2016年9月26日月曜日

とと姉ちゃん(151)社員たちの前で在宅勤務制度の導入を宣言する常子

昭和四十九年四月 

社員やテスターたちが揃った編集部 
常子(高畑充希)「10年ほど前から私たちの編集会議には
テスターさんを含めて雑誌作りに関わっている方全てに
参加して頂いています… 
あなたの暮しの読者はどのような方ですか?…扇田さん」 
扇田「どのような…多くは女性ですね」 
常子「では具体的にはどのような方かしら?…島倉さん」 
島倉「はい…我々の想定する読者は主に主婦です」 
常子「では主婦というのはどんな方?…木立さん」 
木立「え~っと…結婚して家庭に入ってる人…(周囲がうなずく)…です」 
康恵(佐藤仁美)「ちょっと待ちなよ、その言いぐさじゃ
働いてる女は主婦じゃないって事かい?」 
木立「あっ…そう言われるとあの…」 
(一同の笑い声)
常子「フフフ…つまり主婦の在り方も随分多様化してきている訳です
女は結婚して家庭に入る…
それが当たり前だとされていたような風潮は
今後ますます変わっていくでしょう(一同がうなずく)
そんな中で私たちの雑誌も変わっていかなければならないと思っています」
緑(悠木千帆)「変わる…といいますと?」
常子「働く女性に役立つ…そのような女性の参考になるような企画を
掲載した雑誌を作るという事です(たまきがメモをとる)
それと同時にこの会社自体も女性が働きやすい場所に
変わっていかなければならないと思います
そこで希望する方はご自宅で働けるようにしたいと思います」
(ざわめく一同)
「自宅?」
「自宅でですか?」
(寿美子や美子も驚いている)
常子「もちろん可能な日は出社して頂きますが
例えば急にお子さんの看病をしなければならなくなったような日は
家での作業だけで済むようにします」
(一同のざわめき)
常子「取材内容の整理や原稿の執筆校正などは
家でも進められると思うんです」
扇田「できる…事はできるとは思いますけども…」
ざわめく一同に微笑む常子「10人いれば10とおりの暮らしがあります
あなたの暮しはそれぞれの暮らしを尊重して働けるような場所を整え
遅くとも10月までには開始したいと思っています」
「10月?」
「すぐじゃないですか?」
常子「初めての取り組みですし仕事に混乱が生じないようにはしますが
皆さん何か問題がありましたら是非遠慮なくおっしゃって下さい」
考えを巡らせているような花山(唐沢寿明)
一同は相変わらずざわついているがだいたいはうなずく
美子(杉咲花)と水田(伊藤淳史)が笑顔でうなずき
寿美子(趣里)は考え込むような表情だ

夕刻、社員たちが退社していく中仕事を続ける寿美子
常子「寿美子さん」
振り向き顔を上げる寿美子
常子「寿美子さんの悩みにきちんと応えられなくてごめんなさい」
(と頭を下げる)
寿美子が首を振る
隣に腰かける常子「ご家庭の事もあるでしょうけど
これから職場環境は整えていきますから退職の件
考え直して頂けないかしら?
これからのうちの雑誌には寿美子さんのような方がどうしても必要なの」
寿美子「…ありがとうございます(と頭を下げる)
いろいろと考えて下さり…主人ともう一度話し合ってみます…前向きに」
笑顔になる常子「本当?」
寿美子「はい」
常子「フフフ…ありがとう寿美子さん
…あっ…でも答えは焦らなくていいからね
いくらでも待ちますから」
寿美子「ありがとうございます」
と、ドアが開き花山とたまきが現れる
花山「この資料用意しといてくれ」
たまき(吉本実優)「はい分かりました」
寿美子が常子にうなずく
たまき「あっ、常子さん」
立ち上がった常子「はいはい」
たまき「先ほど働く女性の参考になる企画っておっしゃってましたよね」
常子「うん」
たまき「まずは実際に会社勤めして第一線で働いている女性を
取材するのはどうでしょうか?
例えば大日ホテルの女性コックさんとか…
そういう方のやりがいとか悩みとかを取り上げてみたいのですが…」
微笑む常子「面白そうじゃない、やってみましょう」
たまき「本当ですか?ありがとうございます!(とお辞儀をして
寿美子に振り向き)あの…寿美子さん手伝って頂けないでしょうか?」
寿美子「私?」
たまき「はい、だって寿美子さんは働くお母さんじゃないですか
その視点でインタビューしてみたら
思わぬ話が聞けるんじゃないかと思うんです
お願いできませんか?」
寿美子「ええ、うん」(とうなずく)
たまき「ありがとうございます!(常子も後ろで嬉しそうに微笑む)
私早速明日から取材交渉に行ってまいります」
寿美子「うん」
たまき「よろしくお願いします」
席に戻った常子の前に帰り支度をした花山が立つ
「あなたの暮しはそれぞれの暮らしを尊重する…いい提案じゃないか」
常子「花山さんにそうおっしゃって頂けると…」
花山「私も私なりに答えを出さねばならんな…お先に失礼するよ」
常子「さようなら」

<花山もまた
あなたの暮しのこれからに必要なものを見いだそうとしていたのです>

帰宅する花山「ただいま」
孫のみのりが「じいじお帰りなさい!」と玄関に駆けてくる
茜(水谷果穂)「お帰りなさい」
三枝子(奥貫薫)「お帰りなさいませ」
「ただいまみのり」と花山がみのりを抱き上げる
三枝子「すぐお夕飯にしますね」
花山「ああ」
茜「みのり、おじいちゃんに会えてよかったね」
みのり「うん、じいじは?」
花山「じいじもだよ、アハハ(とみのりを抱いたままダイニングに向かい)
茜…いくら近いからといってこう頻繁に帰ってきたんじゃ
明彦君が気の毒じゃないか?」(とみのりを下ろす)
茜「このところ明彦さん残業ばかりなのよ
みのりと2人で夕飯食べるのも何だか味気ないし
こっちに来て大勢で食べた方がおいしいもの
お父さんもみのりに会えてうれしいでしょ?」
みのりを膝にのせ椅子に座る花山「それはそうだがねえ…」
三枝子「いいじゃないですか
こうして一家団らんできるなんて幸せな事ですよ
お体を壊すまではお帰りが遅くて
こんなふうにそろって夕食をとるなんてめったになかったんですもの」
花山「うん…」
茜「何だかお父さんがお体壊してよかったみたいな言い方ね」
三枝子「そんな事は言ってないでしょ、もう…」
みのり「ねえじいじ、クレヨン取ってくれる?」
花山「ああ」(と手を伸ばす)
みのり「じいじのお顔描いてあげるね」
花山「ああ、ありがとう…は~い」(とクレヨンと紙を準備する)
クレヨンを手にした孫を見て微笑む花山

仏壇に手を合わせ目を閉じる常子
「とと姉、これお願い」と鞠子(相楽樹)が後ろに座り皿を渡す
振り向き「ああ、ありがとう」と皿(枇杷)を受け取る常子「初物ね」
鞠子「ええ」
常子が枇杷を供え鞠子が手を合わせる
鞠子「よっちゃんから聞いたわ」
常子「ん?」(と振り向く)
鞠子「社員さんのために勤務体制見直そうとしてるって」
常子「うん…まだまだ手始めという感じだけどね
社内整備をしたところで全ての問題が解決するとは思わないし
働く女性やお母さんたちを取り巻く問題はもっとずっと根が深いと思うから
でもとりあえずはできる事から始めないと何も変わらないと思うから」
「フフフ」と鞠子が可笑しそうにうなずく
常子「ん?」
鞠子「とと姉は社員にとってもやっぱりとと姉ちゃんなのね」
常子「そういう性分なだけよ」
鞠子「とともきっと驚いてるわよ
『幼かった常子がこんなに立派になって』って」
仏壇の写真を見つめる常子「そうかなあ…」

「ただいま戻りました」と寿美子とたまきが編集部に戻る
常子「寿美子さん、取材はどうだった?」
寿美子「とても興味深いお話が伺えました
たまきさん聞き上手で私なんかいらないくらい」
たまき「とんでもないです、寿美子さんが水を向けて下さったから
あそこまでお話し頂けたんですよぉ」
美子「いいコンビの誕生ね」
常子「ねえ」
たまき「あっ…花山さんに今後の取材方針の相談したいんですけども…
お部屋ですか?」
常子「ああ…それがね…」
美子「花山さんまだいらしてないの」
(2人)「えっ?」と腕時計を見る
たまき「もう2時になるのに…」
美子「いつものようにね
ぶらっと展覧会でものぞいてらっしゃるんだと思うけど
このところ体調思わしくないから…」
常子「連絡がないのも心配ねえ」
木立「あの…常子さん」
常子「はい」
受話器を手に木立「花山さんからお電話です」
常子「はい(と立ち上がり)ありがとう(と受話器をもらい)
常子です、今日はいらっしゃらないんですか?
心配していたところだったんですよ」
(花山)「今取材で広島に来てる」
常子「広島?何の取材ですか?」

たばこ屋の前の赤電話に硬貨を落とす花山
「それはまとまってから伝えるよ」

常子「ですが今のお体では地方での取材は無茶です」

花山「心配ない…4日後に帰る…では」(と受話器を置く)

常子「あっ…ちょっと…」(と通話が切れた受話器を置き3人を見る)
たまき「花山さん広島にいらっしゃるんですか…?」
常子「何かの取材らしいのだけれど…」
美子「何かしら…」
心当たりがない様子の常子

首にはカメラをぶら下げ足元のカバンを手にした花山が歩き始める

(つづく)

たまきが会社で「常子さん」と呼んでいた(入社前は「おばさん」)
この会社では常子と美子が「とと姉ちゃん」「よっちゃん」と呼び合い
公私の別がない感じだったがたまきはさすが
入社試験を受けて入っただけあってけじめをつけているようだ

久しぶりに登場した三枝子の「お体を壊すまでは~めったになかった…」
は普通に花山の仕事への取り組みの説明セリフだと思ったのだが
それに対する茜の「何だかお父さんが体壊してよかったみたいな
言い方ね」は何か深い意味でもあるのだろうか?
三枝子に謎セリフが多い事は以前にも書いたが
茜のセリフを考えると三枝子ってのほほんとしているようでいて
やはり愚痴っぽいところがあるのかなあと思ってしまうw

寿美子と絡んでるシーンのたまきがうざいw
快活で前向きなのだろうが見てるとなんだか痒くなる
まあ吉本実優の演技がそれだけ上手という事なんだろうけど


0 件のコメント:

コメントを投稿