2016年7月15日金曜日

とと姉ちゃん(89)花山に指導を受ける三姉妹~服よりもまず大事なものとは?

小橋家玄関前 
ほうきを持つ君子(木村多江)「精のつくものね
召し上がって頂けるといいんだけれど」 
手提げを持った女「そうですね」 

ちゃぶ台の上の第1号の雑誌のページに×をつけている花山(唐沢寿明)
「これも駄目…駄目…駄目…ここも駄目」 
怪訝な表情の3姉妹 
常子(高畑充希)「ほとんど全部じゃないですか」 
花山「ああ、ほとんど駄目だからな」 
美子(杉咲花)がページを指さし「あっ、この挿絵は悪くないですよね?」 
「悪い!」と×をつける花山
美子が不満そうに花山を睨む 
鞠子(相楽樹)「私の文章だっていいところはあるんじゃないですか?」(ケンカ腰) 
「君の文章で使えるのはここだけだ」と花山が(洋服)の文字に○をつける 
鞠子「洋服…って単語だけじゃないですか!」と花山を睨む 
花山「他は全く使えん!」 
鞠子「そんな…」 
全否定から入る花山に目をぱちくりさせる常子 

タイトル、主題歌イン 

花山「これ以上はインクの無駄だな…それと」
部屋の隅に積まれた雑誌に目をやる花山
「そこにある在庫を値下げして売るつもりならやめておけ
紙屋に引き取ってもらった方がマシだ」
美子「そんな言い方しなくても…」
鞠子(すごい剣幕)「駄目だ駄目だ…ばかりじゃなく具体的にどこが悪いのか
言って頂けませんか?」
常子が鞠子を諫める「それはこれからだから…」
花山を見る常子「これから教えて頂けるんですよね?」
花山「…よし、いいだろう…一度しか言わないからよく聞け」
常子「はい!」と姿勢を正す
鞠子(機嫌わるい)と美子(元気ない)も「はい」と常子にならう
花山「まず5メートルの円柱が並んで2本立っている…」
常子「ん?」
花山「その2本の上部に更に2本の円柱が平行に備え付けられている
横向きで備え付けられた円柱の上部の方が長く下部は上部よりも短い
…さあ今言ったものが何か教えてくれ」
常子「一体何の話を…」
「グズグズするな、さっさと答えんと帰るぞ!」と腰を浮かせる花山
(手は徒競走のスタート時のようにいつでも振り出せるようになっている)
常子「すみません」
鞠子「分かりました、お待ち下さい」
常子「5メートルの…円柱ってまるい…まるい柱…」
美子「全然頭に入ってこなかった」
常子「言葉だけで説明されても何が何だか…まるい円柱でしょ5メートル…」
花山が紙に何やら図を描いている
台所で話を聞いていた君子が湯飲みを運んでくる
「あの…もしかしてそれって…鳥居ではないですか?」
花山「そのとおり!よくぞお分かりに」
「アハハ!」と喜ぶ君子
3姉妹が驚いて君子を見る
「どうぞ」と湯飲みを置く君子
花山「ありがとうございます」
ちゃぶ台に正解のイラストを置く花山
美子「確かに円柱に2本の柱…」
花山「言葉だけでどれだけ説明されてもなかなか頭に入ってくるものじゃない
だがこうして絵で見れば一目で分かる
つまり文字だけではなく挿絵を使って表現しろ、視覚に訴えるんだ」
(3姉妹)「なるほど…」
花山「君たちはこの雑誌で鳥居を口で説明するようなまねをしていた訳だ
いかに愚かな事をしていたか
(美子を見て)お絵描き娘、これで分かったな?」
美子「分かりました、挿絵をもっと増やせばいいんですね?」
花山「まるで分ってない!」
美子「えっ?」
花山「君の単調で面白味のない挿絵を増やしていい訳がないだろう!」
美子(涙目)「ひどい…」
花山「おぉ~泣け泣け!」
常子「あ~よっちゃん我慢して!」
花山「常子君、鞠子君、立ちなさい」
(2人)「えっ?」
花山「早く!帰るぞ」
「はいはいはい」と慌てて立ち上がる2人
「角度をつけたり立体的に描くんだ」と
描き上げた花山のイラストを見て美子「あ…」
花山「君が描いた挿絵は正面から描かれたものばかりだった
だがそれでは動きがなく服のよさを十分に伝えられない
あらゆる角度から視覚に訴えるんだ」
美子「そうか…」
花山「よしっ、それでは文学娘!」
鞠子「はい」
花山「この挿絵に見出しをつけてみろ」
鞠子「えっ?」
「モタモタするな!」とまたもさきほどの(帰るポーズ)をする花山
皆が「あ、あ、あ、」と慌てる
鞠子「分かりました!」
イラストを手に取り言葉をイメージする鞠子「街角の喧騒と風のいたずら…」
(一同)「お~」
花山「ほう…100点」
常子と美子が「すごい!」と鞠子を見る
満足げに笑う鞠子
花山「1684点満点だ!」
鞠子の顔がひきつる
花山「この雑誌は小説を読みたい人が買うんじゃないだろ!
そんな叙情的な文章は必要ない!
分かりやすく簡潔である事が大事なんだ」
鞠子(おかんむり)「では花山さんが見出しをつけるとしたら?」
花山(オカマっぽく)「夏から初秋の明るいワンピース」
美子「そのくらいでいいのか…」
鞠子「確かに分かりやすい」
常子(鞠子に)「これからはそんな感じの言葉でお願いね」
鞠子「うん」
常子「よし、それではいよいよ次号に向けての作業を…」
花山「待て待てそうはいかない」
常子「えっ?」
花山「まだ分からんのか?まだ一番の問題点が解決してないだろ」
常子「一番の問題点?」
花山「それを改善せねば…この本の二の舞になるぞ(1号雑誌を掲げる)
君たちは大きな事を見落としている
どんな服を雑誌に載せるかばかり考えているがそれよりも大事な事がある
常子「それって一体…」
花山「帰る」
(一同)「えっ?」
立ち上がり「それを見つけない限り進める事はできないな
今日はこれで失礼する」と今度は本当に帰る様子の花山
思わず立ち上がる常子たちに
「見送り結構そんな時間があったら考えたまえ」と玄関を出て行く

「服よりもまず大事なもの…服よりもまず大事なもの…」
と呟きながら鞠子と闇市を歩く常子
「あ~気になってお買い物に集中できない」
鞠子「私も」
大勢の人混みの中、ふんどし一丁の半裸の男が常子とすれ違い
思わず振り返る2人
鞠子「衣服に関する雑誌で服よりも大事なものって本当にあるのかしら?」
常子「禅問答みたいで考えれば考えるほど答えが分からなくなるね」
と、水田(伊藤淳史)と行き会う2人
先日は妹がお世話になりました…と礼を言う常子
見つめ合い話す鞠子と水田を変な顔(鼻の下が伸びてる)で見比べる
鞠子「そんなにたくさんの服を抱えてどうしたんですか?」
水田「ああ、これですか?さっきまで組合の金を徴収していたんですけど
お金を払えない人が着ていた衣服を代わりに渡してきたもので」
常子「着ていた服を?」
水田「お金がないと着ている服を一枚ずつ剥いでお金や食べ物に換える
いつか下着だけしか残らないんじゃないかって心配になります」
常子「あ…」
水田「えっ?」
常子「それですよ」
水田「は?」
鞠子「それです…ってまさか服よりも大事なものが分かったの?」
笑顔でうなずく常子「多分」

花山「で…答えは?」
常子「服よりも大事なもの…それは…下着ではないでしょうか?」
静かに目を閉じて座っている花山
常子「そもそも洋服を着たいと思っても下着がなければ着られません
洋服を着る際の大前提です
ですがそれを忘れてすてきな洋服の作り方を説明しても
手が出せない方がいらっしゃるのではないでしょうか
つまり、まずは下着の作り方から載せる必要があった…違いますか?」
花山「ご名答!」
顔を見合わせて喜ぶ3姉妹
花山「これまで着物を着て生活していた人は
洋服用の下着を持っていない人も多い
かといって外で買うにも高価で手が届かない
どうやって下着を作り繕うのか
それを伝えれば洋服を着たい人が安心して着られるという訳だ」
(3姉妹)「ああ…」
部屋に入ってきた君子「なるほど…乳バンドなんて作らないものねえ」
娘たちが可笑しそうに笑う
君子「ん?」
常子「乳バンドって…」
美子「ねえ」
鞠子「今どきそんなふうに言いませんよ」
君子「そうなの?」
常子「はい」
花山「ええ、今はブラジアというのが一般的です」
君子「ブラジア…」
花山「ええ」
鞠子「あの…どうして花山さんは女性の洋服に詳しいのですか?」
常子「知識だけでなく女の人の目線もお持ちなような気がします」
美子「うん」
それには答えず湯飲みをすすった花山が突然「帰る」と立ち上がる
美子「えっ、えっ、どうして?」
スタスタと玄関に向かう花山「帰るといったら帰る!」
皆が立ち上がって止めようとする
常子「あっ、でもほら今から下着の作り方について話し合うんじゃ…」
靴を履く花山「それは君たちでやってくれ
いくら私でも羞恥心というものはあるんだ」
と立ち上がり振り向き「じっくりと下着を研究し記事にまとめなさい
それができたらまた呼びに来なさい!」と玄関を出る

夜の闇市で花山と五反田(及川光博)が飲んでいる
花山「全くもって迷惑な話だ!」
五反田「えっ?」
花山「お前がたきつけたんだろ?おかげで大変だ
素人三姉妹に一から教えねばならん」
五反田「ハハハ…だけど断る事もできたんですよ
花山さんも何かに惹かれて参加してるんじゃないんですか?」
花山「押し切られただけだ」
五反田「そうですかねえ…
…いいですよね常子君
まっすぐで何でも吸収しようとするから教えがいあるんじゃないですか?」
花山「空っぽなだけだ、空っぽだから何でも入っていくんだろう
…まあ、長女よりも妹たちの方が頑固かもしれんな
不思議な3人だよあれは
姉妹なのに親子のようでもあり
でも妹も姉を守ろうともする」
五反田「とと姉ちゃん…ですからね」
花山「あぁ…気になっていたんだ
それはどういう意味のあだ名だ?」
五反田「とと…父親代わりという事らしいです
十やそこらで父親を亡くして以来
常子君は家長として生きてきたそうです」
花山「そうか…(常子の3つの目標を思い出し微笑む)
まあ母親の力も大きいのだろうな
女だけで出版社を作るなんて普通は反対するだろう?
これまでも止める事もなく見守る事で
娘たちが伸び伸びと生きてきたんじゃないか?フフフ…」
五反田「彼女たちの事褒めてませんか?」
花山「…」
五反田「どうですか?もう一度ペンを握る気にはなりましたか?」
花山「…」

下着の寸法表やイラストなどの資料を確認する花山
「うん…まあ合格点をあげよう」
嬉しそうな3姉妹と何度もうなずく君子
咳払いをする花山「これを作るのに誰かの下着を犠牲にしたのなら
すまなかった」(頭を下げる)
常子「いえ…ではこの下着の記事を中心に次号を組んでいきましょう」

<常子たちが花山と苦心の末に作り出したスタアの装ひ第二号は…
想像以上の反響で売れていったのです>

闇市の露店
客が殺到する中、雑誌を売りまくる3姉妹
常子「スタアの装ひです!あ~ありがとうございます!」

(つづく)

冒頭の君子の世間話は特に意味はないのだろう
相手の女が誰だかも分からないし
ドラマの「間」のようなものだろうか

厳しくダメ出しする花山に反発する鞠子と美子だが
なんとか花山を怒らせないように気を遣う常子が健気だった

花山の「1684点満点だ!」はどこからこの数字が出てきたんだろ?

鞠子と水田を常子が冷やかすような顔で見ていたのはおそらく
前回2人の事に気付いた美子に話を聞いたからだろう

常子がすれ違った褌姿の男(他に上半身裸の男もいた)
は水田に衣服を差し出した人たちなのだろうか?
それだと水田の「いつか下着だけしか残らないんじゃないかって心配に…」
とは矛盾するのだが(既に下着だけになっている)…

なぜ女性の洋服に詳しい?女の目線を持ってる…と言われて
花山が突然帰った理由は何だろう?
その後は常子たちの誰かの下着の実物を前に
会議する展開になるのを見越して引き揚げたのかもしれないね
だから「私でも羞恥心というものはある」なのかも

五反田とのシーンでは花山が随分と小橋一家に
気持ちが入っているような印象を受けた
五反田も「彼女たちの事褒めてませんか?」と驚いてたね
五反田から見た花山の人物像は
「人をけなす事しか知らない」(86話)だからw









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