2016年6月4日土曜日

とと姉ちゃん(54)常子が遂に星野にデレる~常子に不満が募る美子

昭和十四年十月 
鏡台の前でごわごわした髪を触る美子(杉咲花)が後ろを振り向く 
「お願いとと姉ちゃん、三つ編み直してくれない?」 
ちゃぶ台で書類を確認している常子(高畑充希)「あ~今忙しい」 
美子「え~」 
常子「ちょっと直すくらい自分でできるでしょ?」 
美子「やってもらう方がきれいなの」 
常子「美子ぉ、見た目に気を遣うのもいいけど学生の本分は勉強でしょ」 
美子「また始まった、もういい」 
「2人ともまだ?」と、鞠子(相楽樹)が顔を出す 
常子「あ~ちょっと待って」 
鞠子「遅刻嫌だから先行くね」 
常子「えっ!」 
美子「私も!」と、立ち上がり部屋を出ていく 
書類をしまいながら常子「あ~待って待って待って…」 

玄関を飛び出す鞠子「今日も走らないと間に合わないよ」
美子と常子も続いて出てくる
常子「走れば間に合うから大丈夫」と、戸を閉める
外には見送りの君子(木村多江)まつ(秋野暢子)
照代(平岩紙)富江(川栄李奈)
まつ「また鞠子大荷物だね」
書籍の束を抱えた鞠子「今日は研究会の発表があるので」
富江「それ全部読んだの?」
鞠子「もちろん!」
照代「常子ちゃんも重そうね」
書類の詰まった大きな封筒を抱えた常子「今日までの作業があって」
まつ「それに比べて美子は軽そうだねぇ~」
照代「お弁当しかないんじゃない?」
「一応教科書も入ってますぅ~」と、ペラペラのカバンを掲げる美子
常子「一応ってどういう事?ちゃんと勉強…」
話を最後まで聞かずに「行ってきます」と、笑顔で振り向き駆けだす美子
常子「あっ、ちょっ…こら!」と、後を追う
鞠子も「行ってきます」と、2人を追う
君子「気を付けるのよ」

青柳商店前
常子「ちょっとよっちゃん待ちなさい!」
美子「待ちません~!」
「とと姉待って!」と、つまずく鞠子
「あっ、ちょっと鞠ちゃん…頑張れ~鞠ちゃん走って!」
と、懸命に走っている常子

タイトル、主題歌イン

<常子がタイピストとなって2年半
今では大きな戦力として認められていました>

タイピングをしている常子の横に来て諸橋(野村麻純)
「小橋さん、それが終わったら原稿の整理手伝って頂けない?」
常子「かしこまりました」
諸橋「ありがとう」と、去る
隣でタイピングする多田(我妻三輪子)
「あ~取られたかぁ、私もお願いしたかったのに」
常子「あ~…終わったらお手伝いしましょうか?」
多田「本当に?3時までなんだけど大丈夫?」
壁の時計は2時20分
常子「どうしたもんじゃろのぉ…」
早乙女(真野恵里菜)「悩んでる暇があったら手を動かしなさい
小橋さんなら間に合うでしょ?」
笑顔になってうなずく常子「はい!」

鞠子「今挙げたいくつかの点において与謝野晶子が提言した独立とは…」

<帝都女子大学に進学した鞠子は早稲田大学の文学研究会で
満たされた時間を過ごしていました>

発表を終えた鞠子が席に戻る
隣に座る木戸稔(白洲迅)「小橋君の発表は相変わらず出来がいいな」
少し照れたような鞠子「木戸さんにそう言ってもらえると光栄です」
笑顔の木戸「君の後に発表するのが憂鬱だよ」
笑顔で首を振る鞠子

<一方、美子は…>

女学校の教室
教師に呼ばれ前に出る美子
返された国史の試験の採点は64点
それを見てほっとしたように笑う美子
教師「喜べる点数ですか?
常子さんでも、もう少しいい点数でしたよ
鞠子さんに関しては90点以下など一度もありませんでした」
「すみません」と、頭を下げた美子がしょんぼりと席に戻る

学校の帰り、元気のない美子が青柳商店へと入る

陽当たりのいい縁側で縫い物をしている美子
滝子(大地真央)「うまいもんだねえ」
美子「おばあちゃまを見習ってやってるだけです」
滝子「私よりも縫い目もきれいだし色合いもいいよ」
隈井(片岡鶴太郎)「大した腕前だあ」
美子「はいできた、膝なので二重にしておきました」と、服を小僧に渡す
小僧「お~こりゃいいや、ありがとうございます」
美子「次は…」
別の小僧「あっしのお願いしやす」と、服を渡す
隈井「またお前穴開けたのか?」
小僧「美子さんに直してもらえるんで張り切っちゃいやして」
滝子「ったく…」と、笑っている
笑顔の美子

<美子もまた充実した時間を過ごせる場所を見つけていました>

縁側に姿を見せた清(大野拓朗)が小声で滝子と隈井を呼び3人は奥に行く
少し気になるような顔をする美子

<昭和14年9月 ヨーロッパで第2次世界大戦が勃発
一方、日本では日中戦争の打開のために国家総動員法が成立
戦時に際した人・物の国家統制が進んでいました
暗い時代の足音は常子たちの暮らしに迫ってきていたのです>

森田屋居間
宗吉(ピエール瀧)「しばらくの間、松弁当を作るのを見合わせようと思う」
(一同)「えっ…」
照代「竹弁当だけにするって事ですか?」
宗吉「しかたねえだろ、国が決めた値段で売ってるものなんか
すぐに売り切れちまって回ってきやしねえ」
長谷川(浜野謙太)「みんな軍に取られちまうんですかねえ」
照代「しかたないですよ、そういうご時世なんですから」
まつ「はぁ…お国が大変なんだ、辛抱のし時だよ今」
唇をかんでいるような常子
まつ「でもなあ、深川からも兵隊さんとられ始めてんだ
あんたにもいつ赤紙が来るか…」と、長谷川を見る
長谷川「え~!?ちょっと…やめて下せえ!」
富江「早く支那との戦争が終わればいいのに」
宗吉「心配すんな、日清日露世界大戦と勝ち続けてきた大日本帝国だ
この戦争もすぐに勝って終わっちまうさ」
長谷川「そうっすね」
宗吉「それまでの我慢だ」
まつ「そうだ」
君子「あの…木材の方は大丈夫なんでしょうか?」
常子「おばあ様のお店の事ですか?」
君子「ええ」
美子「みんな深刻そうに相談してた」
常子「うん?」
君子「えっ?」
鞠子「何で知ってるの?」
常子「あ~美子また縫い物しにおばあ様のところに行ってたの?」
美子「頼まれるんだからしかたないでしょ」
常子「縫い物もいいけどちゃんと勉強もしなさいよ」
美子「勉強なんかしたって成績上がらないもん」
鞠子「そんな事ないわ、勉強はした分だけ結果は出ます」
美子「私はまり姉とは違うの」
君子「やめなさい」

<星野は帝国大学の大学院に進み植物の研究を続けていました>

甘味屋でノートを広げて今週の出来事を確認する星野(坂口健太郎)「よし…」
(弟からの葉書・今日こそ常子さんに必ず傳える)
常子が来て2人は例によってお汁粉を注文する
常子「早速ですが今週はいかがでした?」
星野「もうですか?まだお汁粉も来てないのに」
笑顔の常子「すみません、楽しみでつい」
ノートを確認する星野「戦地にいる弟から葉書が届きました」
常子「本当ですか?」
星野「はい、体は元気なので心配はするなと
向こうの生活にも慣れてきたみたいです」
常子「それはよかった」
星野「僕も安心しました」と、ノートの(弟からの葉書)の部分に線を引く
常子「でも心細い事には変わりないですね
遠く離れた戦場で家族と離れて暮らすなんて
私には想像もできません」と、心配そうな常子を見た星野
ノートに目を落とすが「以上です、今週はそれだけでした」

お汁粉を食べて店を出た2人
星野「今日も楽しかったです」
常子「星野さんいつもそればかり」と、笑顔でうつむく
星野「いやぁ、本心なんですがね…」
と、立て看板の貼り紙(町内会決議に依り)に目を止める常子
「あ…パーマネントのお方は当町通行を御遠慮下さい」
星野「ご時世ですね、大阪では外灯も自粛して夜は暗いそうですよ」
常子「へえ~この辺はまだ明るいのに」
星野「砂糖も節約しなくてはいけませんからねぇ
あのお汁粉も食べられなくなるかもしれません」
常子「えっ?」
星野「ああ…あくまでも、かもしれません…という話です」
常子「え~…」
と、「おい貴様ら!」と背広姿の男が2人に近づいてくる
背広「時局を何と心得るか!
大陸では皇軍将兵が東亜の安寧のために戦っているという時に
乳繰り合い風紀を乱し恥ずかしいと思わんか!」
常子「いやあの…わ…私たち」
背広「口答えするのか」
常子の前に出る星野「やめて下さい!」
背広「何だぁ貴様!」
驚いたように星野の背中を見ている常子
星野「ご気分を害されたのなら謝ります、ただ…
僕たちは乳繰り合っていた訳ではありません」
常子を庇うように大きく手を広げる星野
背広「何?」
星野「乳繰り合うとは男女が密に会って情を交わし合う事を意味します
情を交わし合うとはすなわち…性行為を意味している訳です」
口を手で押さえる常子
背広「何言ってんだお前?」
星野「つまりそのような事が一切ない僕らに対して乳繰り合っていると言うのは
お門違いであり全くもって間違った言葉の使い方であると言えます
間違った言葉遣いをする事こそ風紀の乱れにつながるのではないでしょうか!
以上です!」
背広「うるさい!全く最近の若いやつは…もういい!」と、去っていく
常子は口を手で押さえたままだ
星野「失礼、卑わいな言葉を…」
「いや…ありがとうございます」と、星野の顔を見れない常子
星野「はぁ…でもよかった…常子さんを守る事ができて」
と、ほっとしたように笑う
そんな星野を見て笑顔になる常子「私もよかったです」
星野を見つめる常子「頼もしい星野さんを見る事ができて」
笑い合う2人

お部屋で刺繍をしている美子「とと姉ちゃんさぁ
最近口うるさいと思わない?あれしろこれしろって」
読書をする鞠子「口うるさいのは昔からよ」
美子「働き始めてから変わったわよ
お金出してるの鼻にかけてやけに自分の考え押しつけてくるっていうか」
鞠子「まあまあ、いろいろ大変なのよ」
美子「月に一度のお出掛けだってそうよ
みんなもう大人なんだし家訓だからって毎月律儀に守らなくたって…」
鞠子「大人って…あっ、帰ってきたかな」と、戸の方を見る
慌てて刺繍をしまい勉強してるふりをする美子
戸を開けて入ってきた常子は何か様子が変だ
「お帰り」と言う2人にただいまも言わず「フフフフ…」と笑い
机の前に座ると思い出したようにまた「フフッ…」と笑い
両手で頬杖をつくと頬を手でピタピタしたり首を傾げたりニヤついたままだ
そんな常子の背中を見ている鞠子と美子

下宿に戻った星野にちょうど電話がかかってきている
受話器を取った星野の顔が曇る
「あ…申し訳ありません
もう少しだけお時間下さい、まだ決心がつかないんです」

常子の背中を不満気に見ている美子
常子の背中から本に目を戻す鞠子

<この時はまだ人生を左右する大きな決断を迫られる事に
常子は気付いていませんでした>

相変わらず夢見るようにニヤついたまま幸せそうな常子

(つづく)

冒頭、鞠子と美子は「行ってきます」と言っているが常子は言っていない
これはラストで浮かれて帰ってきた常子が「お帰り」と言う2人に
「ただいま」を言わないのと揃えたのかな?
ほんとに細かい演出だ

常子が就職して2年半てナレだから
前回ラストからさらに1年半経過したようだ

なんか鞠子のお相手みたいな男の人が登場したね

女学校のシーン
美子が最初にほっとして笑ったのは赤点(60点以下)を免れたから?
教師の「常子さんでも、もう少しいい点数…」ってw

2年半も常子と星野は毎週会っていたみたいだ
でも今回の後半で初めて常子は星野を男性として意識したようだね
常子を庇う星野の背中と広げられた手
それに、もしかしたら卑わいな言葉もトリガーだったのだろうか?
とにかく星野への常子のデレ描写が遂に描かれた(部屋に帰ってから)
もうそれは滑稽なほどのデレデレぶりなのだがw

弟の件で哀しい空気になったので星野は予定を変更したが
常子に今日こそ伝えたかった言葉とは
次週予告にあったあの言葉なのだろう
妹思いの常子は(とと姉ちゃん的には娘なのかもしれないが)
星野の弟の事をとても心配していたね

今回は常子に対する美子の反発を中心に描かれたが
これは抑圧しようとする父親と娘の関係なのだろう
常子と1歳違いの鞠子と違って美子は歳が離れている
思春期になった美子がとと姉ちゃんに対して反発するのは
自然な事なのかもしれない
常子はととの代わりになろうとしているのだから



2016年6月3日金曜日

とと姉ちゃん(53)常子の恩返し~美子は女学校に、鞠子は大学に…

なにやら包みを抱えて小走りに帰宅する常子(高畑充希) 

森田屋居間 
常子が包みを開けると大量の肉 
それを覗き込んでいる森田屋一同「すき焼き!?」 
常子「はい!給料日なのでみんなで外食もいいかなと思ったんですけど
やっぱりここで食べる方がいいなあって」 
照代(平岩紙)「それでお肉を?」 
常子「これだけあれば皆さんで食べられますもんねえ」 
皆は大喜びで、宗吉(ピエール瀧)が「おめえはよく出来た娘だなあ」
と、常子の背中を叩き「よ~し、じゃあこの肉はチャッチャと俺がおいしく…」
と、肉に手を伸ばすのだがまつがその手を叩く 
宗吉「痛えな…何すんでい?」 
まつ(秋野暢子)「うちの今日の夕飯はイワシと煮物だ
すき焼きにする訳にはいかないね…
下ごしらえだってしちまってんだ、今更変更なんかできやしないよ」 
宗吉「そんなもん明日食やぁいいだろう、せっかく常子がこうやってよ…」 
まつ「この肉は常子が懸命に働いて初めてもらった給料で買った肉だ
うちのもんが食べる道理はないよ」と、そっぽを向く 
まつを見る常子 
照代「お母さん…」 
富江(川栄李奈)と長谷川(浜野謙太)もしんみりとしている 
「まあ…母ちゃんの言うとおりだ」と、言った宗吉の腹が鳴り笑う一同 

小橋一家の部屋 
「今月分のお給金です」と、常子が君子(木村多江)に給料袋を渡す
君子の後ろには鞠子(相楽樹)と美子(根岸姫奈)も正座している
常子「おばあ様には返済してきたので残りは生活費に充てて下さい」
君子「ありがとう…お勤めご苦労さまです」と、頭を下げると
鞠子と美子もそれに倣う
常子「フフッ!いえいえそんな、あっ、でもあの…
一つお願いしてもいいですか?」
君子「なあに?」
常子「あれ、再開しません?」
(3人)「あれ?」
常子「月に一度のお出掛け」

壁に掛けられた竹蔵の家訓三か条

常子「ほかの家訓は続けられたけど
毎月お出掛けするような余裕はなかったからずっと気になってて
どうでしょう?これを機会に再開してみませんか?」
君子「いいわね」と、笑う
鞠子と美子も笑顔でうなずく
常子「よかった」と、ほっとしたように笑う

君子が仏壇に給料袋を供える
後ろには3姉妹
君子「竹蔵さん、常子が初めてもらったお給料です」

ちゃぶ台の上に炭の入った?大きな箱を置き、その上に鉄鍋
お部屋ですき焼きの肉を頬張る一家
常子「ん~!勝って手にした肉は美味じゃのう!」
鞠子「美味じゃ美味じゃ」
美子「美味じゃ美味じゃ」
君子「美味ねえ、フフフフ…」

深川
地図を手に道に迷っているふうの東堂(片桐はいり)
「こちらに行くべきか、はてまたこちらか…
おお、逆境は豊かに人を利する、いざ行かん」と、前に進むと
「東堂先生!」と、常子が嬉しそうに駆けて来る
東堂「小橋さん、お元気そうね」
常子「今日はありがとうございます、こちらです」と、案内する
歩き出す2人
常子「あっ、お荷物お持ちしましょうか?」
東堂「いいえ結構」
常子「さっき道に迷われてませんでした?」
東堂(さらっと)「いいえとんでもない」

<常子は就職先を世話してもらったお礼に東堂を家に招きました>

森田屋居間でお茶を飲む東堂
その前に並んで座る森田屋の面々はなんだか様子が変だ
常子「どうしたんですか?いつもどおりお話しを…」
宗吉「だってよ、インテリの先生なんだろ?
しゃべってバカがバレたら恥ずかしいじゃねえか、なあ」
富江「それに厳しいらしいし…」
東堂「は?」
まつ「あの…雷に向かってお静かに…とおっしゃったとか…」
東堂「それは申しました」
「あ~」と、うなずいて押し黙る面々
笑ってしまう常子「だから黙ってしまわずに」
長谷川が周りを見て手を上げる「じゃあ先生」
東堂「はい」
長谷川「あの…誰かの名言って教えて頂けます?」
東堂「名言?」
長谷川「ええ、人の印象がよくなるような」
宗吉「長谷川、てめえそうやってまた受け売りを増やそうって魂胆だな?」
長谷川「ヘヘッ…バレました?」
宗吉「先生、こんな質問より俺のに答えて下せえ」
東堂「どうぞ」
宗吉「あの…俺はよく このろくでなし! なんて言われるんですがね
よくよく考えると意味が分からねえ
この ろく っていうのは何なんですかい?」
東堂「ろく というのはもともと 陸 という字を書いて平らな土地を意味し
物や性格がまっすぐな事を申しました
それが ろくでない という表現になりますと
性格がひねくれている人を表していたのですが
それが更に転じて役に立たない人を指すようになったといわれております」
(一同)「お~」と、感心する
君子「さすが何でも知ってらっしゃるのね」
富江が手を上げる「じゃあ先生、夜寝る時天井を見ていると
木目が人の顔に見えてくるんですが、それは何かの暗示ですか?」
東堂「いえ、それは気のせいでは?」
間髪入れずにまつ「先生様、どうしたらうちはもうかりますかね?」
東堂「それはご自身でお考え下さい」
長谷川「双葉山は勝ちますか?」
東堂「存じません」
宗吉「天狗の捕まえ方は?」
東堂「存じません!」
照代「最近疲れがとれなくて…」
東堂「何だと思ってらっしゃるんですか私を!」と、怒り出す
(面々)「すいません…」と、しょんぼり頭を下げる
東堂「疲れがとれないと言われましても…」と、ハンカチを口にあて笑う
小橋一家も笑っている
美子「先生に教えて頂くのは私なんですからね」
と、東堂のそばまで行って座り「先生、来年から女学校に上がります
お世話になります」とキチンと挨拶する
東堂「こちらこそ、お二人の妹さんならかわいがりようがあるわね」
君子「先生、鞠子はどうですか?」
東堂「順調でございます
このまま進めれば大学合格は間違いございません」
(一同)「お~」
嬉しそうな鞠子「先生の行き届いたご指導のおかげです」
東堂「いいえ」
常子「私が会社で働けるのも先生が尽力して下さったおかげです」
東堂「いえいえ」
君子「お世話になりっ放しで何とお礼を申し上げていいか…」
東堂「いえいえいえ」
話はこれくらいにしてお食事でも…となるのだが
招かれたお返しをしたいと言い出す東堂
持ってきたカバンを探る東堂に常子が「いやそんな頂けません」と言うが
東堂「いいえ、是非受け取って頂きたいの」
常子「いやでも…」
と、東堂が台本を取り出すと立ち上がり隣の間へと歩いていく
(一同)「えっ?」
東堂「では始めます」
鞠子「始める?」
突如顔つきも声も変わる東堂「存うるか存えぬかそれが疑問じゃ
残忍な運命の矢石をひたすら堪え忍うでおるが大丈夫の志か
あるいは海なすかん難をむかえ撃って戦うて根を絶つが大丈夫か
死は眠りに過ぎぬ」
長谷川「何だろう?これ」
富江「さあ…」
鞠子「ハムレットっていうお芝居だと思う…」
君子「お芝居?」
照代「これがお礼って事?」
常子「恐らく…」
東堂「眠る!ああ…」
宗吉「いつもああなのか?」
まつ「やっぱり変わった先生様だなあ」
美子「女学校に行くの不安になってきた」
東堂「やすやすとこの世が去られるものを
誰がおめおめとしのうでおろうぞ…」と、東堂の芝居は続いている…

<幼いと思っていた美子が女学校に通う年齢に…
常子は妹の成長の早さに驚きつつも幸せを感じていました>

一年後、昭和十三年四月

満開の桜の下を駆ける美子(杉咲花)
常子「ちょっと待ってよっちゃん!」
立ち止まり振り向く美子
「先に行って切符買ってくる、みんなゆっくり来ていいよ」
常子「あっ、ちょっと…フフ…行っちゃった」と、君子と鞠子と笑う

<この春、美子は女学校に
鞠子は帝都女子大学に無事進学しました>

デパートの食堂
お子様ランチを頬張る美子「ん~!おいしい!」
一家の笑い声

美子は中座している
常子「今月のお出掛けはデパートにして正解ね」
常子を拝む鞠子「職業婦人様様です」
常子「フフッ、おだてないで
あ~でもよっちゃん、お子様ランチでよかったのかな?
遠慮したんじゃない?」
鞠子「本当に食べたかったみたい、まだまだ子どもね」
常子「こんな調子で大丈夫かしら、女学校に上がったっていうのに」
君子「まあ、美子は心配ないわ
鉄郎さんと同じにおいっていうの?」
2人「えっ?」
君子「たくましいというか要領がいいというか」
常子「そう…ですかね?」
ハンカチを手に戻ってくる美子「何の話?」
常子「ううん、何でもない」
と、テーブルに君子の食事についていたいちごの皿が残っている
君子が娘たちにくれたのだが2粒しかない
常子が美子にすすめる
「本当?ありがとう」と、いちごを食べる美子「ん~おいしい…」
残りを常子は鞠子にすすめるが
「ううん、とと姉のお金で来たんだからとと姉が」と鞠子
常子「いいのいいの鞠ちゃん食べて」と皿を押す
「ううんとと姉が…」「いいから鞠ちゃん…」「いいから…」
と、皿を押し合う2人
それを見ていた美子
「よし!そんなにもめるんだったら私がなんとかしてあげる」
常子と鞠子「えっ?」
と、美子が残りの1粒に手を伸ばして食べてしまう
口を開けて驚く常子と鞠子「あっ」
家族を見渡し美子「これで丸く収まるでしょ?」
笑いだす一同
鞠子「たくましいこと」
美子「えっ?」
美子を見据えて常子「たくましいこと」
美子は怪訝な表情

<この美子が小橋家に新しい風を巻き起こしていくのです>

(つづく)

君子が仏壇に給料袋を逆さまに供えて、あれっ?て思ったんだけど
ちょこっと調べたら両方あるみたいだね
逆さまが正しいって意見が多かったかもしれないが
宗派によって違うという意見もあった

肉を食べた常子が「勝って手にした…」と言ったのは
最初意味がわからなかったんだけど
あれは10話の二人三脚で玉置兄弟に勝って手に入れたお米を食べた夜に
「勝って手にした米は美味じゃのう」と言ったのを踏襲したんだね
鞠子も美子もそれを覚えていたから美味じゃ美味じゃと応じたのだろう
それにしてもあの肉の量は4人では食べごたえがあったと思う
姫奈ちゃんも最後にお肉を食べれて良かったね

東堂が道に迷ってたのをさらっと隠すところ笑った

森田屋の面々が東堂へくだらない質問を繰り出す間が良かった
まつから始まって東堂が怒り出すまで秀逸

中座してた美子は君子の「(美子は)たくましい…要領がいい…」
を聞いていないから怪訝な表情だったね
いちごのエピソードは新登場の
(杉咲)美子の茶目っ気を印象づけたシーンだった




2016年6月2日木曜日

とと姉ちゃん(52)所詮この世には男と女しか…~一家の大黒柱になる常子

滝子の部屋 
考えをまとめるように瞬きの多い常子(高畑充希)「あの…
男性と女性が尊敬し合って働くのは難しい事なんでしょうか?」 
滝子(大地真央)「うん?」 
常子「その早乙女さん、男性に見下されまいという思いが
とても強いように思うんです」 
滝子「だから甘く見られないように
男から頼まれた雑用はするなって、そういう事かい?」 
常子「恐らく…早乙女さんのおっしゃる事も分からなくはないのですが
困っている方を助けないというのも…
どうするべきか思い悩んでしまって」 
滝子「フフフ…悩む事なんてこれっぽっちもないさ」 
心もとない顔で滝子を見ている常子 
滝子「そうやっていがみ合うから余計互いに受け入れられなくなる
男が悪いだ女は駄目だの言ったところで
所詮この世には男と女しかいないんだよ
だったらうまくやっていくしかないだろう」 
常子「そうか…」と、目の前が開けたような笑顔になる 
常子「そうですよね!」  
滝子「アハハハハ!」 
常子「おばあ様のおかげで胸のつかえが取れました
ありがとうございました!失礼します」と、急いで部屋を出ていく 
滝子「あ…常子?」
隈井(片岡鶴太郎)が茶菓子を運んでくるが 
常子「あっ、失礼します」と、走るように去る 
そんな常子を見て楽しそうに笑っている滝子 

総務部 
大福餅を口に入れる山岸(田口浩正)
常子「確かに私は半人前です、タイプライターの技術も他の方には及びません
だからこそ私にできる事をやって皆さんのお役に立ちたいんです
手書きの資料でも机の片づけでも誰かの役に立つのであれば
会社のためにもなるのではないでしょうか」
茶をすする山岸「そうねえ…」
常子「禁止されてしまったら私は何もできなくなってしまいます
どうか考え直して頂けませんでしょうか?課長!」
指についた粉をなめながら面倒くさそうに山岸
「ん~分かった分かった、禁止令はもう取り消そう」
常子「ありがとうございます!失礼します!」と、笑顔で去る
山岸(小声)「うるっせえなあ…」

常子がタイプ室に入ると男性社員が2名いて常子に仕事を依頼する
例によって部屋が静まり返る
早乙女(真野恵里菜)は余裕の表情だ
常子「分かりました、準備して営業部に伺います」
早乙女が常子を見る
男たちが部屋を出ていくと早乙女が「あなた!」と、立ち上がる
常子に詰め寄る早乙女「一体どういう神経をなさっているの?」
他の女たちも立ち上がり常子を囲む
常子「私は…たとえ雑用でも必要とされるなら受けるべきだと思うんです」
諸橋(野村麻純)「ふざけないで、それは先日禁止令が出たじゃない」
他の女「そうよ、課長に言われたばっかりじゃない」
常子「先ほど課長にお許しを頂きました」
(女たち)「…」
常子「男子社員を拒絶しても私たちの立場がよくなる訳では…」
早乙女「甘いのよ!いいように使われてるのが分からないの?
私たちがこれまでどれだけ理不尽な思いをしてきたか…
雑用を押しつけられ失敗の責任をなすりつけられ
何の評価も得られない!女だというだけで…
昨日今日入ってきたあなたには分からないでしょうけど」
常子「昨日今日入ったからこそできる事なのかもしれません
男性に諦めを抱かずどんな事も引き受ける事で
女性の評価を上げるきっかけになれば…」
早乙女「どうせ無駄なのよ!
昨日だって見たでしょ?向こうは言いなりになってほしいだけ
女に有能さは求めてないの
雑用を手伝っても当然だと思ってる
どんなに苦労しても努力しても誰も見向きもしないわ!」
常子「私は困っている人がいたら助けたいと思います
少しでも力になれるのであれば」
部屋の様子を窺っていたような山岸が入ってくる
「もうちょいちょいちょいちょい…困るよ職場でもめ事は」
早乙女「課長!禁止令を撤回したというのは本当ですか?
この件は私に一任して下さったはずじゃなかったんですか?」
山岸「それは言葉のあやでしょう
君がもう少しうまくやってくれると思ったからさぁ」
諸橋「では課長は早乙女さんが間違っているとおっしゃるんですか?」
「そうですよ」「言葉のあやってなんですか?」「ちゃんと言って下さい」
女たちの集中砲火を浴びた山岸が態度を変える「小橋君が悪い」
常子「えっ?」 他の女たちも「えっ?」
山岸「君は新人なんだから文句を言わず早乙女君たちの指示に従ってよ」
常子「そんな…」
山岸「手書きの清書は一切必要なし!
ね?今後は仕事全部早乙女君の指示に従いなさい、分かったね?」
と、「ちょっとお邪魔するよ」と総務部長の佃がドアを開けて入ってくる
山岸「部長!」
佃(斉藤洋介)「何だ、取り込み中だったのか」
山岸「いやいやいやもう何の問題もございませんよ
ただの意見交換でして、ええ」
佃「小橋常子君ってのは?」
常子「あ…私ですが」
山岸「小橋君来なさい!」
常子「はい」と、部長の前にいく
佃「君か?この書類を清書したのは」と、手にした書類を見せる
確認する常子「はい」
佃「これを作ったのはどんな子か知りたかったんだ
こんなにたくさんの書類を手書きなんかで書いて…」
部長の話を聞いている女たち
心配そうな多田(我妻三輪子)
佃「しかし見やすさはタイプライターに何ら劣っていない
こちらの書類も見やすくて分かりやすい
すばらしいよ」
少し驚いたような多田
息をのんだような早乙女たち
佃「これからもお願いすると思うからその時は頼むよ」
常子「あ…はい」
「では」と、退室する佃
山岸「うん、うんうん、まあ…そういう訳だから
これからは小橋君の思ったように動いてごらんなさい
期待してるよ」
常子「はぁ…」と、顔が少し引きつる
「一件落着」と、部屋を出ていく山岸
早乙女「小橋さん」
常子「はい」
早乙女「上の決定ですので雑用を受ける事もタイプの使用も認めます」
常子「ありがとうございます」
早乙女「ただし、私とは考えがまるで違います
そこは譲るつもりはありませんから」
常子「はい」
他の女たちも口は挟まない
多田は少し嬉しそうな顔をしている
早乙女「皆さん、早急に仕事に戻って下さい」
「はい」と、席に戻る女たち
早乙女「小橋さん」
「はい」と、呼ばれた常子が早乙女の席の前まで行くと
「これを4部、今日の4時までにお願いします」と、原稿を差し出す早乙女
常子「はい、かしこまりました」と、原稿を受け取る
自分の席に戻りタイピングを始める常子

<この出来事をきっかけに常子はようやくタイピストとして歩み始めました
常子の丁寧で懸命な仕事ぶりは
少しずつ早乙女たちにも認められていったのです>

手書きで原稿を書く常子

営業部へ書類を届けに駆け込む常子

常子の書類を確認している早乙女「確かに受け取りました」
「ありがとうございます」と、笑顔の常子

甘味屋でお汁粉を食べている常子と星野(坂口健太郎)
「そうですか、お仕事は順調ですか、それはよかった」
常子「すみません、ご心配おかけして」
星野「いえ、僕は僕で論文の執筆などがあり
森田屋さんにも伺えなかったもので」
常子「論文?」
星野「はい、もう最終学年になりましたのでそろそろ卒業の準備をと」
常子「そうですか、星野さんもご多忙だとなかなかこうして会えなくなりますね」
星野「ああ…そういう事になりますね…」
(沈黙)
寂しい表情になった常子が壁の貼り紙に目をやる
(来週より毎週日曜日 お汁粉半額)
常子「あっ、ではこうしませんか?」
星野「はい?」
常子「このお店は来週から毎週日曜日にお汁粉の値下げを始めるそうです
ですから毎週日曜日にこの時間にここでお会いして
一週間にあった出来事を報告し合うというのはいかがでしょう?」
星野「えっ?」
常子「あ…嫌ですか?」
星野「ああ…いえいえ」と、笑顔で首を振る
星野「喜んで、是非そう致しましょう」
常子「フフッ、よかった」

<タイピストになり3週間が過ぎたこの日
常子のもとに待ち望んだものがやって来ます>

足取りも軽くタイプ室に入る常子
部屋の中央に机を寄せて輪になって昼食の女たち
早乙女の弁当を覗く常子「きれいですね!」
早乙女「何です?唐突に」
他の女たちも笑っている
常子「色合いも美しいしきれいです
お弁当屋さんに住んでいる私が言うんですから間違いありません」
早乙女「早起きして手間をかけてますから」(少し照れているのかもしれない)
感心したように常子「はぁ~心がけが詰まってるんですね」
早乙女「私の事はいいですから
早く食べないとお昼の時間がなくなりますよ」
常子「そうですね、失礼します」と、席につき弁当の蓋を開ける
隣の多田「何かいい事でもあった?」
常子「えっ?」
多田「朝から嬉しそうだから」
常子「分かります?フフフ、出ちゃってました?アハハ」

<そう、この日は常子にとって初めてのお給料日>

タイピストたちが並び立つ中、部長に名前を呼ばれて前に出る常子

<そしてついに…>

四月分と書かれた給料袋を受け取り、それを眺めて笑みをこぼす常子

帰路、給料袋の入ったカバンを大事に胸に抱えるあまり
中腰になってしまっている常子が青柳商店へと入る

滝子の部屋
緊張した面持ちの常子が畳に封筒を置き手をつく
「おばあ様、今月から少しずつですがお金をお返し致します
ありがとうございました」
封筒を取った滝子が真面目な顔で「確かに受け取ったよ」
緊張が解けたように一気に崩れる常子「ああ~!ひと仕事終えた~!」
滝子「何だい、大げさだねえ、アハハハ」と、笑う2人
なぜか横で大泣きしている隈井
滝子「お前もだよ、隈井!」
隈井「だって女将さん…」
滝子「うん?」
涙でまともに喋れない隈井「づねござんがはじめてのぎゅうりょうを…」
滝子「分かった分かった分かった、分かった!」
と、常子に「耳が慣れて聞き取れちまう自分が恨めしいよ」
常子「アハハハ!」
滝子「ホホホホ!」
「はぁ…」と、ため息をついた滝子がしみじみと
「これで名実ともにとと姉ちゃんってやつになったんだねえ」
照れたような笑顔の常子
滝子「自分の力で金を稼いで家族を養う…
常子は一家の大黒柱って事だよ」
常子「大黒柱…」

<それは常子が長い間待ち望んでいた言葉でした>

(つづく)

山岸は今回もひどかった、言葉のあやってw
言うことがコロコロ変わるからみんなビックリしてたね
でも禁止令の撤回を常子に告げた後でこれはまずいかなと思って
タイプ室の様子を見に来たのかも
案の定もめてたから止めに入ったけど逆に集中砲火w
それで態度を変えるが部長が常子を褒めたからまたも態度を変える
もう山岸のクズっぷりから目が離せないw

早乙女は上の決定だからタイプの使用も雑用の手伝いも認めると言ったが
それだけではないのだろう
女だからというだけで仕事をしても評価の対象にならない事に苦しんできた
早乙女は、部長に「すばらしい」と評価された常子を見て
心の中の何かが救われたのかもしれない
それは他の女たちも同じだったのだろう
お弁当のシーンで常子に対して女たちが好意的になっているように見えたのは
そういう訳だと思う
何はともあれイジメ問題が解決したようなので良かった良かった

常子と星野は定期的に会う約束をしたのだから
もう完全につきあってるよね?
星野が常子に恋してる描写はふんだんにあるが常子のそれは無い
これは常子のモデルの人が生涯独身だったらしいから
描き方が難しいという事なのかな?
いや、ととの代わりのとと姉ちゃんなんだから
普通の娘のような恋をしたりはしないという事かな…

滝子の「聞き取れちまう自分が恨めしい」には笑った


2016年6月1日水曜日

とと姉ちゃん(51)ひとりで悩みを抱え込む常子は…

前回の続き、常子(高畑充希)が重い足取りで帰宅していると
青柳商店の前で清(大野拓朗)に呼び止められる「あっ、常子ちゃん、今帰り?」 
振り向く常子「はい」 
清「そう、ご苦労さま」と、天を仰ぎ「いやぁ~…」 
清を見ている常子 
ポケットに差し込まれた清の右手が動く 

<いつもの自慢が始まる…常子はとっさに身構えました…ところが…> 

清は高く上げた右手で自分の額をぴしゃりと叩くと
「じゃあ急ぐんでまたね」と、機嫌よく去っていく 
その後ろ姿を目で追う常子「あれ?」 

タイトル、主題歌イン 

常子が森田屋の前まで来ると
宗吉(ピエール瀧)と隈井(片岡鶴太郎)が将棋を指している
隈井に訊ねる常子「あの…今、清さんにお会いしたんですが
どうかされたんですかね?」
隈井「えっ?」
常子「いつもだったら、はぁ~…ってため息ついて自慢話するのに
今日は急いで行ってしまったので」
笑顔の隈井「あ~若旦那今ね、仕事が乗りに乗ってるんでさぁ
ついこの間もね、大口の注文2件取ってきてねえ
女将さんもまあ全幅の信頼寄せてますよ
そうなるってえとわざわざ自分でね
小さな自慢する必要がなくなるって寸法です」
常子「全幅の信頼…」
隈井「ええ」
宗吉が「それよりどうだったんだ?」と、常子の仕事の件を心配する
「で、無事出来上がったんですか?」と訊ねる隈井に「ええ、まあ…」と常子
宗吉が店の戸を開けて皆を呼ぶ「お~い!常子が帰ったぞ!」
奥から迎えに出て来る一同と、宗吉に背中を押されて店に入る常子
不安そうな面々に宗吉「心配いらなかったみてえだぜ」
鞠子(相楽樹)「じゃあ、間に合ったの?」
常子「うん…なんとか」
安心した様子の一同
常子「ご心配をおかけしてすみませんでした」
まつ(秋野暢子)「あんなに頑張ったんだ、さぞかし褒められただろう?」
隈井「あったりめえでさぁ!評判もうなぎ登りってねえ」
長谷川(浜野謙太)「で…どうなんだよ?実のところは」
喜ぶ一同の声を聞いている常子の背中
長谷川「褒められちまったのか?ん?」
威勢のいい笑顔になる常子「そりゃあもう!」
笑う一同
美子(根岸姫奈)「さすがとと姉ちゃん!」
常子「でしょ?もう褒められ過ぎて疲れちゃった
今日はちょっとゆっくりさせてもらいます」と、明るく振る舞う

お部屋に戻ると座り込み、ひとり落ち込む常子

浄書室
書類を確認している諸橋の前に立っている常子
諸橋(野村麻純)「うん、丁寧なお仕事ありがとう」
常子「はい…」
諸橋「これっぽっちの原稿整理でも時間かけないとできないのね」
常子「すみません…あの…次は何を?」
諸橋「もう結構よ」
常子「でもすぐに終わりますので」
諸橋「いいから休んでらして」
「はい」と、席に戻る常子
2列目右の女(和服)「羨ましいわ、ご休息が頂けて」
2列目左の女(青服)「こっちは猫の手も借りたいほど忙しいのに」
2列目中央の女(水谷)「猫の方が役に立つんじゃない?」と、笑う
諸橋「水谷さん、それは言い過ぎよ」と、一緒になって笑う
水谷「あらごめんなさい」
いじめられている常子に心を痛めている表情の多田(我妻三輪子)
と、ある男性社員が突然ドアを開けて入ってきて常子を指さす「あ~おい君」
常子「私ですか?」
男「先日手形の発行記録をまとめたのは君か?」
常子「はぁ…」
男「俺も頼みたい事があるんだが」
部屋が静まり返る
常子「あ…それはちょっとあの…」
男「どうしてだ?あいつの資料は作れて俺のはできない道理はないだろう?」
女たちの様子も気になり言いよどむ常子「それは…」
男「頼む、時間がないんだ」と、ペコリと頭を下げる
迷った挙句「やります」と、常子
男「来なさい、要領を説明する」
「はい」と、男と常子が出ていくと女たちがざわつく
「聞いた?」
「信じらんない」

男の説明をメモしている常子

総務部
早乙女(真野恵里菜)「やめさせて頂けませんか
小橋さんのために私たちタイピスト全員が迷惑を被っております」
耳かきで耳を掃除しながら山岸(田口浩正)「そう、そんなにひどいの?」
早乙女「秩序を乱されるだけでなく
今まで必死に守ってきた私たちの誇りも小橋さんのせいで台なしです」
山岸「誇りって大げさな」と、バカにしたように笑う
口の端が歪む早乙女「このままでは今までどおり仕事をする事もままなりません
タイピストたちの作業効率も下がり総務部全体の評価も下がり
ひいては山岸課長の評価も下がる事になるかと」
山岸「はぁ…」
早乙女「それだけではありません!正式な手続きを経ず
個人的に業務を依頼するような事が横行すれば社内全体の…」
ドアが開き総務部長佃博文(斉藤洋介)が入ってくる
(男たち一同)「お帰りなさい」
立ち上がった山岸「その件に関しては君に一任するよ、頼んだよ」
と、佃のデスクへ行きおべっかを始める
それを見ている早乙女

下宿でハンカチを手に常子を想う星野(坂口健太郎)

夜、お部屋で今回も仕事を持ち帰り手書きで書類を作っている常子
君子と鞠子が手伝おうとするが「大丈夫」と、常子

翌日、不安な表情で営業部の前まで来るが笑顔を作ってみる常子

部屋に入り「できました」と、男に書類を渡そうとする
振り向きもせず男「うん」
常子「為替相場の資料は取り引きの多い順に並べてあります
それに合わせて輸出品の輸送経路の調査書類も並べてあります
こちらが清書…」
面倒くさそうに男「ああ、もういいから置いといてくれたまえ」
と、手で払うしぐさ
常子「…はい」と、書類を置き「失礼しました」と部屋を出ていく
そんな常子を見ている坂田(斉藤暁)

浄書室に入る常子
早乙女「よろしいですね?」
(一同)「はい」
早乙女「小橋さん、ちょうどよかったわ」
常子「はい」
早乙女「今日付で発表されたタイピストの新しい規律です、ご覧になっておいて」
と、手渡された紙面を読んでみる常子
「浄書室において以下の項目を禁止する
一つ 手書きによる資料の作成
一つ 他部署からの業務依頼を個人的に受けること」
(昭和十二年四月十五日 総務部総務課長山岸隆一 山岸の印)
顔を上げて早乙女を見る常子
諸橋「これでお分かりになったでしょう?
あなたの行為は我々にとって大迷惑であり何の利益も生み出さないの
山岸課長も認めてらっしゃるんだからもう文句は言えないわよね」
早乙女「今後二度と勝手なまねはなさらないで、いいですね?小橋さん」
常子「分かりました」
早乙女「では皆さん仕事に戻って下さい」
(一同)「はい」
常子の方をまばたきしながら見ている多田
と、部屋に男性社員が飛び込んでくる
早乙女の席の前に立った男が書類を突きつける
「おい君、全然違うじゃないか!この原稿どおり打ち込めと頼んだはずだろ?」
早乙女「ええ、確かにそう言われました」
男「じゃあどうして言われたとおりやらない?原稿どおりじゃないじゃないか!」
早乙女「お言葉ですが」と、立ち上がる
「文法がでたらめな文章をそのままタイプした方がよろしかったですか?」
男「あ?」
早乙女「文法だけでなく内容に整合性もありませんでした
そのまま打ち込んでもお客様に伝わらないと思ったので
こちらで修正し打ち込んだ次第です、それがいけなかったですか?
でしたら最初から正しい原稿で依頼して下さい」
男「おい、誰に口利いてる?」
早乙女「それから、我々も名字で呼んで頂けますか?
おい や 君 というのは名前ではありません
男子社員は名字で呼ばれるのに女子社員だけ おい や 君 と呼ばれるのは
おかしいと思います」
男「生意気な事言いおって、もういい君には頼まん」と、部屋を出ていく
早乙女の言動に思うところがあった様子の常子

帰宅してきた常子が森田屋の前で踵を返しどこかへ向かう

青柳商店裏手
職人たちにテキパキと指示を出している滝子(大地真央)を見る常子
一段落した滝子が「さてと…」と、こちらへ向かって来る
常子に気付く滝子「常子」
歩み寄る常子「あの…相談に乗って頂けませんか?」
思いがけないといった感じで笑ってうなずく滝子「ああ…」

(つづく)

冒頭、久しぶりに清の自慢を聞きたかった気もするが…
常子も自慢話を聞かされるぐらいで身構えなくてもいいだろうw
隈井の話では滝子が清に全幅の信頼と意外な感じだが
まあこれは今回ラストの常子が滝子に相談に行く伏線て事かな

心配して玄関に集まった森田屋の面々が口々に「褒められたろう?」
と聞くシーンで常子を背中から撮ってるのは上手い演出だね
常子は浮かない表情をしているはずだけどそれだと絵的に不自然だし
笑顔を作る直前で常子の顔を撮るのがいいタイミングだった

諸橋の「丁寧なお仕事ありがとう」で、諸橋もいいとこあるじゃんて思ったら
次の「時間かけないとできないのね」で、嫌味だったと判ったw
悪役に徹してるね諸橋さん

男が常子に仕事を頼みにきたとき
前の仕事が評価されたのかと思ったら違ったw
しかも手伝った結果の対応まで前回同様酷い
あんなのは現実的にはありえないがドラマの展開上
鳥巣商事の男どもはクズぞろいにする必要があるのだろう

早乙女が必死に訴えてるのに耳かきしてる山岸最低w
部長が戻ったらおべっかしにいくために話を切り上げるし…
早乙女もびっくりしてたね

抗議しにきた男を逆にやっつける早乙女かっこよかった
正論の早乙女に言い返せない男は「もう君には頼まん」(内心涙目かも)
名字の件も回収されたね
やはり女性蔑視問題が理由だった

滝子は常子が相談しに来てくれてちょっと嬉しそうだった
もっと頼ってほしいって宴のときも言ってたもんね












2016年5月31日火曜日

とと姉ちゃん(50)常子に刺さる早乙女の言葉

帰りの遅い常子(高畑充希)を夕食を食べずに待っている森田屋の面々 
やっと帰ってきた常子は「それがまだ…」と、
食事も摂らずに2階へ上がり持ち帰った書類の整理を始める 
常子を心配する一同 
君子(木村多江)たちが2階の常子におにぎりを差し入れる 
おにぎりを食べ「よし」と、さらに頑張る常子 

朝、森田屋玄関 
常子を見送る小橋一家 
鞠子(相楽樹)「とと姉、一睡もしないで大丈夫なの?」 
常子「1日くらい寝なくたって平気平気」 
美子(根岸姫奈)「お仕事間に合いそう?」 
常子「あとはタイプするだけだからなんとか4時までには」 
君子「もうひとふんばりね」 
常子「はい、では行ってきます」と、玄関を出る 
心配そうな3人 

鳥巣商事 タイプ室
タイプライターのセッティングをしている常子
先輩たちが出社してきて挨拶するが無視される常子
早乙女(真野恵里菜)、諸橋(野村麻純)、多田(我妻三輪子)が入ってくる
常子「おはようございます」
早乙女「おはよう」
諸橋「おはよう…」
多田「おはようございます」
常子の机を見る早乙女「小橋さん、一体何を?」
常子「あっ、頼まれた書類を清書しようと」
早乙女「清書するのは勝手ですがタイプライターの使用は許可できません」
常子「なぜですか?」
早乙女「私が使用するからです」
常子「あ…ですがこの書類を今日の4時までに…」
早乙女「それは我々の仕事ではありません」
常子「書類をタイプするのが我々の仕事では…」
早乙女「個人的に依頼された書類の清書は仕事とは言えません
それに会議のための書類整理や準備は男性社員が行うべき仕事
それを私たちにやらせるのは信頼しているからではなく
雑用係だと思っているからです
そのような事を認めていては示しがつきません」
切羽詰まった表情の常子「ですが…」
諸橋「あなたのせいで余計な仕事が増えたらどうするのよ?」
2列目右の女「そうよ、本来の仕事の精度や効率が落ちたら責任取れるの?」
諸橋「そしたら部署の評価にも響くじゃない、迷惑な話だわ、ねえ?多田さん」
多田「ええ…はい…」と、うつむく
常子「ではどうすれば…」
諸橋「そんなものすぐに突き返してらっしゃい、ですわよね?早乙女さん」
早乙女「それは違います」
諸橋「えっ?」
早乙女「一旦引き受けた仕事を途中で投げ出すのはよくありません
あなたの責任において自分でなんとかして下さい
我々の信用が失われますから」
常子「ではタイプライターを…」
早乙女「まだ分からないんですか?
タイプライターは締め切りを抱えた多田さんと私が使うんです
あなたはタイプライターを使用せずになんとかして下さい」
困りきった常子の目が多田に向く
うつむき目を伏せる多田
早乙女「以上でこの件は終わりにします」
常子「ちょっと待って下さい」
もう誰もとりあってはくれない

壁の時計は9時20分

タイプライターが片づけられた机で書類をめくる常子
「どうしたもんじゃろのぉ…」
女のひとりが嫌がらせで常子の書類を床に落とす「あら~失礼」
床の書類を拾う常子に早乙女の言葉が甦る
(いったん引き受けた~投げ出すのは~自分でなんとか)
厳しい顔になる常子「やるしかない…」と、机に戻り万年筆を取る

<タイプライターは使えなくても清書はできる
常子は開き直って手書きで資料の作成を始めたのです>

手書きで清書する常子

星野に算数を教えてもらっている様子の美子
星野(坂口健太郎)「あららら…目の下にクマを…」
美子「はい、で、いつもより早くお仕事に行きました」
星野「常子さん、今日は早く帰れるといいね」
「ですねえ、もうとと姉ちゃんが心配ばかりかけるから気苦労が絶えなくて」
と、首を振る美子に苦笑する星野「ハハッ、そっか」
膳の上のハンカチを見る星野

女学校の廊下を歩く東堂(片桐はいり)と鞠子
東堂「えっ、寝ないでお仕事に?」
鞠子「はい…無事締め切りに間に合えばいいんですが」
東堂「お姉様なら大丈夫でしょう…
彼女ならどんな困難も乗り越えられると思います」
鞠子「その心は?」
東堂「だって手作り歯磨きの時も見事に…」
鞠子「あれは大失敗に終わりましたけど」
東堂「それより受験勉強は順調?」
鞠子「あっ、はい、私なりに…」
鋭く振り向き東堂「あなたならもっともっとできるはずよ」
鞠子「はぁ…」
東堂「今はお姉様の事よりご自分の事を考えなさい」

タイプ室で清書する常子

厨房で心配そうに時計を見ている君子
富江(川栄李奈)に声をかけられハッとなる
照代(平岩紙)「心配なのね常子ちゃん」
君子「ええ…」

時計を気にして常子に振り向く早乙女(時刻は3時55分)
常子「できた」と、書類をまとめて急いでタイプ室を出る

営業部室に入る常子「失礼します!」
依頼された男性社員の所へ行き「お待たせしました、完成です」と報告する
男「えっ?」
常子「昨日頼まれた資料です」
男「ああ…」
常子「タイプはできなかったのですが
読みやすければ資料として使えると思いまして手書きで清書致しました」
男(そっけなく)「はいはい、じゃあそこ置いといて」
その言葉には感謝や労いはなく笑顔のひとつすらない…
何か力を無くしたような表情の常子
男「聞こえなかったのか?用が済んだなら帰りたまえ、仕事の邪魔だ」
書類をそっと机に置く常子にまたも早乙女の言葉が甦る
(それを私たちにやらせるのは信頼しているからではなく
雑用係だと思っているからです)
「失礼しました」と、部屋を出る常子
重い足取りで廊下を歩く

<早乙女の言う事が正しかったのだろうか
常子は自分がどうするべきなのか分からなくなっていました>

(つづく)

なるほどね、前回の「手伝っても意味ないのに」とはこういう事だったのか
タイプ室の女たちはこうなるのが分かっていたから笑っていたんだね
女たちは男性社員への不信感を共有しているのだろう
常子の面接時も山岸(田口浩正)たち男性社員は酷く描かれていた
しかしその事と常子へのイジメは関係あるのだろうか?
常子がまあまあかわいいという理由で採用されたからとか?
それともイジメはただの伝統で
常子が入社するまでは多田が標的だったのだろうか?

早乙女は常子に辛くあたっている印象だが
筋の通った事を言っているというポジションのようだ
有能な早乙女は入社した頃にはいろいろ夢を持っていたのだろう
だが鳥巣商事の男たちと仕事をしていくうちに絶望したのかもしれない
常子の事を気にしているのはかつての自分のようだから?
前々回早乙女が営業室にいた常子を連れ戻したのは
男性社員の仕事を手伝っても結局常子が傷つくだけなのが
わかっていたからかもしれないね


2016年5月30日月曜日

とと姉ちゃん(49)常子と星野の恋~ハンカチとお汁粉

初めて任されたタイプの仕事を終え早乙女(真野恵里菜)に報告する
常子(高畑充希)「早乙女さん、完成しました」と、書類を渡す 
書類を確認しながら早乙女「ご苦労さま、しかしもう必要ありません」 
常子「えっ?どういう事ですか?」  
早乙女「原稿は1時間前に私が仕上げました」 
常子「同じ書類…」 
早乙女「お分かりになりません?なぜあなたに仕事が回ってこないのか…
たかだか2800字の原稿に対して125文字のミスタイプ、所要時間は2時間、
つまり1文字打つのにおよそ2.5秒、
その技術水準のあなたに任せられる仕事はありません」と、書類を突き返す 
屈辱の表情で書類を手にする常子 
諸橋(野村麻純)「タイピストは時間との勝負だってご存知ないのかしら?」 
その後ろの女「迷惑な新人ね、ゼロから教えなくちゃいけないのかしら」 
笑う女たち 
常子「最初からそのつもりだったんですか?私の力を見るために」 
早乙女「仕事がないからといって方々に首を突っ込み勝手な事をされては迷惑です
小橋さんにはタイプではなくお手伝いから始めて頂きます
諸橋さん、多田さん、よろしくね」 
諸橋「はい」 多田(我妻三輪子)「はい」 
早乙女「まずは皆さんのおっしゃる事をよく聞いて勉強して下さい」 
立ちつくす常子 
早乙女「戻って結構ですよ」 
諸橋「早速だけどこの書類を仕分けて営業部のタナハシさんに届けて頂ける?
4時半締め切りだから急いでちょうだい」と、用を言いつけられる常子

星野の下宿
ハンカチを見て常子を思い出し軽くため息をつく星野(坂口健太郎)

常子たちのお部屋
ちゃぶ台に頬杖をつきため息をつく常子
美子(根岸姫奈)「またため息ついた」
常子「ん?」
美子「そんなにお仕事大変なの?」
常子「ううんううん全然全然」と、顔の前で手を振り笑う
鞠子(相楽樹)「何があったか分からないけど
おうちにいる時は仕事の事忘れてゆっくり休んでよ」
「ありがとう」と答えるが、階下からの話し声の「パイプ」や「財布」が
「タイプ」と聞こえてしまい、相当悩んでいる様子の常子
鞠子と美子に労わられていると君子(木村多江)がやって来て
「常子、星野さんがいらしてるわよ」
常子「えっ?」
鞠子と美子が顔を見合わせてニンマリする
常子が玄関を出るが星野の姿はない
「あれ?」と、見やると少し先の電柱の影に星野の姿
近づいて「星野さん」と声をかけると
星野「あっあっ…ああ…どうも」と、驚いたように振り向く
(少し離れた玄関から美子と鞠子が顔を覗かせる)
常子「どうも、なぜそんな遠い所に?」
星野「いや…何だかお会いするのが急に照れくさくなって」
常子「照れくさいって何度もお会いしてるじゃないですか」
星野「はい…なぜでしょうね」
常子「はぁ…」
星野「あっ…今日はお借りしたハンケチを返しに、ありがとうございました」
と、ポケットからハンカチを取り出し常子に渡す
常子「わざわざありがとうございます」
星野「いえ…」
と、いつのまにか真横まで来てニコニコして立ち聞きしている
鞠子と美子に気付いて笑ってしまう常子「ちょっと、早く戻りなさい」
美子「え~」
常子「え~じゃない、はい戻りなさい」と、2人を玄関まで押しやる
美子「いいじゃん、少しだけ…」と、ニタニタして冷やかし気味の2人

店屋に入る常子と星野
常子「すみません、小すずめたちがうるさいので」
星野「いえ、僕はどこでも」
店員が注文を取りに来る

壁に貼られた品書き 
お汁粉二十二銭 ぜんざい二十四銭 
あんみつ十六銭 みつ豆十七銭 わらび餅十七銭 
(春限定の味)櫻あんみつ二十銭 よもぎ白玉あんみつ二十三銭

常子「何にしようかな…」
星野「お汁粉で」
店員「いや~春らしいもんだったらね…」
星野「お汁粉で」
店員「…ん?」と、うなずく
常子「お汁粉で」
店員「はいよ」と去る
星野「好きなんですお汁粉」
常子「あ~そうなんですか…
あっ、研究の方はいかがです?」
星野「それがここ数日手につかなくて…」
常子「へえ~星野さんが集中できないなんて珍しいですね
具合でも悪いんですか?」
星野「いや、そういう訳では…」
常子「そういえばお顔が少し赤いかも…熱でもあるんじゃ…」
と、立ち上がり星野の額に右手を当てる
至近距離で常子を見る星野「あっ!」とのけぞってお茶をズボンにこぼす
常子に渡されたハンカチでそれを拭くのだが
「あ~っ!お返ししたハンケチにまた…」
常子「アハハ、気になさらないで下さい」
星野「いえ、いけません、ここにしっかりと染みが付着している
紛れもなく僕のつけた染みです、もう一度洗い直してきます」
星野を見て苦笑するような常子
「少し気が張ってたんですけど星野さんにお会いしたら楽になりました、フフフ」
星野「あ…それは何より」と笑う

タイプ室
「書類の整理できました」と、多田に報告する常子
多田「ありがとう、ごめんなさいね」
常子「いえ、他に何かお手伝いする事ありますか?」
多田「ううん、大丈夫」
常子「はい」と、立ち上がり
諸橋の前まで行き「多田さんのお手伝い終わりました」
諸橋「だから何?」
常子「他に何かお手伝いできる事…」
諸橋「見て分からない?今あなたの相手をしている暇はないの」
常子「何かありましたらお申しつけ下さい」と、歩き出し他の女にぶつかる
女「ちょっと邪魔!」
常子「すみません」
また別の女「もうそんな所に立たないでよ、陰になって見えないでしょ」
常子「すみません」
諸橋「仕事できないんだからせめて
私たちの邪魔になるような事はしないでちょうだい」
常子「すみません」
と、部屋に男性社員が入ってくる
「誰か手ぇ空いてる者はいないか?ちょっと手伝ってくれ」
返事する者はいない 女たちを見渡す常子
男「誰かいないか?」
早乙女が立ち上がり
「申し訳ありません、私たち今手いっぱいでして」と言って座る
男「そうか…困ったなあ」
右手を上げる常子「私、空いております」
振り向いて常子を見る女たち
男「お~そうか、書類の整理をやってくれ」
「はい、私でよければ」と、男について急いで部屋を出ていく常子
それを見た女たちのヒソヒソ声…

営業部
常子「これ…全部ですか?」
男「そうだ、明日の会議で使う手形の発行記録、
輸出物品検査表、取引物品計算書、それから物品引き渡し表を抜き出して
それぞれまとめてくれ、ついでに机の整頓も頼む
それからこっちはきれいに清書してくれ」
常子「これはいつまでに?」
男「明日の4時だ、時間厳守で頼むよ、では」と、行ってしまう
机にうず高く積まれた書類の山を前に常子「どうしたもんじゃろのぉ…」

<悩んでいる時間はありませんでした
常子が受けた依頼は会議用の書類整理と清書、そして机の整頓
まず机の整頓をして必要な書類を抜き出そうと考えました>

机の書類を整理する常子(早送り)

壁の時計は定刻の5時

机の整頓は終わった様子の常子「できたぁ…」

<整理すべき資料は大量でした
しかも入社したばかりの常子にとっては見慣れない書類ばかりです>

定刻で退社するタイピストたち
「小橋さんいつまでやってるつもりなのかしら」
それを聞いて少し気になるような表情の早乙女
諸橋「頼られたからやらなきゃなんて思ってるんじゃない?」
多田「そうですね、彼女責任感は強そうですから」
諸橋「え?」
女たちが多田を見る
多田「いえ…」
早乙女「お先に失礼します」
(一同)「さようなら」
諸橋「本当困った新人よね」
女「手伝っても意味ないのに」
女たちの笑い声

書類を1枚ずつ確認して仕分けている常子

<退社時間を過ぎても書類整理は終わりそうにありません>

年配の男が常子の肩をたたく
振り向く常子「あの…何か?」
給仕・坂田徳之介(斉藤暁)「手、出してごらん」
常子が「手?」と、右手を出すとキャラメルが置かれる
常子「キャラメル?」
坂田「頑張る人にご褒美」と、囁いて笑う
キャラメルを頬張り笑顔になる常子「よし!」と、仕事に戻る

(つづく)

早乙女すげえ
常子の書類を見て短い時間で125文字のミスタイプを指摘
もはや人間業とは思えないw
それと早乙女のタイプも和文だったんだね
前2列はぜんぶ英文だと思ってた…失礼しました

前回のハンカチですっかり常子を意識するようになった星野だが
思えば浜松の茂雄も常子に怪我の手当てをされてのぼせちゃったんだよね
常子に男からの好意に対しての自覚が無いようなのも同じ
しかし鞠子と美子にあれだけ冷やかされてるのだから
(鞠子と美子はいくらなんでも近づき過ぎだろw)
気付かない訳ないはずだ
気付かないふりをするのが女性の嗜みというものなのだろうか?
店屋に入ってからも「具合でも悪いんですか?」と、すっ呆けてる
もしかして常子って超鈍感の超恋愛音痴設定?

そうそう、あの店屋は甘味屋なんだね
メニューにお汁粉とぜんざいがあって、あれ?って思ったんだけど
関東では汁気の有無、関西では使う餡の違いで区別されるそうだ
お汁粉は汁気がある方とのこと

星野のお汁粉好きがやたら強調されてたけど何かの伏線になるのだろう
もっと先で常子がお汁粉を見て星野を思い出すとかの…
ハンカチとお汁粉は2人の恋愛アイテムになったね

営業部の仕事を手伝う常子の事を「手伝っても意味ないのに」と
タイピストの誰かが言ってたがどういう意味だろう?
部は違っても同じ会社で同じ目的のために働く社員なのだから
無意味ではないと思うのだが…
もしかしてタイピストは歩合給でタイプした分しか報酬を貰えないとか?

公式の登場人物に鳥巣商事のキャラの紹介がないね
もしかしたら鳥巣商事編は短くてすぐに終わってしまうのかな?