2016年6月11日土曜日

とと姉ちゃん(60)星野との別離~僕の好きな常子さんであれば…

お寺の山門からの雑木林を歩く常子(高畑充希)と星野(坂口健太郎) 
「本当のところ大阪に住むのが少し怖いんです」 
常子「怖い?」 
星野「大阪の人は言葉が荒いので
いつも怒られているような気がして…一人だと心細くて」 
常子「フフッ」 
星野「また変な事言いました?」 
常子「いや…まさかそれが理由で結婚したかったんですか?」 
星野「いや違います!違います!僕は真剣に常子さんの事を…」 
可笑しそうに笑っている常子「安心しました」 
星野「…僕も安心しました…やっと常子さんが笑ってくれた」 
星野を見る常子、目を落とし考えを巡らせる
「あの…先ほど心のどこかで断られる気がしていた…って…
どうしてそう思われたんですか?」 
星野「恐らく…僕が思いを寄せた常子さんはそうされると思ったからです」 
常子の足が止まる 
振り向いて常子を見つめ、話を続ける星野「自分の事は後回しにして
ご家族のために全力で走り回る常子さんだから恋に落ちたんです」
常子の瞳が揺れる
星野「矛盾した話ですがつまり…
僕を選ぶ常子さんは僕の好きな常子さんではない
僕の好きな常子さんであれば結婚よりもご家族を選ぶ…
そんな気がしていました」と、少しの笑顔でうつむく
言葉は出てこない常子
星野「この辺でお別れしましょう…
遠く離れても常子さんと皆さんの幸せをお祈りしています」
(少しの間)
常子「ありがとうございます」
微笑んだ星野が唇を噛みしめるように「さようなら」
そして笑って「お元気で」
ぎこちなく微笑んだ常子「さようなら」
一礼してすれ違っていく星野
常子もゆっくりと歩き出す
少し歩いたところで立ち止まる常子
寂しそうな顔で後ろを振り返る
山門にはもう星野の姿はない、風の音が聞こえるだけだ

常子が帰宅すると君子(木村多江)鞠子(相楽樹)
美子(杉咲花)の3人が厨房にいる
家族を見つめる常子
君子(驚いたように)「常子、お帰り」
常子「ただいま帰りました」
鞠子「どうしたの?そんな所に突っ立って」
常子「うん?」
鞠子「まだ具合でも悪いの?」
首を振る常子「ううんううん平気平気、ごめんね心配かけて」
と、厨房に入る
美子「ううん、心配するのは当たり前、謝らなくていい」
常子「そうね」と、笑って首を傾ける
鞠子「あれ?」
美子「何?」
鞠子「普通に話してるけどけんかは終わったの?」
美子「そうよ」
常子「このマフラーもね、よっちゃんが編んでくれたのよ、いいでしょ」
鞠子「へえ~…えっ、私には?」
美子「う~ん…時間があったらね」
常子「ちょっとカバン置いてきますね」と、2階へ
鞠子「時間あるでしょ、よっちゃん」
美子「忙しいの、いつも」
鞠子「うそだあ、勉強もしないくせに」
美子「本当、してます」
常子の行った方を気になるように見ている君子

駅、発車のベルが鳴っている
学生服姿の仲間たちに見送られ汽車に乗り込む星野
汽車が動き出す
出征する者もいるのだろう、「万歳!万歳!」の大合唱だ
走る汽車の中、窓際に座った星野の胸に去来する常子との思い出
常子の言葉「いい夫婦になれるかもしれないですね」
向かい席の小さな男の子連れの3人家族に目をやる星野
窓の外に目を戻した星野が何かを見つける
家族連れに「すみません」と断り、窓を開ける星野
河原に両手で持ったカバンを前に提げぽつんと立っている常子の姿
星野の方を見ている
「常子さん!」と叫び、帽子を手に持って振る星野「常子さ~ん!」
橋を渡る汽車を見送る常子
星野「常子さん!常子さん!常子さん!」
口元に僅かに笑みをたたえた常子が星野に向かって頭を下げる
汽笛が響く
常子の方をいつまでも見ている星野
ゆっくりと顔を上げた常子、汽車が去った方を見る

帰宅した常子「ただいま帰りました!」
一同の「お帰り!」の声が聞こえる
厨房の前を素通りして2階に向かう常子
一同は星野の汽車がどのあたりを通過しているかと話している
常子の様子が気になるように階段下から見上げる君子

お部屋に入った常子が仏壇の前に座る
君子が追いかけてくる「常子、星野さんと何があったの?」
仏壇に目を戻す常子
隣に座る君子「常子」
前を見たままで常子「結婚を申し込まれました」
君子「結婚?」
常子「でも…お断りしました」
君子「どうしてそんな大事な事今まで…
前にも言ったわよね、あなたはあなたのしたいように…」
君子に振り向いてから少し視線をはずす常子
「私は…まだここにいたいんです」
そして少し君子に体を向け「鞠ちゃんがこれからどんな小説を書くのか
よっちゃんがどんな大人になっていくのか
もう少し見守っていたいんです
とととの約束は関係ありません
はっきり分かったんです
私は今…美子とも鞠子ともかかとも離れたくありません」
君子「それが…あなたの幸せ?」
「はい」と、うなずいた常子が
「でも…やっぱり星野さんとのお別れはつらいものですね」と泣き声になる
常子を抱きしめる君子
「こうしてれば誰にも聞こえないわ」
とたんに泣き顔になり君子にすがりつく常子
母の胸の中で泣き続ける

(つづく)

僕の好きな常子さんであれば結婚より家族を選ぶはずだと言われて
常子が言葉を失っているように見えたのだが
これは今のあるがままの常子を愛してくれる男性が現れたとして
その誰とも常子は結ばれない事(星野の言う矛盾)を常子が
悟ったからなのだろうか?
だとしたら常子可哀想すぎる…

河原のシーン
星野も向かい席の家族連れみたいになれたかもしれないのにね…
それにしても星野がこっちの窓側に座ってて良かったわ~w
常子もよく星野を発見した
常子が頭を下げたのはいろいろ理由があるのだろう
星野には世話になったしプロポーズも断っちゃったし
顔を見るのが辛かったとか泣いちゃうからとか…

ラストで「とととの約束は関係ありません、はっきり分かったんです」
と語る常子だがその心は?
上にも書いたとと姉ちゃんの宿命(星野の言う矛盾)
美子にもらったマフラーの温もりと感動
その他にも滝子や早乙女の言葉も影響しているのかもしれないが
竹蔵のせい(誰かのせい)にはしたくないというのもあるのだろうか?
いちばん素直に解釈すれば父との約束の呪縛から解き放たれ
大人になった自分自身の願い、幸せがそこにある事に主人公が気付いた…
というところなのかなあ?


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