2016年6月11日土曜日

とと姉ちゃん(60)星野との別離~僕の好きな常子さんであれば…

お寺の山門からの雑木林を歩く常子(高畑充希)と星野(坂口健太郎) 
「本当のところ大阪に住むのが少し怖いんです」 
常子「怖い?」 
星野「大阪の人は言葉が荒いので
いつも怒られているような気がして…一人だと心細くて」 
常子「フフッ」 
星野「また変な事言いました?」 
常子「いや…まさかそれが理由で結婚したかったんですか?」 
星野「いや違います!違います!僕は真剣に常子さんの事を…」 
可笑しそうに笑っている常子「安心しました」 
星野「…僕も安心しました…やっと常子さんが笑ってくれた」 
星野を見る常子、目を落とし考えを巡らせる
「あの…先ほど心のどこかで断られる気がしていた…って…
どうしてそう思われたんですか?」 
星野「恐らく…僕が思いを寄せた常子さんはそうされると思ったからです」 
常子の足が止まる 
振り向いて常子を見つめ、話を続ける星野「自分の事は後回しにして
ご家族のために全力で走り回る常子さんだから恋に落ちたんです」
常子の瞳が揺れる
星野「矛盾した話ですがつまり…
僕を選ぶ常子さんは僕の好きな常子さんではない
僕の好きな常子さんであれば結婚よりもご家族を選ぶ…
そんな気がしていました」と、少しの笑顔でうつむく
言葉は出てこない常子
星野「この辺でお別れしましょう…
遠く離れても常子さんと皆さんの幸せをお祈りしています」
(少しの間)
常子「ありがとうございます」
微笑んだ星野が唇を噛みしめるように「さようなら」
そして笑って「お元気で」
ぎこちなく微笑んだ常子「さようなら」
一礼してすれ違っていく星野
常子もゆっくりと歩き出す
少し歩いたところで立ち止まる常子
寂しそうな顔で後ろを振り返る
山門にはもう星野の姿はない、風の音が聞こえるだけだ

常子が帰宅すると君子(木村多江)鞠子(相楽樹)
美子(杉咲花)の3人が厨房にいる
家族を見つめる常子
君子(驚いたように)「常子、お帰り」
常子「ただいま帰りました」
鞠子「どうしたの?そんな所に突っ立って」
常子「うん?」
鞠子「まだ具合でも悪いの?」
首を振る常子「ううんううん平気平気、ごめんね心配かけて」
と、厨房に入る
美子「ううん、心配するのは当たり前、謝らなくていい」
常子「そうね」と、笑って首を傾ける
鞠子「あれ?」
美子「何?」
鞠子「普通に話してるけどけんかは終わったの?」
美子「そうよ」
常子「このマフラーもね、よっちゃんが編んでくれたのよ、いいでしょ」
鞠子「へえ~…えっ、私には?」
美子「う~ん…時間があったらね」
常子「ちょっとカバン置いてきますね」と、2階へ
鞠子「時間あるでしょ、よっちゃん」
美子「忙しいの、いつも」
鞠子「うそだあ、勉強もしないくせに」
美子「本当、してます」
常子の行った方を気になるように見ている君子

駅、発車のベルが鳴っている
学生服姿の仲間たちに見送られ汽車に乗り込む星野
汽車が動き出す
出征する者もいるのだろう、「万歳!万歳!」の大合唱だ
走る汽車の中、窓際に座った星野の胸に去来する常子との思い出
常子の言葉「いい夫婦になれるかもしれないですね」
向かい席の小さな男の子連れの3人家族に目をやる星野
窓の外に目を戻した星野が何かを見つける
家族連れに「すみません」と断り、窓を開ける星野
河原に両手で持ったカバンを前に提げぽつんと立っている常子の姿
星野の方を見ている
「常子さん!」と叫び、帽子を手に持って振る星野「常子さ~ん!」
橋を渡る汽車を見送る常子
星野「常子さん!常子さん!常子さん!」
口元に僅かに笑みをたたえた常子が星野に向かって頭を下げる
汽笛が響く
常子の方をいつまでも見ている星野
ゆっくりと顔を上げた常子、汽車が去った方を見る

帰宅した常子「ただいま帰りました!」
一同の「お帰り!」の声が聞こえる
厨房の前を素通りして2階に向かう常子
一同は星野の汽車がどのあたりを通過しているかと話している
常子の様子が気になるように階段下から見上げる君子

お部屋に入った常子が仏壇の前に座る
君子が追いかけてくる「常子、星野さんと何があったの?」
仏壇に目を戻す常子
隣に座る君子「常子」
前を見たままで常子「結婚を申し込まれました」
君子「結婚?」
常子「でも…お断りしました」
君子「どうしてそんな大事な事今まで…
前にも言ったわよね、あなたはあなたのしたいように…」
君子に振り向いてから少し視線をはずす常子
「私は…まだここにいたいんです」
そして少し君子に体を向け「鞠ちゃんがこれからどんな小説を書くのか
よっちゃんがどんな大人になっていくのか
もう少し見守っていたいんです
とととの約束は関係ありません
はっきり分かったんです
私は今…美子とも鞠子ともかかとも離れたくありません」
君子「それが…あなたの幸せ?」
「はい」と、うなずいた常子が
「でも…やっぱり星野さんとのお別れはつらいものですね」と泣き声になる
常子を抱きしめる君子
「こうしてれば誰にも聞こえないわ」
とたんに泣き顔になり君子にすがりつく常子
母の胸の中で泣き続ける

(つづく)

僕の好きな常子さんであれば結婚より家族を選ぶはずだと言われて
常子が言葉を失っているように見えたのだが
これは今のあるがままの常子を愛してくれる男性が現れたとして
その誰とも常子は結ばれない事(星野の言う矛盾)を常子が
悟ったからなのだろうか?
だとしたら常子可哀想すぎる…

河原のシーン
星野も向かい席の家族連れみたいになれたかもしれないのにね…
それにしても星野がこっちの窓側に座ってて良かったわ~w
常子もよく星野を発見した
常子が頭を下げたのはいろいろ理由があるのだろう
星野には世話になったしプロポーズも断っちゃったし
顔を見るのが辛かったとか泣いちゃうからとか…

ラストで「とととの約束は関係ありません、はっきり分かったんです」
と語る常子だがその心は?
上にも書いたとと姉ちゃんの宿命(星野の言う矛盾)
美子にもらったマフラーの温もりと感動
その他にも滝子や早乙女の言葉も影響しているのかもしれないが
竹蔵のせい(誰かのせい)にはしたくないというのもあるのだろうか?
いちばん素直に解釈すれば父との約束の呪縛から解き放たれ
大人になった自分自身の願い、幸せがそこにある事に主人公が気付いた…
というところなのかなあ?


2016年6月10日金曜日

とと姉ちゃん(59)美子のお駄賃の使い道~常子の出した答えは?

朝、洗面所で歯を磨く常子(高畑充希) 
星野(坂口健太郎)のプロポーズを思い出し動きが止まる 
「常子、遅れるわよ」と、君子(木村多江)が顔を出す 
「常子?」 
鏡の中の自分を見たままの常子「ずっと考えていたんです…
この数日久しぶりに家の中でゆっくりしていろんな事がわかりました…
鞠ちゃんもよっちゃんも私が思っていたよりずっとしっかりしていたんですね」 
君子「そうね…あなたももう少しだけ
自分の事を優先してもいい時期かもしれないわね」 
君子をちらりと見て「ええ、そうですね」
と、歯ブラシを動かせ始めた常子に甦る父との約束 
竹蔵「約束してくれないかい?ととの代わりを務めると」 
歯を磨く常子の後ろ姿 

タイトル、主題歌イン 

お部屋で水色の毛糸の編み物をしている美子(杉咲花) 
机の上に立てられた常子の3つの目標を見て微笑む 

浄書室でタイプライターの前に座る常子
手が止まりぼんやりとしている
そんな常子に早乙女(真野恵里菜)
「ご病気が治ったのにまた考え事では困りますね」
常子「すみません」
早乙女「手を休めてばかりいてはいけませんよ
あなたは妹さんを嫁に出すまで走り続けるのでしょう?」
落ちていくように首を縦に振る常子

夜、滝子(大地真央)の部屋
「そうかい、今でも美子は洋裁店の手伝いやってるんだね」
常子「はい、鞠ちゃんは文学同好会とかいうのがすごく楽しいみたいで
最近はお化粧もするんですよ」
滝子「へえ~あの鞠子が」
常子「鞠ちゃんもよっちゃんも私の知らないところで
どんどん成長していってるんです」
滝子「成長ねえ…」と、「フフフ」と笑いだす
何かの空き缶を取り出して蓋を開ける滝子
その中にはたくさんの小銭が詰まっている
「美子がうちや洋裁店の手伝いをしているのは何でかわかるかい?」
常子「それは…好きだから」
滝子「もちろんそれもあるよ、でもそれだけじゃない
美子の目当てはこれだ、今までためたお駄賃さ」
缶と滝子を見やる常子「どうしておばあ様が?」
滝子「フフフッ、あの子お駄賃もらうと必ず私のところに持ってくるんだよ
学費の返済に充ててほしいって」
驚いて目を見開く常子
滝子「少しでも常子の負担を軽くしたいって
あの子なりに役に立ちたいと思ってるんだよ」
少しうるっとして笑顔になる常子
「私はてっきりおやつを買うためかと」
首を振る滝子「美子はお駄賃を一銭も使っちゃいないよ
あの食いしん坊の美子が、フフフッ!信じられないだろ?」
笑って「フフフッ」と、うなずいた常子が泣き出しそうな顔になる
滝子「あの子たちが一人前みたいな顔をして
生き生きとやりたい事をやれるのは常子がいるからだよ
鞠子も美子もまだまだ子どもなんだよ」

帰宅した常子が襖を開けて部屋に入ると
机に向かって勉強している美子しかいない
振り向いた美子と目が合うが無言の2人
再び机に向かった美子の後ろに座る常子「よっちゃん」
美子が振り向く
常子「ごめんね」
常子に向き直る美子
常子「おばあ様から聞いたの
よっちゃんがお駄賃を学費の返済に充ててくれてるって…
そうとは知らずにひどい事言ってごめんなさい」と、頭を下げる
常子を見ている美子が居住まいを正して
「私もいろいろごめんなさい」と、頭を下げる
顔を上げた2人の表情が柔らかくなる
美子「とと姉ちゃん」
常子「ん?」
美子が押し入れから紙包みを取り出して常子に手渡す
包みを開ける常子「これ、よっちゃんが?」
美子「だってとと姉ちゃん自分のお洋服なんて随分買ってないでしょ
せめてマフラーくらいは新しいのしてほしいなと思って」
水色のマフラーを首に巻いてみる常子「ありがとう」
と、笑い合う2人
マフラーの端を愛おしそうに両手で握る常子
美子「ねえ…」
常子「うん?」
美子「みんなで時間があったらまたお出掛け行こうよ…駄目?」
首を振る常子「ううん」
美子「本当?」
笑顔の常子「私はいつだってみんなと出かけたいと思ってるんだから」
くだけたように笑う美子「いつもは嫌だなあ」
常子「フフフフ!」
美子「ねえ、今度上野動物園行こうよ、ロバとラクダが人気なんだって
でも銀座でホットドッグもいいよね、ナポリタンも人気なんだって」
笑顔で美子の話を聞いている常子
美子「あっ、フランス料理!でもエノケンも見たいんだ…」

仏壇の竹蔵の写真

美しい満月

深夜、寝間着姿で机の前に座る常子が3つの目標を見ている
そして眠っている家族に振り向く
揺れ動く常子の瞳

翌、星野の下宿
荷造りをしている星野を常子が訪ねる
星野「荷物が多いもので整理してまして」
常子「ああ…浜松から上京してきた時の事を思い出します
お部屋を片づけてるとお金見つけません?」
星野「お金?」
常子「小銭です、戸棚の裏とかこう…
ちょっとした隙間に落ちてるんですよね
妹たちと拾ったお金の数競い合ったりしたなあ、フフフ」
星野「はぁ~」
常子「あ…すみません、引っ越しの手を止めてまで
するようなお話ではなかったですね」
星野「いえ、僕もよく話を切り出せずどうでもいい話を」
常子「そういえばそうですね、フフフ」
星野「はい」
常子「似てるんですね私たち」
星野「僕もそう思います」
常子「いい夫婦になれるかもしれないですね」
驚いて顔がほころぶ星野「では、この間のお話し…」
星野を見つめる常子「星野さん…私…今は結婚できません
…ごめんなさい…今は家族と離れる訳には…
これからも支えていかなければなりませんし
私自身まだまだ支えたいと思ったんです」
星野「そうですか…」
頭を下げる常子「すみません」
星野「あ…謝らないで下さい、常子さんの事だから
とても真剣に考えてくれた結論なのでしょう
ありがとう」と、頭を下げる
常子の瞳が激しく揺れる
星野「僕もね、心のどこかでそう言われるのは分かっていた気がします」
常子「えっ?」
星野「もう日も暮れます、森田屋さんまでお送りします」
常子「いいえ」
星野「いいんです…そうさせて下さい」
迷いの消えた済んだ瞳の常子「はい」

(つづく)

滝子のセリフ「そうかい、今でも美子は洋裁店の手伝いやってるんだね」
と「あの子はお駄賃もらうと必ず私のところに持ってくるんだよ」
が矛盾しているように思えて気になった

滝子がやたら笑ってたのは美子のする事が可愛らしいからなのだろうが
その他に、お駄賃の小銭では学費の返済には雀の涙という事もあるのかな?
だから「まだまだ子ども」なんだろうか

常子の「そういえばそうですね」は
星野がいつも甘味屋でノートに書いてある事を
なかなか切り出せないでいたのに常子は気付いてたって事なんだろうね

あの場面でプロポーズを断るより先に
「いい夫婦になれるかも」なんて本当は言っちゃいけないけど
(星野はぬか喜びしてしまって可哀想だった)
これはドラマだから視聴者をハラハラさせる演出なのだろう

「今は結婚できない」って言ってたから鞠子も美子も大人になって
最終回あたりで星野と再会して結ばれるといいのだが…

2016年6月9日木曜日

とと姉ちゃん(58)竹蔵との約束か?星野との結婚か?思い悩む常子

常子(高畑充希)「結…婚…」 
星野(坂口健太郎)「…ずっと迷っていました…思いを伝えるべきかどうか」 
溢れてくる涙を拭う常子 
星野「研究者の道は僕の夢でもあり両親の願いでもあります
だからこの機会を逃したくはない…けれども…
僕は常子さんと離れたくありません」 
星野の言葉が嬉しくて微笑む常子「星野さん…」 
星野「常子さん…僕と大阪に行って下さい!
共に植物に囲まれて暮らしましょう」 
まだまだ流れてくる涙を笑顔で拭う常子「ありがとうございます」
と小さくうなずきながら「すごくうれしいです」と、やはり小さく笑う 
少し身を乗り出す星野「それじゃあ…」 
星野を見つめる常子「しばらく…お時間頂けませんか?」 
うつむくように何度もうなずく星野「もちろんです」 
星野を見つめる常子の優しい眼差し 

夜道を帰る常子 

小橋家の部屋
美子(杉咲花)に手をついて詫びる君子(木村多江)
「今朝は…ごめんなさい…美子の気持ちも考えずたたいてしまって」
手にしていた編み物をちゃぶ台に置いた美子が君子に向き直り
「私もかかにご心配かけました…ごめんなさい」と、深く頭を下げる
そして小さく笑って和やかな空気になる
鞠子(相楽樹)「もうよっちゃん、私まで巻き込まないでよね
とと姉が帰ってきたらちゃんと謝るのよ」
再び編み物を始める美子「それは嫌
やっぱりとと姉ちゃんにはあやまりません」
君子「美子ぉ…」
君子を小さく睨む美子「だってとと姉ちゃん私がお裁縫するの
おやつのためだって決めつけたんだもん」
あきれたような鞠子「そんな事で怒ってるの?」
バツが悪そうに鞠子と君子の顔を見やる美子
「私とと姉ちゃんが謝らない限り話もしないから」
襖を開けて常子が入ってくる「ただいま帰りました」
君子「お帰り」
鞠子「お帰りなさい、遅かったね、また残業?」
返事もしないで元気なくちゃぶ台の前に座る常子
鞠子「とと姉?」
鞠子を見る常子「ん?」
鞠子「どうしたの?ぼ~っとして」
笑顔で「ううん…」と首を振った常子が「そうだ」
と、カバンから木箱を取り出し「はい、鞠ちゃん」と手渡す
箱の蓋を開けた鞠子が常子の顔を見る
常子「新しい万年筆、先っぽ割れちゃって使えなくなってたでしょ
これ使って」
鞠子「ありがとう」
常子「うん…あとね…」と、カバンからもうひとつ木箱を取り出し
美子の前に置く「はい、よっちゃんこれ」
美子が木箱を見て、常子を見て、そして箱を手に取り蓋を開ける
中身のくしを見て、再び常子を見る美子
君子「常子…冬物のお洋服買うためにためたお金使ったの?」
常子「うん…そうなんですけど
よく考えたら特に欲しいものもないなと思って」と、笑い
「あ…かか、今日私少しくたびれてしまったのでお夕飯遠慮します」

1階居間
夕食を囲む一同に常子の姿はない
宗吉(ピエール瀧)「珍しい事もあるもんだなあ
あの常子が夕飯要らねえなんてなあ」

2階の仏壇の前に座った常子
竹蔵との約束と星野のプロポーズに思い悩む

朝、1階居間
朝食に常子の姿はない
心配した君子が「ちょっと見てきます」と、席を立つ
心配顔の美子

まだ布団の中にいる常子の額に手を当てる君子「あっ、すごい熱じゃない」
首を振る常子「平気です、このくらい」
君子「無理してはいけないわ、今日は休みなさい」
常子「いや、そういう訳には…皆さんに迷惑がかかってしまいますし」
君子「そんな体で出かけたところでかえってご迷惑になります」
常子「でも私が働かないと…」
君子「いけません、しっかり休養をとる事も家長にとってはお仕事よ」
虚ろな目の常子

浄書室、ドアを開けて早乙女(真野恵里菜)が入る
多田(我妻三輪子)「早乙女さん、やはりお休みですか?」
早乙女「ええ、ご家族の方から連絡がありました、体調がすぐれないと」
多田「あの元気の塊のような方が…」と、常子の席の方を見る
「どうしたのかしら…」

ナラザワ洋裁店
水色と青色の毛糸の束を手に、何か思案しているような美子
ナラザワ「何だい、編み物でも始めんのかい?」
微笑む美子「ええ、まあ」
ナラザワ「時間あんならちょっと仕事手伝ってもらおうかな」
「はい!」と、嬉しそうな美子

頭に氷のうを乗せて眠る常子「星野さん…」
常子の汗を拭いていた君子が常子の顔を見る

(常子の夢)
「あら、そこにいたの」と、縁側から小さな庭を見る常子
庭には満開に咲く桜の木もある
赤子を抱いてしゃがんでいる星野「坊やが花を見たがってね、ねえ?」
常子も来て赤子の顔を覗き込む「フフフフ…」
と、「邪魔するよ!星野さん」と借金取りの着流しと背広が家の中から
土足で現れる
着流し「いい加減、金返してもらえませんかねえ」
星野「すみません、もう少し待って頂けませんか?」
縁側の戸を蹴り上げる着流し「いい加減にしろよ!」
常子「やめて下さい!」
赤子が泣き出す
着流し「ああ!」
背広「そもそもあんたの妹の学費のために金がかかってんだろ?
あんたが責任取るべきじゃねえのかい?」
常子「すみません」
背広「あんたは結婚なんかしちゃいけなかったんだよ」

悪夢にうなされる常子

居間
一同が「頂きます」と、朝食を食べていると
常子が「おはようございます」と現れる
(一同)「お~」
富江(川栄李奈)「もういいの?」
常子「うん、昨日よりは」
君子「あと1日休みなさい」

女学校の放課後
居残って水色の毛糸で編み物をしている美子

常子たちのお部屋
布団に体を起こした常子「すみませんわざわざ」
見舞いに訪れた早乙女「もう随分よさそうね」
常子「はい、今日一日熱も上がらなかったので大丈夫だと思います」
部屋を見渡す早乙女「…ここでお暮らしになっているのね」
苦笑するような常子「そんな大したものは…」
早乙女が「あれは?」と、目をやる
机に立てかけた常子の3つの目標
常子「ああ…あれは私の人生の目標を書いたものです」
早乙女「家族を守る、鞠子美子を嫁に出す…
順番としてはあなたが先ではなくて?」
常子「父親になったつもりで立てた目標なので」
早乙女「ご自分の事よりも妹さんの事を優先されているのね…
私には分からない気持ちだわ」
常子「ご兄弟はいらっしゃらないんですか?」
早乙女「ええ、しつけの厳しい両親で
物心付いた時から身の回りの事は一人で何でもやってきました
女学校を出たあとも親には頼りたくなくて
がむしゃらに自分の力だけで生きてきたつもりです」
常子「だから早乙女さんはお強いんですね」
早乙女「フフッ、やってる事はただの清書です
それに…女が自分の力だけで生きていけるほど
甘い世の中ではありませんもの…
妹さんたちを嫁に出す…立派だわ」
力なく微笑み、机の目標に目をやる常子

(つづく)

美子が編んでいるものは誰のためのものか想像できるよね
水色とか青色はタイトルバックでも常子のイメージカラーだし
君子が常子に冬物のお洋服…って言ってたから
くしのお礼も兼ねてそれで仲直りって事なんだろうけど
もしかしたら洋裁店でのバイトがバレて常子VS美子第3Rはある?

常子は熱出しちゃったね
それほど悩みが深いのだろう
竹蔵との約束と星野との結婚は両立できないから…
悪夢に出てきた背広の男にも
「結婚なんかしちゃいけなかった…」と言われる始末
でも常子の中ではもう答えは出ているのではないだろうか?
朝(前回)、美子に「そういうのが息苦しい」
鞠子に「私たちのためにお給金も時間も使う…無理してるんじゃ…
本当にしたいようにしてほしい…」と言われたばかりなのに
自分の冬服を我慢して万年筆と櫛を買ってきた
これは常子がとと姉ちゃんをやめるつもりはないという
宣言ではないのだろうか?
まあひとつハッキリしているのは本当に真剣に悩んだときは
「どうしたもんじゃろのぉ~」とは常子は言わないという事w


2016年6月8日水曜日

とと姉ちゃん(57)常子VS美子第2R~星野のプロポーズ

退職して去っていく諸橋(野村麻純)の後ろ姿を見ている早乙女(真野恵里菜) 
課長の山岸(田口浩正)がやって来て声をかける
「おいおい何やってんだ?片づけは済んだのか?」と、浄書室に入る 
山岸「あ~早乙女君、諸橋君は今日付けで辞めてもらったよ
諸橋君に振ってた仕事はみんなで手分けして頼むよ…
本来なら職場の規律を乱したんだ懲戒解雇にしてもおかしくないんだけどね
そこはね僕の優しさで辞表を書いてもらったんだよ」 
早乙女「お相手の奥寺さんはどうなるんです?何のおとがめもなしですか?」 
山岸「どうもなる訳ないだろう、諸橋君が辞めてくれたら丸く収まるんだよ
戦争でとられて人手が不足してんだ
こっちから男の社員を辞めさせる会社がどこにあるっていうんだよ」 
(タイピストたちが口々に)「ひどい…」 
早乙女も眉をそびやかす 
山岸「何だぁ?不満があるのかぁ!
どうした?不満があるんなら言ってもかまわないんだよ」 
常子(高畑充希)が前に出ようとするが 
早乙女「では言わせていただきます
諸橋さんだけが責任を取り辞表を出すというのは解せません」 
山岸「解せない?
職業婦人だとか言われておだてられて図にのってんじゃねえか?君たちは」
早乙女「私はただ
責任は双方にあるのではないかという事を言いたいだけです」
山岸「書類を清書するだけのタイピストなんて掃いて捨てるほどいるんだ
何を考えているんだか…
女の本分はお国のために子を産み増やす事だ!
それを忘れるんじゃないよ」

タイトル、主題歌イン 

ナラザワ洋裁店の看板
裁縫している老いた職人の技を見ている美子(杉咲花)「すごい…」
隣には滝子(大地真央)も立っている
職人(おそらくナラザワ)「お嬢さん、縫い物好きなのかい?」
笑顔の美子「はい、仕上がりを考えながら作っていくのが楽しくて」
ナラザラ「ほう…そうかい」
滝子「久しぶりだね、美子のそんな顔見るの
連れてきて正解だったみたいだね」
美子「ありがとうございます」と、滝子に頭を下げる
滝子「礼を言うなら私じゃなくてご主人に言っとくれ
無理言って仕事場に入れてもらったんだ」
美子「ありがとうございます」
笑うナラザワ「滝子さんの頼みじゃ断れる訳がないよ」
滝子「まあ、アハハハハ!
たまに遊びによこしてもかまわないかい?」
ナラザワ(美子に)「いつでもおいで
あっ、そうだ一人で手が回んない時は手伝ってもらうかな」
目を輝かせる美子「本当ですか?ありがとうございます!」

(富江の部屋かもしれない)
鞠子(相楽樹)「洋裁店?」
美子「し~っ!」と、人差し指を口にあてる
鞠子の隣には富江(川栄李奈)も座っている
鞠子「ごめんごめん」
美子「働く訳じゃないの、簡単なお手伝いをさせてもらうだけ」
富江「お駄賃頂けるんでしょ?」
美子「少しだけよ」
富江「よかったわね、大好きな縫い物でお金が頂けるなんて」
笑顔の美子「ええ」
鞠子「帰ってきたらとと姉に報告しないと」
顔が曇る美子「言わなきゃ駄目?」
鞠子「当たり前じゃない、内緒でやるつもりだったの?」
美子「だって口利きたくないし」と、うつむいてしまう
鞠子「同じ部屋で暮らしてるのに
いつまでもけんかしてる訳にはいかないでしょ
元はと言えば勉強会だってうそついたよっちゃんが悪いんだし」
「ただいま帰りました!」と、常子の声が聞こえる
鞠子「ちゃんと話すのよ」
美子「分かった…」

戸を開けて美子「お帰りなさい」
振り向く常子「あっ、ただいま」
美子「遅かったわね」
常子「一人急きょ辞めちゃってね、仕事が増えちゃったの」と、行こうとする
美子「あっ、とと姉ちゃん…」
部屋から顔を覗かせる常子「うん?あっ、ごめん
資料整理が残ってるから後にしてもらっていい?」と、戸を閉める
少し眉をひそめた美子が部屋に戻り戸をぴしゃりと閉める
鞠子と富江「…」
荒々しくせんべいをかじる美子

資料整理をする常子
壁に掛かった家訓の書かれた額縁
そのまま朝になり、机に突っ伏して眠る常子には毛布がかけられている
常子が目を覚ますと家族が部屋に戻ってくる
君子(木村多江)「常子、起きたの?
朝ごはん早く食べてきちゃいなさい」
常子「朝ごはん?えっ、もうみんな食べたの?」
鞠子「もう食べたよ」
常子「どうして起こしてくれなかったの?」
君子「起こしたけど起きなかったんでしょ」
常子「気付かなかった…」
鞠子と美子は仏壇に手を合わせている
「よいしょ…」と、立ち上がる常子
常子に背を向けたままで美子「とと姉ちゃんだって同じじゃない」
まだ寝ぼけてる目で常子が振り向く「うん?」
美子「偉っそうに家訓は守れって言うくせに自分だって守ってないじゃない」
鞠子が美子を見る
君子「美子?」
常子「しかたないでしょ、お仕事終わらなかったんだから」
美子「へえ~仕事なら破ってもいいの?都合いいのね仕事って」
常子「なんて事言うのよ、私が誰のために働いてると思って…」
振り向いて常子を見る美子「もう!そういうのが息苦しいの!」
と、立ち上がり「いつも家族のため家族のためって言うけど
それを言われる身にもなってよ!
私はもっと自由にやりたいの!とと姉ちゃんだってさ…」
常子と美子の間に入った君子が美子の頬を平手で打つ
「いい加減になさい!常子の気持ちも考えないで勝手な事を…」
頬を押さえる美子「私だけじゃないよ…」と、泣き出しながら
「まり姉だって言ってるもん」と部屋を出ていく
美子が閉めた戸の方をしばらく見ている君子
常子が鞠子を見る「そうなの?」
下を向く鞠子(独り言みたいに)「もう…そういうのは言わないあれでしょ…」
常子「鞠ちゃんもそう思ってたの?」
鞠子「まあ…そう思う時があるのは確かだけど…」
力なく鞠子を見下ろしている常子
立ち上がり説明する鞠子「ああいう言い方してたけど
よっちゃん、とと姉の事いつも思ってるのよ
とと姉、いつだって私たちのためにお給金も時間も使うじゃない?
それをあの子、とと姉が無理してるんじゃないかって心配してて…
私たちの事じゃなく、とと姉が本当にしたいようにしてほしいって」
考えさせられたような顔の常子

叩かれた頬を押さえ登校していく美子

浄書室
元気なくタイプを打つ常子の手が止まる

<家族の幸せとは…
常子はどうしたらいいかわからなくなってしまいました>

迷った時には自然と足が向くのだろうか
星野(坂口健太郎)の下宿の前に来ている常子
星野は家の前で何やら桶を抱えて息を吹きかけている
それを黙って見ている常子
星野が振り向く「あ~こんにちは!」
笑顔を作る常子「こんにちは!」と、歩み寄る
星野「お仕事の帰りですか?」
常子「はい、何されてるんですか?」
星野「ああ…この時期の水は冷たすぎるので
植物にはあまりよくないんです
だからこうして少しでも温めてから水をやろうと ハッ…ハッ…」
常子「えっ?」
星野「ハクション!」と、くしゃみをして桶の水があふれて服にかかる
常子「あっ、大丈夫ですか?」と、ハンカチでそれを拭く

星野の部屋
星野「常子さん、実は…」
常子「はい」
(沈黙)
星野「桜はバラ科の植物なんです」
常子「はい…」
星野「桜はサクラ科ではなく
バラ科モモ亜科スモモ属の落葉樹の総称なんです
ちなみにバラはバラ科バラ属で…」
常子「あああ、あの…あの…」
(少しの間)
星野「実は…今度大阪に行く事になりました」
常子「大阪ですか?」
星野「はい、大阪帝国大学に僕が敬愛する五十嵐教授が
いらっしゃるのですが、その方が僕の研究を買って下さって」
パッと明るい顔になる常子「すごいじゃないですか
おめでとうございます!」
星野「ええ…」
常子「で…いつ行かれるんですか?」
星野「すぐにでも来てほしいと」
常子「へえ~大阪かあ
大坂の面白いお話たくさん聞かせて下さいね」と、笑い
「で…いつ戻っていらっしゃるんです?」
うつむいて小さく首を振る星野「戻りません」
少し口を開いたまま、時が止まったような常子の顔
星野「五十嵐教授の研究室に勤める事になったんです…
だから…もう東京には…」
目を見開いたまま言葉がなかなか出てこない常子
「あ…すいません…突然の事…で驚いてしまって…」
星野「僕の方こそずっと常子さんには言わねばと思っていたのに
遅くなってしまい…」
常子「すぐにとおっしゃってましたが大阪にはいつごろ?」
星野「来月の半ばには引っ越しを」
「来月…」と、瞬きが多くなる常子
「そうですか…あまり時間はありませんね」と、努めて明るい声を出す
「宗吉さんや皆さんにもお伝えして送別会を開いてもらわないと…
みんなさみしがるだろうなあ」と、体を前後左右に揺らす
常子に茶を出す星野「常子さんは?」
目に少し涙を湛えた常子「私は…」
星野「僕はさみしくない!」
少し驚いたような常子
うつむく星野「そう…思うように…自分に言い聞かせたのですが…」
常子を見て「耐えられそうにありません」
涙が溢れそうな常子
居住まいを正す星野「常子さん、僕と…結婚して下さいませんか?」
驚いて口が開きかけるがなかなか声が出てこない常子「結…婚…」

(つづく)

オープニングはちょっとコミカルなシーンがあって
タイトルインするのが普通だけど今回は最悪のシーンだったね
山岸がダミ声で早乙女たちを恫喝して女性蔑視発言からのタイトルイン
入社試験の面接時からずっと鳥巣商事はこんな感じだが
このテーマを深く掘り下げるという事ではなくて
あくまでも「この時代」を写した描写という事なのかなあ?
山岸のクズっぷりは楽しみに見てたけど今回のはさすがに笑えない

鞠子美子富江の珍しい3ショットのシーン
今回、森田屋の面々では唯一登場の富江が
不自然という訳ではないのだが
(むしろ姉妹と富江の交流が描かれてていい感じ)
本日のスタジオパークのゲストが川栄李奈だという事を考えると
もしかしたら当初脚本では鞠子と美子の2人のシーンだったかな?
と、勘ぐってしまう…
(35話の照代のシーンは超不自然だったw)

君子は最悪のタイミングで美子を叩いちゃったね
「とと姉ちゃんだってさ…」と、これから常子の幸せについて語るところ
だったのに…
まあ脚本的にはそれを冷静な鞠子に代弁させる事で
常子の心にもより素直に染みるという事なんだろうか?
君子が娘を激しく叱るなんて珍しいね
自分の記憶では2話で子役鞠子を叱りつけて以来だ

下宿前のシーン
星野に挨拶する常子は口元から笑顔を作っている
人間は自然に笑顔になる時は目元からそうなるものだ
細かいところだがちゃんと使い分けてるんだなあと思った

星野のノートにあった「伝える」事とは大阪行きの事だったんだね
常子を想う気持ちを伝えるんだと思ってたw
まあ結局気持ちも伝えて(耐えられそうにありません)
プロポーズもしたのだが…
常子の返事というか結末はなんとなくわかるよね
常子はとと姉ちゃんだから…(美子の願いとは逆になるが)

桜は種類によって花言葉もいろいろあるようだが
「優れた美人」「純潔」「精神美」「淡泊」等とのこと
フランスの桜の花言葉「私を忘れないで」というのもあるようだ

バラの花言葉も色によっていろいろあるようだが
全般的に「愛」「美」とのこと




2016年6月7日火曜日

とと姉ちゃん(56)常子と美子の大ゲンカ~タイプ室の修羅場

寺で鞠子と美子を待っている常子(高畑充希)と君子(木村多江) 
「くし?」 
常子「ええ、よっちゃんが歯が欠けたお古のくしを使ってて
髪通りが悪そうなので新しいのを買ってあげようと思って…
あっ、あと鞠ちゃんが使ってる万年筆も
ペン先がゆがんじゃってて使いづらそうだから買ってあげようって」 
君子「アハハハ」 
寒そうに腕時計(2:30)を見る常子「…にしても遅い!」 
君子「まあまあそのうち来るわよ」 
「とと姉かか!ごめんごめんごめんごめん!」 
と、傘を差した鞠子(相楽樹)が走ってやって来る 
常子「鞠ちゃん遅い~」 
鞠子「ごめんね!…よっちゃんは?」 
君子「まだなのよ…お勉強会、長引いてるのかしら」 
「ねえどこか風の当たらない所行かない?」と、寒そうにする鞠子 
常子「でもここで待ち合わせしたから」 
鞠子「風邪ひいちゃうよ」 
常子「だけどはぐれたらよっちゃんかわいそうだし…」 

タイトル、主題歌イン 

青柳の家で滝子(大地真央)たちとお仕着せの縫い物をする美子(杉咲花)
置時計の針は3時を少し過ぎている

寺で寒そうに美子を待つ3人
常子「あ~あ~」

出来上がった着物を着て喜んでいる小僧たち
滝子「美子、ありがとうね、恩に着るよ」
美子「いえ」と、首を振り「あ…それじゃ失礼します」と慌てて青柳の家を出る

森田屋居間
帳簿を見てため息をつくまつ(秋野暢子)
「しかし…今年の売り上げはひどいもんだねえ」
照代(平岩紙)「おせちの注文も例年の半分でしたもんねえ」
宗吉(ピエール瀧)「大体よ、白米が買えなくなって
弁当屋がやってられっかってんだよ
玄米でかさ増しなんて…」
まつ「文句言ったってしかたないだろ
しばらくはふんばるしかないよ
ぜいたくは禁止、分かってんのかい?」と、宗吉の酒瓶を指で弾く
宗吉「分かったよ…」
長谷川(浜野謙太)「常子たちは今頃、美術展で楽しんでんだろうなあ」
富江(川栄李奈)「おいしいごちそうも食べるんだろうなあ」
宗吉「話には聞いてたけどよ、タイピストってやつは実入りがいいんだなあ
下手したら今のうちよりもうけてんじゃねえか?」
うらやましそうに2階を見上げる一同
「ブルブルブルブル…」と、首を激しく振ったまつ
「やめな、そんなみっともない事言うんじゃないよ」
宗吉「まあ…そうだな」
と、「ただいま帰りました!」と常子たちが戻ってくる
慌てた様子の常子「美子帰ってませんか?」
照代「一緒じゃなかったの?」
常子「来なかったんです」
(一同)「えっ?」
常子「私たちずっと待ってたんですけどいつまでたっても現れなくて」
鞠子「お友達の家での勉強会だって言ってたから行ってみたんですけど…」
長谷川「いなかったっていうのか」
鞠子「そもそも勉強会なんかやってないって」
(一同)「えっ?」
常子が「もう一度捜してきます」と、出ていき
宗吉が「俺たちも捜そう」と、表に出る

表はもう暗くなっている
一同が手分けして散らばろうとすると美子が走って戻ってくる
常子「美子」
息切れしている美子(ハアハア)「帰ってたのね(ハアハア)
お寺も百貨店も行ったらいなかったから」(ハアハア)
君子「あなたを探しに帰ってきたのよ、どこに行ってたの?」
鞠子「勉強会うそなんでしょ?」
美子「ごめんなさい…おばあ様のところで
小僧さんたちのお仕着せ縫ってました」
常子「どうしてうそをついたの?」
美子「言ったらとと姉ちゃん行くなって言うと思ったから…
いつも勉強しろって…」
常子「だからって…私たちずっと待ってたのよ」
美子「ごめんなさい…だけど終わらなかったんだもん
お駄賃頂くんだからちゃんとやらなきゃって」
常子「お駄賃のために家訓破ったの?
そんなにお駄賃が欲しいの?
おやつ買うとか無駄遣いしかしないのに」
常子を見ていた美子が視線を切り「もういい」と、家に入ろうとする
美子の腕を掴む常子「よくない、待ちなさい
家訓破っといていい訳ないでしょ」
美子「そんなに家訓って大事なの?
どうしても守らなきゃいけない事?」
常子「当たり前でしょ」
美子「どうして?ほかの家に家訓なんかないわ
うちだけおかしいわよ!家訓なんてやめればいいのに!」
動揺する常子(少し泣きそう)「何言ってるの?
家訓はととがずっと大切にしてきた事なのよ
私ととと約束したもの、ととの代わりに2人の事守るって、だから…」
美子「約束したのはとと姉ちゃんでしょ!
私は約束なんかしてないもん!」
君子の表情 鞠子の横顔
美子「私小さかったからととの事もう思い出せないの
だからととがって言われてもはっきり言ってピンと来ない
それに、もしととが生きてたとしても今でも家訓を続けてると思う?
あのころとうちの状況も違うし私ももう子どもじゃないんだから…」
常子「いい加減にしなさい!
家訓をやめるなんて絶対に認めませんからね」
「まあまあ常子…美子が無事だったんだからいいんじゃないの」
と、まつがとりなす
照代「さあ、寒いから中に入って」

物干しでひとり、怒りを鎮めようとしているような常子
君子が来て声をかける「常子…怖い顔して…」
常子「美子はずっと思ってたんでしょうか…ととの事あんなふうに…」
君子「しかたないわよ
ととが亡くなった時、美子はまだ5歳だったんだもの」
常子「それでも許せないんです
自分勝手に家族振り回して家訓までいらないなんて…」

階段に並んで座る鞠子と美子
鞠子「何であんな事…」
美子「だって…」
鞠子「よっちゃんの気持ちも分かるけど
そもそもうそをついたのが悪いんでしょ?
あんな言い方をして私も悲しかったわ
あれじゃあとと姉が怒るのも無理ないわよ
少し言い過ぎなんじゃない?」
美子「だって本当の事だもん」

昭和十五年正月
居間で新年の挨拶をしている森田屋と小橋家一同

<年が明けても常子と美子の間には溝ができたままでした
2人とも口を利く事も目を合わせる事もありません>

甘味屋
星野(坂口健太郎)「そうですか、美子さんがそんな事を…」
常子「悲しかったです
父が大切にしていた家訓なのにあんな言い方…
あ…すみません…新年早々お故郷から戻られたばかりで
こんな愚痴ばかり聞きたくないですよね」
星野「いえ、そんな事は…
僕を作物だと思って下さい」
常子「作物?」
星野「ええ、肥料をやるつもりで
どんどん言いたい事はおっしゃって下さい」
可笑しくて吹き出してしまう常子

お部屋でひとり編み物をしている美子が
壁に掛けられた額縁の家訓を見ている

鳥巣商事の廊下
多田(我妻三輪子)「じゃあ妹さんとはずっと口を利いてないの?」
常子「はい、あの子も意地っ張りで」
多田「あ~」
常子「でも昨日、星野さんとお話ししたらすっきりしました
不思議なんですよね、あの方とお話ししていると
悩んでる事がどうでもよくなってきてしまって
妹ともう一度、話してみようかなあって」
多田「やっぱり、小橋さんの恋のお相手は日曜日の殿方なのね」
常子「違います!星野さんとはそういう関係では…」
と、和服の女(青木さやか)が2人に声をかける
「あの…お尋ねしたいんですが
タイピストがいる浄書室はどちらかしら?」
常子が場所を教えて女が部屋へ入る
席を立つ早乙女(真野恵里菜)「何か御用でしょうか?」
女「諸橋道子さんという方はどなた?」
「私ですが」と、諸橋(野村麻純)が立ち上がる
諸橋を睨みつけた女が「この泥棒猫!」
と、道子の髪を掴んで引っ張りまわす
タイプ室に悲鳴が響く
早乙女「奥様落ち着いて下さい!ここは厳粛な仕事場です!」
部屋に入ってくる常子と多田
早乙女に抱えられ引き離されたた女(諸橋を見て)
「人の亭主寝取るのが厳粛な仕事場でやる事なの?
私は営業課の奥寺の妻です
この女が私の亭主寝取ったのよ!」
あまりの修羅場に驚いた表情の常子
課長の山岸(田口浩正)がやって来て再び暴れはじめた女を引き離す

書類が散らばった部屋を片付けているタイピストたち
「怪しいと思ったのよね諸橋さんと奥寺さん」
「私も、前に一度給湯室で仲よさそうに話してたの見た事あるもの」
「そういえば安藤さんとも仲よさそうにしてたわ」
「まあ諸橋さんならありえそうだわ」
早乙女「仕事中です!口ではなく手を動かしなさい」
(一同)「はい…」
ドアが開き諸橋が入ってくる
早乙女「諸橋さん、課長は何と?」
諸橋「今日付けで退社する事になりました」
息をのむ早乙女
諸橋「長い間お世話になりました」と、頭を下げる
常子「本当にそれでいいんですか?
今日付けで退社だなんてそんな急に…
私が課長に言って…」
早乙女「あなたもクビになるつもり?」
部屋を出ていく諸橋
早乙女「私たちの代わりはいくらでもいるの
会社は私たちをクビにする事なんて何とも思ってないのよ」
寂しそうな表情の常子

(つづく)

ああ、美子の櫛と鞠子の万年筆は常子がお出掛け先を百貨店にした
理由だったんだね
昨日のレビューは深読みし過ぎてたw
常子はあんなに妹の事を思ってるのに今回の展開は可哀想だった

すき焼きエピソードで森田屋の面々が
2階をうらやましそうに見るシーンがあって
自分はただのお笑いエピだと思って省略したんだけど
今回も似たようなのがあった
何か今後の展開の伏線だろうか?

大ゲンカのシーンは常子がお駄賃欲しいから?
無駄遣いしかしないのにって言って美子がキレちゃったね
美子は青柳の小僧たちと交流があるし
滝子が自分の着物をお仕着せのために出したのも知ってるし
清の話を聞いてお仕着せのために自分も何かしたいと思ったのに
常子にあんなふうに言われて悲しかったんだろうね
常子は自身のアイデンティティと言ってもいい
竹蔵との約束や、そのために守ろうとしている家訓を否定されて
ショックだったんだろう…
それにしてもケンカ長すぎるだろw
あの狭い部屋でギスギスしてたら君子と鞠子も大変だろうなあ…

多田の「あ~」は、常子が入社直後に主張を通して早乙女たちと
やりあっていた頃の事なんだろうね(常子も確かに意地っ張り)

諸橋の、前回の恋だって山ほどする…はこういう事だったのかw
でも不倫はまずいよねえ
結束は固そうに見えていたタイピストたちだが
早速諸橋は陰口たたかれてたw
まあ女の世界では不倫は絶対悪なのかもしれない


2016年6月6日月曜日

とと姉ちゃん(55)家訓のお出掛けを大事にする常子とすれ違う妹たち…

昭和十四年十一月 

<タイピストとして収入を得るようになって2年が過ぎ
常子は名実ともに小橋家の大黒柱になっていました> 

朝、物干しに布団を干して大きく伸びをする常子(高畑充希) 
鞠子(相楽樹)は畳をほうきで掃いている 
鏡台の前に座り櫛で髪をすく美子(杉咲花)「あっ、痛っ…もう毎日毎日…」
と、髪に引っかかったボロボロに歯の欠けた櫛を見る 
常子が後ろから声をかける「そろそろ新しいの買わないとね」 
美子「ううん大丈夫、まだまだ使える」 
常子「そう」 
笑顔で鏡に向かって髪をすく美子 

<そして家訓も守っていたのですが…> 

タイトル、主題歌イン 

森田屋居間で朝食を食べる一同
みそ汁をすすった常子があくびをする
長谷川(浜野謙太)「ゆっくり寝てりゃいいんだよ
会社までまだまだだろ?俺だったら確実に布団の中だね」
常子「家族そろって朝ごはんを食べるのは家訓ですから」
と、誇らしげに語る
常子を見て微笑み少しだけ目が揺れる鞠子と
目を閉じて常子から視線を落とす美子
富江(川栄李奈)「ゆうべも遅くまでお仕事してたんでしょ?」
常子「うん…社員の方が徴兵で減ってしまって
また資料整理頼まれちゃって」
常子が美子に試験も近いから滝子のところに寄り道しないで
勉強するようにと諭す
美子「分かってる」
常子「好きな縫い物もいいけど、ちゃあんと勉強頑張ってよ」
と、大きな口を開けてごはんを食べる
美子「うん、分かってる…」
微妙な表情の君子(木村多江)

<このころ日本では国家総動員や価格等統制令など
国による統制が始まり国民は質素な生活を求められていました>

浄書室で輪になって昼食のタイピストたち
皆の弁当には梅干しがひとつあるだけだが
諸橋のものにはサケの切り身から煮物に卵焼きまで入っている
常子「お~豪華」
多田(我妻三輪子)「日の丸じゃないんですか」
諸橋(野村麻純)「時代がどうあれ私はこうしたいの
パーマネントだってやめたくないわ」
多田「でも周りがいろいろ言いません?
ぜいたくはやめましょうって」
諸橋「言わせておけばいいの
私たちは世の女性憧れの職業婦人なのよ
私はこれからもたくさん稼いで思う存分おしゃれをして
恋だって山ほどするつもり
じゃなきゃ何のために働いてるか分からないじゃない
ねえ?早乙女さん」
早乙女(真野恵里菜)「働く理由は人それぞれでは?」
諸橋「…ですよね」と、常子たちに「あなたたちは?」
多田「私は5人の弟たちを食べさせなきゃいけないので」
常子「私も同じです、家族を支えるためにこの仕事を」
諸橋「それでよくそんな頑張れるわね…嫌にならないの?」
常子「なりませんよ、だってそれが私の役目ですから」

夜、小橋家のお部屋
洗濯物を畳んでいる4人
美子「う~ん別にどこでもいいわ」
常子「何?その言い方
みんなでお出掛けするんだからみんなで話し合うべきでしょ」
美子「でも…」
鞠子「あ~なげやりに言ったんじゃなくて
とと姉のお薦めだったらどこでもいいって事じゃない?」
(少しの間)
美子「うん…そう」
常子「ふ~ん…そう
では、四越百貨店の東亜美術展に行きましょう」
美子「うん、それでいい」
常子「それ で ?」
鞠子(美子に)「それ が いいんでしょ?」
美子(常子に)「うん、そう」
常子「ふ~ん、分かった」
常子が君子に来週の日曜日でいいかと訊ねるが
鞠子「あ~来週は大学の集まりが…」
じゃあ再来週の日曜日に…と言う常子に
鞠子「あ~…国文学の小論文もあって勉強したいから午後からだったら」
常子「ん~分かった、では24日の1時で」
鞠子「うん」 君子「いいわ」
常子「うん…よっちゃんは?」
美子「いいわ」
常子「うん、じゃあ決まり!」と、嬉しそうに鼻歌を歌う
そんな常子に目をやる美子

甘味屋の常子と星野(坂口健太郎)
星野のノートの今週の出来事の最後の行には
(今日こそ常子さんに告げる)
常子がお出掛けで美術展に行くと話すのだが
星野「常子さんはなぜそんなに家訓を大切にされているんです?」
常子「なぜ…?あ~そう改めて聞かれると…
亡くなった父が大切にしていたものでしたし、約束したので」
星野「約束?」
常子「はい、妹たちを守ると…
それで私も父が私たちにしてくれたようにしなきゃって
だから自然と家訓は必ず守るべきものなんだと」
星野「常子さんにとってお父様の存在はとても大きいんですね
すてきな方だったんだろうなあ…」
常子「何だか少し星野さんに似ている気がします
名前が同じってだけじゃなくてこう…眼鏡の感じとか優しい口調も
だからなのかな、星野さんが身近に感じるのは」
星野「え…」
常子「あ…アハハ」と、微妙に笑い合う2人

大学の講義室
鞠子「朗読会ですか?」
木戸(白洲迅)「そう、三好達治の詩を朗読する集いなんだ
急きょ決まってね、小橋君も来るだろ?」
鞠子「あ~…来週の日曜日はその…」
木戸「おいでよ、きっといい刺激になるよ」
「はい」と、笑顔でうなずく鞠子

青柳家
美子「来週の日曜ですか?」
滝子(大地真央)「ああ、お仕着せは毎年女中総出で縫っているんだけど
国家総動員法のおかげで人手が足りなくてねえ
年の瀬も迫ってるっていうのに…」
「これを小僧さんたちの人数分…」と布を手に取る美子
隈井(片岡鶴太郎)「ええ、小僧たちにとっちゃ喜ばしい事でしてねえ
盆暮れの里帰りは何よりの楽しみですから」
美子「あれ?この布地…」と、別の布地を見る
滝子「ああ、私の着物だよ
本当はいいものを買って着せてあげられればいいんだけれど
今は布地も簡単に手に入らないだろ」
清(大野拓朗)「下手な布地でやる訳にはいかないからね
お仕着せの出来不出来は店の沽券に関わるし
きちんといい身なりで里に帰してやって
うちがいい奉公先だと親御さん安心させないと」
美子「へえ~」
滝子「どうだい?手伝ってくれないかい?」
美子「来週の日曜…」と、目が上を向く
滝子「先約があったかい?」
美子「…いえ平気です、やります」
滝子「はぁ~そうかい、助かるよ
その分、礼はさせてもらうからね」
うなずく美子

一家のお部屋
勉強している鞠子の万年筆のインクが出ない
「あ~もう…割れちゃったのかなあ」
それを後ろから気にするように見ている常子
美子「とと姉ちゃん」
常子「うん?」
美子「お出掛けの日なんだけど…」
常子「うん」
美子「ちょっと予定が入ってしまって…」
常子「どうして?前もって言ってあったじゃない
そんなに大事な事なの?」
美子「うん、知恵子ちゃんのおうちでお勉強会しようってなっちゃって」
常子「何もお出掛けの日に入れなくたって…」
美子「ごめんなさい…なんとか早く終わらせるように頑張るけど
1時までには帰れないかも」
君子「まあ、お勉強会なんだからしかたないんじゃない」
常子「はい」と、困った顔になる
常子「では駅前のお寺に集合ね、私とかかと鞠ちゃんは…」
鞠子「ごめん」
常子「うん?」
鞠子「私もお寺でいい?」
常子「どうして?」
鞠子「実は私も同好会の集まりが」
常子「同好会?」
鞠子「文学同好会…
いろんな大学の方が集まって文学について語ったりするの」
常子「そんなの入ってるなんて聞いてないわ」
君子「あら知らなかったの?」
常子「かか知ってたんですか?」
君子「ええ」
美子「私も知ってたわよ」
常子「え~…」
鞠子(気まずそうに)「とと姉お仕事大変そうだから話す機会なくて…ごめん」
「ん~…」と、眉間にしわが寄る常子「では、2時に、お寺に、集合ね」
と、美子と鞠子を見る
(3人)「はい」
常子(ちょっと不機嫌に)「はい」

<こうして迎えたお出掛けの日>

君子「なんだか雨降りそうね、傘持って行きましょうか」
常子「そうですね」と、家を出る2人

同好会の集まり
時刻は1時20分
鞠子「あっ、すいません私そろそろ」
木戸「待って、次の詩がどうしても君に聞かせたいやつなんだ
あと少しだけいいだろ?」
可愛い笑顔でうなずく鞠子「はい」

青柳家で滝子たちと縫い物をしている美子
置時計の時刻は1時55分

傘を差してお寺の境内を歩いてくる常子と君子
手を合わせお寺の軒下で鞠子たちを待つ

<年の瀬も迫ったその日は小雨まじりのとても冷たい風が吹いていました>

風が吹き寒さに首をすくめる2人
常子「お~」

(つづく)

今回は竹蔵との約束を守り続けていく事に迷いのない常子と
成長していく鞠子と美子の心のすれ違いみたいなものが描かれた

朝食でバカみたいに大口を開けて目を横に向けてごはんを口に入れるのも
お出掛けの予定を決めてひとり呑気に鼻歌を歌うのも
妹たちの微妙な心の変化に気付いていないという描写なのだろう

美子の欠けた櫛と鞠子のインクの出にくい万年筆は
物が不足している時代だという描写なのだろうが
それだけではないような気がする
常子との関係においてのそれぞれ何かのメタファーなのではないかな?
欠けた歯が何なのかはハッキリとはわからないけど…
いや違うか、櫛や万年筆など目に見えるものには気付くけど
心の変化といった目に見えないものには気付かないという
対比の演出なのかもしれない

鞠子の同好会の件を常子だけが知らなかったのは
現代の我々の家庭で父親だけが疎外されている感じだろうか
君子が勉強会なら仕方ないと言ったのも
美子の嘘に気付いた上で厳しい父親から末娘を庇ったのかもしれないね

美子の嘘は常子に青柳で縫い物するより勉強しろと
くぎを刺されたからだろうが
お仕着せの手伝いは立派な理由だろう
それに比べて鞠子ときたら…
絶対不純なもの(色恋)があるように思うw
鞠子、おさげ髪だった頃を思い出すんだ!

しかしいつもながら鞠子(相楽樹)の目の演技は微妙で味わい深い