2016年9月10日土曜日

とと姉ちゃん(138)社員を集めそれぞれの商品試験に対する思いを確認する常子

「一体どうしたんです?」と席に着く常子(高畑充希) 
腕組みをしている花山(唐沢寿明)が松永を見て
「私に話した事を常子さんたちの前で言いなさい」 
松永「はい…テスターの情報を週刊誌に漏らしたのは俺です」 
常子「松永君が?」 
美子(杉咲花)「どうして?」 
松永「金が必要だったんです…毎月毎月月賦で欲しいものを買っていたら
首が回らなくなってしまって…」 
水田(伊藤淳史)「…だから言ったじゃないか」 
常子「それで…誰に頼まれてテスターの情報を?」 
松永「それが…どこの誰かは分からないんです…
ただ協力すれば5万円やると言われて…
そいつらは俺にテスターの情報を持ち出すように言ってきました
それを基にテスターに接触し恐らく金を使って
あなたの暮しの商品試験は嘘だと証言させたんだと思います」
水田「その男まさかアカバネの…?」
美子「本当に何者か分からないんですか?」
松永「申し訳ありません……あの…常子さん」
常子「はい」
松永「僕…会社辞めます」
常子「松永君…」
松永「もう耐えられないんです…
僕は編集者になりたくてこの会社に入りました
それなのに仕事といったら電球がどれだけつくか見張ったり
ひたすら鉛筆削ったり繰り返し繰り返し飯を炊いたり…
もううんざりなんですよ
今日限りで辞めさせて下さい」(と頭を下げる)
花山「それがいい、クビにしないでやるのがせめてもだ」
常子「花山さん」
花山「止めても仕方あるまい」(と席を立つ)
常子「松永君」
立ち上がる松永「本当にお世話になりました」(と頭を下げる)
常子「…」

夜、縁側から外を見ている水田
鞠子(相楽樹)が隣に座り「もうお休みになったらいかがです?」
水田「うん…」
鞠子「松永さんの事気にしてらっしゃるの?」
水田「ずっと前から様子がおかしいと気付いてたんだ…
なのに止める事ができなかったよ」
鞠子「正平さんのせいじゃないわ」
水田「松永君が辞めるって言った時の常子さんの顔が忘れられなくて…
すごく悲しそうな顔してた
そりゃそうだよな…一緒に働いてきた社員に裏切られてあんな記事が出て…
社員を大切にしてきた常子さんだからね
自分を責めたりしてなきゃいいんだけど…」
常子を心配しているような鞠子

布団の中で常子が目を開けている
隣の布団から美子「眠れないの?」
常子が美子を見る
美子「そうよね…」
常子「独り善がりだったのかな…(と体を起こし)今日ね国実さんに
あなたの暮しは社会的に大きな影響力がある会社だって言われたわ
(美子も体を起こす)
私たちの雑誌の影響で物が売れたり売れなくなったりする
よく考えたらそれって恐ろしい事よね」
美子「恐ろしい事?」
常子「大きな責任を伴うって事よ
だからそれだけ一つ一つの企画に命を懸けて臨まなければならない
だけど…それを強いられている社員は苦しかったのかなあって…
私たちは終戦の日から一緒になって雑誌を作ってきたじゃない?
毎日の暮らしを取り戻すために試行錯誤して
それでやっとたどりついたのが商品試験だった」
美子「うん」
常子「前にも言ったように商品試験は今の時代に私たちがやるべき事だと
私は自信を持ってるわ
それを社員のみんなも理解してくれるものだとばかり…
だけど私は自分の意見を押しつけているだけだったのかもしれない」

会議用の長机に集まっている一同
常子「みんな、お仕事を中断させてしまってごめんなさい
でもどうしても聞いておきたい事があるんです
それはみんなにとってのあなたの暮しを作る事の意味です…
今や物があふれて豊かな時代になりつつあります
景気もいいし職業の選択肢だって多くある
そんな中でみんなには編集者として我が社を選んでもらったのに
商品試験のために他の雑誌ではやらなくていいような仕事まで
やらせてしまっています…
もしこの中に連日商品を試験するためだけに編集者になったのではない
という方がいらっしゃるなら正直に言って頂けませんか
(一同がそれぞれ顔を見合わせる)
心配しないで下さい、辞めてもらうとかではなくて
担当業務を見直そうかと考えています」
緑(悠木千帆)「………あの…」
常子「はい緑さん」
緑「私はその…」
常子「いいんですよ、率直なご意見をお願いします
意味のない事と思いながらお仕事をするのはつらい事でしょうから」
緑「いいえそうじゃありません…何て言えばいいんでしょう…
私はとてもやりがいを感じています」
扇田「俺もです、何たって俺たちの仕事一つ一つで
物を買う人の気持ちを左右するんですから」
寿美子(趣里)「よそじゃなかなかできない仕事だと思います」
木立「責任ある仕事に身が引き締まります」
島倉「この仕事に誇りを感じています」
本木「私も誇りを持ってまっせ」
笑い声が起こり「俺もです」「私もです」と次々と声が上がる
ほっとしたのか少し涙ぐんでいるように笑う常子「みんなありがとう」
緑「お話ってそれですか?」
常子「ええ」
緑「ああ…ひょっとして商品試験を中止するのかと思ってもう緊張しちゃったわぁ」
(一同が笑う)
常子「それはないです」
扇田「そんな訳ありませんよ、まだまだ洗濯機の商品試験もね
始まったばっかりですから」
寿美子「これからが本番ですね」
扇田「そう、これからが本番です!」
常子が笑顔でうなずく
美子が安心したように常子を見ている
花山も微笑んでうなずく

美子「皆さん準備はいいですか?」
(一同)「はい」
「では始め」と美子がストップウォッチを押す
洗濯機を試験する一同

<洗濯機の商品試験は汚れを落とす力と
洗ったあとの布地の傷み具合の確認を中心に行われ
試行錯誤を重ねました
更にそれぞれの機種の絞り器や操作つまみの使い勝手なども
さまざまな観点からチェックしていきます
ベランダや庭先での使用を想定して屋外に洗濯機を設置して
耐久性のテストも念入りに行われました>

昭和三十三年一月

<試験を始めて半年余りがたった頃…>

新聞を読んでいる宗吉(ピエール瀧)と照代(平岩紙)
宗吉「何だこの記事…」
照代「常子ちゃんが読んだら…」
宗吉「こりゃ相当落ち込むなあ」
照代「そうですねぇ…」
と、「こんにちは」と常子と扇田が店に入ってくる
照代「あら常子ちゃん」
慌てて新聞を畳んで背中に隠す宗吉
常子「えっ…何か隠しました?」
笑顔の宗吉「い~や…それより何だよ?」
常子「あっ、あの…最新号をお届けに上がりました」(と照代に雑誌を渡す)
照代「ありがとう」
宗吉「おぉそうか…あ~…用が済んだら早く帰れ、忙しいんだろ?」
常子「はあ…」
そこに厨房から顔を出した南(上杉柊平)「大将、肉を焦がしちゃいました」
宗吉がため息をついて「バカ野郎何べん言ったら分かるんだよお前は~」
と新聞紙で南の頭をたたく
常子「宗吉さん…」
宗吉「え?」
常子「その新聞…」
新聞を隠し笑ってごまかそうとする宗吉夫婦
常子「見せて頂いていいですか?」

新聞の記事を読む常子「雑誌あなたの暮しに迫る」
続きを読む扇田「あなたの暮し出版は読者テスターを脅迫し
商品試験データを偽装しているという記事が週刊誌に掲載された
当紙でもあなたの暮しに疑問を投げかけるコラムを掲載し反響を呼んだ」
常子「そこであなたの暮し出版が行っている商品試験に関して
電化製品の販売店およそ500店を対象にアンケート調査した結果を
ここに掲載する
商品試験のやり方に疑問があるという声は47.2%という結果だった」
記事の数字を凝視する常子

(つづく)

松永は初登場の時から少し生意気だったのだが
だいたいこの手のキャラは見所があって
大きく成長するパターンかと思っていたが逆だったw
金に詰まって会社を裏切り仕事の内容にまで不満を持っていたとは…
常子が叱って改心させて松永が心を入れ替え仲間もそれを温かく迎える…
というような甘ったるい展開にならなくて本当によかった
その手の非現実な性善説に依った仲良しドラマは大嫌いだ

でも常子は甘ちゃんだから自分を責めたみたいだ
「独り善がりだったのかな…」と不安になり
社員を集めて商品試験に対する思いを確認するのだが
残ったやつらは熱血漢ぞろい…
まあこれはドラマだから本当にそうなのだろうが
現実なら場の空気を読んで仕方なく合わせる人間もいるだろうし
そもそも社員全員が理想を共有でき同じ方向を向く事などありえないだろう
だからああいうシーンを見ると自分は逆にちょっと醒めてしまう
もうちょっとテンションの低いキャラが2~3人いてもいいと思うんだ…うん…

珍しく南が宗吉に叱られていた
新聞を隠すコントをやるために無理やり作ったセリフかもしれないが…
それでも南が長谷川と同じようにバカ呼ばわりされてちょっと嬉しかった
今まであまりにも南を可愛がり持ち上げすぎる描写ばかりだったから

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