2016年7月16日土曜日

とと姉ちゃん(90)二号雑誌を成功させ去る花山~豊かな暮らしを取り戻すために…

封筒に入った報酬をちゃぶ台に置く常子(高畑充希)
「おかげさまで全て売り切りましたっ」 
花山(唐沢寿明)「増刷してもすぐに売れるだろう」 
改まって礼を言う常子「いろいろとありがとうございました」 
鞠子(相楽樹)と美子(杉咲花)と君子(木村多江)も常子にならう
「ありがとうございました」 
花山「約束は守った、あとは自分たちでやるんだな」 
常子「花山さん、これからも編集長を続けて頂けませんか?」 
花山「一度だけという約束のはずだ」 
常子「私も鞠子も美子も花山さんに一から雑誌作りを教えて頂きたいんです」 
美子「お願いします」 
鞠子「お願いします」 
花山「私はもうペンを握らない…今回は君たちを見守るだけだった」 
常子「でしたら次号も同じように…」 
花山「本気で関わるとなるとそうはいかん!」 
美子「だったら本気で関わって下さい!
花山さんが本気で関わりたいと思う本作りを私たちにも携わらせて下さい」 
「…すまないがそのつもりはない…失礼するよ」
と立ち上がる花山を見つめる常子 

タイトル、主題歌イン 

玄関を出た花山を常子が表で見送る
花山「常子君」
常子「はい」
花山「一つ忠告しておくが今のままではすぐに売れなくなるぞ」
常子「なぜです?」
花山「まねされて売れなくなるのは経験済みだろ?
そうならないためには一朝一夕にはまねされない本を作るしかない」
常子「そういう本を作るのであれば編集長を引き受けて頂けるんですか?」
花山「そんな事は言っとらん…
こんな時代だからこそ伝えなくてはいけない事があるはずだ
…だが実際には作れんよ…そんな金のかかる雑誌…」

花山家
茜が膳でお絵描きをしている
電話で話す花山「やっと一区切りついた、そちらの仕事に参加させて頂くよ」
縫い物をする三枝子(奥貫薫)が花山の背中を見る
花山「うん…では月曜に…よろしく」
受話器を置いた花山が振り向く「背広とネクタイを出しておいてくれないか
次の仕事に必要になるから」
三枝子「あ…みんな食糧に換えてしまったのでないんです」
花山「そうか…」
三枝子「すみません」
花山「いや」
三枝子「…本当にもう挿絵や文章を描かないおつもりですか?
もうペンを握らないという方があんなにきれいに筆記用具を…」
隣の間の机の上にいつでも使えるように並べられた筆記用具
「…ただの習慣だ」と微笑み机に向かう花山
花山の背中を見ている三枝子

台所で手を黒くして何か(炭団[たどん]という燃料らしい)を握っている常子
花山の言葉を思い出す
(こんな時代だからこそ伝えなくてはいけない事があるはずだ…)
常子が家族を見る
美子は玄米を瓶づきしている
鞠子は鉛筆を削っている
君子は縫い物をしている
(だが実際には作れんよ…そんな金のかかる雑誌)
と、何かを思いたちハッとなる常子

どこだか貧しい家が立ち並ぶ路地を駆け抜ける常子

やはり貧しい家が並ぶ道をネクタイにYシャツ姿の一行と歩いている花山
長澤「花山、この辺り一帯だ、事務所が入るビルの建設予定地は」
花山「何だって?」
長澤「どうした?」
花山「ちょっと待ってくれ
そうなるとここに住んでいる人たちはどうなるんだ?」
長澤「よそに行ってもらうしかないな、国が進めている事だ、しかたない」
花山「立ち退かせるのか?空襲で焼け出されて行き場がない人たちだぞ」
長澤「しかたないだろ、こいつらは勝手に住み着いてるんだ
出ていけと言われて文句を言える立場じゃない」
長澤が誰かに呼ばれて場を離れる
と、国民服を着た男(磯部勉)が花山に話しかける「たばこ持ってないかい?」
花山「いえ、私は吸わないので」
国民服「そうか…あんた陸軍さん?それとも海軍さん?」
花山「はい?」
国民服「どうなってんだ?今の戦局は」
花山「何をおっしゃってるんです?戦争はもう終わったじゃありませんか」
国民服「戦争が終わった?勝ったのか?」
花山「負けたんです、何を今更…」
国民服「嘘をつくな!(花山の胸ぐらをつかみ)
日本は神国だぞ、神風が吹くんだ!
負けるなんて事絶対にあるか!分かってんのか!フフフフ…ハハハハハ!
日本国万歳!万歳!万歳!」
叫び続ける国民服の男を知り合いらしい男たちが連れていく
帽子を被った男(つまみ枝豆)「悪いな」
花山「いえ」
男「あいつ…まだ戦争が終わってないって思ってんだよ
戦地で息子亡くして空襲で女房娘を亡くして全てを失って耐えてきたのに
ある日突然、はい負けました…じゃやりきれねえよ
たとえ戦争に勝ったとしてもかあちゃんと子どもたちと引き換えに
何が残るってんだ…なあ」(と、国民服の男のところへ向かう)
泣き続ける国民服の男に目をやった花山がうつむく
そして足元に転がる空襲で焼け残った穴の開いたボロボロのフライパンを
拾い上げ眺める
「花山さん」
振り向くと常子が立っている
常子「こんにちは…お宅に伺ったら奥様が仕事仲間の方とここへと」
花山「何の用だ?」
常子「…答えが…何となく分かったんです
花山さんがおっしゃっていた誰にもまねされない雑誌…
衣服だけでなく衣食住にまつわる全ての中で
毎号私たちが大切だと思うものを調べて
実際にその生活の知恵を実験してみて体験した事を読者に伝えて
皆さんの生活が今日よりも明日と少しでも豊かになるような雑誌」
花山「ああ…そんな雑誌を作る事ができたらとこのところ考えていたんだ
…しかしそれにはとても金がかかる、何もかも実際に作ったり試したり…
そんな事ができる訳がない、夢みたいな雑誌だ」(土手に腰かける)
常子「できますよ、私となら」
花山「なぜできると言い切れる?」
常子「根拠はありません
でも、私が花山さんと一緒にやってみたいと思ったんです…それだけです」
目を閉じうつむく花山
常子「それに花山さんおっしゃってたじゃないですか
何よりも優先して守るべきだと思い込んでいたものが
間違っていたと気付かされた…と
だったら…もう間違えないようにしませんか?」
(長い沈黙)
花山「…私は戦争中、男には毎日の暮らしなどよりも
もっと大事なものがあると思い込んできた…思い込まされてきた
しかしそんなものはなかったんだな
毎日の暮らしを犠牲にしてまで守って戦うものなど何もなかった
毎日の暮らしこそ守るべきものだった」
常子「毎日の暮らし…」
花山「人間の暮らしは何ものにも優先して一番大事なものなんだ
それは何ものも侵してはならないたとえ戦争であっても
今ようやく分かった
もし、豊かな暮らしを取り戻すきっかけとなる雑誌を作れるのなら…」
常子「私となら…必ずできます
始めましょう!新しい雑誌作りを」
手にしたフライパンを見る花山

赤子を背負いタライで洗濯する母親
まな板で調理する老婆
鍋の蓋を取る女
貧しいがそれぞれに暮らしを持つ女性たち

目を伏せて考え込んでいた花山が少し目を上げる
「あの2人は何をしている?」
常子「えっ?…あっ、鞠子と美子ですか?多分今、家で…」
立ち上がる花山「バカ者!一瞬たりとも遊ばせておくんじゃない!
四六時中雑誌の事を考えさせておけ!」
常子「すみません…」
花山「全く明日からが思いやられる!」
常子「お力を…貸して頂けるんですか?」
花山「君は家族思いだから孝行娘の手伝いをしてやるだけだ
君らのためにペンを握ってやる」
常子「ありがとうございます!本当に嬉しいです」
花山「終戦の日以来、初めて他人の…それも
女性の言葉を信じてみたくなったんだ!」
花山の言葉に感極まった様子の常子「…でしたら…私も人生を賭けます」
花山が常子を見る
常子「私も自分の人生の全てをかけて新しい雑誌を作ります」
小さくうなずき笑い出す花山「ハハハハ…分かった…よろしくな、常子さん」
常子(照れ笑い)「さん…だなんてそんな…」
花山「君は社長だ、君(くん)…という訳にはいかんよ」
うなずく常子「はい…よろしくお願いします、花山さん」
花山「ああ」

<こうして常子と花山の
人々の暮らしを豊かにするための雑誌作りが始まったのです>

(つづく)

今回は花山が新雑誌の編集長になる事を決意するまでが描かれた
その要因はいろいろあるのだろうが流れで整理すると

常子だけではなく美子にも(鞠子や君子も同じ気持ちだろう)強く望まれた

ペンは握らないと言いながら筆記用具は処分していない
(妻の三枝子も花山にペンを握ってほしいと望んでいる)

長澤とは社会的弱者に対する視点で意見が合わない

戦争の亡霊のような国民服の男はかつての花山のようでもあり
花山がああなったかもしれない可能性でもあるのかな
男が失った毎日の暮らしは二度と戻らない

自分が夢想した雑誌に常子も思い至った(夢を共有できた)

常子の言葉「もう間違えないようにしませんか?」

こんな感じだろうか…
豊かな毎日の暮らしのためにという理想を2人が共有したのだろうが
常子の「人生の全てをかけます」が気になる…
竹蔵との「ととの代わりをする」という約束が
悪く言えば呪いのように常子を縛る事もあったような気がするが
この言葉が新しい呪いにならなければいいのだが…




2016年7月15日金曜日

とと姉ちゃん(89)花山に指導を受ける三姉妹~服よりもまず大事なものとは?

小橋家玄関前 
ほうきを持つ君子(木村多江)「精のつくものね
召し上がって頂けるといいんだけれど」 
手提げを持った女「そうですね」 

ちゃぶ台の上の第1号の雑誌のページに×をつけている花山(唐沢寿明)
「これも駄目…駄目…駄目…ここも駄目」 
怪訝な表情の3姉妹 
常子(高畑充希)「ほとんど全部じゃないですか」 
花山「ああ、ほとんど駄目だからな」 
美子(杉咲花)がページを指さし「あっ、この挿絵は悪くないですよね?」 
「悪い!」と×をつける花山
美子が不満そうに花山を睨む 
鞠子(相楽樹)「私の文章だっていいところはあるんじゃないですか?」(ケンカ腰) 
「君の文章で使えるのはここだけだ」と花山が(洋服)の文字に○をつける 
鞠子「洋服…って単語だけじゃないですか!」と花山を睨む 
花山「他は全く使えん!」 
鞠子「そんな…」 
全否定から入る花山に目をぱちくりさせる常子 

タイトル、主題歌イン 

花山「これ以上はインクの無駄だな…それと」
部屋の隅に積まれた雑誌に目をやる花山
「そこにある在庫を値下げして売るつもりならやめておけ
紙屋に引き取ってもらった方がマシだ」
美子「そんな言い方しなくても…」
鞠子(すごい剣幕)「駄目だ駄目だ…ばかりじゃなく具体的にどこが悪いのか
言って頂けませんか?」
常子が鞠子を諫める「それはこれからだから…」
花山を見る常子「これから教えて頂けるんですよね?」
花山「…よし、いいだろう…一度しか言わないからよく聞け」
常子「はい!」と姿勢を正す
鞠子(機嫌わるい)と美子(元気ない)も「はい」と常子にならう
花山「まず5メートルの円柱が並んで2本立っている…」
常子「ん?」
花山「その2本の上部に更に2本の円柱が平行に備え付けられている
横向きで備え付けられた円柱の上部の方が長く下部は上部よりも短い
…さあ今言ったものが何か教えてくれ」
常子「一体何の話を…」
「グズグズするな、さっさと答えんと帰るぞ!」と腰を浮かせる花山
(手は徒競走のスタート時のようにいつでも振り出せるようになっている)
常子「すみません」
鞠子「分かりました、お待ち下さい」
常子「5メートルの…円柱ってまるい…まるい柱…」
美子「全然頭に入ってこなかった」
常子「言葉だけで説明されても何が何だか…まるい円柱でしょ5メートル…」
花山が紙に何やら図を描いている
台所で話を聞いていた君子が湯飲みを運んでくる
「あの…もしかしてそれって…鳥居ではないですか?」
花山「そのとおり!よくぞお分かりに」
「アハハ!」と喜ぶ君子
3姉妹が驚いて君子を見る
「どうぞ」と湯飲みを置く君子
花山「ありがとうございます」
ちゃぶ台に正解のイラストを置く花山
美子「確かに円柱に2本の柱…」
花山「言葉だけでどれだけ説明されてもなかなか頭に入ってくるものじゃない
だがこうして絵で見れば一目で分かる
つまり文字だけではなく挿絵を使って表現しろ、視覚に訴えるんだ」
(3姉妹)「なるほど…」
花山「君たちはこの雑誌で鳥居を口で説明するようなまねをしていた訳だ
いかに愚かな事をしていたか
(美子を見て)お絵描き娘、これで分かったな?」
美子「分かりました、挿絵をもっと増やせばいいんですね?」
花山「まるで分ってない!」
美子「えっ?」
花山「君の単調で面白味のない挿絵を増やしていい訳がないだろう!」
美子(涙目)「ひどい…」
花山「おぉ~泣け泣け!」
常子「あ~よっちゃん我慢して!」
花山「常子君、鞠子君、立ちなさい」
(2人)「えっ?」
花山「早く!帰るぞ」
「はいはいはい」と慌てて立ち上がる2人
「角度をつけたり立体的に描くんだ」と
描き上げた花山のイラストを見て美子「あ…」
花山「君が描いた挿絵は正面から描かれたものばかりだった
だがそれでは動きがなく服のよさを十分に伝えられない
あらゆる角度から視覚に訴えるんだ」
美子「そうか…」
花山「よしっ、それでは文学娘!」
鞠子「はい」
花山「この挿絵に見出しをつけてみろ」
鞠子「えっ?」
「モタモタするな!」とまたもさきほどの(帰るポーズ)をする花山
皆が「あ、あ、あ、」と慌てる
鞠子「分かりました!」
イラストを手に取り言葉をイメージする鞠子「街角の喧騒と風のいたずら…」
(一同)「お~」
花山「ほう…100点」
常子と美子が「すごい!」と鞠子を見る
満足げに笑う鞠子
花山「1684点満点だ!」
鞠子の顔がひきつる
花山「この雑誌は小説を読みたい人が買うんじゃないだろ!
そんな叙情的な文章は必要ない!
分かりやすく簡潔である事が大事なんだ」
鞠子(おかんむり)「では花山さんが見出しをつけるとしたら?」
花山(オカマっぽく)「夏から初秋の明るいワンピース」
美子「そのくらいでいいのか…」
鞠子「確かに分かりやすい」
常子(鞠子に)「これからはそんな感じの言葉でお願いね」
鞠子「うん」
常子「よし、それではいよいよ次号に向けての作業を…」
花山「待て待てそうはいかない」
常子「えっ?」
花山「まだ分からんのか?まだ一番の問題点が解決してないだろ」
常子「一番の問題点?」
花山「それを改善せねば…この本の二の舞になるぞ(1号雑誌を掲げる)
君たちは大きな事を見落としている
どんな服を雑誌に載せるかばかり考えているがそれよりも大事な事がある
常子「それって一体…」
花山「帰る」
(一同)「えっ?」
立ち上がり「それを見つけない限り進める事はできないな
今日はこれで失礼する」と今度は本当に帰る様子の花山
思わず立ち上がる常子たちに
「見送り結構そんな時間があったら考えたまえ」と玄関を出て行く

「服よりもまず大事なもの…服よりもまず大事なもの…」
と呟きながら鞠子と闇市を歩く常子
「あ~気になってお買い物に集中できない」
鞠子「私も」
大勢の人混みの中、ふんどし一丁の半裸の男が常子とすれ違い
思わず振り返る2人
鞠子「衣服に関する雑誌で服よりも大事なものって本当にあるのかしら?」
常子「禅問答みたいで考えれば考えるほど答えが分からなくなるね」
と、水田(伊藤淳史)と行き会う2人
先日は妹がお世話になりました…と礼を言う常子
見つめ合い話す鞠子と水田を変な顔(鼻の下が伸びてる)で見比べる
鞠子「そんなにたくさんの服を抱えてどうしたんですか?」
水田「ああ、これですか?さっきまで組合の金を徴収していたんですけど
お金を払えない人が着ていた衣服を代わりに渡してきたもので」
常子「着ていた服を?」
水田「お金がないと着ている服を一枚ずつ剥いでお金や食べ物に換える
いつか下着だけしか残らないんじゃないかって心配になります」
常子「あ…」
水田「えっ?」
常子「それですよ」
水田「は?」
鞠子「それです…ってまさか服よりも大事なものが分かったの?」
笑顔でうなずく常子「多分」

花山「で…答えは?」
常子「服よりも大事なもの…それは…下着ではないでしょうか?」
静かに目を閉じて座っている花山
常子「そもそも洋服を着たいと思っても下着がなければ着られません
洋服を着る際の大前提です
ですがそれを忘れてすてきな洋服の作り方を説明しても
手が出せない方がいらっしゃるのではないでしょうか
つまり、まずは下着の作り方から載せる必要があった…違いますか?」
花山「ご名答!」
顔を見合わせて喜ぶ3姉妹
花山「これまで着物を着て生活していた人は
洋服用の下着を持っていない人も多い
かといって外で買うにも高価で手が届かない
どうやって下着を作り繕うのか
それを伝えれば洋服を着たい人が安心して着られるという訳だ」
(3姉妹)「ああ…」
部屋に入ってきた君子「なるほど…乳バンドなんて作らないものねえ」
娘たちが可笑しそうに笑う
君子「ん?」
常子「乳バンドって…」
美子「ねえ」
鞠子「今どきそんなふうに言いませんよ」
君子「そうなの?」
常子「はい」
花山「ええ、今はブラジアというのが一般的です」
君子「ブラジア…」
花山「ええ」
鞠子「あの…どうして花山さんは女性の洋服に詳しいのですか?」
常子「知識だけでなく女の人の目線もお持ちなような気がします」
美子「うん」
それには答えず湯飲みをすすった花山が突然「帰る」と立ち上がる
美子「えっ、えっ、どうして?」
スタスタと玄関に向かう花山「帰るといったら帰る!」
皆が立ち上がって止めようとする
常子「あっ、でもほら今から下着の作り方について話し合うんじゃ…」
靴を履く花山「それは君たちでやってくれ
いくら私でも羞恥心というものはあるんだ」
と立ち上がり振り向き「じっくりと下着を研究し記事にまとめなさい
それができたらまた呼びに来なさい!」と玄関を出る

夜の闇市で花山と五反田(及川光博)が飲んでいる
花山「全くもって迷惑な話だ!」
五反田「えっ?」
花山「お前がたきつけたんだろ?おかげで大変だ
素人三姉妹に一から教えねばならん」
五反田「ハハハ…だけど断る事もできたんですよ
花山さんも何かに惹かれて参加してるんじゃないんですか?」
花山「押し切られただけだ」
五反田「そうですかねえ…
…いいですよね常子君
まっすぐで何でも吸収しようとするから教えがいあるんじゃないですか?」
花山「空っぽなだけだ、空っぽだから何でも入っていくんだろう
…まあ、長女よりも妹たちの方が頑固かもしれんな
不思議な3人だよあれは
姉妹なのに親子のようでもあり
でも妹も姉を守ろうともする」
五反田「とと姉ちゃん…ですからね」
花山「あぁ…気になっていたんだ
それはどういう意味のあだ名だ?」
五反田「とと…父親代わりという事らしいです
十やそこらで父親を亡くして以来
常子君は家長として生きてきたそうです」
花山「そうか…(常子の3つの目標を思い出し微笑む)
まあ母親の力も大きいのだろうな
女だけで出版社を作るなんて普通は反対するだろう?
これまでも止める事もなく見守る事で
娘たちが伸び伸びと生きてきたんじゃないか?フフフ…」
五反田「彼女たちの事褒めてませんか?」
花山「…」
五反田「どうですか?もう一度ペンを握る気にはなりましたか?」
花山「…」

下着の寸法表やイラストなどの資料を確認する花山
「うん…まあ合格点をあげよう」
嬉しそうな3姉妹と何度もうなずく君子
咳払いをする花山「これを作るのに誰かの下着を犠牲にしたのなら
すまなかった」(頭を下げる)
常子「いえ…ではこの下着の記事を中心に次号を組んでいきましょう」

<常子たちが花山と苦心の末に作り出したスタアの装ひ第二号は…
想像以上の反響で売れていったのです>

闇市の露店
客が殺到する中、雑誌を売りまくる3姉妹
常子「スタアの装ひです!あ~ありがとうございます!」

(つづく)

冒頭の君子の世間話は特に意味はないのだろう
相手の女が誰だかも分からないし
ドラマの「間」のようなものだろうか

厳しくダメ出しする花山に反発する鞠子と美子だが
なんとか花山を怒らせないように気を遣う常子が健気だった

花山の「1684点満点だ!」はどこからこの数字が出てきたんだろ?

鞠子と水田を常子が冷やかすような顔で見ていたのはおそらく
前回2人の事に気付いた美子に話を聞いたからだろう

常子がすれ違った褌姿の男(他に上半身裸の男もいた)
は水田に衣服を差し出した人たちなのだろうか?
それだと水田の「いつか下着だけしか残らないんじゃないかって心配に…」
とは矛盾するのだが(既に下着だけになっている)…

なぜ女性の洋服に詳しい?女の目線を持ってる…と言われて
花山が突然帰った理由は何だろう?
その後は常子たちの誰かの下着の実物を前に
会議する展開になるのを見越して引き揚げたのかもしれないね
だから「私でも羞恥心というものはある」なのかも

五反田とのシーンでは花山が随分と小橋一家に
気持ちが入っているような印象を受けた
五反田も「彼女たちの事褒めてませんか?」と驚いてたね
五反田から見た花山の人物像は
「人をけなす事しか知らない」(86話)だからw









2016年7月14日木曜日

とと姉ちゃん(88)ちゃぶ台まで直した花山は常子たちの雑誌作りを…

小橋家の天井裏でろうそくの明かりを頼りに「アイタタタ…」と呟きながら
腰をかがめて釘を打つ花山(唐沢寿明) 

タイトル、主題歌イン 

屋根から梯子で降りてくる花山が下にいる美子(杉咲花)に余った材料を渡す 
美子がそれを落とす 
花山「おいおい気を付けろ」 
美子「はい、すみません」 
花山「屋根裏の方も塞いどいたから」 
美子「ありがとうございます、助かりました」 
ため息をつき腰を伸ばした花山が茶の間に目をやる 
「なんて事だ…ちゃぶ台が傾いてる」 
ちゃぶ台を見て首をかしげる美子「言われるとそうですね…」 
美子の両肩を押さえて強引に振り向かせる花山 
「今まで気にならなかったのか!?」 
驚いた美子がやんわりと手をふりほどく「最近いろいろ忙しくて…」 
大工道具を持ち上げて素早く茶の間に上がる花山 
美子「えっ?」 
「これもやってしまおう」とちゃぶ台をひっくり返す花山 
美子「いいんですか?」 
花山「乗り掛かった舟だ」 
美子「ありがとうございます」
君子(木村多江)が盆を手に現れる
「白湯しかありませんけど休憩なさって下さい」
花山「結構、まだ終わってませんので」
美子「ちゃぶ台も直して下さるんだって」
君子「そんな…申し訳ないですよ」
花山「ついでですから」
君子「でも…では…せめてものお礼に夕飯ご一緒にいかがですか?」
花山「それも結構」
君子「ご遠慮なさらず」
花山「家で妻が用意してます、お気持ちだけで」
君子「そうですか…」
「私の事は放っておいて下さい」と作業を続ける花山
君子と美子が顔を見合わせる
リズム良く木槌でちゃぶ台の枠を叩き調整する花山
君子「やっぱりお上手ね」
美子「はい」
「はぁ…」と少し腰を伸ばし疲れた様子の花山が
部屋の机の上にたてかけられた常子の3つの目標を目にする
君子(美子に)「…そうそう鞠子どうしたって?」
美子「闇市でいろいろよくして下さる方がいて
今日もその方と一緒に雑誌を売ってくれるお店を探してます」
君子「そう…僅かでもその売り上げが我が家の収入源だからねえ…」
美子「次に出す雑誌はきっと売れるわ…
あの…何とかさんが手伝ってくれたら…」
君子「花山さん?」
「はい?」と思わず返事をする花山
君子と美子が花山の顔を見る
「はい…はい、はい、はい!」と誤魔化す花山
話に戻る美子「そう、その花山さんの力でスタアの装ひが
売れるようになるってとと姉ちゃん言ってたわ」
花山が困った顔でチラリと見る
君子「でも常子が昨日お断りされたって」
美子「ええ、でも絶対に諦めないって…」
何かを声に出さずに呟いていた花山が辛そうに目を閉じる
美子「だけど大丈夫かしら?
とと姉ちゃんの話を聞く限り偏屈そうな人のようだし…」
木槌を一度大きく叩く花山
君子と美子がその音に驚く

カバンの破れ目を見ながらしょんぼりと歩いて家に戻る常子(高畑充希)
「ただいま帰りました」と台所に入る
美子「どうだった?見つかった?小銭入れ」
常子「ううん、どこにもなかった」
美子「昨日歩いたとこ全部?」
常子「うん…明日は花山さんのお店に行ってみようと思います」
君子「そうねえ…」
と、「ごめんください」とせつに頼まれた大工がやってくるが
君子たち「大工さんならさっき…天井もちゃぶ台も直していってくれました…」
「はぁ~それあっしじゃねえけど直ったんなら万事めでたしめでたし
それじゃあ」と、大工が帰る
君子「どうも…」
美子「さっきまでいた大工さんって…」
「あああああああぁ~!」と奥から常子のただならぬ声が聞こえる
君子と美子が駆けつけると
机の前の常子「これ私が捜してた小銭入れ…」
君子「あ…さっきまでそこにはなかった気が…」
常子「さんざん捜したからこんな所にあるはずないのに…」
美子「えっ?じゃ、さっきの大工さんが置いていったの?」
振り向く常子「ねえ…よっちゃんその大工さんってどんな人だった?」
美子「いい人よ、ちょっと偉そうだったけど」
君子「はっきり物を言う人だったわねえ」
美子「すごく怒鳴られた」
常子「それ…きっと大工さんじゃない…花山さんだ!」
君子と美子「えっ!?」
常子「どうしようどうしよう…花山さんに直させたんですよね?」
美子「私…偏屈でおっかない不気味な顔って言っちゃったわ…」
君子「あ~っ!私が大工さんと勘違いしたから…」
常子「ちょっと…かか~!」
君子「どうしたもんじゃろ…」

自宅に戻る花山
玄関で三枝子(奥貫薫)が迎える「お疲れのようですね」
花山「ああ、さんざんな目に遭った…」と、来客がいる事に気が付く

部屋に入る花山「長澤!わざわざ出向いてくれたのか」
長澤「なかなか返事をくれんから待ちくたびれてな」
花山「すまない、近々連絡を取るつもりではいたんだ」

長澤の手土産の酒を飲む2人
長澤「事業の件、考えてくれたか?」
花山「無論」
長澤「学生時代優秀だったお前の事だ、すぐ戦力になると思う…
頼む!うちに来てくれ」(頭を下げる)
花山「そう言ってくれるのはありがたいよ
珈琲屋の上がりだけで家族3人暮らしていくのは実のところ厳しくてね」
長澤「じゃあ…来てくれるのか?」
花山「ああ、よろしく頼む!」(頭を下げる)
乾杯する2人

夜、机に向かいスタアの装ひのページをめくる花山
君子と美子の言葉や雑誌への熱い思いを語る常子を思い出す

小橋一家が揃って衣服を畳んでいる
「はぁ…」とため息をつく常子
君子「そんなに落胆しなくても…」
鞠子(相楽樹)「花山さんも許してくれるわよ」
常子「花山さんにはただでさえ印象がよくないの
雨漏り修繕させたとなると…あぁ…」
君子と美子が責任を感じたのかしょんぼりとする
だがそれでも常子は2人を恨めしそうに見ている
バツが悪そうに常子から目を逸らせる君子と美子

寝室に入る花山
三枝子が茜に子守歌を歌っている♬「可愛いやリンゴ…」
三枝子「やっと眠りました」
花山「随分痩せてるな」
三枝子「しかたありませんわ
毎日三食食べられる訳ではないですしずっとお芋ばかりですもの」
花山「寝ないのか?」
「玄米が少し手に入ったので瓶づきしておこうと
こんなでも暮らしは暮らしですから」と微笑む三枝子

闇市「新生マーケット」
とある店の店主(電灯のランプを台に並べている)に頭を下げる水田(伊藤淳史)
「なんとかお願いできないでしょうか!」
後ろに並ぶ鞠子と美子も頭を下げる「お願いします!」
店主「う~ん…分かったよ
水田さんの頼みだ、その額で雑誌置いていいよ」
水田「ありがとうございます!」
2人「ありがとうございます!」
鞠子が水田の右手を両手で握り「本当にありがとうございます!」
水田「いやいやそれほどの事じゃ…」
鞠子「本当に何とお礼を言ったらいいのか…」
水田が「当然です!」と、左手を鞠子の手に添える
笑顔で手をとりあい喜ぶ2人を見て何かに気付きうっすら微笑む美子

不安そうな顔で闇市を歩く常子
気が重い様子で花山の珈琲屋に入る「ごめんください」
関元(寺田農)「おや、また来たね」
常子「あの…花山さんは?」
関元「ああ、腰が痛いってね休んでる…マスター!常連さんだよ」
花山が裏の扉から辛そうに現れる「君か…」
常子「大丈夫ですか?あの…腰は…」
花山「大した事はない、ちょっと張っただけだ」
常子「やはり昨日は…」
花山「ああ、小銭入れを届けに行ったら
なぜか大工仕事をやるはめになった」
関元「?」
常子「やっぱり…申し訳ありませんでした!」(頭を下げる)
顔を上げる常子「…ありがとうございました…
母と妹が大変感謝しておりました」
2人の会話で事情を察したような関元
「え~…今日は…お詫びとお礼に伺っただけですので…失礼します!」
と逃げ出そうとする常子の背中に花山「手伝う事にした!」
振り向く常子「えっ?」
花山「雑誌の件だ!嫌ならいいぞ」
常子「えっ?でもどうして…」
花山「私が手伝わないと君ら家族は死んでしまう…
放っておけば1冊目のようなひどい雑誌を作るだろう
売れる訳がない!売れなきゃどうやって飯を食う?」
常子「でももう二度とペンは握らないって…」
花山「ゴチャゴチャ言うならやめるぞ」
常子「ああっ、ごめんなさいっ」
花山「私がペンを握る訳じゃない
実際に動くのは君たち3人
それに…次の号だけだ」
笑顔になる常子
花山「売れた分からそれなりの報酬は頂くぞ
私だって家族を養わねばならん」
常子「でも売れるかどうか…」
花山「必ず売れる!
…君の親孝行を少しだけ手伝ってやるだけだ」
嬉しそうにうなずく常子「はい、よろしくお願いします!」(そして頭を下げる)

(つづく)

花山の「なんて事だ…ちゃぶ台が傾いてる」に笑った
壁の額が傾いでいるだけでも気になる花山には大事(おおごと)なのだろう
「言われるとそうですね…」という美子の方がおかしいかもしれない
食卓が傾いているとすっごい気になるはずだからねっ!
花山の言う通り「今まで気にならなかったのか?」だ

前回、どうして常子が戻るよりも先に花山が来たんだろう?と思ったのだが
花山が来たのは財布を落とした翌日だったんだね
つまり前回ラストの常子は財布を落としたかもしれない場所を
巡っていたのかな

久しぶりに大ボケをかました君子が自分の勘違いに気付いて
「どうしたもんじゃろの…」と常子の決めゼリフをパクりボケを重ねてきたねw

衣服を畳んでいるシーンでもコントが続く
鞠子がとりなすのだが落胆を隠さない常子
美子の目の逸らし方が可愛かった

「こんなでも暮らしは暮らしですから」
三枝子のこのセリフの意味が解らない
こうやって書き起こすと貧しい暮らしを夫に愚痴っているみたいだが
そうではないと思う(微笑んでいるし)
三枝子は常子の訪問シーンでも気さくで無防備に描かれているし
内面が見えたのは86話で花山の筆入れを見つめるシーンぐらいだろうか
おそらく夫に本当に自分がしたい事…
文筆の仕事に戻ってほしいと思っているのだろう
今回、わからない事はもう一つあってどの時点で花山が
雑誌を手伝う事を決意したかなのだが
もしかしたらこの2つは繋がっているのだろうか?
そうでも考えないとこのセリフを解釈できないからだ
つまり三枝子のセリフが花山に決意させたという事
上手く説明できないが自分たちも常子たちも貧しいという事だろうか?
(常子の語る女性のための雑誌とは三枝子のような人間を
助けるためのものだと思ったからかもしれない)
そういえば三枝子は初登場の85話で
常子たちの事が気になると語っているのだが…

着々と鞠子と水田は親密になっていっているようだ
まずは美子がそれに感づいたが肝心の鞠子自身はどういう意識だろう
果たして水田を男性として見ているのだろうか?

ラストの常子の「ああっ、ごめんなさいっ」(低い声)は
どうでもいい事を適当に謝る時の常子の言い方だろっw





2016年7月13日水曜日

とと姉ちゃん(87)言葉の力の持つ怖さ~常子が落とした財布を届ける花山だが…

花山(唐沢寿明)「コーヒーは好きか?」 
常子(高畑充希)「えっ?」 
花山「よく飲むのかと聞いている」 
常子「いや…あまり」 
花山「私は…母親が好きでね…それで私も好きになった…座りなさい」 
「はい」と常子がカウンターの席に座る 
コーヒーを淹れながら語る花山「うちは貧しい家でね
母親が女手一つで私たち兄弟を育ててくれたんだ
生きていくのがやっとで母は毎日とても苦しそうな顔をしていた
だが私が10歳のある日、母の顔が突然変わってね
元始 女性は太陽であった 真正の人であった…」
常子が微笑む「平塚らいてう」
花山「そうだ、らいてうの青鞜を読み母はようやく明るくなったんだ
言葉には人を救う不思議な力があるんだと子ども心に感じてね」
花山が常子の前にコーヒーを置く
「私もそんなふうにペンで力のある言葉を生み出し
人を救ったり人の役に立つ仕事をしたいと…
そうして言葉や絵の仕事に就くようになったんだ
やがて戦争が始まり私も召集されたんだが戦地で結核を患い帰国した
…戦う事がお国のため人々のためになると思っていた私は
役に立てなかった自分を責めた
そんな時に内務省で宣伝の仕事の誘いを受けたんだ
これは運命だと思った…」
常子「それで人のお役に立とうと?」
花山「お国が勝てば全ての国民が幸せになれる…
それから私は戦地で戦う友のため
国のために尽くそうとペンをとり言葉を選んだ、ポスターも書いた
…何の疑いもなく一億一心の旗を振って
戦争に勝つ事だけを考えて仕事をしてきた
だが去年の8月15日…その時初めて気付いたんだ
小さい頃から何よりも正しくて
優先して守るべき大事なものがあると言われていた事が
実は間違っていたんじゃないかと…
そしてそれまで言葉には人を救う力があるものだと思ってばかりいて
言葉の力の持つ怖さの方に無自覚のまま
それに関わってきてしまったのではないかとね」
常子「怖さ?」
花山「そうだ…焼夷弾は分かるよな?」
常子「はい、戦時中さんざん見ましたから」
花山「どんなものだと教わった?」
常子「あ…家々を燃やすために作られたから落ちてきたらすぐに消すようにと」
花山「そう、爆弾は怖いが焼夷弾は恐るるに足らず…
という言葉を教えられただろう?」
常子「はい」
花山「その言葉は印刷され回覧板で回され皆それを目にした
新聞や雑誌の記事にもなった
だがそれは誤った言葉だったんだ
爆弾は怖いが焼夷弾は恐るるに足らず?
とんでもない!
焼夷弾も恐ろしい爆弾に変わりはなかった
それを伝えてしまうと誰も火を消そうとせず逃げてしまう
火災はますます広がる
それを恐れてあえて誤った言葉を教えた…
それを信じた人々はどうした?
落ちてきた焼夷弾の火を消そうと必死で
焼夷弾は怖くないと信じ込んだ子どもたちが…
老人が!女たちが!
バカ正直にバケツで水を運んだ!
…気が付いた時は逃げ道はなかった
最初から逃げていれば無駄に死なずに済んだのに…
私ももし戦時中に
焼夷弾は怖くないと書けと言われていたら書いていただろう
そうしたらそれを信じた無辜の命をどれだけ奪っていたか分からん
言葉の力は恐ろしい…子どもの頃から人の役に立ちたくて
人を救いたくてペンを握ってきたはずだったのに…
そんな事も分からずに戦時中言葉に関わってきてしまった
…そして終戦になって
信じてきた事の全てが間違っていた事に気付かされた時
もうペンは握らないと決めた…
これが全てだ
さあもう帰ってくれ…」
常子「…分かりました…今日は帰ります」
花山「今日は…じゃない!二度と…来るな」
首を振る常子「やっぱり諦められません…
花山さん、私はどうしても女の人の役に立つ雑誌が作りたいんです
たくさんの女の人たちが今、この戦後の日本で
物がない、お金もない、仕事もない…
先行きが見えないこのひどい状況の中で必死にもがきながら生きています
そんな皆さんの毎日の苦しい暮らしに
少しでも明かりを灯せるような雑誌を作りたいんです
…コーヒーありがとうございました、また来ます」
花山「来んでいい!」
常子が出て行った後、カウンターに手をつき首を振る花山
と、床に財布が落ちている事に気付く
慌てて表に出るが常子の姿はもうない
がまぐちの財布を開いてみると内側に常子の名前と住所が書いてある

せつ(西尾まり)「雨漏りが?」
君子(木村多江)「ええ、すごいんです」
せつ「だったらちょうどいいわ
今うち大工さんが来てるの、戸の立てつけが悪くて
うちのが終わったら君子さんとこ寄るよう言っとくわ」
君子「いいんですか?」
せつ「いいのいいの」
君子「あ…でも…」
せつ「お代なら大丈夫よ、うちの親戚筋だから気にしないで
今の世の中持ちつ持たれつよ」
君子「ありがとうございます」
せつ「じゃあ大工さんに伝えとくね」
君子「はい、すみません」
せつ「またね」
君子「はい」
君子が家に入るとすぐに住所を写したメモを手に花山が現れる
表札を確認する花山「ごめんください」
「は~い」と、玄関の戸を開ける君子
花山「あの…こちらは小橋さんのお宅ですか?」
君子「あら…随分お早いんですね」
花山「はい?」
君子「お待ちしておりました、よろしくお願い致します」
花山「待っていた?私をですか?」
君子「ええ、さあさあどうぞどうぞこちらへ」
「いや…」と首をひねりながら家に上がる花山
居間の天井を見上げる君子「これなんです」
花山「何がです?」
君子「天井です」
天井には大きな雨漏りのシミがある
花山「随分ガタが来ているようだが」
君子「さすが分かるんですね」
花山「そりゃあ見れば分かりますよ
天井の他にも家のあちこちが傷んでる」
君子「そうなんですよ
女しかいないものでどうしても手入れが行き届かなくて」
花山「はぁ…」
君子「あっ、すみません、ではお願いします」と、どこかへ行こうとする
花山「いや、ちょっと待って下さい」
君子「すみません、私夕飯の支度が」
花山「いやいや待って下さいお願いとは一体…」
(美子の声)「ただいま帰りました」
君子「あっ、お帰りなさい」
美子(杉咲花)「かか、遅くなってごめんなさい」
君子「ううん」
美子「雑誌はまり姉ちゃんに任せて手伝いに戻ってきました」
君子「あらいいのに」
美子「だって雨漏りの修理は?」
君子「それがね、大工さんに来て頂けたの」
驚いた顔で花山が振り向く
美子「そうなんですか…よろしくお願いします」
花山「いや私は…」
美子「私も手伝います」
「そうじゃない!あの…何か勘違いをなさっているようですが
私は雨漏りの修理になど…」
と、天井のシミを見た花山が「こんなにしやがって…」と呟く
怪訝な顔をする君子と美子
突然「あぁ~!」と頭をかきむしる花山に驚く君子たち
美子「あの…」
怒りを抑えるように花山「道具はどこだい?」
美子「道具?」
花山「金づちやらの大工道具だよ」
美子「大工さんなのに持ってないんですか?」
花山「いいから持ってきなさい!」
「はい!」と慌てて道具を取りにいく美子
花山「このちゃぶ台どかします」
「あっ、はい」と様子がおかしいとは思いながらも花山とちゃぶ台を運ぶ君子

破れているのか口が開いているカバンを提げて歩く常子
おそらく家に向かっているのだろうか

(つづく)

8月15日全てに気付いた…とは何に気付いたという事なのか?
花山の話が長いので解りにくいが大きく分けて2つだろうか
一つ目は小さい頃から何よりも正しくて優先して守るべき大事なもの
(暗に天皇の事を言ってる?)があると言われていた事が
実は間違っていたんじゃないかと気付いた事
二つ目は言葉の力の持つ怖さに気付いたという事
そしてそんな事も分からずに戦時中言葉に関わる仕事をしてしまった事に
責任を感じているからペンを握るのをやめたという事だろう

常子の「また来ます」に笑った
確かに理由を聞いたら帰るとは約束したが
二度と来ないとは約束してないからなw

久しぶりに君子の大ボケがさく裂した
いつ以来だろう?
1話で常子を受け止めるためにざるを持ってきたのが印象的で
大ボケキャラだと思っていたが
その後はそういうシーンはそんなにはなかったかなあ

花山も最初に「小橋さんのお宅ですか?」じゃなくて
「小橋常子さんのお宅ですか」と言わなければダメだろう
小橋なのは表札を見れば分かるんだし…
まあそれだと君子がボケられないけどねw

それよりも一番不自然なのが美子だ
帰宅したら居間の真ん中に知らない男が仁王立ちしているのに
君子が大工だと紹介するまで
まるで目に入らないかのように君子と普通に会話してしまっている
花山は幽霊じゃないんだからっ!

天井のシミを見て「こんなにしやがって」
と、花山が修理をする気になったのは几帳面な性格だから?
物が傾いていたり配置が乱れていると
すぐに直さないと落ち着かない人物設定なのはこのエピソードのためかしら

初対面時に策を弄して花山にイラストを描かせた常子だが
財布を落としたのはわざとじゃなくてガチみたい
ラストで常子のカバンが破れているからだ
呑気に歩く常子の顔が花山の言ったマヌケ面に見えるw




2016年7月12日火曜日

とと姉ちゃん(86)関元から花山の過去を聞かされる常子~8月15日全てに気付いた…とは?

花山が出て行ってしまった店でコーヒーを飲む常子(高畑充希) 
「あの…お二人はどういう?」 
関元(寺田農)「うん?ああ…息子と彼がね戦友だったんだ」 
常子「戦友?」 
関元「うん、陸軍の同じ部隊でね…入隊以来なぜか気が合ったそうだ 
花山君はね、帝大出なのに幹部候補生を志願しなかった 
で、息子と同じただの二等兵から始めて相当大変だったそうだ
猛訓練でメチャクチャに…
兵隊たちが死んでもすぐに代わりの兵隊が来る 
一銭五厘の葉書一枚で替えはいくらでも集まると…
とことんひどい扱いを受けたそうだ 
そんな中で息子と花山君は絆を深めていったらしいが
彼は満州で結核にかかってね、病気除隊になったんだよ 
その時、息子や戦友たちを残して一人帰国する事に
後ろめたさを感じていたらしい…
戻ってくると少しでもお国のために役立とうと
内務省の宣伝の仕事を引き受けたと言っていた 
花山君が内地に戻ったあと
息子も満期除隊になってひとたびは帰ってきたんだ 
そんな縁で戦争が終わったあと
この店を手伝ってくれないかと言われて…
きっと身寄りのない僕を案じて声をかけてくれたんだろう 
あっ…ハハッ…息子は結局戦死したんだ
除隊後1年で再召集され南方で…
一銭五厘の命だが僕にとっては掛けがえのないただ一人の息子だった
終戦後花山君はすぐに弔問に来てくれてね…
息子の遺影を前にずっと泣いていたよ
泣いてる姿を見たのはあれが初めてだった
その時に彼が言ったんだ
8月15日全てに気付いた…と」
常子「8月15日…何に気付いたんですか?」
関元「その時は…とても聞く気になれなかった」

厳しい顔つきで闇市を歩く花山(唐沢寿明) 

自室で花山の描いたイラストを眺め何かを思う常子 

<鞠子と美子は闇市の一角に場所を見つけ
売れ残った雑誌を売り出したのですが…>

美子(杉咲花)「まさか半額近く値下げしても売れないなんて…」
鞠子(相楽樹)「まだ定着してないからよ
ここで売り続けたらいずれお客さんも…」
美子「そうかなあ…」
鞠子「これなら手間賃も払わないで済むし」
と、2人組の闇市の男が現れショバ代を要求してくるのだが
露天商組合の水田(伊藤淳史)が頭を下げてその場を切り抜ける
水田「駄目じゃないですか、勝手に店出しちゃ」
鞠子「すみません、知らなかったもので」
水田「いいですか?まず露店組合の入会金として10円かかります
そこに組合費が月3円、支部費月2円、1日のゴミ銭として1円、
道路占有税1円で直接税が50銭から2円
つまり最低でも37円が月々かかる訳です」
美子「37円?」
水田「別の輩に絡まれないうちに引きあげて下さい」
美子「でも…この本売らないと…」
水田「そうは言っても…」
鞠子「お金を作らないと次の雑誌を出せないんです
なんとかなりませんか?」
目をのぞき込み懇願する鞠子に水田「分かりました!
格安で置かせてくれる露店を探してみましょう」
「ありがとうございます」と、笑顔になった鞠子に
「あっ、いえ…」と水田が相好を崩す

おでん屋のような店
五反田(及川光博)「戦争が終わって花山さんは思うところあって
ペンをおく事にしたのか」
常子「おそらくそういう事だと思います」
五反田「それでどうするつもり?花山さんの事はもう諦めるの?
…僕はあの人にこの業界に残ってほしいんだ
だから花山さんに助言をもらうように言ったのさ」
常子「えっ?」
五反田「いや、もちろん君の役に立つと思ったからでもある
だけど花山さんの心を変えるきっかけにもなると思ったんだ」
常子「どうして私が行ったら花山さんが変わるんですか?」
五反田「君の事…覚えてたんだ
人をけなす事しか知らないあの人は
昔から興味のない人間にはとことん冷たいんだよ
それが君の事は覚えてたんだよ
裸足で走るなんて面白い女だってさ」
常子「ああ…その事ですか」
五反田「いや、他にも
私の意地悪にめげず食らいついてきた、いい根性をしてる…ってさ」
常子「そうでしたか…」
五反田「だからまだ諦めるのは早いんじゃない?
花山さんも心のどこかでは君が食らいついてくるのを待ってるんじゃない?」
常子「いや…今回は本気で帰れとおっしゃってました…
でも…私、諦めたくありません」

少し小高い場所からバラック造りの貧しい暮らしを眺めている花山

三枝子(奥貫薫)が木箱の蓋を開け
中にある筆記用具(おそらく花山のもの)を見て何かを思う

珈琲屋
例によって絵の額縁やテーブルの位置を微調整している花山
関元「後でやっておくよ」
花山「いえ、すぐやらないと落ち着かないんです
傾いていたり配置が乱れていると気になってしまって」
関元「昨日のあの娘…」
花山「はい?」
関元「なかなか面白い娘だね」
顔をそむける花山
関元「フフッ、花山君もそう思ってんだろう?」
花山「いえ私は…」
「フフフ…じゃあ」と関元が買い出しに出かける

花山がテーブルの調整を続けているとドアの開く音がする
外に立っているのは常子だ
頭を下げて挨拶する常子
花山「どうしてここにいる?何しに来た?」
店に入りドアを閉める常子「もう一度お話しさせて頂けませんか?」
花山「君が粘り強い根性の持ち主なのは知っている
だがこんな時に発揮せんでいい!」
常子「昨日ご老人から伺いました」
花山「ご老人?」
常子「8月15日全てに気付いた…って」
常子を睨んでいた花山が後ろを向く
常子「一体何に気付かれたんですか?」
棚の食器を調整しているような花山
常子「教えて下さい!なぜペンを握らないのか」
「…うるさい女だな君は」と振り向いた花山
「帰れと怒鳴りつけたいところだがそれでは君は帰らない分かってる」
常子(照れたように笑って)「随分お詳しい…」
花山「うれしそうにするんじゃない!」
常子「すみません」
花山「はぁ…いいか?理由を聞いたら帰ると約束しろ、ならば教えてやる」
常子「…」
花山「では言わん!ずっとそこで待つがいい、コーヒーをどんどん頼め!」
カップを「はい、はい、」とカウンターに並べる花山
常子「分かりました!…教えて下さい、お聞きしたら帰ります」
対峙する花山と常子

(つづく)

今回は何だか説明回だった
関元が花山の過去を語り
水田が露店を出す決まりを語り
五反田が常子に花山を薦めた理由を語った

あの賢い鞠子が場所代の事を知らなかったとか絶対不自然だろw
もしかしたらすっ呆けて嘘ついてるのかな?
まあでも鞠子のやる気モードは継続中みたいで安心した

五反田が語る花山の人物像
「人をけなす事しか知らない…昔から興味のない人間にはとことん冷たい」
これってただのイヤな奴じゃないのw
まあ本人も「私の意地悪にもめげず…」と語っているから
性格が悪いという自覚はあるみたい

常子が照れて花山のツッコミ「うれしそうにするんじゃない!」に笑った

2016年7月11日月曜日

とと姉ちゃん(85)的確な指摘をする花山を常子は編集長に迎えたいと思うが…

昭和二十一年七月 

雨が降る中、傘をさした常子(高畑充希)がメモの住所をたよりに家を探している 
「花山」の表札を見つける常子 
「はいはいお手紙届いてるかなあ?」と腕に抱いた女の子に話しかけながら
三枝子(花山の妻・奥貫薫)が玄関の戸を開ける 
常子を見る三枝子「どちら様?」 
常子「あっ…あの…私」 

タイトル、主題歌イン 

花山家居間
常子「茜ちゃん2歳…3歳ですか?」
三枝子「3歳です…ほらきちんとご挨拶なさい」
常子「うん?」
茜は常子の方を見ないで三枝子に抱きつく
「フフフフ…」と幸せそうに笑っている三枝子
常子「照れ屋さんなんですね」
三枝子「甘えん坊でいつもこんな感じで」
と、「ただいま」と花山(唐沢寿明)が帰ってくる
挨拶する常子「お邪魔しております
私、5年前に一度お目にかかった事がある…」
部屋の入口で仁王立ちの花山「覚えてる、甲東出版の小橋常子だ」
常子「あ…ああ…でも今はそちらを辞めて…」
花山「知ってる、何だ?用件を言いたまえ」
封筒から「スタアの装ひ」を取り出す常子
「あの…私、雑誌を作ったんです母と妹2人で
ですが…思うように売れずどうしたらいいか行き詰ってしまって
五反田さんに相談したところ花山さんを紹介して頂いたんです
お力を貸して頂けないでしょうか」
花山「力など貸さん帰れ、五反田も余計な事を」
三枝子「あなた…」
花山「(三枝子に)お前も素性の分からぬ者を勝手に家に上げるな
強盗や詐欺の類いだったらどうする?
(常子を見て)ああいう害のなさそうなまぬけ面でも油断するな」
三枝子「(常子に)ごめんなさいね」
常子「いえ」
三枝子「今お茶いれますね」
常子「あっ、ありがとうございます」
三枝子が部屋を出ていき、雑誌を手に立ち上がった常子が
「あの…せめてこの雑誌の駄目なところを一度だけでも見て頂けませんか?」
花山「駄目なところしかない」
常子「そんな見もしないで…」
花山「たまたま闇市で買ったんだ」
常子「えっ?どうして…」と笑顔になり「そうなんですか?」
花山「買った事を後悔したよ
何を見せたいんだ?文章か?洋服か?テーマは何だ!?
どのページを見ても同じような割り付けで飽き飽きする
紙も劣悪で手触りも悪い
こんなものに7円払うならちり紙を100枚買う事を勧めるね!
そもそも君は読者を想像できていない
外国人や一握りの令嬢が着るような浮世離れした洋服を見せて何になる?
周りを見てみろ!
焼け野原の中、食う物も着る物も最低限しかない中で生きてるんだ
作り方を載せたところで材料などどうやって手に入れる?
型紙も載せないで読者が本当に作れると思うのか?」
ぐうの音も出ないというよりはそんな事考えもしなかったという顔の常子
花山「もういいだろ…帰れ」

五反田(及川光博)「でもよかったじゃないか、結局助言はもらえたんだろ?」
常子「的確で圧倒されました」
五反田「才能は抜群だ、ただ…僕が仕事の依頼をした際言われたんだ…
二度とペンは握らないとね」
常子「どうしてですか?」
五反田「何だか疲れたって濁された…
今は品川で珈琲屋を始めたらしい」
常子「花山さん…私たちの編集長になって下さいませんかね…」

小橋家
「どうしたもんじゃろのぉ…」と呟く常子
君子(木村多江)「花山さんって方の事?」
常子「ええ」
鞠子(相楽樹)「いいんじゃないの?無理して編集長をやって頂かなくても」
常子「う~ん…でも花山さんの指摘ってすごく的を射ていると思わない?」
美子(杉咲花)「う~ん…確かに」
鞠子「けど、私の文章のよさが分からないだけかもしれないし
そもそもその方は断ったんでしょ?」
常子「まあ…そうなんだけどね」
ちゃぶ台の上に受けた鉢に雨漏りの滴が落ちる
天井を見上げる常子「晴れたら雨漏りの修繕しないとね」
君子「いいのいいの、うちの事は私に任せて
あなたは花山さんのところに伺ったら?」
常子「ん?」
君子「どうしても諦められないんでしょ?」
笑顔になって「はい」と答える常子

花山家の食卓
立ち上がった花山が柱にかかった花差しを微調整する
三枝子「あ…すみません」
花山「いや」
三枝子「昼間いらっしゃった小橋さんって…」
花山「うん?」
三枝子「お母様と妹さん…女だけで雑誌を作ってるっておっしゃってましたけど
それで暮らしていけるんですかね?」
花山「人の心配している余裕などないだろ」
三枝子「そうですけど何だか気になって」
調整に満足した花山が花差しを指さし「よし」
席に戻った花沢「今度、長澤に会おうと思う」
三枝子「長澤さん?」
花山「古くからの知人だ
一緒に衣料の事業をやらないかと誘われている」
三枝子「事業をなさるの?」
花山「まだ決めた訳じゃない、話を聞いてみるだけだ」
三枝子「そうですか」
花山「どのみち今の暮らしはもう少しよくせねばな
今のままの貧しい食事では茜が不憫でね」

<鞠子と美子は売れ残った雑誌を手に闇市に向かったのですが…>

書店の男「あんたらか、またあの雑誌かい?
懲りないね、あんなに売れ残ったのに」
美子「7円から4円に値下げすればまだ売れると思うんです」
鞠子「なので置いて頂けませんか?」
男「安くするのは構わねえがこっちがもらう額は変わんねえよ」
鞠子「じゃあ今までどおり3円って事ですか?
そんなに払ったら利益なんてないんです…3円なんて…」
男「嫌なら置き場所はない、帰んな!」

住所のメモを手に花山の珈琲屋を訪ねる常子
壁には花山が描いたようなかわいらしい家のイラストが飾ってある
「ああ、いらっしゃい」と老人(関元・寺田農)が顔を出す
関元「あっ、好きな席にどうぞ」
カウンターの前の席に腰かける常子
関元「うちはコーヒーしかないから」
常子「あ…はい…あの…花山さんはいらっしゃいますか?」
関元「ん?ああ…マスター!お客さんだよ」
花山が現れる「また君か…」
関元「お水持ってきますね」
花山「接客など結構です、客じゃありませんから」
関元「えっ?」
常子「すみませんコーヒーを1つ」
花山「何?」
常子「注文しましたから私はもう客です」
関元「ホホホ…コーヒーね…フフフ」と外に出る
花山「昨日の話なら何度来ても同じ事だ」
棚の食器が気になるような花山
常子「昨日の話ではありません
昨日は雑誌の助言を頂きたく伺いました
今日は雑誌の編集長として入って頂きたく参ったんです」
花山「どういう頭を持てばそうなる?
助言するのを断った人間が編集長になる訳などなかろう!」
常子「ですからそこを説得しようと」
花山「無駄だ帰れ」
常子「帰りません…
花山さんとお会いするといつもこのやり取りですね…
最初にお会いした時も先日のお宅でも」
花山「君が来てほしくない時に来るからだ」
常子「ではいつ伺えば?」
花山「私の葬儀だ」
常子「えっ?」
花山「死んでいれば君の話を聞かなくて済む」
常子「はぁ…」

外にも話が聞こえたようで湯を沸かしている関元が笑う

常子「本当に失礼な物言いをなさいますね」
棚に並べた食器の微調整が終わり「よし…」と外へ向かう花山
常子「二度とペンを握らないのはなぜなんですか?」
花山の足が止まる
常子「本当の理由を…教えて頂けませんか?」
振り向く花山「聞いてどうする?」
常子「どうしても花山さんと一緒に雑誌を作らせて頂きたいんです」
花山「そんな事は知らん、大体君は身勝手すぎる何度も押しかけてきて」
常子「申し訳ございません…
でも花山さんほどの才能がありながらご自身で身を引かれる…」
花山「帰れ目障りだ」
常子「花山さん…」
花山「何も話す気はない出ていけ!」
ふてぶてしく席に座る常子
うなずく花山「分かった、君が帰らんのなら私が帰る」
立ち上がる常子
外の関元に「あとは頼みます」と声をかけ花山が店を出ていく
黙ってその後ろ姿を見つめ途方に暮れる常子

(つづく)

害のなさそうなまぬけ面w
花山うまい事言う!

花山が妻子に優しいのはなんだか意外だった
もっと亭主関白で妻にモラハラとか言葉責めしてそうなイメージだが

「私の文章のよさが分からないだけかも…」
心配性で冷静な鞠子だけど自分の才能には絶対の自信を持ってるんだなw

書店の男は場所代で7円の中から3円も取っていたのか!

花山は内務省のシーンでも壁に張った標語を微調整していたが
あの指さして「よし」はこれからもずっとやるんだろうか?
あんな神経質な人がいたら鬱陶しいしドラマで毎回見せられるのも…
あの癖みたいなの治ってくれないかなあ

初対面の69話では常子が「賭け」の話で一本取ったんだけど
今回は「葬儀」の話で花山の勝ちかな
この2人のとんち合戦みたいなのもずっと続くのだろうか?