど怒られるのも久しぶりだったから
私は懐かしかったですね」
木立「僕もですよ、心のどこかではあなたの暮しはこうでなくちゃって」
緑「確かにね」
寿美子「今頃たまきさんも怒鳴られてるのかしら」
緑「そうかもしれないですね」
常子と綾(阿部純子)も顔を見合わせて笑っている
と、「ただいま戻りました」とたまき(吉本実優)が帰社する
(一同)「お帰りなさい」
元気のないたまきに木立「あ~あ~
たまきちゃんも花山さんに怒鳴られちゃったか」
たまき「…怒鳴られた方がよっぽどよかったです」
木立「えっ?」
たまき「…花山さんの原稿を口述筆記してきたのですが…
今日はそれもつらそうで…」
(一同)「…」

静かに降る雪、花山家の表札 

ベッドの上で原稿を確認する花山「うん…これでいい」
常子「はい(と原稿を受け取り)残りの原稿は来週の中頃に
またお持ちできると思います、よろしいですか?」
花山「ああ」
常子「では来週またお邪魔しますね」
(と立ち上がり録音機のスイッチを切り帰り支度を始める)
花山「常子さん」
常子「はい」
花山「すまんがもう一つ筆記を頼みたい」
常子の動きが止まる「でも今日はもうお休みになった方が…」
花山「(いや…)平気だよ」
「分かりました…」と腰を下ろす常子
「何の原稿ですか?」と録音機を置く
花山「あとがきをね…」
常子「ああ…(と録音機のボタンを押し)では…」
花山「ハァ(と苦しそう)…書き出しはそうだな…
今まであなたの暮しをご愛読下さった皆様へ…」
常子が花山を見る
花山「私が死んだらね…その時の号のあとがきに載せてほしいんだよ」
常子の声が震える「まだお元気なのに何をおっしゃってるんですか
もうめったな事言わないで下さい」
花山「人間誰だっていつ死ぬか分からない
帰りに交通事故に遭って君が先に死ぬかもしれないよ…
…書いてくれないか?
常子さんにしか頼めない事だ」
常子「……分かりました」
花山「ハァ…読者の皆様…
長い事あなたの暮しをご愛読下さりありがとうございます
昭和22年の創刊以来27年たって部数が100万になりました
これは皆様が一冊一冊を買ってくれたからです
創刊当初から本当によい暮らしを作るために
私たちがこの雑誌で掲げてきたのは庶民の旗です
私たちの暮らしを大事にする一つ一つは力が弱いかもしれない
ぼろ布はぎれをつなぎ合わせた暮らしの旗です
…ハァ(と苦しそうにうつむく花山を常子が真っすぐに見つめている)
世界で初めての庶民の旗
それはどんな大きな力にも負けません
戦争にだって負けやしません
そんな旗をあげ続けられたのも一冊一冊を買って下さった
読者の皆様のおかげです(筆記を続ける常子)
広告がないので買って下さらなかったら
とても今日まで続ける事はできませんでした
そして私たちの理想の雑誌も作れなかったと思います
力いっぱい雑誌を作らせて下さり…ありがとうございました…
それに甘えてお願いがあります
今まであなたの暮しを読んだ事がない人1人に
あなたがあなたの暮しをご紹介して下さり…ハァ…1人だけ
新しい読者を増やして頂きたい
それが私の…最後のお願いです」
固まったように花山を見つめる常子の頬を涙が伝う
録音機を止めた花山が「あぁ…」と苦しそうにベッドにもたれる
「さあ…もう帰りなさい」
まだ動けない常子(涙声)「花山さん…もし花山さんがいなくなったら…
私どうしたらいいんですか…」
花山「常子さん…大丈夫だよ…君はね
27年一緒にやってきて…大体僕の考えと一緒だよ
君の考えだけでやっていけるだろうけれど
悩んだ時は君の肩に語りかけろ
君に宿ってやるから
『おい花山…どうしたもんじゃろのぉ…』と…ハハ…」
常子「フフフ……はい…」

玄関でお辞儀をする常子「お邪魔致しました」
三枝子(奥貫薫)「いえ、ご苦労さまでした」
と、壁に手を沿わせながら花山が廊下に出てくる
三枝子「あなた寝ていませんと…」
花山「うん」
三枝子に支えられ玄関まで来た花山が「これをね忘れていた」と
女性を描いたイラストを常子に渡す
花山「次号の表紙だ」
イラストに目を落としながら常子「すてきな人ですね」
花山「初めて私の絵を見た時も君はそんな顔をしていた」

(回想)常子「すてきな家ですね」

花山「常子さん…どうもありがとう」(と頭を下げる)
「嫌だわ花山さん、また来ますね」
とイラストを封筒に入れ傘を手にする常子
花山が三枝子に支えられながら手を振る
お辞儀をした常子が玄関を出るとガクリと頭を垂れる花山
三枝子「さあ…あなた…」
花山「ああ…」

まだ降り続いている雪の中、立ち止まった常子が玄関を振り返る
そして…前を向いて歩き始める

(つづく)

もうこのドラマのパターンだと次回の冒頭で花山はナレ死しそうだよね
<花山が亡くなって3年が過ぎました…>みたいな感じだろうか?
今週の予告を見ても花山のいいシーンは全部済んでると思うし…

花山の読者への最後の願いが新しい読者を増やす事だったのは
あなたの暮しの行く末を案じての事なのだろうか?
常子と花山を仮想夫婦とするなら2人が産んだあなたの暮しはその子どもだ
死にゆく花山がその子の行く末を案じたから
常子は泣いてしまったのだろうか?
「もし花山さんがいなくなったら私どうしたらいいんですか」と聞く常子は
とと姉ちゃんではなくて夫を亡くす普通の女性のようだった

常子に礼を言って頭を下げる花山の表情を
三枝子がのぞき込むように見ていたがこれはただ意外だったからだろうか?
三枝子の解釈は苦手でどうもよくわからないw


2016年9月28日水曜日

とと姉ちゃん(153)1冊まるまるを戦争体験談だけの特集号にする常子と花山

編集長室のドアを開け驚く常子(高畑充希)たち「花山さん!」 
花山(唐沢寿明)「おはよう」 
常子「おはようございます…」 
水田(伊藤淳史)「どうしてここに?」 
花山「ここが私の仕事場だからだ」 
美子(杉咲花)「病院は?」 
花山「一時退院の許可は出た」 
常子「でしたらご自宅に戻って下さい」 
花山「何を言っている、そろそろ読者からの原稿が届いた頃だろ
見せてくれ仕事がしたいんだ」 
美子「駄目です、早くご自宅に…」 
花山「大丈夫だ何の問題もない」 
美子「でもお体が…」 
花山「いいんだそんな事は!」 
常子「いい加減になさって下さい!
ご家族も社員もみんな心の底から心配している事を
もっと真摯に受け止めて下さい!
花山さんのお体は花山さんだけのものではないんです!
部下を信じて任せる事も上に立つ者の立派な責任なんじゃありませんか?」
一同が花山を見つめている 
ため息をつく花山「はぁ…分かった!」 
常子「でしたらご自宅に戻って頂けるんですね?」 
目を閉じ小さくうなずく花山 
常子「花山さん」 
花山が大きくうなずきそのままうなだれたかと思うと
なぜか8ミリカメラを手にしている 
安心したのか何だか気が抜けたように笑う常子「もう…水田さんタクシー」 
水田「はい」(と部屋を出ていく) 
常子「よっちゃん」 
美子「はい」 
常子「島倉さん、たまき」 
と、一同を帰した常子が花山に振り向き
勝ち誇ったように眉をそびやかし微笑む 

タイトル、主題歌イン 

花山の机に木箱に入った大量の封書を置く美子
「読者から募集した戦争体験談です」 
花山「これが全てか」
水田「いえ、箱いっぱいにあと十ほどは」
水田の後ろで社員たちが「よっ」「うんっ」と段ボール箱を掲げる
立ち上がり木箱の手紙のひとつを手に取る花山
「疎開した娘の千鶴に会い私はお手玉を5つその千鶴の手に握らせました
久しぶりに会ったあの元気な千鶴は
それこそ骨と皮ばかりに痩せこけていました
娘がそんな姿になっているのを見て私は涙が止まりませんでした」
美子「どれも…あのころの風景がよみがえるような
胸が締めつけられる文章ばかりでした」
常子「…編集会議の内容はもちろんお伝えしますし
全ての原稿はお宅にお持ちして最終確認はこれまでどおり
花山さんにお願いするつもりです」
花山「うちに来るなんて君たちが大変じゃないか」
社員たちが首を振る
常子「平気です…花山さんが納得されるまで
何度でもご自宅と会社を往復する覚悟です」
一同がうなずく
花山「そうか…それにしてもよくこれだけ集まったものだ
できればここにある全部を雑誌に載せたいくらいだな」
社員たちが笑う
常子「!?…だったらそうしましょう」
花山が常子を見る
常子「思い切って2世紀第32号をまるまる1冊
戦争の記事だけで作るのはいかがですか?」
花山「…」
水田「読者の皆さんが送って下さった戦争体験が
これだけあればできますよね」
美子「あなたの暮しまるまる1冊一つのテーマだけで作るなんて
今までやった事ないわね」
扇田「俺読みてえです」
島倉「しかし…戦争特集なんて
あなたの暮しらしくないんじゃないでしょうか?」
花山「もちろんそれは分かっている
読者からの反発の声もあるかもしれない
それでもこれは価値のある事だと私は思うよ」
一同が口々に「はい」とうなずく
花山が常子を見る
微笑んでうなずく常子

<常子たちは戦争特集号の編集作業に今まで以上に没頭しました
送られてきた戦争体験談を一つ一つ丁寧に確認するとともに
写真などの資料を集め当時を知らない人々にも伝わるように
記事を作っていったのです
しかし花山は体調を崩す事が多くなり
入退院を繰り返すようになっていました>

病室を訪れる美子「こんにちは」
ベッドの上で仕事をする花山「お~珍しいね、今日は美子さん一人か」
美子「はい、とと姉ちゃんは花山さんに言われた資料を集めてます」
花山「うん」
美子が花山に原稿を渡し「校正お願いします」
「ああ」と受け取った花山が原稿を確認しながら
「私の前に誰か目を通したのか?」
美子「はい、とと姉ちゃんが…執筆も推敲も編集も
いつも以上に念入りにと皆さんに言ってるんです
校正をする花山さんの負担を少しでも減らすために」
原稿に目を落としながら花山「ほう…フフフ」
美子「その原稿は問題なさそうですね」
花山「いや駄目だ駄目だ」
美子「えっ?」
花山「書き出しはなかなかだったが展開力が乏しい
まだまだ私の校正なしで掲載は無理だな」(と赤ペンで原稿に校正を入れる)
そんな花山を見て嬉しそうに微笑む美子

自宅のちゃぶ台で仕事をする常子
(仏壇があるから君子の部屋だろうか?)
「とと姉いい?」と盆を手にした鞠子(相楽樹)がやってくる
常子「はいはい…あっ」
鞠子「お茶どうぞ」
常子「ありがとう鞠ちゃん」
鞠子「昔もあったわね」
常子「ん?」
鞠子「とと姉が花山さんの代わりをした事」
常子「ああ…広告を載せようとして花山さんを怒らせてしまった時ね
あの時よりはだいぶ慣れたけどやっぱり花山さんの代わりは大変ね」
鞠子「私にできる事があったら何でも言ってね」
常子「ん?」
鞠子「今となっては雑用くらいしかできないだろうけど
とと姉何でも自分でやろうと無理し過ぎるから遠慮せずに言って」
常子「分かった、ありがとう」
「何のお話?」と美子が帰ってくる
鞠子「あっ、お帰りなさい」
常子「お帰りなさい」
美子「ただいま」(とちゃぶ台の前に座る)
常子「花山さんご様子どうだった?」
美子「うん…今日もあんまりよさそうではなかったけど…でもね
原稿の校正をし始めたらみるみる生き生きした表情に変わっていって」
常子「そう」
美子「それで…(と原稿を取り出し)これが例文の答えを書きなさいって
でこっちが比較対象を西洋ザルにとご指摘が
でこれが…」
常子「あ~もう…こっちなんて真っ赤じゃない(と原稿を手にして)
お元気そうで安心したわ」
(鞠子と美子)「フフフフ」
常子「鞠ちゃん…早速お願いしてもいいかしら?」
鞠子「えっ?」
と分厚い束を持ち上げた常子「この資料の中から
西洋ザルに関する部分を抜粋してもらえる?」
笑顔で資料を受け取る鞠子「承りました」
美子「私もこっちやっちゃうね」
常子「うん、ありがとう」
会社を起ち上げたあの頃のように丸いちゃぶ台を囲んで作業する3姉妹

<ふたつきがたち8月15日
戦争中の暮らしを特集した最新号は発売されました>

最新号の発送作業に追われる編集部
水田「常子さん」
常子「はい」
水田「近郊の書店100軒回ってきましたが全てで売り切れです」
常子「そうですか、では早速増刷してもらいましょう」
水田「…随分と落ち着いていますね
いつもなら跳びはねて喜ぶのに」
常子「ん~…今号に関しては正直受け入れて頂けるか不安もあったので
喜びというよりは安堵の方が大きくて」
水田「僕もです」
美子「私も」
「常子さん」と嬉しそうにたまき(吉本実優)が駆けてくる
常子「ん?」
たまき「今読者の方から『これこそ後世に残したい雑誌だ』なんてお声が」
美子「それこそ花山さんが望んだ事よね
『我々の雑誌は使い捨てにしたくない』ってずっとおっしゃってらしたから」
常子「そうね」
水田「落ち着いたら後で花山さんにお伝えしに行きましょう」
常子「フフフ…ええ」

<戦争特集号は過去のどの号よりも早く売り切れる事となり
ついにあなたの暮しは100万部を超える発行部数を達成したのです>

(つづく)

たまきは「常子さん」と呼ぶ事で公私を別けているのだが
常子は会社でも「たまき」と呼び捨てにして美子に対しては
相変わらず「よっちゃん」だ
もう会社での家族呼びを貫き通したねw
でもこれはそうしないと美子から「とと姉ちゃん」と呼んでもらえなくなり
タイトルが泣いてしまうという制作上の理由からなのだろうか?

花山の8ミリカメラは意味不明だがどうせアドリブだろうw

3姉妹が丸いちゃぶ台で編集作業をしているシーンは
懐かしくて胸熱だった

2016年9月27日火曜日

とと姉ちゃん(152)戦時中の市井の人々の暮しの記録を残したいと語る花山

花山のデスクの書類の山に自分が書いた原稿を重ねる常子(高畑充希) 
水田(伊藤淳史)「4日も留守だと書類もたまってきますね」 
常子「そうですね…帰っていらしたらバリバリ働いて頂かないと」 
美子(杉咲花)「花山さん今日戻られるんでしょ?」 
常子「うん…そのはずなんだけど…」 
と、受話器を持つ島倉「常子さん…常子さん!」 
常子「はい、どうしたの?そんな大きい声出して」 
島倉「花山さんの奥様から…花山さんが東京駅で倒れたそうです…」 
受話器を取る常子「もしもし…」 

タイトル、主題歌イン 

常子と美子が駆けつけると花山(唐沢寿明)は病室のベッドの上で
書きものをしている「やあお二人さん」
驚く常子たち
三枝子(奥貫薫)「常子さん美子さん…この度はお騒がせ致しました」
(と茜と2人で頭を下げる)
常子「あ…あの…花山さんあの…お体は?」
花山「問題ない落ち着いてるよ」
三枝子「ごめんなさい…電話した時は私も動転してしまっていて…
容体も分かっていなかったものですから」
花山「倒れたなんて大げさなんだ
例の…あ~!(と腕を上げたため点滴の針を気にする)
例の胸のあれでね、少し苦しくなったから腰を下ろしただけだ」
美子「本当に平気なんですか?」
花山「ああ、このとおりさ」
安心してため息をつく常子「はぁ…もう心配かけないで下さいよ
みんな病院に駆けつけるって言って大変だったんですから」
(美子がうなずく)
花山「それはすまなかった」
茜(水谷果穂)「だから止めたのよ、それなのに無理して広島に向かうから」
花山「ああ」
茜(常子たちに)「そんなに急ぎの原稿があるんですか?」
常子の顔を見る美子「いや…私たちは取材の事は何も…」
花山「…戦争中のね…人々の暮らしの記録を記事にしたいんだ」
常子「戦争…」
花山「ただの戦争の記録じゃない
名もない市井の人々がどのような暮らしをしていたのか
戦争の記録を残したいんだ
歴史的な大きな事件ではなくあの戦争の中での日々を残しておこうと」
美子「いつからそんな事を?」
花山「以前から探していたんだよ…
あなたの暮しがこれから世に提案すべきものは何なのか」
常子「それが戦時中の暮らしの記録ですか?」
花山「ああ…これからは世の中から忘れ去られないように訴えていくのも
この雑誌の役割だと思ってね…
あの戦争は我々庶民の暮らしをメチャクチャにした
戦争の経過などは正確な記録が残されているが
あの戦争の間ただ黙々と歯を食いしばって生きてきた人たちが
何を食べ何を着てどんなふうに暮らしていたか
それについて具体的な事はほとんど残されていない…
それを残したいんだ
私は終戦を迎えたあの日以来ずっと考えていた
もし一人一人が自分の暮らしを大切にしていたら
もし守らねばならない幸せな家族との豊かな暮らしがあったなら
あの戦争は起きなかったのではないかとね…
二度と戦争が起きぬようにあの戦争に関わってしまった人間として
戦後生まれの人にもきちんと伝えたいんだ」
常子「それで広島へ…」
花山「ああ…だが思うようにはいかなかった
つらい記憶だ…皆口が重くてね
戦争中の事は話したがらない
今更蒸し返してほしくないとも言われた」
美子「では取材は失敗ですか?」
花山「また行くさ、来週にでも」
美子「来週?」
花山「1週間もあれば退院できるだろう」
美子「退院できたからといって病気が治った訳ではないんですよ」
花山「治るまで待ってはおれん」
美子「でしたら花山さんの代わりに私が」
花山「駄目だ!従軍経験がある私でなくてはできん!
じかに人々の声を聞いて記事にしてみたいんだよ!」
茜「いい加減にしてよお父さん!
こんなに皆さんが心配して下さってるのにどうして分からないの?
お父さんはもう年なのよ…お仕事よりもお体をもっと大事にして」
三枝子「私も茜に賛成です
もし今度倒れたらと思うと私も生きた心地はしません
お願いします…どうかお考え直し下さい」
花山「…死んでも構わん
私は死ぬ瞬間まで編集者でありたい
その瞬間まで取材し写真を撮り原稿を書き
校正のペンで指を赤く汚している現役の編集者でありたいんだ!
(とペンをかざし)常子さん…君なら分かるだろう!」
目を伏せる常子「…私は…
(と花山を見て)取材に賛成する事はできません」
花山「…」
常子「奥様や茜さんが反対してらっしゃるのに認める訳にはいきません」
三枝子「常子さん…ありがとうございます」 茜「ありがとうございます」
常子「いえ…」
ベッドの上で無念そうにうつむく花山

夜、常子の家
鞠子(相楽樹)「それで花山さんは納得したの?」
美子「多分ね…それっきり黙ったままだったから…」
鞠子「そう…」
水田「お医者さんは何と?」
美子「もちろん安静ですよ
たとえ1週間で退院できたとしてもすぐに仕事や
ましてや広島に出かけるなんてとても許可できないって」
たまき(吉本実優)「それでも花山さんは取材なさりたいでしょうね…
(一同がたまきを見る)あっ…ごめんなさい…」
鞠子「とと姉はまだ迷ってるのね」
常子「うん?」
鞠子「本当に止めてよかったのか」
常子「うん…」
鞠子「奥様と茜さんのお気持ちを考えると
とても許可なんてできないわよね」
美子「私は今日の花山さんのお姿を見ただけで…
もうそれだけでうなずけなかった」
水田「最近は昔じゃ考えられないような老け込みようですからね」
『死ぬ瞬間まで編集者でありたい…』と言った花山を思い出す常子

病室で女性看護師に脈をとられている花山が常子たちを睨みつけている
「私が勝手に抜け出さないか見張りに来たのか」
美子「そんな…」
水田「違いますよぉ」
茜「せっかくお見舞いに来て下さったのに」
三枝子「お花とてもきれい…ありがとうございます」
美子「いえ…」
看護師「怒ったりしたら駄目ですよ、血圧また上がりますから」
花山が看護師を挑発するように睨む
(退室する看護師に茜と三枝子)「ありがとうございました」
常子「花山さん…
取材をなさりたいという気持ちにお変わりはありませんか?」
花山「…もちろんだよ」
常子「あれからいろいろ考えたんですが
やはり花山さんがなさろうとしている企画は続けるべきだと思うんです」
(美子と水田)「…!?」
茜「待って下さい、父は仕事ができる状態じゃ…」
常子「ええ…ですからこれ以上の取材を認める事はできません」
花山「どういう事だ?取材しなければ戦争体験者の声を集められんだろう」
常子「あなたの暮しで戦時中の暮らしについて書いて下さいと
読者の方から募集するのはいかがでしょうか?」
美子「募集?」
常子「そう…原稿用紙1枚でも…それよりも短くたっていいんです
皆さんが書いて下さったものをまとめる事ができたら…」
水田「あっ…それなら取材に出向かずとも
多くの声を集める事ができますよね」
花山「だが本当にそれで質の高い記事に?」
立ち上がり花山の顔をのぞき込むような常子
「読者を信じてみませんか?
商品試験の時も信じて応援して下さったんです
新しい雑誌が日々生まれる中で買い続けて下さっているような方々です
我々の思いに共感して戦時中の暮らしについて
ありのままに語って下さるはずです
奥様と茜さんはいかがでしょうか?
これだと花山さんのお体に負担をかけず
記事を作る事ができると思うんですが」
三枝子「ご配慮ありがとうございます」 茜「ありがとうございます」
空(くう)を見つめる花山に常子「花山さんは…いかがです?」
花山「募集文は私に書かせてくれ」
微笑む常子「はい」

病室のベッドで原稿を書く花山
『その戦争は昭和十六年に始まり昭和二十年に終わりました
それは言語に絶する暮しでした
その言語に絶する明け暮れのなかに
人たちはやっとぎりぎりで生きてきました
親兄弟、夫や子、大事な人を失い
そして青春を失い
それでも生きてきました
そして昭和二十年八月十五日戦争はすみました
まるでうそみたいでばかみたいでした
それから二十八年がたってあの苦しかった思い出は
一片の灰のように人たちの心の底ふかくに沈んでしまって
どこにも残っていません
いつでも戦争の記録というものはそういうものなのです
あの忌わしくて虚しかった戦争の頃の「暮し」の記録を
私たちは残したいのです
あの頃まだ生まれていなかった人たちに戦争を知ってもらいたくて
貧しい一冊を残したいのです
もう二度と戦争をしない世の中にしていくために
もう二度とだまされないように
どんな短い文章でも構いません
ペンをとり私たちの元へお届けください』

二ヵ月後

「おはようございます」と出社する常子たちに
「常子さ~ん!」と慌てて階段を下りてくる島倉
常子「はい」
島倉「大変です!」
常子「どうしたんですか?島倉さん」
島倉「(あっ…)もういいから来て下さい早く!」(と階段を上がっていく)
島倉の様子に驚きながらも後に続く常子

(つづく)

花山は看護師を睨みつけたりとか元気ありすぎだろw

取材を広島から始めたのは被爆体験は外せないからだろうか?

今回は花山のセリフに力のあるものが多かったし募集文も美しかった
「…もし一人一人が自分の暮らしを大切にしていたら
もし守らねばならない幸せな家族との豊かな暮らしがあったなら
あの戦争は起きなかったのではないかとね…」
などは本当にそうではないかと思う
もちろん戦争はどちらが悪でどちらが正義とかそんな単純なものではないが
日本やドイツの国民が軍部やナチスによる被害者だというのは違うと思う
おそらく国民の少なくとも一部は戦争を望んだはずだ
格差が広がり生活は苦しく結婚する事も難しくて子どももいなければ…
もういっその事戦争でも起こってガラガラポンしてくれないかと
考えてしまう人たちが増えても不思議ではないだろう
今の日本のネトウヨと呼ばれる人たちがそうではないのか?…とちょっと思う


2016年9月26日月曜日

とと姉ちゃん(151)社員たちの前で在宅勤務制度の導入を宣言する常子

昭和四十九年四月 

社員やテスターたちが揃った編集部 
常子(高畑充希)「10年ほど前から私たちの編集会議には
テスターさんを含めて雑誌作りに関わっている方全てに
参加して頂いています… 
あなたの暮しの読者はどのような方ですか?…扇田さん」 
扇田「どのような…多くは女性ですね」 
常子「では具体的にはどのような方かしら?…島倉さん」 
島倉「はい…我々の想定する読者は主に主婦です」 
常子「では主婦というのはどんな方?…木立さん」 
木立「え~っと…結婚して家庭に入ってる人…(周囲がうなずく)…です」 
康恵(佐藤仁美)「ちょっと待ちなよ、その言いぐさじゃ
働いてる女は主婦じゃないって事かい?」 
木立「あっ…そう言われるとあの…」 
(一同の笑い声)
常子「フフフ…つまり主婦の在り方も随分多様化してきている訳です
女は結婚して家庭に入る…
それが当たり前だとされていたような風潮は
今後ますます変わっていくでしょう(一同がうなずく)
そんな中で私たちの雑誌も変わっていかなければならないと思っています」
緑(悠木千帆)「変わる…といいますと?」
常子「働く女性に役立つ…そのような女性の参考になるような企画を
掲載した雑誌を作るという事です(たまきがメモをとる)
それと同時にこの会社自体も女性が働きやすい場所に
変わっていかなければならないと思います
そこで希望する方はご自宅で働けるようにしたいと思います」
(ざわめく一同)
「自宅?」
「自宅でですか?」
(寿美子や美子も驚いている)
常子「もちろん可能な日は出社して頂きますが
例えば急にお子さんの看病をしなければならなくなったような日は
家での作業だけで済むようにします」
(一同のざわめき)
常子「取材内容の整理や原稿の執筆校正などは
家でも進められると思うんです」
扇田「できる…事はできるとは思いますけども…」
ざわめく一同に微笑む常子「10人いれば10とおりの暮らしがあります
あなたの暮しはそれぞれの暮らしを尊重して働けるような場所を整え
遅くとも10月までには開始したいと思っています」
「10月?」
「すぐじゃないですか?」
常子「初めての取り組みですし仕事に混乱が生じないようにはしますが
皆さん何か問題がありましたら是非遠慮なくおっしゃって下さい」
考えを巡らせているような花山(唐沢寿明)
一同は相変わらずざわついているがだいたいはうなずく
美子(杉咲花)と水田(伊藤淳史)が笑顔でうなずき
寿美子(趣里)は考え込むような表情だ

夕刻、社員たちが退社していく中仕事を続ける寿美子
常子「寿美子さん」
振り向き顔を上げる寿美子
常子「寿美子さんの悩みにきちんと応えられなくてごめんなさい」
(と頭を下げる)
寿美子が首を振る
隣に腰かける常子「ご家庭の事もあるでしょうけど
これから職場環境は整えていきますから退職の件
考え直して頂けないかしら?
これからのうちの雑誌には寿美子さんのような方がどうしても必要なの」
寿美子「…ありがとうございます(と頭を下げる)
いろいろと考えて下さり…主人ともう一度話し合ってみます…前向きに」
笑顔になる常子「本当?」
寿美子「はい」
常子「フフフ…ありがとう寿美子さん
…あっ…でも答えは焦らなくていいからね
いくらでも待ちますから」
寿美子「ありがとうございます」
と、ドアが開き花山とたまきが現れる
花山「この資料用意しといてくれ」
たまき(吉本実優)「はい分かりました」
寿美子が常子にうなずく
たまき「あっ、常子さん」
立ち上がった常子「はいはい」
たまき「先ほど働く女性の参考になる企画っておっしゃってましたよね」
常子「うん」
たまき「まずは実際に会社勤めして第一線で働いている女性を
取材するのはどうでしょうか?
例えば大日ホテルの女性コックさんとか…
そういう方のやりがいとか悩みとかを取り上げてみたいのですが…」
微笑む常子「面白そうじゃない、やってみましょう」
たまき「本当ですか?ありがとうございます!(とお辞儀をして
寿美子に振り向き)あの…寿美子さん手伝って頂けないでしょうか?」
寿美子「私?」
たまき「はい、だって寿美子さんは働くお母さんじゃないですか
その視点でインタビューしてみたら
思わぬ話が聞けるんじゃないかと思うんです
お願いできませんか?」
寿美子「ええ、うん」(とうなずく)
たまき「ありがとうございます!(常子も後ろで嬉しそうに微笑む)
私早速明日から取材交渉に行ってまいります」
寿美子「うん」
たまき「よろしくお願いします」
席に戻った常子の前に帰り支度をした花山が立つ
「あなたの暮しはそれぞれの暮らしを尊重する…いい提案じゃないか」
常子「花山さんにそうおっしゃって頂けると…」
花山「私も私なりに答えを出さねばならんな…お先に失礼するよ」
常子「さようなら」

<花山もまた
あなたの暮しのこれからに必要なものを見いだそうとしていたのです>

帰宅する花山「ただいま」
孫のみのりが「じいじお帰りなさい!」と玄関に駆けてくる
茜(水谷果穂)「お帰りなさい」
三枝子(奥貫薫)「お帰りなさいませ」
「ただいまみのり」と花山がみのりを抱き上げる
三枝子「すぐお夕飯にしますね」
花山「ああ」
茜「みのり、おじいちゃんに会えてよかったね」
みのり「うん、じいじは?」
花山「じいじもだよ、アハハ(とみのりを抱いたままダイニングに向かい)
茜…いくら近いからといってこう頻繁に帰ってきたんじゃ
明彦君が気の毒じゃないか?」(とみのりを下ろす)
茜「このところ明彦さん残業ばかりなのよ
みのりと2人で夕飯食べるのも何だか味気ないし
こっちに来て大勢で食べた方がおいしいもの
お父さんもみのりに会えてうれしいでしょ?」
みのりを膝にのせ椅子に座る花山「それはそうだがねえ…」
三枝子「いいじゃないですか
こうして一家団らんできるなんて幸せな事ですよ
お体を壊すまではお帰りが遅くて
こんなふうにそろって夕食をとるなんてめったになかったんですもの」
花山「うん…」
茜「何だかお父さんがお体壊してよかったみたいな言い方ね」
三枝子「そんな事は言ってないでしょ、もう…」
みのり「ねえじいじ、クレヨン取ってくれる?」
花山「ああ」(と手を伸ばす)
みのり「じいじのお顔描いてあげるね」
花山「ああ、ありがとう…は~い」(とクレヨンと紙を準備する)
クレヨンを手にした孫を見て微笑む花山

仏壇に手を合わせ目を閉じる常子
「とと姉、これお願い」と鞠子(相楽樹)が後ろに座り皿を渡す
振り向き「ああ、ありがとう」と皿(枇杷)を受け取る常子「初物ね」
鞠子「ええ」
常子が枇杷を供え鞠子が手を合わせる
鞠子「よっちゃんから聞いたわ」
常子「ん?」(と振り向く)
鞠子「社員さんのために勤務体制見直そうとしてるって」
常子「うん…まだまだ手始めという感じだけどね
社内整備をしたところで全ての問題が解決するとは思わないし
働く女性やお母さんたちを取り巻く問題はもっとずっと根が深いと思うから
でもとりあえずはできる事から始めないと何も変わらないと思うから」
「フフフ」と鞠子が可笑しそうにうなずく
常子「ん?」
鞠子「とと姉は社員にとってもやっぱりとと姉ちゃんなのね」
常子「そういう性分なだけよ」
鞠子「とともきっと驚いてるわよ
『幼かった常子がこんなに立派になって』って」
仏壇の写真を見つめる常子「そうかなあ…」

「ただいま戻りました」と寿美子とたまきが編集部に戻る
常子「寿美子さん、取材はどうだった?」
寿美子「とても興味深いお話が伺えました
たまきさん聞き上手で私なんかいらないくらい」
たまき「とんでもないです、寿美子さんが水を向けて下さったから
あそこまでお話し頂けたんですよぉ」
美子「いいコンビの誕生ね」
常子「ねえ」
たまき「あっ…花山さんに今後の取材方針の相談したいんですけども…
お部屋ですか?」
常子「ああ…それがね…」
美子「花山さんまだいらしてないの」
(2人)「えっ?」と腕時計を見る
たまき「もう2時になるのに…」
美子「いつものようにね
ぶらっと展覧会でものぞいてらっしゃるんだと思うけど
このところ体調思わしくないから…」
常子「連絡がないのも心配ねえ」
木立「あの…常子さん」
常子「はい」
受話器を手に木立「花山さんからお電話です」
常子「はい(と立ち上がり)ありがとう(と受話器をもらい)
常子です、今日はいらっしゃらないんですか?
心配していたところだったんですよ」
(花山)「今取材で広島に来てる」
常子「広島?何の取材ですか?」

たばこ屋の前の赤電話に硬貨を落とす花山
「それはまとまってから伝えるよ」

常子「ですが今のお体では地方での取材は無茶です」

花山「心配ない…4日後に帰る…では」(と受話器を置く)

常子「あっ…ちょっと…」(と通話が切れた受話器を置き3人を見る)
たまき「花山さん広島にいらっしゃるんですか…?」
常子「何かの取材らしいのだけれど…」
美子「何かしら…」
心当たりがない様子の常子

首にはカメラをぶら下げ足元のカバンを手にした花山が歩き始める

(つづく)

たまきが会社で「常子さん」と呼んでいた(入社前は「おばさん」)
この会社では常子と美子が「とと姉ちゃん」「よっちゃん」と呼び合い
公私の別がない感じだったがたまきはさすが
入社試験を受けて入っただけあってけじめをつけているようだ

久しぶりに登場した三枝子の「お体を壊すまでは~めったになかった…」
は普通に花山の仕事への取り組みの説明セリフだと思ったのだが
それに対する茜の「何だかお父さんが体壊してよかったみたいな
言い方ね」は何か深い意味でもあるのだろうか?
三枝子に謎セリフが多い事は以前にも書いたが
茜のセリフを考えると三枝子ってのほほんとしているようでいて
やはり愚痴っぽいところがあるのかなあと思ってしまうw

寿美子と絡んでるシーンのたまきがうざいw
快活で前向きなのだろうが見てるとなんだか痒くなる
まあ吉本実優の演技がそれだけ上手という事なんだろうけど