2016年9月3日土曜日

とと姉ちゃん(132)アカバネの嫌がらせは社員たちにまで及び…

食事中の水田家 
鞠子(相楽樹)「そう…花山さんのところもなの…」 
水田(伊藤淳史)「うん、僕が会社に行っている間におかしな事はなかった?」 
鞠子「さあ…今日は何もなかったと思うけど」 
水田「心配だなあ」 
たまき「う~ん…心配ねえ」 
水田「あ…たまきまで心配する事ないよ」 
鞠子「そうよ、あんまり心配し過ぎると怖~い夢見ておねしょしちゃうわよ」 
たまき「おねしょなんかしないもん!」 
鞠子「本当に?」 
と、窓のガラスが割れる音が響く 
鞠子がたまきを抱き水田がそれを庇う 
「怖いよ~」と泣くたまきの声と畳の上に転がっている石 

<嫌がらせは更に続き他の社員の家も狙われたのです> 

タイトル、主題歌イン 

星野家玄関
常子(高畑充希)「先日は大樹君と青葉ちゃんに怖い思いをさせてしまい
本当に申し訳ありませんでした」(と頭を下げる)
星野(坂口健太郎)「やめて下さい、常子さんは何も悪くないんですから」
常子「…」
星野「誰の仕業か分かったんですか?」
常子「目星はついているんですが証拠がなくて…」
星野「そうですか」
常子「嫌がらせは社員全体にまで広がっています
だからしばらく星野さんのお宅に伺うのは控えようと思います
子どもたちにまた何か危険が及んだら…」
星野「しかし…常子さんが心配です」
常子「私は大丈夫です、卑劣な脅迫に屈する訳にはいきませんから」
星野「…分かりました…くれぐれも気を付けて下さい」
常子「はい、ありがとうございます、では失礼します」(と一礼)
星野「あっ、何かあったらすぐにお電話下さい
…あっ…何かあってからじゃ遅いか」
常子「フフッ…ありがとうございます、気を付けます…では…」(と背を向ける)
星野「常子さん」
常子の動きが止まる
星野が玄関に降り常子を後ろから抱きしめる
常子「…!」
星野「できる事なら僕がずっと守ってあげたいです」
(少しの間)
ゆっくりと振り向き星野を見上げる常子
そして目を伏せて「…失礼します」
星野がうなずく
ドアを開けて出ていく常子が星野とは目を合わさずにドアを閉める
少し興奮しているように眼鏡に手をやる星野
ドアの外の常子も動揺した表情で歩き始める

編集部、深刻な表情の一同
扇田「うちは風呂場の窓だ」
本木「うちは台所や」
木立「うちもです」
松永「玄関の窓です」
緑(悠木千帆)「うちは庭から部屋に投げ込んできて…」
島倉「少しずれてたら母に当たるところでした」
水田「子どもが怪我しなかっただけよかったですけど…」
寿美子(趣里)「どうする事もできないんでしょうか…」
常子「石を投げ込んできているのがアカバネだという証拠がない以上は…」
悔しがる一同
と、「突然お邪魔します、下でお声がけしたんですがどなたもいらっしゃらなくて」
と3人の男が階段を上がってくる
一同「あっ!」
赤羽根(古田新太)「アカバネ電器製造の赤羽根と申します」(他は村山と酒井)
常子と花山が厳しい表情で前に出る
赤羽根「これはこれは小橋社長に花山編集長さんですね、お姿は雑誌の方で」
花山「一体どういう御用ですかな?」
赤羽根「いやね、用というほどの事ではないんですが
先日うちの村山と酒井が大変失礼をしたようだったので
お詫びに伺ったという次第でございます
…ところでどうかしたんですか?
立ち聞きをするつもりはなかったんですが
石を投げられただの聞こえましたもので」
常子「ええ、社員たちの家に石を投げ込まれる嫌がらせが
立て続けに起こっておりまして」
赤羽根「それは物騒ですなあ」
村山(野間口徹)「全くです」
酒井(矢野聖人)「同感です」
赤羽根「しかしそうなったのもあなた方のせいでもあるんじゃないですか?
あれだけ他の会社の製品にケチをつけてりゃ恨みを買って当然でしょう」
赤羽根を厳しい顔つきで見ている一同
赤羽根「そんな怖い顔しないで下さい(と勝手にデスクの椅子に座り)
私は一般論を言ったまでですよ
しかしよくもまあ人が汗水垂らして作った製品をあんなひどい表現で…」
花山「我々が真剣に試験をした結果があの記事だ
責任を持ってペンをとっている」
赤羽根が「ペン…」とデスクの万年筆をつかみ
「そうですか…へえ~」とそれを投げ捨てる
「おい!」と編集部員たちから怒号が上がる
冷静を保っている花山
赤羽根がバカにしたように薄ら笑いを浮かべて花山を見上げる
ペンを拾い元の場所に戻す常子「赤羽根社長」
赤羽根「はいはい」
常子「私たちは屈しませんから…
何をされようが私は社員たちを守ってみせます
どんな卑劣な行為にもとことん戦っていくつもりです」
村山「ちょっと待って下さいよ、まるで我々が何かやったような言いぐさですね」
酒井「証拠があるんですか?証拠が!」
編集部員「おまえら!」
赤羽根「これこれやめなさい(立ち上がり常子を見て)小橋社長
社員を守りたいのは私も一緒です、共存共栄といくのが一番望ましいんですが」
常子「お帰りください」
赤羽根「ええ…今日はそうします(一同を見て)ではまた」
3人が帰り水田「最低なやつらだ」
扇田「これではっきりした、やつらの尻尾つかんでやるぜ!」
松永「でも…これ以上試験を続けたら
ますます危険な嫌がらせが増えるんじゃないですか?」
花山「みんな…ジャーナリストとしての誇りを持て
いいか?あなたの暮しは庶民のためのものだ
我々は庶民のためにならないいかなる権力とも戦わなければならない
ジャーナリストとしての自覚なくしてはやってはいけないんだ!
ペンは剣よりも強い!」
水田「…僕は経理ですが…その覚悟です」
花山がうなずく
「俺もやります!」「私もです」「僕も同じ気持ちです」と声が上がる
扇田「俺たちも…戦うぞ!なあ!」と盛り上がる一同
常子「私たちは何もやましい事はしていないんだから堂々としていましょう!」
(一同)「はい!」

<常子たちは電気釜の商品試験を今までどおり進めていきました
炊き上がり直後の蓋やつまみの温度を測ったり
どうすれば程よい炊き具合になるか何度も水の量を変えてみたり
電圧を下げた状態で試験してみたり
電気釜の試験は1か月続きました>

夜、編集長室で記事を書く花山
『特別おいしいごはんが炊ける訳ではなく
ごはんが炊けるまでの時間も電気代も余分にかかる
もちろん電気釜そのものも安くない
それでも炊いている間は目を離せるので少しだけ家事から解放される
これが今の電気釜に対する正しい説明ではないでしょうか
(朝、デスクで花山の原稿を読む常子)
特にアカバネは蓋やつまみが熱くなる危険のある事も明記しておらず
使う人の立場を真剣に考えているとはとても言えません
我が炊飯器を各家庭に備えてほしいと願うならば
各メーカー技術者がやらなければならない事は
安全で使いやすく長く使える胸を張って売れる商品を作る事であり
決して一時的な収入を得るための安易な宣伝文句を考える事ではないはずです
AA おすすめできる なし
A よろしい ハルデン、ニッカデン
B 普通 カンキン、広海、ヒューガ、チューブ、早英
C おすすめできない アカバネ』

常子「木立さん、商品試験の原稿が出来上がったのですぐに印刷に回して下さい」
木立「任して下さい」
常子「お願いします…あと扇田さん
次はリビングダイニングの台所を取材したいんです
愛読者の中にそういう台所をお使いの方を探して頂いていいですか?」
扇田「分かりました」
常子「お願いします、それから…」
と、電話が鳴り受話器をとる常子「はい、あなたの暮し出版です…星野さん」

会社から電話をしている星野「すみません、会社にお電話してしまって
今ならちょうどお昼休みかと」

常子「はい、今ちょうどお昼休み…(と嬉しそうに言ってから
働いている一同を気にする・美子が常子を見ている)
…いえいえ何でもありません」(と体を横に向ける)
(星野)「御無沙汰してしまって…」
常子「こちらこそ…何だか久しぶりに星野さんの声を聞いたような気がします」

星野「そろそろ落ち着く頃かと思ったんですがお忙しいですか?」
(常子)「いえ、おっしゃるとおりちょうど一段落ついたところで」
星野「よかった」

(星野)「あ…あのですね今度の日曜に大樹と青葉を連れて
動物園に行く事になったんです」

星野「常子さんもよかったらご一緒にいかがですか?」

常子「動物園ですか」
(星野)「ええ、人の多い場所なら相手も手出しはできないだろうし
常子さんもたまには息抜きをした方がいいと思ったんです」

星野「僕がついてますから」

常子「分かりました…最近は嫌がらせもないですし
お言葉に甘えてご一緒させて頂きます
大樹君や青葉ちゃんにも会いたいですし」

星野「よかったぁ…では日曜日に」

常子「はい、楽しみに待ってます」

アカバネ電器製造
赤羽根が社長室でカニを食べている
村山「どうやら電気釜の試験を終えたようです」
赤羽根「そうか」
酒井「社長!このままでは我が社がまた…」
「静かにしろ!せっかくの蟹がまずくなる」
とカニを貪りながら不気味に笑う赤羽根

(つづく)

星野家玄関のシーン
帰ろうと背を向けた常子が星野に名前を呼ばれて
振り向きもせず静止している時間がかなり長い
これは常子がわざと隙をみせているのだろうか?
後ろからの星野の抱擁が計算通りなのだとしたら常子もやるもんだ

星野との電話シーンの常子もかわいい
みんなバリバリ仕事してるのに昼休みだとか言ってコソコソ話し続けてるw

星野はもう発情モードで玄関では常子を抱きしめて「僕がずっと守ってあげたい」
電話では「僕がついてますから」
もうグイグイきてる感じ
二人はもう同居しちゃいなよ

投石は普通にアカバネの仕業だったようだ
商品試験の進行具合などがアカバネに筒抜けのようだが
次週予告で週刊誌の記事に「テスターの告発」の見出しがあったから
そのあたりにスパイが紛れ込んでいるのかな?





2016年9月2日金曜日

とと姉ちゃん(131)再び現れたアカバネの2人組は常子たちを買収しようとするが…

星野(坂口健太郎)にお茶をいれる常子(高畑充希) 
星野「今日もすみません、お仕事お忙しいのに」 
常子「いえいえ、星野さんも残業続きで大変ですね」 
星野「繁忙期は過ぎたんですがいろいろ立て込んでしまって」 
青葉「ねえ今度おばちゃまのおうちに遊びに行きたい」 
大樹「僕も行きたい、次の日曜日は?」 
星野「あのね、そんなに勝手に決めては…」 
常子「是非いらして下さい」 
星野「いいんですか?」 
常子「私も来てほしいです、じゃあ次の日曜日に遊びに来てね」 
大樹と青葉「やった~!」 
大樹「青葉、おばちゃまのかかにも会えるね」 
青葉「会えるね」 
大樹「楽しみだなあ…おばちゃまってどんな家なの?」 
はしゃぐ子どもたちに笑顔になる星野と常子 

タイトル、主題歌イン 

君子(木村多江)「星野さんたちがうちに?」 
常子「はい、すみません勝手にお呼びしてしまって」
君子「ううん、いいの、大歓迎よ」
美子(杉咲花)「私も…だったらまり姉ちゃんたちも呼ぼうよ」
常子「そうね」
美子(遠慮がちに)「大昭さんも呼んでもいい?」
常子「フフフ、もちろん」
君子「ああ…楽しみね」
常子「はい」
君子「何作ろうかしら…いなり寿司なら子どもたちも好きよね
ああ…でもやっぱり大勢いらっしゃるからちらし寿司かしら
あ~でも鞠子がかんぴょう好きだから手巻き寿司もいいけど…あ~…」
君子の様子を見て笑う娘たち
美子「とりあえずお寿司は決まりなんですね」
君子「あらやだ」 

あなたの暮し出版
忙しく働く一同
今しがた出かけたばかりの美子が戻ってくる
常子「どうしたの?」
美子「それが…お客様が…」
「どうもこんにちは」「こんにちは」と村山(野間口徹)と酒井(矢野聖人)が現れる
常子「…」

別室
花山(唐沢寿明)「何の用だ?何度泣きつかれても
君たちの要求を受け入れる事はできんぞ」
村山「承知しております、先日は感情的になって
お見苦しいところをお見せした事、猛省しております(と頭を下げる)
本日は我が社の誠意をお見せしようと思って参りました」
花山「誠意?」
村山に合図された酒井が包みをテーブルに置き中の札束を見せる
常子の顔が強張る
村山「私どもも御社の商品試験は画期的な企画だと感心しております
ですので我が社にできうる最大限の支援を…」
花山「断る!金でお宅に都合のいい記事を書けと言いたいようだが
あんたらの支援など我々には必要ない
村山の合図で酒井がさらに金を積み増す
村山「これでいかがでしょう?」
花山があきれて「話にならんな」と立ち上がりそっぽを向く
村山「しかしこれなら…」(と酒井がさらに金を積もうとする)
机を叩いて立ち上がる常子「バカにするのもいい加減にして下さい!」
花山が驚いて振り向く
常子「あなた方はいい商品を作ろうという生産者としての矜持はないんですか?
商品試験はまだ終わっていませんが今のところあなた方の製品は
とても褒められたものではありません」
村山「…」
常子「粗悪品を売ってお金で評価を操作しようとするなんて
恥ずかしくないんですか!」
酒井「ひどい言われようだな」
村山「(酒井に)おい…いいでしょう、お言葉に従い帰ります
(と立ち上がり常子を見て)ただ…拒んだ事をきっと後悔する事になりますよ」
2人が帰って花山「常子さんがあそこまで言うとはな」
常子「すみません、ちょっと腹が立ったので」
花山「いや、拍手を送りたくなったよ、スカッとした!ハハハハハ!うん!」
常子も笑顔になる

小橋家の小さな庭で大樹・青葉・たまきにボール遊びをさせる南(上杉柊平)

台所と居間では大人たちが料理と卓の準備をしている
鞠子の結婚式で常子の挨拶が花山のものと被ってしまった話から
常子の女学校の卒業祝いでの宗吉の裸踊りの思い出話になり
大笑いする一同に水田「いいなあ…知らないの僕だけか…」
鞠子(相楽樹)「もう…いい年してひがまないの」
星野「宗吉さんに頼んだら今度見せてくれるんじゃないですか?」
首を傾げる水田「あっ、いやあの…皆さんの共通の思い出が羨ましいだけで
宗吉さんの裸踊りが見たい訳じゃ…」
星野「ああ、そうか」
(一同の笑い)
常子「そうですよね」

縁側のガラス戸を開ける常子「は~い、皆さんごはんですよ~」
南「ごはんだ」
子どもたち「は~い」
大樹「よし、みんな手洗おう」
星野「南さん、面倒見て頂きありがとうございます」
南「いいえ」
水田「うちのもすみません」
「俺も楽しいですから」とさらっと答える南をうっとりと見つめる美子
手を洗い終わり手拭いを使う子どもたち
常子が大樹の足のやけどの痕を見て少し切ない表情になる

竹蔵の写真のある仏壇にもちらし寿司が供えられている

全員が揃った食卓で常子「では…頂きます」
(一同)「頂きます」
星野が大樹のためにコロッケを取る
水田はたまきにやはりコロッケを
常子は青葉の世話をしている
君子「こんな大勢でごはん食べるなんていつ以来かしら」
常子「本当ですね」
美子「森田屋さんにいた頃まで振り返らないといけないんじゃない?」
鞠子「やっぱり宗吉さんと照代さんにも来て頂きたかったわ」
南「でも今日も店ありますから」
水田「ああ、そうか」
南「俺だけ楽しんでこいってお休みを」
君子「愛されてるのね」
南(照れ笑い)「そうですかね…」
青葉「おばちゃま、ねえ、あ~んして」
星野「ほら青葉、すぐに甘えるのはよしなさい」
常子「いいんですいいんです、はい青葉ちゃん、あ~ん」(と青葉に食べさせる)
「あ~ん」と口を開ける青葉
常子「おいしい?」
青葉「うん」
たまき「ねえお母さん」
鞠子「何?」
たまき「青葉ちゃんはとと姉おばちゃんの子どもじゃないのにどうして甘えるの?」
鞠子「えっ?」
食卓が静かになる
常子「それは…」
星野「何て言えば…」
思案するたまき「あっ、そっか、きっととと姉おばちゃんと星野おじちゃんの
仲がいいからだね」
(一同)「……あぁ…」
鞠子(たまきに)「そう…かもね」
微妙な表情の常子と照れ笑いしているような星野
鞠子(悪戯っぽく)「とと姉照れてるの?」
常子「照れてないわよ」
水田が常子を指さし「あれ?照れてません?」
「照れてません!もう…もういいですからこの話…」と顔を手で覆う常子
と、大きな音をたてて戸のガラスが割れて飛び散る
子どもを抱いて庇う大人たち
美子「何なの?」
鞠子「石?」
子どもたちが泣き声を上げる
廊下に砕けたガラス片と石
南「誰かが投げ込んだようですね」
「誰が?」と立ち上がり表に出る水田(南も続く)
泣く子どもを慰める常子たち
戻ってきた南に美子「誰かいた?」
南「いや、すぐ逃げたらしい」

常子と美子を台所に呼び出す水田「ひょっとしてアカバネの仕業じゃ…」
常子「そんな…」
美子「そうかも…だってこの前
後悔する事になる…って捨て台詞吐いたんでしょ?」
常子「いや…だからってこんなひどい事…」

電気店前
赤羽根(古田新太)「いや~社長、えらいにぎわいですねえ」
店主「ええ、週末にもなればみんな家族総出で電化製品を買いに来ますからねえ
赤羽根さんの製品も売れ行き上々ですよ~
何せアカバネは他社の七掛けほどの値段ですからねえ
みんな手に取りやすいんでしょう
ただ…ここのところ少し…」
赤羽根「あなたの暮しですか」
店主「ええ…あの雑誌を手に商品を見て回る客が結構いるんですよ
あれの評価を真に受けている人がほとんどで…」
赤羽根「で、低評価のうちの商品を敬遠すると」
店主「アイロンの売り上げがひどく落ちています」
赤羽根「困ったねえ村山君」
村山「ええ…」
赤羽根「取り急ぎ粗品でもつけなさい
うちの商品を買ってくれた人には石けんをつけます
(店主に)こちらにもすぐにお持ちします」
店主「よろしくお願いします」
「では失礼します」と歩き始める赤羽根「おい」
村山「はい」
赤羽根「目障りなあなたの暮しはいつ俺の前から消え失せる?」
村山「今、酒井が動いております、いずれ効果は現れるかと」
赤羽根「そうか、徹底的にやれと伝えろ」

編集長室に集まった面々
常子「花山さんのおうちにも石が?」
花山「幸い三枝子にも茜にもけがはなかった」
水田「やっぱりアカバネの仕業ですよ」
美子「そうとしか思えないです」
花山「警察には通報したがアカバネの仕業だという証拠がないので
取り合ってはくれなかった」
美子「そんな…」
寿美子(趣里)「何だか怖いですね
これからもそんな事があるんでしょうか?」
不安気な一同

退社時、1階の戸を開け表の様子をうかがってから出てくる一同
常子「何をされるか分からないので皆さん気を付けて帰って下さいね」
(一同)「はい」
緑(悠木千帆)「常子さんも美子さんもお気を付け下さい」
(2人)「ありがとうございます」
常子「それではまた明日」
「また明日、失礼します」と帰っていく一同
常子「私たちも急ぎましょうか、ねっ」
美子「うん」
と帰っていく常子と美子の後ろ姿を見て
メモに何かを記入している謎の男・国実(石丸幹二)

(つづく)

前回は大笑いさせてくれたアカバネの2人組(村山と酒井)は
今回は感じが悪いだけだった…
花山が断っているのにどんどん金を積み増していくなんて
相手をバカにして怒らせようとしているとしか思えず(普通に考えれば)
無能なところは前回と同じだが笑えなかった

南がイケメンすぎる
男らしくて長身で空気も読めて子どもの扱いまでそつなくこなし
美子がうっとりと見つめるのも無理はない
宗吉からも信頼され忙しいはずの日曜日に楽しんでこいと
休みをもらえるほど愛されてもいる

だが宗吉を見ているとどうしてこうも
かつての長谷川との扱いに差があるのかと思う
長谷川と南では出来が違いすぎるからだろうか?
時代が違うからだろうか?
あるいは宗吉自身が年をとったからだろうか?

たまきの「~どうして甘えるの?」は無邪気な幼児の残酷なひと言だ
黙り込む大人たちに場を和ませる最良の答えで自己解決したね
常子が照れて幸せのピークに悪い事がやってきた

石を投げ込んだのはアカバネの酒井だと思わせるような演出だが
本当にそうなのだろうか?
もしそうならこれほどハッキリとした悪人達が
このドラマに登場するとは思わなかった

2016年9月1日木曜日

とと姉ちゃん(130)商品試験の記事についてアカバネ電器製造から圧力を受ける常子

酒井(矢野聖人)「全くですね」 
村山(野間口徹)「電気釜はアイロン、洗濯機と並ぶ我が社の主力商品です
再び粗悪品として記事を出されてしまうと大きな損失を生む…」 
赤羽根(古田新太)「そういう事はさせなければいいだろう…
そういう記事は書かせないようにしろ」 

タイトル、主題歌イン 

三週間後 

キッチン森田屋で食事をする常子と星野一家 
常子(チキンライス)星野(スパゲティ)大樹(カレーライス)青葉(オムライス)
それぞれに卵焼きとコロッケの小皿がつく
常子(高畑充希)「おいしい?」
青葉「うん」
常子がうなずく
青葉「コロッケもう一つ食べたいなぁ…」
常子が自分の食べかけのコロッケを見る
「じゃあお父さんのを食べなさい」と星野(坂口健太郎)が
まだ手をつけていないコロッケの小皿を青葉の前に置く
青葉「いいの?ありがとう!」
青葉の世話をする常子
星野が目頭のあたりを手でつまむ
常子「お疲れですか?」
星野「えっ?」
常子「何となくお顔の色がすぐれなかったので
このところお休みの日もお仕事でしたものね」
星野「日曜日くらいずっと一緒にいてやりたいんですけどね
常子さんとお会いできるのも週に一度くらいしかないですし」
常子「フフフ…」

空になった皿
常子「おいしかった?」
青葉「うん」
と、「は~いどうぞ、アイスクリーム」と南(上杉柊平)が皿を2つ置く
アイスクリームを見て大樹「わぁ~すごい」
青葉「わぁ~」
星野「頼んでないですよ」
南「大将からです」
厨房から顔を出す宗吉(ピエール瀧)「子どもにはサービスだよ」
星野「すみません(と頭を下げ子どもたちに)ほらおじちゃんにお礼は?」
大樹「ありがとう」
星野「青葉」
青葉「おじちゃんありがとう!」
宗吉「おう、溶けねえうちに食いな」
(大樹と青葉)「頂きます!」
星野「…常子さんの方はお仕事順調ですか?」
常子「あっ、はい、電気釜の試験も順調です
今からどんな記事になるのか楽しみです」
星野「なぜ雑誌を作ろうと思ったんですか?」
常子「えっ?」
星野「あ~すいません急に」
常子「いや…」
星野「ただ僕はタイピストだった常子さんしか知らなかったので
出版社の経営をしていると聞いてからすごく不思議な感じで」
常子「女の人の役に立つ雑誌を作りたかったんです
暮らしを守っている女の人を少しでも手助けできればと…
今はあなたの暮しでもっともっと暮らしのためになるような事を
提案していきたいんです」
星野「…夢を持てたんですね」
常子「夢?」
星野「僕は以前、新種を発見し両親の名をつけるという夢を追っていました
結局叶いはしませんでしたがその時はあの夢を追いかける事に夢中だった
でも常子さんはいつも家族や人のためで
自分のやりたい事は二の次になさっていた
そんな常子さんが自分のために自分の夢を追っているのだとしたら
僕はとてもうれしいです」
常子「夢…そうかもしれませんね…はい…私の夢です」
星野が微笑む
常子「でも私一人では到底ここまでの雑誌を作る事はできませんでした
花山さんがいて下さったから…
厳しい方ですが女性のような視点を持っていて
女性とも真剣に向き合って下さる方なんです」
星野「僕もお会いしてみたいなあ」
常子「いや、お会いしないほうが…すごい方なんですが
機嫌が悪いとものすごく怖いですし」
星野「そんな人なんだ」
常子「はい」
星野「へえ~」

雨の中を2人の男が住吉ビルの前に立つ

緑(悠木千帆)「常子さん、ご来客です」
常子「はい」
男たちが階段を上がってくる
村山「アカバネ電器製造の村山と申します
小橋社長でいらっしゃいますか?」
常子「はい、そうですが」
村山「事前にご連絡もせず申し訳ございません
本日は少々お話がございまして」
「…かしこまりました、あちらへどうぞ」と案内する常子
「緑さん、お茶お願いします」
常子たちが別室に消えて美子(杉咲花)「アカバネってあのアイロンの試験で…」
松永「そうです、一番評価の低かった…」
スタッフが集まってくる
島倉「確か電気釜の試験の時もアカバネの製品があったよな?」
寿美子(趣里)「何の用ですかね…」

別室
改めて挨拶を交わす一同
常子「お掛けになって下さい」
「失礼致します」と着席した2人に常子「…で、今日はどういった?」
と、突然「うっ、うっ…」と酒井が嗚咽を漏らしはじめる
村山「おい、泣くやつがあるか(常子に向かって)すみません」
(よく分かりませんが…)という顔の常子「いえ…」
酒井「今年4人目の子が生まれるんです」
常子「はあ…」
「今…会社が倒産したら…」と、椅子から降り土下座をする酒井
「お願いします!アカバネを潰さないで下さい!」
常子「えっ?」
酒井「子ども4人抱えて職を失う訳にはいかないんですよ!
お願いします!お願いします!」
床に頭をつける酒井を止めようとして常子が立ち上がる「お話…お話が…」
村山(酒井に)「よしなさい!」
村山を見る常子「えっ?」
村山「今日は会社と会社の話し合いに来ているんだ
それをそんなに取り乱してみっとないと思わんのか」
(と村山が酒井を立ち上がらせる)
村山「座れ」
「すみません…」と酒井もうなだれたまま席に着く
2人の真意を測りかねる表情の常子も席に座り「あの…」
村山「失敬…実は彼が口にしたとおり今我が社は窮地に立たされておりまして」
常子「それが私たちの記事のせいだと?」
村山「はっきりとした因果関係は分かりませんがね
あなたの暮しの記事によりアイロンの売り上げが激減した事は確かです
もしもこの上電気釜も商品試験で低い評価を受けたら我が社は立ち行かなくなる
(酒井が泣き声を漏らす)どうか我が社の電気釜に低評価をつけるのは
やめて頂けませんか?お願いします」
常子「待って下さい」
村山「230人もの我が社の社員を路頭に迷わせる訳にはいかないんです
あなたも経営者ならそのつらさお分かり頂けますよね?」
部屋の外に花山(唐沢寿明)がやってきて中の話に足を止める
村山「どうかどうかご検討をお願い致します!」
酒井「お願いします!うちの子のためにも!」
常子(語気強く)「ちょっと待って下さい、頭を上げて下さい」
2人「お願いします!」
常子「頭を上げて下さい」
2人「お願いします!」
どうしていいか分からず困り果てた表情の常子
と、ドアを開けて花山「何なんだ君たちは
泣いている暇があったら商品開発でもしたまえ!
うちの記事が原因で会社が倒産したとしてもそれは自分たちの責任だ
恨むなら会社を恨むんだな、さっさと帰りなさい」
村山「いや、待って下さい」
花山「これ以上君たちの泣き言を聞くつもりはない!」
村山「…」

ビルの前で傘を広げ歩き始める2人
酒井「クソッ、あれがうわさの編集長か
情で動く人間じゃなさそうですね」
村山「女社長はあと一押しだったのにな」
と、雷鳴が鳴り響く中2人が一人の男とすれ違う
その男・国美恒一(石丸幹二)は立ち止まり2人の後ろ姿に目をやってから
あなたの暮し出版社を見上げる

アカバネ電器製造の電気釜
部屋に入る花山と常子
花山「どれがアカバネの電気釜だ?」
趣里「これです」
「これが試験の結果です」と扇田が花山に資料を渡す
資料を覗く常子「4回炊いて一度もうまくいってないんですね」
美子「メーカーの指定した水加減では焦げ付くし
ちょうどいい水加減を探ってるんだけどどうにもうまくいかなくて」
常子「スイッチひとつでお米が炊けるといっても
スイッチを入れるまでに大変な苦労があったのね」
花山「誇大広告だな」
電気釜がカチッと音をたてる
「あっ、炊けたみたい」と寿美子が蓋をつまもうとする
美子「あっ、駄目…アカバネのは蓋のつまみが熱くなりやすいの
今まで何人もの人がうっかり触ってやけどしたんだから」
常子が顔を曇らせる
寿美子がふきんを持って蓋と中蓋を開ける
扇田「あ~ベチャベチャだ、今度は水が多すぎか」
美子「あれ?アカバネってアイロンにも問題がなかった?」
常子「ええ」
美子「アカバネという会社自体に問題があるのかもしれないわね」
松永「そうですね…安いから売れてるらしいんだけど商品は決して…」
扇田「それに…さっきのあの連中も気になるしなあ」
常子と花山が顔を見合わせる

電話で報告を受ける赤羽根「そうか、泣き落としはきかんかったか」
と受話器を置き「冷たいやつらだなあ…(とせんべいを手に取る)
自分たちにも大切な家族がいるだろうに…」(せんべいをバリバリと齧る)

夜、星野家のブザーを押す常子
大樹と青葉が出てくる
常子「ん~!こんばんは」
(2人それぞれ)「お帰りなさい」
常子「…うん…」
青葉「おばちゃま『ただいま』は?」
常子「フフフ…ただいま…
ごめんね、『お帰り』って言われてちょっとうれしくなっちゃった…
さあ、今日は何して遊ぼうか?」
青葉「う~んとね…」

ちゃぶ台でお絵描きをしている大樹と青葉
大樹は図鑑を見ながらシロクマを、青葉は家をそれぞれ描いている
常子「おうち?」
青葉「大きくなったら建てるの」
常子「おばちゃまもね、将来おうちを建てるのが夢なの」
青葉「そこに家族で住むの?」
常子「そうねえ…」
大樹「おばちゃんの家族って?」
常子「あ…私の家はお母さんと妹が2人いるわ
上の妹は結婚してたまきちゃんっていう女の子がいるの
青葉ちゃんともきっと仲よくなれると思う」
青葉「へえ~」
大樹「女ばっかりなんだね」
常子「フフフ、そうね…小さい頃にお父さんは亡くなって今は女だけ
下の妹は今も一緒の会社で働いていてかかは…」
大樹「かか?」
常子「あ…私のおうちはお母さんの事をかか
お父さんの事をととって呼ぶの」
大樹「へえ~」
常子「かかはとっても優しい人よ
いつも大樹君と青葉ちゃんと会ってみたいなあって話してるわ」
大樹「そうなんだ」
と、「ただいま」と星野の声が聞こえる
青葉「あっ、ととだ」
常子「フフフ、ととだね」
障子を開けて星野が部屋に入ってくる
大樹と青葉「お帰りなさい」 星野「ただいま」
常子「お帰りなさい」
星野「…ただいま」
常子が微笑む
常子の肩をさする青葉「ねえおばちゃまもおうち描いて」
常子「おうち?おうち描こうかじゃあ」
大樹「お父さんも絵描いて」
星野「ん?お絵描きしてるの?」
大樹「そお」
常子「星野さんも描きますか?」(と画用紙を渡す)
星野「ありがとうございます」
常子「青葉ちゃんはおうちです」(と星野に説明する)
青葉「大きくなったら建てるんだ」
幸せそうに笑う常子

(つづく)

コロッケをもらって「いいの?ありがとう!」と言う青葉がちょっと憎たらしかったw
53話でイチゴを一人で全部食べてしまった美子を思い出してしまったが
このとと姉ちゃんの世界では末っ子は食いしん坊でわがままな生き物のようだ

星野の体調が悪そうだったのが気になる
忙しくて常子とは週に一度くらいしか会えないと
説明するためだけの描写だったらいいのだけれど
重病にでもなって…みたいな展開はほんとにやめてほしい

今週のタイトルは「常子、星野に夢を語る」だが
実際は雑誌を作ろうと思った理由を説明した常子に
星野がそれは常子にとっての夢なのだと教えてくれたという事だったね

村山と酒井は笑わせてくれた
突然泣き始める酒井に常子もキョトンとしてたよね
「お願いします」を連呼されて常子も弱っていたけど花山がいい時に来た
帰り道の村山の「女社長はあと一押しだったのにな」には爆笑した
そんな訳ないだろwいくらなんでも常子をなめすぎ
この2人の次回の登場が楽しみだ

赤羽根はステーキとかせんべいとかいっつも何か食べてるよねw
貪欲さ…みたいなものを描写しているのだろうか?

常子は青葉に合わせて自分を「おばちゃま」と呼んでいるが
大樹はずっと「おばちゃん」と呼んでいる
自分も男の子だったからわかるが「おばちゃま」と呼ぶのは
幼児っぽくてなんだか恥ずかしいからだと思う

大樹がシロクマを描いていたのにちょっと笑った
NHKのドキュメンタリーってシロクマの子育てを追ったものが多いよね
たぶんシロクマ好きな人が局内にいるんだと思うけどそれを思い出した

2016年8月31日水曜日

とと姉ちゃん(129)お互いに本当の気持ちを伝えあう星野と常子は…

夜道を駆ける常子(高畑充希) 
星野家に到着してブザーを押しドアのノブを回すと鍵は開いている 
「大樹君?」と居間に向かうが廊下で星野(坂口健太郎)と鉢合わせになる 
星野「常子さん?」 
部屋はパーティーのように飾り付けられ星野ものんびりとした様子だ 
訳が分からず子どもたちを見る常子 

タイトル、主題歌イン 

常子「えっ…」 
ちゃぶ台にはチキンライスとエビフライが並び子どもたちが常子に振り向いている
星野「常子さん…どうして?」
常子「いや…あの…大樹君が具合悪いって聞いてそれで…」
大樹「ううん、僕元気だよ」
常子「ああ…いやでも…えっ?」
星野「大樹が具合悪いなんて誰から聞いたんですか?」
常子が青葉を見る
紙で作った王冠を頭に被った青葉が目を逸らせる
星野「青葉がそんな事言ったのか?(青葉の顔をのぞき込み)
どうして常子さんにそんな嘘をついたんだ?」
青葉「お父さんが…おばちゃまを呼んじゃ駄目って言うから…
だから前みたいにお兄ちゃんが具合が悪いって言ったら来てくれると思ったの…」
星野「…だからといって嘘はよくないぞ(青葉の肩を優しくさすりながら)
青葉も嘘をつかれたらどう思う?嫌だろ?」
青葉「ごめんなさい…」
常子に頭を下げる星野「申し訳ありませんでした」
常子「いいんです、青葉ちゃん謝ってくれましたし」
星野「でも…」
常子「それに…(大樹を見て)もう…何より大樹君が無事でよかった」
(と大樹を抱きしめる)
青葉「ごめんなさい…」
「ううん、会いたいと思ってくれてありがとう」と青葉も抱き寄せる常子
子どもたちを膝に抱き安心して涙ぐむ常子を星野が見つめている

ケーキのロウソクに火が灯される
(一同)「青葉お誕生日おめでとう」
青葉「ありがとう」
一同の拍手

部屋を駆けまわり追いかけっこをしているような4人
青葉に手を引かれる常子「逃げろ逃げろ」
大樹を抱き上げる星野「大樹捕まえた~」
倒れ込みじゃれあうように遊び続ける4人

遊び疲れたのか眠ってしまった青葉を星野が布団へと運ぶ
(隣の布団で大樹が眠っている)
掛け布団を被せ青葉を眺めている常子
その常子を星野が見つめる
常子が星野を見る
目が合い少しドギマギしたような星野「すみません遅くまで」
常子「いえ、楽しかったです………ではそろそろ…」(と立ち上がる)
星野「あの…」
常子「はい」
星野「お送りさせて下さい」
常子「…いえ、大樹君や青葉ちゃんが起きた時に
お父さんがいないとさみしいでしょうから」
星野「…そうですか」
常子「では失礼します」(と部屋を出ていく)

玄関のドアを閉める常子
歩き始めるが追ってきた星野がドアを開ける
振り向く常子「私何か忘れ物でもしました?」(と自分のバックをちらりと見る)
星野「いえ」
星野を見て目をぱちくりさせる常子
直立して腕を前に組む星野
「僕は…もう常子さんには会わない方がいいと思っていました
僕には妻へのうしろめたさがあって…
僕だけが新たな人生を歩んではいけないと…ずっと思っていたので
でも…子どもたちにはそんなの関係ないようです
とても常子さんの事を好いている
そして…それは僕もです」
驚いたのか少し口を開き星野を見ている常子
歩み寄り常子の顔をのぞき込む星野「もっと会えませんか?」
背の高い星野を見上げる常子
星野「もっと…話をさせてもらえませんか?」
常子「私も…星野さんのご迷惑になるのではないかと思っていました
(でも…)大樹君や青葉ちゃんともっと一緒にいたい
星野さんとも一緒にいたい
でも星野さんは亡くなった奥様の事を愛してらっしゃるだろうから
ご迷惑なんじゃないかなって思って…だから…」
星野が常子を抱きしめる
目を閉じ常子の肩に顔を埋めるような星野
驚いたように大きく目を開いたままの常子がゆっくりと右手を星野の背中に回す
そして右手が爪を立てるように星野の肩を掴む
静かに抱き合う2人

美しい月

小橋家
美子(杉咲花)「とと姉ちゃん遅いですね」
君子(木村多江)「そうねえ」
と、「ただいま帰りました」と常子が戻る
美子「大樹君大丈夫だった?」
常子「うん?」
美子「あの慌てよう見てたら分かるわ
大樹君に何かがあって青葉ちゃんが電話してきたんだって」
常子「ああ…」(と靴を揃えて部屋に入る)
君子「無事だったのよね?」
常子「あ…それが…青葉ちゃんの嘘だったんです」
君子「嘘?」
美子「どうしてそんな…」
席に着く常子「自分の誕生日にどうしても会いたかったようで
そう言えば私が飛んでくると思ったみたいで」
美子「そっか」
君子「そうだったの」
常子「でも…私何だかうれしかったです
青葉ちゃんがそこまで私に会いたいと思ってくれてるなんて」
君子が微笑んでうなずく
美子も幸せそうな姉を見て安心したように微笑む

鏡台の前で常子が髪を梳かしている
左手がブラシを置いた右手を撫でるように掴む
星野の背中を掴んだ右手を思い出す常子

水田(伊藤淳史)「これもだ」
常子「どうかしました?」
読者からの葉書を読む水田「電気釜を購入したいが
粗悪品が多いとのうわさを聞きどれを購入すればいいか悩んでおります…
こういう内容の手紙、最近多くないですか?」
葉書を手に取る常子
美子「そういえば私もよく目にする」
緑(悠木千帆)「私もです」
常子が大樹のやけどの話を思い出す(電気釜で足を…)
常子「電気釜も試験しましょう」

長机にずらっと並んだ電気釜を調べるスタッフ一同
松永「へえ~これが…」
本木「電気釜っちゅうやつですか」
寿美子(趣里)「使うのは初めてです」
「俺も初めてです」
「私もです」
島倉「スイッチひとつでごはんが炊けるなんて便利ですね
うちはお釜をガスコンロにかけて火加減を見ながら慎重に炊いてるっていうのに」
扇田「うちだってそうだよ」
水田「ガスで炊いてるだけいいですよ
うちの田舎なんてまだ薪ですからね
薪の状態で燃え方が違うから大変ですよ」
花山(唐沢寿明)「三度の飯もこわしやわらかし」
水田「これで上手に炊けるのなら主婦の手間を減らす革新的な発明だよ」
(一同)「うん」
「だけどこれ1台で4,500円でしょ?」
扇田「大卒初任給の半分ですか」
美子「それでも欲しがる人がたくさんいるんだからすごいですよね」
島倉「新しくて便利な商品が出る度にみんな買いたがりますからね」
常子「じゃあテスターの皆さんがいらっしゃる前に
電気釜の基本的な使い方を覚えておきましょう」
(一同)「はい」

<電気釜の試験でも毎日お米を炊いている一般の主婦の視点が必要でした
1万人を超えるテスター希望者の中から通える範囲に住む10人を選び
協力してもらう事になりました>

アカバネ電器製造社長室
赤羽根(古田新太)がステーキを食べている
「失礼します」と社員の村山と酒井が入ってくる
酒井(矢野聖人)「あなたの暮しの次の商品試験の内容が分かりました」
村山(野間口徹)「どうやら電気釜のようです」
ナイフとフォークを持つ赤羽根の手が止まる「電気釜?」
酒井「我が社の製品も含まれています」
「いい加減目障りだな、商品試験ってのは」
と肉を噛む赤羽根

(つづく)

青葉はかわいい嘘をつく
嘘だと分かってから改めて録画を観ると電話の会話は確かに棒読み口調で
ちゃんと嘘をついている演技になっている

そうか…星野は加奈子にうしろめたさがあったのか
でも前回で加奈子の願いを知ったから
常子との事を前向きに考えられるようになったんだね

具体的に結婚するかどうかは分からないけれど
気持ちの上では常子と星野問題は決着してしまった
まさに急転直下だ、こんなに早く解決するとは思わなかった
何だか逆に怖い
残り1か月もあるのだが最後にバッドエンドにならなければいいが…

今回は常子が驚いて目を見開いているシーンが多かった
改めて高畑は目ぇでかいなあ…と思った
鏡台のシーンでは髪を下ろして珍しく常子が「女」を感じさせた
絶妙に少し上を向いた鼻が美しい
あの常子が夜中に鏡を見て男の事を思い出すなんて胸熱だ

2016年8月30日火曜日

とと姉ちゃん(128)亡き妻の思いを知る星野~常子は青葉から連絡を受け…

星野(坂口健太郎)「こちらこそ御無沙汰してしまって…」 
弓岡(志賀廣太郎)「ああ、いや…」 
星野「ほら、おじいさんだよ…青葉」 
しかし青葉は星野の後ろに隠れてしまい大樹もどこかぎこちない 
「ほら、おもちゃだよ」と弓岡がお土産を見せ
星野も「ほら青葉、おじいちゃんがおもちゃを買って下さったよ、おいで」
と促すのだが青葉は星野の背中から出て来ようとはしない 
弓岡「まぁいいんだ、3年ぶりだ…覚えとらんだろう」 
星野「…」 

タイトル、主題歌イン 

隣の間でお土産のおもちゃで遊んでいる大樹と青葉
弓岡「大きくなったなあ…大樹も青葉も」
星野「ええ、大樹なんて去年の服がほとんど入りませんから」
弓岡「そうか…武蔵君も一杯つきあわないか」(と徳利をつかむ)
「では一杯だけ、おちょこ取ってきます」と台所に立つ星野
弓岡「少し驚いたよ」
星野「何がですか?」
弓岡「来てみたら突然女の人が出てきて」
星野「ああ、家政婦のなみさんですか?」
弓岡「てっきりそういうお相手なのかと思ったが…」
星野(少し笑いながら)「そういう相手って…何ですか?」
席に戻った星野に弓岡「再婚だよ」
星野「…」
弓岡「そろそろ考えてもいいんじゃないか?
加奈子もそう願っていたよ…死ぬ間際言われたんだ…
あの人は私が死んでもずっと一人でいるだろうけど
あんな不器用な人が仕事も家事もなんてできっこない
子どもにも母親がいた方がいい、だからもし数年たっても
あの人が一人だったら再婚するよう勧めてほしい…とな
…ちゃんと君に伝えたからな」
星野「…」
徳利を持ち上げている弓岡に星野が盃を差し出す
注がれた酒を飲み干す星野

スタッフや主婦のテスターの前に立つ常子(高畑充希)
「え~これでアイロンの試験、全て終了しました、ご協力ありがとうございました」
(一同)「ありがとうございました!」(拍手)
常子「もう本当に康恵さんと皆さんのおかげです」
康恵(佐藤仁美)「私たちの頑張りを無駄にしないようにいい記事にしておくれよ」
常子「もちろんです」

編集長室で帆船の模型を作っている花山(唐沢寿明)
ノックをして「失礼します」と常子が入ってくる
「アイロンの試験資料全てそろいました、ここに置いておきますね」
花山「ああ」
部屋を出ようとするが振り返り原稿に目を落とす花山を見つめる常子
「原稿楽しみにしています」

花山が机の周りに試験資料を貼り付けたボードを何台も配置している
席に座りその資料に囲まれ瞑想するように目を閉じる
時計の秒針の音だけが聞こえる
どれくらい時間がたったのだろう?
と、花山がペンを取り原稿を書き始める
『アイロンを試験する
洋服全盛の現在ではミシンと並んで、あるいはそれ以上に
アイロンは私たちの生活になくてはならないものになっています
ほとんどの家庭で毎日のように使うものだからこそ
安全で使いやすく長もちするものでなくてはなりません
アイロンの試験を行うにあたって10人の主婦に協力してもらい
2か月毎日50枚のワイシャツにアイロンをかけてもらいました
使っているうちに柄の部分が熱くなってきて
ハンカチを巻かないと持てないという事が試験の間主婦たちを悩ませ続けました
そこでアイロンのスイッチを入れてから10分、20分、30分ごとに
どれくらい熱くなっているか測ってみました
20分もすると半分のアイロンはハンカチどころか
大きなタオルを巻かなければ持てなくなるほど温度が高くなりました
その中でもアカバネはむやみに熱くなり
30分後には熱で柄の塗料が溶けてしまいました
これは想定される到達温度に対して
全く耐久度の合わない塗料で加工しているから起こる訳で
メーカーの完全な設計ミスと言わざるをえません(総じて国産のアイロンは…)』

花山の原稿を読み上げる常子「総じて国産のアイロンは外国製品に比べて
設定温度が不正確でコードなどの故障も多く改善点が多く残っています
いくつかのアイロンは使っている人に危険を及ぼす可能性があります
メーカーは安く売る事よりも購入者にとって安全で使いやすい事を
第一に考えてほしいと心より願います」
テスターの主婦たちから拍手が起こる
「頑張ってよかったわね」
「本当にね」
編集長室から花山が出てくる「朝から騒がしいな」
常子「花山さん、文句なしの原稿です、ありがとうございます」
花山「礼を言うなら私ではなくこちらにだ(と主婦たちの方を見る)
その原稿を書けたのもあなたたち主婦の皆さんのご尽力のおかげですよ」
康恵「礼を言うのはこっちの方だよ
たくさんの人に読まれてるあなたの暮しに関われて
責任ある仕事を任せてもらえるなんて
私たちみたいなただの主婦にとっては
こんな気持ちを味わえるなんて思ってもなかったよ」
常子「ただの主婦ではありません
主婦の皆さんが暮らしの中で得たアイデアやこまやかな感性があったからこそ
今回のアイロンの試験もいい結果が導き出せたんだと思います」
康恵「そうかい?そんなふうに言われちゃ悪い気はしないけど」
主婦1「あんたまた調子に乗って!」
(一同の笑い)
美子(杉咲花)「やっぱり主婦の方々の意見は
商品試験にとって欠かせないものなのかもしれないですね」
常子「だったら主婦の方限定でテスターを募集したらどうかしら…
主婦の方にだからこそ見えるものがある
その目を大切にしたいんです…だから主婦のテスターさんです」
花山「そりゃいいな」
常子「ですよね」
「私やりたいです」
「私もやりたい!」と主婦たちから次々に声が上がる
常子「じゃあ皆さんにご協力お願いします」

昭和三十二年一月
あなたの暮し39号が発刊される

<アイロンの商品試験を特集した最新号は30万部以上を売り上げました
更に全国の読者からテスターへの応募が殺到し
1万を超える葉書が届いたのです>

葉書を読んでいるスタッフ一同
「笑顔をくれるあなたの暮し」
水田(伊藤淳史)「どの葉書も必ず、いつも楽しみにしています…とか
ひと言添えてありますね」
松永「この会社で働ける事は光栄な事だって改めて思いますね
こうやって読者から感謝してもらえるし売れれば売れるほど給料も増えるし」
水田「うちは常子さんが売り上げをちゃんと社員に還元しようって考えだからね」
松永「まあおかげで買い物ばかりしちゃうんですよね
金があるとあれも欲しいこれも欲しいって
実はこの間、最新のトランジスタラジオ買っちゃったんです」
扇田「また?」
寿美子(趣里)「前に電気蓄音機を買ったって言ってませんでした?」
松永「うん…電気屋の前を通る時つい足が止まっちゃってさ」
島倉「分かる分かる」
扇田「あの光景こそが希望っていうんだろうね」
趣里「今日は何だか詩的ですね」
扇田「いやいや本当にそう思うんだよ
焼け野原だった東京がここまで復興できて
今や戦争以前より便利な商品が売られてるんだぜ
まさに希望そのものじゃないか!」
松永「そっか、僕が買っているのはただの商品じゃなくて希望だったのか
じゃあこれからも買い物しなくちゃ、ねえ」
扇田「松永!」
美子「もうそんな事言ってすってんてんにならないでよ」
と、常子が「ただいま帰りました」と出先から戻り
「では皆さん今日はそろそろ上がりましょうか」
(一同)「はい」
すると電話が鳴り緑(悠木千帆)が受けるのだが
「はい?え~…おしゃれおばちゃま?うん…ちょっと待ってね」
それを聞いて「ちょっとごめんなさい」と受話器をもらう常子
「もしもし…もしかして青葉ちゃん?常子です」
(青葉の声)「あっ、おばちゃま、あのね」
常子「うん」
(青葉)「お兄ちゃんがまた具合悪いって」
常子「えっ?」
(青葉)「お父さんいないの、おばちゃま早く来て!」
常子「分かった、おばちゃますぐ行くからお外に出ないで待っててね、ねっ
後でね、すぐにね、はい」

ビルを飛び出し駆けていく常子

アカバネ電器製造のロゴ
あなたの暮し最新号のアイロンの試験記事を読んでいる男が激怒して
雑誌を壁に投げつける
男・アカバネ電器製造社長赤羽根憲宗(古田新太)

(つづく)

やったね!
亡き妻が星野の再婚を望んでいたという事で星野の気持ちも変わるかも

花山はもう知恵の輪には飽きたのか模型を作っていたね

常子が花山の原稿を絶賛して主婦たちにも「試験でいい結果を導き出せた」
と感謝しているのに少し違和感があった
いや、商品試験そのものの存在意義についてはドラマ内で語られている通り
すばらしいものだと思うのだが今回の原稿はダメだししているようにしか思えず
常子の言う「いい結果」も
製品の不具合をたくさん発見できたぜ…というふうにしか感じないのだ
これは例えば痴漢常習者をマークしている刑事が犯行を願ってしまうように
常子は製品に不具合がある事を願ってしまっているのではないだろうか?
確かに試験してもどの製品も横並びで不具合もなければ記事にはならない
だからといって製品の不具合を「いい結果」と言ってしまうのは違う気がする
もちろんドラマの作り手は
主婦ならではの細やかな視点からのアイロンの使い心地の評価に対して
常子が「いい結果」と述べたというつもりなのだろうが分かりにくかった
花山がボードに貼った資料の数々がそれらの材料なのかもしれないが
ざっとドラマを見て
前述したように常子は製品の不具合を願っていると感じてしまったのだ

美子の発言から常子の「だったら主婦の方限定で
テスターを募集したらどうかしら…」も少し違和感があった
ナレでテスターだと紹介されていたせいかもしれないが
「主婦のテスター」と2か月も一緒に仕事をしてきた後なのに今更…
もしかしたら今は康恵の顔で集まっている10人(康恵を除くと9人)を
康恵を介さずに直接契約できるようにするためにあえて言ったのかと
ちょっと思ってしまったw(もちろん常子はそんな悪い子じゃありません)

扇田の「希望」の件はとてもいいお話だったと思うけど
美子が「すってんてんにならないでよ」で軽く締めちゃったねw

赤羽根は顔が怖すぎ
古田新太とマツコはテレビで初めて見た時インパクトあったなぁ…
こんなんテレビに出していいのかよ…と本気で思った






2016年8月29日月曜日

とと姉ちゃん(127)星野一家と別れ傷心の常子は子どもがいる康恵や鞠子の話に…

ビルから出てくる康恵(佐藤仁美)と見送りの常子(高畑充希)と美子(杉咲花) 
康恵「今時の若い男性はアイロンもろくに使えないんだねえ」 
美子「本当ですね」 
康恵「情けないねえ…あっ、私入れて10人ね」 
常子「お骨折り頂きありがとうございます」 
康恵「いいんだよっ、それにあんたらもアイロン使える主婦の当てなんて
ろくにないだろ?結婚してないんだから」 
苦笑いの常子「そうですね…」 
少し慌てる康恵「あ…あっ、悪気があって言った訳じゃないんだよ」 
常子「いえいえ…」 
康恵「私だってつい最近まで戦争未亡人だった訳だから…」 
美子「…ずっと気になってたんですけど
どこで知り合った方なんですか?お相手の方って」 
康恵「カフェーの時の客でね…気に入られてさ」 
美子「へえ~」 
康恵「全然好みじゃなかったんだけど(と右手の親指と人差し指で円を作り)
金は持ってたから」 
常子と美子が顔を見合わせて笑う 
康恵「それに向こうの連れ子が懐いちゃってさ
それが何だかかわいくてねえ…」 
康恵の話に星野一家の事を思い出してしまったような常子 

康恵の申し出により雇う事になった一般の主婦のテスターに説明している常子
「え~今回皆さんにこちらにある10台のアイロンを使って
試験して頂きたいのはアイロンの使いやすさです
一日50枚のワイシャツにアイロンをかけて頂く事になるのですがその際
こちらの取っ手の持ちやすさ、重さ、細かい部分のシワの伸びやすさなど
どんな点が使いやすくどんな点が使いづらいのか…」

<康恵が集めてきた主婦の仲間たちは早速働き始めました>

「どうですか?」と声をかける常子
康恵(アイロンを手に持って)「これすぐ熱くなるんだけど冷めるのも早くてね」
常子「それだと頻繁にコードを抜き差ししないといけませんね」
康恵「ああ、こりゃ面倒だね」
主婦1「こっちは先っぽが全然熱くならなくて細かいところのシワが伸びないわ」
主婦2「こっちのは持ち手がすぐ熱くなってやりづらいわ」
常子「皆さん、気を付けて下さいね」

<彼女たちの声により具体的な試験項目が固まっていきました>

主婦たちが帰ったあとも基礎的な試験を進めるスタッフ一同
資料を見る花山(唐沢寿明)「うん…どこも温度の上昇は早いみたいだな」
常子「ああ…外国製よりも小さく設計されてるからですかね」
緑(悠木千帆)「皆さん、夜食用のお握り置いときま~す」

<底板全体に均一に熱が行き渡るかを調べる試験や
電源を入れたまま置いておくとどれだけ柄が熱くなるかを測る試験
正確な結果を導き出すために試験は何度も繰り返し行われます
アイロンの商品試験は連日深夜まで及び2か月にわたって行われました>

昭和三十一年九月

常子「皆さん適宜休憩とって下さいね」
(主婦たち一同)「はい」
康恵「ぼちぼち終わりが近づいてきたねえ」
常子「そうですね、でもこんなに長い間お母さんを拘束してしまって
お子さんたちが寂しがってないか心配で…」
康恵「そんな事ないよ、うちに帰ったら飛んできて
今日は何したの?…って聞いてきてさ」
常子「あら」
康恵「勝手にあなたの暮しを読んだりして…
母親が関わってる事が誇らしいみたい
私も気分よくなって話しちゃうんだけどね
そしたら目キラッキラさせて聞き入っちゃってさ」
常子「かわいいですね」
康恵「まあね、フフフフ」
その話題に星野家から離れた常子の心中を察し目を伏せる美子
と、花山が階段を降りて来て「あ~常子さん」
常子「はい」
花山「印刷所に文句言ったら金の話になった
私じゃ分からないから話をつけてくれないか?」
「またですか?はい至急!」と駆け出す常子

<その日常子は料理記事の確認のため森田屋に向かいました>

店に駆け込む常子「こんにちは」
宗吉(ピエール瀧)「おう」
封筒から書類を取り出す常子「すみません、あの原稿の…」
と、「あっ、おばちゃま!」と青葉の声がする
見ると星野一家が客席に座っている
「おばちゃま!」と青葉が常子に抱きつく
常子「こんにちは、青葉ちゃん…大樹君もこんにちは」
大樹「こんにちは」
星野(坂口健太郎)「たまにはみんなで外食しようかと」
常子「そうですか」
星野「はい」
青葉「ねえおばちゃま、何でもうおうちに来てくれないの?」
常子「それは…」
青葉「次はいつ来られるの?クリスマスは?私の誕生日は?」
常子「…」
立ち上がり青葉のそばにきて星野「青葉…常子さんはお忙しいんだから
無理を言ってはいけないよ」
青葉の右手を握る常子「ごめんね」
宗吉「何だよ、つれねえ事言うなよ、それとも何か?
葉っぱのあんちゃんのところに行けねえ事情でもあんのか?」
お互い気まずそうな常子と星野
常子「…いえ…」
場の空気を察したような南(上杉柊平)「あっ、大将」
宗吉「ん?どうした?」
南「常子さんの持ってきた原稿確認しないでいいんですか?」
宗吉「お~そうだったそうだった」
常子「お願いします」(と原稿を渡す)
星野がうなだれる青葉を連れて席に戻る
「オムライス食べようか…青葉…大樹は何食べる?」
視界の中の星野一家から目を逸らせる常子
大樹「カレーライスかな」
星野「カレーライスにする?」
慰めるように青葉の髪を撫でる星野が常子の方をそっと見る

「ありがとうございました」と店を出る常子(宗吉「おう、またな」)
少し動揺したような泣き出しそうな顔で道を歩いていく

あなたの暮し出版前
帰っていく主婦たちを見送るスタッフ一同
常子「皆さん本当に今日はありがとうございました」
扇田「ありがとうございました」
(主婦たち)「さようなら」
「さっ、仕事!」と扇田たちが部屋に戻る
康恵「あ~一生分のアイロンがけをやってる気がするよ」
常子「すみません」
康恵「アハハ、いいんだよ
おかげで最近アイロンかけるのがうまくなったって旦那に言われてさ
前の結婚の時はアイロンなんてあんまりかけなかったから
前の死んだ亭主はそういうの無頓着な人だったからねえ…
再婚したからって前の人を忘れた訳じゃないんだよ
今の結婚だって随分悩んだんだから…
…ってあんたに言い訳してもしかたないんだけどね」
常子「いえ…亡くなったからといって忘れられる訳ありませんから」
康恵「ただ…子どもがいるからね
私が生きている以上前向きにさ、幸せになろうって思うようにしたのさ」
康恵の話にうなずく常子
と、「とと姉おばちゃん!」とたまきが駆けて来る(その後ろに鞠子)
常子「あ~たまき!たまき!」
鞠子(相楽樹)「ごめんなさい、近くを通りかかったものだから
突然でお邪魔だった?」
常子「ううん、全然大丈夫」
鞠子「康恵さん、お久しぶりです」
康恵「久しぶりだねえ(と、たまきの顔をのぞき込み)
あんたがたまきちゃんかい?かわいいね」
たまき「おばさんは何してるの?」
康恵「常子さんに頼まれてどのアイロンが一番いいか調べてるんだよ」
たまき「とと姉おばちゃんに?」
康恵「そうだよお、この人はとっても偉いんだから」
常子「偉いだなんてそんな…」
鞠子「本当よ、とと姉おばちゃんはすっごく偉いのよ」
常子「鞠ちゃんまでやめてよ」
「いいえ、たまきにはきちんと教えたいの」
と、たまきに言い聞かせるように鞠子「いい?
女の子がやりたい事をやって生きていくというのはとても大変な事なの
もしもたまきが大きくなって
たまきがやりたい事ができるような世の中になっていたとしたらそれはきっと
とと姉おばちゃんみたいな人がいろいろと頑張ってくれたおかげだと思うの」
たまき「そっかあ」
常子「大げさよ」
康恵「いいや、私も鞠子さんに一票だね」
常子「一人でどうこうなんてそんな…
鞠ちゃんとみんながいてくれたおかげよ」
鞠子「私もとと姉がいてくれたから好きな事ができたの
大学にも行けたし文章を書く仕事もできた
そういう時期があったからこそ今こうして結婚して
子どもを育てて生活していく事のよさも分かるの」
鞠子の話を聞いている常子
「あっ、赤トンボだ!」とたまきが走り出す
「あっ、こら!」と鞠子が常子たちに会釈をして「勝手に駄目よ!」と後を追う
幸せそうな鞠子の後ろ姿を眩しそうに見ている常子

紙に包まれた花束を持って帰宅する星野「ただいま~」
子どもたちが「お帰りなさい」と玄関に出迎える
星野「2人ともいい子にしてたか?」
(2人)「うん」
星野「何してたんだ?」
大樹「本読んであげてたの」
星野「大樹が読んであげてたの?」
大樹「そう」
なみ「お帰りなさい、今日は早かったですね」
星野「ええ、仕事が早く終わったものですから
なみさんももう上がって結構ですよ」
なみ「そうですか、じゃあお言葉に甘えて」
上着を脱いだ星野が仏壇の加奈子の写真に手を合わせる
と、玄関のブザーが鳴り「私が」となみが向かう
大樹「こんな時間に誰だろう?」
星野「誰かなあ」
青葉「…かなあ」
なみ「旦那様、お客様です」
「はい」と立ち上がり玄関に出る星野「お義父さん…」
弓岡柳生(志賀廣太郎)「久しぶりだね、武蔵君」

(つづく)

康恵は何だかぶらりと常子たちを手伝いにやって来たりしていたが
経済的に余裕のある男と結婚していたんだね

綾はテスターに入ってなかったけどよく考えたら綾は専業主婦じゃなかったw
それに今回は星野たちを失った常子が普通に結婚をして
子どもを育てている女性たちの生き方に心を揺さぶられるようなお話だったから
仕事を持っている綾は登場しない方が自然だね

感謝の意味も込めて常子を持ち上げる鞠子だったけれど
今の常子にはつらい内容の話だったかもしれない
仕事でキャリアを積む事と普通の結婚生活の両方を経験した鞠子は
常子には眩しく見えたのではないかな?