2016年10月1日土曜日

とと姉ちゃん(156)最終話 私はとと姉ちゃんでいられて幸せです 

常子の家 
家族全員が揃い食卓を囲んでいる 
(笑顔の一同)「乾杯~!」 

<あなたの暮しは長年の功績が認められ雑誌の最高栄誉といわれる
日本出版文化賞を受賞したのです> 

長卓にはちらし寿司、おはぎ、ポテトサラダなどが並んでいる 
常子(高畑充希)に拍手を送る一同(常子が礼で応える) 
たまき(吉本実優)「常子おばさん、この度は受賞おめでとうございます!」 
(一同)「おめでとうございます!」 
常子「ありがとうございます」 
真由美「ありがとうは私のセリフです」 
常子「えっ?」 
真由美「常子おばさんのおかげでこ~んなごちそうが食べられるんだもん」
常子「ああ…」(と一同とともに笑う)
美子(杉咲花)「いつになったら花より団子じゃなくなるのかしら?」
鞠子(相楽樹)「よっちゃんだってず~っとそうだったじゃない」
真由美「お母さんもそうだったの?」
美子(鞠子に)「どうして余計な事言うのよ」
鞠子「ごめんごめん」
(一同の笑い)
常子「ではそろそろ頂きましょうか」
(一同)「はい」
常子「頂きます」
(一同)「頂きます」(一同の礼)
水田(伊藤淳史)「あっ、常子さん取りますよ」
常子「あ…ありがとうございます」
小皿に料理を取り分ける水田「潤、こういう時にな
ず~っと女性に気を遣えるかどうかがモテるかどうかの分かれ道だからな
どうぞ」(と常子の前に皿を置く)
常子「ありがとう」
潤「あっ、そう」
水田「おい、真面目に聞いておきなさい大事な事だぞ(と南を見て)なあ?」
微妙な表情の南(上杉柊平)「そう…ですねぇ」
水田「まあこの家に育てばいやがおうにも身につく事になるか…」
たまき「どういう意味よそれ!」
鞠子「それじゃ私たちが無理やりやらせてるみたいじゃない」
水田「いや…違う違う違う違う!ごめんごめんごめん…ごめん!
(南に)ほら…謝ってよ」
笑う南「僕は謝りませんよ、言ってないですもの」
水田「潤…怖いぞ…アハハハハ!」
鞠子(潤を見て)「もうから揚げしか食べてないんだから」
一同の笑いの中、卵焼きを口に入れる常子

タイトルイン

夜になってもガヤガヤと仕事が続いている編集部
作業で机に目を落としながら常子「そうそう水田さん、昨日言っていた…」
と目を向けるとさっきまでそこにいた部員たちの姿が見えない
突然静まり返った部屋を立ち上がって見回す常子
不思議な面持ちで階段を下りていくと
一人の男が背中を向けて暗い試験室でボードを眺めている
常子が部屋の照明を点け静かに男に近づき「あの…」
みかんを手で揉んでいるその男が振り向き常子が固まる
「やあ常子」
目の前に死んだはずの竹蔵(西島秀俊)が立っている
常子「とと?」
常子に近づく竹蔵「どうかしましたか?」
常子「いえ…少し驚いてしまって…」
竹蔵「そうですよね…突然こんなふうに現れては驚くのも無理はありません」
常子「ととはあのころのままですね」
さらに近づく竹蔵「常子は大きくなりましたね」
恥ずかしそうに笑う常子「大きくなったといいますか…年を取りました
今ではととよりも年上です、とてもご自分の娘とは思えないでしょう」
竹蔵「いくつになっても常子は僕の娘です」
常子「そうでしょうか」
笑顔の竹蔵「そうですよ」
常子も嬉しそうに笑顔でうなずく
部屋を見渡す竹蔵「ここが常子の作った会社なんですね?」
常子「はい」
竹蔵「案内してくれませんか?」
常子「はい、喜んで(と部屋で手を広げ)こちらは商品試験をする場所です
今は扇風機の性能を調べる試験をしています」
竹蔵「暮らしに役立つための商品試験ですね」
常子「はい、47名の社員以外にもテスターさんがいらっしゃって
150名ほどの方がこの会社に関わって下さっています」
竹蔵「そんなに大勢が?」
常子「はい…とと、2階も見て頂けませんか?」
竹蔵「はい」
常子「こちらです」

編集部に上がる常子「もともとは鞠子と美子と
それから編集長の花山さんと4人だけで始めた会社だったんです」
常子が額に飾られたその頃の3姉妹の写真を竹蔵に手渡す
それをまじまじと見つめる竹蔵「鞠子も美子も立派になりましたね」
嬉しそうに笑う竹蔵に常子「はい」
写真を常子に返し編集部を見回す竹蔵「よくぞここまで…」
常子「いろんな方と出会って助けて頂きました…
皆さん一人一人のお力添えがあったからこうして…
(と竹蔵の様子に心配そうな表情になり)とと?」
涙を流し息遣いも荒くなっている竹蔵「ここまで来るのには…
…相当な苦労があったでしょう」
常子「ええ…まあ(と、笑顔を作り)平坦な道のりではなかったですけれど」
竹蔵「僕が常子に父親代わりを託したために
随分と苦労をさせてしまったね…すまなかった」(と頭を下げる)
常子「そんな事はありません…とと…私ととの代わりだから
とと姉ちゃんって呼ばれてるんです」
竹蔵「とと姉ちゃん…」
うなずく常子「はい…出版社を起こして女の人の役に立つ雑誌を作りたいって
夢が持てたのも私がとと姉ちゃんだからです
それに鞠ちゃんもよっちゃんも結婚して子どもも3人授かって
今では8人で暮らす大家族ですよ
もう毎日がにぎやかで楽しくて…
みんなと過ごすささやかな日常が私の生きる糧です(竹蔵が微笑む)
私はとと姉ちゃんでいられて幸せです」
常子に近寄る竹蔵「常子」
常子「はい」
竹蔵「頑張ったね」
竹蔵が常子の頭に右手を置く
涙目で竹蔵を見つめる常子
竹蔵が常子の髪を撫で「ありがとう」
涙をこぼして笑い出す常子「フフフフ…フフッ」
と、子どものように涙を鼻でぬぐう
幸せそうに笑う常子

ベッドで眠る常子が目を開く
おぼつかない表情で身を起こすと窓の外からは小鳥の鳴き声と
家族の笑い声が聞こえてくる
カーテンを開ける常子

庭の木の下に集まっている一同
木に登った潤が「おじさんこれは?」と南に何かを手渡し
南「おっ、いいじゃないか~」
鞠子「今年も随分実をつけてくれたわね」
たまき「こんだけあったらジャムご近所さんに配ってもまだ余りそうね」
鞠子「そうね」

その様子を眺めていた常子がふと机に目を向ける
椅子に座り3つの目標の短冊(家族を守る)を手に取り見つめる常子
そして残りの2枚(鞠子美子を嫁に出す・家を建てる)も手に取り
3つを重ねて机の引き出しにしまう

昭和六十三年夏

<時は流れ昭和63年>

会社の入り口に入る常子「行ってらっしゃい」
麦わら帽子を被りベビーカーを押してすれ違う何人ものスタッフ
「行ってまいりま~す」
「行ってきます」
常子「はい、言ってらっしゃい」
(一同)「お帰りなさい!」
常子「ただいま~ご苦労さまです」
階段を上がり編集部に入る常子「ただいま戻りました!」
(一同)「お帰りなさい!」
常子が席に着くと「とと姉ちゃん、確認お願いします」と
美子が書類を持ってくる
常子「はいはい」
美子「それと…お客様よ」
向こうで振り向く鞠子
常子「フフフ…鞠ちゃん」
歩いてきてお重を見せる鞠子「ちょっとかんぴょう巻きの差し入れをね」
常子「いつもありがとう」
鞠子「取材に出てたんでしょ?社長さん自らよく働くわねえ」
笑う常子「休んでる方が疲れちゃうのよ」
と、「常子さん!」と若い社員がやってくる
常子「はいはい」
社員「すみませ~ん!桜井先生の原稿なんですが…
僕がテーマを間違えてお伝えしてしまっていたようで…」
ざわめく編集部

主題歌イン

常子「だったら一からやり直しじゃない!」
美子「気難しい方だから応じて下さるかしら…」
常子「どうしたもんじゃろのぉ…」
社員「取り急ぎ先生にお詫びの電話を致します」
立ち上がる常子「あ~あ~!電話じゃ駄目よ!」
社員「へっ?」
常子「お詫びだろうが原稿依頼だろうが
ちゃんとお目にかかってお伝えしないと
先生には私がお詫びに行ってきます(とカバンを肩にかけ駆け出し)
行ってきます」
(エンドロールが流れる)
社員「常子さん」
美子「とと姉ちゃん!」
常子を目で追い階段下を見る一同
鞠子「呆れた…あれじゃ花山さんとやってた時と一緒じゃない」
美子「花山さんも苦笑いしてるわね」
2人が編集部に飾られた花山と3姉妹の写真に振り向く

主題歌が流れる中、東京タワーに向かって通りを駆ける常子

(おわり)

冒頭の食事のシーンは家族それぞれにセリフを用意したのと
後半の伏線になるにぎやかな家族の描写かな

竹蔵が出るのは予告で知っていたが幻視するような感じだと
勝手に想像していて夢オチは逆に意外だった
考えればそれが一番自然なのかもしれない
(夢オチを予想しなかったのは心のどこかで
それは反則だと思っているからかもしれない
夢の話ならばいくらでも視聴者をミスリードする事もできるからだ)

このドラマでは常子が父との約束に縛られ犠牲になったのでは…
とどうしても考えてしまうがそこのところを補完するようなシーンがあった
まず竹蔵がすまなかったと謝り
常子はだからこそ、とと姉ちゃんになったからこそ夢を持てたのだと答える
今では大家族でにぎやかで楽しくて私はとと姉ちゃんでいられて幸せだと…

ちなみにこのとと姉ちゃんでいられて幸せ…だというフレーズは
最終回にあたって主演の高畑にかけているというか
シャレみたいな意味にもなっていると思う

目が覚めた常子が3つの目標を引き出しにしまったのは
竹蔵に褒めてもらった事でその責任を果たせたと思ったからだろう

ラストのエピソードはデジャブかと思ったw
1話の冒頭のエピ(昭和33年)といろいろそっくりで
焼き直したというか踏襲したというか…
まあ最初と最後は同じで…というところだろうか
最後に駆けていく常子(推定68歳)は1話ほどではないが
結構な速さで走っていたと思うw

これで常子の物語はおしまいだが
個人的に一番印象に残っているシーンは
五反田が常子に出征を告げたシーンかなあ…

次回作「べっぴんさん」は視聴はする予定ですがレビューはしません
(冬場の早起きは苦手だし…)
半年間おつきあい頂きありがとうございました
またどこかでお会いできれば幸いです

2016年9月30日金曜日

とと姉ちゃん(155)花山死す!~日本出版文化賞を受賞してテレビ出演を果たす常子

前回から二日後 

美子(杉咲花)「えっ?花山さんの原稿まだ入稿してないの?」 
常子(高畑充希)「ええ、まだあるわ」 
綾(阿部純子)「いつもに比べて随分のんびりしてるのね」 
常子「いつ花山さんが『やはり直したい』って言ってくるかわからないでしょ?」 
美子「そうね、花山さんならそういう連絡がありそうね」 
3人が編集部への階段を上がっていくと電話が鳴る 
水田(伊藤淳史)「はい、あなたの暮し出版です…」 
それを見て笑顔の美子「もしかして…」 
常子「フフフ」 
水田「はい…お待ち下さい…常子さん」 
常子「はい」 
水田「花山さんの奥様からです…」 
常子「…」と受話器を受け取り「お電話代わりました…常子です」 
(三枝子)「常子さん…お忙しいところすみません…
先ほど花山が息を引き取りました」 
常子「…分かりました…すぐに伺います…(編集部員たちが異変を察知して
立ち上がる)失礼します…(と受話器を置き)水田さん…」 
うなずく水田「こちらの事は僕が…常子さんと美子さんはすぐに」 
常子「お願いします」と社員たちが立ちつくす中、美子と外出の支度をする 

タイトル、主題歌イン 

花山家
ダイニングではみのりがお絵描き(花山の顔)をしている
茜に案内される常子と美子がその向かいの部屋の前に立つ
茜(水谷果穂)「どうぞ」(と戸を開ける)
一礼して中に入る常子と美子
部屋のベッドでは花山(唐沢寿明)が静かに眠り
その横に三枝子(奥貫薫)が寄り添っている
着座する常子たち
常子「この度はご愁傷さまでございました」(礼を交わす)
三枝子「…ごめんなさい…容体が急変してね…間に合わなかったわ」
首を振る常子「いえ…お知らせ下さりありがとうございます…」
三枝子「花山の顔見てあげて下さい…(花山に)あなた…
常子さんと美子さんがいらして下さいましたよ」
花山の傍に寄る常子と美子
美子が泣き声を上げる
三枝子「あの日…常子さんが帰られたあと花山は満足そうでした
これからこの国がどうなっていくのかは分からないけれど
あなたの暮しは常子さんに任せておけば大丈夫だとも申しておりました」
常子の両頬を涙が伝う「そんなふうに褒めて下さったのは…
初めてですね…花山さん」
泣き続ける美子
部屋の戸が開き画用紙を手にしたみのりが「じいじ!」と駆けてくる
「絵、描けたよ!起きて!じいじ起きて!」
常子が堪らず顔を覆う
茜「みのり、じいじは眠っているから…もう少し寝かせてあげよう…」
みのり「うん…」
号泣する常子

夜、常子の家
原稿を手にした常子がリビングにやってくる
美子「それ…」
常子「三枝子さんからお預かりした花山さんの最後の原稿よ」
それぞれが原稿を手にして美子「花山さんの字…」
「うん?」と何かに気付いたたまき(吉本実優)が
「これ…」と常子に一部を渡す
それを手に常子「…!?」
読み上げる常子「美子さん、初めて出会った頃きつく責める私の言葉に…」
(花山の声)「必死に涙を堪えていた君の顔は今でも覚えている
それから私が一時期会社を辞めた時、説得しに来た時の顔もね
君の情熱がなければあなたの暮しはあの時終わっていたかもしれない
鞠子さん、今でも君が仕事を続けていたらどうなっていただろうと考える
だが君は結婚で大きな幸せと
たまきさんというすばらしい娘さんを得る事ができた
たまきさんはきっと会社を支えるいい編集者になるだろう
常子さん、君に感謝を伝えるには原稿用紙が何枚必要だろうね
たくさんの事を君に教えた
それと共にたくさんの事を君に教えられた
君がいなければ今の私はいなかった…
ありがとう…」
原稿用紙の「ありがとう」の文字を見つめる常子
「ねえ見て」と美子が1枚のイラストを見せる
常子「うわぁ…」
そこには3姉妹をはじめ、水田や綾などの編集部員たちが描かれている
美子「そっくり」
常子「水田さんこれ…アハハ」

<花山が亡くなってふたつきがたった頃>

編集部
花山が遺した編集部員たちのイラストが額に入れられ飾られている
その位置をまるで生前の花山のように几帳面に微調整している美子
納得してうなずいた美子が「よし」と手を打つ
綾「美子さん、もうすぐ始まりますよ」
笑顔でうなずく美子「はい」
部員たちは部屋の隅のテレビの前に集まっている
美子がデスクの椅子に座る
島倉「美子さんは見なくてもいいんですか?」
美子「あ…毎日会ってますからわざわざテレビで見なくたって…」
「いや、またまた…美子さんほら早く」
「本当は緊張してるんでしょ?」
笑う美子「そんな事ない」

テレビ局のスタジオ
「開始10分前で~す!」
(一同)「はい」

<あなたの暮しは長年の功績が認められ
雑誌の最高栄誉といわれる日本出版文化賞を受賞しました>

スタジオの隅で出番を待つ緊張した様子の常子が左手で右肩をさすり
「花山さん花山さん…どうしたもんじゃろのぉ…」と語りかける
それで少し落ち着いたのか安心したように微笑む常子
「小橋さん」
振り向く常子「はい」
司会の沢(阿川佐和子)「よろしくお願いします、そろそろこちらに」
立ち上がる常子「よろしくお願い致します」

「よいしょよいしょよいしょ」と仏壇の竹蔵と君子の写真を持ち
「え~っと始まりますからね…一番いい所で見ましょうかね」
と写真をテレビの前のテーブルに置いた鞠子が「よいしょ
あ~疲れた」と腰を伸ばしてからテレビのスイッチを入れる
「あ~もうこっちまで緊張してきちゃった」
テレビの画面には「時代のスケッチ」のタイトル
拍手をする鞠子「あ~始まった!」

編集部の一同「お~!」と拍手が起こる
「静かに、静かに!聞こえないだろ」
やはり気になるのか遠くからテレビをのぞく美子
(画面の沢)「皆様こんにちは、『時代のスケッチ』の時間です
司会の沢静子でございます
さて今日は皆様よくご存じの雑誌あなたの暮しを通して…」

スタジオ
沢「…戦後の日本の人々の生活を豊かにした事が評価されまして
日本出版文化賞を受賞なさいました
あなたの暮し出版社長でいらっしゃる小橋常子さんにおいで頂いております
いろいろお話を伺っていきたいと存じます
どうぞよろしくお願い致します」
常子「あ…はい…よろしくお願い致します」

編集部
気をもんでいる様子の康恵(佐藤仁美)「表情が硬いねぇ」
綾「常子さん、しっかり!」

鞠子「とと姉…緊張し過ぎ…(写真に)ねえ…とと…かか」
(画面の常子)「ひとえに私たちを支えて下さり応援して下さった
読者の方のおかげだと思っております
私たちの編集長の花山も草葉の陰で喜んでいると思います」
(沢)「あなたの暮しは第1号から2世紀第35号まで出版されている訳ですけれど
この誌面作りに一貫した方針が感じられるんですが
そこら辺はどのようにお考えなのかお聞かせ頂けますか?」
(常子)「はい、花山も私たちもとにかく庶民の生活暮らしを
何よりも大切に考えてまいりました…」

スタジオ
常子「戦争で奪われた豊かな暮らしを取り戻し
その暮らしの役に立つ生活の知恵を提案していければと
そしてそれが暮らしの中心にいる女の人たちの
役に立つ雑誌になっていければと…
今も昔もただただその事だけを念頭に置いてやってきております」

(沢)「あなたの暮しはにとってやはり戦争の影響というのは
大きくあるのですね」
(常子)「そうですね…戦後生まれの方々はご存じないかもしれませんが
当時はおうちのフライパンなんかも供出しましたからね」
(沢)そうでしたね、本当にそうでしたね」
編集部に飾られたあなたの暮しのバックナンバー
花山が最後に描いた女性のイラストの35号と
防空頭巾とフライパンが描かれた戦争体験談の特集号(32号)

(つづく)

ビックリ!
花山はナレ死じゃなかったw
臨終には間に合わなかったとはいえ死者との対面を描くとは…
竹蔵も滝子も君子もそうだったんだからナレ死でよかったんじゃないのか?

みのりの「じいじ起きて!」で常子が号泣するのは
ベタだけどまあ良かったかな
あそこで視聴者も泣きやすかった事だろう

美子の額縁を微調整しての「よし」もグッドw

戦争特集号の表紙がフライパンだったのはうっかりしていたが
これは花山が常子に説得されて新雑誌の起ち上げを決意したシーンで
穴の開いたフライパンを持っていたのを回収したという事だったのかな?

2016年9月29日木曜日

とと姉ちゃん(154)読者への遺言を常子に託す花山

病室のベッドの上、届けられた読者からの手紙を手に花山(唐沢寿明)
「ありがたいね…我々の思いに共感してもらえた」 
常子(高畑充希)「これでやっとゆっくりできますね」 
花山「ん?」 
美子(杉咲花)「またおうちに戻られるんですよね?
まずはお体を治さないと」(常子がうなずく) 
花山「次号があるだろう、準備を始めんと」 
静かに花山を見つめる常子と美子 
花山「フッ…安心しなさい、決して無理はせんよ~」(とふざけた感じ) 
可笑しそうに顔を崩して笑う常子「はい」 

タイトル、主題歌イン 

昭和五十年一月 

<次号の出版に向けて編集部員たちは会社と花山家を行き来して
仕事を進めていました> 

席に着いた扇田がため息をつく
向かいに座る美子が楽しそうに「花山さんに怒鳴られたんですね?」
扇田「分かります?」
島倉「私も昨日行ったら『やり直せ!』って」
一同が笑う
木立「僕なんか『辞めちまえ!』ですよ
「私も」
「私もです」
扇田「この会社入って何回花山さんに怒鳴られたんだろう
ちゃんと数かぞえておけばよかったな」
島倉「だけど怒られるのも久しぶりだったから
私は懐かしかったですね」
木立「僕もですよ、心のどこかではあなたの暮しはこうでなくちゃって」
緑「確かにね」
寿美子「今頃たまきさんも怒鳴られてるのかしら」
緑「そうかもしれないですね」
常子と綾(阿部純子)も顔を見合わせて笑っている
と、「ただいま戻りました」とたまき(吉本実優)が帰社する
(一同)「お帰りなさい」
元気のないたまきに木立「あ~あ~
たまきちゃんも花山さんに怒鳴られちゃったか」
たまき「…怒鳴られた方がよっぽどよかったです」
木立「えっ?」
たまき「…花山さんの原稿を口述筆記してきたのですが…
今日はそれもつらそうで…」
(一同)「…」

静かに降る雪、花山家の表札 

ベッドの上で原稿を確認する花山「うん…これでいい」
常子「はい(と原稿を受け取り)残りの原稿は来週の中頃に
またお持ちできると思います、よろしいですか?」
花山「ああ」
常子「では来週またお邪魔しますね」
(と立ち上がり録音機のスイッチを切り帰り支度を始める)
花山「常子さん」
常子「はい」
花山「すまんがもう一つ筆記を頼みたい」
常子の動きが止まる「でも今日はもうお休みになった方が…」
花山「(いや…)平気だよ」
「分かりました…」と腰を下ろす常子
「何の原稿ですか?」と録音機を置く
花山「あとがきをね…」
常子「ああ…(と録音機のボタンを押し)では…」
花山「ハァ(と苦しそう)…書き出しはそうだな…
今まであなたの暮しをご愛読下さった皆様へ…」
常子が花山を見る
花山「私が死んだらね…その時の号のあとがきに載せてほしいんだよ」
常子の声が震える「まだお元気なのに何をおっしゃってるんですか
もうめったな事言わないで下さい」
花山「人間誰だっていつ死ぬか分からない
帰りに交通事故に遭って君が先に死ぬかもしれないよ…
…書いてくれないか?
常子さんにしか頼めない事だ」
常子「……分かりました」
花山「ハァ…読者の皆様…
長い事あなたの暮しをご愛読下さりありがとうございます
昭和22年の創刊以来27年たって部数が100万になりました
これは皆様が一冊一冊を買ってくれたからです
創刊当初から本当によい暮らしを作るために
私たちがこの雑誌で掲げてきたのは庶民の旗です
私たちの暮らしを大事にする一つ一つは力が弱いかもしれない
ぼろ布はぎれをつなぎ合わせた暮らしの旗です
…ハァ(と苦しそうにうつむく花山を常子が真っすぐに見つめている)
世界で初めての庶民の旗
それはどんな大きな力にも負けません
戦争にだって負けやしません
そんな旗をあげ続けられたのも一冊一冊を買って下さった
読者の皆様のおかげです(筆記を続ける常子)
広告がないので買って下さらなかったら
とても今日まで続ける事はできませんでした
そして私たちの理想の雑誌も作れなかったと思います
力いっぱい雑誌を作らせて下さり…ありがとうございました…
それに甘えてお願いがあります
今まであなたの暮しを読んだ事がない人1人に
あなたがあなたの暮しをご紹介して下さり…ハァ…1人だけ
新しい読者を増やして頂きたい
それが私の…最後のお願いです」
固まったように花山を見つめる常子の頬を涙が伝う
録音機を止めた花山が「あぁ…」と苦しそうにベッドにもたれる
「さあ…もう帰りなさい」
まだ動けない常子(涙声)「花山さん…もし花山さんがいなくなったら…
私どうしたらいいんですか…」
花山「常子さん…大丈夫だよ…君はね
27年一緒にやってきて…大体僕の考えと一緒だよ
君の考えだけでやっていけるだろうけれど
悩んだ時は君の肩に語りかけろ
君に宿ってやるから
『おい花山…どうしたもんじゃろのぉ…』と…ハハ…」
常子「フフフ……はい…」

玄関でお辞儀をする常子「お邪魔致しました」
三枝子(奥貫薫)「いえ、ご苦労さまでした」
と、壁に手を沿わせながら花山が廊下に出てくる
三枝子「あなた寝ていませんと…」
花山「うん」
三枝子に支えられ玄関まで来た花山が「これをね忘れていた」と
女性を描いたイラストを常子に渡す
花山「次号の表紙だ」
イラストに目を落としながら常子「すてきな人ですね」
花山「初めて私の絵を見た時も君はそんな顔をしていた」

(回想)常子「すてきな家ですね」

花山「常子さん…どうもありがとう」(と頭を下げる)
「嫌だわ花山さん、また来ますね」
とイラストを封筒に入れ傘を手にする常子
花山が三枝子に支えられながら手を振る
お辞儀をした常子が玄関を出るとガクリと頭を垂れる花山
三枝子「さあ…あなた…」
花山「ああ…」

まだ降り続いている雪の中、立ち止まった常子が玄関を振り返る
そして…前を向いて歩き始める

(つづく)

もうこのドラマのパターンだと次回の冒頭で花山はナレ死しそうだよね
<花山が亡くなって3年が過ぎました…>みたいな感じだろうか?
今週の予告を見ても花山のいいシーンは全部済んでると思うし…

花山の読者への最後の願いが新しい読者を増やす事だったのは
あなたの暮しの行く末を案じての事なのだろうか?
常子と花山を仮想夫婦とするなら2人が産んだあなたの暮しはその子どもだ
死にゆく花山がその子の行く末を案じたから
常子は泣いてしまったのだろうか?
「もし花山さんがいなくなったら私どうしたらいいんですか」と聞く常子は
とと姉ちゃんではなくて夫を亡くす普通の女性のようだった

常子に礼を言って頭を下げる花山の表情を
三枝子がのぞき込むように見ていたがこれはただ意外だったからだろうか?
三枝子の解釈は苦手でどうもよくわからないw


2016年9月28日水曜日

とと姉ちゃん(153)1冊まるまるを戦争体験談だけの特集号にする常子と花山

編集長室のドアを開け驚く常子(高畑充希)たち「花山さん!」 
花山(唐沢寿明)「おはよう」 
常子「おはようございます…」 
水田(伊藤淳史)「どうしてここに?」 
花山「ここが私の仕事場だからだ」 
美子(杉咲花)「病院は?」 
花山「一時退院の許可は出た」 
常子「でしたらご自宅に戻って下さい」 
花山「何を言っている、そろそろ読者からの原稿が届いた頃だろ
見せてくれ仕事がしたいんだ」 
美子「駄目です、早くご自宅に…」 
花山「大丈夫だ何の問題もない」 
美子「でもお体が…」 
花山「いいんだそんな事は!」 
常子「いい加減になさって下さい!
ご家族も社員もみんな心の底から心配している事を
もっと真摯に受け止めて下さい!
花山さんのお体は花山さんだけのものではないんです!
部下を信じて任せる事も上に立つ者の立派な責任なんじゃありませんか?」
一同が花山を見つめている 
ため息をつく花山「はぁ…分かった!」 
常子「でしたらご自宅に戻って頂けるんですね?」 
目を閉じ小さくうなずく花山 
常子「花山さん」 
花山が大きくうなずきそのままうなだれたかと思うと
なぜか8ミリカメラを手にしている 
安心したのか何だか気が抜けたように笑う常子「もう…水田さんタクシー」 
水田「はい」(と部屋を出ていく) 
常子「よっちゃん」 
美子「はい」 
常子「島倉さん、たまき」 
と、一同を帰した常子が花山に振り向き
勝ち誇ったように眉をそびやかし微笑む 

タイトル、主題歌イン 

花山の机に木箱に入った大量の封書を置く美子
「読者から募集した戦争体験談です」 
花山「これが全てか」
水田「いえ、箱いっぱいにあと十ほどは」
水田の後ろで社員たちが「よっ」「うんっ」と段ボール箱を掲げる
立ち上がり木箱の手紙のひとつを手に取る花山
「疎開した娘の千鶴に会い私はお手玉を5つその千鶴の手に握らせました
久しぶりに会ったあの元気な千鶴は
それこそ骨と皮ばかりに痩せこけていました
娘がそんな姿になっているのを見て私は涙が止まりませんでした」
美子「どれも…あのころの風景がよみがえるような
胸が締めつけられる文章ばかりでした」
常子「…編集会議の内容はもちろんお伝えしますし
全ての原稿はお宅にお持ちして最終確認はこれまでどおり
花山さんにお願いするつもりです」
花山「うちに来るなんて君たちが大変じゃないか」
社員たちが首を振る
常子「平気です…花山さんが納得されるまで
何度でもご自宅と会社を往復する覚悟です」
一同がうなずく
花山「そうか…それにしてもよくこれだけ集まったものだ
できればここにある全部を雑誌に載せたいくらいだな」
社員たちが笑う
常子「!?…だったらそうしましょう」
花山が常子を見る
常子「思い切って2世紀第32号をまるまる1冊
戦争の記事だけで作るのはいかがですか?」
花山「…」
水田「読者の皆さんが送って下さった戦争体験が
これだけあればできますよね」
美子「あなたの暮しまるまる1冊一つのテーマだけで作るなんて
今までやった事ないわね」
扇田「俺読みてえです」
島倉「しかし…戦争特集なんて
あなたの暮しらしくないんじゃないでしょうか?」
花山「もちろんそれは分かっている
読者からの反発の声もあるかもしれない
それでもこれは価値のある事だと私は思うよ」
一同が口々に「はい」とうなずく
花山が常子を見る
微笑んでうなずく常子

<常子たちは戦争特集号の編集作業に今まで以上に没頭しました
送られてきた戦争体験談を一つ一つ丁寧に確認するとともに
写真などの資料を集め当時を知らない人々にも伝わるように
記事を作っていったのです
しかし花山は体調を崩す事が多くなり
入退院を繰り返すようになっていました>

病室を訪れる美子「こんにちは」
ベッドの上で仕事をする花山「お~珍しいね、今日は美子さん一人か」
美子「はい、とと姉ちゃんは花山さんに言われた資料を集めてます」
花山「うん」
美子が花山に原稿を渡し「校正お願いします」
「ああ」と受け取った花山が原稿を確認しながら
「私の前に誰か目を通したのか?」
美子「はい、とと姉ちゃんが…執筆も推敲も編集も
いつも以上に念入りにと皆さんに言ってるんです
校正をする花山さんの負担を少しでも減らすために」
原稿に目を落としながら花山「ほう…フフフ」
美子「その原稿は問題なさそうですね」
花山「いや駄目だ駄目だ」
美子「えっ?」
花山「書き出しはなかなかだったが展開力が乏しい
まだまだ私の校正なしで掲載は無理だな」(と赤ペンで原稿に校正を入れる)
そんな花山を見て嬉しそうに微笑む美子

自宅のちゃぶ台で仕事をする常子
(仏壇があるから君子の部屋だろうか?)
「とと姉いい?」と盆を手にした鞠子(相楽樹)がやってくる
常子「はいはい…あっ」
鞠子「お茶どうぞ」
常子「ありがとう鞠ちゃん」
鞠子「昔もあったわね」
常子「ん?」
鞠子「とと姉が花山さんの代わりをした事」
常子「ああ…広告を載せようとして花山さんを怒らせてしまった時ね
あの時よりはだいぶ慣れたけどやっぱり花山さんの代わりは大変ね」
鞠子「私にできる事があったら何でも言ってね」
常子「ん?」
鞠子「今となっては雑用くらいしかできないだろうけど
とと姉何でも自分でやろうと無理し過ぎるから遠慮せずに言って」
常子「分かった、ありがとう」
「何のお話?」と美子が帰ってくる
鞠子「あっ、お帰りなさい」
常子「お帰りなさい」
美子「ただいま」(とちゃぶ台の前に座る)
常子「花山さんご様子どうだった?」
美子「うん…今日もあんまりよさそうではなかったけど…でもね
原稿の校正をし始めたらみるみる生き生きした表情に変わっていって」
常子「そう」
美子「それで…(と原稿を取り出し)これが例文の答えを書きなさいって
でこっちが比較対象を西洋ザルにとご指摘が
でこれが…」
常子「あ~もう…こっちなんて真っ赤じゃない(と原稿を手にして)
お元気そうで安心したわ」
(鞠子と美子)「フフフフ」
常子「鞠ちゃん…早速お願いしてもいいかしら?」
鞠子「えっ?」
と分厚い束を持ち上げた常子「この資料の中から
西洋ザルに関する部分を抜粋してもらえる?」
笑顔で資料を受け取る鞠子「承りました」
美子「私もこっちやっちゃうね」
常子「うん、ありがとう」
会社を起ち上げたあの頃のように丸いちゃぶ台を囲んで作業する3姉妹

<ふたつきがたち8月15日
戦争中の暮らしを特集した最新号は発売されました>

最新号の発送作業に追われる編集部
水田「常子さん」
常子「はい」
水田「近郊の書店100軒回ってきましたが全てで売り切れです」
常子「そうですか、では早速増刷してもらいましょう」
水田「…随分と落ち着いていますね
いつもなら跳びはねて喜ぶのに」
常子「ん~…今号に関しては正直受け入れて頂けるか不安もあったので
喜びというよりは安堵の方が大きくて」
水田「僕もです」
美子「私も」
「常子さん」と嬉しそうにたまき(吉本実優)が駆けてくる
常子「ん?」
たまき「今読者の方から『これこそ後世に残したい雑誌だ』なんてお声が」
美子「それこそ花山さんが望んだ事よね
『我々の雑誌は使い捨てにしたくない』ってずっとおっしゃってらしたから」
常子「そうね」
水田「落ち着いたら後で花山さんにお伝えしに行きましょう」
常子「フフフ…ええ」

<戦争特集号は過去のどの号よりも早く売り切れる事となり
ついにあなたの暮しは100万部を超える発行部数を達成したのです>

(つづく)

たまきは「常子さん」と呼ぶ事で公私を別けているのだが
常子は会社でも「たまき」と呼び捨てにして美子に対しては
相変わらず「よっちゃん」だ
もう会社での家族呼びを貫き通したねw
でもこれはそうしないと美子から「とと姉ちゃん」と呼んでもらえなくなり
タイトルが泣いてしまうという制作上の理由からなのだろうか?

花山の8ミリカメラは意味不明だがどうせアドリブだろうw

3姉妹が丸いちゃぶ台で編集作業をしているシーンは
懐かしくて胸熱だった

2016年9月27日火曜日

とと姉ちゃん(152)戦時中の市井の人々の暮しの記録を残したいと語る花山

花山のデスクの書類の山に自分が書いた原稿を重ねる常子(高畑充希) 
水田(伊藤淳史)「4日も留守だと書類もたまってきますね」 
常子「そうですね…帰っていらしたらバリバリ働いて頂かないと」 
美子(杉咲花)「花山さん今日戻られるんでしょ?」 
常子「うん…そのはずなんだけど…」 
と、受話器を持つ島倉「常子さん…常子さん!」 
常子「はい、どうしたの?そんな大きい声出して」 
島倉「花山さんの奥様から…花山さんが東京駅で倒れたそうです…」 
受話器を取る常子「もしもし…」 

タイトル、主題歌イン 

常子と美子が駆けつけると花山(唐沢寿明)は病室のベッドの上で
書きものをしている「やあお二人さん」
驚く常子たち
三枝子(奥貫薫)「常子さん美子さん…この度はお騒がせ致しました」
(と茜と2人で頭を下げる)
常子「あ…あの…花山さんあの…お体は?」
花山「問題ない落ち着いてるよ」
三枝子「ごめんなさい…電話した時は私も動転してしまっていて…
容体も分かっていなかったものですから」
花山「倒れたなんて大げさなんだ
例の…あ~!(と腕を上げたため点滴の針を気にする)
例の胸のあれでね、少し苦しくなったから腰を下ろしただけだ」
美子「本当に平気なんですか?」
花山「ああ、このとおりさ」
安心してため息をつく常子「はぁ…もう心配かけないで下さいよ
みんな病院に駆けつけるって言って大変だったんですから」
(美子がうなずく)
花山「それはすまなかった」
茜(水谷果穂)「だから止めたのよ、それなのに無理して広島に向かうから」
花山「ああ」
茜(常子たちに)「そんなに急ぎの原稿があるんですか?」
常子の顔を見る美子「いや…私たちは取材の事は何も…」
花山「…戦争中のね…人々の暮らしの記録を記事にしたいんだ」
常子「戦争…」
花山「ただの戦争の記録じゃない
名もない市井の人々がどのような暮らしをしていたのか
戦争の記録を残したいんだ
歴史的な大きな事件ではなくあの戦争の中での日々を残しておこうと」
美子「いつからそんな事を?」
花山「以前から探していたんだよ…
あなたの暮しがこれから世に提案すべきものは何なのか」
常子「それが戦時中の暮らしの記録ですか?」
花山「ああ…これからは世の中から忘れ去られないように訴えていくのも
この雑誌の役割だと思ってね…
あの戦争は我々庶民の暮らしをメチャクチャにした
戦争の経過などは正確な記録が残されているが
あの戦争の間ただ黙々と歯を食いしばって生きてきた人たちが
何を食べ何を着てどんなふうに暮らしていたか
それについて具体的な事はほとんど残されていない…
それを残したいんだ
私は終戦を迎えたあの日以来ずっと考えていた
もし一人一人が自分の暮らしを大切にしていたら
もし守らねばならない幸せな家族との豊かな暮らしがあったなら
あの戦争は起きなかったのではないかとね…
二度と戦争が起きぬようにあの戦争に関わってしまった人間として
戦後生まれの人にもきちんと伝えたいんだ」
常子「それで広島へ…」
花山「ああ…だが思うようにはいかなかった
つらい記憶だ…皆口が重くてね
戦争中の事は話したがらない
今更蒸し返してほしくないとも言われた」
美子「では取材は失敗ですか?」
花山「また行くさ、来週にでも」
美子「来週?」
花山「1週間もあれば退院できるだろう」
美子「退院できたからといって病気が治った訳ではないんですよ」
花山「治るまで待ってはおれん」
美子「でしたら花山さんの代わりに私が」
花山「駄目だ!従軍経験がある私でなくてはできん!
じかに人々の声を聞いて記事にしてみたいんだよ!」
茜「いい加減にしてよお父さん!
こんなに皆さんが心配して下さってるのにどうして分からないの?
お父さんはもう年なのよ…お仕事よりもお体をもっと大事にして」
三枝子「私も茜に賛成です
もし今度倒れたらと思うと私も生きた心地はしません
お願いします…どうかお考え直し下さい」
花山「…死んでも構わん
私は死ぬ瞬間まで編集者でありたい
その瞬間まで取材し写真を撮り原稿を書き
校正のペンで指を赤く汚している現役の編集者でありたいんだ!
(とペンをかざし)常子さん…君なら分かるだろう!」
目を伏せる常子「…私は…
(と花山を見て)取材に賛成する事はできません」
花山「…」
常子「奥様や茜さんが反対してらっしゃるのに認める訳にはいきません」
三枝子「常子さん…ありがとうございます」 茜「ありがとうございます」
常子「いえ…」
ベッドの上で無念そうにうつむく花山

夜、常子の家
鞠子(相楽樹)「それで花山さんは納得したの?」
美子「多分ね…それっきり黙ったままだったから…」
鞠子「そう…」
水田「お医者さんは何と?」
美子「もちろん安静ですよ
たとえ1週間で退院できたとしてもすぐに仕事や
ましてや広島に出かけるなんてとても許可できないって」
たまき(吉本実優)「それでも花山さんは取材なさりたいでしょうね…
(一同がたまきを見る)あっ…ごめんなさい…」
鞠子「とと姉はまだ迷ってるのね」
常子「うん?」
鞠子「本当に止めてよかったのか」
常子「うん…」
鞠子「奥様と茜さんのお気持ちを考えると
とても許可なんてできないわよね」
美子「私は今日の花山さんのお姿を見ただけで…
もうそれだけでうなずけなかった」
水田「最近は昔じゃ考えられないような老け込みようですからね」
『死ぬ瞬間まで編集者でありたい…』と言った花山を思い出す常子

病室で女性看護師に脈をとられている花山が常子たちを睨みつけている
「私が勝手に抜け出さないか見張りに来たのか」
美子「そんな…」
水田「違いますよぉ」
茜「せっかくお見舞いに来て下さったのに」
三枝子「お花とてもきれい…ありがとうございます」
美子「いえ…」
看護師「怒ったりしたら駄目ですよ、血圧また上がりますから」
花山が看護師を挑発するように睨む
(退室する看護師に茜と三枝子)「ありがとうございました」
常子「花山さん…
取材をなさりたいという気持ちにお変わりはありませんか?」
花山「…もちろんだよ」
常子「あれからいろいろ考えたんですが
やはり花山さんがなさろうとしている企画は続けるべきだと思うんです」
(美子と水田)「…!?」
茜「待って下さい、父は仕事ができる状態じゃ…」
常子「ええ…ですからこれ以上の取材を認める事はできません」
花山「どういう事だ?取材しなければ戦争体験者の声を集められんだろう」
常子「あなたの暮しで戦時中の暮らしについて書いて下さいと
読者の方から募集するのはいかがでしょうか?」
美子「募集?」
常子「そう…原稿用紙1枚でも…それよりも短くたっていいんです
皆さんが書いて下さったものをまとめる事ができたら…」
水田「あっ…それなら取材に出向かずとも
多くの声を集める事ができますよね」
花山「だが本当にそれで質の高い記事に?」
立ち上がり花山の顔をのぞき込むような常子
「読者を信じてみませんか?
商品試験の時も信じて応援して下さったんです
新しい雑誌が日々生まれる中で買い続けて下さっているような方々です
我々の思いに共感して戦時中の暮らしについて
ありのままに語って下さるはずです
奥様と茜さんはいかがでしょうか?
これだと花山さんのお体に負担をかけず
記事を作る事ができると思うんですが」
三枝子「ご配慮ありがとうございます」 茜「ありがとうございます」
空(くう)を見つめる花山に常子「花山さんは…いかがです?」
花山「募集文は私に書かせてくれ」
微笑む常子「はい」

病室のベッドで原稿を書く花山
『その戦争は昭和十六年に始まり昭和二十年に終わりました
それは言語に絶する暮しでした
その言語に絶する明け暮れのなかに
人たちはやっとぎりぎりで生きてきました
親兄弟、夫や子、大事な人を失い
そして青春を失い
それでも生きてきました
そして昭和二十年八月十五日戦争はすみました
まるでうそみたいでばかみたいでした
それから二十八年がたってあの苦しかった思い出は
一片の灰のように人たちの心の底ふかくに沈んでしまって
どこにも残っていません
いつでも戦争の記録というものはそういうものなのです
あの忌わしくて虚しかった戦争の頃の「暮し」の記録を
私たちは残したいのです
あの頃まだ生まれていなかった人たちに戦争を知ってもらいたくて
貧しい一冊を残したいのです
もう二度と戦争をしない世の中にしていくために
もう二度とだまされないように
どんな短い文章でも構いません
ペンをとり私たちの元へお届けください』

二ヵ月後

「おはようございます」と出社する常子たちに
「常子さ~ん!」と慌てて階段を下りてくる島倉
常子「はい」
島倉「大変です!」
常子「どうしたんですか?島倉さん」
島倉「(あっ…)もういいから来て下さい早く!」(と階段を上がっていく)
島倉の様子に驚きながらも後に続く常子

(つづく)

花山は看護師を睨みつけたりとか元気ありすぎだろw

取材を広島から始めたのは被爆体験は外せないからだろうか?

今回は花山のセリフに力のあるものが多かったし募集文も美しかった
「…もし一人一人が自分の暮らしを大切にしていたら
もし守らねばならない幸せな家族との豊かな暮らしがあったなら
あの戦争は起きなかったのではないかとね…」
などは本当にそうではないかと思う
もちろん戦争はどちらが悪でどちらが正義とかそんな単純なものではないが
日本やドイツの国民が軍部やナチスによる被害者だというのは違うと思う
おそらく国民の少なくとも一部は戦争を望んだはずだ
格差が広がり生活は苦しく結婚する事も難しくて子どももいなければ…
もういっその事戦争でも起こってガラガラポンしてくれないかと
考えてしまう人たちが増えても不思議ではないだろう
今の日本のネトウヨと呼ばれる人たちがそうではないのか?…とちょっと思う


2016年9月26日月曜日

とと姉ちゃん(151)社員たちの前で在宅勤務制度の導入を宣言する常子

昭和四十九年四月 

社員やテスターたちが揃った編集部 
常子(高畑充希)「10年ほど前から私たちの編集会議には
テスターさんを含めて雑誌作りに関わっている方全てに
参加して頂いています… 
あなたの暮しの読者はどのような方ですか?…扇田さん」 
扇田「どのような…多くは女性ですね」 
常子「では具体的にはどのような方かしら?…島倉さん」 
島倉「はい…我々の想定する読者は主に主婦です」 
常子「では主婦というのはどんな方?…木立さん」 
木立「え~っと…結婚して家庭に入ってる人…(周囲がうなずく)…です」 
康恵(佐藤仁美)「ちょっと待ちなよ、その言いぐさじゃ
働いてる女は主婦じゃないって事かい?」 
木立「あっ…そう言われるとあの…」 
(一同の笑い声)
常子「フフフ…つまり主婦の在り方も随分多様化してきている訳です
女は結婚して家庭に入る…
それが当たり前だとされていたような風潮は
今後ますます変わっていくでしょう(一同がうなずく)
そんな中で私たちの雑誌も変わっていかなければならないと思っています」
緑(悠木千帆)「変わる…といいますと?」
常子「働く女性に役立つ…そのような女性の参考になるような企画を
掲載した雑誌を作るという事です(たまきがメモをとる)
それと同時にこの会社自体も女性が働きやすい場所に
変わっていかなければならないと思います
そこで希望する方はご自宅で働けるようにしたいと思います」
(ざわめく一同)
「自宅?」
「自宅でですか?」
(寿美子や美子も驚いている)
常子「もちろん可能な日は出社して頂きますが
例えば急にお子さんの看病をしなければならなくなったような日は
家での作業だけで済むようにします」
(一同のざわめき)
常子「取材内容の整理や原稿の執筆校正などは
家でも進められると思うんです」
扇田「できる…事はできるとは思いますけども…」
ざわめく一同に微笑む常子「10人いれば10とおりの暮らしがあります
あなたの暮しはそれぞれの暮らしを尊重して働けるような場所を整え
遅くとも10月までには開始したいと思っています」
「10月?」
「すぐじゃないですか?」
常子「初めての取り組みですし仕事に混乱が生じないようにはしますが
皆さん何か問題がありましたら是非遠慮なくおっしゃって下さい」
考えを巡らせているような花山(唐沢寿明)
一同は相変わらずざわついているがだいたいはうなずく
美子(杉咲花)と水田(伊藤淳史)が笑顔でうなずき
寿美子(趣里)は考え込むような表情だ

夕刻、社員たちが退社していく中仕事を続ける寿美子
常子「寿美子さん」
振り向き顔を上げる寿美子
常子「寿美子さんの悩みにきちんと応えられなくてごめんなさい」
(と頭を下げる)
寿美子が首を振る
隣に腰かける常子「ご家庭の事もあるでしょうけど
これから職場環境は整えていきますから退職の件
考え直して頂けないかしら?
これからのうちの雑誌には寿美子さんのような方がどうしても必要なの」
寿美子「…ありがとうございます(と頭を下げる)
いろいろと考えて下さり…主人ともう一度話し合ってみます…前向きに」
笑顔になる常子「本当?」
寿美子「はい」
常子「フフフ…ありがとう寿美子さん
…あっ…でも答えは焦らなくていいからね
いくらでも待ちますから」
寿美子「ありがとうございます」
と、ドアが開き花山とたまきが現れる
花山「この資料用意しといてくれ」
たまき(吉本実優)「はい分かりました」
寿美子が常子にうなずく
たまき「あっ、常子さん」
立ち上がった常子「はいはい」
たまき「先ほど働く女性の参考になる企画っておっしゃってましたよね」
常子「うん」
たまき「まずは実際に会社勤めして第一線で働いている女性を
取材するのはどうでしょうか?
例えば大日ホテルの女性コックさんとか…
そういう方のやりがいとか悩みとかを取り上げてみたいのですが…」
微笑む常子「面白そうじゃない、やってみましょう」
たまき「本当ですか?ありがとうございます!(とお辞儀をして
寿美子に振り向き)あの…寿美子さん手伝って頂けないでしょうか?」
寿美子「私?」
たまき「はい、だって寿美子さんは働くお母さんじゃないですか
その視点でインタビューしてみたら
思わぬ話が聞けるんじゃないかと思うんです
お願いできませんか?」
寿美子「ええ、うん」(とうなずく)
たまき「ありがとうございます!(常子も後ろで嬉しそうに微笑む)
私早速明日から取材交渉に行ってまいります」
寿美子「うん」
たまき「よろしくお願いします」
席に戻った常子の前に帰り支度をした花山が立つ
「あなたの暮しはそれぞれの暮らしを尊重する…いい提案じゃないか」
常子「花山さんにそうおっしゃって頂けると…」
花山「私も私なりに答えを出さねばならんな…お先に失礼するよ」
常子「さようなら」

<花山もまた
あなたの暮しのこれからに必要なものを見いだそうとしていたのです>

帰宅する花山「ただいま」
孫のみのりが「じいじお帰りなさい!」と玄関に駆けてくる
茜(水谷果穂)「お帰りなさい」
三枝子(奥貫薫)「お帰りなさいませ」
「ただいまみのり」と花山がみのりを抱き上げる
三枝子「すぐお夕飯にしますね」
花山「ああ」
茜「みのり、おじいちゃんに会えてよかったね」
みのり「うん、じいじは?」
花山「じいじもだよ、アハハ(とみのりを抱いたままダイニングに向かい)
茜…いくら近いからといってこう頻繁に帰ってきたんじゃ
明彦君が気の毒じゃないか?」(とみのりを下ろす)
茜「このところ明彦さん残業ばかりなのよ
みのりと2人で夕飯食べるのも何だか味気ないし
こっちに来て大勢で食べた方がおいしいもの
お父さんもみのりに会えてうれしいでしょ?」
みのりを膝にのせ椅子に座る花山「それはそうだがねえ…」
三枝子「いいじゃないですか
こうして一家団らんできるなんて幸せな事ですよ
お体を壊すまではお帰りが遅くて
こんなふうにそろって夕食をとるなんてめったになかったんですもの」
花山「うん…」
茜「何だかお父さんがお体壊してよかったみたいな言い方ね」
三枝子「そんな事は言ってないでしょ、もう…」
みのり「ねえじいじ、クレヨン取ってくれる?」
花山「ああ」(と手を伸ばす)
みのり「じいじのお顔描いてあげるね」
花山「ああ、ありがとう…は~い」(とクレヨンと紙を準備する)
クレヨンを手にした孫を見て微笑む花山

仏壇に手を合わせ目を閉じる常子
「とと姉、これお願い」と鞠子(相楽樹)が後ろに座り皿を渡す
振り向き「ああ、ありがとう」と皿(枇杷)を受け取る常子「初物ね」
鞠子「ええ」
常子が枇杷を供え鞠子が手を合わせる
鞠子「よっちゃんから聞いたわ」
常子「ん?」(と振り向く)
鞠子「社員さんのために勤務体制見直そうとしてるって」
常子「うん…まだまだ手始めという感じだけどね
社内整備をしたところで全ての問題が解決するとは思わないし
働く女性やお母さんたちを取り巻く問題はもっとずっと根が深いと思うから
でもとりあえずはできる事から始めないと何も変わらないと思うから」
「フフフ」と鞠子が可笑しそうにうなずく
常子「ん?」
鞠子「とと姉は社員にとってもやっぱりとと姉ちゃんなのね」
常子「そういう性分なだけよ」
鞠子「とともきっと驚いてるわよ
『幼かった常子がこんなに立派になって』って」
仏壇の写真を見つめる常子「そうかなあ…」

「ただいま戻りました」と寿美子とたまきが編集部に戻る
常子「寿美子さん、取材はどうだった?」
寿美子「とても興味深いお話が伺えました
たまきさん聞き上手で私なんかいらないくらい」
たまき「とんでもないです、寿美子さんが水を向けて下さったから
あそこまでお話し頂けたんですよぉ」
美子「いいコンビの誕生ね」
常子「ねえ」
たまき「あっ…花山さんに今後の取材方針の相談したいんですけども…
お部屋ですか?」
常子「ああ…それがね…」
美子「花山さんまだいらしてないの」
(2人)「えっ?」と腕時計を見る
たまき「もう2時になるのに…」
美子「いつものようにね
ぶらっと展覧会でものぞいてらっしゃるんだと思うけど
このところ体調思わしくないから…」
常子「連絡がないのも心配ねえ」
木立「あの…常子さん」
常子「はい」
受話器を手に木立「花山さんからお電話です」
常子「はい(と立ち上がり)ありがとう(と受話器をもらい)
常子です、今日はいらっしゃらないんですか?
心配していたところだったんですよ」
(花山)「今取材で広島に来てる」
常子「広島?何の取材ですか?」

たばこ屋の前の赤電話に硬貨を落とす花山
「それはまとまってから伝えるよ」

常子「ですが今のお体では地方での取材は無茶です」

花山「心配ない…4日後に帰る…では」(と受話器を置く)

常子「あっ…ちょっと…」(と通話が切れた受話器を置き3人を見る)
たまき「花山さん広島にいらっしゃるんですか…?」
常子「何かの取材らしいのだけれど…」
美子「何かしら…」
心当たりがない様子の常子

首にはカメラをぶら下げ足元のカバンを手にした花山が歩き始める

(つづく)

たまきが会社で「常子さん」と呼んでいた(入社前は「おばさん」)
この会社では常子と美子が「とと姉ちゃん」「よっちゃん」と呼び合い
公私の別がない感じだったがたまきはさすが
入社試験を受けて入っただけあってけじめをつけているようだ

久しぶりに登場した三枝子の「お体を壊すまでは~めったになかった…」
は普通に花山の仕事への取り組みの説明セリフだと思ったのだが
それに対する茜の「何だかお父さんが体壊してよかったみたいな
言い方ね」は何か深い意味でもあるのだろうか?
三枝子に謎セリフが多い事は以前にも書いたが
茜のセリフを考えると三枝子ってのほほんとしているようでいて
やはり愚痴っぽいところがあるのかなあと思ってしまうw

寿美子と絡んでるシーンのたまきがうざいw
快活で前向きなのだろうが見てるとなんだか痒くなる
まあ吉本実優の演技がそれだけ上手という事なんだろうけど


2016年9月24日土曜日

とと姉ちゃん(150)子育てをする寿美子のような社員のために家庭と仕事を両立できる社内整備に悩む常子

たまきの最終試験から一週間後… 
玄関前で潤(14歳)が野球のバットを素振りしている 
が、なにやら通りの向こうを気にしている様子 
その潤が臨める和室で本(老いても愛す 五反田一郎)を
手にしたたまき(吉本実優)も落ち着かない様子だ 
真由美(13歳)がやってきてそんなたまきを見て微笑む 
家事の合間に通りかかった鞠子(相楽樹)もたまきを気にしているようだ 
と、表で「郵便です」と声がする 
潤が「姉ちゃん!来た来た来た来た」と叫んでたまきに封書を届ける 
(効果音:ベートーベンの「運命」♬ジャジャジャジャーン)
3人に見守られ封を開け恐る恐る中身を確認するたまき 
返却された履歴書の下部に「採用」の赤印 

編集長室でたまきの採用通知を見せられている常子(高畑充希)
花山(唐沢寿明)「ホッとしたかい?縁故入社などでは断じてないよ
あの環境の中でも自分を持ち率先して動けていた
料理の記事は分かりやすい言葉で書かれ
(常子がたまきの答案を確認している)
一般家庭で作る事が想定できていた
我が社でやっていくには大事な才能だよ」
やっと笑顔になりうなずく常子「ホッとしました…フフ」

タイトル、主題歌イン

昭和四十九年四月
仏壇に竹蔵と君子のそれぞれの写真
手を合わせているたまきと常子
「行ってきます」と囁いたたまきが常子に振り向く
「常子おばさん…行きましょう」
常子「…行きましょう、フフフ」

新入社員(男女2名)の文章を確認する男性社員
「う~んちょっと硬すぎるかな…
まあまずは俺が見せて雰囲気よくするから大丈夫、心配いらない」
と3人で花山のデスクに向かい男性社員「失礼します確認お願いします」
と、「すみません、通ります!通ります!」と慌てて駆け込んでくるたまき
水田(伊藤淳史)、美子(杉咲花)、常子もたまきが気になる様子
机で何かを探しているたまきに寿美子(趣里)
「炊飯器の試験中じゃなかった?」
たまき「3年前の試験からどのくらい安全性が高まったのか
比較した方がいいと思って資料を作ったのですが…」
寿美子「無くしたら大変って保管棚にしまってなかった?」
たまき「あっ、そうでした!ありがとうございます!(と駆け出し)
すみません失礼します!通ります!失礼します」
そんなたまきに笑顔の常子
と今度は花山の怒鳴り声が聞こえる「バカ者!何だこの原稿は?
取材をしていないだろう!2年目でもまだ学生気分が抜けきらんか!」
男性社員「申し訳ありません!」
立ち上がる花山「新入社員の手本とならんでどうする!やり直し!」
男性社員「はい」
花山はそのまま編集長室に向かう
男性社員「すまないね…君たちの文章を見てもらう前に」
新入社員・女「いえ、私書き直してきます」
男性社員「えっ?」
新入社員・男「僕も」
男性社員「えっ?」
新入社員の2人は男性社員を残し去っていく
美子「早速花山さんに圧倒されたようね」
常子「ねえ…あ…私も見て頂かないと(と原稿を手にして)
学生気分が抜けてるといいけど」(と笑う)
美子「何年前の話よ」

編集長室のドアをノックする常子「常子です」
中から「どうぞ」と声がする
「失礼します」とドアを開け原稿に目を落としながら中に入る常子
「あの…『小さなしあわせ』の確認…」
と、ベッドに横たわっている花山を見て「失礼しました」と戻りかける
花山「ああ…いいんだいいんだ…机の上に置いといてくれ」
「はい…」と部屋に入り奥の机に向かう常子
花山「駄目だな…ちょっと怒鳴ったぐらいで疲れるようじゃ」
常子「いえ、少しでも異変を感じたらすぐにここでお休みになって下さい」
花山「ここでねえ…鬼社長は家に帰してくれんからな」
笑う常子「倒れた次の日から働こうとしたのはどこのどなたです?
だからここにベッドを置いたんじゃありませんか
心筋梗塞がいつまた起こるか…」
花山「もう心配ない、あれから5年だ
それに最近は体に障らないよう感情を抑えるようにしている」
常子「あれ?さっき怒鳴ってらしたような…」
「フフフフ」と笑った花山が身を起こし常子がそれに手を貸す
花山「今年はそんな場面は少なくて済みそうだよ
今年の新入社員は優秀だねぇ…特に女の子が元気だ」
常子「私もそう思います」
花山「私は常子さんと出会うまで男としか仕事をしてこなかった
それがいざこうして女性たちと同じ職場で働いてみると
柔軟な考えや粘り強さに驚かされる事ばかりだ」
常子「フフフ」
花山「そんな女性を家庭に閉じ込めておいてはもったいない
もっと女性が活躍できる世の中になるべきだよ」
常子「そうですね」

編集部に戻り元気に働く女性社員たちを眺める常子
『女の人を手助けできればと…』と会社を起こした頃の事を思い出す
そんな常子を寿美子が訳あり顔で見つめている
常子が席に着くと寿美子が進み出て「あの…常子さん」
常子「はいはい」
寿美子「実は…会社を辞めさせて頂きたいんです」
常子「…!?」

別室の2人
寿美子「以前から考えてはいたんですが
やはり家庭との両立が難しくて…
確かにうちは子育てをしながら働く女性も何人かいますし
よそに比べたらとても働きやすい環境です
でも私が遅く出社したり早く上がる事で
皆さんにしわ寄せが行くのを感じます
新入社員も入りましたしどこかいい時期に私は…」
常子「どうしても…続けて頂けないかしら?」
寿美子「すみません…皆さんにご迷惑をかけたくないので(と立ち上がり)
迎えがあるので今日もお先に失礼します…すみません」(と部屋を出ていく)
掛ける言葉もなく見送るだけの常子

常子のメモ帳
あなたの暮しの取り組み
「働く機会を充実させる」
本人の希望する就業時間を重視
出産、育児の一定期間休職し再雇用をする
(効果は大きいが育児をしながら働く人の助けになるには不十分)
家庭と仕事を両立できる取り組み

居間の長卓で頬杖をつきメモ帳を見つめる常子「どうしたもんじゃろのぉ…」
「とと姉」と鞠子が果物(いちごとオレンジ)を前に置く
常子「あっ、ありがとう」
鞠子「お仕事大変ね」
常子「うん…」
美子「あら…懐かしいもの引っ張り出して」
たまきと水田がソファーであなたの暮しのバックナンバーを見ている
南(上杉柊平)「たまきちゃん仕事の方はどう?慣れた?」
たまき「それが全く…ついていくだけでもう…
皆さんすごいんですよ、テキパキテキパキ」
鞠子「花山さんも想像以上だったでしょ」
たまき「うん、厳しさも想像以上だけど何より発想力とか洞察力とか
どうやったらこんな原稿が書けるんだろうなあ…」
(と直線裁ちの記事を読んでいる)
美子「しかも文字数もぴったりだからね」
南「ぴったり?」
鞠子「ああ、そうそう…花山さんの原稿はいつも初稿から必ず
行数ぴったりに仕上げてきて最後の1行までぴったり埋まってるのよ」
南「へえ~」
鞠子「今でもそうなのね…」
美子「会社の雰囲気とかは?想像とは違ってた?」
たまき「ううん、思ったとおり女性が働きやすい会社でした
友達の入った会社は男性に『これだから女は…』って言われたり
お茶くみばかりさせられたり
その点うちの会社は男と女の別なく実力主義で仕事をさせてもらえるから
本当に幸せな職場だと思います(それを聞いて常子も微笑む)ただ…」
水田「ただ?」
たまき「寿美子さんのように育児をしながら働くのは大変そうで…」
美子「うちみたいなのが特殊なのよね
ほらうちはまり姉ちゃんとかかが家事も育児もしてくれたじゃない?」
南「そうだよな」
美子「だから私は仕事しながら子どももなんてできたのよ」
鞠子「いえいえ」(と首を振る)
水田「時代が変わって今は大家族で暮らしてる家なんて少ないからね
寿美子さんちみたいに旦那と子どもだけの家庭じゃそりゃあ大変だよな」
家族の話を聞いて思案顔の常子

編集部のデスクでも考え込んでいる常子
寿美子やたまきの言葉を思い出し何かを思い立ったように立ち上がる

編集長室で絵筆を持つ花山
「失礼します」と常子が入ってくる
花山が筆を置く
机の前に立つ常子「実は昨日寿美子さんから
会社を辞めたいとのお話がありました
やはり家庭との両立は難しいみたいで」
花山「残念だな…有能な編集者だっただけに」
常子「ええ…それで考えたのですが
社内の仕組みを変えたいと思っています…
もちろんそれで寿美子さんが残って下さるかは分かりません
ですが今後ますます核家族が増え
寿美子さんのような方は増えると思うんです」
花山「ああ」
常子「女性の役に立ちたいと創刊したあなたの暮しですから
女性が働きにくい今の社会に一石を投じるような
社内環境の整備をするべきではないかと考えました
我が社が率先してそのような姿勢を見せれば
他の会社も変わるかもしれません
そうすればより多くの働く女性たちの力になれるのではないかと思ったんです」
花山「随分な意気込みようだな
鼻の穴が広がっているよ」
笑い出す常子「もう…ちゃんと聞いて下さい」
花山「ハハ…それで具体的に何をする?」
常子「それは次の会議で皆さんと一緒に」
花山「自信がありそうだね」
常子「はい…では失礼します」(と退室していく)
微笑んで常子を見送った花山が立ち上がりかけ顔をしかめる
と、ガクンと腰が落ち胸のあたりを押さえ「うっ…くっ…」と呻く花山

(つづく)

なるほど、採用の決定権は編集長の花山にあるという設定なんだね
それにしても採用通知をわざわざ郵便で送らんでもw

おそらく初出社の日、人生の節目の朝には仏壇に手を合わせるシーンから
入るのも常子と同じでさすが後継者と思われるたまき
服の色も常子のイメージカラーの青だった

会社で資料を無くして走り回っているのも
常子と同じでおっちょこちょいなところもあるという描写だろうか

花山が「今年の新入社員は優秀だ(特に女の子)」と言っていたのも
たまきが後継者になる事の伏線なのかな?

それにしても新入社員に先輩風を吹かしていたが
花山に罵倒されてしまった男性社員がかわいそう
もうあの新入社員の2人に一生なめられるよねw

寿美子もあんな人が大勢いる場所でいきなり会社辞めたいとか言うなよ
常子も焦ったと思うぞw

花山の「鼻の穴が広がっているよ」は脚本だろうか?
まさか唐沢でもこんなシーンでアドリブはしないと思うのだが…
どちらにしても高畑の演技のクセをからかっているようで笑えた

2016年9月23日金曜日

とと姉ちゃん(149)活気溢れる編集部を見たたまきは常子に…

2階へ移動する一同 
島倉「花山さん!花山さん!」 
花山(唐沢寿明)「何だ騒々しい」 
木立「これ事件です、これを見て下さい」(と試験資料を見せる) 
島倉「一回に出るスチーム量なんですがアメリカ製の9ccに対して
トーチクは10ccです」 
木立「スチームの広がり具合でも澄浦のアイロンが一番でした!」 
扇田「スチームが安定して出るまでの時間はアメリカ製は2分35秒
ハルデンは温度は低いですが2分20秒でした!」 
花山「ほう…とうとうこんな日がやって来たか!」 
常子(高畑充希)「アメリカ製を…」 
美子(杉咲花)「信じられませんね」 
たまきに説明する水田(伊藤淳史)「スチームアイロンの試験で
日本の製品がアメリカ製を上回る結果を出したらしい」 
驚くたまき(吉本実優) 
水田「メードインジャパンは安かろう悪かろうと言われて
アメリカのまねをするだけで性能が追いついていないというのが
日本製品のお定まりだったんだけど…
そうか…ついにこの日がね…」 
たまきも感慨深げに微笑む 
花山「日本人の職人気質が改良に改良を重ねさせ
品質向上につながったんだろう
日本のメーカーが力をつけた証拠だな」 
常子「こういう瞬間に立ち会えると
長年商品試験に関わってきてよかったと心から思います」 
花山「ただし調べる項目はまだ山ほどある
メイドインジャパンの製品が真に世界に誇れるものなのか
徹底的に調べ発表していこう!」 
(一同)「はい!」 
寿美子(趣里)「これから繊維別のメモリ温度の試験を開始します」
「じゃあ私たちはスチーム量のデータを原稿にまとめます」
花山「それぞれ作業に入ってくれ」(と手をたたく) 
(一同)「はい!」
活気溢れる編集部を見て顔がほころぶたまき

タイトル、主題歌イン 

夜、たまきが部屋をノックする「たまきです」
机に向かい椅子に座っている常子が振り向く「どうぞ」
ドアを開けるたまき「ちょっとよろしいでしょうか」
常子「よろしくてよ、フフフ」
部屋に入ったたまきが常子の横に立つ
常子「何か相談?」
うなずくたまき「私…おばさんの会社で働きたい」
少し驚く常子「でもあなた卒業したら銀行にお勤めしたいって…」
たまき「本当は今までも何度か考えてたんです
だけど縁故入社だと思われるのが嫌で…
でも今日久しぶりに会社にお邪魔して思いが固まりました
私は世の中の役に立つ仕事がしたいです
あなたの暮しがずっと掲げている『暮しを豊かにするお手伝い』
というモットーもとてもいいなと思いますし
この前もテレビで広海の社長さんが話してました
あなたの暮しの商品試験がなければ
日本の電気製品は進歩しなかっただろうって」
少し嬉しそうに顔をしかめて笑う常子「大げさよ」
たまき「影響は僅かかもしれませんが
私も商品試験が粗悪な商品を淘汰し
進歩する手助けをしたのは間違いないと思います」
常子「ありがとう」
たまき「それに多くの女性が働くあなたの暮し出版には
女性の夢がたくさん詰まってる気がします
そんな場所で私も自分の力を試したいです」
常子「……分かったわ…そこまで言うならやってみなさい(と微笑み)
ただし(と立ち上がり)審査は公正に行いますよ」
笑顔でうなずくたまき「はい」
常子「フフフ」

台所で牛乳瓶の蓋を開けた鞠子(相楽樹)がたまきを見つめる
たまきは居間の長卓で履歴書を書いている(…編集員を希望)
風呂上りの水田が廊下からガラス越しにたまきを見る
台所に向かう水田「まさかたまきがうちに入りたいなんて…」
鞠子「世の中の役に立つ仕事がしたいって言ったそうよ」
水田「そんな目標を?まだまだ子どもだと思ってたけど…」
鞠子「ねえ…でもあの子なら花山さんに怒鳴られてもくじけないでしょうね」
水田「おいおい、まだ入社が決まった訳じゃないんだから…
もしかしたら僕の娘って分かったら落とされちゃうかもしれない
あっ…それに…もしたまきが合格したら僕がクビになっちゃうかも…」
あきれる鞠子「(もう…)正平さん黙って飲んで!」

履歴書を確認しながら廊下を歩くたまき

<両親の心配をよそにたまきは1次選考2次選考を無事通過し
最終試験を迎えました
しかしあなたの暮し出版の最終試験は一風変わったものでした>

最終試験会場に集められた18人の受験者たち
その中で唯一スーツ姿の青年が
隣に座る柄シャツのメガネをかけた男に尋ねる
「なしてそだ格好してんだ?」
メガネ「ここの編集長はスーツ嫌いで有名だろ」
その隣の女「そんな事も知らないの?」
さらに隣の女「ちょっと静かにして」
その横に座るやや緊張した表情のたまき
ドアが開き入ってきた花山が受験者たちの前に立つ
「諸君、本日はご苦労
やっと最終試験になった訳だが入社試験というのは甚だ憂鬱なものだね
こちら側は果たして人を判断する事ができるのかという
気持ちを持ちながらそれ以外に方法がないから
気を引き締め採点や面接をしなければならない
君たちはわざわざ試験を受けるのに落とされる
どちらにとってもあまり愉快なものではないよな
だから早く終わらせてしまいたいのはやまやまだが
手順というものがあるので問題は後で出す」
(受験者たち)「…?」
花山「まずは1階に移動してもらおう」

受験者たちが1階に移動すると部屋の中央に寄せられた台の上には
様々な食材が並びコンロに中華鍋といった調理器具もある
美子「皆さん荷物は棚に置いて下さい」
(受験者)「何か私たちが作るのかしら」
(スーツ)「まずは腹ごしらえですかね」
(受験者)「出版社の試験だろ?」
常子が調理服姿の男を伴い現れ受験者たちの前に立つ
「では今から調理を始めます、よく見ていて下さいね
メモや質問は自由です(調理人に)ではお願い致します」
(ドラの音が鳴る演出w)
調理人(陳健一)「え~私銀座で中華料理やってる楊といいます
こちらの材料で青椒肉絲作ります」
受験者たちが首を傾げる(たまきは不安そうな表情)
花山が彼らを見つめている
楊「はい、まずねこの肉切りますね
肉はですね繊維ね今日絲でしょ、薄切りにしていきます(と肉を切る)
繊維に沿って切るね(たまきを含む何人かがメモをとっている)
後で火通した時ちぎれない、きれいね
次タケノコ切ります、同じ幅にこれ切りますね
(タケノコに続きピーマンを切っている)繊維を断ち切るようにこれは切る
(油がいっぱいの鍋に肉を入れ)すぐタケノコも入れる
ピーマンはね火通り早いね、最後、ピーマン色きれいね
(調理の様子を見ながらメモを続けるたまき)
油通しこれで完了、はいきれいにね
ネギ炒める、香りねネギいい香りします(と鍋をあおる)
(炒めた料理を皿に盛り)はいこれでね青椒肉絲出来上がりました
私ね帰ります、再見(ツァイチェン)」(と手を振り退室していく)
常子「ありがといございました」
(ドラの音)
受験者の前に立つ常子「はい、ここまで…
では皆さん今見た青椒肉絲の作り方を伝える記事を書いて下さい」
受験者たちがざわめく
美子「解答用紙をお配りします」
(受験者)「記事?」
(受験者)「だったら最初にちゃんと観察するよう教えてくれても…」
常子「メモや質問は自由…よく見るように…と言いましたよね」
(受験者)「…はい」
水田が布をはらい時計を模した大きな表示板を見せ
「制限時間は20分です」
(受験者)「20分?」
手を挙げるたまき「あの…」
常子「はい」
たまき「答案はどこで書けばいいのでしょうか」
常子「ここです、皆さんそれぞれ工夫してお書き下さい」
水田「それでは始め!」
(受験者)「工夫ったって…」
と、突然膝をつき床の上で答案を書き始めるたまき
他の受験者もたまきに倣う(一部は小さな台の上などで書いている)
すると花山がプレイヤーのレコードに針を落とし
大音量で「運命」をかける♬「ジャジャジャジャーン」
(受験者)「何ですかこれ?集中できないのでやめてもらえませんか?」
(スーツ)「あの…集中できないんで止めてもらえませんか?」
花山が音を止め「記者たるものどんなにやかましい場所でも
原稿を書かねばならんのだよ!そしてこんな時もある」
と今度はラジカセで工事現場の「ガガガガガッ」という音を大音量で流す
追い込まれながらも懸命に答案に記入するたまきたち受験者
見守る水田や常子
大盤の時計が20分の経過を告げる
水田「はい、時間です」
美子「では答案用紙を回収します」
花山が拍手をし、受験者たちも拍手をする
花山「次が最後の問題だ」
(受験者)「まだあるんですか?」
花山「いいかい?この試験の前に別の部屋で私が君たちに言った事を
原稿用紙1枚にまとめなさい」
ざわめく受験者たち
(受験者)「それって『本日はご苦労…』ってやつですか?」
花山「そうだ、記者たるものいかなる時でも
人の話をぼやぼや聞いていてはいけない
目だけでなく耳による観察力も備えていなければ記者は務まらんぞ!」
水田「それでは始め!」
また床に座り込み書き始めるたまきたち受験者
常子たちが見守る中懸命に答案を書くたまき

(つづく)

常子がたまきに「審査は公正に行いますよ」と言って笑い合うシーンが
なんだか気持ち悪かったw(腹の探り合いみたいで)
公正になんかできる訳ないしその必要もないと思う
一般企業の縁故入社は自由だと思うし縁故で入ったからこそ
へたな事はできないから会社側も安心して雇えるだろう
ただし税金で運営されている公務員の世界では縁故はよくないと思う…

最終試験はいかにもありそうな感じw
確かにあれをやれば受験者の能力を見極められそう
けど花山のレコードとラジカセはやり過ぎだと思う(ドラマだからいいけど)

2016年9月22日木曜日

とと姉ちゃん(148)君子の教えを記事にする常子~さらに8年が過ぎ…

昭和四十年一月 

玄関から出てきた真由美が背伸びをして門柱の牛乳箱から牛乳を2本取り出し
郵便受けに差さっている新聞も抱えて家に戻ると潤が玄関を拭き掃除している
 
君子の部屋 
目を閉じ手を合わせている常子(高畑充希) 
その前には位牌と骨壺、花や果物が供えられた祭壇がある 

<君子は73年の生涯を閉じました> 

タイトル、主題歌イン 

常子の「では頂きます」でいつものように一族の朝食が始まる
しかし箸を持たずぼんやりとしている常子を見て水田(伊藤淳史)が目を伏せる
美子(杉咲花)「真由美お口拭いて、ベタベタよ」
真由美が「うん」と手拭いを取り出し口をゴシゴシと拭く
それを見て微笑んだ常子がみそ汁の中の飾り切りされたニンジンを箸でつまみ
「見た目も楽しい方がいいと思って」とニンジンを切っていた君子を思い出す
ニンジンを口に入れ汁を飲む常子
「うんと…両端を合わせて…こっちとこっちを合わせて…」と
真由美が君子に教えてもらった通りに手拭いを畳んでいる
それを見てまたも君子を思い出す常子
(君子)「小さな幸せっていうのかしら…その積み重ねで今の幸せがあるのね」

あなたの暮し出版
編集長室にはクレヨンの試験資料が貼られたボードが立ち並んでいる
それをどけて花山の前に立つ常子
コーヒーを淹れていた花山(唐沢寿明)がカップを手に席に座る
常子「葬儀ではお世話になりました(と頭を下げ)ありがとうございました」
花山「うん…さみしくなるね」
常子「ええ…花山さん先日私に何か書いてみないかとおっしゃいましたよね」
花山「ああ」
常子「見つかったんです…書いてみたい事…
母と過ごした時間の中で何気ない日常の愛おしさに改めて気付かされました
それを心に留めておくためにも
ごく普通の暮らしについてつづってはどうかと思ったんです
誰の周りにも起きていて、でも誰も取り立てて話さないような事の
一つ一つに心を向けて言葉にする
決して押しつけがましくならないようにそっとお知らせするような雰囲気で」
花山「お知らせか…」
常子「私は母から教わった事を自分の子どもに伝える事はできません
ですが記事にすれば多くの読者に伝えられます
母が私たちにしてくれたように人生に僅かでも
彩りや安らぎを添えられるような言葉や知恵を読者に伝えたいんです」
少し考え込んだような花山がカップを置き常子を見上げる「常子さん」
常子「はい」
花山「何をしている、すぐに行きなさい」
常子「えっ?」
花山「すぐに1行目を書き始めなさい
何より私がすぐに読みたいんだ!」
嬉しくて笑顔になる常子「はい!失礼します」
ボードを避けて部屋を出る常子を見て楽しそうに笑いコーヒーを飲む花山

編集部で席に着いた常子がペンをとり早速書き始める

<この常子の企画は『小さなしあわせ』と題されたエッセーとなり
読者の支持を集めていきました
君子が亡くなって8年が過ぎた頃には単行本として発売されていました>

昭和四十八年

<昭和48年
東洋の奇跡といわれる未曾有の高度経済成長を成し遂げた日本は
世界第2位の経済大国になりました
このころになるとあなたの暮し出版で働く女性の割合は7割を超え
男性と同様に女性が活躍できる職場になっていました>

多くの女性スタッフがスチームアイロンの試験をしていて
中には妊娠してお腹の目立つ社員もいる
寿美子(趣里)「常子さん」
振り向く常子「はい」
資料を見ながら寿美子「スチームアイロンの試験の…」
常子「寿美子さんお子さん熱出したんじゃ…」
寿美子「近所の方に見て頂ける事になりました
ご迷惑をおかけしてすみません」
常子「迷惑だなんてことないわ」
寿美子「でも…少し早く上がらせて頂きたいのですが…」
(男性スタッフ)成田「私交代しますよ」
寿美子「すみません」
成田「いいんですよ」
常子「ありがとうございます成田さん」
成田「あ~いえいえ」
寿美子はまだ何か話がありそうだが常子は別のスタッフに呼ばれる

編集部で談笑する若い社員たち「すごい!」「でしょ?だから買ったのよ」
「似合わないわね~」「似合うわよ、かけてみる?」「いいわよ」
横に立っている常子に気付き「あっ、すみません」
常子「ああいいのよ、休憩中でしょ
それより何?盛り上がってるわね」
「あ~実はこの雑誌で紹介されているサングラスを買ったんです」
手渡された雑誌を見て常子「あ~これ最近創刊された…」
「そうですそうです、取り上げられているお洋服や小物が
どれもおしゃれなんですよ」(とサングラスをかけて微笑んでみせる)
(一同のキャピキャピした笑い)
白髪交じりの常子「へえ~ここに載ってるの?」

<1970年を過ぎた頃から既製品の洋服を取り上げる女性誌が
次々と創刊され若い女性の間で人気を博しておりました>

常子の後ろから雑誌をのぞき込む緑(悠木千帆)
「婦人雑誌の様相も随分変わりましたね」
常子「そうですね」
緑「服なんて既製品の紹介ばかり
小物だってどこどこの何々がおしゃれだから買いましょうって…
自分で作る事を基本にしたうちとはまるで趣が違いますよ」
常子「豊かな暮らしの表れなんですかね」
緑「物がなくてもったいない精神が染みついた
我々の世代からは考えられませんね」
「…ですね」とサングラスをはずす女性社員(他の若手社員たちが笑う)
常子「フフフ…いいのよ別に…今日一日かけといたら?」

<花山は5年前に心筋梗塞で倒れ
職場にベッドを持ち込んで休みながら仕事を続けておりました>

編集長室のベッドの上で件の雑誌を見ている花山「若い子たちがねえ…」
スチームアイロンの試験資料のボードを設置している常子
「ええ、みんな目を輝かせて読んでいました」
花山「時代が変わってきている証拠じゃないか」
常子「私もそう思います、でも感覚の違いもすごく感じてしまって」
花山「仕方ないさ、今の若い世代はあの戦争を知らないのだから」
コンセントから延長コードを伸ばしていた水田
「新しく入ってきた社員たちは戦後に生まれた子ですからね
感覚に違いが生じるのは当然ですよ」(と部屋を出る)
常子「戦後生まれか…私たちも年をとる訳だ」
花山「ハハ」
常子「フフフ」
寿美子「失礼します、トーチクのスチームアイロンをお持ちしました」
アイロン台を手に戻ってきた水田
「寿美子さんは戦後生まれじゃないよね?」
寿美子「若くなくてすみません」(と台にアイロンを置き試験の準備をする)
水田「いやいや違う違う、君は最近のどんどん服や物を買う風潮を
どう思ってる?」
寿美子「私は…便利だとは感じています
働きながらですと服や小物を作る時間がとれないですから…」
水田「そうだよな…」
寿美子「それと子どものためにも…」
常子「子どものため?」
寿美子「ええ、働く女性が増えてきたといっても
まだまだ世間の目は厳しくて…うちの子
『貧乏だから母ちゃんも働いているんだろう』ってからかわれているんです
近所の人にも『旦那の収入が低いから共働きしてる』ってうわさされて…
私はお金のためだけではなく
この仕事にやりがいを感じて働いているんです」
花山「女性が働く理由を貧しいからとしか思えんのだね
そもそも働く理由が金だとしても揶揄されるいわれはないさ」
水田「そういう訳ですか…」
寿美子を気の毒そうに見つめる常子

お昼の弁当を食べている年配女性社員たち
康恵(佐藤仁美)「そんなの寿美子さんだけじゃないよ
私だって子どもほったらかしてパートタイマーで小銭稼いでるって
こそこそ言われてさ」
綾(阿部純子)「私も…働いている上に片親じゃない?
息子にろくにごはんも食べさせてないってうわさされた事もあったわ」
常子「いくら時代が移り変わっても
働く女性に対する偏見はいまだに強いままなんですね」

<常子は自分に何ができるのかを考え始めました>

本木がビルの前で本を販売している

<昼過ぎ、一人のお客さんが訪ねてきました>

本木がその若い女性を見つめている
女性が1階の試験室に入りスチ-ムアイロンの試験をしている様子を見る
と、水田に肩をたたかれビクッとする女性
水田「たまき」
女性・たまき(吉本実優)「何だお父さんか」
水田「何だって言い方はないだろう、大学は?」
たまき「授業は午前中だけだったの」
常子「あら」 美子「どうしたの?」
と2人がやってくる
たまき「常子おばさんに用があって、忘れ物
(と紙袋を手渡し)お母さんからです」
袋の中をのぞく常子「あ…わざわざありがとう
これ午後の打ち合わせに必要だったのよ」
たまき「お役に立てて光栄です」
試験室を眺めるたまき「今日もいろいろと試験してるんですね」
常子「ええ、スチームアイロンの試験がそろそろ佳境でね
すると「おいおいおいおい…」「よし間違いない」と興奮した声が聞こえる
「ちょっと失礼」と常子が向かう
「えらい事になったな」「常子さん!」「花山さんに報告しましょう!」
「よし!」「行きましょう行きましょう」
常子「とりあえず行きましょう」
その一団は資料を手に慌てて花山の元へと向かっていく
それを見て「どうしたんだろう…」と目を丸くしたたまきが後を追う

(つづく)

また時間が飛んだ
昭和48年だと常子は53歳くらい
今まで老けメイクで役年齢に見えていたがさすがに53は無理みたいw

寿美子が子どもがいるのに仕事を続けていて少し意外だった
自分もこの時代に子どもだったが母親は家にいるのが普通だった
昼間に買い物などは済ませて子どもが学校から帰る時間には
母親は当たり前に家にいた
だから家の鍵など持たなかった
母親が働いていて鍵を持っている子どもを
今では死語だろうが「鍵っ子」と呼ぶ言葉があったくらいだ

このドラマで専業主婦になったのは結局鞠子だけだろうか?
なぜ鞠子だけが仕事を辞める設定になったのだろう?
たまきは小さい頃から常子に似ているという描写があった
今回、常子たちの仕事にたまきが興味を持ったようだが
たまきが常子の後継者になるのだとしたらそれが理由なのだろうか
なぜなら鞠子が仕事を続けていたとすれば
夫の水田は経理の責任者で娘のたまきが後を継いで…となれば
鞠子の色が強すぎてまるで鞠子が中心の会社みたいになってしまう
それではヒロインの常子(高畑)の立つ瀬がないので
モデルの史実も鞠子が女性の自立を宣言した
らいてうに傾倒していた事も無視して強引に
専業主婦にしてしまったのかなあ…とちょっと思った

2016年9月21日水曜日

とと姉ちゃん(147)娘たちにそれぞれ言葉を贈る君子~小さな幸せの積み重ねで今の幸せがある…

君子の部屋 
常子(高畑充希)が「どうぞ」とお茶を置く 
花山(唐沢寿明)「ありがとう」 
布団の上に半身を起こした君子(木村多江)が肩掛けを掴む 
「あ~かか」と常子がそれを羽織らせる 
花山「お加減はいかがですか」 
君子「今日は少し気分がよくて…常子…」 
常子「はい」 
君子「少し2人にしてもらえるかしら」 
常子「…ええ…では」(と部屋を出る) 
花山の顔を見る君子 

タイトル、主題歌イン 

君子「わざわざお越し頂きありがとうございます(花山が礼で返す)
ず~っとね…花山さんにお礼を申し上げたいと思っていたの」
花山「礼ですか?」
君子「娘たちを立派に育てて頂き感謝しております」
花山「感謝なんてとんでもない…私は…
私は常子さんにとって本当にこれでよかったのかと
考えてしまう時があるんです」
君子「なぜ?」
花山「『雑誌を作るならば人生を賭けます』と
常子さんは全てをなげうってあなたの暮しに打ち込んでくれました
ですが常子さんにはもっと別の人生があったのではなかろうかと…
お母様としても思うところがあるのではないですか?
ただ仕事だけに邁進させてしまって申し訳ありません」(と頭を下げる)
君子「いいえ…常子は幸せなのだと思います
自分で選んだ道ですし…何より
そんなふうに思って見守って下さる方がいるんですもの」
花山「…」
君子「あの子は幼い頃からずっと無理をして生きてきたように思えます
人に頼るのが下手で何でも一人で抱えて…
花山さんに出会って叱られてようやく
常子は心から誰かに頼って生きる事ができたんだと思います
本当にありがとうございます」
花山が頭を垂れる
君子「よかった…お伝えできて…」
花山「…長居してお体に負担をかけてはいけませんね
この辺で失礼します」
君子「花山さん…これからも娘たちをよろしく…お願い致します」
うなずいて礼を返した花山が立ち上がり「失礼致します」と部屋を出る
一人になって何か心のつっかえがとれたようにうなずく君子

玄関を出た花山を3姉妹が見送る
常子「今日はわざわざすみませんでした」
美子(杉咲花)「ありがとうございました」
(常子と鞠子)「ありがとうございました」
鞠子(相楽樹)「花山さんにお会いでき母もとても喜んでいると思います」
花山「こちらこそだよ…すばらしいお母さんだね」(と背を向け歩いていく)

君子が仏壇に手を合わせている
常子「かか、よろしいですか?」
君子「ええどうぞ」
3姉妹が部屋に入り君子の前に並んで座る
常子「花山さんをお送りしてきました」
君子「ありがとう…どうしたの?3人そろって」
美子「ちょっとかかと話したくなっちゃって」
君子「な~に?」
鞠子「ととへご挨拶ですか?」
君子「ええ、ちょっとね…さあ何を話そうかしら?」
顔を見合わせる3姉妹「ん~フフフ…」
美子「こう改まると特には…」
常子「フフフ…そうね」
鞠子(常子に)「あっ、よっちゃんが電話で言い間違えた話は?」
常子「えっ?」
美子「えっ?」
鞠子「ほら会社で電話受けて『少々お待ち下され』って言ったらしいじゃない」
美子「ちょっとどうして言うのよ」
常子「ごめんね、何だか愛らしいなと思っちゃって…フフフ」
美子「もう恥ずかしいわ」
常子「ごめんごめんごめん」
美子「もう…」
常子「フフフフ」
笑い合う娘たちを笑顔で眺めている君子「あなたたちがいてくれたから
幸せだったわ」
鞠子「かか…どうされたんです?」
君子「……美子」
美子「はい」
君子「美子はいつも私たちを和ませて笑わせてくれている
あなたが笑うと私たちみんな幸せな気持ちでいっぱいになるのよ…
いつも伸びやかで美子には笑っていてほしいわ」
美子が「はい」とうなずく
君子「……鞠子」
鞠子「はい」
君子「鞠子はね…いつもさりげなく心配りしてくれる
だからみ~んな甘えてしまうの
おかげで私は安心していられる」
鞠子が微笑んでうなずく
君子「……常子」
常子「はい」
君子「あなたはいっつも一生懸命でみんなの幸せのために走り続けて…
どんな時でも私を支えてくれた
本当にありがとう」
潤んだ瞳で母を見つめる常子が小さくうなずく
立ち上がった君子が(美子に体を支えられ)
押し入れから小さめのつづらを取り出す(つづらは美子から常子へ)
君子「それ…私の宝箱なの」
美子「宝箱?」
常子「開けていいですか?」
君子「ええ」
常子が蓋を開けると中にはいろいろなものが収められている
「あ…うわぁ…これ」と常子が布で作った桜の花びらを手に取る
思い出される竹蔵とのエピソード
鞠子が「懐かしい…」と『KT歯磨』と書かれた小袋を手に取る
思い出される森田屋での練り歯磨きの破裂騒ぎ
君子「一つ一つが愛おしくてね…つい取って置きたくなるの
小さな幸せっていうのかしら…その積み重ねで今の幸せがあるのね」
常子「ととも昔おっしゃってましたね」
君子「…みんな…本当にありがとう…
あなたたちは私の自慢の娘よ」
3姉妹も目が潤んでいる
君子「ああ…明日の昼…久しぶりに常子の親子丼が食べたいわ」
「フフフ…」と顔を崩して笑った常子が
こぼれる涙をぬぐい「はい、ご用意しますね」とうなずく
君子が仏壇に向かい竹蔵の写真を納得したような笑顔で見つめる
母の背中を見つめている3姉妹

<君子が亡くなったのは10日後の事でした>

(つづく)

花山が言う常子の別の人生とはもちろん
結婚したり子どもをもうけたりという生き方の事だろう
ここは視聴者的にとても気になるところでそのモヤモヤを
作者が君子のセリフを借りて説明したといったところだろうか
もちろん結婚しないと幸せになれない訳ではない
現実には結婚した事で逆に不幸になる人もいるだろう
けれどもこれはドラマでそれも朝ドラだ
朝ドラのヒロインには現実を生きる我々の普通の人生よりももっとこう
「輝かしい何か」を自分は期待してしまう
星野を諦めとと姉ちゃんとして生きた常子の物語は美しいし
ドラマも面白かった
モデルの大橋鎭子さんの人生も素晴らしいと思う
けれどもやはり朝ドラのヒロインには好きな相手と結ばれてほしい…
と個人的には思ってしまう

常子は時々親子丼を作っているみたいだ
長谷川に教えてもらった親子丼だけが常子の得意料理なのかもしれないね

君子が竹蔵や滝子と同じくナレ死した
この臨終を描かないスタイルはいいと思う
朝から死に別れで泣き叫ぶシーンとか見たくないから


2016年9月20日火曜日

とと姉ちゃん(146)孫たちとふれあい娘たちの幼い頃を思い出す君子

昭和三十九年十月 
(ラジオ)「昨夜東京オリンピック注目の女子バレーボール決勝戦が行われ
東洋の魔女が3対0でソビエトを破り金メダルを獲得しました
日本女子としては実に28年ぶりの…」 
部屋の布団の上で君子(木村多江)があなたの暮しを読んでいる
(記事・砂時計は正確か) 
部屋の外から家族らの「行ってきます」と「行ってらっしゃい」が聞こえてくる 
玄関に向かい「行ってらっしゃい…」と穏やかな笑顔で呟く君子 

タイトル、主題歌イン 

真由美の髪をとかしているたまきがせきをする
振り向く真由美「たまきちゃん大丈夫?」
たまき「うん…ちょっと風邪っぽくて」
さらにせきをするたまき
君子が心配そうに部屋をのぞく「たまき」
たまき「おばあ様寝てなきゃ」
君子「いいのよ…それよりあなた風邪ひいたって…」
たまき「平気ですよ、大した事なさそうですし」
たまきの額に手のひらを当てる君子「どこが平気なの…熱があるじゃない
(部屋の外に向かい)鞠子!」(鞠子の返事「はあい!」)
たまき「大丈夫ですってこのくらい」
君子「ほら、私がやるから(真由美の世話は)休んでなさい」
「準備できた?」と鞠子(相楽樹)がやってくる「かかどうしました?」
君子「たまきが熱があるみたいなのよ」
鞠子「えっ」
君子「部屋で休ませた方がいいわ」
たまきの額に手を当てる鞠子「そうします…たまき…」
たまき「はい」(と立ち上がり鞠子と部屋を出ていく)
(ラジオ)♬「明日がある明日がある明日があるさ~」
たまきの代わりに櫛を持つ君子
真由美「私、髪やってもらうの好き」
君子「アハハ、そう?何だか小さい頃の美子を思い出すわ」
真由美「お母さんの?」
真由美の髪をすく君子「うん、美子もね…同じ髪形だったのよ
毎日欠かさずやってたの…さあできた」
真由美「ありがとう」
君子「こちらこそありがとう」
部屋に戻ってくる鞠子「え~っと…」
君子「氷枕用意しなくちゃね」
鞠子「ええ私が」
君子「鞠子は子どもたち送っていきなさい」
鞠子「けどかかだって…」
君子「心配ないわ…今日は調子がいいの」
鞠子「…すみません…お願いします…潤、真由美、行きましょう」
(2人)「はい」
君子「行ってらっしゃい」
(3人)「行ってきます」

布団に寝かされたたまきの額に君子が手ぬぐいをのせている
目を開き君子を見るたまき「ごめんなさい…おばあ様もご病気なのに」
君子「今日はおばあ様よりあなたの方が重病人よ…
そういえば昔…鞠子も体調を崩した事があったわね…
あれは確か戦時中の大変な時だったわ」
たまき「お母さんが?」
君子「あなたは常子に似ているところがあるけどやっぱり鞠子似ね」
たまき「お母さんに似てますか?」
君子「ええ…勉強を始めたら止まらないでしょう
決めた事をやり抜こうとするところも似ているし
ちょっと頑固なところもそっくり…フフフフ」
たまき「そうなんだ」
たまきの両頬に手を当てる君子「昔ね…母が私が具合が悪い時に
こうして優しく手を当ててくれたの
少~し心も体も楽になるような気がしない?」
うなずくたまき「うん…」
優しい笑顔でたまきの顔をのぞきこんでいる君子

夜、玄関に常子と美子と水田が帰宅する
美子(杉咲花)「あら、風邪ひいたの」
鞠子「ええ」
水田(伊藤淳史)「何で早く言わないの(と慌てて部屋に向かい)たまき!」
鞠子「今寝てますから!」(水田の動きが止まりスローになる)
常子(高畑充希)「それでもう大丈夫なの?」
鞠子「うん、もう熱は下がったから」
常子「そう、よかった」
美子「でも子どもたちの面倒も見ながらで大変だったでしょう」
鞠子「ううん、かかがいろいろ手伝ってくれるから」
美子「えっ?」
常子「かかが?」

台所で南(上杉柊平)たちと夕食の準備をしている君子
常子「かか」
美子「寝てなくていいんですか?」
君子「たまきのごはんを作りたくなっちゃったの…
これどうかしら?」(と飾り切りをしたニンジンを見せる)
南「きれいですね」
真由美「すご~い!」
君子「見た目も楽しい方がいいと思って」
南「きっと喜びますよ」
君子「まあ…じゃあもっと切るわね」
南「お願いします」
楽しそうにニンジンを切る君子を見つめる常子が医師の告知を思い出す
常子「…私も手伝います」

夕食を運ぶ鞠子「たまき、具合はどう?
(身を起こしたたまきに)食べられそう?」
たまき「うん」
鞠子がたまきに椀を手渡す
粥飯の上には飾り切りのニンジン
たまき「わぁ…きれい」
鞠子「おばあ様お手製よ」
最初にニンジンを食べるたまき「おいしい」(と微笑む)
元気そうになった娘を見て微笑む鞠子

君子が真由美に手拭いの畳み方を教えているようだ
(隣で潤はお絵描きをしている)
真由美「こう?」
君子「そうよ、角と角をしっかり合わせて…そうそう…あ~いいわね」
台所からそれを見て微笑む常子
戻ってきた鞠子「あっ、みんなありがとう…さあごはんにしましょう」
常子「そうね」
鞠子「ほら潤も!」
潤「もうちょっと」
水田「後にしなさい」
潤「は~い」(と立ち上がる)
美子「あれ?ゴミはちゃんと捨てるんじゃなかったっけ?」
「分かったよ…」と潤が描いていた絵を手に取る
君子「潤、これおばあ様に頂戴」
潤「いいよ」(と家の中に9人の笑顔が描かれた絵を手渡す)
君子「ありがとう」(と絵を眺め大切そうに折る)
常子の「頂きます」で夕食が始まるが君子は箸を取らず
食事をする家族を幸せそうな笑顔で眺めている

眠っているたまきの部屋の戸が開けられ明かりが差し込む

君子の手を取り階段を下りる常子「たまき大丈夫そうでしたね」
君子「ああ…そうね…よかったわ(と下に着き)ありがとう」
廊下を歩く君子が鼻歌を歌う(♬明日があるさ)
部屋に入り常子が君子を見つめる
君子「どうかした?」
常子「いえ…昔からかかが鼻歌を歌う時は悲しげな時が多かったので」
君子「あらそうだったかしら私…
あ…知らず知らずのうちに心配かけてたのね…ごめんなさい」
常子「いえいえ」(と君子の腕をさする)
君子「でもこれは違うの…うれしい時の鼻歌」
(2人)「フフフフフ」
君子「うれしくてね…懐かしくなったの(と仏壇の前に座り)
髪をといてあげて料理をしてみんなでにぎやかに笑い合って
…あと何回みんなでごはんを食べられるのかしら」
常子「…(辛い表情になりかける)もう…かか何をおっしゃってるんですか
そんなの数えだしたら切りがありませんよ」
君子「そうね(と常子に振り向き)今日はぐっすり眠れそうよ」
常子がうなずく
君子「おやすみ」
常子「おやすみなさい」
(2人)「フフフ」
立ち上がった常子が部屋を出て戸を閉める
と、部屋でまた君子が鼻歌を歌う
常子の歩みが止まる

美しい月

昭和三十九年十二月

<君子の病状は悪くなる一方でこのころには一日の大半を
床で過ごすようになっておりました>

編集部で働く綾(阿部純子)がどこか元気のない美子、水田、常子を見つめる

一家の大きな家
(ラジオ)♬「つたの絡まるチャペルで祈りを捧げた日~」
長卓でアイロンがけをしている鞠子
(子どもたちはそれぞれ勉強したり遊んだりしている)
と、玄関で常子と美子の「ただいま帰りました」という声がする
「え~早いわね…は~い!お帰りなさい!」
と玄関に向かい驚く鞠子「花山さん!」
花山(唐沢寿明)「やあ、しばらく」
子どもたちも「こんにちは!」と玄関に集まる
花山「こ~んにちは~」(と、なぜか幽霊のように挨拶する)
笑う常子「かかのお見舞いに来て下さったの」
鞠子「そうでしたか、お忙しいのにありがとうございます」
美子「さあどうぞどうぞ」
「ああ」と家に上がる花山

(つづく)

前回、なぜあんなにしょぼい砂時計の試験なんかやってるんだろうと思ったら
どうやら砂時計は君子の残りの命を暗示する演出という事らしい
今回の冒頭で君子がその記事を読んでいるのは
「砂時計は正確か」がそのまま君子の命が医師の告知通りに終わるのか…
に対応しているといったところだろうか?

ならば♬「明日があるさ~」は君子には逆に明日がない事の
♬「祈りを捧げた日~」は常子たちにはもう祈る事しかできない事の
暗示なのだろうか?

そこまでこじつけて考えるとラストの花山の幽霊のマネ(おそらくアドリブ)は
君子の死期が近い事を考えるとシャレになっていないと思えてくるw

2016年9月19日月曜日

とと姉ちゃん(145)常子が建てた大きな家で幸せに暮らす一族~しかし君子が病に倒れ…

<昭和33年、常子は美子を嫁に出し
とと姉ちゃんとして目標の一つをかなえました 
そして6年がたち昭和39年、東京オリンピックが目前に迫り
東海道新幹線の開通が世間をにぎわせたこの年
常子は次の目標をかなえました> 

洋式机の上に立てかけられた常子の3つの目標の短冊 
その横の携帯ラジオを手に取った常子(高畑充希)が
「ん~!」と大きく伸びをする 

台所に顔を出す常子「おはよう」 
エプロン姿の鞠子(相楽樹)と美子(杉咲花)「おはよう」 

<家族4人で戦争を乗り越えた思い出の土地を購入し
そこに新たに大きな家を建てたのです> 

門柱に「小橋」「水田」「南」の3つの表札が並んでいる 
庭でラジオ体操をする常子、水田(伊藤淳史)、南(上杉柊平)、
それに中学生になったたまきと小さな男の子と女の子 
(一同)「5、6、7、8、1、2、3、4…」 
せつと稲子が「おはようございます」とやってくる
(せつの手のザルにとうもろこし、稲子は回覧板を抱えている) 
(一同)「おはようございます」 
空を見上げる稲子「今日もいいお天気ねえ」 
常子(体操で腕を振りながら空を見て)「そうですね」 
せつ「今年もたくさん採れたから召し上がって」 
常子「あっ、すみません」(と受け取りに向かう) 
せつ「いいのいいの、ここ置いとくから」 
稲子「回覧板もよろしくね」 
常子「はい、分かりました」 
縁側にのぞむ部屋から笑顔の君子(木村多江)がそれを眺めている 
(せつと稲子)「失礼します」 
(一同)「ありがとうございます」 
稲子「元気よく~」 
腕を振る常子「元気よく!」 

タイトル、主題歌イン 

<小橋家はこの大きな家に9人で暮らす大家族になりました>

台所に続く居間の長卓で正座をして朝食をとる一同
たまき(13歳)「あら潤、ニンジン食べられるようになったの?」
水田潤(5歳)「うん」
水田「偉いぞ、たまき姉ちゃんはな
10歳までニンジンが食べられなかったからな」
たまき「今は好き嫌いないもん」
鞠子「そうよね」
潤「でもピーマン食べられないんだ」
南真由美(4歳)「私もピーマン嫌い」
美子「真由美はシイタケもトマトも嫌いでしょ?」
真由美「シイタケもトマトも嫌い」
(一同の笑い声)
水田「じゃあ潤がピーマン食べられるようになったら
おもちゃを買ってあげよう」
潤「本当!?」
水田「うん!」
南「じゃあ真由美が食べられるようになったら絵本を買ってあげようかな」
真由美「ほんとに?」
(鞠子と美子が同時に)「いけません」
弱り顔の水田と南(潤と真由美も顔をしかめる)
鞠子「駄目よ物で釣るなんて」
美子「そうよ、教育上よくありません」
(水田と南)「は~い…」(潤と真由美も)「は~い…」
水田「いかんな男親は…そんな発想しかできなくて…なあ?大昭君」
南「ええ…女性陣には頭が上がらないです」
水田「我々男は肩を寄せ合って生きていこう!」
南「ええ!」
水田「うん!」
君子「みんなにぎやかで毎日楽しいわ」
常子「そうですね」
君子「常子がこの家を建ててくれたおかげよ」
常子「フフフフフ」

<美子は結婚し出産をしたあとも編集者として仕事を続けていました>

あなたの暮し出版編集部
砂時計が落ちる時間をストップウォッチで計る美子「26秒もずれてるわ」
本木「26秒も?え~…ひどいもんですなあ」
島倉「美子さん、これいい企画ですよ」
笑顔の美子「後でまとめておきます」
水田「皆さん、74号も80万部を超えました!」
(一同)「お~」(と拍手が起こる)
美子のところにやってくる水田「夢が現実になるかもしれませんね…
100万部まであと少し…」
美子「私も今同じ事考えてました」
水田「えっ?ハハハ…」
綾(阿部純子)「美子さん、少しいいかしら」
美子「はい」
綾「確認お願いします」(と書類を提出する)
美子「拝見します」(と受け取り確認する)

<あなたの暮し出版女性を多く採用し
育児が一段落した綾も正社員として入社していました>

美子「分かりやすいですね、ご苦労さまです」(と書類を返す)

編集長室で花山(唐沢寿明)がカップの上にフィルターを立て
コーヒーを淹れている
常子「あの…」
「○×△…!」と手で制する花山
やっと淹れ終わりカップを手に席に着いた花山がコーヒーをすする
常子「あの…お話というのは?」
花山「ああ…提案なんだがね」
常子「はい」
花山「また何か書いてみないか?」
目を丸くする常子「私がですか?」
花山「驚く事じゃない、台所の連載も好評だったじゃないか」
常子「ですが今はもう社長の仕事だけで手いっぱいで…」
花山「君の文章にもファンがついている
常子さんの文章が読みたいといまだに手紙も届くじゃないか」
常子「ありがたい話です…」
花山「社員も増えて負担も少なくなってるだろう
そろそろ書いてもいいんじゃないか?」
逡巡する常子「…」
花山「ならば結構」
常子「いえ…あ…やりたいです…あの…あ…(と手帳を取り出し)
例えば…(とページをめくり)『子どもの好き嫌いをなくす料理』ですとか
『洗濯槽は汚れている?』ですとかそういった題材はいかがでしょう?」
大きく顔をしかめる花山「その辺りは常子さんじゃなくても書けるだろう
私が望むのは君にしか書けないものだよ」
常子「私にしか書けないもの…」
花山「まあ焦って今決めんでもいい…ゆっくり考えてくれれば」
常子「ええ」(と笑顔になる)
花山「あ~このところ会社に顔を出さんがお母さんは元気かい?」
常子「はい、おかげさまで今でも家の事をいろいろやってくれています
これまで苦労かけてきたのでこれからは恩返しをできればと思っています」
花山「うんそれがいい、存分にお母さんをいたわってあげなさい」
笑顔でうなずく常子「はい」

縁側で君子がのんびりとお茶を飲んでいる
目の前の庭では洗濯物を取り込む鞠子が
鼻歌で「明日があるさ」を歌い
七夕なのか鉢植えの木には色とりどりの短冊が吊るされている
(店が大繁盛しますように 大昭)
(ゆうぎかいでじょうずにおどれるよおに まゆみ)
(家族全員が幸せでありますように 鞠子)
(かけっこでいちば… じゅん)
(家族も社員もみんなが元気でいられますように 常子)
短冊を眺めていた君子が突然「あっ…」と腰のあたりを押さえる
苦痛の表情に変わる君子
異変に気付いた鞠子が「かか?大丈夫ですか?」と駆け寄る
君子「うん…平気よ…ちょっと痛かっただけ」
鞠子「少し横になられた方が…」
君子「ああ、いいのいいの…それよりあれ…どうなった?」
鞠子「あれって?」
君子「ほら、潤と真由美の衣装…お遊戯会来週でしょ?」
鞠子「そうなんですけど裁縫がちょっと…
だからよっちゃんに作ってもらおうかと思って」
君子「それなら…私にやらせてもらえないかしら」
鞠子「えっ?」
君子「美子も忙しいでしょう…それくらいできるわよ」
鞠子「…」
と、「一番!金メダル!」と潤が戻ってくる(たまきと真由美も続いて戻る)
たまき「潤、勝手に走んないでよ」
潤「銀と銅だよ」(と2人をそれぞれ指さす)
鞠子「お帰り」
(3人)「ただいま帰りました」
鞠子「お迎えありがとう」
たまき「ううん、帰り道だもん」
君子も立ち上がり庭に降りてくる「潤、真由美、おばあ様が
お遊戯会のお洋服作ってあげるわね」
「やった~」と真由美が飛び上がる
潤「シェー!」(とポーズをとる)
君子「ウフフフフ」
鞠子「カバン置いてきなさい」(と潤と真由美を家の中に促す)
たまき「おばあ様が作る事になったの?」
鞠子(君子に)「じゃあ…お願いします」
君子「ありがとう」
たまき「私も手伝っていいですか?」
君子「もちろんよ…フフフフ」

ミシンを操る君子の手元を真由美が真横からじっと見ている
卓で裁縫をするたまきの手元は潤がのぞき込んでいる
潤「怖くないの?針」
たまき「怖くないよ、潤くらいの年からやってたからね」
潤「すごいね」
それを君子が笑顔で聞いている
台所でジャガイモの皮をむく鞠子「潤、邪魔しちゃ駄目よ」
潤「はい」
子どもたちを見る穏やかな表情の君子

夜、お遊戯会の衣装を着た潤と真由美が振り付きで歌っている
♬「幸せなら手をたたこう 幸せなら手をたたこう 
(一同がそれに手拍子を合わせている)
幸せなら態度でしめそうよ ほらみんなで手をたたこう」
水田「アハハハ!2人ともうまいぞ」
常子「うん、上手」
潤と真由美「ありがとう」「まあね」
美子「それにしてもさすがかかとたまきよね
まり姉ちゃんだったら絶対こんなかわいい衣装作れないもの」
鞠子「悪かったわね」
南「お母さん、たまきちゃん、ありがとうございます」
君子「いえ、いいのよ」
水田「ありがとうございます(君子がうなずく)
いや~本当センスがいいよなぁ…(と衣装を眺め)
うん、ここのこれ…葉っぱのところが僕は好きですね」
鞠子「私はこのお花のところがお気に入り」
常子「うんそうよね、私も」
美子「うん私もここが好き」
南「うん俺も」
南を見る水田「裏切ったな…男同士協力していこうと誓い合っただろ?」
南「これはどっちでもいいじゃないですかぁ…」
「僕もここが好き!」と潤が花の部分を指さす
常子「ねえ」
水田「潤まで!」
(君子が腹のあたりを押さえる)
常子「かか?」
君子「平気平気…」
うずくまるような君子を心配する一同
水田「少し横になりましょう、大昭君布団を」
常子「たまきごめん、お水取ってきて…かか…」
「おばあちゃん!」

四日後

蝉の声が聞こえる病室(個室)のベットの上に横たわる君子

診察室で医師の説明を聞く3姉妹
常子「母の病状はそんなによくないんですか?」
医師「最善は尽くしますが…」
常子「…母はもう長くないという事ですか…」
医師「正確には申し上げられませんが
お母様もご家族の方にも悔いのないように
一日一日を大切に過ごして頂いた方がいいかと存じます」

<君子の体はがんに侵されていました>

病室の君子と3姉妹
(常子と鞠子は部屋の備品などを整え美子はリンゴの皮をむいている)
機嫌よく話す君子「新聞を買いに行った時
待合室にあなたの暮しを読んでる方がいらっしゃったの
アハハハ!ついついお声をかけて話し込んでしまったわ、フフフフフ」
美子「そう」
君子「…それで…何ておっしゃってたの?
吉永先生とお話ししたんでしょ?」
笑顔の常子「ええ、はい」
やはり笑顔の鞠子「それがね、具体的な事は特に」
美子「そう…ご挨拶くらいしか」(と微笑む)
君子「あなたたち…ちゃんと正直に教えてちょうだい」
常子「…お医者様は何の心配もないっておっしゃってました
これからきちんと治療すればきっと治るだろうって」
君子「……そう……だったら…退院したいわ…ここで一人はさみしくてね」
常子「…分かりました…お医者様に聞いておきますね」
君子「お願いね」
「はい」と口元に笑みを浮かべ答える常子

(つづく)

109話で常子と鞠子が東堂に土産で持っていった「たくさん届いた」という
とうもろこしはいったいどこから貰ったものなのか気になっていたのだが
もしかするとせつにお裾分けしてもらったものなのかもしれないね

南は男らしくてイケメンだったのにすっかり牙が抜けてしまったようだ
嫁の姉が建てた家に入ってしまったから仕方ないのだろうか…

砂時計の商品試験のなんとみみっちい事!
島倉の「これいい企画ですよ」は完全にヨイショだろw
あんなもの秒針つきの腕時計を持っていれば
店先で消費者でも確認できる事だろうに

祝!綾がいつのまにかやっと正式採用されたとの事!
ところが6つも年下で女学校では落ちこぼれだった
美子に評価される立場なのがなんだか哀しい
学校一の才媛だった綾なのに…
今回は秀才だった大卒の鞠子も美子に裁縫下手をからかわれていたが
このドラマの作り手は何か学歴に恨みでもあるのだろうか?

前回の次週予告に吉本実優が出ていたので
6年でたまきは随分と大きくなるんだと思っていたが勘違いだった
今週の木曜日からまた時間が飛ぶとのこと(吉本実優はそこから)

そしてたまきの「潤の年(5歳)くらいからやってた(針を)」が気になった
前回のたまきは6年前だから7歳
「お母さん、ポテトサラダお皿によそって」と甘え
シャボン玉で遊び大人たちの膝に抱かれていたたまきは
すでに針を持ち始めてから2年という事になってしまう…

君子が作ったお遊戯会の衣装はクオリティ高すぎw

2016年9月17日土曜日

とと姉ちゃん(144)「どうしたもんじゃろのぉ」があるから人生は楽しい?

水田(伊藤淳史)を指さす鉄郎(向井理)
「お前…ん?お前…どっかで見た気が…」 
水田「えっ…ああ…」 
常子(高畑充希)「水田さんです、叔父さん闇市で会ってるはずですよ」 
鉄郎「ああ…ああ…ああ!(と思い出した様子)
えっ…だからって何でその男がここでくつろいでるんだ?」 
美子(杉咲花)「まり姉ちゃんの旦那さんだから」 
鉄郎「(グワッ)…何…?」 
水田(満面の笑みで)「あっ、そうなんです」 
立ち上がった鉄郎が「あ…あ…お前あれか?」と水田の肩をつかみ
「すげえ金持ちなのか?」 
水田「いやいや特には…」 
鉄郎「おいおい…金持ちでないならこんなやつのどこがいいんだよ」
鞠子(相楽樹)「すてきなところがいっぱいあるんです」 
鉄郎「いやだけどよ…えっ…そうなると…さっきから視界に入ってくる
この子はひょっとして(と水田の膝の上のたまきを見て)鞠子の…?」 
鞠子「そうよ」(とたまきを促す) 
たまき「初めまして、水田たまきです」 
鉄郎「はぁ~そうかぁ…おじさんはね、お母さんの叔父さんだから…
えっ?…つまりその…うん…鉄郎おじさんと呼んでくれ」 
たまき「はい、鉄郎おじさん」 
鉄郎「あ~いい子いい子」(とたまきの頭を撫でる)
南(上杉柊平)「俺もご挨拶を」 
鉄郎「ん?あんたは?」 
南「今度、美子さんと結婚させて頂きます南大昭です」 
鉄郎「えっ…美子も結婚すんのか?」 
美子「フフフ…そうなの」 
鉄郎「そうか~美子もなあ…」 
君子(木村多江)「鉄郎さん、ちょうどいいところに来てくれたわ」 
鉄郎「何が?」 
常子「今ちょうどよっちゃんと南さんのお祝いをしてたところだったんです」
鉄郎「バカ野郎お前…だったら先に言えよ(と立ち上がり)
祝いの品がねえじゃねえか、買ってくる」(と背中を向けて玄関に向かう) 
(一同)「えっ?」 
常子「叔父さん?」 
鉄郎が出ていってしまい一同の視線が幸子(岩崎ひろみ)に集まる

タイトル、主題歌イン 

幸子「すみません…あの人思い立ったら人の話を聞かないもので…」
一同がうなずき
君子「ええ、知ってます…フフフフフ」
幸子「そうですよね」(と笑う)
鞠子「叔父さん農業やってるって本当なんですか?」
幸子「ええ…うちの実家を継いでくれたんです
半分売って半分自分たちで食べていくような小さな農家なんですけど」
美子「叔父さんとご一緒じゃご苦労されるでしょう」
幸子「そんなとんでもない…私感謝しっ放しなんです
さっき鉄郎さんハタハタ漁で失敗したって…」
常子「ええ」
幸子「失敗したのうちの兄なんです
鉄郎さんは手伝っていただけです
うちの兄の失敗でうちは多額の借金を抱えて
家も土地も取られそうになりました
その時に助けてくれたの鉄郎さんなんです
失敗したのは自分にも責任があるって言って借金取りと掛け合ってくれて
その上うちの田んぼまで手伝ってくれて
おかげで借金も返す事ができたんです」
鞠子「あの叔父さんが…」

ちゃぶ台に「よいしょ」と一升瓶を3つ置く鉄郎
常子「こんなに?」
鞠子「お酒ばかりじゃない」
鉄郎「まずは美子の結婚だろ?
それに鞠子の結婚と出産も祝ってやらねえといけねえからな」
美子「そう言ってもらえるのはうれしいけど…」
鞠子「私の結婚と出産ってだいぶ前よ」
鉄郎「ガタガタ言ってねえでみんなで祝おうじゃねえか
なあ?お前ら」(と南の肩をたたく)
南「俺お酒あんまり強くないんですが…」
水田「僕も…」
鉄郎「さあ始めようぜ、はい注いだ注いだほらほらほら」
一同のグラスに酒が注がれ常子「では改めて…」
鉄郎「おう待った待った!まずは俺の挨拶が先だ」
常子「挨拶?」
グラスを手に立ち上がる鉄郎「え~美子それに…」
南「南です」
鉄郎「南…南君…ご結婚おめでとう」
(2人)「ありがとうございます」
鉄郎「うん…あ…それからついでに鞠子も結婚出産おめでとう
(鞠子が鉄郎を睨んでいる)常子も姉さんもうれしいだろ」
常子「はい」
君子「ええ」
鉄郎「だよな…兄貴にもお前らの事見せてやりたかったなあ
はぁ~思い出しちまうなあ(一同が仏壇の竹蔵の写真を見る)
美子が生まれた頃『みんな女じゃ嫁に行ってさみしいだろう』って話したら
兄貴のやつ『そんな事ない』ってよ
きっとみんな姉さんに似てきれいなお嫁さんになるだろうって
誇らしげにしてた
なんとか…見せてやりたかったなぁ…
…おっとおっと…しめっぽくなる前に乾杯だ、おいグラス持て
では…乾杯」
(一同)「乾杯」
幸子「おめでとうございます」
美子「ありがとうございます」
鉄郎「ではしばしご歓談を」(と席に着く)
鞠子「しゃべりたいだけしゃべって…」
たまき「お母さん、ポテトサラダお皿によそって」
鞠子「はいはい」
美子「うん、おいしい!」
常子「アハハ!ほれたのも分かるわ」
美子「そうでしょう?」
飲んで食べる一同

台所で君子が椀に汁をよそっている
鉄郎がやってきて「姉さん梅干しもらうよ」
君子「ええ」
壺の蓋を開け梅干しを口に入れ鉄郎「あれからいろいろあったんだろ?」
君子「ええ…でも鉄郎さんもでしょ?」
鉄郎「えっ?」
君子「さっき幸子さんから少し」
鉄郎「何だよ…おしゃべりだな…まあよ…兄貴が死んでから俺なりに
姉さんや常子たちの事なんとかしようとは思ってたんだ
パ~ッと成功してさ、金作って楽にしてやろうと思ってたんだけど
結局何もできなかったなあ…
それどころかむしろいろいろ迷惑かけちまって…
すまなかったな…姉さん」
君子「そんなぁ…」
鉄郎「俺が持ってきた米食ってくれよ
昔俺がほら食っちまった事あっただろ?
あれの罪滅ぼしっつうか…」
君子「アハハハハ!そんな昔の事…アハハ
迷惑だなんて思った事もありませんよ
それに鉄郎さんがいてくれたおかげで心強かった事もありましたし」
鉄郎「そうかい?」
君子「ええ」
小さくうなずいて酒をあおった鉄郎が居間に向かい「おいおい水田に南
お前らちっとも飲んでねえじゃねえか
鉄郎おじさんの酒は飲めねえってのか?え?」
(2人)「いやいやいや」
水田「そんな事は…」(鉄郎が2人に飲ませようとする)
たまき「無理しないで」
台所に立つ常子「かか、叔父さん止めた方がいいですよね?
水田さんも南さんもあんまりお酒飲めないって…」
君子「フフフ、まあ好きにさせてあげましょう
みんなに会えてよっぽどうれしいのよ」
機嫌よく飲んでいる鉄郎を見て微笑む常子

たまきが庭でシャボン玉を吹いている「見て、きれい!」
そのシャボンを鉄郎が扇子で扇ぎ空に舞い上げる
(一同は居間で歓談しているが南はダウンして横になっている)
常子がやってきて縁側で鉄郎に「スタアの装ひ第二號」を見せる
鉄郎「お~2号まで出てたんだなあ」
常子「それがあるから今があるんです」
鉄郎「…よかったじゃねえか…夢がかなって」
常子「はい」
鉄郎「まあ…うまくいったらいったで大変か」
常子「そうですね…結局悩みは尽きません
思わぬ悩みが次から次へと湧いてきます」
鉄郎「みんなそうだよ…悩みのない人間なんかいねえよ」
常子「叔父さんも?」
鉄郎「当ったりめえよ、俺だって成功して大金つかんだ事もあるけどよ
悩みがなくなった事なんかねえよ
いつだって『ああ…これからどうしたもんじゃろのぉ』って」
常子「フフフ」
鉄郎「だけどよ、その『どうしたもんじゃろのぉ』があるから
人生は楽しいんじゃねえか?」
常子「そうかもしれませんね」
鉄郎「ああ…きっとそうだ」
「フフフ」と笑ったたまきが鉄郎に向かってシャボンを吹きかける
鉄郎「お~」
常子「おっ」
空に舞い上がるシャボンを穏やかな笑顔で見つめる常子

夕刻、一同が玄関に出てくる
君子「せっかくなんですから泊まっていけばいいのに…」
鉄郎「いやいや…農家ってのは休みはねえんだよ
今だって畑や田んぼがどうなってんのか気が気じゃねえし
離れていても雑誌は読めんだ
お前らの事はず~っと見守ってやるからな」
鉄郎を見つめる3姉妹と君子
鉄郎(幸子に)「じゃあ行くか」
幸子「はい」
鉄郎「達者でな…あばよ」(と背中を向けて歩き出す
幸子がお辞儀をしてそれに続く)
お辞儀をする一同
一同が顔を上げたまきが叫ぶ「鉄郎おじさ~ん!またね!」
振り返る鉄郎「おう、またな」(と手を振る)
たまきも「アハハ!」と手を振る
そして去っていく鉄郎を見送る常子

部屋で3つの目標の一つ(鞠子美子を嫁に出す)を手に微笑む常子

<6年が過ぎ昭和39年
東京オリンピックが目前に迫り秋には東海道新幹線が開通とあって
それらのニュースが連日テレビや紙面をにぎわせている中…
あなたの暮しは更に読者を増やし発行部数75万部を突破しておりました>

昭和三十九年四月

編集部で怒鳴る花山(唐沢寿明)「何度言ったら分かるんだ!やり直し!」
木立「いやあのでも…」
花山「でも~!?でもでもでも…でも~!」
木立「すみません、やり直します!」
美子と水田が顔を見合わせて笑っている
「常子さん、これお願いします」
「はぁい」と元気に働いている常子

(つづく)

ここのところ商品試験の熱くて理屈っぽい話が続いていたので
なんだか久しぶりにまったりとしたいい回だった

冒頭で鉄郎に水田をけなされたせいもあるのかもしれないが
鞠子が鉄郎に厳しいのは相変わらずで懐かしかった

タイトル前、一同が幸子に注目するシーンの常子の目w
あの目はどう表現していいのかわからないがとにかく
何でそんな目で幸子を見るんだw
まあ高畑の演技力は普通じゃないという事なのだろう

鉄郎の最後の「またな」は予告にも使われていて
このセリフの喋りが爺くさいので
鉄郎は老いぼれているんだと思っていたのだが
今回の鉄郎は全然若々しかった
君子(木村)もここのところ老け演技だったのだが
今回は鉄郎(向井)に合わせたのか若々しく見えた

老け演技といえば感心するのは常子(高畑)だ
常子は本当におばちゃんに見えるw
もともと年齢を超越しているような体型と声の持ち主だからなのだろうか?

鉄郎は思い出話をいっぱいして君子に謝罪もして
人生を総括するような言動だったのでおそらくこれが最後で
物語にはもう登場しないのだろう
思えば鉄郎はフラフラと生きてきたようだが
最後には自分の場所を見つけたんだね
向井さんお疲れ様でした!(まだ出番があったらごめんなさい)

来週は6年飛んで昭和39年のお話との事
常子は44歳くらいの計算になる
予告ではたまきが6年ですごく大きくなっていたw

それと宗吉夫婦も南に店を譲ったからもう登場しないのかもしれない
(高崎の富江のところに行くとか言ってたね)
前回冒頭のタイトル前に客が入ってきて宗吉が応対するシーン
タイトル前にあんな特に意味のないシーンが入る事はなかったので
「あれっ?」って思ったんだけど
あれには宗吉夫婦の最後のシーンなのだという意味があったのかもしれない

2016年9月16日金曜日

とと姉ちゃん(143)南が美子にプロポーズ~2人を祝う宴には珍客が…

南(上杉柊平)「行こう」 
美子(杉咲花)「うん…じゃあまた」 
宗吉(ピエール瀧)「おう」 
照代(平岩紙)「はいはい」 
2人が店を出ていき宗吉がため息をつく 
照代「継いでくれるかしらね」 
宗吉「俺らの思いは伝えたよ…あとはあいつ次第だ…
人生何があるか分かんねえもんだな」 
照代「ええ」 
戸が開き客がやってくる「大将!」 
2人「いらっしゃい」 
客「やってる?」 
笑顔の宗吉「へい」 

タイトル、主題歌イン 

道を歩く2人
美子「どこ行こうか?映画にする?」
南「ああ…」
美子「それかどこかでおしゃべりするだけでもいいけど」
南「なあ美子」
美子「うん?」
南「俺のためにおみおつけを作ってくれないかな?」(と立ち止まる)
美子「いいけど…私が作るより大昭さんが作った方がおいしいと思うわ」
南「そういう事じゃねえんだ」
美子「えっ?」
南「だから…おみおつけを作ってくれっていうのはその…
毎日俺のために作ってくれって事で…」
美子「それって…」
南「結婚しよう」
南の顔を見つめたままの美子が小さくうなずく 

夜、小橋家
ちゃぶ台の向こうに座る南と美子
南「お母さん…常子さん…美子さんを僕に下さい」
南と美子が頭を下げる
顔を見合わせた常子(高畑充希)と君子(木村多江)が
南たちと同じく座布団をはずし
常子「ふつつかな妹ですがよろしくお願い致します」
君子「よろしくお願い致します」
顔を上げる南と美子
南「よろしくお願い致します」(と2人でもう一度頭を下げる)
笑顔の常子「おめでとうよっちゃん」
君子「おめでとう美子、南さん」
美子「ありがとうかか…とと姉ちゃん」
南「ありがとうございます」
見つめ合い幸せそうに笑う美子と南

<次の休日、2人を祝うためのささやかな宴が開かれました>

小橋家
水田(伊藤淳史)が庭でタライの水にスイカを入れて冷やしている
ちゃぶ台の上には卵焼き、煮物、ロールキャベツ、コロッケ、エビフライなどの
料理が並ぶ
たまき「わぁ~」
鞠子(相楽樹)「たまき駄目よ、まだ食べちゃ」
たまき「分かってます、みんなで一緒に『頂きます』するんでしょ?」
部屋に戻ってきた水田「偉いねえたまきは」
たまき「アハハハハ!」
鞠子「でも本当によかったの?披露宴やらないで」
美子「うん、大昭さんと話し合って…
これからお店の家賃とか経営とかいろいろお金がかかるからためとこうって」
君子「あんなに自分が結婚する時は派手な式にしたいって言ってたのに」
美子「何だか今更派手なのも恥ずかしいわ」
常子「2人がそれでいいならいいけど」
水田「そうそう、2人がおつきあいするきっかけって何だったんですか?」
美子「きっかけは…ポテトサラダ」
水田「ポテトサラダ?」
美子「森田屋さんには何度も行ってて
で、大昭さんの事も知ってたんですけど話した事はなくて…
その日私お腹が空いてて取材終わりにごはんを頂いたんです
そのごはんの付け合わせにあったポテトサラダが今までにないくらいおいしくて
感動して宗吉さんに聞いたら大昭さんが作ったって」
南「付け合わせは作らせてもらってたんです」
美子「その時大昭さんと初めて話したんです
私がポテトサラダおいしかったって言ったら大昭さん
『研究のかいがあった』ってうれしそうにしてて
何かそういう料理の腕にもほれたけど…フフフ…」
君子「付け合わせとはいえ熱心に研究してる姿に惹かれたって訳ね」
美子「そうはっきり言われると恥ずかしいけど…」
水田「南さんは美子さんのどこに?」
南「俺はただ…美子が料理を食べている時の顔が幸せそうで…いいなあって…」
笑う一同
水田「く~っ…やけるねえ!」
常子「熱い!フフフ」
君子「ごちそうさま」
たまき「たまきもお料理が上手な人と結婚したい」
鞠子「うん」(とたまきの髪をなでる)
水田(低い声でたまきに)「まだ早いよ結婚なんて」
鞠子「当たり前よ!何むきになってるの?」
水田「あっ、ご…ごめん!つい…」
笑う常子「水田さん顔が怖かったです」

仏壇にも料理が供えられている
常子「南さん、よっちゃん、おめでとうございます…乾杯!」
(一同)「乾杯!」
拍手が起こり祝福される南と美子
常子「では頂きますか?…頂きます」
(一同)「頂きます」
食事を始める一同
水田「それで住まいはどうするんですか?」
美子「2人で団地を借りたんです」
水田「団地か」
鞠子「じゃあこの家はかかととと姉の2人っきりになるのね?」
常子と君子がうなずく
顔を見合わせる水田と鞠子
水田が箸を置き「あの…以前常子さん言ってましたよね?」
常子「えっ?」
水田「いやあの…いずれ大きな家を建てたいって」
常子「ああ、はい」(と笑ってうなずく)
水田「その日が来たらその家に
僕たち家族も一緒に住まわせてもらえませんか?」(鞠子もうなずく)
常子「えっ?」
水田「鞠子ずっと言ってたんです…お母さんが心配だって
常子さんもお仕事で家を空ける事もありますからその間一緒にいられればと」
君子「そんな気を遣わないで私に」
水田「あっ、いえいえあの…僕としても仕事で遅くなってたまきと鞠子が
家で2人でいるよりお母さんと一緒にいて頂いた方が安心ですし」
君子「ありがとう」
常子「ありがとうございます…そんなふうにおっしゃって頂いて」
水田「じゃあ…いずれは一緒に?」
常子「ええ…こちらこそ是非よろしくお願い致します」
水田「ありがとうございます」
鞠子「ありがとうとと姉、かか」
美子と南がうなずき合い
南「俺たちもいいですか?」
常子「えっ?」
南「美子とお義兄さんが言ってたような事話してたんです」
美子「うん」
常子「だけどいいの?2人きりでいたいと思うかもしれないわよ」
美子「いいのいいの、そうなったらその時に決めればいいんだし
(と南を見て)ねっ?」
南「うん」
君子「何だか夢みたいな話ね」
常子「そうですね…でもそうなったら楽しいでしょうね…フフフ」
美子(常子を見て)「まずは大きいおうちね」
皆が笑う
鞠子「そうそう、とと姉お願いしますよ」
(一同)「お願いします」
常子「承りました…働き続ける頑張る」
と、玄関で「ごめんくださ~い」と声がする
「あっ、私が」と常子が玄関に向かう
「はい」と玄関の戸を開けそこに立っている男の顔を見て叫ぶ常子「あぁ~!」
鉄郎(向井理)「おう、久しぶりだなあ」
常子「え~!」
玄関に集まった君子鞠子美子が鉄郎を見て口を開けて驚く
美子「うそ…」
まだ驚いている常子「ええっ…」
鉄郎「何だよ冷てえなあ…久しぶりに会った叔父さんだぞ
もっと温か~く出迎えられないもんかねえ」
常子「いやだって…ず…ずっと音信不通で
こんなふうに突然現れたらみんなこうなりますよ」
鞠子「もう…心配してたんですよ!」
美子「今までどこにいたの?」
鉄郎「まあまあまあまあ…んな事よりよお前らびっくりさせてやる
(と外に向かって)あ~こっちこっちこっち」
するとひとりの女性が玄関に入ってきて鉄郎の横に並ぶ
鉄郎「嫁の幸子だ」
絶句する常子
(一同)「えっ…」
鞠子「奥さん…?」
幸子(岩崎ひろみ)「初めまして、小橋幸子です」
君子「初めまして…(鉄郎に)いつ結婚なさったの?」
鉄郎「もう7年も前かなあ」
幸子「ええ」
君子「あ~そうだったの」
美子「叔父さんが結婚…」
鉄郎「何だよ、そんな驚く事でもねえだろ…いいから上げてくれよ
長旅で疲れちまったよ…ほら上がろうぜ」(と玄関を上がる)
幸子「はい、お邪魔致します」(と後に続く)

「よいしょ」と鉄郎がちゃぶ台の前に腰を下ろす
「すみません、お邪魔致します」と幸子がその隣に座る
鉄郎「これ土産な(と米袋を見せ)…ってもう飯食ってんのか
一同も席に着く(水田と南は後ろに控えて座る)
常子「そんな事より聞きたい事がいろいろと…」
鉄郎「ああ…この米か、うちの田んぼで作ったんだ…盗んだんじゃねえぞ」
常子「うちの田んぼ?」
美子「叔父さん農家なの?」
鉄郎「おう、新潟の魚沼ってとこでな」
君子「新潟なら…」
鞠子「私が結婚する時も新潟の住所に招待状を送ったわ」
鉄郎「お~鞠子も結婚したのかぁ~おめでとう」
鞠子「ありがとう…(とノリツッコミ風に)いやいいから
どうして返事くれなかったのよ」
鉄郎「何年前の話だよ?」
鞠子「8年前」
鉄郎「あ~…だったら無理だな…(幸子がうなずく)
その頃はハタハタ漁で失敗してそれどころじゃなかったからなあ…うん」
君子「相変わらずだったのね」
常子「でもだからって10年以上音信不通にしなくたって…」
美子「そうよ、清さんだって戦後落ち着いてから手紙くれるようになって
今では年賀状も…」
鉄郎「だったら俺も言わせてもらうけどな
こっちだってお前らの事気になってたんだぞ
あんなに張り切って雑誌を出すだの言ったのに全然本屋で見かけねえしな」
常子「…何をおっしゃってるんですか?」
美子「雑誌はずっと出してましたけど」
鉄郎「俺が待ってたのは『スタアの装ひ』だよ
この前新聞に常子が出るまでまるで気付かなかったんだからな」
常子「ああ…あの新聞見て来て下さったんですか」
うなずく鉄郎「まあみんな元気そうで何よりだ」(と君子と3姉妹を眺める)

<いやはやどうなるのでしょう…美子と南を祝う会は…>

混乱した表情で鉄郎を見つめる常子

(つづく)

美子の「何だか今更派手なのも…」の今更とはどういう意味だろう?
当時としては30過ぎての初婚は晩婚だっただろうから今更なのだろうか…
それとも付き合いが長いから…とかって事なのかな?

美子と鞠子に冗談っぽく大きい家をせがまれて
「働き続ける頑張る」と自虐っぽく返す常子がなんだか可哀想…
水田も「一緒に住まわせてもらえませんか?」じゃなくて
自分もお金を出しますから一緒に建てましょう…とか言えばいいのに
それとも水田は会社の経理を任されているから
常子ががっつり貯め込んでいる事を知っているのだろうかw
まあ実際は家を建てる事は常子が立てた3つの目標のうちのひとつだから
物語的には常子ひとりの力で建てなければいけないという事なのだろう

やっと鉄郎が登場した、随分と久しぶり
幸子を嫁だと紹介された時の君子の驚いた顔が何回観ても笑える
マンガだったら頭の上に「ガーン!」てつく感じにアゴが下に下がってるw

清の話題が出てビックリ
戦争で死んじゃった訳じゃなかったんだ!良かったぁ

2016年9月15日木曜日

とと姉ちゃん(142)アカバネの部品偽装を暴く花山~宗吉夫婦は南に森田屋を…

赤羽根(古田新太)「欲しいものを安く買いたいと願うのは
当たり前の事だろうが!ええっ!(と花山に詰め寄り)
あれこれ欲しいと思うのは消費者だ、どれを買うか決めるのも消費者だ、
我々はお望みどおり商品を提供してやってるんだ 
我々の責任は商品を作り上げた時点で終わってるんだよ!
安くて何が悪い
安いものにはそれなりに理由があってそれでも欲しがる人間がいる
後は買った人間の責任だろう!」
花山(唐沢寿明)「安かろうがメーカーが絶対に守らねばならないのは
消費者の安全だ!
あなた方はその視点が全く抜け落ちている!
消費者は日々のやりくりの中で積み立てたなけなしの金を使うんだよ
あなた方には責任を持って商品を作って頂きたい!」
赤羽根「弱小出版社ごときが偉そうに…
今は物を買えば幸せになれる世の中なんだ
国民は貧しさと戦争を耐え抜いた
金を得て豊かになれば皆幸せになれる世の中なんだ!
どこが悪い
私だけじゃない(と一同に向き直り)
今のこの世の中そう思っている人間ばかりだ!
そうやって全国民が幸せになろうと躍起になっている
(再び花山に向かい)それをなぜお前らが邪魔するんだ!」
常子(高畑充希)「お金を得て豊かになりたいと私も思います
でも…そのためにささやかな幸せを犠牲にしたくないだけなんです」
赤羽根「ささやかな幸せだ?」
常子「私たちは読者の方々からたくさんのお葉書を頂きます
その中の一つに家に冷蔵庫が来て大喜びする子どもの事が書いてありました
その子は家でいつでも冷たいジュースが飲めると
前の晩から眠れなかったそうで
だけどその冷蔵庫が不良品で壊れたとしたら
そのせいで怪我をしたとしたら
高いお金を出して冷蔵庫を手に入れたのに
そのせいでささやかな幸せが奪われてしまうんです」
(一同が沈黙する少しの間)
花山「一つ赤羽根さんに確認したい事がある」
赤羽根「は?確認だ?」
花山「アカバネの洗濯機を調べ直していた中で発覚したんですがね…」

台の上に液体の入ったシャーレが置かれている
花山「この液体は剥離剤です(とコンセントプラグを手に取り)
そしてこれはお宅の洗濯機のプラグです
注目して頂きたいのは…(とプラグを分解してネジを取り出し)
中に使われているネジです」(とネジを一同に見せる)
酒井(矢野聖人)が村山(野間口徹)を見る(村山は目線が下を向いている)
赤羽根「それがどうした?」
花山が液体の中にネジを落とす
ネジに注目する一同
と、ネジから金色の粉が剥がれていき…
「何だ?」
「メッキじゃないですか?」
「そうだ、鉄にメッキしてあるんだ」
花山「そう…どうやらアカバネでは
鉄ネジをメッキで真鍮に見せかけていたんです」
赤羽根「…」
国実(石丸幹二)が赤羽根の表情を注意深く観察する
花山「これは大問題ですよ…鉄はさびやすい
さびた鉄では電気抵抗が高くなりネジやプラグの温度が上昇して
最悪発火のおそれも出てくる
近くに衣類なんかがあれば燃え移る可能性も十分にあるだろう」
国実「それはスジ規格違反では?」
花山「ええ」
国実「これは偽装じゃないですか、どういう事ですか赤羽根さん!」
赤羽根「…私は何も知らん(と後ろを振り返り)村山酒井これはどういう事だ!」
酒井「技術部の事は私は何も…その辺は村山さんしか…」(と村山を見る)
赤羽根「答えろ村山!なぜこんなものが使われてるんだ!」
村山「仕方ないでしょう!
あの低予算で真鍮のネジなんか使える訳ないじゃないですか!」
赤羽根「貴様…」
村山「社長のおっしゃる予算どおりに収めようとしたら
こうするしかなかったんですよ!」
赤羽根「だからといって偽装しろとは言ってないぞ!」
村山「我々は精いっぱいあなたの言うとおりやってきただけです!」
国実「ネジの偽装は記事にさせて頂きますから!」
「勝手にしろ」と赤羽根が会場を立ち去る
酒井がそれに続き村山も常子たちに一礼をして後に続く
国実「…今日の事はありのまま記事にさせて頂きます」
常子「はい」
国実「私はね…何とか戦後を終わらせようと奮闘してる人たちに
あなたの暮しが水をさしてるように思えてたんだ
だがあなたたちの信念も少しは理解できる気がします」
常子「そうおっしゃって頂けると…」
少し笑ってうなずいた国実が会場を後にする
あなたの暮しスタッフがお互い安心したようにうなずき合う
花山「さあ、帰ろう」
(一同)「はい」
花山を見て笑顔になる常子

<こうして公開試験が終るとともに最新の
あなたの暮し第45号は発行されたのです>

小橋家のちゃぶ台で君子(木村多江)が最新号を読んでいる
と、向いの常子に目をやり「常子がそうやって新聞読んでるのも久しぶりね」
常子「フフ…お休みの日におうちにいるのも久しぶりですから」

<大東京新聞はありのままの結果を報じ
あなたの暮しは世間の信用を取り戻し売り上げも再び伸びていきました
一方、アカバネ電器製造は社長のアカバネが謝罪会見を開き
安全な電化製品を開発するため社内の体制を見直すと発表したのです>

玄関に向かう美子が居間をのぞき「それじゃ行ってきます」
(2人)「行ってらっしゃい」
君子「南さんによろしくね」
美子「はい」(と玄関を出る)
顔を見合わせる常子と君子「フフフフフ」

森田屋カウンター内で新聞の公開試験の記事を読む宗吉(ピエール瀧)
「照代、よかったなあ」
照代(平岩紙)「そうですね」
と、「ただいま帰りました」と買い物カゴを提げた南(上杉柊平)が戻る
宗吉「おう」
南「大将、頼まれたもの買ってきました」
照代「ご苦労さま」
南「いいえ」(と厨房に向かう)
宗吉「タイショウ」
南「はい」
宗吉「ちょっと…ここ座れや」
南がカウンターの席に着く
宗吉「…実はなタイショウ…そろそろこの店をお前に譲ろうと思ってな」
南「えっ?」(と照代の顔を見る)
照代が南にうなずく
宗吉に目を戻し南「いや、お言葉はうれしいですが俺まだ半人前だし…」
宗吉「謙遜すんなって…間違いなくコックとしての才能があるんだ…
いいか?自分の店を持って
自分の責任で料理をしなくちゃいけないようになると
もう一つ腕は上がるんだ
どうだ?やってみねえか?」
南「……料理の道から身を引くつもりですか?」
宗吉「ああ…そろそろ腰もつらくなってきたしな」
南「だからって俺じゃなくて身内の富江さんや長谷川さんに任せる事だって
できるんじゃないですか」
宗吉「何言ってんだ
お前が身内じゃなかったら一体誰が身内だっていうんだよ」
照代「それにね、長谷川さんが高崎でやっと店を任せられるようになったの
向こうの暮らしも安定してきて『こっちに来て一緒に暮らそう』って
前々から富江に誘われていたのよ」
宗吉「いい年して東京戻ってきて
なんとか悔いのない時間を過ごせたと思ってる
もう思い残す事もねえしな
そろそろあっちに戻ってもいいだろうってな
だから…お前にこの店を任せてえんだ」
照代「南君も店を持って一人前になれば美子ちゃんだってきっと喜ぶでしょう」
宗吉「最近な…しみじみ思うんだ
なんていう巡り合わせだったんだろうってなぁ…
常子や鞠子や美子のこの先の人生も気になるしなあ
あいつらがかわいくてしかたなくってよ
別に身内でもねえからこんな事を心配するのもおかしな話なんだが…
美子とお前が結婚して少しでもつながりを持てるという事は
俺たちにとっちゃ幸せな事なんだ」
照代がうなずく
南「…」
と、店の戸が開き「こんにちは」と美子が現れる「あれ?もう終わりですか?」
照代「待ってたのよ、そろそろ美子ちゃんが来るかと思って」
宗吉「大事なデートの時間に合わせてやったぞ」
美子「えっ?」
照代「フフフ…冗談よ…フフフ」
宗吉「客足が落ち着いたんで休憩してただけだ」
美子「もう!そうですよね
まだ閉めるのには少し早いですものね…フフフ」(と南を見つめる)
照代「だけどもう今日はそろそろお客さんも来ないんじゃないかしら」
宗吉「おう、そうだなあ…タイショウ、今日はもう帰っていいぞ」
照代「ご苦労さま」
顔を見合わせる南と美子
宗吉「どうした?タイショウ…早く帰れ」
南「……大将…女将さん…ありがとうございます」(と深く頭を下げる)
宗吉と照代が静かにうなずく
いまひとつ事情がのみ込めず3人の顔を見る美子

(つづく)

常子の冷蔵庫と子どもの例え話がいまいちな感じがした
いや、理屈はちゃんと通ってるんだけど無理やりでやっつけな感じがして…
劇中ではこの話に一同が感じ入って聞き入り沈黙する演出だったが
一同が実は内心「はあ?」となっているのを想像してしまったw
今週のタイトル「常子、小さな幸せを大事にする」は
まさかこの例え話の事ではないだろうな…

花山がネジの偽装を暴く件は痛快だった
ああいうハッキリと目で見てわかる暴露はわかりやすくていい

村山が遂にキレたw
前回、赤羽根に叱責され
発表する役を降ろされたりしてもう限界だったのだろう
ドラマの演出では赤羽根が間違っていて
村山は無理な予算で商品開発を押しつけられた
被害者のように描かれていたと思うが自分は違うと思う
上司からどんなに無理な要求をされようと
出来ない事は出来ないとハッキリと言わなければいけない
それが言えなくて上司に内緒で部品を偽装するのは
上司に対しても会社に対しても(大げさに言えば社会に対しても)裏切り行為だ
ネジの偽装の件で一番悪いのは村山だと思う
とにかく嘘をつくやつが一番悪い

国実は最後にもっと常子たちに感服するかと思っていたが
「少しは理解できる気がします」という表現にとどめたね
新聞記者は常に中立のスタンスをとるという事なのかな

アカバネは体制を見直すと発表したとの事だが
赤羽根に盾ついた村山はどうなってしまったのだろう?

南が初登場の頃から宗吉がいずれ店を譲りたいとか言っていたので
今回の話はインパクトがなかった
娘夫婦も飲食業なのに南に森田屋を任せるのは不自然なので
今回まで隠していたほうがよかったのでは?と思うのだが…
そうすれば視聴者も劇中の南ももっと驚けたのではないだろうか?
いや、南は驚いた芝居をしていたが視聴者的には
前から言われてたやん!とツッコミを入れたくなってしまった

2016年9月14日水曜日

とと姉ちゃん(141)各メーカーが発表する独自の試験方法に焦りを感じた赤羽根は…

常子(高畑充希)「え~私たちは3種類の洗剤を使用し汚染布だけではなく
家庭での洗濯物、つまりシャツや靴下、シーツなどを洗って
基本的には目視で汚れ落ちを判断しています」 
国実(石丸幹二)「目視ですか」  
メーカーの担当者たちがバカにしたように笑う(赤羽根も) 
常子「おおむね時間をかければ汚れは落ちましたので
落第点のものは1種もありませんでした…
しかし生地の傷み方に関しては注目すべき点がありました」 

タイトル、主題歌イン 

常子「…特に洗い時間が短い事を売りにしている澄浦のものが
一番生地の痛みが激しく…」
(澄浦)「そんなはずはない、我が社では同じ生地を500回以上洗って
痛みが出ないかテストしてるんだ」
花山(唐沢寿明)「それは綿で出来た汚染布を使っているからでしょう
実際の洋服で洗濯してみると澄浦のものは渦の力が強いため
ナイロンやビニロンなどの合成繊維の服は(と洋服を取り出し掲げ)
このように破けてしまいました」(胸のポケットが破れ垂れている)
(会場がどよめく)
酒井(矢野聖人)「おいおいひどいな」(赤羽根が嬉しそうに笑っている)
(澄浦)が着席して下を向く
花山「また汚れ落ちが不十分な生地もありました
これはどのメーカーもですがね」
常子「各メーカーが試験用の布でテストしたがゆえの問題がもう一つ…
(と白いワイシャツを取り出し掲げ)こういったシャツにあります」

常子「洗濯したシャツを脱水するのにローラーを使いますよね」
あなたの暮しスタッフがシャツを脱水ローラーに通し実演して見せている
その中の美子(杉咲花)「あ~またなった」
村山(野間口徹)「また?」
常子「このようにボタンつきのシャツを絞ろうとすると
かなりの確率で途中で引っ掛かってしまいます
そして無理やり絞ろうとすると…(物が割れる音)ボタンを見て下さい」
スタッフの掲げるシャツを確認する国実「全てのシャツで割れてますねえ」
常子「ボタンのついていない試験用の布では
このような結果は出なかったと思います
これではたとえ絞り率がスジ規定の40%以上であったとしても
誰も使いたいとは思わないのではないでしょうか」

国実「次に著しい騒音や振動がないかという点について
各社の試験内容をお聞かせ下さい
それではトーチクさんお願いします」
(トーチク)「我が社では騒音計を使って
規定以上の騒音が出ていないか調べるほか
機械に聴音機を当てて人間の耳に聞こえない異常音がないかどうか
徹底的に調べています」
(広海)「我々は水を入れずに空回しをしてその状態を観察する事で
振動の度合いを計算しています
洗濯機は水を入れる事で重みで安定します
空回しをする事でより過酷な状況下で
振動に問題が出ないかを調べているのです」
常子「それはすごいです、そこまでされているとは思いませんでした
私たちは騒音計を使って騒音や振動のテストをしているに過ぎません
次の試験からはそのような視点も取り入れたいと思います」
国実「ほう…」
赤羽根(古田新太)が酒井に耳打ちする「おい、うちもアピールしろ」
酒井「しかしうちは騒音計を使って試験しただけなので…」
赤羽根「くそぉ…」
(トーチク)「国実さん、ここをしっかり書いて下さいね
トーチクはトーチク独自のやり方で検証している事が証明されました」
(広海)「私ども広海もいかに努力をしているかお分かり頂けたと思います」
(トーチク)「この一点はほんの一例に過ぎません
我がトーチクは努力を惜しまず独自の試験をし
よりよい商品作りを心がけております
我が社では脱水までも自動で行えないかと会議をしておるところです」
会場がどよめく
(トーチク)「記者の方、これ書いて下さいね」
と、焦ったのか赤羽根が立ち上がりアピールを始める
「え~我がアカバネは脱水だけではなく乾燥もできる洗濯機を
開発しておる次第でございます
会場が激しくどよめく(村山と酒井も驚いている様子)
赤羽根「2年後、いや来年には商品化されるかもしれません、ご期待下さい
…と、記事に書いておいて下さいな」
国実「来年ですか、それは楽しみですね」
赤羽根「ハハハハ」
赤羽根に耳打ちする酒井「社長そんな話は…」
赤羽根「黙ってろ、ここで他社よりも強いアピールができるかが肝心なんだ」
村山「社長今のは…」
赤羽根「お前には落胆したぞ村山…代われ、ここからは私が発表する
かませ犬にされてたまるか!」(と担当者席に座ってしまう)

国実「次に耐久性について各社どのような試験を行っているのか
発表して下さい、ではニッカデンさん」
(ニッカデン)「我が社では無作為に選んだ100台の洗濯機を
それぞれ500回ずつ回してモーター等に損傷がないか調べています」
国実「500回というのは多い方なんですか?」
(トーチク)「弊社は700回回しております」
(広海)「うちもです」
赤羽根「甘いですなあ皆さん…我がアカバネは1,000回回し
更に様々な電圧で使用しても故障しないかを検証している次第であります」
国実「1,000回ですか…ニッカデンさんの2倍ですね」
赤羽根「そうなりますかね…ハハハハ」
(ニッカデン)「しかし回数だけで耐久性の全てが測れる訳ではありませんからね
我々は洗濯機本体の鉄板の強さを調べるために
ハンマーでたたくなどして過酷な耐久試験も行っています
いくらアカバネさんでもそこまではやっていないでしょう?」
赤羽根が(かなわんなあ…)という顔で笑ってごまかす
花山「皆さん様々な耐久テストを行われてるようですが
私たちの試験の結果ではどのメーカーも満足のいく結果は出ませんでした」
(担当者一同)「何!?」
赤羽根「冗談じゃない!我が社では2年分に値する回数を回して
耐久テストをやっているんだぞ、おかしいじゃないか!」
花山「アカバネさんはどのような場所で耐久テストをなさいましたか?」
赤羽根「場所?」(と村山を見る)
村山「工場の中にある試験用の部屋ですが」
花山「なるほど…確かに屋内で試験をしていても故障はしないでしょう
問題が起こるのは屋外で洗濯機を使用している時なんですよ」
村山「屋外?」
花山「洗濯機を持っているご家庭の多くは排水の問題から
ベランダや庭先など屋外で洗濯機を使用しています
そこで私たちは洗濯機を屋内だけでなく屋外にも置いて試験しました
結果…ある問題を発見した」

美子たちスタッフが会場に2台の洗濯機を運んでくる
美子「これは私たちが屋外でテストしたアカバネの洗濯機です」
花山「このタイマーの操作つまみはプラスチックで出来ています
質の悪い安物のプラスチックは日光の紫外線によって少しずつ溶け
劣化します…ほらここ…つまみが割れてタイマーの操作ができなくなれば
いくら耐久テストに合格していても元も子もありません」
常子「屋外で洗濯機を使い続けるとここまで劣化してしまいます
そして普段見ないような箇所が実はもっと危ないんです」
スタッフが「せ~の」と洗濯機を倒して底を見せる(一面が錆びている)
国実「それはサビですか?」(と近寄り間近で確認する)
常子「洗濯機自体が鉄で出来ていますから
雨などの湿気でサビが出やすくなります
底が空いているこのような構造ですと内部に湿気が入りモーターがさび付き
発火するおそれがあります」
国実「これはどれほどの期間試験したんです?」
常子「1年間です」
国実「1年?…来る日も来る日も試験したんですか?」
常子「そうです」
国実「なるほどね…」
常子「他にもホースでの給水の問題があります
中でもひどかったのはアカバネのもので…
他のメーカーは10センチ近く余裕がありましたが
アカバネのものは水位が3センチ超えると
回した時に水があふれ出してしまいました」
赤羽根「給水時にきちんと見ていればいいだけの話だ」
(康恵たちが赤羽根を睨む)
常子「アカバネさん、3万円ものお金を出して洗濯機を購入した
主婦の立場に立って発言なさってますか?」
赤羽根「何だと?」
常子「主婦の皆さんは常に働いています
子どもが転んだ事に気を取られたり台所でお湯を沸かしていたり
少し気を取られている間に水があふれ出してしまうような洗濯機は
それ自体問題なのではないでしょうか」
康恵(佐藤仁美)「その通りだよ!私たちは目まぐるしく働いてるんだ
ひとところにいる訳じゃないんだよ!」
綾(阿部純子)や緑(悠木千帆)たちも「そうですよ!」と声を上げる
机を叩く赤羽根「こんなもんは認められん!(と立ち上がり)
あんたらがやってるのは結局あら探しだ
うちが不利な立場になるよう無理やりやってるだけだ!」
国実「そうでしょうか…あなたの暮し出版の試験に虚偽はなく
むしろ使用者の目線に立ち行われた公正な結果だと
証明された気がするんですが?」
「そうだ!」「そのとおりだ!」とスタッフが声を上げる
常子「赤羽根さん、洗濯機は屋外でも使うものですし
いろんな衣類を洗うものです」
赤羽根「だから何だ?そんな事は分かっている」
常子「使うのは普通の主婦で子どもの面倒を見ながらの環境です
一家に何人もの子どもがいれば汚れた服を
毎日たくさん洗わなければなりません
洗濯は本当に重労働で主婦の方々は手や腰を痛めながら
それでも毎日洗濯し続けなければならないんです
アカバネ電器の洗濯機のキャッチフレーズは何ですか?」
赤羽根「え~…」(と村山を見る)
村山「洗濯機が主婦を解放する…」
常子「確かに洗濯機は主婦の方々を重労働から解放する夢の機械です
いえ…洗濯機だけではありません…そうよね?よっちゃん」(と美子を見る)
美子が「…?」という顔で常子を見る
少し焦る常子「ほら…例の」
やっと気付いた様子の美子が「あ…え~っと、え~っと」と資料を探す
その手際の悪さに花山が顔をしかめる
美子(たどたどしく)「戦後すぐには夢物語だった電化製品が今主婦の方々に
時間を与えているのは間違いありません
え~調べたのですが電気釜があれば薪で火をおこす時間や
かまどに付きっきりの時間が省略できます」
国実「それはどのように調査したんです?」
美子「緑さん」
緑「はい」(とふたつの風呂敷包みを開けアンケート用紙の山を見せる)
美子「主婦の方1,000人にご協力頂き聞き取り調査を行った結果です」
国実「1,000人?」
美子「はい」
常子「つまり電化製品は一日中家事に追われてる女性たちを
解放する事ができるんです
だからこそメーカーの方々には志を持って作って頂きたいと思います」
(各メーカー担当)「…」
村山と酒井も神妙な顔をしている
赤羽根「志を持って…?
志を持ってなきゃこの仕事は務まらんよ!
我々は1円でも安く商品を消費者のもとへ届ける事を社のモットーとして…」
花山「いくら安くとも不良品を売りつけられてはたまったもんじゃないよ
赤羽根さん」
赤羽根「何が悪い…安いものを作って何が悪い
欲しいものを安く買いたいと願うのは当たり前の事だろうが!ええっ!?」
恫喝するような赤羽根を寂しそうな目で見つめる常子

(つづく)

今回は公開試験という事で単調な説明や発表のセリフが延々と続くのだが
赤羽根が面白くしてくれた
乾燥機もない時代に乾燥もできる洗濯機とは…
しかも来年にも商品化するかもとかはったりにもほどがある

さらに村山に代わって自分で発表しようとするが
質疑に答えられずその度に村山に助けを求めるw

ラストでは村山や酒井も常子の志という言葉に何かを感じたようだが
赤羽根だけは暴れ続ける
次回はこの赤羽根にとどめを刺す展開になるのだろうか?

国実は以前からあなたの暮し出版を執拗に調査していて
何か私怨でもあるのだろうか?と思っていたのだが
そういう訳でもないようだ
公開試験を企画したのも記者としての社会正義みたいなものからなのだろう

常子はあんな場でも美子を「よっちゃん」と呼ぶんだw
美子が「とと姉ちゃん」と呼んだりする場面がなくて本当によかった

2016年9月13日火曜日

とと姉ちゃん(140)そして洗濯機の公開試験が始まる

社長室に掛けられた町工場の写真を見る赤羽根(古田新太)「村山」 
村山(野間口徹)「はい」 
赤羽根「あの工場を覚えてるか?」 
村山「ええ」 
赤羽根「12年前あの小さな町工場から始まってようやくここまで来たんだ
いつ潰れてもおかしくない町工場をなんとか必死にやりくりして
這い上がる機会を待ち続けた
お前らはあの頃の貧しかった暮らしに戻りたいか?」
酒井(矢野聖人)「いえ」 
村山「とんでもないです」 
赤羽根「俺もごめんだ…あの戦争をなんとか生き抜き帰ってきたんだ
焼け野原の中ろくな食い物がない中でも生きてきたんだ
戦争では負けたがな、日本は今かつてない黄金の国になろうとしている
世界一の経済大国も夢ではない
庶民の手の届く夢を与える事が経済成長を生み
日本を世界に負けない豊かな国にする
我々はそれに貢献しているんだ!
金持ちになる事が幸福なんだ
これは我が社の正しさを証明する戦いだ、絶対に負けられん」

タイトル、主題歌イン 

<メーカー各社との電気洗濯機公開試験は6月末に行われる事が決まり
あなたの暮し出版では洗濯機の商品試験が佳境を迎えていました
そして万全を期すため新たに数多くのテスターを招いていました
その中にはもちろんこの2人も>

洗濯機を試験する2人を見て笑顔になって駆け寄る常子(高畑充希)
「康恵さんも綾さんもお二人ともありがとうございます」
康恵(佐藤仁美)「聞いたよ、公開試験だって?」
常子「はい」
康恵「新聞記者だか何だか知らないけど疑り深いやつもいるもんだねえ」
美子(杉咲花)「ええ」
康恵「さっさと対決して敵の鼻を明かしてやろうじゃないか」
(常子と美子)「フフフフ」
綾(阿部純子)「康恵さんったら熱くなっちゃって」
康恵「何言ってんだい、あんただって『悔しい』って歯ぎしりしてたじゃないかい」
常子「そうなの?」(康恵がうなずく)
綾(とぼける感じ)「私は別に…」
康恵「してたんだよ」
綾(康恵に)「早く脱水して下さい」
常子が楽しそうに笑う

福助人形の飾られた森田屋
美子「休みの日にもかかわらずお集まり頂きありがとうございます」
客席に座る君子(の膝に上にたまき)、鞠子、康恵、綾、照代
康恵「一体全体こんなに集めて何しようってんだい?」
美子「はい、あの…皆さんにお願いしたい事があって(と用紙を配り)
主婦の方々の一日の時間の使い方を調べるのを手伝ってほしいんです
用紙を見る照代(平岩紙)「一日の時間の使い方…」
美子「はい、朝起きてまず何をするのか…
それが終ったら次に何をするのかなど」
康恵「まずは朝ごはんの支度だろ?」
綾「私は…家の前の掃除…そうしないと一日が気持ちよく始まらないの」
鞠子(相楽樹)「うちはたまき次第、私よりも先に起きちゃう事もあるから」
照代「私は商売やってるから皆さんとは少し違うかも」
美子「はい、人によってそれぞれだと思います
主婦の方が一つ一つの家事にどれだけの時間を費やすのか
あらゆる年代の主婦の方々に伺ってみたいんです
ここ数年便利な電気製品が増えて昔は一日中家事に追われていたのが
少しずつその時間が減ってきたと思うんです」
君子(木村多江)「なるほど、興味あるわ」
鞠子「そう言われてみると昔のかかは
一日中家事をしていた姿しか思い浮かばないわ」
たまき「おばあ様大変だったの?」
君子「そうね…今と違って時間がかかったわね」
(南が厨房から出て来てお茶を配る)
美子「それで皆さんのお知り合いの主婦の方々にもご協力頂きたいんです」
康恵「お安い御用さ、みんなに聞いてみるよ」
綾「私も喜んで協力するわ」
君子と鞠子もうなずく
照代「私もできるだけ聞いてみるわ」
美子「ありがとうございます!」
南(上杉柊平)「また忙しくなりそうだな」
美子「うん」
南「頑張れよ」
美子「ありがとう」
南「おう」
一同から2人を冷やかすような笑いが漏れる
照れて退散する南とまんざらでもない感じの美子

厨房で卵焼きを焼く宗吉(ピエール瀧)「美子のやつ張り切ってるみてえだな」
南「まあ」
宗吉「タイショウよ、気取ってねえでたまには泣きついてみたらどうだ?」
キャベツを切っている南が宗吉を見る
宗吉「『さみしいよ~早く結婚してくれ~』ってな」
笑う南「そんな柄じゃないですよ
それに落ち着いたらぼちぼちって話はしてますから」
宗吉「そうかい」
南「はい」

電器店を手伝う村山と酒井
酒井「では社長はその事を…」
村山「わざわざ知らせる必要はないだろう」
酒井「しかしあなたの暮しが試験の中で
気付いてしまう可能性はないのでしょうか」
村山「何年も使って初めて異変が出てくるくらいだ
商品試験ごときで分かるもんじゃない
社長にはうちの洗濯機に不備はないと思ってもらったままの方がいいだろう」
酒井「…」(とうなずく)
奥から出てくる赤羽根「おい酒井」
酒井「はい」
赤羽根「お買い上げだ」
(村山と酒井)「ありがとうございます」
赤羽根「来月出る商品のカタログもおつけしろ」
酒井「はい」(と奥に走り)「さあさあこちらへ」
赤羽根「公開試験もいよいよだな」
村山「ええ、今も洗濯機はこれだけ店頭で売れているんですから
客はうちを選んでいるという事です
我が社の勝利は間違いありません」
赤羽根「これまでの分、あなたの暮しには恥をかいてもらわねばな」
村山「おっしゃる通りです」

洗濯機の試験場(屋外)
扇田「それでは本日2回目、666回目の試験を行います
今回は1キロの衣類、15分の洗濯時間、洗剤はアリオスです」
(一同)「はい」
扇田「では洗剤入れて下さい」
試験を進めていく一同
と、花山が現れ「扇田君、何回目だ?」
扇田「666回目、1キロ15分で試験しています…何か?」
花山「いや…さっきと回っている音が違うと思わないか?」
扇田「そうですか?」
するとバチッという大きな音がしてスタッフから悲鳴が上がる
見ると洗濯機から伸びたコンセントから白い煙が上がっている
花山「みんな下がりなさい!扇田君どいた!」
コンセントを見つめる花山「扇田君工具箱!」
扇田「はい!」
コンセントを調べる花山に島倉「危ないですよ、感電します」
花山「大丈夫だ」
コンセントを抜き工具で解体して中を調べる花山「これは…」
花山の一連の作業を本木がカメラに収める
コンセントが異常をきたしたのはアカバネ製の洗濯機…

編集部で風呂敷包みを2つ置く照代
水田(伊藤淳史)「これって…」
照代「美子ちゃんに頼まれていた
主婦の一日の過ごし方について聞き取ったものよ、はい」(と包みを開ける)
美子「こんなにたくさんどうやって?」
照代「私…主婦の知り合いがあまりいないから
お店に来るお客さんに声をかけてみたのよ」
美子「そこまでして下さったんですか」
照代「お料理を待っている間いい時間潰しだって
皆さん喜んで協力して下さったわ」
常子が笑顔でうなずく
照代「主婦の方にも近くで働いている方にもいろんな方に聞けたわ
少しでもお役に立つといいのだけど」
美子「ありがとうございます、とってもいい資料になります」

<美子と照代が用意したこのアンケートは公開試験の秘策となるのです
そして数か月がたち、いよいよ公開試験の当日>

昭和三十三年六月

屋外試験場
国実(石丸幹二)「それではこれより電気洗濯機の公開試験を始めたいと
思います、まず私から質問致しますので澄浦、広海、トーチク、ニッカデン、
アカバネのメーカー5社、それとあなたの暮し出版はそれぞれ各項目に対して
どのような試験を行っているのか発表して下さい
疑問や意見などある方は随時発言して頂いて構いません
よりしいでしょうか?」
(メーカー5社担当一同)「はい」
常子「はい」(花山もうなずく)
関係者席から赤羽根が余裕の笑みで常子を睨んでいる
ゆっくりと目を逸らし前を向く常子
花山「気負う事はない、これまでやってきた事をありのまま伝えるだけだ」
常子「はい」
社員たちの他に康恵と綾も常子と花山を見守っている

国実「試験はスジ(SJI)規格の定める必須検査項目を基準に行います
まずは洗浄率について
スジ企画では35%以上の洗浄率が義務づけられています
この点、各社いかがでしょうか?
まずは澄浦さんからお聞かせ下さい」
(澄浦)「はい、え~我が社の洗濯機の売りは
何と言いましても他社製品より洗濯時間が短い事です
渦の強度を強める事でたった5分で
たった5分で規定の洗浄率35%を達成できるよう設計されています」
国実「なるほど…では広海さんはいかがですか?」
(広海)「はい、え~我々は汚染布の汚しの材料として…」
国実「ちょっと待って下さい…汚染布というのは?」
(広海)「ああ…洗濯機の実験で使用する故意に汚す布です」
国実「布?実際のシャツなどで実験する訳ではないんですか?」
(広海)「ええ…こういったものですね(と汚染布を掲げ左右を見回し)
他のメーカーさんもそうですよね?」
同意する各メーカー担当
国実「なるほど…この布は何で汚したものなんですか?」
(広海)「炭やベビーオイル、牛脂などです
我が社はこれだけでなく(と別の汚染布を取り出し掲げ)
しょうゆ、泥、コーヒー、口紅、ケチャップなど
生活上想定しうる全ての汚れを試し
規定数値の倍である洗浄率70%を確保してます」
メモをとる常子
(トーチク)「我が社は泥の洗浄については特に力を入れておりまして
汚染布だけではなく(と作業着を取り出し)地方から実際に使った
農作業着を送ってもらって草の染みや泥が滞りなく落ちるかも試験して
スジ規定を上回っております」
(ニッカデン)「私たちは市販されている全て(と洗剤を取り出し)
10種類の洗剤を試して試験しています
更には井戸水と水道水、湯冷ましなどの水を使用して試験し
洗浄率35%を守っています」
興味深く話を聞く美子たち(水田がメモをとる)
国実「アカバネさんはいかがですか?」
(アカバネ)村山「ああ…うちは大容量でも洗浄率45%を保持しております」
国実「なるほど…あなたの暮し出版さんは洗浄率に対して
どのような事を行っていますか?」
常子「はい(と立ち上がり)え~私たちは…」

<こうして公開試験は始まっていったのです>

(つづく)

あなたの暮しが侮辱されて康恵の前では「悔しい」と漏らしたらしい綾だが
常子の前ではそれをとぼけたのは
女学校時代からの友人である常子に対して照れ臭かったのだろう
常子に張り合っているという訳ではないだろうが
お嬢様だった頃のクールな自分を知られているからかもしれない
常子はすごく嬉しそうだったね

村山が赤羽根に隠している洗濯機の不備は
おそらく花山たちが発見したコンセントの事なのだろう
もうアカバネが惨敗するフラグが立ってしまった…

なのに公開試験で常子をニッタリと見ている赤羽根が哀れだ
村山の答弁も他社の担当に比べたら弱いし…

冒頭で「絶対負けられん」と意気込んでいた赤羽根は
負けたらどうなるのだろう?
冒頭の長セリフから自分がどこかで間違ってしまった…
ぐらいの反省はありそうだが
急にいい人になってしまうのだけはやめてほしい

2016年9月12日月曜日

とと姉ちゃん(139)国実が提案する公開試験を拒絶する花山と常子だが…

扇田「また自由回答では『使用面だけでなくデザインも評価すべき』
『まったくの素人テストで話にならない』などという声も…」 
記事の内容にショックを受けているような常子(高畑充希) 
扇田「半数近くが『やり方に疑問がある』か…」 

タイトル、主題歌イン 

大東京新聞 
「これほとんどがあなたの暮しの件をはっきりさせてほしいっていう
投書じゃないか」
国実(石丸幹二)「ええ…予想どおりですよ、世間は確実に騒ぎ始めた」
「これからどんな手を打つ?」
国実「あの女社長と編集長を逃げ隠れできない場所まで
引きずり出したいんですがね」
「ああ…確か今、洗濯機の商品試験やってるっていう話だよな
メーカーもヒヤヒヤしてる事だろうよ、ハハハハ」
国実「メーカー?…そうか…」(と何かを思いついた様子)

アカバネ電器
電話を受ける村山(野間口徹)「大東京新聞の国実さん?
…ええ…それはどういった?…ほう…なるほど」(口元に笑み)

「ただいま帰りました」と常子が編集部に戻る
と、花山の怒鳴り声が聞こえてくる「いい加減しつこいぞ君たちは!」
花山(唐沢寿明)の後を追うようについてくる国実
(と村山を含む数名の男たち)「だったら受けて下さいよ花山さん」
常子「今日はどうされたんですか?」
国実「ああ…小橋社長、お待ちしておりました
今日は洗濯機の公開試験を提案しに参りました」
常子「公開試験?」
国実「あなたの暮しの商品試験のやり方を開示してほしいんです
皆さんの前で各メーカーの洗濯機を
どういうやり方で試験していたのかを説明して頂きたい」
(男たち)「そうだ!」
常子「あの…こちらの方々は?」
国実「洗濯機を製造販売している各メーカーの担当者の方々です
私がお声がけして集まって頂きました
実は新聞社にもあなたの暮しの商品試験に信憑性があるのか
調べてもらいたいという声が多く届いてましてね」
村山「我々も疑っておりましてね」
男1「ああ」
男2「本当に正しい試験をやってるというなら目の前で見せて頂きたい!」
男3「そうだ」
男4「やましいところがないのなら見せられるはずでしょう!」
常子「やましいところなどございません!
私どもは正しい結果を載せております」
村山「疑わしいですな、現にテスターに結果を改ざんさせたという記事が
週刊誌に載ったではありませんか」
美子(杉咲花)「事実無根です!」
水田(伊藤淳史)「そうだ!お前らがでたらめを言わせたんだろ!」
(編集部員たち)「そうだ!」
村山「失敬な言いがかりはよせ!」
編集部に怒号が飛び交う
国実「まあまあ、まあまあ!ここでいがみ合ってても仕方ないでしょう
こうした疑いを晴らすためには公開試験がうってつけだと思うんですよ
これまであなたの暮しで行った商品試験は社内の密室で行われたものです
それを正しいと主張するなら衆人環視の中
自分たちのやった事を見せるしかないでしょう!」
(男たち)「そうだ!」
花山「一方的に疑いをかけているのは君たちだろう!
私たちは疑われるような事は何もしていない
記事の中で試験方法も記載している
これからも自分たちのやり方を貫くだけだ」
村山「逃げるんですか?」
花山「そんな挑発には乗らんよ」
国実「ではいつまでも疑いの目を持たれたままでいいんですか?
私も追及の手を緩めるつもりはありませんよ」
花山「ご勝手に…我々は自分たちの力だけで信用を取り戻してみせる」
(と知恵の輪を手に解き始めてしまう)
国実「小橋社長も同じ考えですか?」
常子「もちろんです…私たちの商品試験に間違いはありませんから」
村山「どうだかね…口では何とでも言える」
(男たち)「そうだ!」
扇田「もう帰ってくれよ!仕事の邪魔なんだよ!」
(編集部員たち)「帰れ!」
国実「分かりました!考えが変わりましたらいつでも連絡を下さい
さあ皆さん、今日のところは一旦撤退しましょう」

<次の休日、常子と美子は久しぶりに鞠子を訪ねました>

縁側から庭に飛び出すたまき「おばちゃん早く早く!これこれ!」
常子たちも続いて庭に降りる
美子「これかぁ」(と皆で一台の洗濯機を囲む)
鞠子(相楽樹)「そんなに感心しなくても商品試験で見慣れてるでしょ?」
常子「まあそうなんだけどこうやってやっぱ
おうちにあるのを見ると興奮するのよ」
水田「同感です、僕もこれが届いた日はそんな感じでしたから
たまきなんか朝からず~っと待ってたよな?たまき」
たまき「うん!だってお洗濯み~んなやってくれるなんてすごい!
これが来てからお母さんお洗濯が大好きになったんだよ、ねえ~?」
鞠子「そうね」(と笑う)
美子「あのまり姉ちゃんが?」(と常子と顔を見合わせ笑う)
と、「ごめんください鞠子さん」と表で声がする
鞠子「どうぞ、庭にいます」
美子「お客様?」
鞠子「近所のお友達よ」
やってきた3人の女性たちが「あ~本当に来た~!」と洗濯機に群がり
常子と美子を見て驚く
鞠子「いつも言ってるじゃないですか、姉と妹はたまに遊びに来るって」
「私たちあなたの暮しを毎号欠かさずに読んでるんです」
美子「それはありがとうございます」
常子「励みになります」
「でも最近批判するような週刊誌だとか新聞記事が出てるでしょう?」
常子「ええ…」
「あれ見ると私、腹が立って自分の事のように悔しくって」
「ねえ本当…」
「うちの旦那なんて新聞の方が信頼できるとか言って
もうそっちの方ばっかり信じちゃって…」

編集部で一人執筆する花山がふと立ち上がり資料棚の中をのぞく

水田家の玄関から出てくる常子たち
鞠子「それじゃ、かかによろしくね」
美子「うん」
たまき「バイバイ」
美子「バイバイ(と、隣でぼーっとしている常子に)とと姉ちゃん」
常子「うん?バイバイ」(とたまきに手を振る)
常子(美子に)「私ちょっと会社行ってくる」
鞠子「えっ、今から?」
常子「うん、よっちゃん先に帰ってて」(と一人で歩き出す)

編集部で手紙を読んでいる花山
「やっぱり…」と常子が現れる(後ろに美子と水田)
「お休みですが何かしらお仕事をなさっているのではないかと思っていました」
花山「君たちは?」
常子「花山さんにお話があって」
花山「そうか…私もだよ…ふと読者からの手紙が気になってね
(花山の前に資料棚から出した手紙の山)3割くらいが批判の手紙だ」
水田「ええ…新聞記事が出てから少しずつ増えていて…」
花山「7割は応援してくれている人の声だった」
手紙を手に取り読む常子「頑張れ読者はここにいる」
花山「今のあなたの暮しには安定した発行部数と根強い愛読者がいる
新聞でたたかれようが部数を落とさない自信もある
だからこそ批判の声など無視していいと思ったんだ
まともに雑誌を読んでいない連中を相手にしなくても
自分たちを信じてくれる読者がいるからな
しかし…」
常子「『悔しい』って読者の声が手紙から聞こえてきたんですね」
花山が常子を見る
美子「私たちも同じです」
水田「売られたけんかを買うようで子どもじみていますけど
我々を信じてくれている読者のためにも…」
常子「戦う姿を見せましょう」
花山「戦う姿か…(と、常子を見上げ)そうだな」
(3人)「はい」

電話で話す国実「はい…いえいえ…あなた方は必ず受けて立ってくれると
思ってましたよ…では詳しい話は後日」

社長室に入る赤羽根(古田新太)
「そうか、あなたの暮し側が公開試験を受け入れたか」
村山「はい」
酒井(矢野聖人)「またとない機会ですね」
赤羽根「洗濯機は我が社の主力商品だ
社運をかけて金も時間もかけて作っている
他のメーカーよりも優れているとなれば売り上げも伸びるだろう
それにあなたの暮しの試験方法におかしな点を見つけてそこを指摘すれば
向こうの信頼もガタ落ちだ」

試験場で稼働するアカバネ製の洗濯機
試験を監督している常子

(つづく)

「ご勝手に…」と知恵の輪をやり始めた花山に笑った
社内の人間だけでなく外の人間に対してもそんな痛い行動をとるなんて…

国実の公開試験はナイスアイデア
常子たちにやましいところはないのだから受けて立つべき
一旦は断ったけど読者の「悔しい」という声を聞いて常子たちは考え直したね

2016年9月10日土曜日

とと姉ちゃん(138)社員を集めそれぞれの商品試験に対する思いを確認する常子

「一体どうしたんです?」と席に着く常子(高畑充希) 
腕組みをしている花山(唐沢寿明)が松永を見て
「私に話した事を常子さんたちの前で言いなさい」 
松永「はい…テスターの情報を週刊誌に漏らしたのは俺です」 
常子「松永君が?」 
美子(杉咲花)「どうして?」 
松永「金が必要だったんです…毎月毎月月賦で欲しいものを買っていたら
首が回らなくなってしまって…」 
水田(伊藤淳史)「…だから言ったじゃないか」 
常子「それで…誰に頼まれてテスターの情報を?」 
松永「それが…どこの誰かは分からないんです…
ただ協力すれば5万円やると言われて…
そいつらは俺にテスターの情報を持ち出すように言ってきました
それを基にテスターに接触し恐らく金を使って
あなたの暮しの商品試験は嘘だと証言させたんだと思います」
水田「その男まさかアカバネの…?」
美子「本当に何者か分からないんですか?」
松永「申し訳ありません……あの…常子さん」
常子「はい」
松永「僕…会社辞めます」
常子「松永君…」
松永「もう耐えられないんです…
僕は編集者になりたくてこの会社に入りました
それなのに仕事といったら電球がどれだけつくか見張ったり
ひたすら鉛筆削ったり繰り返し繰り返し飯を炊いたり…
もううんざりなんですよ
今日限りで辞めさせて下さい」(と頭を下げる)
花山「それがいい、クビにしないでやるのがせめてもだ」
常子「花山さん」
花山「止めても仕方あるまい」(と席を立つ)
常子「松永君」
立ち上がる松永「本当にお世話になりました」(と頭を下げる)
常子「…」

夜、縁側から外を見ている水田
鞠子(相楽樹)が隣に座り「もうお休みになったらいかがです?」
水田「うん…」
鞠子「松永さんの事気にしてらっしゃるの?」
水田「ずっと前から様子がおかしいと気付いてたんだ…
なのに止める事ができなかったよ」
鞠子「正平さんのせいじゃないわ」
水田「松永君が辞めるって言った時の常子さんの顔が忘れられなくて…
すごく悲しそうな顔してた
そりゃそうだよな…一緒に働いてきた社員に裏切られてあんな記事が出て…
社員を大切にしてきた常子さんだからね
自分を責めたりしてなきゃいいんだけど…」
常子を心配しているような鞠子

布団の中で常子が目を開けている
隣の布団から美子「眠れないの?」
常子が美子を見る
美子「そうよね…」
常子「独り善がりだったのかな…(と体を起こし)今日ね国実さんに
あなたの暮しは社会的に大きな影響力がある会社だって言われたわ
(美子も体を起こす)
私たちの雑誌の影響で物が売れたり売れなくなったりする
よく考えたらそれって恐ろしい事よね」
美子「恐ろしい事?」
常子「大きな責任を伴うって事よ
だからそれだけ一つ一つの企画に命を懸けて臨まなければならない
だけど…それを強いられている社員は苦しかったのかなあって…
私たちは終戦の日から一緒になって雑誌を作ってきたじゃない?
毎日の暮らしを取り戻すために試行錯誤して
それでやっとたどりついたのが商品試験だった」
美子「うん」
常子「前にも言ったように商品試験は今の時代に私たちがやるべき事だと
私は自信を持ってるわ
それを社員のみんなも理解してくれるものだとばかり…
だけど私は自分の意見を押しつけているだけだったのかもしれない」

会議用の長机に集まっている一同
常子「みんな、お仕事を中断させてしまってごめんなさい
でもどうしても聞いておきたい事があるんです
それはみんなにとってのあなたの暮しを作る事の意味です…
今や物があふれて豊かな時代になりつつあります
景気もいいし職業の選択肢だって多くある
そんな中でみんなには編集者として我が社を選んでもらったのに
商品試験のために他の雑誌ではやらなくていいような仕事まで
やらせてしまっています…
もしこの中に連日商品を試験するためだけに編集者になったのではない
という方がいらっしゃるなら正直に言って頂けませんか
(一同がそれぞれ顔を見合わせる)
心配しないで下さい、辞めてもらうとかではなくて
担当業務を見直そうかと考えています」
緑(悠木千帆)「………あの…」
常子「はい緑さん」
緑「私はその…」
常子「いいんですよ、率直なご意見をお願いします
意味のない事と思いながらお仕事をするのはつらい事でしょうから」
緑「いいえそうじゃありません…何て言えばいいんでしょう…
私はとてもやりがいを感じています」
扇田「俺もです、何たって俺たちの仕事一つ一つで
物を買う人の気持ちを左右するんですから」
寿美子(趣里)「よそじゃなかなかできない仕事だと思います」
木立「責任ある仕事に身が引き締まります」
島倉「この仕事に誇りを感じています」
本木「私も誇りを持ってまっせ」
笑い声が起こり「俺もです」「私もです」と次々と声が上がる
ほっとしたのか少し涙ぐんでいるように笑う常子「みんなありがとう」
緑「お話ってそれですか?」
常子「ええ」
緑「ああ…ひょっとして商品試験を中止するのかと思ってもう緊張しちゃったわぁ」
(一同が笑う)
常子「それはないです」
扇田「そんな訳ありませんよ、まだまだ洗濯機の商品試験もね
始まったばっかりですから」
寿美子「これからが本番ですね」
扇田「そう、これからが本番です!」
常子が笑顔でうなずく
美子が安心したように常子を見ている
花山も微笑んでうなずく

美子「皆さん準備はいいですか?」
(一同)「はい」
「では始め」と美子がストップウォッチを押す
洗濯機を試験する一同

<洗濯機の商品試験は汚れを落とす力と
洗ったあとの布地の傷み具合の確認を中心に行われ
試行錯誤を重ねました
更にそれぞれの機種の絞り器や操作つまみの使い勝手なども
さまざまな観点からチェックしていきます
ベランダや庭先での使用を想定して屋外に洗濯機を設置して
耐久性のテストも念入りに行われました>

昭和三十三年一月

<試験を始めて半年余りがたった頃…>

新聞を読んでいる宗吉(ピエール瀧)と照代(平岩紙)
宗吉「何だこの記事…」
照代「常子ちゃんが読んだら…」
宗吉「こりゃ相当落ち込むなあ」
照代「そうですねぇ…」
と、「こんにちは」と常子と扇田が店に入ってくる
照代「あら常子ちゃん」
慌てて新聞を畳んで背中に隠す宗吉
常子「えっ…何か隠しました?」
笑顔の宗吉「い~や…それより何だよ?」
常子「あっ、あの…最新号をお届けに上がりました」(と照代に雑誌を渡す)
照代「ありがとう」
宗吉「おぉそうか…あ~…用が済んだら早く帰れ、忙しいんだろ?」
常子「はあ…」
そこに厨房から顔を出した南(上杉柊平)「大将、肉を焦がしちゃいました」
宗吉がため息をついて「バカ野郎何べん言ったら分かるんだよお前は~」
と新聞紙で南の頭をたたく
常子「宗吉さん…」
宗吉「え?」
常子「その新聞…」
新聞を隠し笑ってごまかそうとする宗吉夫婦
常子「見せて頂いていいですか?」

新聞の記事を読む常子「雑誌あなたの暮しに迫る」
続きを読む扇田「あなたの暮し出版は読者テスターを脅迫し
商品試験データを偽装しているという記事が週刊誌に掲載された
当紙でもあなたの暮しに疑問を投げかけるコラムを掲載し反響を呼んだ」
常子「そこであなたの暮し出版が行っている商品試験に関して
電化製品の販売店およそ500店を対象にアンケート調査した結果を
ここに掲載する
商品試験のやり方に疑問があるという声は47.2%という結果だった」
記事の数字を凝視する常子

(つづく)

松永は初登場の時から少し生意気だったのだが
だいたいこの手のキャラは見所があって
大きく成長するパターンかと思っていたが逆だったw
金に詰まって会社を裏切り仕事の内容にまで不満を持っていたとは…
常子が叱って改心させて松永が心を入れ替え仲間もそれを温かく迎える…
というような甘ったるい展開にならなくて本当によかった
その手の非現実な性善説に依った仲良しドラマは大嫌いだ

でも常子は甘ちゃんだから自分を責めたみたいだ
「独り善がりだったのかな…」と不安になり
社員を集めて商品試験に対する思いを確認するのだが
残ったやつらは熱血漢ぞろい…
まあこれはドラマだから本当にそうなのだろうが
現実なら場の空気を読んで仕方なく合わせる人間もいるだろうし
そもそも社員全員が理想を共有でき同じ方向を向く事などありえないだろう
だからああいうシーンを見ると自分は逆にちょっと醒めてしまう
もうちょっとテンションの低いキャラが2~3人いてもいいと思うんだ…うん…

珍しく南が宗吉に叱られていた
新聞を隠すコントをやるために無理やり作ったセリフかもしれないが…
それでも南が長谷川と同じようにバカ呼ばわりされてちょっと嬉しかった
今まであまりにも南を可愛がり持ち上げすぎる描写ばかりだったから

2016年9月9日金曜日

とと姉ちゃん(137)商品試験の結果は偽装されているという記事が週刊誌に出て…

あなたの暮し出版 商品試験場 
洗濯機の蓋を開け中をのぞき込む水田(伊藤淳史)
「これが三種の神器の一つ、洗濯機か~」 
寿美子(趣里)「ボタンひとつで洗濯ができるなんて信じられません」 
木立「まさに夢の道具ですね」 
緑(悠木千帆)「これがあればどれだけ家事が楽になるか」 
部屋に常子(高畑充希)と花山(唐沢寿明)がやってくる 
花山「では試験開始といくか、常子さん」 
「はい」とうなずく常子「え~皆さん、今日からまた新たな戦いが始まります
長期間になりますが心して頑張っていきましょう」 
(一同)「はい!」 
常子「はい、それでは皆さん、手元にある取扱説明書をよく確認して下さい」
と、「大変です!大変です大変です!」と扇田が駆け込んでくる
「これ見て下さい、今日発売の週刊誌なんですが…このページ見て下さい!」
扇田が広げたページには『あなたの暮しは嘘だらけ』の見出し
週刊誌を手に取る常子「どうしてこんな記事が…」
花山「こんな週刊誌の書く事など気にするな」
扇田「いやしかし…商品試験の結果が偽装されているっていう
テスターの証言まで載っています」
花山「どうせでっちあげ記事だ、最近増えてきたこの手の週刊誌ってやつは
もともと信憑性に欠けた記事が多いので大衆も信用していない
部数も少ないし取るに足らんよ」
水田「つまり影響力はほとんどないという事ですか?」
花山「気にするだけ時間の無駄という事だ」(と部屋を出ていく)
寿美子「花山さんにああおっしゃって頂くと安心しますね」
緑「そうね」
週刊誌を手に記事を食い入るように見つめる常子

編集長室で執筆する花山
常子と水田がやってくる
常子「お仕事中すみません
週刊誌の記事について気になったので調べてみたんですが…」
水田「記事の中で証言しているテスターの人は
実在している可能性が高いんです」
花山「どういう事だ?」
常子「記事に出てくるテスターは中野区のY・Sさん…というように
皆イニシャルで出ています
念のためうちの名簿と照らし合わせてみたんですが全て一致したんです」
水田「つまりテスターの情報が週刊誌に漏れているのかもしれません」
常子「週刊誌がテスターに接触して虚偽の証言をさせているんだとしたら…」
花山「そんなむなしい詮索はやめなさい」
常子「しかし…」
花山「これを機に気を取り直してやるべき仕事を変わらずやればいいんだ
我々の本分を忘れてはならない」
「分かりました」と返事をするが晴れない表情の常子(水田も)


小売電器店で呼び込みをしている赤羽根(古田新太)
「いらっしゃいませ!いらっしゃいませ!ご来店の皆様
こちらが我がアカバネから発売中の最新型の洗濯機でございます!
どうぞ近くに寄ってご覧下さいませ
いかかですか?舶来品にも負けないモダンなスタイル」

電器店倉庫
赤羽根「何だ?報告っていうのは」
酒井(矢野聖人)「はい、例の記事が載った週刊誌がいよいよ発売になりました」
赤羽根「そうか…これで少しでも向こうの読者が離れてくれればな」
村山(野間口徹)「しかし、今や40万部の売り上げを誇るあなたの暮しです
カストリ雑誌まがいの週刊誌に載ったところで果たして…」
赤羽根「いいか?小さな一歩でも踏み出す事が大切なんだ
同じように何度も繰り返していけばいずれ大きな一歩になる」
村山「…はい」
赤羽根「とにかくあの新しい洗濯機はやつらにとやかく言わせん
時間と金をかけたアカバネの金の卵だからな」

商品試験場(洗濯機は場所をとるためか屋外でもやっている)
脱水ローラーを手で回す木立「さすがに何時間も同じ事ばっかやってると
こたえるなあ(と隣の松永を見る)松永、手が止まってるぞ、おい!」
振り向く松永「えっ?」
木立「何ぼんやりしてんだよ、手が止まってるぞ」
松永「はいはい、言われたとおり絞りますよ」
それを後ろから水田が見ている

人がいなくなった試験場で水田が洗濯機を覗いている
何かに気付きかけているような表情の水田
そこに常子と美子がやってくる
美子(杉咲花)「水田さん?」
水田「ああ…花山さん顔を見せませんでしたね」
常子「あ…まだ表紙を描いているんじゃないかしら
今日は一日中バタバタしていたから」
美子「あの週刊誌の記事だけど、明らかに私たちに敵意があるわよね
あれもアカバネの仕業なのかな」
水田「あ…それはありえませんよ
いくらアカバネでもテスターの情報まではつかめませんから」
美子「じゃあ一体誰が何の目的で…」
水田「それは…」
常子「もう忘れましょう…真相がどうであれ花山さんがおっしゃっていたように
世間への影響は少なそうだし」
美子「そうね」

大東京新聞
国実(石丸幹二)「デスク、この週刊誌読みました?」
「あ~どうせガセだろ?」
国実「いや、この週刊誌の記者に裏を取ったんですが
この記事に載ってるのはあなたの暮しの本物のテスターで間違いありません」
「そうなのか」
国実「ええ…この件で田村先生にコラムを書かせてみませんか」
「あの辛口の評論家か…面白そうだな」
国実「きっと世間が騒ぎ出しますよ」

小橋家の小さな庭
タライと洗濯板で常子が洗濯をしている
「ご苦労さま」と君子(木村多江)がやってくる「その辺にしてもう会社に行って」
常子「いえ、今朝はまだ時間がありますから」
君子「いいのよ、洗濯は私の仕事なんだから」
常子「いつもすみません、かかにこんな力仕事させてしまって」
君子「何言ってるの、体が動くうちは自分の事は自分でしないと
…さあ、交代しましょ」
常子「いえ、もう少しだけお手伝いさせて下さい」(と笑って洗濯を続ける)

試験場(屋内)を歩く常子と美子
美子「これまでの苦労は何だったのってくらい簡単に洗濯ができちゃうわね」
常子「ねえ(とそのまま屋外の試験場に出る)革命的よね
毎日何時間もかかっていた洗濯が1時間かからないなんて」
美子「うん、洗濯機にお神酒あげたくなっちゃうね」
常子「フフフフフ、そうね」
と、「常子さん、至急ご報告したい事が」と水田がやってくる
常子「どうかしました?」
「これ見て下さい」と水田が新聞を台の上に置く
それに書かれている記事を読む美子「あなたの暮しへの疑惑…?」
水田「大東京新聞があの週刊誌に目をつけ記事にしたようなんです」
美子「評論家の田村先生がコラムを寄稿してる」
「あっ、ここ」と水田が記事の一部を指す
常子「果たして試験が本当に公正公平に行われているかどうか
十分に検証されるべきではないか…」
水田「週刊誌だからそれほどの騒ぎにはなりませんでしたけど
こんな全国紙にとりあげられたら…」
記事を見つめる常子

アカバネ社長室
新聞を手に赤羽根「大東京新聞が食いつくとはうれしい誤算だな」
酒井「はい」
赤羽根「さすがにこれはこたえてるだろう
この手の雑誌は信頼を失えば終わりだからな」
酒井「不憫ですねえ、まさか自分のところの社員に背かれてるとは知らずに」
赤羽根「金を積めば大抵の人間は転ぶもんだ」
酒井「これで洗濯機の商品試験は中止で間違いないでしょう」
赤羽根「そうか…しばし相手の出方をうかがおう」

編集部
受話器を持つ常子「はい…ですからあの週刊誌の記事は事実無根です
(他の電話機が鳴っている)ご安心下さい…はい…はい失礼します…はい」
と受話器を置いた電話機もすぐに鳴る「はい、あなたの暮し出版です…」
緑や島倉、他の社員たちも電話の対応に追われている
現れた花山「何の騒ぎだ?」
水田「新聞記事が出てから問い合わせの電話が殺到しています
週刊誌と全国紙では信用度がまるで違います
このままでは売り上げにも影響があるかと…
何か手を打つべきではないでしょうか」
花山「そんな事で離れていく読者はそれまでだ」
水田「えっ…」
花山「我々を信じてくれる読者だけを相手にすればいいんだ!」(と編集長室に)
残った水田「理想はそうですが…」
受話器を手に美子「とと姉ちゃん、大東京新聞の国実さんという方から…」
「国実さん?」と常子が受話器を受け取る「はい、お電話代わりました小橋です
はい…今からですか?…はい…はい分かりました」
受話器を置いてバッグを手にする常子に美子
「国実ってうちの事いろいろ調べてた人でしょ、まさか会いに行くの?」
常子「うん、お会いしてくる」

大東京新聞編集部
常子を案内する国実「お忙しいところどうもすみません」
常子「失礼します」(と部屋に入る)
国実「小橋社長なら取材に応じて頂けると思ってましたよ
どうぞこちらに」(と応接椅子をすすめる)
着座する常子「手短にお願いします」
国実「では単刀直入に伺います
あの雑誌で証言していたテスターはあなたの暮しで働いていた人たちで
間違いないんですよね?(常子は肯定も否定もしない)
という事は結果の改ざんは本当にあったんじゃないですか?」
常子「違います、あれは虚偽の証言です」
国実「しかしあの記事を見た人間はこう思うんじゃないですか?
結果を偽装し特定の企業から金を受け取り
その会社を持ち上げるために他の商品を叩いてる」
常子「そんな事はありえません
商品試験使うものは全て自分たちで購入し
企業からの協力は一切拒否しています
広告をとっていないのも特定の企業の影響を受けないためでもあるんです」
国実「口では何とでも言えますよね」
常子「何を言っても無駄なようですね」
国実「すみませんね、私たちは疑うのが仕事ですから
それに『火のない所に煙は立たない』というじゃないですか」
常子「『根がなくとも花は咲く』ともいいます(国実が小ばかにしたように笑う)
なぜそんなに我々を追及なさるんですか?
何か恨みでもお持ちなんですか?」
国実「めっそうもない
私はただあなたの暮しがどれほど大きなものに成長しているのか
あなた方がちゃんと理解してるのか知りたいだけですよ」
常子「理解しております」
国実「では40万部という売り上げがどれだけのものか分かっていますか?」
常子「何をおっしゃりたいんです?」
国実「今や電気屋に行けば多くの客があなたの暮しを手に商品を選んでいます
つまり世の中のほとんどの人があなたの暮しを
物を買う買わないの指標にしているんですよ
その事の重みをお分かりですか?
あなたの暮しがいいと言ったものは売れそうでないものは売れない
それだけ影響力のある存在なんですよ
その雑誌が本当に正しいものなのかそうでないのか
それは追求されて当然じゃありませんか」
静かに国実の話を聞いている常子

(つづく)

松永がどんどんやる気をなくしてダメ社員になっていくw
酒井が「自分のところの社員に背かれてるとは知らずに」と言っていたが…
でもアカバネの村山も少し元気がないような気がする

常子の洗濯シーンは何だったのだろう?
洗濯機を試験するにあたってそもそものその存在価値を実感したかった…
とかいう事なのかな?
このシーンは先週の予告にもあったのだが今週のタイトル
「仕事と家庭の両立に悩む」からてっきり星野家で洗濯してるんだと思ってた
まさか視聴者に常子と星野が同居?結婚!?とか
ミスリードさせるためだけに作ったシーンじゃあるまいな…

花山はどっしり構え過ぎw
あんなデタラメな記事を書かれてるんだからちゃんと対応しないとダメだろ
「そんな事で離れていく読者はそれまでだ」には
水田と一緒に「えっ?」ってなったわ

国実が最後に言ったのはその通りだと思う
あなたの暮しは世の商品をガチに試験して評価を公表しているのだから
あなたの暮し自身が公正なのかが検証されるべきなのは当たり前の事だ