2016年5月21日土曜日

とと姉ちゃん(42)常子、露店で歯磨きを売る

女学校の中庭に面した廊下を後ろ手に組みスキップしている常子(高畑充希) 
資料室から出てくる東堂(片桐はいり)「小橋常子さん」 
振り向く常子「東堂先生!」と、やはりスキップで間を詰める 
東堂「何だか足取りが軽いわね」 
ご機嫌に笑っている常子「東堂先生のおかげで胸のつかえが下りました」 
東堂「そう、それはよかった…じゃあ妹さんの進学の件も解決されたのね?」 
口元にだけ笑顔が残っている常子 
東堂「心配してたのよ~
鞠子さんご家族にも言えずに一人で悩んでいるようだったので…
まあ私も言わないでほしいと言われた手前
勝手にあなたにお伝えする事もできなくて…でも安心しました」 
常子「…進学の件って何ですか?」 
東堂「妹さんからお聞きになったのでは?」 
常子「進学の事など全く」 
「平塚らいてうが詩集を出しました、お貸ししましょう」と、逃げ出す東堂 
目を丸くした常子が「あ~ごまかさないで下さい」と、追いかける 
中庭に降りる東堂「きれいな言葉であふれていて…」 
追う常子「どういう事ですか?進学って」 
東堂「何でもないの、別の生徒さんの話でした」 
常子「先生、もう聞いてしまったので諦めて下さい…先生!」 
(少しの間) 
振り向く東堂「実は先日妹さんが…」 

(回想シーン)中庭の噴水のへりに座る鞠子(相楽樹)と東堂
鞠子「私…文学を学ぶために大学に進学したいんです
林芙美子や平塚らいてうのように将来作家として生きていければいいなあと…」
東堂「それはすてきな挑戦ですね」
鞠子「でも女学校まで行かせてもらった上に進学するなんてうちにはとても…」
東堂「お姉様やお母様に、まずお話ししてみたらどうかしら?
あなたのその熱い思いを口にする事は決して無駄な事じゃなくってよ」
目を伏せる鞠子

常子「大学進学…知りませんでした…」
東堂「てっきりご家族に相談されたものと…」
常子「すみません、ご心配おかけして」と、頭を下げて鞠子の胸の内を思う

<常子の決意は以前にも増して固まりました。
歯磨き事業を成功させ自ら収入を得てみせる。
そして鞠子を進学させ鉄郎の借金も肩代わりする。
そう心に誓ったのです>

小橋一家の部屋に鉄郎もいる
ちゃぶ台で半紙にKTと書く常子
君子(木村多江)「KT?」
常子「鞠ちゃんが考えてくれたんです」
鞠子「小橋のKと常子のTから取ったの」
君子「あ~」
鉄郎(向井理)「しゃれてんじゃねえか」
美子(根岸姫奈)「いいねえ」
「KT歯磨」と書いた常子「よし出来た~!」
鉄郎「よし、名前が決まったところで次なる展開を説明するぞ
いよいよ大量生産して大々的に売り始める
いいか?商売ってのはな手広くド~ンとやってうまくいくんだ
今のままチマチマやっててもただのままごとだからな」
常子「お~!」
君子「いやぁ…」
鉄郎「何だよ姉さん」
君子「それってお金かかるわよね」
鞠子「うん」
常子「ああ…あ~そんなにお金は…」
すると鉄郎が懐から分厚い封筒を取り出しちゃぶ台に置く
「どうだ?すげえだろ」
封筒の中を覗く常子「どうしたんですか?」
鉄郎「用意したんだよ」
美子「でも叔父さんお金ないんじゃ」
鉄郎「虎の子の何とやらよ、ここで借りなくていつ借りるんだよ
大丈夫だって、すぐに取り戻せんだから」

<まずお金を返した方が…>

封筒を手に常子「お~!」
鉄郎「とりあえず姉さんと鞠子と美子は大量生産のための場所を確保
お上への届けは俺が出しといてやる
それから常子、お前は俺と顧客の新規開拓をする」
常子「はい」
鉄郎「いいな?」
(一同)「はい」

「KT歯磨 三十銭 十包入り」の立て看板
露店を構えた鉄郎が「よく見とけよ」と、口上を始める
「さあさあお立会いお立会い御用とお急ぎでない方は
ゆっくりと聞いていきな見ていきな
遠目山越し笠のうち聞かざる時は
物の出方善悪黒白がとんと判らない
(鉄郎の顔を不思議なものを見るように横に立ってながめている常子)
山寺の鐘がゴーンゴーンと鳴るといえども
法師きたって鐘に撞木をあたえなければ
鐘が鳴るのか撞木が鳴るのかとんとその音色が判らない
さてお立会い
手前ここに取りいだしたる品物はこれKT歯磨き
歯磨きと言ったってそこにもあるここにもあるというものとは格が違う
一塗りすればいい気持ち
二塗りすれば虫歯撃退
三塗りすれば歯槽膿漏がピタリと止まる」
口上に乗せられワラワラと集まってきた一同「お~!」
鉄郎「さあどうだ効能が分かったら遠慮は無用だ
どしどし買ってきな~買ってきな~」
客「よし買った!」
鉄郎「お~し、はい1つ」
大きく口を開けて驚く常子「ありがとうございます!」
そこから飛ぶように歯磨きが売れよどみなく客をさばく鉄郎

<常子は生まれて初めて鉄郎を尊敬しました、そしてついに…>

常子「あっ、あ…あ~これで完売致しました」
残念そうに並んでいた客たちが去っていく
道に出てその背中に常子「申し訳ございませんでした!
あの…深川の仕出し屋森田屋でも取り扱っておりますので
お近くにお越しの際は是非お買い求め下さい!」
そして鉄郎を見て台を叩き笑顔で飛び跳ねる「叔父さんすごいです!」
手で制する鉄郎「まあざっとこんなもんよ、え~っともうけはと…」
すると「ちょいとごめんよ」と、着流しの男が声をかける 後ろには背広の男
男たちを見た鉄郎が「がっ…」と絶句して萎縮するも常子を後ろに隠す
着流し「随分と景気がよさそうじゃねえか小橋の旦那」
鉄郎「へへ…おかげさまで…」
着流し「おい、兄貴に挨拶がねえじゃねえか」
「あっ…ああどうもいつもお世話になって…」と、背広の男に鉄郎
着流しが鉄郎の手から売り上げの入った籠をひったくる
売り上げを目で追う常子「ちょっとやめて下さい!」
着流し「ああ!?貸した金返してもらっちゃ悪いかい?」
鉄郎を見る常子
顔をそむける鉄郎
「旦那~!足りねえなあ」と、背広に売り上げを渡した着流しが
「いつになったら150円耳そろえて返すんだ~!ああ!?
それともてめえこのまま豚の餌にでもなるか!?」
鉄郎「あ、いやいやもう…もう少しだけ待って頂ければ…」
着流し「アテはあんのかい?」
鉄郎「そりゃもちろん…この歯磨きでさぁ!」
常子「ちょっと叔父さん!」
鉄郎「旦那方も見てたでしょ?1つ30銭で飛ぶように売れてくんですよ
これから大量生産しますんで借金なんざあっという間に返せます!…です!」
背広の男に何やら耳打ちされた着流し「よ~し待ってやるか」
鉄郎「ありがとうございます!死ぬ気で作って死ぬ気で売ります」
着流し「その必要はねえ!てめえらの歯磨き10個1銭で買い取らせてもらう」
鉄郎「えっ?」
常子「それって安く買いたたいて高く売ろうって魂胆ですか?」
着流し「察しがいいねえお嬢ちゃん」
常子「それじゃあ私たち大損じゃないですか」
着流し「ああ!?これで借金チャラにしてやろうってんだ
悪い話じゃねえと思うがな~小橋の旦那」
鉄郎「ヘヘヘ…いや…いや旦那方にはかなわねえや」
常子「叔父さん!」
着流し「話はまとまったな」
常子「待って下さい」
着流し「深川の森田屋だったな!1週間後に取りに行くから
せいぜい気張って作っときな!」と、去っていく男たち

<一瞬でも鉄郎を尊敬した事を、常子は深く深く後悔しました>

夜、(君子鞠子美子)「え~!」
君子「どんなに売ってもその人たちのもうけに?」
鞠子「大量生産すればするだけ赤字になるじゃない!」
美子「叔父さん!」
地面に膝をついている鉄郎「いや…申し訳ない
はぁ…どうしたもんじゃろのぉ…」
常子「こっちのセリフです!」
そこに宗吉(ピエール瀧)が現れ鉄郎を飲みに誘うがさすがに断る鉄郎
腕組みして鉄郎を睨んでいる小橋一家の4人
宗吉「遠慮すんなって~こないだおごってもらった礼だよ
歯磨きのおかげで店の売り上げも上がったしなあ」と、常子たちを見る
宗吉「景気づけにパ~ッといこうぜ!」
鉄郎「いやぁ~…そこまで言うなら!」と、帽子を被り顔を上げ笑顔で立ち上がる
(4人)「え~?」
宗吉の背中を押して逃げていく鉄郎
常子「あ~叔父さんはやっぱり叔父さんだった…」と、顔を押さえる
常子「あ~もうこうなったら私たちだけで打開策を考えましょう」
君子「そうね」
鞠子「うん、叔父さんはもう戻ってこないような気もするし…」
常子「いや、さすがにそれはないでしょう」

<しかし…いやな予感ほど的中するもので…>

朝、森田屋表の戸を君子が開けると挟んであったメモが落ちる
拾って読んで驚く君子

4人の部屋
割烹着姿で頬に手を当てている君子と寝間着姿でメモを囲む3姉妹
それを読む鞠子「小橋家の皆様へ
叔父さんはキャツラを黙らせるだけの金を作って戻ってくる
それまでは頑張って歯磨きを作って持ちこたえてくれ あばよ 鉄郎」
常子「信じられない…えっ…えっ、逃げたって事?」
君子「そのようね…」
鞠子「もう嫌!」
メモを破って捨てる常子

<常子たちはまたまた窮地に立たされたのでした>

(つづく)

鞠子の悩みは進学だというのは分かっていたけど経済的な事だったんだね
滝子にはそこまで甘えられないとう事なのか

鉄郎が常子に尊敬されて意外な展開だなあ…
と思って観てたらすぐに落とされたw

鉄郎の「どうしたもんじゃろのぉ…」に常子の「こっちのセリフです!」は
2重の意味があるよねw

さらに小橋一家や森田屋にまで迷惑をかけるのが目に見えているのに
「あばよ」と書き置いてひとり逃げ出す鉄郎
もう本当に豚の餌にでもなればいいのにw

怖い人たちにむしられそうな常子たちだけど次週予告を観たら
あの人が解決してくれそうな感じだね、あの人が



2016年5月20日金曜日

とと姉ちゃん(41)森田屋です、1日3回毎食後!

部屋で練り歯磨きを作る3姉妹 
すりこぎで混ぜる常子(高畑充希)「鞠ちゃんちょっとグリセリン取って」 
美子(根岸姫奈)と2人で鉢を押さえている鞠子(相楽樹)「はい」 
と、椀を取り「いくよ」と流し込む 
常子「混ぜ混ぜ、混ぜ混ぜ…おっ、いい感じ?」 
鞠子「うん、だいぶ」 
常子「じゃあ次に、薄荷油を…」と、瓶から匙に注ぎ2人を見て眉を上げる 
鞠子「いよいよ完成か」と、嬉しそうに肩が動く 
美子「これでうまくいったらお金持ちになれるかも」 
美子のその言葉で妄想が始まる3姉妹 
 
お姫さまヘアーの常子は豪華な洋風の部屋のベッドに「オホホホホ!」
と、背中からダイブして上品な笑顔で「し・あ・わ・せ」 

本に囲まれた和室、片っ端から本を取り朝から晩まで一日中読書する鞠子
とろけるような笑顔で「幸せ~」 

広いダイニング
ドーナッツに桜餅にどら焼きに栗羊羹などで埋め尽くされた長テーブルを前に
豪華な椅子に座り両手のケーキとシュークリームを頬張る美子「幸せ…」

唾をのみ込む美子
夢見るような顔の鞠子「いいわね~」
満たされた表情の常子「すごくいい」
美子「鳩捕まえて売ろうとした時とは違うね」
常子「アハッ、あったねそんな事」
鞠子「うん」
美子「あの時は悲しかったなあ、捕まえたのに売れなくて」
常子「そうそう、あの日は土鳩をさ…」
鞠子「いいから早く薄荷油入れて!」
常子「あ…はい」と、入れようとするが「あっ」と動きが止まる
美子「どうかした?」
2人を見る常子「最後の作業は3人で一緒にやろう…
ほら、鞠ちゃんもよっちゃんも持ってここ」
一つの匙の柄を持つ3姉妹
常子「いくよ」
鞠子「うん」
常子「せ~の…」

<この先3人は寄り添って仕事を共にする事になるのですが
それはまだ随分先のお話>

居間
練り歯磨きを味見する森田屋の面々
常子「どうですか…?」
まつ(秋野暢子)「うん、悪くないね」
照代(平岩紙)「うん、口の中がすっきりしていい」
君子(木村多江)「何だかきれいになった気がするわ」
喜ぶ常子たち
宗吉(ピエール瀧)「油もん食ったあとなんかにはいいかもしんねえな」
長谷川(浜野謙太)「確かに…
それにこれがあれば女性ともしもの事があっても…」
富江(川栄李奈)「そんな時絶対ないから」
長谷川「分かんないじゃない、ほらもしかしたら富江さんとだって…」
富江が宗吉を横目で見る
キレた宗吉が長谷川をいつものように追いかけまわす…
まつ「うん、これだったら売れるかもしれない!」
常子「本当ですか?」
鞠子「とと姉、いろんな人に試してもらおうよ」
常子「うん!」

女学校の教室で綾(阿部純子)をはじめ級友たちに味見してもらう常子
歯磨きの評判は上々だ

青柳商店の縁側、友達や女中に味見してもらう美子
職人たちにも上々の評判

中庭で発声練習をする東堂(片桐はいり)のところに鞠子がやって来る
試作品の練り歯磨きを渡そうとするが、もう常子に貰ったそうだ
「失礼しました」と、去ろうとする鞠子を呼び止める東堂
「すごいですね、お姉さまの行動力は…
あなたはどうです?挑戦していますか?」
目を伏せる鞠子
東堂「胸に秘めている思いはまだ固まらぬまま?」
迷いながらも口を開く鞠子「あの…姉には言わないで頂けますか?…」

花に「きれいだよ」と、語りかけている星野
常子がやってきて練り歯磨きが完成して評判も上々だと報告して礼を言う
そして試作品を渡し感想を聞かせて下さいね…と言うと忙しそうに走って去る
練り歯磨きを見てから、常子の去った方をしばらく見ている星野

常子たちの部屋
カルピス?で乾杯している3姉妹
常子「あ~!」
鞠子「まさかこんなに好評とは、クラスの子みんな欲しがってたもん」
美子「私の友達も辛いけどお口がきれいになった気がするって」
常子「ん~!私もみんなに作り方教えてって聞かれちゃった」
すると「随分ご機嫌だなあ」と鉄郎(向井理)が襖を開ける
鉄郎は何だか妙に暗い様子だ
一緒に事業を起こそうとした人間に金を持ち逃げされ
知らぬ間に借金まで背負わされたらしい
チンピラが押しかけてきて10日までに150円用意しろと脅かされてると言う
この前持っていたお金は元金返すのがやっとで
残りの金利は元金以上とのこと
鞠子「お話は分かりましたけど、それで…何でここに?」
常子「あ~!うちお金ありませんよ」
鉄郎「分かってんよ!今日は宗吉っつぁんにだよ」
鞠子「宗吉さんだって無心できる状況ではないですよ」
鉄郎「そうか…やっぱりなあ…もはやこれまでか…」
考えを巡らせる常子「まだ分かりませんよ…
10日までに150円、なんとかできるかもしれません」

歯磨きを味見する鉄郎「ん~なるほど
うん確かに味もそこそこだし、これなら評判いいのもうなずける」
常子「でしょ?」
鉄郎「うん、常子、さっき言ってた1個あたりの粗利あれ本当なのか?」
常子(企み声)「はい」
鉄郎「はぁ~だとしたら随分な売り上げになるぞ」
常子「まあ150円全部とは言わないですが
少しならお力になれるかもしれません」
鉄郎「くぅ~!持つべきものは姪っ子だねえ!」と、3姉妹の肩を抱く
鞠子「でもどうするつもり?商売としてやるんだったら
もっと多くの方に知ってもらわないと」
常子「ん~…だからこう例えば道端で配ってこう…広めるとか」
鞠子「それならお金かかんないわね」
美子「私も手伝う」
鉄郎「話になんねえな!そんなもん道端でやたらに配っても
怪しんで誰も受け取んねえよ
それにどこで誰が作ってんのか分かんなけりゃ
万一買いたいってやつがいても売れねえだろ」
美子「じゃあどうすれば?」
鉄郎「う~ん…ずばり教えてやろう
試作品を作って森田屋の仕出し弁当に添える
それが一番宣伝効果がある」
(3人)「お~」
鉄郎「俺はこのビジネス、いけると踏んだ」
(3人)「お~!」と、盛り上がる

厨房
宗吉「駄目に決まってんだろう!」
常子「どうしてですか?」
宗吉「弁当の後味が変わっちまうかもしんねえ、そしたらうちの営業妨害だ」
常子「そこをなんとかお願いします」 鞠子と美子「お願いします」
宗吉「駄目なもんは駄目だ!」
まつ「宗吉、そういう了見の狭い事言わないでやらしてやんなよ、なあ!」
長谷川「そうですよ」
富江「いいじゃない」
君子「私からもお願いします」
しかし許可しない宗吉に鉄郎が飲み代を払った事を恩に着せる
それでも渋る宗吉に「覚えてないかもしんないけどあの夜
あの店の女将口説こうとしてたんだぜ」と、耳打ちする
宗吉「えっ…」
鉄郎「奥さん優しそうだけどああいうのが一番怖えんだよな~」
笑顔でこちらを見ている照代
鉄郎「いいのかい?奥さんに知られても」
宗吉「だけどよ…」
鉄郎(大きな声)「あの店の女将さんすっごいべっぴんだったよな~!」
照代「えっ?」
さらに鉄郎が女将のうなじが色っぽいなどど言いだし
突然「あ~!」と大声を上げて笑いはじめた宗吉が「はい、みんな…ハハハッ
今日から店の弁当にこの歯磨きをつける事にしました」
常子「本当ですか!?」
まつたちもジャンジャン宣伝すると言い喜ぶ3姉妹
宗吉をじっと見ている照代
おどけた笑顔で返す宗吉
ちょっと怖い笑顔になる照代

<こうして森田屋の弁当に添えられる事になった常子の練り歯磨きは…>

弁当の配達に来た宗吉「あっ、ハハッ、毎度森田屋です
お重8つでございます、あっ、それと今、森田屋特製の歯磨きを
つけさせて頂いております、1日3回毎食後です」

配達するまつと富江
まつ「森田屋特製の歯磨き添えさせて頂いております」
(2人)「1日3回毎食後!」

照代「こちら松のお弁当です、それと森田屋特製歯磨き試してみて下さい」
(照代と君子)「1日3回毎食後です」

リヤカーで配達しまくる常子と鞠子(早送りw)
常子「森田屋特製歯磨きです」
鞠子「森田屋特製歯磨きも…」

<鉄郎の目論見通り森田屋の客を中心に瞬く間に評判となっていったのです>

木戸を開ける常子「毎度ありがとうございます」
(常子と鞠子)「森田屋です、1日3回毎食後です!」
と、CMのようにニカッと笑う

(つづく)

歯磨き完成のシーン
鳩捕まえて売ろうとした時とは違う…あの時は悲しかった…とネガる美子に
そうそうあの日は…と脱線する常子
いいから早く薄荷油入れて!…と突っ込む鞠子
なんだか3姉妹のキャラが出てて面白いシーンだ
常子の妄想シーンが洋室なのは綾の影響だろうか?
鞠子の本と美子のおやつはいかにも

富江の「そんな時絶対ないから」は、普通に長谷川はモテないキャラ
という描写なのだろうが、大穴で富江が長谷川を好きだから独占欲で…
というのもある?

常子は綾以外の級友たちとも関係を修復できていたんだね

鞠子は東堂に悩みを打ち明けたようだ

花にきれいだと語りかけていた星野が常子の去った方をしばらく見ていたのは
もしかしたら花よりも常子を愛しいと思い始めたとか?

2階まで鉄郎を案内してきた富江が鉄郎の差し出した握手を無視してた
鉄郎はかなり胡散臭いキャラなんだね
そんな鉄郎に乗せられて鞠子までが「お~!」と盛り上がるなんて…
まあ鞠子が元気になってきたのはいいのだが
鉄郎の「いけると踏んだ」は冷静な鞠子なら信用しないはずなのだが…
その後の鉄郎の宗吉への脅迫もやり方が汚い
照代のあれは誤解ではなくて本当に怖い笑顔なのかもねw

ラスト森田屋の面々のCM風の演出、ああいうの大好き








2016年5月19日木曜日

とと姉ちゃん(40)常子、練り歯磨きを作る

綾の屋敷 
本を手に机に向かう綾(阿部純子)「それでうちに?」 
綾の自室の調度品を調べている常子(高畑充希)
「そう、綾さんの家で舶来品を見たとき感激したの」 
綾「そんなものを見て人の役に立つ商品なんて思いつくのかしら」 
常子「う~ん、分からないけど挑戦だからいいの」 
本を置き振り向く綾「挑戦?」 
綾を見て生き生きと常子「女だからって恐れずに挑戦する事が大事って
東堂先生がおっしゃってたの、だから私も」 
立ち上がった綾「こ~んなに影響受けやすい人初めて見たわ」
と、常子のメモを取り上げて読み「フフッ!フフフ…」と笑う 
「そんなに笑う事ないでしょ」
と、メモを取り返す常子「あっ…ねえ、あれは何?」 
綾「それは文鎮ね」 
手に取って眺めてみる常子「文鎮…へえ~かわいらしい形ね」 
ノックの音がして綾の母・登志子が入ってくる 
挨拶する常子 
登志子「綾から常々お話は…」 
常子「あ~」 
女中がティーカップと洋菓子をテーブルに置く 
登志子「どうぞ召し上がって」 
常子「ありがとうございます」 
登志子「そうそう綾さん、例の雑誌なんだけれど…」 
綾の目が流れる 
登志子「方々探したんだけどなかなか置いてなくて」 
綾「お母様、その話は後で」 
登志子「どうして?平塚らいてうの青鞜」 
常子の口元が緩む 
登志子「今、神田の敬信堂に問い合わせてるところだから
もう少し待ってちょうだいね」
綾「はい」
女中が退席する「失礼します」
登志子「ありがとう」
綾の顔をゆっくりと覗き込んでいる常子
綾「何よ」
モノマネしてる口調の常子「こ~んなに影響受けやすい人初めて見たわ、フフフ」
綾「私はそういうのじゃありません、ただ勉強のために」
常子「ふ~ん、勉強ねえ…」
綾「常子さん!意地が悪いわ!」
常子「あ~おいしそう」
登志子「仲がおよろしいこと」と、常子と2人で笑う 口を結ぶ綾
すると「イッタ~!」と、登志子が右頬を押さえる
歯槽膿漏だと聞いてまつを思い出す常子
登志子「女の人に多いそうなのよ歯槽膿漏」
常子「女の人に?」

大澤歯科医院の前
メモを手に物影に隠れて玄関を見張っている常子
女が出てくる
「すみません」と、近づき「今日は虫歯の治療ですか?」と聞く常子
女「いいえ、歯槽膿漏なもので…」
常子「お~!ありがとうございます」と、笑顔でメモを取る
その後も出てくる女たちに訊ね、歯槽膿漏と聞くたびに喜んでいる常子
赤子を背負った女が出てくる
常子「すみません、あの…奥様も歯槽膿漏ですか?」
女「ええ…」
「すごい!」と、まるで奇跡を目の当たりにしたようにメモを口に当てる常子
女「あなた、人が歯槽膿漏なのがそんなに嬉しいの?」
常子「いや、興味深いなと」と、笑顔でメモしている
「興味深い!?どこまで失礼な方なの?」と、女が詰め寄る
通りかかってその様子を見ていた星野(坂口健太郎)が「妹が無礼な事を…
後できつく叱っておきますので失礼!」と謝り、常子の手を取って走って逃げる
女「待ちなさい!こらっ、あなた!」
走りながら常子「すみません!」

路地裏まで逃げてきた2人が握った手を見てぎこちなく離す
(長い間)息を整える2人
星野「あ…ごめんなさい妹なんて…
そうでもしないと場が収まらなさそうだったので」
常子「あ…こちらこそすみませんでした」
星野「いえ…それにしても歯医者さんで何を?」
常子「ああ…女性に歯槽膿漏が多いかどうか検証していたんです」
星野「あ~…」
常子「かなりの方が苦しんでいるようでした」
星野「女の人は更年期障害だったり子どもを産むから」
常子「えっ、えっ?」
星野「妊娠すると体に栄養を蓄えるようになる、歯槽膿漏はその時とり過ぎた
栄養であったりホルモンバランスがおかしくなるのが原因だといわれています」
常子「よくご存じですね」
星野「母がかかった事があったのでね」
常子「お母様が?」
星野「ええ、陸軍病院の歯科医に診てもらっていました
でもその方が外地に派遣されるようになり、その後は練り歯磨きを作って」
常子「練り歯磨き?」
星野「ええ、それで毎食後にしっかり歯磨きをしたらよくなりましたよ」
常子「え…お母様ご自身で作られてたんですか?」
星野「はい、その先生から作り方だけ教わって」
目が動く常子「それだ」と、笑顔になる
星野「えっ?」
「それですよ星野さん!ありがとうございます!」
と、星野の手を両手で握り飛び跳ねる
そして握った手に気づいてパッと放す
笑っている2人

<常子は星野から教わったとおりに練り歯磨きを作ってみる事にしました>

常子たちの部屋
美子(根岸姫奈)がちゃぶ台のすり鉢を押さえ
材料を入れた常子がすりこぎで混ぜる
美子「ねえ、まだ?」
常子「もうちょっと」
美子「出来たらなめさせてね」
常子「いいけどこれ食べ物じゃないのよ」
鞠子(相楽樹)が部屋に入って来る
美子「あっ、まり姉ちゃんも一緒に味見しよう」
常子「だから食べ物じゃないって、あっ、鞠ちゃん
皆さんまだ下にいらっしゃった?」
鞠子「うん、お茶の間にいたけど」
「よ~し」と手を止め「はい!」と鉢を持ち上げて部屋を出ていく常子
「ちょっととと姉ちゃんまってよ」と、追いかける美子
部屋に残った浮かない顔の鞠子

居間
宗吉(ピエール瀧)「へえ~歯磨きねえ」
照代(平岩紙)「毎食後に歯を磨くの?」
常子「はい、歯槽膿漏もよくなるそうです」
宗吉「毎朝塩で磨いてるじゃねえか、それじゃ駄目なのか?」
常子「1日1回ではなく毎食後これで磨く事が大切なんです」
まつ(秋野暢子)「それでこれ(歯槽膿漏)治るのかい?」
常子「はい」
富江(川栄李奈)「え~!ちょっとなめてみてもいい?」
常子「もちろんもちろん、皆さんちょっと試してみてください」
長谷川(浜野謙太)「じゃあ遠慮なく」と、一同が指につけてなめるのだが
美子「うげぇ…」と、せきこむ
宗吉「何じゃこら」
まつ「何か気持ち悪いねこれ」
富江「ヒリヒリする」
照代「油っぽいわ」
口をパクパクさせている長谷川を指さす宗吉
「ハハハッ!言葉にできねえほどまずいってよ」
「えっ?そんなに駄目ですか?」と、なめた常子を含め一同「ん~…」
常子「すいません、作り直します」
歯磨きを作って売るつもりだと言う常子に驚く森田屋の面々
常子「今、女の人に歯槽膿漏が増えてるそうなんです
でも歯医者さんに通って治療するのも大変じゃないですか
ただ、この歯磨きがあればその苦労も…なくなる」
(一同)「う~ん…」
宗吉「まあ~分からねえ話でもねえけどよ…」
長谷川「わざわざ金払ってまで口ん中おかしくなるもん買うやつはいねえよ」
常子「だからそれは改良して…」
まつ「まあよしときな、商売なんてそんな甘いもんじゃないよ」と、立ち上がる
常子「ん~でも…」
照代「無駄な努力になるんじゃない?」
宗吉「そんなもんに時間とられてこっちがおろそかになるのも参るしな
よし、明日も早いしチャッチャと寝るか」と、去っていく森田屋の面々
常子「無駄な努力…かかもそう思いますか?」
君子「私の事より常子はどう思うの?」
常子「私は…やってみたい」
君子「じゃあ、おやりなさい!挑戦する事が大事なんでしょ?」
「はい」と、笑顔でうなずく常子
美子「私も手伝う」
常子「おっ!よっちゃんありがとう」

自室に戻って改良を続ける常子と美子、だがうまくいかない…
「疲れちゃった、ご不浄行ってくる」と、美子が部屋を出る
常子「う~ん、ちゃんと星野さんが書いて下さったとおりに
やってるんだけどなあ…」
机に向かって読書をしている鞠子に味見させる常子だが
鞠子「ん~…油っぽいし後味悪い」
常子「う~ん…」
鞠子「今日は諦めて明日また星野さんに聞いてみたら?」
首を振る常子「いや、もう一回」
また作業に戻る常子を見て鞠子「とと姉は偉いね」
常子「うん?何が?」
鞠子「東堂先生に言われた事もう実践して…新しい事に挑戦するの怖くないの?」
常子「う~ん、分からないけどその方が性に合ってるのよ
先生がおっしゃってたとおり、できないって決めつけるより
やってみた方が楽なのよ」
常子の言葉に何かを感じて考える鞠子
と、常子が材料の入ったお椀をひっくり返す
立ち上がる鞠子「もう!貸して!不器用で見てらんない」と、隣に座る
常子「そんな言い方…」
星野が書いたメモを見る鞠子「癖のある字ね」
「達筆なのよ」と笑う常子
鞠子「このとおりに作ってるのよね?」
常子「うん、材料も全部そろえてるし…」
鞠子「う~ん…でもこの歯磨き何か足りないような気がする…あれ?」
と、メモの字を指さし「これも材料なんじゃない?これこれこれ」
常子「え~?それ書き損じてグチャグチャって消した跡なんじゃないの?」
鞠子「いや、字よ…え~っと…薄いって字かな?…こっちは荷物の荷?」
何かに気づいた鞠子「あっ」と、常子を見る
顔を見合わせる2人「薄荷だ!」
鞠子「とと姉、薄荷は?」
常子「ない」
顔をしかめる鞠子「えっ?何で?」
常子「いや、ないよ」

<妹まで巻き込んだ歯磨き作り、果たしてどうなる事やら?>

ちゃぶ台であれやこれやと相談している常子と鞠子

(つづく)

歯医者の前で張り込みしてる常子はちょっと怪しかった
鳩を捕まえる件もそうだったけど何かに夢中になると常子はおかしくなる
まあ走りながらだけど、ちゃんと最後に謝ってたけどね

路地裏で星野と手を離す件は、やっと異性として意識し始めたって感じかな?
寺で貧血の星野に抱きつかれた時はビックリしただけだったように思う

宗吉が塩で磨いてる…て言ってたけど前々回の常子鞠子の歯磨きシーンも
何気に説明的な伏線だったんだね

常子の起業に宗吉たちは否定的な意見だったけど
常子がやりたいんだったらやりなさい…と言ったのは君子らしい考えだね
自分自身の思いを大事にして生きている人だから

「明日星野さんに聞いてみたら…」と、鞠子の言う事はいつも正しい
なのに夢中になってる常子は止まらない
そんな常子に巻き込まれて手伝ううちに悩んでたはずの鞠子も元気になるのかな?










 

2016年5月18日水曜日

とと姉ちゃん(39)常子の市場調査と悩める鞠子

常子(高畑充希)「叔父さん!何してるんですか?」 
鉄郎(向井理)「お~常子嬢のお帰りだ~」 
(一同)「お帰りお帰り!」 
宗吉(ピエール瀧)「おい、こいつよ、お前の叔父なんだってな!」 
長谷川(浜野謙太)「酒持ってくるやつに悪いやつはいねえ」 
宗吉「そりゃそうだ」 
鉄郎「土産って大事だねえ~」 
常子「酒臭っ」と、鼻をつまむ 
星野(坂口健太郎)「どうも常子さん」 
常子「星野さんも飲んでるんですか?」 
星野「ええ、お酒苦手って言ったんですけど飲まされちゃって」と
眼鏡がずれてこちらもずいぶんと酔っているようだ 
ガタンと音をたたて卓に頭を落とし潰れた星野に常子が毛布をとってきてかける 
そして隈井(片岡鶴太郎)が一人で酒盗を平らげたと皆がなじるのだが 
隈井「うっせえんだよバカ野郎!俺が肝食っちゃいけねえのかバカ野郎! 
お前はうちの女房か?お前、俺はな女房にいつもな肝冷やされてんだよ!」 
と、長谷川を指さしてすごい剣幕だ 
素にもどる男たちと驚いて少し眉をひそめる常子 
「隈じい、いいよいいよ、食ったっていいんだよ」と、宗吉が笑ってとりなす 
鉄郎が常子に「酒入ったら変わんなあ、あのじいさん」 
痛そうな顔でうなずく常子 
宗吉が常子につまみが足りないと言い 
男たちの「つまみ!つまみ!」コールの中、厨房に向かう常子 
家具の上の福助人形と一升瓶 

タイトル、主題歌イン 

厨房には大豆を煎る君子(木村多江)と大根を剥く鞠子(相楽樹) 
常子「大豆?」 
君子「お酒飲みには大豆がいいっていうから」 
常子「へえ~」 
鉄郎が何をしにきたのかと心配する鞠子に、またお金が無くなったんじゃ…と常子
君子「それがそうじゃないらしいのよ、さっき話したんだけど…」
すると鉄郎が厨房に現れ常子に「お前女学校卒業したら就職してえんだって?」
常子「そうですけど?」
鉄郎「あ~やめとけやめとけ勤め人なんてバカらしい」
常子「何がバカらしいんですか
叔父さんみたいに定職にも就かずに生活に困るよりマシです」
それを聞いて「ふ~ん…パッ!」と言って
へそのあたりから畳まれた紙幣を取り出す鉄郎
「どうしたんですか?」と、驚く3人
鉄郎「いや、いろいろ当たっちゃってさぁ」
常子「ええっ、事業成功したんですか?」
鞠子「まさに数撃ちゃ当たる…ってやつね」
鉄郎「実業家はいいぞ常子、当たるとでかい!
ちまちま働いてんのがバカらしくなるぜ
あっ、お前らが聞きたきゃ成功の秘訣教えてやってもいいぞ~」
君子「鉄郎さん、あんまりこの子たちにおかしな事教えないで下さい」
常子「お話聞かせて下さい」
常子を見る鞠子と君子「常子?」
鉄郎の前に駆け寄る常子「私、男の人みたいに稼ぎたいんです!」

帰宅してきて家の騒がしい様子に驚くまつ(秋野暢子)と照代(平岩紙)
(立って肩を組み歌う男たち)♬「わたしネエ忘れちゃ嫌よ忘れないでネ」
「外まで聞こえてるじゃないか!この…この恥知らずが!
恥知らず!恥知らずが!」と、男たちの頭をひっぱたくまつ
宗吉「おい!恥知らずとは何でぇ!」
まつ「戒厳令敷かれてる時に酔っ払うなんてみっともない!」
宗吉「世の中が暗えからってよ何でこっちまで辛気くせえ面しなきゃいけねえんだよ!」
飲み直しだと言って外に出ていく男たち
宗吉が「鉄っちゃんも行こうぜ」と声をかけ、ついていく鉄郎
まつ「何だいおい、誰あんた、誰?」
照代「どなた?」
まつ「うちのバカ息子がもう!
このご時世にあんな赤いシャツ着た知らない唐変木まで上げちまって、ああもう…」
(君子常子鞠子)「あ…あの…」
まつ「え?」
常子「実はあの鉄っちゃん…叔父なんです」
照代「あら、そうなの?」
ため息のまつ「何かもうため息出る事ばっかりだな」と煎餅をかじり歯を痛がる
歯槽膿漏で歯医者に行ってきた帰りらしい
まつ「帝都不祥事件(二・二六)があってからどうしようもないね
何の因果か仕出しの注文も減るばっかりだし、おまけに歯までガタ来ちまって
このまま注文が減り続けたら君子さんのお給金も…アイテテテテテ…」
顔を見合わせる常子たち3人

女学校の教室
綾(阿部純子)が登校すると、イスの背にもたれ上を向き
「どうしたもんじゃろのぉ…」と、呟いている常子
綾「あら、今度はどんな面白い悩みをお抱え?」と、常子の後ろの席に座る
「人の悩みを楽しまないで」と、振り向く常子
「あっ、綾さん何か欲しいものってある?」
綾「ないわ」
常子「随分はっきり言うのね」
綾「だって本当にないんだもの、うちに何でもあるし」
常子「お金持ちに聞いたのが間違いだった…」
綾「贈り物でも頂けるのかしら?」
常子「ああ、そうじゃないの、実はね私(得意顔になる)事業を始めようと思ってるの」
(常子の回想)鉄郎から需要と供給の仕組みを学ぶ常子
綾「それで事業を?」
常子「ええ」

<それからの常子は商売になりそうなものはないかと目を光らせるようになりました
それは女学校の帰りでも…>

団子屋の屋台でメモをとる常子

煎餅屋の店先で話を聞く常子

町で行列を見つけて揚げ餅きなこを購入する常子
それを見て微笑んでいる綾

<配達の途中であっても
何かヒントになりそうなものを見つけては調べ続けていました>

屋台が並ぶ通りで新発売の蠅とり器の香具師に質問している常子
「一つの場所でどのくらいの期間やられるんですか」
リヤカーを手に待たされている鞠子がそれを見ている
すると「鞠ちゃん?何してるのかと思ったら」と
岡持ちを手にした富江(川栄李奈)が声をかける
鞠子「あっ、ごめん」
富江「ううん、それより学校の先生に相談した?」
鞠子「ううん、言ったらみんなに迷惑かけるから」
富江「確かに言いだしづらい事だもんね…」
常子の方を見る富江「常子さんはすごいね
思い込んだらなりふり構わないんだもん、私もああなれるならなってみたいな」
振り向き、常子を見る鞠子

<常子の猪突猛進な行いは
鞠子が蓋をしていた気持ちを知らず知らずのうちに開け始めるようになったのです>

女学校の職員室前、思いつめた表情の鞠子がやって来て息を整える
戸が開き東堂(片桐はいり)が出てくる
鞠子「あ…東堂先生」
東堂「小橋…鞠子さん!何か御用?」
鞠子「あ…はい、私…実は…(肩で息を吸う)しん…」
目を見開かせる東堂「しん?」
泣き出しそうな顔の鞠子「しん…」
鞠子の様子に顔が歪む東堂
鞠子「ぞう…ってどうして動くんですか?」
東堂「心臓?」
鞠子「こんな…こんなに小さいのに毎日動くなんて不思議だなあ…なんて」
専門ではないので生物の先生を呼ぶと言う東堂を押しとどめ、速足で逃げる鞠子
そんな鞠子の後ろ姿を見ている東堂

走ってきて息切れした鞠子が中庭の噴水のふちに腰を下ろす

<どうしても常子のようにはいかないようです>

常子が女学校から戻ると
まつに招かれたという星野が居間でおやつを手に読書している
常子「あ…まつさんは?」
星野「お向かいにお裾分けに行かれてもうそろそろ戻られると思うんですけど」
常子「あっ、あっ、あっ…ちょうどよかった
あの…ご相談したい事があるんですけど」

福助人形

星野「需要のある商品?」
常子「人だかりが出来ているようなものはいろいろ調べてみたんですけど…」
星野「参考になるものはなかったと」
常子「ええ、新商品には皆さん食いつくみたいなんですが
しばらくたつと閑古鳥が鳴いてしまっているようなものばかりで」
星野「う~ん…商売として間違ってはいないと思いますよ
たとえ一過性でも人々が食いついている間に売り切ってしまえば
それはそれで儲けにはなるわけですから」
常子「あ~…でもそれでいいんですかね?」
「…というと?」と、おやつを取ろうと手を伸ばした星野から
「あっ」と、何かを思いつき皿を取り上げてしまう常子
星野「ああ、ちょっ…」
常子「需要の中には欲しくても手に入らずに
困っているような人もいるわけじゃないですか」
星野「はい」
常子「だったらその困っている人を」と、皿を元に戻す
「助けるような商品を作って商売にできたらなあって思うんですよね」
おやつを取り食べる星野「うん…」
常子「誰の役にも立たず、すぐ忘れられてしまうような商品を売って儲けても
なんだか虚しいじゃないですか」
星野「常子さんはいつも人のためですね
いつもはとと姉ちゃんとして家族のために何かをしたいと思ってる
今回はお客さんのため」
ちょっと照れる常子「そういう性分なんじゃないですかね」
星野「もっとご自身の事を考えてみてはどうです?
自分の目から見て自分が欲しいもの、必要だと思うものを感じる事ができれば
人の役に立つものが見えてくるのかもしれない」
常子「自分が欲しいもの…」
そして何かを閃く常子「ああ」
星野「ん?」
常子「なるほど…ああ、ああ…」と、何度もうなずく
せんべいを手に取り笑顔の常子「星野さん、ありがとうございます」

<いやはや何を思いついたのでしょう?本当に大丈夫かしら…>

家具の上の福助人形

(つづく)

隈井があんなに酒グセ悪いとは…
しかも酒盗を一人で食ったって最初に突っ込んだのは宗吉だし
まだ食ってないのにと皆が言っていたのに
一番立場の弱そうな長谷川に怒りを向けるなんて…
常子も引いてたねw
まあ女房に頭が上がらなくて外で憂さを晴らすというキャラ設定なのだろう

需要と供給のシーン
商売の基本は物を売るって事だ…と言う鉄郎に「ほう~」とうなずく常子と
「当たり前の事じゃない!」と、怒ってる鞠子
成功した鉄郎への「数撃ちゃ当たる」にしても、鞠子は鉄郎に厳しいねw

鉄郎が常子たちの身内だからって腹を立てた訳でもないのだろうが
まつの「君子さんのお給金も…」は展開の伏線なのかな?
常子が始めるビジネスを小橋一家全員で手伝う?とかの…

富江が鞠子の悩みの内容を知っているのには驚いた
随分と親しくなっていたんだね、「鞠ちゃん」て呼んでたし
常子たちも知らない話なのだが…いや、常子だから言えないのか
富江との会話から、家族に迷惑をかけるものだから
家族には言いだしづらいって事か

心臓のシーンは鞠子と東堂の顔芸対決面白かった

星野とのシーンの常子は立派だった
星野は最初、とりあえずは儲かるって話を説明するんだけど
顧客満足度を第一に考える常子は納得しなかった
このあたりは後の雑誌出版の理念にも繋がるんだろうね

今回は福助人形のカットが3回もあったね










2016年5月17日火曜日

とと姉ちゃん(38)鞠子の悩みとは…~人形の家

<常子は新しく担任となった東堂チヨの力強い言葉と
その女性像に感銘を受けていました 
一方、鞠子はある悩みを抱えていました> 

タイトル、主題歌イン 

2階の自室をのぞく常子(高畑充希)「ま~り~ちゃん」 
畳に仰向けの鞠子(相楽樹)がハッとなる 
常子「どうかした?」 
鞠子「どうもしないけど」と、体を起こす 
部屋に入る常子「かかが最近元気がないなあって心配してたわよ」 
背を向けている鞠子のそばに座る常子「悩みがあるなら相談乗りますよ~」 
鞠子「悩みなんてないって」 
常子「だったら私が鞠ちゃんを元気づけて進ぜよう」 
常子に振り向く鞠子
常子「新しく来た担任の東堂先生ってね、とっても面白い方なのよ」 
顔をしかめる鞠子「ああ、あの変な先生」 
常子「変って失礼ね」 
鞠子「だって授業中に雷が鳴ったら…」

(鞠子の聞いた話)東堂(片桐はいり)「北原白秋はこの歌の中で清く明るい…
と書いてさやけし(清明けし)と読ませています…」と、
窓の外で雷鳴が鳴り響くのだが稲光に振り向いた東堂が「お静かに」

残念そうな顔の鞠子「雷に言ったらしいわよ…」
笑う常子「あ…確かにそういう事言いそうな方ではあるけど
でも、とってもすてきな先生なのよ
女性なのに堂々としてて自分の意見もはっきり言うの」
鞠子「ふ~ん」と、気のない返事
自分の膝を叩く常子「鞠子さん」
鞠子「はい?」
常子「よろしい、では床に座ってください」
鞠子「いやもう座ってるよ」
常子「あ、そっか…じゃあ…じゃあ」
立ち上がる常子「じゃあ次にあぐらをかいてください」と言って
変な芝居でその場を周る「フフフッ、どうしました?かけませんか?」
あぐらをかいている鞠子「いや、かいたけど?」
常子「えっ、何でかいたの?」
鞠子「とと姉がしろって言ったんでしょ?」
常子「え~?えっ、だって普通かく?」
鞠子「人にやらせといて何?」
常子「だって普通女性はさ、お行儀がとか…」
鞠子「二人っきりなんだから別にいいじゃない」
悔しそうに畳を叩く常子「そうなんだけど…そうじゃなくて~」
鞠子「ごめん、全く分かんない何がしたいの?」
常子「あっ、だったら先生に借りた雑誌読んで!」
鞠子「いい、いい」
常子「何で悩んでるのか知らないけど、絶対元気になるから!」
と、「青鞜」を渡す
しぶしぶ…といった感じで頁をめくる鞠子
そんな鞠子の様子を見ている常子

夜、家族が眠る中机に向かい雑誌「青鞜」を読む鞠子

朝、塩で歯を磨く常子に雑誌を返す鞠子
常子「ん~だまされたと思って一回読んでみてよ」
鞠子「もう読んだ」
常子「だからさ…読んだの?」
歯ブラシを手に取る鞠子「うん」
常子「どうだった?」
塩をつまむ鞠子「変わった」
常子「えっ?」
晴れた顔の鞠子「読み終わったあと、景色が変わった気がした」
「そうでしょ!そうなのよ!」と、大喜びの常子
「うん」と、笑顔の鞠子
「霧が晴れて目の前がさ~っと開けたわ、ありがとうとと姉」
常子「うんうんうんうん…」
と、持っていた歯ブラシを咥え空いた手で鞠子の肩を叩く

女学校の廊下を歩く常子と鞠子
常子「うれしいな~そんなに感動してくれるなんて」
鞠子「とと姉が書いた訳じゃないでしょ」
常子「でも私が貸さなきゃ鞠ちゃんはこの雑誌に出会えなかった訳だし
あ~私のおかげで鞠ちゃんが元気になってよかった」と、上機嫌だ
笑顔の鞠子「押しつけがましい!」

すると中庭から「ウアア~!アアアアア~!」と、何やら奇声が聞こえてくる
鞠子「何してるの?」と、のぞく2人
奇声の主は東堂だった
「アアアア~!私はまたもとの雲雀や人形になってしまう
弱い脆い人形だというのでこれからは前よりも一倍いたわってやろうと仰る
あなた、この時に私は目が覚めました、この八年というもの
私は見ず知らずの他人とこうやって住んでいて
そしてその人と三人の子供まで作った
ああ、その事を考えると私は…私…」と、本で確認する東堂「え~っと…」
恐る恐る後ろから近付いた2人が声をかける
常子「と…東堂先生」
振り向いた東堂「小橋常子さん、何か御用?」
常子「あの…これをお返しに参りました」と、雑誌を渡す
東堂「もうお読みになりましたの?」
常子「はい!大変感動致しました!」
鞠子を見る東堂「そちらは?」
常子「妹の鞠子です、妹もいたく感激して」
鞠子「今のはイプセンの人形の家ではないですか?」
常子「い…いぷせん?」
鞠子「ノルウェーの劇作家よ」
東堂「よく御存じね」
鞠子「一度戯曲を読んだ事があります、難しくてよく分かりませんでした」
東堂「書かれた背景が分からねば理解は難しいかもしれませんね
これは夫から人形のようにしか扱われない事に絶望した妻が
夫を捨て家を出て行く…女性の自立をうたったお芝居です」
驚く常子「妻が夫を捨てて家を出るってそんな事して平気なんですか?」
東堂「日本では考えられませんがヨーロッパでは女性にも参政権があり
男性と同じように働く機会があるようです
鞠子「ええっ?」常子「え~」と、目を丸くしてお互いを見る2人
東堂「主人公ノラに共感し人形の家の舞台に出るため女優を志した事もありました」
常子「えっ」
鞠子「先生が?」
東堂「しかし劇団には入れませんでした
ノラはもっといたいけな女でなければ駄目だ、お前は大きすぎる…と言われて
今でも納得していませんが」
2人「はぁ…」
東堂「私に人形の家を教えてくれたのはこの雑誌です
近い将来日本でも、女が男と肩を並べられる世の中になるようにと…
この青鞜はそんな社会を夢みた女性たちが作った雑誌です
作品も編集も全て女性だけで行っているんですよ」
常子「全て女性が…」
東堂「しかし雑誌を刊行後青鞜社は解散し
そういった機運はしぼんでしまいましたが」
常子「あぁ…」
東堂「しかし諦めてはなりません、これから社会は
あなたたちのような若い人が担っていくんです
この雑誌を作ったらいてう先生のように
何事も女性だからと尻込みせずに挑戦する事が大切です」
東堂を見つめて何度もうなずく鞠子
東堂「お二人はこれから挑戦したい事がありますか?」
目を伏せる鞠子
東堂「どうですか?」
考え考え語る常子「挑戦と言えるかは分かりませんが
私は父代わりとして家計を支えるために
男の人のようにお給金のいい所にお勤めしたいです」
常子を見ている鞠子
東堂「それはすばらしい、あなたは?」
ハッとする鞠子「私は…(長い間)…今はありません」と、微笑む
鞠子を見ている常子
東堂「そう…言葉には言霊といって魂が宿るといわれています
心が決まれば何事も口にする事から始まるので遠慮なく言ってごらんなさい」
「はい」と、笑顔でうなずく鞠子を見る常子

廊下を歩く2人
鞠子「力強い方ね東堂先生って、こっちまで力が湧いてきちゃう」
常子「ねえ」
鞠子「うん?」
常子「鞠ちゃんの悩みってひょっとして将来の事?…
挑戦したい事、何かあるんでしょ」
鞠子「ううん、私まだ四年生よ、将来なんてまだ」
常子「だったらいいけど何かあったら何でも言ってね」
鞠子「また押しつけがましい」
常子「そう?フフフ」

森田屋裏で将棋に興じる宗吉(ピエール瀧)と隈井(片岡鶴太郎)
隈井は同業の安岡商店が取引先に夜逃げされ立ち行かなくなるかもしれないと語る
滝子は青柳を守るために古い付き合いの安岡との取り引きをやめたらしい
滝子(大地真央)「このご時世、情に流され商いしてたら共倒れになっちまう
200年続く青柳の看板を潰す訳にはいかないんだよ」
さらに新聞を手に「このご時世、きな臭くなってきやがったのがどうもねえ…
ほら、戒厳令敷かれたままだし」と、隈井

<昭和11年2月、雪の降る帝都東京で一部の陸軍青年将校による
クーデター未遂事件、いわゆる二・二六事件が起こりました>

と、そこに星野(坂口健太郎)が日頃お世話になってるお礼にと
日本酒と先輩から貰ったという酒盗を手に現れる(星野は酒が苦手とのこと)
これで一杯やろうと大喜びの宗吉と長谷川(浜野謙太)
隈井は昨日も深酒してかみさんにしこたま叱られたから…と断るが…
その時「ごめん下さ~い」と森田屋玄関を、両方の手に日本酒を提げた男が訪れる

青柳商店の縁側に座り、女中におやつを貰う美子(根岸姫奈)たち
「頂きます」と、ビスケットを頬張る
美子「おいしい」
女の子1「よっちゃんちのおやつ、いつもおいしいよね」
女の子2「うん」
美子「そぉう?」

常子が学校から戻るとなんだか居間の方が騒がしい

空の一升瓶が転がる部屋
宗吉、長谷川、隈井など七人の男たちが阿部定の話をネタに飲んで騒いでいる
その中に鉄郎(向井理)の姿を見つけて驚く常子「叔父さん!」

<鉄郎が現れるところに災いあり
常子たちの身に新たな苦難が訪れそうな…そんな予感です>

部屋の家具の上に置かれた福助人形

(つづく)

鞠子の悩みは進学に関してのものだと思うが何なのだろう?
君子は滝子と和解できたのだから経済的な問題ではないだろうし
女性が進学など…という問題なら中庭の話の流れで言えたような気もするのだが…

心配する常子を「押しつけがましい」と笑う鞠子だが
父親のいない鞠子にとってはそれが心地よい押しつけがましさなのかもしれないね

酒盗とは魚の内臓を原料とする塩辛とのこと(wikiより)

学校帰りの常子は職人や女性やいろんな人に声をかけられてたね
川に飛び込んで美子を助け上げた時に拍手が起こってたから
今ではちょっとした町の人気者なのかもしれない

美子はおやつと共に友達も戻ってきたみたいだね
この、物で人の心を惹くようなのは美子のその後のキャラ形成の
伏線でもあるのだろうか?
まあ考え過ぎだとは思うけどw

福助人形のアップは18話で君子たちがまつの面接を受けたときにもあったけど
商売繁盛を招く置物ということで
今週の「常子、ビジネスに挑戦する」に関連してるのかな?
宗吉の頭が大きいから福助人形って事でもないだろうしw











2016年5月16日月曜日

とと姉ちゃん(37)東堂チヨ登場~らいてうに傾倒する常子

昭和十一年春 
仏壇の父の写真に手を合わせ「行ってきま~す」と囁く常子(高畑充希) 
表では妹たちが常子を待っている 
美子(根岸姫奈)「相変わらず遅いなあとと姉ちゃん」 
鞠子(相楽樹)「今日も全力で走らないといけないか…」 
階段を下りてきた常子が厨房で働く森田屋の面々に挨拶する「行ってまいります!」 
(一同)「行ってらっしゃい!」 
玄関を出る常子 
美子「もう、とと姉ちゃん遅い!」 
常子「あ~ごめんごめん」 
鞠子「教科書忘れてない?」 
常子「あ~大丈夫」 
美子「お弁当は?」 
常子「あ~大丈夫」 
「常子、ハンカチ忘れてない?」と、君子(木村多江)が厨房から出てくる 
常子「大丈夫です」 
「筆入れは?」と、誰かの声 
常子「大丈夫…あっ」 
すると滝子(大地真央)がそこに歩いてくる「おはようさん」 
(一同)「おはようございます」 
滝子「ようやく制服もあつらえられたようだね」 
嬉しそうな常子「はい、おばあ様のおかげです」 
滝子「ま…それにしても馬子にも衣装とはよく言ったもんだねえ」 
常子「えっ?」 
滝子「アハハハハ!」 
含み笑いの鞠子と美子 
常子「えっ?えっ?私ってそんなに…」 
(一同)「ハハハハハ!」 
常子「え~?」 
滝子「ほらほら、あの…遅れるよ、急ぎな」 
常子「あ、あ、あ…ちょ…行ってまります!」と、走っていく3姉妹 
滝子「あっ、頂き物のお菓子がある、後で取りにおいで」と、君子に声をかける 

<君子と滝子は今までの時間を取り戻すかのように平穏な日々を過ごしていました
そしてこの春、常子は女学校の五年生です、最終学年を迎えました> 

タイトル、主題歌イン 

女学校の五年二組の教室
教室のあちらこちらでお見合いや結婚の話をする学生たち

<この時代、ほとんどの女学生は卒業後お嫁に行きました
ですが常子は…>

「白田屋の販売員が32円で岩本商事の事務員が30円で…」
と、自分で新聞の求人広告を切り抜いて作った求人ノートを見ている常子

<僅かな職業婦人の求人情報を集めていました>

綾(阿部純子)「そんなにお安いの?全て男の人の半分以下じゃない」
常子「しかたないわ、男の人とは違うもの」
「これは?タイピスト、月に40円」と、綾がノートを指さす
常子「駄目よ、それは枠が埋まっちゃってるから」
綾「枠?」
常子「先生に聞いたの、我が女学校からのタイピストの推薦枠は
一組の後藤さんに決まったんだって」
綾「残念ね、常子さんもいっその事
職業婦人なんて目指さないでお見合いでもなさったら」
常子「駄目駄目、なんとかして稼がないと、みんなの食いぶちを…
あ~どうしたもんじゃろのぉ…」
教室に鐘の音が鳴り新しく着任した女教師(片桐はいり)が入ってくる
黙って学生たちを見渡した後、「よろしい…では皆さん、まず床に座って下さい」
(ざわめく教室)
学生「あの…床にですか?」
教師「ええ、その場であぐらをかいて下さい」
(戸惑う学生たち)
教師「どうしました?できませんか?」
「いえ…あの…」
「何をおっしゃってるの?」
「そんな事できる訳ないじゃない」という学生たちの声
すると教師は履物を脱ぎ、教壇の前にあぐらをかいて座り目を閉じる
目を開いた教師が目の前の学生に訊ねる
「あなたはなぜ、あぐらをかかなかったのですか?」
学生「それは…お行儀が悪いからです」
教師「なるほど…では質問を変えましょう
あなたは男性があぐらをかいている姿を見てお行儀が悪いと思いますか?
お行儀が悪いとは一体誰が決めた事でしょう?」
立ち上がり履物をはく教師「皆さんは周囲の考える、女性とはこうあるべきだ…
という定義を疑った事がありますか?誰でもができる事を
女性だからできない、してはいけないと決めつけてはいませんか?」
教師を見つめる常子

<まさにこの先生の言うとおり常子は女だからと
最初から枠を作って仕事を選ぼうとしていたのです>

教師「その事を考えてほしくて意地悪をしてしまいました
今日からは女だからと境界線を引かないで
自分の気持ちに正直に挑戦する毎日にしていきましょう

元始、女性は実に
太陽であった。
真正の人であった。
今、女性は月である。
他に依って生き、
他の光によって輝く、
病人のやうな
青白い顔の月である。

そう高らかに語った女性たちがいました
この言葉の意味を皆さんと考えていけたらと思っています
五年二組の担任になります東堂チヨです、どうぞよろしく」
(一同)「よろしくお願いします…」
東堂「それでは授業を始めます、教科書を出して」
綾が常子に「何だかすごいわね」と囁く
「うん」とうなずき、東堂を見つめている常子

授業が終わり、廊下で東堂に声をかける常子と綾
常子「先生!今日の授業とても感銘を受けました」
東堂「それはよかった」
常子「あの…女性は太陽…っておっしゃった方って…」
東堂「その名は平塚らいてう(らいちょう)」
常子「平塚らいてう…」
東堂「ご興味がおありなららいてうが作った雑誌が1冊あります、お貸ししましょうか?」
「はい!是非お願いしま…」と、頭を下げてから綾を振り向く常子
綾「私は結構、気になさらないで」
常子「本当?」
東堂「ついてらっしゃい」
常子「はい!」
そんな常子を楽しそうに見送る綾

雑誌「青鞜」を読みながら一人の帰り道
常子「さてここに青鞜は産声を上げた、現代の日本の女性の頭脳と手によって
はじめてできた青鞜は産声を上げた
女性のなす事は今はただ嘲りの笑いを招くばかりである
私はよく知っている
嘲りの笑いの下に隠れたるあるものを
そして私は少しも恐れない
しかしどうしよう
女性みずからがみずからの上に
更に新たにした羞恥と汚辱の惨ましさを
女性とはかくも嘔吐にあたいするものだろうか
否々、真正の人とは…
私どもは今日の女性として出来るだけの事をした
心のすべてを尽くしてそして産み上げたその子供がこの青鞜なのだ」
常子は雑誌に目を落としたまま帰宅して
照代(平岩紙)や富江(川栄李奈)に声をかけられても気付かない
夕食で卓についてもそのままだ
君子「常子、いつまで読んでるの?いい加減に…」
読み終わったのか、やっとパタンと雑誌を閉じた常子が
「はぁ…」と、幸せそうな顔をする
そんな常子に解せない様子の小橋一家
周りに気付く常子「あっ…お待たせしてごめんなさい」
一同「頂きます」と食事が始まるが
食べながら「ん~!フフフフフ!」と一人ご機嫌な様子の常子
森田屋の面々のヒソヒソ声
まつ(秋野暢子)「大丈夫かい?常子のやつ」
富江「ずっと雑誌読んでたけど」
長谷川(浜野謙太)「勉強に目覚めた?」
宗吉(ピエール瀧)「鞠子なら分かるけどな」
照代「ねえ」
まつ「かわいそうに…慣れない事やるからおかしくなっちまったんだねえ」

<こんな皆の戸惑いも常子の耳にはまるで入っていませんでした>

部屋に戻っても上機嫌で鼻歌を歌い浴衣を畳む常子

<常子は目に入るもの全てがこれまでと違って見え
太陽の光を浴びたようなすがすがしい気持ちになっていました>

そんな常子を見た君子が、その隣で生気なく浴衣を畳む鞠子に目を止める

翌、桜の花が咲く路地で将棋を指す宗吉と隈井(片岡鶴太郎)
長谷川が「一杯引っ掛けやすか?」と、酒を持ってくる

居間では照代と富江が手仕事をしている
まつがラジオをつける
「今回の不祥事に関して寺内陸軍大臣は
陸軍は大いに反省自戒し今後は真に軍民一体の体制を確立し
国防体制をますます強化するため地方行政の…」

厨房で天ぷらを揚げる君子
キャベツを切っている常子
美子もお手伝いをしているようだ

2階で一人机に向かう鞠子
ノートに「進学…」という文字を書こうとして黒く塗りつぶしため息をつく
そのまま仰向けに畳に寝て何か悩んでるような鞠子

<鞠子のこのため息が常子の将来に大きく関わっていく事になるのでした>

(つづく)

冒頭の常子は家族からいろいろ突っ込まれてたね
とと姉ちゃんというよりも手のかかる末っ子キャラみたいになってた
さらに滝子の「馬子にも…」は25話の綾の「妹さんのを見たらそう思った」
に続く、常子の不器量設定描写だろうか
本人も「私ってそんなに…」と言ってたが

一組の後藤さんはわざわざ回想シーンみたいな演出で顔を見せていたが
今後、物語に登場するキャラなのだろうか?
と思ったらあれは「おのののか」とのこと
どおりでかわいいわけだ、どこかで登場するのだろう

思春期の常子が新しく知った価値観や思想に傾倒していく様子が
よく描写されていたと思う
誰でもあの年頃はあんなふうになった憶えがあるよね

宗吉が隈井の事「隈じい」て呼んでたねw
桜が散る路地で平和に将棋を指してるシーンの後に
ラジオの音声で時代背景の描写もあった
昭和を描くのに戦争は避けて通れないもんね
(あのニュースは二・二六事件に関してのものらしい)

このドラマは常子の表情で終わる事が多いけど
今回は珍しく鞠子エンドだった
鞠子の悩みが常子の将来に関わってくるというナレだったが…