2016年9月10日土曜日

とと姉ちゃん(138)社員を集めそれぞれの商品試験に対する思いを確認する常子

「一体どうしたんです?」と席に着く常子(高畑充希) 
腕組みをしている花山(唐沢寿明)が松永を見て
「私に話した事を常子さんたちの前で言いなさい」 
松永「はい…テスターの情報を週刊誌に漏らしたのは俺です」 
常子「松永君が?」 
美子(杉咲花)「どうして?」 
松永「金が必要だったんです…毎月毎月月賦で欲しいものを買っていたら
首が回らなくなってしまって…」 
水田(伊藤淳史)「…だから言ったじゃないか」 
常子「それで…誰に頼まれてテスターの情報を?」 
松永「それが…どこの誰かは分からないんです…
ただ協力すれば5万円やると言われて…
そいつらは俺にテスターの情報を持ち出すように言ってきました
それを基にテスターに接触し恐らく金を使って
あなたの暮しの商品試験は嘘だと証言させたんだと思います」
水田「その男まさかアカバネの…?」
美子「本当に何者か分からないんですか?」
松永「申し訳ありません……あの…常子さん」
常子「はい」
松永「僕…会社辞めます」
常子「松永君…」
松永「もう耐えられないんです…
僕は編集者になりたくてこの会社に入りました
それなのに仕事といったら電球がどれだけつくか見張ったり
ひたすら鉛筆削ったり繰り返し繰り返し飯を炊いたり…
もううんざりなんですよ
今日限りで辞めさせて下さい」(と頭を下げる)
花山「それがいい、クビにしないでやるのがせめてもだ」
常子「花山さん」
花山「止めても仕方あるまい」(と席を立つ)
常子「松永君」
立ち上がる松永「本当にお世話になりました」(と頭を下げる)
常子「…」

夜、縁側から外を見ている水田
鞠子(相楽樹)が隣に座り「もうお休みになったらいかがです?」
水田「うん…」
鞠子「松永さんの事気にしてらっしゃるの?」
水田「ずっと前から様子がおかしいと気付いてたんだ…
なのに止める事ができなかったよ」
鞠子「正平さんのせいじゃないわ」
水田「松永君が辞めるって言った時の常子さんの顔が忘れられなくて…
すごく悲しそうな顔してた
そりゃそうだよな…一緒に働いてきた社員に裏切られてあんな記事が出て…
社員を大切にしてきた常子さんだからね
自分を責めたりしてなきゃいいんだけど…」
常子を心配しているような鞠子

布団の中で常子が目を開けている
隣の布団から美子「眠れないの?」
常子が美子を見る
美子「そうよね…」
常子「独り善がりだったのかな…(と体を起こし)今日ね国実さんに
あなたの暮しは社会的に大きな影響力がある会社だって言われたわ
(美子も体を起こす)
私たちの雑誌の影響で物が売れたり売れなくなったりする
よく考えたらそれって恐ろしい事よね」
美子「恐ろしい事?」
常子「大きな責任を伴うって事よ
だからそれだけ一つ一つの企画に命を懸けて臨まなければならない
だけど…それを強いられている社員は苦しかったのかなあって…
私たちは終戦の日から一緒になって雑誌を作ってきたじゃない?
毎日の暮らしを取り戻すために試行錯誤して
それでやっとたどりついたのが商品試験だった」
美子「うん」
常子「前にも言ったように商品試験は今の時代に私たちがやるべき事だと
私は自信を持ってるわ
それを社員のみんなも理解してくれるものだとばかり…
だけど私は自分の意見を押しつけているだけだったのかもしれない」

会議用の長机に集まっている一同
常子「みんな、お仕事を中断させてしまってごめんなさい
でもどうしても聞いておきたい事があるんです
それはみんなにとってのあなたの暮しを作る事の意味です…
今や物があふれて豊かな時代になりつつあります
景気もいいし職業の選択肢だって多くある
そんな中でみんなには編集者として我が社を選んでもらったのに
商品試験のために他の雑誌ではやらなくていいような仕事まで
やらせてしまっています…
もしこの中に連日商品を試験するためだけに編集者になったのではない
という方がいらっしゃるなら正直に言って頂けませんか
(一同がそれぞれ顔を見合わせる)
心配しないで下さい、辞めてもらうとかではなくて
担当業務を見直そうかと考えています」
緑(悠木千帆)「………あの…」
常子「はい緑さん」
緑「私はその…」
常子「いいんですよ、率直なご意見をお願いします
意味のない事と思いながらお仕事をするのはつらい事でしょうから」
緑「いいえそうじゃありません…何て言えばいいんでしょう…
私はとてもやりがいを感じています」
扇田「俺もです、何たって俺たちの仕事一つ一つで
物を買う人の気持ちを左右するんですから」
寿美子(趣里)「よそじゃなかなかできない仕事だと思います」
木立「責任ある仕事に身が引き締まります」
島倉「この仕事に誇りを感じています」
本木「私も誇りを持ってまっせ」
笑い声が起こり「俺もです」「私もです」と次々と声が上がる
ほっとしたのか少し涙ぐんでいるように笑う常子「みんなありがとう」
緑「お話ってそれですか?」
常子「ええ」
緑「ああ…ひょっとして商品試験を中止するのかと思ってもう緊張しちゃったわぁ」
(一同が笑う)
常子「それはないです」
扇田「そんな訳ありませんよ、まだまだ洗濯機の商品試験もね
始まったばっかりですから」
寿美子「これからが本番ですね」
扇田「そう、これからが本番です!」
常子が笑顔でうなずく
美子が安心したように常子を見ている
花山も微笑んでうなずく

美子「皆さん準備はいいですか?」
(一同)「はい」
「では始め」と美子がストップウォッチを押す
洗濯機を試験する一同

<洗濯機の商品試験は汚れを落とす力と
洗ったあとの布地の傷み具合の確認を中心に行われ
試行錯誤を重ねました
更にそれぞれの機種の絞り器や操作つまみの使い勝手なども
さまざまな観点からチェックしていきます
ベランダや庭先での使用を想定して屋外に洗濯機を設置して
耐久性のテストも念入りに行われました>

昭和三十三年一月

<試験を始めて半年余りがたった頃…>

新聞を読んでいる宗吉(ピエール瀧)と照代(平岩紙)
宗吉「何だこの記事…」
照代「常子ちゃんが読んだら…」
宗吉「こりゃ相当落ち込むなあ」
照代「そうですねぇ…」
と、「こんにちは」と常子と扇田が店に入ってくる
照代「あら常子ちゃん」
慌てて新聞を畳んで背中に隠す宗吉
常子「えっ…何か隠しました?」
笑顔の宗吉「い~や…それより何だよ?」
常子「あっ、あの…最新号をお届けに上がりました」(と照代に雑誌を渡す)
照代「ありがとう」
宗吉「おぉそうか…あ~…用が済んだら早く帰れ、忙しいんだろ?」
常子「はあ…」
そこに厨房から顔を出した南(上杉柊平)「大将、肉を焦がしちゃいました」
宗吉がため息をついて「バカ野郎何べん言ったら分かるんだよお前は~」
と新聞紙で南の頭をたたく
常子「宗吉さん…」
宗吉「え?」
常子「その新聞…」
新聞を隠し笑ってごまかそうとする宗吉夫婦
常子「見せて頂いていいですか?」

新聞の記事を読む常子「雑誌あなたの暮しに迫る」
続きを読む扇田「あなたの暮し出版は読者テスターを脅迫し
商品試験データを偽装しているという記事が週刊誌に掲載された
当紙でもあなたの暮しに疑問を投げかけるコラムを掲載し反響を呼んだ」
常子「そこであなたの暮し出版が行っている商品試験に関して
電化製品の販売店およそ500店を対象にアンケート調査した結果を
ここに掲載する
商品試験のやり方に疑問があるという声は47.2%という結果だった」
記事の数字を凝視する常子

(つづく)

松永は初登場の時から少し生意気だったのだが
だいたいこの手のキャラは見所があって
大きく成長するパターンかと思っていたが逆だったw
金に詰まって会社を裏切り仕事の内容にまで不満を持っていたとは…
常子が叱って改心させて松永が心を入れ替え仲間もそれを温かく迎える…
というような甘ったるい展開にならなくて本当によかった
その手の非現実な性善説に依った仲良しドラマは大嫌いだ

でも常子は甘ちゃんだから自分を責めたみたいだ
「独り善がりだったのかな…」と不安になり
社員を集めて商品試験に対する思いを確認するのだが
残ったやつらは熱血漢ぞろい…
まあこれはドラマだから本当にそうなのだろうが
現実なら場の空気を読んで仕方なく合わせる人間もいるだろうし
そもそも社員全員が理想を共有でき同じ方向を向く事などありえないだろう
だからああいうシーンを見ると自分は逆にちょっと醒めてしまう
もうちょっとテンションの低いキャラが2~3人いてもいいと思うんだ…うん…

珍しく南が宗吉に叱られていた
新聞を隠すコントをやるために無理やり作ったセリフかもしれないが…
それでも南が長谷川と同じようにバカ呼ばわりされてちょっと嬉しかった
今まであまりにも南を可愛がり持ち上げすぎる描写ばかりだったから

2016年9月9日金曜日

とと姉ちゃん(137)商品試験の結果は偽装されているという記事が週刊誌に出て…

あなたの暮し出版 商品試験場 
洗濯機の蓋を開け中をのぞき込む水田(伊藤淳史)
「これが三種の神器の一つ、洗濯機か~」 
寿美子(趣里)「ボタンひとつで洗濯ができるなんて信じられません」 
木立「まさに夢の道具ですね」 
緑(悠木千帆)「これがあればどれだけ家事が楽になるか」 
部屋に常子(高畑充希)と花山(唐沢寿明)がやってくる 
花山「では試験開始といくか、常子さん」 
「はい」とうなずく常子「え~皆さん、今日からまた新たな戦いが始まります
長期間になりますが心して頑張っていきましょう」 
(一同)「はい!」 
常子「はい、それでは皆さん、手元にある取扱説明書をよく確認して下さい」
と、「大変です!大変です大変です!」と扇田が駆け込んでくる
「これ見て下さい、今日発売の週刊誌なんですが…このページ見て下さい!」
扇田が広げたページには『あなたの暮しは嘘だらけ』の見出し
週刊誌を手に取る常子「どうしてこんな記事が…」
花山「こんな週刊誌の書く事など気にするな」
扇田「いやしかし…商品試験の結果が偽装されているっていう
テスターの証言まで載っています」
花山「どうせでっちあげ記事だ、最近増えてきたこの手の週刊誌ってやつは
もともと信憑性に欠けた記事が多いので大衆も信用していない
部数も少ないし取るに足らんよ」
水田「つまり影響力はほとんどないという事ですか?」
花山「気にするだけ時間の無駄という事だ」(と部屋を出ていく)
寿美子「花山さんにああおっしゃって頂くと安心しますね」
緑「そうね」
週刊誌を手に記事を食い入るように見つめる常子

編集長室で執筆する花山
常子と水田がやってくる
常子「お仕事中すみません
週刊誌の記事について気になったので調べてみたんですが…」
水田「記事の中で証言しているテスターの人は
実在している可能性が高いんです」
花山「どういう事だ?」
常子「記事に出てくるテスターは中野区のY・Sさん…というように
皆イニシャルで出ています
念のためうちの名簿と照らし合わせてみたんですが全て一致したんです」
水田「つまりテスターの情報が週刊誌に漏れているのかもしれません」
常子「週刊誌がテスターに接触して虚偽の証言をさせているんだとしたら…」
花山「そんなむなしい詮索はやめなさい」
常子「しかし…」
花山「これを機に気を取り直してやるべき仕事を変わらずやればいいんだ
我々の本分を忘れてはならない」
「分かりました」と返事をするが晴れない表情の常子(水田も)


小売電器店で呼び込みをしている赤羽根(古田新太)
「いらっしゃいませ!いらっしゃいませ!ご来店の皆様
こちらが我がアカバネから発売中の最新型の洗濯機でございます!
どうぞ近くに寄ってご覧下さいませ
いかかですか?舶来品にも負けないモダンなスタイル」

電器店倉庫
赤羽根「何だ?報告っていうのは」
酒井(矢野聖人)「はい、例の記事が載った週刊誌がいよいよ発売になりました」
赤羽根「そうか…これで少しでも向こうの読者が離れてくれればな」
村山(野間口徹)「しかし、今や40万部の売り上げを誇るあなたの暮しです
カストリ雑誌まがいの週刊誌に載ったところで果たして…」
赤羽根「いいか?小さな一歩でも踏み出す事が大切なんだ
同じように何度も繰り返していけばいずれ大きな一歩になる」
村山「…はい」
赤羽根「とにかくあの新しい洗濯機はやつらにとやかく言わせん
時間と金をかけたアカバネの金の卵だからな」

商品試験場(洗濯機は場所をとるためか屋外でもやっている)
脱水ローラーを手で回す木立「さすがに何時間も同じ事ばっかやってると
こたえるなあ(と隣の松永を見る)松永、手が止まってるぞ、おい!」
振り向く松永「えっ?」
木立「何ぼんやりしてんだよ、手が止まってるぞ」
松永「はいはい、言われたとおり絞りますよ」
それを後ろから水田が見ている

人がいなくなった試験場で水田が洗濯機を覗いている
何かに気付きかけているような表情の水田
そこに常子と美子がやってくる
美子(杉咲花)「水田さん?」
水田「ああ…花山さん顔を見せませんでしたね」
常子「あ…まだ表紙を描いているんじゃないかしら
今日は一日中バタバタしていたから」
美子「あの週刊誌の記事だけど、明らかに私たちに敵意があるわよね
あれもアカバネの仕業なのかな」
水田「あ…それはありえませんよ
いくらアカバネでもテスターの情報まではつかめませんから」
美子「じゃあ一体誰が何の目的で…」
水田「それは…」
常子「もう忘れましょう…真相がどうであれ花山さんがおっしゃっていたように
世間への影響は少なそうだし」
美子「そうね」

大東京新聞
国実(石丸幹二)「デスク、この週刊誌読みました?」
「あ~どうせガセだろ?」
国実「いや、この週刊誌の記者に裏を取ったんですが
この記事に載ってるのはあなたの暮しの本物のテスターで間違いありません」
「そうなのか」
国実「ええ…この件で田村先生にコラムを書かせてみませんか」
「あの辛口の評論家か…面白そうだな」
国実「きっと世間が騒ぎ出しますよ」

小橋家の小さな庭
タライと洗濯板で常子が洗濯をしている
「ご苦労さま」と君子(木村多江)がやってくる「その辺にしてもう会社に行って」
常子「いえ、今朝はまだ時間がありますから」
君子「いいのよ、洗濯は私の仕事なんだから」
常子「いつもすみません、かかにこんな力仕事させてしまって」
君子「何言ってるの、体が動くうちは自分の事は自分でしないと
…さあ、交代しましょ」
常子「いえ、もう少しだけお手伝いさせて下さい」(と笑って洗濯を続ける)

試験場(屋内)を歩く常子と美子
美子「これまでの苦労は何だったのってくらい簡単に洗濯ができちゃうわね」
常子「ねえ(とそのまま屋外の試験場に出る)革命的よね
毎日何時間もかかっていた洗濯が1時間かからないなんて」
美子「うん、洗濯機にお神酒あげたくなっちゃうね」
常子「フフフフフ、そうね」
と、「常子さん、至急ご報告したい事が」と水田がやってくる
常子「どうかしました?」
「これ見て下さい」と水田が新聞を台の上に置く
それに書かれている記事を読む美子「あなたの暮しへの疑惑…?」
水田「大東京新聞があの週刊誌に目をつけ記事にしたようなんです」
美子「評論家の田村先生がコラムを寄稿してる」
「あっ、ここ」と水田が記事の一部を指す
常子「果たして試験が本当に公正公平に行われているかどうか
十分に検証されるべきではないか…」
水田「週刊誌だからそれほどの騒ぎにはなりませんでしたけど
こんな全国紙にとりあげられたら…」
記事を見つめる常子

アカバネ社長室
新聞を手に赤羽根「大東京新聞が食いつくとはうれしい誤算だな」
酒井「はい」
赤羽根「さすがにこれはこたえてるだろう
この手の雑誌は信頼を失えば終わりだからな」
酒井「不憫ですねえ、まさか自分のところの社員に背かれてるとは知らずに」
赤羽根「金を積めば大抵の人間は転ぶもんだ」
酒井「これで洗濯機の商品試験は中止で間違いないでしょう」
赤羽根「そうか…しばし相手の出方をうかがおう」

編集部
受話器を持つ常子「はい…ですからあの週刊誌の記事は事実無根です
(他の電話機が鳴っている)ご安心下さい…はい…はい失礼します…はい」
と受話器を置いた電話機もすぐに鳴る「はい、あなたの暮し出版です…」
緑や島倉、他の社員たちも電話の対応に追われている
現れた花山「何の騒ぎだ?」
水田「新聞記事が出てから問い合わせの電話が殺到しています
週刊誌と全国紙では信用度がまるで違います
このままでは売り上げにも影響があるかと…
何か手を打つべきではないでしょうか」
花山「そんな事で離れていく読者はそれまでだ」
水田「えっ…」
花山「我々を信じてくれる読者だけを相手にすればいいんだ!」(と編集長室に)
残った水田「理想はそうですが…」
受話器を手に美子「とと姉ちゃん、大東京新聞の国実さんという方から…」
「国実さん?」と常子が受話器を受け取る「はい、お電話代わりました小橋です
はい…今からですか?…はい…はい分かりました」
受話器を置いてバッグを手にする常子に美子
「国実ってうちの事いろいろ調べてた人でしょ、まさか会いに行くの?」
常子「うん、お会いしてくる」

大東京新聞編集部
常子を案内する国実「お忙しいところどうもすみません」
常子「失礼します」(と部屋に入る)
国実「小橋社長なら取材に応じて頂けると思ってましたよ
どうぞこちらに」(と応接椅子をすすめる)
着座する常子「手短にお願いします」
国実「では単刀直入に伺います
あの雑誌で証言していたテスターはあなたの暮しで働いていた人たちで
間違いないんですよね?(常子は肯定も否定もしない)
という事は結果の改ざんは本当にあったんじゃないですか?」
常子「違います、あれは虚偽の証言です」
国実「しかしあの記事を見た人間はこう思うんじゃないですか?
結果を偽装し特定の企業から金を受け取り
その会社を持ち上げるために他の商品を叩いてる」
常子「そんな事はありえません
商品試験使うものは全て自分たちで購入し
企業からの協力は一切拒否しています
広告をとっていないのも特定の企業の影響を受けないためでもあるんです」
国実「口では何とでも言えますよね」
常子「何を言っても無駄なようですね」
国実「すみませんね、私たちは疑うのが仕事ですから
それに『火のない所に煙は立たない』というじゃないですか」
常子「『根がなくとも花は咲く』ともいいます(国実が小ばかにしたように笑う)
なぜそんなに我々を追及なさるんですか?
何か恨みでもお持ちなんですか?」
国実「めっそうもない
私はただあなたの暮しがどれほど大きなものに成長しているのか
あなた方がちゃんと理解してるのか知りたいだけですよ」
常子「理解しております」
国実「では40万部という売り上げがどれだけのものか分かっていますか?」
常子「何をおっしゃりたいんです?」
国実「今や電気屋に行けば多くの客があなたの暮しを手に商品を選んでいます
つまり世の中のほとんどの人があなたの暮しを
物を買う買わないの指標にしているんですよ
その事の重みをお分かりですか?
あなたの暮しがいいと言ったものは売れそうでないものは売れない
それだけ影響力のある存在なんですよ
その雑誌が本当に正しいものなのかそうでないのか
それは追求されて当然じゃありませんか」
静かに国実の話を聞いている常子

(つづく)

松永がどんどんやる気をなくしてダメ社員になっていくw
酒井が「自分のところの社員に背かれてるとは知らずに」と言っていたが…
でもアカバネの村山も少し元気がないような気がする

常子の洗濯シーンは何だったのだろう?
洗濯機を試験するにあたってそもそものその存在価値を実感したかった…
とかいう事なのかな?
このシーンは先週の予告にもあったのだが今週のタイトル
「仕事と家庭の両立に悩む」からてっきり星野家で洗濯してるんだと思ってた
まさか視聴者に常子と星野が同居?結婚!?とか
ミスリードさせるためだけに作ったシーンじゃあるまいな…

花山はどっしり構え過ぎw
あんなデタラメな記事を書かれてるんだからちゃんと対応しないとダメだろ
「そんな事で離れていく読者はそれまでだ」には
水田と一緒に「えっ?」ってなったわ

国実が最後に言ったのはその通りだと思う
あなたの暮しは世の商品をガチに試験して評価を公表しているのだから
あなたの暮し自身が公正なのかが検証されるべきなのは当たり前の事だ

2016年9月8日木曜日

とと姉ちゃん(136)常子「幸せでした」星野「常子さんは…僕の誇りです」

星野(坂口健太郎)「大樹、青葉、お父さんおばちゃまに大事な話があるんだ
ちょっと外で遊んできなさい」 
(2人)「はい」(と外に出ていく) 
常子(高畑充希)「お話って…」 
星野「僕は…名古屋に転勤する事になりました」 
言葉が出てこず茫然と星野を見つめるだけの常子 

タイトル、主題歌イン 

星野「実は…常子さんと再会する前に自分から異動願を出していたんです
異動すれば残業が今よりかなり少なくなりますし
子どもたちとの時間も今よりずっとつくれます」
常子「……はい」
星野「異動の希望がかなえられる事はないと思っていたんですが
先日突然辞令が出たんです
正直に言いますと辞令が出てからは気持ちの整理ができずに
どうしようかと悩んでいました
辞令の撤回を頼もうかとも何度も考えました
でも…心を決めたのは大樹の事でした
同級生の女の子からやけどの痕を気持ち悪いと言われたそうです
それで大樹はやけどを隠すように毎日長ズボンをはいて
登校するようになっていたのですが…
僕はそれにずっと気付けなかった
毎朝自分が用意した半ズボンではなく長ズボンをはいているのに
僕は全く気付いてやれなかったんです
その間も大樹は誰にも言えずに自分一人で悲しんで…苦しんで悩んで…
何度も僕に向けて合図を送っているはずなのに
僕は忙しさのあまりそれに気付いてやれなかった
親としての責任を果たしていなかったんです
親子の絆とは自然に出来上がるものではなく
作り上げていくものなんだと実感しました
そう思うと子どもたちとの時間を増やすためには
名古屋へ行くのが一番なんだと決断したんです
常子さんに相談もしないで自分一人で決めてしまって申し訳ありません
常子さんの事はとても大切です
一緒になる事ができたらどれだけすばらしい人生が送れるだろうかと
そう思いましたが…
親の責任はとても重いものだと感じています
身勝手な事を言いますが…名古屋へ行く事を許して下さい」(と頭を下げる)
常子(涙目で)「許すだなんて……星野さんのお気持ちは痛いほど分かります」
星野が顔を上げて常子を見る
常子「親子の絆を作り上げる事はとても大切な事だと思います
お子さんの事を真剣に考える人だからこそ
私は星野さんの事を好きになったんです」(常子の瞳から涙がこぼれる)
星野「常子さん…ありがとう」
静かに星野を見つめている常子

小橋家
常子をじっと見つめている美子(杉咲花)「転勤…」
常子(平然と)「ええ、会社の辞令ですって」
美子「とと姉ちゃんはどうなるの?」
常子「ん~私は変わらないわよ、今までどおり
いや…今まで以上にお仕事頑張ります」(と君子を見る)
切ない表情で常子を見ている君子
常子「何だかおなかすいてきちゃった、着替えてきますね」(と部屋を出る)
美子「また無理しちゃって…本当はつらいのに元気なふりして」
君子(木村多江)「そうね…つらい選択だったと思うけど
常子は納得して選んだのだと私は思うわ」

自室の机の上の「あなたの暮し40号」の上に右手をのせている常子

編集部
電話で話す常子「はい…申し訳ございません…恐らくこちらの手違いではないかと
はい…36号をすぐに送るように手配しますので少々お待ち下さい
はい…失礼します」(美子が常子を心配そうに見ている)
受話器を置いた常子に寿美子(趣里)「常子さん」
常子「はい」
寿美子「お客様がお見えです」
と、ちとせ製作所の田中(螢雪次朗)が箱を抱えて階段を上がってくる
「よう、久しぶり」
常子「田中さん!」
田中「今日はあんたらに見せてえもんがあってよ」
常子「はあ…」

テーブルの上のトースター
田中「これなんだけどよ、うちの新しいトースター」
(常子と美子がまじまじとそれを見つめている、後ろには編集部員も集まっている)
田中「すごい勢いで売れてんだよ」
常子「そうなんですか?」
美子「取っ手が大きくなって使いやすくなってますね」
田中「だろ?おまけに性能だってもう段違いさ」
美子が嬉しそうに田中の顔を見る
田中「商品試験で使ってくれ、5個ばかし持ってきたんだ」
常子「あ…そういう訳にはまいりません…でしたら買い取らせて下さい」
田中「いいっていいって!」
花山(唐沢寿明)「いくらです?(美子に)水田君に言って金を持ってきてくれ」
美子「はい」
田中「あ~分かった分かった…相変わらず融通の利かねえ会社だなあ」
常子「フフフ…すみませんあなたの暮しはこういうところなんです」(と頭を下げる)
田中「あんたらの商品試験のおかげで一時は倒産しかかったがね…
あんたに言われて安全で使いやすいトースター
なんとか作り上げたらおかげさまでよ…
いろいろあったけどあんたらには感謝してる」
常子「…そう言って頂けて何よりです」

星野が自宅の表札をはずしてバッグに入れる
「星野さん!」と常子が駆けて来る
星野「常子さん」
常子「よかった間に合って…あの…これよかったら汽車の中で食べて下さい」
(と包みを渡す)
星野「すみません、わざわざ」
子どもたちに目をやる常子「2人とも元気でね」
青葉「青葉お別れするのやだ」
青葉の前にしゃがむ常子「青葉ちゃん…
おばちゃま絶対青葉ちゃんの事忘れないからね」
青葉「ほんと?」
常子「ほんと」
青葉「ほんとにほんと?」
常子(少し吹き出して)「ほんとにほんと」
青葉「ほんとにほんとにほんと?」
常子「ほんとにほんとにほんとにぃ…青葉ちゃんの事忘れないからね」
青葉「青葉も忘れない」
大樹を見る常子「大樹君」
なぜか固くなっているような大樹「うん」
常子「大樹君は優しくてとってもいい子だと思う…でも…
お父さんの前ではしっかり者のお兄ちゃんじゃなくてもいいんじゃないかな…
つらい時は我慢せずにお父さんに頼ってみてね」
大樹「おばちゃん…ありがとう」
常子「うん」
星野に向かう常子「星野さん…今までありがとうございました
星野さんと大樹君と青葉ちゃんと過ごした時間は掛けがえのないものでした
幸せでした」(と右手を差し出す)
常子の右手を握る星野「常子さんは…僕の誇りです
小橋常子という女性と出会えた事を…僕はこれからもずっと
誇りに思い続けます」
二人の右手が名残惜しそうに離れる
星野を見つめながら小さくうなずく常子
星野「では」
常子(清々しい顔で)「では」
子どもたちを見て星野「じゃあ行こうか」
大樹「さようなら」(常子がうなずく)
青葉「じゃあねおばちゃま」
常子「じゃあね」
青葉「さようなら」
常子(青葉の髪を撫で)「さようなら」
大樹の頭を撫で常子「さようなら」
大樹「さようなら」
星野「よし、じゃあ行こう」
大樹と青葉「うん…」
と、3人が常子に背を向けて歩き始める
少しだけ辛そうな顔した常子がそれでも顔を上げ「元気でね」
3人が振り向く
大樹「うん」
青葉「さようなら」
常子が笑って手を振る「さようなら」
大樹「さようなら」
先の角を曲がる青葉が常子に手を振り、そして3人の姿は消える
涙を流し立ちつくしている常子
ほんの少しだけ口元に笑みを作ろうとしたような常子が振り向いて歩いていく

(つづく)

ああ、なるほど
長ズボンのエピは星野がそれに気付いてやれなかったという事が
ポイントだったのか
だから親としての責任を果たすために(子どもたちとの時間を増やすために)
残業の少ない名古屋に行くと…
一応理屈は通ったね(常子がかわいそうで納得はできないが)

こんな事なら再会なんてしなければよかったとちょっと思ったが
常子は最後に「幸せでした」と言っている
そうか…モデルの人が生涯未婚だったのだから常子の結婚を描くのは難しい
だから少しの時間だけでも常子に家庭に入る妻や母親のような
女としての幸せを与えてあげようと作者は思ったのかもしれないね

星野に転勤を告げられた常子が「…痛いほど分かります」と言ったのは
今の星野が17年前の自分と同じだからだろう
家族を助ける事を優先して結婚を諦めた常子と
子どもたちと過ごす時間を優先して常子を置いていく星野
「お子さんの事を真剣に考える人だからこそ
私は星野さんの事を好きになったんです」という常子のセリフも
17年前に別れる時の星野の「自分の事は後回しにして
ご家族のために全力で走り回る常子さんだから恋に落ちたんです」とそっくりだ

田中のエピは何だったのだろう?
今回は常子が可哀想すぎる話なので元気が出るような話をはさんだのだろうか
それとも今後のアカバネとの対決に田中が加勢でもしてくれるのかな?

トースターを「商品試験で使ってくれ」ってどういう意味だろう
食パンの試験をする時に使ってくれという事だろうか?


2016年9月7日水曜日

とと姉ちゃん(135)名古屋への転勤を言い渡され思い悩む星野

星野家 朝食を食べる子どもたち 
大樹が右足のやけどの痕を見ている 
台所から声をかける星野(坂口健太郎)「どうだ?ちゃんと食べてるか?」 
青葉「は~い」 
星野「お弁当はここ置いとくからな」 
何かを決したように大樹「お父さん」 
星野「うん?どうした?お代わりか?お父さんもう今朝は出ないといけないから
自分で頼むな」(と背広にそでを通す) 
大樹「…はい」 

常子(高畑充希)「水田さん」
水田(伊藤淳史)「はい」
常子「そろそろ洗濯機の試験を進めようと思います」
水田「分かりました、では詳細な見積りを準備します」
常子「はい、お願いします」
と、「すみません、遅くなりました」と松永が階段を上がって出社してくる
水田「おいおい、また寝坊か?」
松永「すみません」
常子「松永君、気を引き締めて下さい
私たちのやっている事はたくさんの方々に影響を与える仕事です
そんなたるんだ気持ちでは困ります」
松永「申し訳ありません」
常子「常に戦っている覚悟を持って下さい」
松永「はい」
常子「お願いします」

夜、キッチン森田屋に美子(杉咲花)が入っていく
宗吉の声「帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ!」
大きな声に驚く美子
国実(石丸幹二)「まあまあ大将、落ち着いて」
宗吉(ピエール瀧)「なれなれしく大将なんて呼ぶんじゃねえ!
こちとらなぁ、てめえなんかに話はねえんだとっとと帰れ!」
国実「はいはい、今日のとこは引きあげますよ…(と、美子に気付き)
これはこれは美子さん、今度ゆっくりお話聞かせて下さいよ」(と店を出る)
南(上杉柊平)「あいつが常子さんの言ってた新聞記者か」
不安そうな美子「一体何しに来たんでしょう?」
宗吉「さあな…」
照代(平岩紙)「何だか常子ちゃんや花山さんの
足を引っ張るような事ばかり聞いてくるからうちの人頭に来ちゃって」
美子「ご迷惑おかけしてすみません」
宗吉「謝る事じゃねえけどよ、気を付けろよ」
美子「えっ?」
宗吉「出る杭は打たれる…っていうからな」

夜道を歩く美子と南
美子「まさかあの新聞記者…森田屋さんにまで来るなんて…」
南が「美子…」と立ち止まり「結婚の事待たせててごめんな」
美子「ううん、気にしてないよ…ほら言ったでしょ
私も新しい企画で忙しいし先になっても構わないって」
「うん…」とうなずく南
美子「うん」
南が美子を抱きしめる
「フフフ…」と幸せそうな美子

松永「これ、今日参加したテスターさんの名簿です」
水田「あっ、ありがとう…
松永君何だか最近元気ないけど具合でも悪いのか?」
松永「あ…疲れがたまっているだけです
でも先週ステレオを月賦で買っちゃったんで頑張って働かないと」
水田「そんなに買い物ばかりしてお金の方は平気か?」
松永「平気ですよ、その分働いて稼げばいいんですから」
水田「何かあったらいつでも相談してくれよ」

光和医薬品社
宇田川「星野君」
星野「はい」
宇田川「おめでとう」
星野「はっ?」
宇田川「今朝、名古屋支社へ異動の内示が出た
随分かかったがやっとお前の異動願が受理されたよ」
星野「はい…」
宇田川「急で悪いが2週間後には向こうへ行ってほしいそうだ
あっちは残業も少ないし実家も近い
向こうへ行っても頑張ってやれよ」

席に座る星野
片瀬「お前名古屋に異動願なんて出してたのか?」
星野「はい、2年ほど前に」
片瀬「ああ…そういえば言ってたなあのころ…
子どもの事を考えたら残業が少ない方がいいって…全くお前らしいよ
子どものためにわざわざ給料の安い支店に行きたがるなんて
どうした?希望が通ったのに浮かない顔だな」
星野「いえ…」

夜道を力なく歩いている星野
自宅のドアのノブに手をかけると中から常子の声が聞こえてくる
「じゃあ後片づけが済んだらお食後にしましょうか」
(大樹と青葉)「はい」
(常子)「じゃあこのお皿運んでもらえる?」
(2人)「はい」
(常子)「うん、ありがとう」
「ただいま~!」と星野が家に入っていく

ちゃぶ台の前に座る星野「2人とも随分おいしそうなのを食べてるじゃないか」
青葉「おばちゃまのお土産、チュクリームっていうの」
(ちゃぶ台の上には皿に盛られたシュークリームが残り4つほどと
オレンジジュースのグラスが2つ)
大樹「ハハハ、そうじゃなくてシュークリームね」
常子「フフフ…星野さんもおひとついかがですか?」(と小皿を前に置く)
星野「ありがとうございます」
常子「このお菓子のお店取次店のすぐ近くにあるんです
今日取次店に寄ったらそこの社長さんに
発行部数を増やしてみないかって言われて」
星野「発行部数を?」
常子「はい、売り上げも今のところ右肩上がりですし
商品試験もこれからもっと注目を浴びるはずだからって
まあ花山さんに相談してみないと分からないんですが
私はいいお話だと思っているんです」(と笑いが止まらない感じ)
星野「そうですか」
常子「すみません…仕事の話をしてしまって」
星野「いえ」
青葉「お兄ちゃん、甘くておいしいね」
大樹「うん、ふわふわだなあ」
常子「あ~食べちゃったね、もう一つ食べる?」
大樹「うん」
青葉「まだ食べてない私」
常子「ゆっくりでいいよ」
子どもたちの世話をする常子を眺めている星野

本屋で絵本を手にする星野
と、他の女性客たちの声が聞こえてくる
「ねえこれこれ!あなたの暮しの商品試験、知ってるでしょ」
「もちろんよ、今回は電気釜でしょ?」
「私もトースター買う時参考にしたんだけど、もう大正解だったわよ!」
「本当に役に立つのよねこの雑誌」
星野が「女の人の役に立つ雑誌を作りたかった…はい、私の夢です」
という常子の言葉を思い出す

絵本を読み聞かせしている星野「おかをのぼればあおいそら
森も林もちいさくみえる ちょうちょもいっしょについてきた おしまい」
星野の膝の上の青葉「面白かった、お父さんありがとう」
星野「どういたしまして」
大樹「今度は僕が読んであげる」
青葉「うん」
星野「じゃあ大樹読んであげて」

なみが洗濯ものをたたんでいる
その隣に座る星野「いつもすみません」
なみ「今日はお仕事早かったんですね」
星野「ええ、あとは僕がやりますからもう上がって結構ですよ」
なみ「そうですか、じゃあこれだけ畳んじゃいますね」
星野「はい」と、なみの手にあるものを見て「あれ?そのズボン…」
なみ「えっ、これですか?」
星野「はい」(とズボンを手に取り)「大樹長ズボンはいて行ってるんですか?」
なみ「ええ」
星野「おかしいな…もう暑いから毎朝半ズボンを用意しているのに」
なみ「そうなんですか?学校へは長ズボンで行ってますけど」

夜、青葉が布団で眠っている部屋の襖を星野が閉める
居間ではちゃぶ台で寝間着姿の大樹が図鑑のような本を見ている
星野「大樹」
大樹「何?」
星野「最近学校に長ズボンはいて行ってるのか?」
下を向く大樹「うん…」
星野「別にお父さん怒ってる訳じゃないんだよ…ただどうしてかなって…
…お父さんに話したくない事なのか?」
大樹「あのね…」
星野「うん」
大樹「隣の席の悦子ちゃんがね…
このやけどの痕見て気持ち悪いって言ったんだ…一回だけじゃないんだ」
星野「だから…見えないように長ズボンはいていたのか?」
大樹がうなずく
星野「…ごめんな…気付いてやれなくて」
首を振る大樹を見つめ何かを思う星野

小橋家
常子「ちょっと森田屋さんに行ってきます」
台所の君子(木村多江)「あら日曜日なのにお仕事?」
常子「いえ…あの…星野さんにお食事に誘われたもので」
君子「あらそう」
君子を手伝っている美子「ねえその口紅新しいのじゃない?」
常子「うん…前の使い切っちゃったから」
美子「とってもお似合いよ」
常子「そうかしら」(と機嫌よく笑う)
君子「ほらほら、遅れると失礼だから」
常子「あっ、はい、では行ってまいります」
(2人)「行ってらっしゃい」
常子が去ると美子と君子が顔を見合わせ幸せそうに笑う

玄関の戸を閉め微笑みを湛えた常子が森田屋へ向かう

森田屋
星野「ごちそうさまでした」
(常子と子どもたち)「ごちそうさまでした」
常子「おいしかったわね」
青葉「もうおなかいっぱい」
厨房から宗吉が出て来て「お~残さずきれいに食べたなあ」
星野「ここの料理はいつも残さず食べるんです」
常子「青葉ちゃんなんて私の分まで食べたんだよね」
青葉「うん、だっておいしいんだもん」
常子「フフフフ」
宗吉「おいおいうれしい事言ってくれるじゃねえか、ハハハハ…
お~そうだ常子」
常子「はい」
宗吉「悪いけど留守番頼まれてくれねえか」
常子「留守番?」
宗吉「ああ、ホウレンソウ切らしちまってなぁ、裏の八百屋までちょっとな」
常子「分かりました」
宗吉「戻ってきたらデザートサービスするからよ」
常子「フフフ、ありがとうございます」
「おう頼むな」と宗吉が出ていく
常子「デザート…星野さんデザート食べ終わったら
裏の公園まで遊びに行ってみませんか?」
星野「常子さん…今日は…お話があってお呼びしたんです」
星野の様子に少し不安気な顔になる常子

(つづく)

星野に発行部数の話をする件の常子は浮ついていて
久しぶりにバカっぽい常子を見た気がして懐かしかった
思えば娘時代の常子は間抜けでよく笑わせてくれたが
いつの間にかすっかりとしっかり者の社長になってしまったようだ

転勤を言い渡された星野が思い悩んだ末に出した答えを
次回で常子に告げる事になるのだろうが
今回常子が充実していて幸福の真っ只中にいる描写だった事を考えれば
星野の答えはそれとは逆
つまり常子にとって不幸なものである事は想像できる
ただ分からないのはその答えに大樹の長ズボンのエピが
影響しているはずなのだがどう関わっているのかという事だ
大樹にすまないという思いと改めて子どもたちの幸せを考えて
残業の少ない名古屋に行くというのか?
いや、子どもたちの幸せを考えれば常子と共にいるのが最良だとも思える
まさか常子に名古屋へ一緒に来てくれと言うつもりだろうか?
だが、それだと本屋のエピ(常子の夢)と矛盾してきてしまう
星野は一体何をどう語るつもりなのだろう?


2016年9月6日火曜日

とと姉ちゃん(134)星野が常子に再プロポーズ!?~電気釜の記事で低評価を受け追い詰められるアカバネ

<花山は不眠不休で原稿を書き直し写真も全て準備し直しました
原稿はなんとか日曜日の午後に印刷所に届ける事ができ
印刷所も最大限のスピードで作業を進める事を約束してくれました> 

なんとかトラブルの処理を終えた常子(高畑充希)を星野一家が訪ねてくる 
星野(坂口健太郎)「お忙しいところ突然申し訳ありません」
常子「いえいえ、今ちょうど一段落ついたところで」
子どもたちの顔をのぞき込む常子「フフフ、みんな一緒に来てくれたんだ」
大樹「うん」
青葉「ねえおばちゃま」
常子「うん?」
青葉「昨日はわがまま言ってごめんなさい」
常子「ううん…わがままだなんて…(と青葉の頭を撫でる)
悪いのはおばちゃまなんだから」(青葉が首を振る)
大樹「おばちゃん」
常子「うん?」
大樹「これおばちゃんのために持ってきました」(と包みを差し出す)
常子「ありがとう」(と受け取る)
大樹「何だと思う?」
常子「えっ、何だろう?」(と匂いを嗅ぐ)
青葉「お握りなの」
常子「えっ!」
大樹「3人で一つずつ作ったんだ」
青葉「大きいのが私の」
常子「あ~ありがとう!おばちゃまねちょうど今おなかがすいてたの」
大樹(青葉に)「よかったな」
青葉「うん!」
星野(子どもたちに)「じゃあそろそろ帰ろうか」
大樹「はい」
常子「本当にありがとうございました」
星野「いえ」
と、ドアが開き花山(唐沢寿明)が姿を見せる「おや、お客さんかい」
星野「急にお邪魔してしまってすみません…僕たちは…その…」(と常子を見る)
常子(星野と花山を交互に見て)「む…昔の知り合いといいますか
ゆ…友人です」
何かを察したように笑った花山が急に変なポーズと口調で子どもたちに
「ごゆっくりどうぞ~」
子どもたちが楽しそうに笑う
「常子さん、次回の企画案だ読んどいてくれ」と書類を渡しまた変なポーズで
子どもたちを「わあ~!」と驚かせて花山は部屋に戻る
子どもたちだけでなく星野まで口を開けたまま驚いてしまっている
「あぁ怖かった~」と常子が青葉の頭を撫でる(青葉は大笑いしている)
大樹「びっくりした~」
常子「ごめんね驚かせて」

住吉ビル前
常子「今日の事はすみませんでした、この埋め合わせは必ず」
星野「もう気にしないで下さい
常子さんにとって社員の皆さんは大事な家族なんですから優先するのは当然です
お互いに無理をせず補い合いながら時間をつくっていきましょう」
常子「はい」
星野「では失礼します」
常子「ありがとうございました」
大樹と青葉「さよなら!」
常子「さよなら」
「よし、じゃあ行こうか」と星野たちが帰っていく
途中で振り向く青葉「おばちゃままたね」
常子「うん、またね、フフフ、気を付けてね」(と笑顔で手を振る)

花山が知恵の輪を解いている
常子がやってきて「花山さん、たった今印刷所から連絡があり
予定どおり発売日に間に合うそうです」
花山「そうか」
常子「はい、問題解決です」
知恵の輪をしながら花山「彼と交際しているのかい?」
常子「あ…いや…(と目を伏せて)まだそういう…はっきりした事はまだ…」
そして花山を見て「花山さん、今私はこういう事に
うつつを抜かしている場合ではないのは分かっているんですが…」
花山「謝る事ではないよ」
常子「ですが私は…新たな雑誌を一緒に作るとなった時
花山さんに人生をかけて雑誌を作ると宣言しました
それなのに…という思いが胸の中にあるのも事実です」
花山「君も不器用な人間だねぇ…
あの言葉が安易な気持ちから出たものだとは思っていない
実際に常子さんは社長が社員の親であるという考えもよく体現してくれている
だからあえて言うがね
あの時の誓いに縛られる事はないんじゃないか?
生まれたばかりのあの時とは違って
今は曲がりなりにも自分の足で立てるようにはなった
仕事も大切だが常子さんの人生なのだから後悔しないように生きるべきだよ」
常子「ありがとうございます」

昭和三十二年五月

<こうして電気釜の商品試験の記事が掲載された
あなたの暮し最新号(40)は発売されました
発売直後より『電気釜を選ぶ際に参考になった』という感謝の言葉が
読者から数多く寄せられました>

大東京新聞
あなたの暮しのページを広げる国実(石丸幹二)
と、後ろから同僚たちの会話が聞こえてくる
記者1「おい、あなたの暮しはすごいな、42万部だってよ」
記者2「商品試験も相変わらず手厳しいですね」
記者1「ここまで書かれたらアカバネもたまらんなあ」
記者2「評価Cはアカバネだけですよ」
記者1「ハハハ…でもこれ参考になるな」
記者2「実は僕もこれ参考にしてるんです」
記者1「そうなんだ、へえ~」

ちゃぶ台で植物の絵を見ている大樹と青葉(星野と常子もいる)
青葉「とってもきれい」
大樹「本物の花みたい」
常子「大樹君と青葉ちゃんのお父さんは昔た~くさんお花の絵を描いてたんだよ」
大樹「へえ~」
青葉(星野に)「昔っていつ?」
星野「2人が生まれるずっと前だよ」
大樹「お父さん、もう一回描いてよ」
星野「じゃあ…今度みんなで描きに行こうか」
大樹「うん、約束だよ」
青葉「約束ね」
常子「行こうね」
(大樹と青葉)「うん」

布団で眠る子どもたち
常子は青葉の横で手枕をして鼻歌のような子守歌を歌っている
♬「ぼうやは良い子だねんねしな(青葉の髪に触れる)
ぼうやのおもりはどこへいった…」

縁側に座っている星野の横に腰を下ろす常子「2人とももうぐっすりです」
星野「ありがとうございました」
常子「いえ…まだ寝たくないって言ってたのにあっという間でした」
星野「疲れたんでしょう…2人とも久しぶりに常子さんと過ごせて
はしゃいでましたから」
常子「私も楽しかったです」
星野「僕もです」
(少しの間)
夜空を見上げる星野「きれいな月だなあ」
空の半月を見て常子「本当ですね」
星野「フフフ…」
常子「どうかされました?」
星野「思い出してしまって…
以前『月がきれいだ』と言った僕の言葉を
鞠子さんが愛の告白だと勘違いした事が…」
常子「フフフ…ありましたね、そんな事」
星野「ええ…でも僕はそれを聞いてすてきだと思いました
だから本当は結婚をお願いしたあの時に月を見ながら
『月がきれいですね』と…常子さんに思いを伝えるつもりだったんです
結局緊張してそんな気の利いた事言えませんでしたけどね」
常子「そうだったんですね…あの日」
常子を見つめる星野「今…あの時と同じ気持ちです…常子さん」
星野が常子を抱きしめる
星野に体を預けるような常子
少し体を離した星野が常子に口づけをする

アカバネ電器製造社長室
赤羽根(古田新太)「村山」
村山(野間口徹)「はっ」
赤羽根「我が社の事について書いてある事を読んでみろ」
村山「はい…特にアカバネは蓋やつまみが熱くなる事を明記しておらず
使う人の立場を考えているとは言えません…以上です」
赤羽根(酒井を見て)「どういう事だ?」
酒井(矢野聖人)「決して手加減したつもりはないんですが」
赤羽根「どうだかなあ…お前は昔から妹に似て優しいところがあるからな秀樹」
酒井「だけどおじさん…」
赤羽根「会社では社長だ」
酒井「すみません…社長」
立ち上がり村山の手から雑誌をとる赤羽根
「こいつらは世直しでもしてるつもりか?思い上がりも甚だしい
マスコミに持ち上げられて調子に乗り過ぎてしまったんだなぁ
だったらそのマスコミを敵に回せばいい(とあなたの暮しを破り捨てる)
何としてでも商品試験をやめさせろ…手段は選ばん
苦労してここまで大きくしたんだ…こんな事で潰されてたまるか…」
と壁に掛けられた額の写真(アカバネの文字がある町工場)を見つめる

(つづく)

青葉が一日でケロッと機嫌を直しているのが意外だった
常子が差し入れのお握りを喜んだ件で
大樹が青葉に「よかったな」と言っているから
これは青葉の発案なのかもしれない
常子と仲直りしたかったのかな

別れ際に星野が「お互いに無理をせず
補い合いながら時間をつくっていきましょう」と言っている
美子が言っていたように星野は常子の社長としての立場を理解しているようだ
だから「結婚」という言葉が出てこないのかなあと思っていたら
後半で「今…あの時と同じ気持ちです…常子さん」という言葉が出てきた
これはどういう意味だろう?
求婚した時と同じ気持ちで常子を好きだと言いたいのか
それともあの時と同じに今の常子と結婚したいと思っているという意味なのか?
おそらく後者ではないかと自分は思うのだが
それだとあのシーンは星野の17年ぐらい?ぶりのプロポーズという事になる

キスシーンでカメラが引いたのはいい演出だ
朝からどアップでぶっちゅ~とか見たくない

赤羽根は悪役に徹する感じでカニやステーキを貪るシーンが多かったが
今回は町工場時代の写真を見つめているカットで終わった
常子たちが戦後、刷り上がった雑誌をリヤカーで曳いて運んでいたみたいに
赤羽根も汗水たらして苦労してきたんだという描写なのだろう
だからといって今の赤羽根たちがやっている事を
仕方がない事だ…とは決して思えないのだが

酒井は赤羽根の甥という設定なんだね
「妹に似て優しいところがあるからな秀樹」と言っておきながら
「だけどおじさん…」と言う酒井に「会社では社長だ」
どっちやねんw
いまだに美子に会社でも「とと姉ちゃん」と呼ばせ
社員たちからは「常子さん」と呼ばれる常子との対比なのかな?
この部分だけは自分は赤羽根派だわ


2016年9月5日月曜日

とと姉ちゃん(133)更なる嫌がらせの対応に追われ星野一家との約束をキャンセルした常子は…

住吉ビル前 
新聞紙を広げあなたの暮し出版社を見上げる謎の男・国実(石丸幹二) 

タイトル、主題歌イン 

青葉がちゃぶ台で画用紙に象の絵を描いている 
なみ「青葉ちゃん上手に描けてるわね」 
青葉「象さん見られるかなあ」 
なみ「象さん?」 
青葉「動物園に行くの」 
なみ「あら~」 
大樹「今度の日曜に常子おばちゃんとお出かけなんだ」 
なみ「そう、いいわね」 
青葉(大樹に)「あと何回寝たらいいの?」 
大樹「木…金…土…あと3回寝たら動物園だよ」 
青葉「象さんどのぐらい大きいの?」 
大樹「う~ん…」 

常子(高畑充希)「変な男?」
テスターの女性・鈴木「しつこく商品試験の事聞いてきたんだけど
気味悪かったんで無視して帰ったんです」
美子(杉咲花)「その人鈴木さんがテスターしてるって…」
鈴木「分かってるみたいでした」
木立「そいつってハンチングかぶってませんでした?」
鈴木「そう、ハンチングでした」
木立「僕も会社の前で何度か見かけましたよ」
常子「分かりました、ちょっと調べてみますね…今日はご苦労さまでした」
鈴木が帰り美子「例の石投げてきたのってその男なのかな?」
と、桑原印刷から常子に電話が入る
桑原「ああ、常子さん?差し替え原稿ってまだなの?」
常子「差し替えって何の話ですか?」
桑原「何のって商品試験の原稿を差し替えるんだろ?」
常子「原稿の差し替えってどういう事ですか?」
桑原「いやいや、商品試験の原稿に重大な誤りがあったから
人目に触れないように原稿を捨ててほしいって言ってきたのそっちじゃない
土曜日までに差し替え原稿を提出するって…」
常子「土曜日って今日じゃないですか…誰がそんな事…」
桑原「お宅の藤野っていう人だよ、花山さんの代理だって電話してきて」
常子「藤野なんていう人間はうちにはいません」
桑原「はあ?」
常子「恐らく誰かの嫌がらせだと思います」
桑原「まさか…電話もらってあの花山さんならそういう事もありうるかと
思い込んじまって…」
常子「という事は商品試験の原稿は全て廃棄してしまったんですか?」
桑原「あぁ…申し訳ない…明日までに新しい原稿が入らないと
予定日での発売は難しいなぁ…」
常子「分かりました、社内で検討してまたご連絡差し上げます…失礼致します」
受話器を置いた常子に美子「ねえ、今のどういう事?」(扇田木立島倉もいる)
常子「手違いがあって商品試験の原稿が全て廃棄されてしまいました」
(一同)「はあ~?」
島倉「どうしてそんな事が…」
常子「とにかく明日までに全てやり直します
今すぐに作業に取りかかって下さい」
「分かりました」と男たちが動き出す
美子「とと姉ちゃんこれって…」
常子「このままだと発売日に間に合わなくなってしまうわ
すぐに取次店と書店に連絡お願いします」

編集長室
「すみません」と頭を下げる常子
花山(唐沢寿明)「仕方あるまい、明日までに書き直す、まだ頭に文面がある」
常子「ひょっとしてこれもアカバネが…」
花山「そんな事言っていても仕方あるまい…君はやるべき事をやりなさい」

夜、星野家
2着の洋服を吊り下げて見せる青葉「明日はどっちがいいかな?お父さん」
星野「う~ん…どっちもお似合いだからお父さん決めらんないなぁ
大樹はどう思う?」
大樹「う~ん…こっちがいいんじゃない?」(と赤い洋服を指さす)
青葉「じゃあこっちにする!」
大樹「僕はこの帽子かぶって行こうっと」(と白い野球帽をかぶる)
青葉「お兄ちゃん似合ってる!」
星野「うん、本当だなあ」
と、部屋の電話が鳴り受話器をとる星野「もしもし星野です…
常子さん(星野が笑顔になる)…ええ…はい…えっ?」

会社から電話している常子「本当にすいません…
予想外の事態が起こってしまって早急に動かないと
発売日に間に合わなくなってしまうんです
申し訳ないんですが明日の約束は…」

星野「ええ、もちろんです…動物園はまた行けばいいんですから」
(常子)「ごめんなさい…私も楽しみにしていたのに…」
星野「気にしないで下さい、それより平気なんですか?」

常子「はい、何とかしてみせます」

星野「そうですか…大樹と青葉には僕から言って聞かせますので」

常子「いや、そういう訳には…2人に代わって頂けませんか?謝りたいんです」
(星野)「分かりました、お待ち下さい…大樹おいで」
(大樹)「もしもし」
常子「大樹君…あのね…」

大樹「電話聞いてたから分かったよ…動物園行けなくなったんだね」

常子「ごめんね」

大樹「ううん、お仕事ならしょうがないよ…今度行こうね」

常子「うん…ありがとう…青葉ちゃんに代わってもらってもいいかな?」

大樹「ちょっと待ってて…青葉」(と青葉を見る)
青葉「やだ」
星野「青葉」

常子の受話器から青葉の声が聞こえてくる「やだやだ!そんなのやだ!
おばちゃまの嘘つき!」
(星野)「ほら青葉」
(青葉)「やだやだ!やだやだやだ!」
(星野)「またみんなで行けばいいんだから」
(青葉)「やだ!」
駄々をこねる青葉の言葉が常子の胸に突き刺さる

美しい満月

机に向かい作業する常子に寄り添う美子「今日できる連絡は全て終わりました」
振り向く常子「ご苦労さま」
隣に腰かける美子「残念だったわね動物園」
常子「うん…青葉ちゃん泣いてた…」
美子「また今度連れてってあげればいいじゃない」
常子「また今度か…またこんなふうに約束を破っちゃうかもしれない…
もちろん大樹君も青葉ちゃんもとっても大事よ
でも…今回みたいに仕事を優先しなければならない事があったら
また同じように2人を傷つけるような事もあると思う
…こんなふうに仕事をしながら家の事も子どもの事も十分にやるなんて
今の私には不可能だと思うの」
美子「…そんな事…星野さん最初から分かってるよ
とと姉ちゃんにとって仕事が一番って事は
星野さんも最初から知ってるはずでしょ?
まずはさ、自分ができる事をやればいいんじゃない?」
常子「…そうね…」
美子「うん…何でも背負い込んじゃ駄目だよ…ねっ?」
常子「フフフ…うん…ありがとう」
「片づけてくる」と美子が席を立つ
悩み深い表情の常子

<常子と花山は会社に泊まり込み夜を徹して原稿を作り直すための作業を続け
他の社員は取次店や書店への対応に向かっていました>

デスクで頬杖をつく常子に後ろから声をかける花山「常子さん」
花山が近づく「常子さん(反応なし)…常子さん」
常子が振り向いて花山を見上げる「はい」
花山「ろくに寝てないのは分かるがしっかりしてくれ」
常子「すみません」
花山「電気釜の耐久試験の資料が欲しいんだ」
「あ…あっ…はい、こちらにまとめてあります」と資料を花山に渡す常子
花山「ありがとう」
と、「ごめんください」と声が聞こえ入口にハンチング帽の男が立っている
花山「どちら様でしょう?」
歩み寄る国実「お忙しいところ突然すみません
大東京新聞の国実と申します」(と常子と花山に名刺を配る)
花山「新聞記者がうちに何の用だね?」
国実「何か不測の事態でもありましたか?
お二人とも夜を徹して仕事をしていらっしゃるようなんでね
入稿は終わっていい時期ですよね?
本来ならもっと落ち着いてるはずでしょう?
どうしたのかなあと」
花山「たとえ何かあったとしてもあなたに話す事ではない」
国実「出版業界であなたの暮しが何と呼ばれてるかご存じですか?」
花山「さあ…この業界にそれほど知り合いがいる訳ではないので」
国実「広告もとらずによくやっていける孤高の存在だ…とね
どういう人間がどんな決意でこの雑誌を作ってるのか
とっても興味があるんですよ私は
しかも社長が女性ときたもんだ
雑誌だけでなく小橋常子という作り手に興味がある人も多いと思いますよ
あなたは編集長の花山さんでしたっけ?
あなたたちの事を記事に書かせて頂ければと思いましてね」
常子「私たちの事を?」
国実「ええ」
花山「取材に関してはまた日を改めてもらおうか
今はそんな事をしている時間はない」
国実「ハハ!さすがは天下のあなたの暮し出版様だな
新聞の取材など受けてる暇はないっていう事ですか」
常子「そんな事は言っておりません」
国実「最近は商品試験とやらで消費者の支持を得てらっしゃるようじゃないですか
ねえ…自分たちだけで調査を行い商品の良し悪しを記事にする
消費者の味方として我々は実に頭が下がる思いです
しかしもう一方ではそのような閉鎖的な試験に公平性はあるのかという
疑問を持つ者もいるんです」
常子「疑ってらっしゃるんですか?」
国実「あなたたちの書いた記事でメーカーは売り上げが左右され
倒産の危機に陥るとこだってある
その辺の事はどうお考えですか?」
常子「どう…とは?」
国実「私には信じられないんですよ
消費者のため、読者のためとうたってますが得もないのに莫大な資金をかけて
長期間商品試験なんて事をするって事がね
…あっ、得はあんのか…売れてますもんねえ雑誌…フフッ
世間では時代の寵児ともてはやされてますが本当のところはどうなんですか?
結局はただの拝金主義者なんじゃないですか?」
花山「今日は取材は受けんと言ってるのが分からんのか?
仕事の邪魔だ、帰りたまえ」
国実「ああそうですか、ではまたの日に」(と帰っていく)
常子「あんなふうに私たちの事を見ている人がいるなんて…」
花山「気にするな、あんなやつの言う事を真に受けていたら身が持たんぞ」
「はい」と返事するも不本意な表情の常子

(つづく)

青葉を泣かせてしまい落ち込む常子を美子が慰めるシーン
「…家の事も子どもの事も十分にやるなんて今の私には不可能だと思うの」
と珍しく常子が弱音を吐く
124話の美子の「もっとぶつけてほしいの…弱音吐いちゃってよ」を受けての事だろうが
「何でも背負い込んじゃ駄目だよ」と言う美子に常子が「フフフ」と笑ってしまったのは
やはりとと姉ちゃんの常子にとっては
美子はいつまでも年の離れた頼りないはずの末妹という事なのかな
しかしこの件の2人の会話は常子が子どもたちの面倒をみていくという前提のもので
「結婚」という言葉が出てこないのが不思議な感じがするくらいだ

常子の頬杖のシーン
これにはどういう意味があったのだろう?
花山が3回も「常子さん」と呼びかけるのだがボーッとしてそれが耳に入らないほど
仕事と星野たちの事で悩んでいるという描写なのだろうか?
それともまさかとは思うが半目を開いたまま眠っていたわけじゃないよね…まさかねw

国実は嫌みっぽい喋り方だが言っている事の内容は普通に現実的かな
これはドラマだから常子と花山が理想を抱いて雑誌を起ち上げたのを
私たちは知っているが
現実だったならまずは自分なら疑ってみる
今まで常子たちに同調する熱血漢の編集部員ばかり見てきたので
国実のスタンスはホッとするぐらいだ
花山は雑に追い返さないでやましいところはないんだから
取材に協力して利用しちゃえばいいのになあと思った