2016年7月23日土曜日

とと姉ちゃん(96)さらに売り上げを伸ばすために講座を企画する常子だが…

<和服で洋服を作る直線裁ちは戦後の物資不足に悩む女性たちの間で
ブームとなりました 
そして「あなたの暮し」創刊号は雑誌を使い捨てにはしないという
花山の考えに基づき増刷を始めました> 

印刷所前 
「増刷分です、ありがとうございました」と、支払いをする常子(高畑充希) 
雑誌が山のように積まれたリヤカーを引き歩き出す 

<常子は社長としてもっと売れる雑誌にするにはどうすればよいのか
その事で頭をいっぱいにしておりました> 

タイトル、主題歌イン 

ビルの外壁に取り付けられた看板
「当ビル2階 あなたの暮し出版」

「ただいま帰りました」と常子が戻る
(一同)「お帰りなさい」
常子「お~まだまだ注文来そうですね」
君子(木村多江)「そうね、今日は100通来たわよ」
長机の上には大量の封書が積まれている
鞠子(相楽樹)「このところずっと為替の整理と雑誌の発注ばっかり」
美子(杉咲花)「早く次号に取りかかりたいな」
常子「作った雑誌を売るのも立派な仕事よ」
美子「フフフフ」
常子「花山さんは?」
君子「お部屋にいらっしゃるわ」

編集長室
常子「今度、講座を開いてみませんか?」
読んでいる本に目を落としたままの花山(唐沢寿明)「講座?」
常子「はい、希望者を集めて
直線裁ちでの洋服の作り方を花山さんが直接指導するんです」
花山「感心はしないな、直線裁ちの作り方なら雑誌で十分に伝えてある
なぜ講座が必要だと思うんだ?」
常子「お金と話題のためです」
「ほう…」と本から目を上げて常子を見る花山
常子「新聞広告は効果てきめんでした
そこで講座を開いてまた新聞の記事にしてもらえれば
読者が増えると思ったんです
それに講座の受講料が入れば次号をより充実させられるかと」
花山「…社長は君だ、任せるよ」

毎活新聞社
男「我が社と共同開催で?」
常子「はい、私どもこういう雑誌を出しておりまして…」
男があなたの暮しのページをめくる
「ああ…近頃こういう洋服を着ている女性増えてますよね
ああ…あなたのお召し物も」
常子「あっ、そうなんです
この直線裁ちの講座を開けば反響が期待できると思うんです」

<こうして新聞社との共同開催で講座を開く事が決まり
新聞に受講者を募集する広告が載る事になりました
すると、その反響はすぐに現れたのです>
(4月27日 毎活新聞東京本社 受講料100円)

机の上に積まれた葉書
美子「これ全部?」
常子「そう、受講希望者」
鞠子「けど、どうするの?私もよっちゃんも雑誌の発送で手いっぱいだよ」
美子「それに講座の準備もしなくちゃならないし」
常子「大丈夫、臨時でお手伝いをお願いしたから」

机の前に水田(伊藤淳史)が座っている
常子「突然お願いしてすみません」
水田「いえ、少しでも力になれるのでしたら」
後ろの長机に座る鞠子がぎこちなく会釈する
それを美子が笑って見ている
常子「こちらが受講を希望する方々からの葉書です」
水田「返信を書けばいいんですよね?」
常子「ええ、でも定員を超える応募が1度の配達でありましたので
その中から先着120名の方に当選のお知らせ
それ以外に落選のお知らせを送って頂けますか?」
水田「はい、お任せあれ」
作業を始めた水田を後ろから鞠子が心配そうに覗いている

小橋家
美子「講座では実際に受講者全員に直線裁ちを作って頂くんでしょ?」
常子「そうね、だから会場にハサミやミシンも用意しないとね」
美子「うん」
君子「何だか楽しそうねぇ」
美子「はい、とっても…あっ、そうだ
同じような形の服ばかり見本で作るのもつまらないから
少し違う形も作ってみたら…」
常子「えっ、どんな?」
「見てみて、ちょっと描くから」とちゃぶ台で描き始める美子
台所に立った君子が隣の部屋の鞠子に声をかける「どうかした?」
机に肘をつき物憂げな表情だった鞠子が振り向く「えっ?…いえ何も…」
「本当に?」と鞠子の後ろに君子が座る
鞠子「あ~…あの…かかはととにイライラしたりする事はなかったですか?」
君子「えぇっ?」
鞠子「だから…何だか気になったり心配になったりだとか」
君子「そりゃあお出掛けに行く時だとか心配になる事もあったけど
イライラする事はなかったと思うわ」
鞠子「そうですよね…」
君子「それが何?」
鞠子「実は…水田さんの事がよく分からないんです」
君子「分からないって?」
鞠子「見ていると失敗するんじゃないかって何だかハラハラして
心配で目が離せないんです
それに何か失敗して情けない顔見ているとすごくイライラして
つい怒ってしまったり…
まるで子どもを見ているお母さんになったような気分で…
男の人をこんなふうに考えた事がなかったので戸惑ってしまって…」
君子「それは…そういう事だと思うわ」
鞠子「どういう事ですか?」
君子「水田さんに恋をしてるって事なんじゃない?」
鞠子「ええっ?違いますよ!」
君子「私とととの事を聞くっていう事は
あなたも水田さんをそういうふうに見ているって事だと思うわ」
鞠子「え~…でも私はハンサムな方が好きですし
ただ放っておけないというだけで…」
君子「人を想う気持ちはいろいろあるのよ」
鞠子「違いますよ…違いますって…」
泣き出しそうな鞠子と幸せそうに笑う君子

<そして直線裁ち講座当日…>

入口の案内看板を見て揚々と会場入りする常子
君子はミシンの前に座り鞠子と水田は机や椅子を設置している
部屋の一角の2体のマネキンの前に立つ美子に花山が声をかける
「それは君が工夫したのか?」
美子「はい、同じような服ばかりだとつまらないと思ったので」
花山がマネキンに着せたアレンジされた直線裁ちの服を見て
「うん、確かにな…面白い試みだ」
立ち去る花山と嬉しそうに微笑む美子
君子と常子もそれを見て笑顔になる

鞠子「あの…水田さん…今日もお手伝いありがとうございます」
水田「ああ…いえそんな、これくらい…」
鞠子「お仕事忙しいのにすみません」
水田「いやいやいいんです、僕が好きでやってますから」

と、新聞社の男(文化部の堀内)も現れ
午前の部の講座が始まる時間になったがなぜか受講者は現れない

<それは午後の部になっても同様で…>

常子「どうして…」
鞠子「水田さん、まさか住所を間違えて送ったんじゃ…」
水田「いえ、そんなはずは…
確かに僕はドジですが間違えずに書いたはずです」
常子「送る前に私も確認したから」
君子「どういう事かしら…」
美子「誰も来ないなんて…」
と、日の出洋裁学校の小山内(ふせえり)がこの前のように
お供の女を2人連れて会場に現れ「誰もいない」と笑って帰っていく
花山「おそらく彼女の仕業だな
講座を妨害するために大量の葉書を一度に出して
席を押さえたんじゃないか?」
鞠子「そんな…」
美子「自分たちの学校を守るために
こんなにひどい事をしたっていうんですか?」
常子「私お話ししてきます…」(小山内を追いかけようとする)
花山「無駄だよ」
常子「ですが…」
花山「洋裁学校にとって洋裁の知識を要さない直線裁ちが
ブームになる事は死活問題だ、必死だったんだろ
皆食うに困れば何にでもなる、非難する事はできん
恨むならこの時代を恨め…
常子さん、社長として今後の糧にしなさい…
少し舞い上がっていたんじゃないか?
欲をかいては足をすくわれるぞ」
常子「…」
花山(皆に振り向き)「今日は帰ろう」と、会場を後にする
堀内に謝罪する常子「申し訳ありませんでした
いろいろご準備頂いたのに…」
堀内「まあ…いや…」
皆に振り向く常子「みんなも…本当にごめんなさい」
鞠子と水田が首を振る
残念そうにうつむく美子
笑顔を作る君子「さあ…片づけましょう」
と、頭を下げたままの常子の肩に手を置き「常子」
顔を上げた常子「はい」

<常子たちは商売の厳しさを思い知らされたのでした>

廊下を歩く花山が足を止め辛そうに頭を垂れる

口を結んだまま口惜しそうな表情の常子

(つづく)

今回は売れ行き好調な雑誌も増刷され
常子は社長として次の一手を放ち花山もそれを了承し
鞠子の恋も美子の花山への思慕も全てがうまく向かう中で
花山の言葉通り最後に「足をすくわれた」

しかし花山の「舞い上がっていたんじゃないか?
欲をかいては…」は言い過ぎだと思った
そもそも小山内に恨みをかったのは花山だしw
直線裁ちを潰したいという動機もあるようだが
講座を妨害したくらいでは影響はないに等しいだろうし
常子にとっては小さなつまずきに過ぎないだろう
来週は「常子、花山と断絶する」らしいから
その前フリ的なエピソードなのかな?

鞠子はまだ水田を男性として意識している自覚がなかったのかっ!
常子以上に恋愛音痴という事なのかな?







2016年7月22日金曜日

とと姉ちゃん(95)そして創刊される「あなたの暮し」~とと姉ちゃんとかか兄ちゃん

花山(唐沢寿明)が次にもう一枚の紙片を常子(高畑充希)に渡す 
常子「この中のいくつかはすぐあなたの暮しに役立ち
この中のいくつかはすぐには役に立たないように見えて
やがていつの日かあなたの暮しを変えてしまうかもしれない
そんなふうにいつでもこの一冊はあなたの暮しによりそって息づいている」 
読み終えた常子が花山を見る 
花山「それを前書きとして載せたいんだが…」 
微笑んだ常子がうなずく「いいですね…それでは…」と紙を机に置き 
「雑誌のタイトルをこれにしてみませんか」と文字を指さす 
花山「あなたの暮し…?」 
常子「はい…社名も あなたの暮し出版 というのはいかがでしょう」
花山「…社長さんがいいなら従うまでだよ」 
常子「では調子に乗ってもう一つご相談が…
新聞に広告を載せようと思うんです」 
花山「相当な金が必要だぞ」 
常子「知名度のない雑誌だからこそお金をかける…
銀座にこだわった花山さんと同じです」 
少し微笑む花山「忙しくなるな」 
おや?という顔で常子が花山を見る 
花山「この雑誌は売れる!」 
微笑み確信した表情になった常子が「はい」とうなずく

タイトル、主題歌イン 

<4か月後、広告が新聞に掲載され「あなたの暮し」はついに発売されました>

昭和二十二年四月

早朝、玄関前で新聞が配達されるのを
そわそわと待ちかまえる君子(木村多江)
届けられた新聞に「あなたの暮し」の広告を確認して
「あ~あった!あったわよ!」と家の中に駆けこむ

事務所の入り口、「あなたの暮し出版」の看板

机に積まれた雑誌の山から1冊を手に取る美子(杉咲花)
「すてきな表紙よね…タイトルもいいわ」
常子「表紙は雑誌の顔だもの
印刷代はかかったけどカラーの色合いは納得するまで粘ったわ」
鞠子(相楽樹)「ねえ、新聞広告っていくらかかったの?」
常子「2,400円」
鞠子「2,400円!?そんなにお金かけて大丈夫なの?」
常子「私は花山さんを信じてる」
美子が「私も」とうなずく
鞠子「けど…広告出してからこれといって何もないよ」
吹き出す常子「発売日が今日なんだからまだ分からないわよ」
鞠子(歩き出して)「本屋さん行って売れてるか聞いてくる」
常子「嫌な顔されるのがオチよ、もう少し様子見てみましょ」
鞠子「けど何かしてないと落ち着かなくって…」
と、郵便配達員が来て大量の封書を事務所に届ける

<それは全国の読者から「あなたの暮し」の購入を依頼する郵便でした>

常子「ね?」
笑顔になった鞠子がうなずく
美子「すごい…」

<「あなたの暮し」は企業からの広告を一切載せず
編集長の花山が自分の美意識で全ての誌面を作り上げました>

闇市の露店に「あなたの暮し 創刊 五十圓」の貼り紙
雑誌が次々に売れていく

カフェー「浪漫」でも梢(佐藤仁美)たちが雑誌を囲む

甲東出版
谷(山口智充)が雑誌のページを指さす「おい、この写真!」
恥ずかしそうに笑う常子「はい、私と妹たちです
花山さんがそうしようって」
五反田(及川光博)「美しいっ」
谷「確かに君たちがモデルの方が親近感が出るな」
一同がうなずく
五反田「ふんだんに写真と挿絵を使ってるねぇ
こっちの方が断然、服の作り方も分かりやすい」
相田「俺でも作れそうだよ」
常子「あっ、是非作ってみて下さい」
相田「男の服が載る時が来たらね」
谷「おい!このページもカラーじゃないか」
相田「本当だ、誰にでも出来る暮しの工夫…か」
常子「お金はかかりますが花山さんが是非にと」
五反田「いやこれ、お金だけじゃなく相当な手間もかかってるね」
谷「今までこんなの見た事ない…不思議な雑誌だなあ…」
常子「それは…お褒め頂いてるんですか?」
谷「ああ、もちろん」
「よかった…」と笑う常子

<「あなたの暮し」の売り上げが伸びるにつれ直線裁ちの服はブームとなり
街なかに直線裁ちで作った服を着た女性が増えていきました>

仏壇に「あなたの暮し」を供え竹蔵の写真を手に取り眺める君子

事務所で全国の読者に発送する雑誌の梱包をする鞠子たち
「イテテテ…」と、ハサミを置く美子
君子「大丈夫?」
美子「朝から晩までずっと開封してたのでタコが出来ちゃって」
君子「あぁ…」
「ただいま帰りました」と常子が戻る
(一同)「お帰りなさい」
常子「すみません遅くなってしまって
為替の量が多くて思ったより時間がかかってしまって」
君子「そんなに売れてるの?」
常子「フフフ、あ…かかも手伝って下さってるんですか?」
君子「いいのいいの、本屋で買った時は売れてるかどうかもぅ心配だったの
ああ、よかった…」
常子「かか、ご自分で買われたんですか?」
君子「ええもちろん、私はあなたの暮しのファン第一号ですから、フフフフ」
美子「この調子なら目標だった1万部売れるかな?」
常子「ん~だいぶ現実味を帯びてきたと思う」
編集長室から花山が出てくる「目標は1万じゃないぞ
あなたの暮しがいずれ目指すのは100万部だ!」
鞠子「えっ、100万?」
常子「100万部ですか?」
花山「うん」
鞠子(家族に)「あの人も冗談言うのね」
美子「そのぐらいの気持ちで頑張れって事だと思う」
常子がうんうんとうなずく
君子(花山に)「どうしてそんなにお詳しいんですの?
服の事もそうですし随所に女性らしい視点をお持ちなのも不思議でぇ」
花山「…ああ…服に関しては母の影響ですかね
貧乏でしたがおしゃれが好きな人だったので私も自然に興味を持ち
高等学校辺りから衣装学の本を読んだり…」
常子「女性らしい視点は?」
花山「う~ん…それも母の影響だろうね
母が亡くなったのは私が中学の頃です
以来私は長兄として兄弟たちを食べさせ母の代わりをしてきました
その時にいつも母が生きていたらどうしただろうと考えて行動してきたんです」
美子「…かか兄ちゃんだ
父親代わりのお姉ちゃんはとと姉ちゃんでしょ?
母親代わりの兄はかか兄ちゃん」
君子「じゃあ常子がとと姉ちゃんで…」
鞠子「花山さんがかか兄ちゃん」
君子「アハハハハ!」
美子「何だかいい組み合わせね」
穏やか笑顔で花山を見る常子と痒そうな顔の花山「何がかか兄ちゃんだ」
(一同の笑い声)
と、日の出洋裁学校の小山内校長(ふせえり)が訪れ花山に
「宣伝になるから時間を割いたのに」と取材がボツになった事の苦情を言う
花山「あらかじめ言ったはずです
取材をした上でそちらの洋裁学校の記事は
うちの雑誌に載せるべきではないと判断しました」
常子が「ご迷惑をおかけしましたでしょうか」と間に入るが
小山内「あ…事務員は黙ってて下さる?」
常子「…」
さらに小山内「我が校の記事はまあ百歩譲るとしても
この直線裁ちは許せません!」
常子「直線裁ちの何がいけないんですか…」
小山内「事務員はお黙りなさい!」
常子「私は…」
小山内「洋裁の技術がいらないなんてうたわれてはたまったものじゃないの
あなたうちの学校を潰すおつもり?」
花山「高度な技術を必要とする洋裁を否定するつもりはありません
ですが世の中にはろくに生地も買えない、洋裁を学ぶ時間もない
しかししゃれた衣服は着たいと思っている人は多くいるんです
我々はそんな人たちのためにこの直線裁ちを紹介したのです」
小山内「それが商売の邪魔だと言ってるんです」
花山「そんな簡単におしゃれをするなと?
おしゃれをしたければあなた方に高い授業料を払い
はぎれを無駄にしながら高い生地を使えとおっしゃるんですか?
私たちが相手にしてるのは一般庶民なんだ
その人たちに洋服を紹介したいだけです」
小山内「綺麗事を…
本心ではあなたも雑誌を売って大儲けしたいだけじゃないのかしら?」
常子「そんな事ありません」
小山内「もうだからあなた…」
常子「この出版社の社長は私です!
苦情があるなら私におっしゃって下さい」
小山内「社長?…あなたが?…そう…ならばあなたに伺うわ
今後も直線裁ちを提唱して洋裁学校の営業を妨害するおつもり?」
常子「営業を妨害するつもりはありません
そして…余裕のない生活を送る方々に
洋服の作り方を届ける事をやめるつもりもありません」
花山が目を閉じてうなずく
君子たちが真っすぐに常子を見つめている
小山内「…そうですか…またお会いしましょう」と不敵に笑い去る
花山が笑い出す「洋裁学校があんなにムキになるという事は
それほどこの直線裁ちが脅威だという事だ」
美子「脅威ですか?」
花山「看過できぬほど直線裁ちはよいものだという事だよ」
常子「そう…そうですよね」
君子がうなずく(美子はうつむく)
新雑誌に因縁をつけられて小橋一家が少し沈んだ表情をしたのか
「ほらほら!暗いぞ!」と花山が手を叩く
鞠子と美子が「はい」と笑う
と、ノックの音がして今度は綾(阿部純子)が母と息子を伴い訪れる
綾(花山に)「先日はありがとうございました」
花山「ああ、いやいや…」(なぜか綾を見ないで雑誌を手に取る)
常子(君子と話す登志子の背中を見て)「お母様の洋服も?」
綾「ああ…私が作ったの」
常子「へえ~」
綾「作ってる間、よく母と会話が弾んだわ
何だか昔に戻ったみたいだった」
常子「そう…いいわね太一君もおそろいで」(登志子と同じ生地の服)
綾「そうなの…久しぶりに鏡を見て気付いたの
今までは生活に必死で穴が開いてた事にも気付けなかった
ゆとりが出来たのね
この服を着てから少し気持ちが楽になった気がするわ」
常子(嬉しそうに)「本当に?」
綾「いろいろありがとう」
常子がうなずく

<自分たちの作った雑誌が多くの女性を笑顔にする
常子はこの仕事のやりがいを改めて感じました>

幼い太一を見て一同が穏やかに笑っている(花山も)
太一を抱き上げあやす常子

(つづく)

発売初日に3姉妹の中で一番賢いはずの鞠子に落ち着きがない
心配症で臆病なところもある鞠子はそういえば
防空壕の中で爆音が響いた時も一番パニクっていたね
小心者でもあるが肝が据わっている常子との対比だろうか
あるいは花山を盲目的に信じきる単純な常子美子とは違い
物事の裏側を考えるような(稲子を組長のスパイだと疑った)
疑り深い鞠子はやっぱり賢くて
花山との距離感も2人とは違うという事なのか?

君子の「そんなに売れてるの?」に常子が「フフフ」と笑ったところが
地味に面白かった
甲東を辞める時に「大金持ちになれるかも」と言ったのを思い出す

花山の事を「かか兄ちゃん」と言ったのは美子だが
「とと姉ちゃん」とネーミングしたのも、まだ幼い美子だったね(6話)
美子はあだ名名人なのかも

小山内に「社長は私です!」とやっと言えたね常子w
これからどんどん逞しくなっていくのかな?
滝子の孫なんだから啖呵を切るようなシーンも観たい


2016年7月21日木曜日

とと姉ちゃん(94)創刊号の目玉企画は直線裁ちで作るお洋服!

畳に置いた布地を鋏で切る花山(唐沢寿明) 
常子(高畑充希)「型紙は使わないんですか?」 
美子(杉咲花)「これじゃまるで着物じゃないですか」 
「黙って見ていろ」と、鋏を入れおわった花山「よし」 
常子「これでおしまいですか?」 
花山「お母さん、ご協力願えますか?」 
君子(木村多江)「はい…?」 
よくわからない…といった顔の常子 

タイトル、主題歌イン 

君子がミシンを回している 
花山「まず2枚の布地を縫い合わせる
つながった布地を二つに折って
腕を通す分だけ余白を作って両脇を縫い合わせる」
作業が終わった君子「花山さん次は?」
花山「お母さんありがとうございます、これで出来上がりです」
怪訝な顔の常子たちと穏やかに微笑む花山

鞠子(相楽樹)「え~!」
美子「わぁ…」
君子「まあ…」
今作った洋服を着てみた常子が一同の前に立っている
花山「これが直線裁ちだ」
美子「直線裁ち?」
花山「うん、布を直線に切るだけなので
型紙も要らないし布地の無駄も出ない
一反の布地からワンピースなら3着分も作れる
布地を直線に縫うだけなので難しい技術もいらないし
夏物なら2時間もあれば完成する」
鞠子「すごい!」
美子「こんな便利な方法どうして今まで秘密にしてたんですか?」
花山「昨日思いついた
散髪をしている娘に新聞をかぶせていたのを見てね」
(一同)「へえ~」
花山「そもそも直線裁ちとは和服の作り方なんだ」
常子「ああ…確かに和服と同じように体の線にも沿い過ぎずに
ゆったりとしているのでとても着心地がいいです
それにこのひもで腰を結べば…(同じ布地から作ったもの)
くびれも出来て美しいシルエットになりますし日本人の体型に合ってますね」
君子「確かに…これなら私にも着られるわ、フフフ」」
娘たちが笑ってうなずく
「簡単でかつ無駄のないこの直線裁ちが
この国の衣服不足に役立つと思うんだ
和服で洋服を作るんだよ!」と言った花山が「ほら!」
と、畳の上に数枚のデザインのイラストを置く
それらを眺める一同
笑顔の常子「これで創刊号の目玉企画が決まりましたね」
イラストを手に君子「すばらしいわ」
鞠子「みんなあっと驚くわね」
美子「じゃあ試着品をたくさん作ってこの絵を雑誌に載せて…」
花山「愚か者!載せるのは絵ではなく写真だ!」
常子「写真?」
花山「写真記事も売りの一つにしようと考えている
視覚に訴えるべき…とは以前伝えたな?」(美子を指さす)
美子「はいっ」
花山「写真であれば明確に伝えていく事ができると思わないか?」
鞠子「確かに…」
常子「ですが…写真を載せるとなるとお金が…」
花山「それは君がなんとかする問題だ
金は雑誌が売れればいいだろう
売れない事を考えて作るやつがあるか」
常子(少し考えて)「…分かりましたっ」
花山「ではすぐにモデルを用意してくれ」
鞠子「モデル?」
花山「我々の服を着てもらい写真を撮る
この雑誌の顔になる存在だ!」
鞠子と美子「はい」
何かを思いつく常子「その前にこれを教えたい人がいるんですが…」

カフェー「浪漫」の控え室
常子が梢たちの前で直線裁ちを実演してみせている

<常子は綾たちに反物もしくは浴衣を持ってくるよう呼びかけたのです>

ファッションショーのようになる控え室
カーテンが開き洋服を着た女給が微笑む
(一同)「わぁ~」
弓子(寺島咲)「きれいねえ」
美子「この直線裁ちであれば1反の布地からワンピース1着ブラウス4着の
計5着の洋服を作る事ができるんです、そしたら洗濯だって…」
綾(阿部純子)「5着?」
艶子(谷澤恵里香)「いいわねえ弓子は」
弓子「えっ?」
艶子「あたいなんか縫ってもらおうにも余分の布地すらないよ」
梢(佐藤仁美)「私らだって…ねえ?」
美子「ご安心あれ実はこの方法、着物からでも作る事ができるんです」
(女給たち)「えっ?」
鞠子「着物をほどいて作れば1枚の着物から3着の洋服が作れます」
さくら(森絵梨佳)「すごいじゃない!本当なの?」
常子「もちろん、試してみます?」
さくら「是非!これで頼みます」(着物を差し出す)
お蝶(早織)「私も頼むよ」
常子「はい」
綾「私も…お願い」
常子「はい」
艶子「あたいは…この浴衣しかない(着ている浴衣を見る)
しかたない…脱ぐからすぐにやっとくれよ」
一同が「ちょっとちょっと!」と艶子を止める
美子「男の方もいますから…」
一同が入口の外に立っている花山を見る
ススーッと廊下に隠れる花山…

それぞれに出来上がった洋服を着る女給たち
梢「今日は疲れているだろうからこれくらいにして
残った布地の分はまた今度」
常子「あっ、皆さんあの…これからはご自分で…」
梢「あぁ、そうだね」
と、一同が笑う
さくら「これだったら私たちにも作れそうだもの」
鞠子「そのための直線裁ちですから」
弓子「同じ着物で店に出なくて済みますね」
お蝶「臭いの心配もなくなるよ」
艶子「これでどんどんお客がつくねえ!」
梢「艶子はどうだろう…」
艶子「そんなぁ…」
常子たちに礼を言う梢「ありがとうね、こんな便利な事教えてくれて」
常子「いえ」
「早速お店に出よう」と女給たちが部屋を出て行く
綾「どう?似合ってるかしら?」
常子「うん、とっても」
綾「こんなに晴れやかな気持ちになったの本当に久しぶりだわ」
常子「私も…そんな綾さんの顔見られたの久々だわ」
綾「…何だかね、忘れてはいけない事だと思ったわ
どんなに惨めでもおしゃれしたいって気持ちだけは
常子「うん…どんなに悲しくても…うん
むしろそんな時こそおしゃれしたいって思えればきっとほら
明日をもっと明るくしてやろうって思えるんじゃないかしら」
常子の言葉を背中で聞いている花山
綾「うん…ありがとう」
鞠子と美子も嬉しそうだ
常子「ぁ…すみません花山さん随分時間を…すぐにモデル探ししてきます」
花山「いや、その必要はなくなったぞ」
常子「えっ?」

事務所で三脚のついたカメラの後ろに立つ花山
「じゃあいくぞ!はい!」
暮らしの部屋を模したようなテーブルのセットで
直線裁ちの洋服を着てポーズをとる3姉妹と綾
真面目な顔でポットを持つだけの常子
カップを持つ綾は笑顔が引きつっている
戸惑いおどおどしているだけの鞠子(一番酷い)
表情はやや硬いが背筋を伸ばしカメラを見る美子(一番まし…というか合格点?)
花山「ほら、もっと自然に笑って」
貼り付いたような笑みを浮かべる常子
花山「もっと自然にだ!」
ため息をつく花山「一回止めよう…
多少は覚悟していたがこれは素人以下だぞ」
美子「すみません」
綾「あの…本当に私たちでいいんでしょうか?」
花山「何だ?おじけづいたのか?
我々が作る雑誌は庶民のための雑誌だ
雑誌を手に取ってもらっても写真に写るモデルが
明らかに自分の住む世界と違う人だったら
着ている服に共感してもらえないだろう
市井の人間が着てこそ直線裁ちの服のよさは伝わるってもんだ」
常子「そのとおりだとは思うのですが顔がこわばってしまって」(頬を手でほぐす)
花山「それは君たちの問題だ、どうすればうまく笑える?笑えぇ」(脅かす感じ)
鞠子「それができたらとっくにやってます」
美子「ただアガっているだけです時間がたてば…」
腕時計を見る花山「もう2時間だぞ、いつなんだ?その時は、ねえお母さん!」
君子「えっ?」
立ち上がり娘たちに頬を引き伸ばすようなジェスチャーをする君子
と、「失礼します」と紙袋を抱えた水田(伊藤淳史)が現れる
「あ、水田さん」とセットを離れようとする鞠子に花山
「動くな!まだ終わってないぞ」
鞠子「すみません…」
花山「君…水田というのか」
水田「あっ、はい!」
花山「何しに来た?撮影中だぞ」
水田「いや、えっと僕…」
花山「撮影の邪魔をしないでくれ」
言葉が出なくなる水田と心配そうな鞠子
「ほら集中しろ集中!」と花山が撮影を続ける
君子の隣に腰かける水田
君子「あ…水田さん、いつもお世話になっております」
水田「え?あっ、ええと…」
君子「あっ、常子鞠子美子の母です」
「え~っ!鞠子さんのお母さん…」と慌てて立ち上がった水田が
紙袋のリンゴを部屋にぶちまける
「ごめんなさい!すみませんすみません!」
「私の言葉が聞こえなかったのか?」とキレそうな花山だが
常子たちが水田を見て笑っているのに気付き「おおいいぞ」とカメラを覗く
花山「君、水田君といったな?」
水田「はい」
花山「今日のところは感謝する」
水田「へっ?」
「いいぞそのまま…そのままでいいぞ!」と撮影を続けながら
水田に「踊りたまえ」と指示する花山
明るい笑顔でポーズをとり写真に収められる3姉妹と綾

<こうして創刊号の目玉企画である直線裁ちの記事が完成しました>

月が出ている夜の街並み
鞠子と紙袋を抱えた水田が歩いている
水田「今日はごめんなさい、すっ転んでしまって」
鞠子「いえ…おかげで緊張が解けたのでよかったです」
水田「そう言って頂けると救われます」
鞠子「けどうちで働きたい気持ちをまだ持っていて下さるのなら
もっと有能なところを売り込んでいかないと」
水田「はぁ…そうですよね」
落ち込んだのか足が止まってしまった水田に振り向く鞠子
水田の顔をのぞき込み「もっとしっかりして下さいね」と微笑む
笑顔になり「はい」と答える水田とうなずく鞠子
少し先から美子が声をかける(横に君子)「まり姉ちゃん!何してるの?」
鞠子「あっ、はぁい」と歩き出す2人

事務所に残りそろばんをはじく常子

創刊號支出見積り
紙代 18500圓
印刷費 23000圓
製本費 17500圓
寫眞代 23000圓
謝禮・原稿料 20000圓
宣傳費 20000圓
参考資料費 3000圓
商品購入費 10000圓

編集長室で筆を使い水彩でイラストを描く花山

完成したのか「常子さん、いいかい?」と声をかける
「はい」と編集長室に入る常子
「どうかな?」と花山が常子にイラストを手渡す
箪笥のような物入れと生活雑貨、それにイスや傘や鏡もある
生活感のあふれたそのイラストを眺める常子「かわいらしい…」
花山「これを表紙にしてみないか?」
常子が花山を見る
花山「驚くのは分かる、女性誌の表紙なら普通
きれいな女の人の写真かイラストだからね、だが…」
常子「いいですね花山さん…
私たちが目指す豊かな暮らしがここにあるような気がします」
柄にもなく少し照れたように微笑む花山「ならば結構」
イラストにHのイニシャルを入れる花山
常子が嬉しそうに微笑む

<常子と花山が目指した庶民の暮らしを少しでもよくするための雑誌が
いよいよ完成を迎えます>

(つづく)

「…この絵を雑誌に載せて…」と言っただけで
「愚か者!」と花山に罵倒された美子だが
ファザコンの美子にはこういう感じがたまらなく嬉しいのだろうか?

梢の「今日はこれくらいにして~残りはまた今度」に笑った
常子も言い難そうにだが「これからはご自分で…」ってよく言えた
頑張ったね常子
梢みたいなのには逆らいにくいからw

モデルのシーンの最初で美子が比較的ましだったのは
末っ子で要領がいい設定だからなんだろうか?
運動音痴の鞠子は体を使う事が苦手なのだろう

君子が「常子鞠子美子の母…」と言ったのに
「鞠子さんのお母さん…」と驚いて返す水田はバレバレ
まあ君子はどうせ美子あたりから話を聞いて知っているだろうが

鞠子と水田の2人のシーンは水田が出来の悪い弟のようだった
気が小さい水田は鞠子の母性本能をくすぐるのだろうか?

あの事務所には社長室はないけど編集長室はあるんだ(狭いけど)
まあ常子より花山の方が偉いもんねw


2016年7月20日水曜日

とと姉ちゃん(93)使う布地も少なく簡単に作れる洋服とは?

常子(高畑充希)「あ…あの…私…」 
梢(佐藤仁美)「あれ?あんた昨日店の前で…」 
常子「えっ?」 
梢「店の前でボサ~ッと」 
常子「あ…確かにそうです…えっ、えっ?」 
立ち上がる梢「私だよ、分かんないのかい?」と着物を体にあて
「この赤い着物着てた」 
常子「あっ!」 
 
(常子の回想) 
「しげさんの事、奥さんからとっちゃおうかな~」と客にキスをしている梢 

常子「あの時の!…すみません気付きませんで」(頭を下げる) 
梢「失礼な女だね、化粧なしじゃ別人だってのかい!」 
別の女給「梢ねえさんのは化粧じゃなくて変装ですから」 
梢「うるさいよ!」 
女給たちの笑い声と少しだけ緊張が解けたような3姉妹 

タイトル、主題歌イン 

綾(阿部純子)「こちらがお話しした雑誌を作っている
小橋常子さんと妹の鞠子さん美子さんです」
3人「よろしくお願いします」
梢「雅の同級生なんだって?あんたらもいいとこの子か」
常子「いえ、私たちは普通の…」
お蝶(早織)「雑誌作ってるなんて余裕がなきゃできないだろうさ」
常子「余裕はありませんが女の人の役に立つ雑誌を作ろうと
奮闘している次第です」
艶子(谷澤恵里香)「女性の役に立つなんていいじゃないか!」
美子がカバンからスタアの装ひを取り出す
「先日作った雑誌です、ご一読頂けますか?」
美子が艶子に渡そうとするが梢がそれをかっさらう
ページをめくる梢「へえ~」(他の女給たちが後ろから雑誌をのぞき込む)
「洋服の作り方が載ってるのかい」
美子「はい、そうなんです」
艶子「毎日もんぺじゃ嫌になっちまうからねえ
洋服なんか着ておしゃれしてみたいよ」
常子「私たちもそう思いましてこういう雑誌を」
さくら(森絵梨佳)「雑誌なんか買う余裕ないの…
私みたいな戦争未亡人にゃ夢のまた夢です」
美子「ご主人はじゃあ…」
梢「戦争未亡人なんてごまんといるよ
うちじゃあ私とさくらと艶子…雅もだったね」
綾「はい」
弓子(寺島咲)「私ら売れ残りも苦しいですわね」
お蝶「ああ、嫁ぐつもりで花嫁修業ばかりしてたのに
肝心な時に結婚する男はみんな兵隊にとられて
気付いたらこの年で嫁のもらい手もないし手に職もなし」
さくら「婦人雑誌作りたいなら男に聞いた方がいいんじゃないかしら」
常子「えっ?」
さくら「婦人雑誌なんて名ばかりで男が男に都合よく作ったものだもの」
鞠子「そうでしょうか…」
お蝶「殿方の喜ぶ献立…とか、殿方に好まれるおもてなし…とか
男から見た女の記事だよね」
常子「私たちの雑誌はそうではありません、女の人の役に立つように…」
梢「同じだよこれも…確かにこんな洋服着てみたいとは思ったけど
私らには手の届かないもんだ」
美子「そんな事ありません、雑誌では自分の手で洋服が…」
さくら「一体何で作れっていうの?
家にある布地なんてとっくに米に換わってます」
お蝶「手に入る布地なんてスフくらいさ」
(ステープルファイバー 当時安価で手に入った化学繊維)
さくら「あんな貧相な化学繊維で作ったってゴワゴワして着づらいし
洗ったら使いもんになりゃしません」
弓子「軍隊の放出品の布地なんて手を出せる額じゃないですしね」
艶子「だから店でも洋服なんか諦めて…(立ち上がり着物を肩にかける)
着物着るしかないのさ」
お蝶「ちょっと艶子、そろそろ臭ってきたね」
艶子「皆も臭いじゃないか!」
弓子「確かに」
綾「私も皆さんも毎日同じ着物を着るしかないの…それしかないから」
梢「これで分かったろ?服が欲しい気持ちは切実だけど
手に入るかどうかは別問題、女の人の役に立つ雑誌って言ったって
私らには実際役に立ってないんだよ」
美子「でも布地ならカーテンか何かの布地で代用…」
梢「分かんない子だね、布地だけの問題じゃないんだよ」
さくら「服を作る技術すら私らにはないんです」
弓子「私も家さえ焼け残ってたら洋裁学校に行けたのに」
常子「洋裁学校ですか?」
梢「私も家さえ焼けなきゃ通う金くらい工面できたのにな」

日の出洋裁学校
校長・小山内節子(ふせえり)「へえ~新しい雑誌をねえ」
花山(唐沢寿明)「雑誌の名前も出版社の名前も
いまだ決まっていないのですが」
小山内「何だかうさんくさいけど
会社を銀座に構えておいでのようなので信用致しましょう」
花山「恐れ入ります」
小山内「こちらにとっても悪い話ではないですからね
我が校を雑誌で紹介して下さるなんて」
花山「お約束はできません、あくまでも面白ければ載せるという事で」
小山内「どういう事?取材を受けても掲載されないの?」
花山「その可能性はあります」
小山内「じゃあさっさと済ませて下さる?」
花山「では…現在いくつかの洋裁学校が再開されていますが
こちらの学校の特色を挙げるなら何でしょうか?」
小山内「そうねえ…我が校では高級仕立ての洋服作りに
対応できる技術を教えています
海外からの服飾事情もいち早く取り入れておりますので
是非ご入学下さい…これで書いてちょうだい」
花山「なるほど…どうりで授業料も高い訳だ」(年額700円)
小山内「高級な生地を使った方が仕上がりもよく生徒の反応もいいんです」
花山「それでは通えない人もたくさんいるのでは?」
小山内「慈善事業ではありませんから」
授業をのぞく花山
型紙で切り取られた布地は大量に端切れを生み出している

事務所で花山に報告している3姉妹
美子「皆さんがおっしゃるにはとにかく余裕などないと」
鞠子「作り方が書いてあってもそもそも洋裁の技術がないし
布地も手に入りづらいとも言っていました」
常子「布地をそれほど使わず
難しい技術もなく作れる洋服ってないものなんですかね…」
花山「私も同じ事を考えていた
洋服を作るためにはどうしても布地を無駄にしてしまう」
美子「でも洋服は曲線が多く複雑なので
型紙どおり裁断するとはぎれは出てしまうものですよ」
鞠子「じゃあどうすれば…」

小橋家
ちゃぶ台で型紙を作っている美子
君子「頑張ってるわね」
美子「はい…作りがいのある雑誌というのもありますしそれに…」
君子「それに?」
美子「花山さんに認めてもらいたいんです…
口は悪いけどやっぱりすごいと思うんです
今はただあの人に認めてもらえるよう頑張ってます」
君子「…そう」
美子「ゃ…恋心やそういう気持ちではありませんよ…
どちらかというと、ととに褒めてもらいたいのに近いのかな…」
君子「とと?」
美子「はい、私とととの思い出ほとんどないから
だから代わりに褒めてもらいたいのかもしれません」
君子「そう」
美子「はい」
2人で「フフフ…」と笑う

事務所で机に両肘をつき掌にあごを乗せ
「どうしたもんじゃろのぉ…」と呟く常子
鞠子「ねえ、とと姉」
常子「うん?あっ、新しいアイデア浮かんだ?」
鞠子「あっ、ごめん違うの…水田さんの事なんだけど」
常子「うん」
鞠子「経理で迎えられないかな?」
常子「えっ?」
鞠子「水田さん、一緒に雑誌作りたいって言ってくれたの
お給金安くてもいいからって…」
常子「あ…申し訳ないけど今うちも余裕がなくて…」
鞠子「そうよね…」
常子「ん…?鞠ちゃんもしかして水田さんの事…」
慌てる鞠子「あっ、全然全然!そうじゃないの!
いい方なのは分かるからもし力になれるならと思っただけ
それに…

(鞠子の回想)水田「今、世の中に必要な雑誌だと」

それがうれしくてね…
こういう方と一緒に作るべきだと思って」
笑顔でうなずく常子「うん」
鞠子「けどっ、今は雑誌を売って経営を安定させる事の方が先よね」
常子(笑顔のまま)「ん~…」
鞠子「簡単に作れる洋服か…」

自宅でも知恵の輪をしている花山
三枝子(奥貫薫)は鼻歌で♬「赤いリンゴに口びるよせて~」
と歌いながら縁側で茜の髪を切りそろえている
と、カットケープの代わりに茜が頭を通した
真ん中をくりぬいただけの新聞紙を見て花山が何かをひらめく
すぐに机に向かい資料を漁りデッサンを始める花山

小橋家、型紙を布地に当てている美子

デッサンに色付けしている花山

闇市で働く女性に取材している鞠子「今一番知りたい事は何ですか?」

雑貨店のような店を取材する常子「どんな服が人気ですかね?」


天気のいい早朝、花山が小橋家を訪ねる

居間
常子「花山さん、どうなさったんですか?」
帽子を取り挨拶する花山「おはようございます!」
(一同)「おはようございます」
花山「分かったんだ」
常子「えっ?簡単に作れる洋服ですか?」
花山「ああ!」
3姉妹「え~!」
「しかも一着に使う布地は…これだけだ」
と、ちゃぶ台に布地をひろげる花山
君子「着物1枚分の半分もないですね」
花山「お母さん、裁ち台をお借りできますか?」
「はい」と席を立つ君子
鞠子「和服を作るんですか?」
花山「寝ぼけた事を言うな!これがすぐさま洋服になる!」(ご機嫌)
驚いて花山とちゃぶ台の布地を見比べる常子

(つづく)

花山が「雑誌の名前も出版社の名前も決まっていない」と言ってたけど
KT出版はボツになったのだろうか?
ドラマのモデルになった雑誌と同じように
雑誌名と会社名を同じにする展開なのかもしれない

美子はやっぱり花山に父を見ていたんだね
俗にいうファザコンってやつかな
常子と花山の恋愛的なものはもしかしたらあるかなあと思っていたが
さすがに美子はないだろうな
やるべきじゃないし、このドラマはそんなドロドロしたものにはしないだろう
もしかしたら会社内で花山・美子と水田・鞠子の
対立軸みたいなものを作る下地なのかな?

鞠子が常子に水田の件を相談したね
恋愛的なものじゃないと否定していたけどもう好きになっているのだろう

花山はいつも常子たちに高圧的な態度なのに
なぜか朝の「おはようございます」の挨拶だけは
礼儀正しく元気に頭を下げるねえ
何か理由でもあるのだろうか?

今回は女給として働かなければいけない身の上の梢たちと
高い授業料を払える生徒が通う日の出洋裁学校が登場したが
これは「あなたの暮し」の立ち位置を明確にするためだろう
(目玉企画のアイデアが誕生するための要素でもあるが)
もちろん梢たちのような貧しい女性に寄り添う雑誌になるのだろう
だから劇中でも花山があらかじめ校長に断っている通り
日の出の取材記事はボツになるかな

2016年7月19日火曜日

とと姉ちゃん(92)綾の職場を訪ねる常子だがそこは…~水田の事で悩んでいるような鞠子

家の中 
常子(高畑充希)「綾さんが…お金を貸してほしいと」 
君子(木村多江)「あら…」 
常子「よほどお困りだと思うんです
なんとかして少しだけでも工面してあげたいんですが」 
君子「あなたが働いて稼いだお金なのよ、好きに使っていいの」 
常子「はい、ありがとうございます」 

タイトル、主題歌イン 

紙袋を抱えた常子が綾の家を訪ねる 
常子「こんにちは」 
家の前でしゃがみタライで洗濯している登志子(中村久美)が振り向く
「常子さん」
常子「御無沙汰してます」
登志子「お久しぶり」
常子「あの…綾さんは?」
登志子「ああ…ごめんなさいね、今仕事でいないの」
常子「お仕事ですか…」
傍らに座る太一に話しかけた常子が紙袋からリンゴを取り出して渡す
登志子「そんな…悪いわ」
「いいんです、大したものではありませんから…よかったら」
と、登志子に紙袋を手渡す常子
登志子「ありがとう」
常子が太一の服が破れているのに目を留めると
登志子「また穴…
昔はこんなに穴が大きくなるまで放っておく子じゃなかったのよ」
常子「えっ?」
登志子「綾よ…
いくら貧しくても太一の着るものだけには気を遣う子だったのに」
常子「…綾さんはどこにお勤めなんですか?」
登志子「ああ…新橋の浪漫とかいう食堂で配膳をしていると聞いてるわ」
常子「食堂…」

知恵の輪を解きながら人混みを歩く花山(唐沢寿明)
壁に貼ってあるポスターが大きく曲がっているのに気が付く
「あ~きっちりしなさいきっちり」と言いながら
破れないように慎重に一度剥がしてから真っすぐに貼りなおす
「よし」と微笑んだ花山がポスターの文言に注視する
(来たれ受講生!洋裁知らぬは女の恥
今こそ女性に洋服を 日の出洋裁学校)

事務所でやかんを火にかける鞠子(相楽樹)
そこへ水田(伊藤淳史)が訪ねてくる「あれ?お一人ですか?」
鞠子「事務所番なんです
姉と美子は作家先生に原稿を取りに伺っていて
花山さんは…よく分かりません」
水田「花山さんというのは先日の…」
鞠子「ああ…そうです」
水田「あの時はすみませんでした…戸惑ってしまいうまく話せず…
以前はもう少し堂々と話せていたんですが…
軍隊で上官にしごかれまして
情けない話なんですが年上の男性と接するのがどうも…」
鞠子「…そうだったんですか
それなのに私たちのためにいろいろとありがとうございました」(頭を下げる)
水田「あっ、いえ…そういうつもりで言ったのでは…」
(少しの沈黙)
鞠子「あっ、先日何かお話があるって…」
水田「ああ…ええ
あの…僕をこちらで雇って頂けませんか?」
鞠子「…?」
水田「今、闇市で働いていますがいずれ閉鎖されるでしょうから
他の仕事を探していたんです
そしたら皆さんが新しい雑誌を作ると聞いて
しかも暮らしを豊かにする雑誌だって…」
鞠子「少しでもお役に立てれば…くらいですけど」
水田「細かい事は分かりませんがとてもいいなと思えたんです
今、世の中に必要な雑誌だと」
微笑む鞠子(水田に好意を持った感じ?)
水田「お願いできませんか?」
困ったような?恥ずかしそうな?表情でうつむく鞠子
火にかけたやかんから湯気が出ている

「浪漫…浪漫…」と呟きながら雑踏を歩く常子
(カフェー浪漫 疲れをとるなら當店へ)の看板を見上げる

<この時代のカフェは現代とは違い
女給の接待を目的とした社交場でした>

客を見送りに出てきた女給(梢・佐藤仁美)と目が合う常子
常子が目を逸らす
常子を見据えるように梢は店に入る
常子「ここな訳ないか…」
と、踵を返すが後ろから別の女給が客を送りに出てきた声がする
「今日はありがとうございました、またのお越しをお待ちしております」
振り向く常子、口紅を塗り綺麗な着物を着た綾(阿部純子)と目が合う
振り向いたままで静止する常子と気まずそうにうつむく綾

綾が店の裏口のような空間に常子を連れてくる
「どうなさったの?」
常子「ごめんなさい、お店にお金を届けようと思って」
顔をそむける綾「そう…」
常子「あ…あの…」
綾「心配かけてごめんなさい…だけど母と太一が生きていくためには
働かなくてはいけないの」
何度も何度もうなずく常子(綾を正視できない)
「あっ、」とカバンから封筒を取り出し
「これ少ないけどよかったら使って」と差し出す
「…ありがとう」と受け取る綾「必ず返します」
少し微笑む綾「稼げると思ってお店に入ったんだけど
思いの外チップも少なくてね
でも他に仕事も見つからなくて…」
「雅(みやび)さん!雅さん!」と男の店員が呼びにきてすぐにひっこむ
綾「フフフ…笑っちゃうでしょ?お店では雅なの」
首を振って笑う常子
綾「これありがとう」
常子「うん」

事務所で文章を書く常子
花山の言葉「戦争で一番ひどい目に遭ったのは庶民なんだ」と
お金を借りに来たやつれた綾を思い出す
鞠子もなんだか元気がない
美子(杉咲花)「2人ともどうかした?」
常子「ん?いや何も」
鞠子「ううん」
美子「あっ、目玉企画の事でしょ
いい加減花山さんから答えを頂かないと4月の出版には間に合わないわ」
常子「そうよね…」
「おはようございます」と出社して一礼する花山
3人「おはようございます」
鞠子「あっ、また遊んでらっしゃる」
知恵の輪を手に机に向かう花山「遊んでなどいない考えをまとめているんだ」
美子「知恵の輪でですか?」
花山「明確な答えを導き出せない時にこれをすると思考が整理される」
3人「え~」
花山「声を合わせるな、理解してもらおうとは思わん」
常子「という事は雑誌の企画の答えは
まだ見つかっていないという事ですよね?」
花山「案ずるな、これがほどける頃にはきっといいアイデアが…」
と、知恵の輪が解けてしまう!
常子「浮かびました?」
知恵の輪を机に投げる花山「それより頼んであった画材道具は?」
鞠子と美子「もう…」
常子「ごめんなさい、すぐに探しに行ってきます」
花山「おいおい…そんな頼まれ事、子どもでもできるぞ」
常子「すみません、ちょっと考え事をしていて」
花山「その場しのぎの言い訳は結構」
常子「あ…本当なんです
女学生時代の友人が働いていると聞いて行ってみたらそこがカフェーで…」
花山「ほう…」
美子「友人て?」
鞠子「ひょっとして綾さん?」
常子「うん…今お金に困ってるみたいでちょっと心配になってしまって」
花山「それでどうだった?」
常子「えっ?」
花山「格好だよ、カフェーに行ったんだろ?女給はどんな服を着ていた?」
常子「いや、会いには行きましたけどそんな店内までは…」
花山「友達には会ったんだろ?服は自前か?新品か?」
常子「私その子の事で頭がいっぱいで服を見る余裕なんてそんな…」
花山「なんて君は愚かなんだ!」
常子「えっ?」
花山「分からんのか?君は絶好の機会を無駄にしたんだぞ!」
常子「機会?」
花山「君は社長でもあるが編集者だ
どこにネタが転がっているかわからない
常に取材する気持ちで生きるべきだ!
この雑誌を届けたいのは
生活に困りすさんだ暮らしをしている全ての女性たちなんだ
友達がカフェーにいたのなら取材すべきだろう!」
常子「すみません」
花山「明日にでも彼女たちに話を聞いてきたまえ!」
常子「私がですか?できれば花山さんも一緒に…」
花山「私は洋裁学校に取材に行く事になっている」
(また知恵の輪を手に取り今度は結ぼうとする)
常子「えっ、でも私一人では…」
花山「暇な編集者がそこに2人いるだろう」
鞠子と美子が振り向く「えっ?」
2人を見て力なく笑う常子

カフェーの裏口に並ぶ3姉妹
今日はまだもんぺ姿の綾が戸を開ける「お待たせしてごめんなさいね」
常子「突然ごめんなさいね」
綾「ううん、少しでもお役に立てるなら」
常子「ありがとう」
「さあどうぞ」と綾に案内される3姉妹

綾が赤いカーテンを開ける
常子「失礼致します」
女たちが振り向く
そこは女給の待機室だろうか
まだ私服姿の女たちが食べたり遊んだり化粧したりしている
リーダー格らしい梢が口を開く「何だい?話って」
少しひるんだように梢たちを見つめる常子

(つづく)

水田がいつもおどおどしているのには理由があったんだね
「以前はもう少し堂々と…」と語っているから
もともと多少は気が弱い性格なのだろうが…

水田が新雑誌の趣旨に賛同してくれて鞠子は嬉しそうだったね
自分には水田に好意を持ったように見えた
このシーンのラストでアップになったやかんから湯気が出ているのは
2人の恋が熱くなっていくとか…そんな意味の演出かな

しかしその後、鞠子が悩んでいるようなのはどうした事だろう?
水田が鞠子に好意を持っているのは明らかだから恋の悩みではなく
水田が一緒に働きたいと言った事で悩んでいるのだと思うのだが
鞠子的には水田と共に働きたいがそのためには給料を支払わねばならず
資金繰りが苦しい常子に頼み難いという事なのかなあ?

知恵の輪は特に意味はなく普通のオチだったね
このシーンで3姉妹が超マイペースの花山に振り回されるのは
鉄郎との関係に似ていると思った

綾の「母と太一が生きていくためには…」が気になった
母と太一と…が普通だと思うのだがこれは
自分一人なら女給に身を落としてまで生きてはいないという意味だろうか?
あるいは一人なら他の仕事でも…という事かなあ

生活に困窮して女給をしている綾の源氏名が雅なのは秀逸
綾も自虐的に笑ってたね

綾は恥をしのんで金を無心に来たんだから簡単に妹たちに話すな常子w
しかもぞろぞろと取材に行くし…
まあでも綾は快く協力してくれたみたいだけど



2016年7月18日月曜日

とと姉ちゃん(91)新雑誌の編集長に就任し目玉企画を考えるはずの花山だが…

<終戦から1年以上たっても戦禍の荒廃からの復興は進まず
食べるものも着るものも手に入らない状況が続き
国民の生活は困窮を来しておりました> 

昭和二十一年十二月 

人でごった返す闇市を歩く常子(高畑充希)と花山(唐沢寿明) 
「我々が雑誌を届けたいのは今ここにいる我々と同じ庶民だ…
戦争で一番ひどい目に遭ったのは庶民なんだ」 
常子「ええ」 
女の声「何すんだい!?私が見てたもん横から取るんじゃないよ」 
常子が振り向くと女2人が何か品物(衣類かな)を引っ張り合っている 
女2「買うまではあんたのもんじゃないだろ!」 
女1「何だって?」 
女2「金もないくせにガタガタ言うんじゃないよ!」
横から女3が加わる「だったら私が頂くよ」 
女3人がもみ合いになり女1がはね飛ばされ転ぶ 
駆け寄る常子「大丈夫ですか?」 
女1「やだねえ…昔はこんなじゃなかった…
日本の女だよ…戦争で負けて変わっちまった
それに身なりへの気遣いもない
(品物を奪い合っている女たちは汚れ破れた衣服を身に着けている)
自分がどう思われようがどうでもいいみたいじゃないか
女である事を捨てちまったのかね」 
立ち上がりその場を去る女1の背中を見ている常子 
花山「まず戦うべきはこれかもしれんな」 
常子「戦う?」 
花山「我々は雑誌を通して暮らしを変えようとしているんだ
立派な戦いじゃないか」 
常子「ええ」 
花山「まずは衣服と戦わんか?」 
常子「賛成です…きれいなものを身に着けると少しだけでも
気持ちが豊かになるような気がするんです…
それができればこの国の暮らしぶりも変わるかもしれません」

甲東出版
谷(山口智充)「経営のヒントねえ…
結局読者はいかに魅力的な記事があるかどうかで雑誌を選ぶ
目玉企画に話題性があるかどうかが売り上げの鍵を握っているんだな
当たり前だけどな」
常子が笑顔でうなずく
書類を手に現れる五反田(及川光博)
「ほら、うちの帳簿と一号当たりの経費の内訳まとめておいたよ」
常子「あ~ありがとうございます」
五反田「どういたしまして」
谷「小橋君はいくつになったんだ?」
五反田「社長!レディーに年を聞くなんて…」
谷「あっ、これは失敬」
常子(笑っている)「いえ、今年で26になりました」
谷「26で社長か、それも女の身で…大したもんだなあ」
常子「いえ、肩書だけです」
(常子に顔を近づけてニコニコしている五反田に常子が笑ってしまう)
谷「先輩社長として一つ助言するとだな…」
常子「はい」
谷「接待だ何だと言って女の店に入り浸るようなろくでなしは雇わん方がいいぞ」
五反田「うん…?あっ…それは必要経費です…失敬」(と席を立つ)
常子「その辺はうちは大丈夫そうです、花山さん以外全員女ですから」
谷「そうか」
書類を見る常子「あ~やはり印刷代と紙代にお金がかかるんですねぇ~」

<常子たちはこれまでの蓄えに借金を加えて資金を作り
限られた予算の中で事務所を探していました>

不動産屋「銀座で焼け残ったビルなんて限られるよ
人形町辺りだったら…」
美子(杉咲花)「いえ銀座は譲れません、会社は銀座じゃないと」
鞠子(相楽樹)「よっちゃん、花山さんの言いなりになり過ぎよ」
美子「だって全国の人に売るには東京の中心に会社を構えろ…って
我々は無名な出版社だ、銀座に事務所があるというだけで
読者は信頼してくれるものさ…おっしゃる通りだと思うわ」
鞠子「だからって全部要求を聞く余裕はないんだから…」
美子「まり姉ちゃん花山さんの事が嫌いなの?」
鞠子「嫌いなんて言ってないわ無理すべきじゃないってだけ」
美子「でも…」

夜、小橋家
君子「そう、結局決まらなかったの…」
美子「はい、明日別のビルあたってみます」
鞠子「銀座は諦めようよ、事務所なんかどこでも…」
美子「そんなに不満なら直接花山さんに言ったら?」
鞠子「苦手なのよ…何言っても怒られそうで…よっちゃんから言って」
美子「嫌よ!私、花山さんに不満なんかないもの」
鞠子「じゃあ…とと姉から伝えてよ」
ノート(新しい事務所 家賃1200圓から1400圓
電気代95圓 水道代70圓 ガス代55圓 電話代180圓
花山さんのお給料1600圓 新しい机や椅子500圓 文具等消耗品費360圓)
を見ながらそろばんをはじく常子
「花山さんが銀座っておっしゃるなら私は従います…頂きます」(とお茶を飲む)
君子「すっかり社長の顔ねぇ」
常子「うん?」
君子「まさかあのおてんば常子が社長さんだなんて、ウフフ」
常子「フフッ、胸を張って社長とは言えません、早くも資金不足ですから」
君子「…そんなに厳しいの?」
常子「はい、4月までに雑誌を出さないとスタアの装ひで作った資金が
家賃や光熱費などの必要経費に消えていきます」
美子「だったらすぐにでも…」
常子「いい加減な本を出す方が苦しむ事になると思う」
鞠子「けど私たちは花山さんが創刊号の目玉企画を
思いつくのを待つしかないの?」
常子「でもお一人で考えたいそうだから…」

常子の回想
花山「何をすれば衣料品不足を解消できるのか考えてみようと思う
君は社長としていつでも出版できるよう準備をしてくれ」

常子「まずは新しい出版社の土台作りを進めましょう」

銀座でいい物件を見つける鞠子と美子
男「ただ家賃がねえ…希望は1300円だろ?こっちは1600円だから」
美子「そこはなんとかなりませんかね?」
男「駄目駄目これ以上安くならねえ」
美子「あぁ…」
鞠子「じゃあ…しかたないわね」
美子「まり姉ちゃん?」
男「よし決まりだ」
鞠子「ここはやめて昨日のビルにしましょう」
慌てる美子「え~ちょっとちょっと…」
鞠子「無理する事ないわ、昨日のお部屋の方が安かったし」(美子に目配せ)
理解する美子「あぁ~そうね、そうしましょう」(と、2人で部屋を出ようとする)
男「ちょっ…ちょっと待ちな…1500円」
2人がまた歩き出す
男「ま…ま…待ち…じゃあ間をとって…1400円でどうだ?」
顔を見合わせ笑った2人が男に駆け寄り頭を下げ「ありがとうございます!」
男「おい…まさか芝居だったんじゃないだろうな?」
とぼけた顔で手を横に振る2人「いえいえいえいえ…」

(一週間後)
事務机などを運び込む鞠子と美子に水田(伊藤淳史)
鞠子「すみませんお手伝い頂いて」
水田「あ~いえ、僕はやりたくてやってますから
しかし男手がいない中、準備するのも大変ですね」
鞠子「本当は1人いるんですけどすぐにどこかに行ってしまうので」
水田「いやあ闇市でいろいろ荷物抱えて歩いてたから
思わず気になって声かけちゃったんです」
鞠子「本当に助かります」(頭を下げる)
水田「あっ、いえいえ!そんなそんな!」
2人を笑って見ている美子
水田「あの…一つお話ししたい事が」
鞠子「えっ?何でしょう?」
水田「あの…実は…」
と、「おはようございます!」とダンボール箱を抱えた花山が現れる
その後ろには青い机を運ぶ2人の男
花山「その机はこの奥の部屋にね」
男たち「へい」
花山が水田に「誰だ?君は何なんだ」と尋ね
花山が恐いのか「何なんでしょう?僕」と訳のわからない事を言う水田
鞠子「あっ、この方は…」
花山「彼に聞いてるんだ!」
水田「僕は…あの…僕は…」
花山「はっきりしゃべりなさい!」
「あ~すみません!お…お…お邪魔しました!」と逃げ出す水田
美子「えっえっえっ?あっ!お話が…」
花山「何だ?あいつは」

常子「本当ですか?」
印刷所の男「女の社長なんか初めてだけど面白いじゃねえか
カラーの挿絵も多くて大変だけど頑張るよ」
常子「ありがとうございます」

小橋家 すいとんを作る4人
君子「これで一安心ね」
常子「ええ、いつ花山さんが目玉企画を決められても大丈夫です」
と、鞠子と美子に振り向き「ねっ?」
だが2人の様子に「うん?」となる常子
鞠子「ちゃんと考えて下さってるのかしら…」
美子「うん…」
君子「美子まで…どうかしたの?」
美子「いや花山さんここ数日、机を探していただけのようですし」
常子「えっ?」
美子「今日も机運び込んだら編集長室に閉じこもっちゃって…」
常子「それは…集中されてただけなんじゃない?」
鞠子と美子「いやぁ…」
鞠子「お白湯をお持ちしようと声をかけたのね
でも返事がなかったからのぞいたら…知恵の輪で遊んでたのよ」
常子「えっ?」
鞠子「それ見たら急に不安になっちゃって…
ず~っとやってたの、ず~っと…結局外れなかったし」
君子「それは…きっと何かお考えがあって…」
美子「私もそう思いたいんですが
どう見ても遊んでいるようにしか見えなくて…」
鞠子「目玉企画考えて下さってるのかしら…」
常子「さすがに遊んでるなんて事は…」
と、表で「ごめんください」と戸を叩く音がする

玄関を出る常子「あら、綾さん」
綾(阿部純子)「ご無沙汰ね」
常子「何だかお疲れね」
うつむく綾「ええ…食べてないだけ」
常子「いずこも同じね、よかったら入って」
綾「いや、ここでいいの…
少し…お金を貸してもらえないかしら?
家賃を値上げされて困ってるの…お願いします」(頭を下げる)
ショックなのか戸惑っているような表情の常子

(つづく)

五反田が常子に顔を近づけてニコニコしていたのはアドリブだろうか?
高畑の笑い方にそんな気がした
常子が退職してからはセクハラをやめてしまった五反田だが
今回は久しぶりにそれっぽい雰囲気だった

五反田の「レディー」に何か違和感があるなあ…と思ったら
ミッチー的にはベイべーと言ってほしかったよね
(それはさすがに真面目な視聴者から苦情がくるか)

花山への信頼度に美子と鞠子で温度差があるのはなぜだろう?
美子は小さい頃に父を亡くしているので
「ととの事もう思い出せないの」(56話)と語っているが
父を知らない美子は花山の中に父性のようなものを見ているのだろうか?
あるいは鞠子側の演出上の問題で
水田が花山を恐れ逃げ出すシーンがあったが
この2人の関係で鞠子が今後も水田を庇うポジションを作るために
鞠子は花山に対して批判的なのだろうか?
(まあ鞠子はいつでも冷静に人を批判するが…特に鉄郎を)

鞠子が水田の事をどう思っているのか早く本人の口から聞きたいのだが
水田が逃げ出したシーンではよく判らなかった
心配していたようだががっかりしたとまでは読み取れなかった
むしろ水田の話(もしかして鞠子に告白?)を聞きたそうだったのは美子だw
(美子「えっえっえっ?あっ!お話が…」)

花山の知恵の輪は何だろうね?
単純にインスピレーションを導き出すため…とかではないだろうから
ここはなるほど~と唸らせてくれるオチがあると思う

ラストの常子がショックの表情だったのは綾とは友達でいたいからかな?
お金の貸し借りは本当の友達とはしないほうがいいものね