2016年9月8日木曜日

とと姉ちゃん(136)常子「幸せでした」星野「常子さんは…僕の誇りです」

星野(坂口健太郎)「大樹、青葉、お父さんおばちゃまに大事な話があるんだ
ちょっと外で遊んできなさい」 
(2人)「はい」(と外に出ていく) 
常子(高畑充希)「お話って…」 
星野「僕は…名古屋に転勤する事になりました」 
言葉が出てこず茫然と星野を見つめるだけの常子 

タイトル、主題歌イン 

星野「実は…常子さんと再会する前に自分から異動願を出していたんです
異動すれば残業が今よりかなり少なくなりますし
子どもたちとの時間も今よりずっとつくれます」
常子「……はい」
星野「異動の希望がかなえられる事はないと思っていたんですが
先日突然辞令が出たんです
正直に言いますと辞令が出てからは気持ちの整理ができずに
どうしようかと悩んでいました
辞令の撤回を頼もうかとも何度も考えました
でも…心を決めたのは大樹の事でした
同級生の女の子からやけどの痕を気持ち悪いと言われたそうです
それで大樹はやけどを隠すように毎日長ズボンをはいて
登校するようになっていたのですが…
僕はそれにずっと気付けなかった
毎朝自分が用意した半ズボンではなく長ズボンをはいているのに
僕は全く気付いてやれなかったんです
その間も大樹は誰にも言えずに自分一人で悲しんで…苦しんで悩んで…
何度も僕に向けて合図を送っているはずなのに
僕は忙しさのあまりそれに気付いてやれなかった
親としての責任を果たしていなかったんです
親子の絆とは自然に出来上がるものではなく
作り上げていくものなんだと実感しました
そう思うと子どもたちとの時間を増やすためには
名古屋へ行くのが一番なんだと決断したんです
常子さんに相談もしないで自分一人で決めてしまって申し訳ありません
常子さんの事はとても大切です
一緒になる事ができたらどれだけすばらしい人生が送れるだろうかと
そう思いましたが…
親の責任はとても重いものだと感じています
身勝手な事を言いますが…名古屋へ行く事を許して下さい」(と頭を下げる)
常子(涙目で)「許すだなんて……星野さんのお気持ちは痛いほど分かります」
星野が顔を上げて常子を見る
常子「親子の絆を作り上げる事はとても大切な事だと思います
お子さんの事を真剣に考える人だからこそ
私は星野さんの事を好きになったんです」(常子の瞳から涙がこぼれる)
星野「常子さん…ありがとう」
静かに星野を見つめている常子

小橋家
常子をじっと見つめている美子(杉咲花)「転勤…」
常子(平然と)「ええ、会社の辞令ですって」
美子「とと姉ちゃんはどうなるの?」
常子「ん~私は変わらないわよ、今までどおり
いや…今まで以上にお仕事頑張ります」(と君子を見る)
切ない表情で常子を見ている君子
常子「何だかおなかすいてきちゃった、着替えてきますね」(と部屋を出る)
美子「また無理しちゃって…本当はつらいのに元気なふりして」
君子(木村多江)「そうね…つらい選択だったと思うけど
常子は納得して選んだのだと私は思うわ」

自室の机の上の「あなたの暮し40号」の上に右手をのせている常子

編集部
電話で話す常子「はい…申し訳ございません…恐らくこちらの手違いではないかと
はい…36号をすぐに送るように手配しますので少々お待ち下さい
はい…失礼します」(美子が常子を心配そうに見ている)
受話器を置いた常子に寿美子(趣里)「常子さん」
常子「はい」
寿美子「お客様がお見えです」
と、ちとせ製作所の田中(螢雪次朗)が箱を抱えて階段を上がってくる
「よう、久しぶり」
常子「田中さん!」
田中「今日はあんたらに見せてえもんがあってよ」
常子「はあ…」

テーブルの上のトースター
田中「これなんだけどよ、うちの新しいトースター」
(常子と美子がまじまじとそれを見つめている、後ろには編集部員も集まっている)
田中「すごい勢いで売れてんだよ」
常子「そうなんですか?」
美子「取っ手が大きくなって使いやすくなってますね」
田中「だろ?おまけに性能だってもう段違いさ」
美子が嬉しそうに田中の顔を見る
田中「商品試験で使ってくれ、5個ばかし持ってきたんだ」
常子「あ…そういう訳にはまいりません…でしたら買い取らせて下さい」
田中「いいっていいって!」
花山(唐沢寿明)「いくらです?(美子に)水田君に言って金を持ってきてくれ」
美子「はい」
田中「あ~分かった分かった…相変わらず融通の利かねえ会社だなあ」
常子「フフフ…すみませんあなたの暮しはこういうところなんです」(と頭を下げる)
田中「あんたらの商品試験のおかげで一時は倒産しかかったがね…
あんたに言われて安全で使いやすいトースター
なんとか作り上げたらおかげさまでよ…
いろいろあったけどあんたらには感謝してる」
常子「…そう言って頂けて何よりです」

星野が自宅の表札をはずしてバッグに入れる
「星野さん!」と常子が駆けて来る
星野「常子さん」
常子「よかった間に合って…あの…これよかったら汽車の中で食べて下さい」
(と包みを渡す)
星野「すみません、わざわざ」
子どもたちに目をやる常子「2人とも元気でね」
青葉「青葉お別れするのやだ」
青葉の前にしゃがむ常子「青葉ちゃん…
おばちゃま絶対青葉ちゃんの事忘れないからね」
青葉「ほんと?」
常子「ほんと」
青葉「ほんとにほんと?」
常子(少し吹き出して)「ほんとにほんと」
青葉「ほんとにほんとにほんと?」
常子「ほんとにほんとにほんとにぃ…青葉ちゃんの事忘れないからね」
青葉「青葉も忘れない」
大樹を見る常子「大樹君」
なぜか固くなっているような大樹「うん」
常子「大樹君は優しくてとってもいい子だと思う…でも…
お父さんの前ではしっかり者のお兄ちゃんじゃなくてもいいんじゃないかな…
つらい時は我慢せずにお父さんに頼ってみてね」
大樹「おばちゃん…ありがとう」
常子「うん」
星野に向かう常子「星野さん…今までありがとうございました
星野さんと大樹君と青葉ちゃんと過ごした時間は掛けがえのないものでした
幸せでした」(と右手を差し出す)
常子の右手を握る星野「常子さんは…僕の誇りです
小橋常子という女性と出会えた事を…僕はこれからもずっと
誇りに思い続けます」
二人の右手が名残惜しそうに離れる
星野を見つめながら小さくうなずく常子
星野「では」
常子(清々しい顔で)「では」
子どもたちを見て星野「じゃあ行こうか」
大樹「さようなら」(常子がうなずく)
青葉「じゃあねおばちゃま」
常子「じゃあね」
青葉「さようなら」
常子(青葉の髪を撫で)「さようなら」
大樹の頭を撫で常子「さようなら」
大樹「さようなら」
星野「よし、じゃあ行こう」
大樹と青葉「うん…」
と、3人が常子に背を向けて歩き始める
少しだけ辛そうな顔した常子がそれでも顔を上げ「元気でね」
3人が振り向く
大樹「うん」
青葉「さようなら」
常子が笑って手を振る「さようなら」
大樹「さようなら」
先の角を曲がる青葉が常子に手を振り、そして3人の姿は消える
涙を流し立ちつくしている常子
ほんの少しだけ口元に笑みを作ろうとしたような常子が振り向いて歩いていく

(つづく)

ああ、なるほど
長ズボンのエピは星野がそれに気付いてやれなかったという事が
ポイントだったのか
だから親としての責任を果たすために(子どもたちとの時間を増やすために)
残業の少ない名古屋に行くと…
一応理屈は通ったね(常子がかわいそうで納得はできないが)

こんな事なら再会なんてしなければよかったとちょっと思ったが
常子は最後に「幸せでした」と言っている
そうか…モデルの人が生涯未婚だったのだから常子の結婚を描くのは難しい
だから少しの時間だけでも常子に家庭に入る妻や母親のような
女としての幸せを与えてあげようと作者は思ったのかもしれないね

星野に転勤を告げられた常子が「…痛いほど分かります」と言ったのは
今の星野が17年前の自分と同じだからだろう
家族を助ける事を優先して結婚を諦めた常子と
子どもたちと過ごす時間を優先して常子を置いていく星野
「お子さんの事を真剣に考える人だからこそ
私は星野さんの事を好きになったんです」という常子のセリフも
17年前に別れる時の星野の「自分の事は後回しにして
ご家族のために全力で走り回る常子さんだから恋に落ちたんです」とそっくりだ

田中のエピは何だったのだろう?
今回は常子が可哀想すぎる話なので元気が出るような話をはさんだのだろうか
それとも今後のアカバネとの対決に田中が加勢でもしてくれるのかな?

トースターを「商品試験で使ってくれ」ってどういう意味だろう
食パンの試験をする時に使ってくれという事だろうか?


0 件のコメント:

コメントを投稿