2016年7月9日土曜日

とと姉ちゃん(84)事業に失敗する三姉妹…ピンチの常子に五反田は花山に相談しろと…

鞠子(相楽樹)「何よこれ…」 
君子(木村多江)がその店に置いてある雑誌を手に取る
「スタアの洋服…随分似た本ねぇ」 
鞠子「似てるんじゃないです…きっと真似したんです」 
君子「えっ?」 
常子たちの書店の男も来る「ああ、そうだろうね
売れたってうわさになった本はすぐ似たような本が出るから」 
君子「あら…」 
常子(高畑充希)「スタアファッション…スタアの着物…」 
鞠子「スタアの彩り…ファッションは装ひ…敵も考えるわね」 
美子(杉咲花)「これなんてひどいですよ」 
(一同)「装ひのスタア!?」 
常子「逆さにしただけじゃない」 
鞠子「もはや意味もわからない」 
君子「あ…真似されるなんて光栄じゃない?
こっちが元祖なんだもの自信持って売りましょ!」 
(3人)「はい」 

前回同様、通りで声を張り客を呼び込む常子たちだが
「ああ、似たようなの買ったからいいよ」
「7円?この前買ったのは4円だったよ!高いわねえ~」
などと言われてしまい途方に暮れる 

タイトル、主題歌イン 

<ひとつきたっても増刷したスタアの装ひは
僅かしか売れていませんでした>

小橋家
ちゃぶ台の上に積まれた在庫を数える姉妹
鞠子「全部で716冊…ほとんど残っちゃったね…」
君子「真似されちゃったから…最初は売れたんだもの」
常子「それだけじゃありません…私の管理の甘さのせいです」
君子「そんな…」
常子「安くしようと仙花紙を選んだのは私ですから」
「まさかこんなにボロボロになる紙だったとは…」
と、ページをめくる美子の手元から紙屑がぽろぽろと落ちる
美子「どうする?とと姉ちゃん」
常子「…悪評も立っちゃったし
2冊目を売るのは1冊目の時よりも大変だと思う」
鞠子「そんなに甘くなかったって事よね…
立ち止まるなら今しかないんじゃない?
次失敗したらお金…本当に無くなっちゃうよ」
一同が沈み込んでいると玄関を開けて帰ってきた鉄郎が
奥でリュックをとり「じゃあな」とすぐに出て行こうとする
常子「えっ、ちょ…待って待ってえっえっえっ?」
鞠子「どうしたんですか?突然」
鉄郎「すぐ舞鶴行かなきゃなんねえんだ
新しいビジネス始めるんでよ」
美子「えっえっジーンズは?こっちで一山当てるんでしょ?」
鉄郎「そのつもりだったんだけどよ…俺の方も失敗しちまった」
常子「えっ…」
鉄郎「仕入れのために大金払ったあとで
進駐軍の元締めがMPに捕まっちまってよ
はぁ~大もうけできそうだったのになぁ…くそっ」
在庫の雑誌を見る鉄郎「そいつも売れる時に
値引きしてでも売り尽した方がいいぞ…
今舞鶴は引き揚げ船の港としてにぎわってるらしい
そこで今度こそ一旗揚げてやる」
常子「叔父さんお金…」
鉄郎「金?」
常子「お借りした資金まだ返せてません」
鉄郎「いいよ、今返しちまったら次の本が作れなくなるだろ」
常子「でも…」
靴を履き立ち上がった鉄郎「常子、鞠子、美子…諦めねえでもう一度出せ
俺は当分東京には戻らねえ
俺のいるとこの本屋にも置かせてもらえるような雑誌…作ってくれ
見つけたらすぐさま電報打つから…な?」
(3姉妹)「はい…」
うつむき帽子のつばを深く下げた鉄郎が「達者でな」と玄関を出て行く
君子「気を付けて…」
美子「行っちゃった…」
寂しそうな目をする常子
鞠子「何だかんだ言っていないとさみしくなるね…」
美子「そうそう…この1年叔父さんがいてくれて心強かったわ」
君子「そうね…男の人がいるのといないのでは違ったのでしょうね」
まだ玄関に立ちつくしている常子に君子「常子?」
鞠子も常子に振り向く「どうしたの?」
家族に振り向きちゃぶ台の前に座る常子
「あと1冊…頑張ってみない?」
妹たちが常子を見つめる
常子「もう後はないけど…やるだけやってみよう」
顔を見合わせた鞠子と美子が笑顔になり常子に「うん」とうなずく
「うん」と笑顔でうなずき返す常子
君子も嬉しそうに笑っている「頑張りましょう、私も何でも手伝うからね」

闇市を歩く花山(唐沢寿明)が書店を見て立ち止まる

(回想・五反田のセリフ「あの子自分で出版社を作るそうです…
スタアの装ひ…だったかな」)

書店の前に立つ花山「なあ君」
男「いらっしゃい」
花山「スタアの装ひって本はあるか?」
「どこだったかな…」と男が足元に積まれてる本をどけて探す
花山「なぜそんな所に置いてある?」
男「いや~ちっとも売れなくて引き取ってもらおうと思ってね
値段は高いわ紙の質は悪いわで
すぐボロボロになっちゃうってうわさが広まっちゃってよ
まあそうなったらもう誰も買わないよ
あ、あったあった…あんた買うのか?」
花山「ああ」
男「7円だよ」

甲東出版
谷(山口智充)「そうか…そんなに売れ残ったのか」
常子「ええ…」
谷「あ…小橋君申し訳ない」(頭を下げる)
常子「えっ?」
谷「もう新しいやつを雇ってしまったんだよ」
自分がいた席を振り向く常子
そこに座る眼鏡をかけた若い男がバツが悪そうにうつむく
谷「だから君を受け入れる余裕が…」
慌てる常子「あっあっいやあの…そういう相談ではなく
2冊目を作る上で何か助言を頂けないかと」
「あっ、そういう事?」とほっとした顔をするがすぐに
「あっ、そういう事か…」と困り顔になる谷
常子「えっ?」
五反田(及川光博)「この前も言ったけど
女性向けの雑誌は僕らは詳しくないからね」
常子「何でもいいんです…何かありませんか?もう失敗できないんです」
谷「だが…女性目線の雑誌など皆目分からんのだよ」
相田や富樫も気持ちはあるが谷と同じ理由で力になれないようだ
常子「そうですか…」
何か心当たりのありそうな五反田の表情

甲東出版を後にして歩く常子を五反田が追いかけてくる
「常子君」
振り向く常子「あ…はい」
五反田「あの人に相談してみろよ」
常子「あの人?」
五反田「花山伊佐次…会った事あるだろ?」
常子「花山さん…あっ、内務省にいた方ですよね」
五反田「そう、その花山さん」
常子「私…あの人どうも苦手で…」
五反田「いや、まあ正直な人なんだよ」
常子「でも花山さんって挿絵を描く方ですよね?」
五反田「だけじゃない…あの人はもともと帝大新聞の編集長だったんだ」
常子(えっ?)
五反田「うちの編集長がへそを曲げるとやっかいだから
さっきは言わなかったんだけど花山さんってのは
絵も文章も編集の力量も業界じゃ有名だったんだぞ」
常子「へえ~」
五反田「だから宣伝標語で内務省からお呼びがかかったんだ」
常子「ああ…いやぁでもあの方はちょっと…」
五反田「確かに行動は自分本位だし発言は歯に衣着せぬので
傷つけられる事も多いよ、でもね
あの人の女性への目線は男性から女性を見た視点ではなく
どことなく女性側の視点で見ている気がするんだ」
常子「あの方がですか?」
常子「ああ、花山さんが書いた文章や挿絵なんかから
そんなにおいがするんだよなあ」
常子「ああ確かにあの方の挿絵は好きですけれど…」
五反田「きっと君の作ろうとしている雑誌をよりよくしてくれるはずだ
これ、訪ねてみてごらん」
と、連絡先が書いたメモを渡された常子「はい…」

自宅でスタアの装ひのページをめくる花山

引き出しから甲東出版の封筒を取り出す常子
その中にあるあの時花山が書いた家のイラストを取り出して眺める
そしてメモの花山伊佐次の文字を見つめ何かを心に決めたように宙を見る

(つづく)

このところイケイケモードだった鞠子が前回
1000部刷るべしとぶちあげたのが裏目に出たね…
大量の在庫を抱えて「立ち止まるなら今しかないんじゃ…」と
いつもの心配性で消極的な鞠ちゃんに戻っちゃったw

でも鉄郎にも励まされて常子の「あと1冊頑張ってみない?」に
鞠子と美子も納得してうなずいてたね、よかったよかった

君子はぼんやりしているようでいていつも楽天的で
沈みがちな娘たちをなんとか盛り上げようとしてるね
4人の中では一番メンタルが強いのかもしれない

鉄郎はもうずっと常子たちのそばにいると思っていたら出て行っちゃった
常子たちに資金を出して進駐軍の元締めにも大金払って
鉄郎は随分お金を持ってたんだね
歯磨きの時みたいに後から借金取りが来なけりゃいいけどw

大金持ちになりたいからと独立したのに困ったからって
アドバイスしてもらいに甲東に行っちゃいかんだろ常子w
まあこのへんはファンタジーなんだろうが谷たちは人が良い

五反田は熱心に常子に花山を薦めてくるね
常子と花山はこれからもずっとやり合うような間柄になるのだろうから
誰か間をとりもつような存在が必要だったのかもしれない(脚本的に)

2016年7月8日金曜日

とと姉ちゃん(83)「スタアの装ひ」初版300部即日完売!増刷する常子たちだが…

鉄郎(向井理)「頂きます」 
(4人)「頂きます」 
小橋家の夕食 
鉄郎「今日もまたすいとんか~」 
君子(木村多江)「すみません、配給もすぐに売り切れてしまって」 
鉄郎「はぁ~ビフテキとか夢のまた夢だなあ…」 
鞠子(相楽樹)「叔父さん!男なんだからゴチャゴチャ言ってないで
早く食べちゃって下さい、ここで編集作業するんだから」 
鉄郎「はい…」 
張り切っている鞠子に家族が微笑む 

<紙を仕入れた常子たちは雑誌 スタアの装ひ の完成に向かって
邁進していました> 

ちゃぶ台を囲み作業する小橋一家 
常子(高畑充希)「今晩中に片づけてしまいましょう」 
鞠子「もちろん」 
鞠子をからかうような美子(杉咲花)「お~」 
鞠子「だから冷やかさないでよ」 
常子も悪ノリする「お~」 
鞠子「ちょっと!」 
そして君子までが「お~」 
ヘラヘラと笑っている常子たち 

タイトル、主題歌イン 

闇市で外国人の洋服をスケッチする美子

ちゃぶ台で文章作業をする鞠子

綾の自宅前
綾(阿部純子)「雑誌を?」
常子「ええ、出来たら是非綾さんにも読んで頂きたいわ」
綾「もちろん…でもすごいわね
自分で出版社を作るって事は社長であり編集長って事でしょ?」
照れたように笑う常子「まあ…そういう事になるわね」
綾「大変ね、そんなにたくさん紙まで持って」
常子「あ…いけない…印刷所に届けるところだったんだ…
ごめんなさい綾さん、またゆっくりね」
綾「頑張ってね、社長さん」
「ありがとう」と、太一の手を握り「じゃあね太一君」と言って
忙しそうに駆けだす常子
少し追いかける綾「常子さん!これありがとう」と紙袋を掲げる
振り向き「うん!」とうなずいて走っていく常子と心からの笑顔で見送る綾

「5人です」
「え~7円50銭」
配給所の列に君子たちがあたふたと走ってきて加わる
せつ「近頃常子さんたち忙しそうね」
君子「ええ、会社を一から作り上げるのは想像以上に大変みたいで…」
せつ「大したもんよ、女だてらに会社作るなんて
うちのとうちゃんも驚いてたわ」
稲子「ああ、うちのも
復員してきたらお隣さんがすっかり変わっちまったって驚いたって」
大笑いする女3人
せつ「これが成功したら君子さんも楽させてもらえるんじゃない?」
君子「ああどうですかね、まあ私は
娘3人が協力してやってくれてるってだけで」

小橋家
常子が封筒から原稿の束を取り出す
(鞠子と美子)「お~いよいよね」
常子「まだまだ、このゲラ刷りで誤字脱字がないか間違いを修正するの」
鞠子「あっ、そっか」
常子「うん、でね」と2人に校正記号を説明した表を配り
「これを作っておいたからこれ見ながら確認してもらえる?」
2人「はい」

おでんの提灯がさがる店
五反田(及川光博)「ですから僕の小説の挿絵を
どうしても描いて頂きたいんです…お願いします」
(長い沈黙)
五反田が下げた頭を上げる「…分かりました、諦めます
一度言ったら引かない方で有名ですからね花山さんは」
花山(唐沢寿明)「もう決めたんだ…今後出版に関わる一切を断ると」
五反田「そうですか…すみませんでした急にお呼び立てして」
花山「いいんだ、失業中でどうせ暇だからね」
酒を飲みおでんを食べる2人
五反田「…あっ、そういえば小橋常子君って覚えてますか?
一度内務省に挿絵を頂きに行った若い女性です」
花山「…ああ…あの裸足の」
五反田「ええ、ええ、あの子家族を養うためには
甲東の給金じゃ足りんと自分で出版社を作るそうです
何でも女の人の役に立つ雑誌が作りたいというので
妹さんたちも巻き込んで」
花山「どうしてそんな話を私に?」
五反田「いえ…他意はありません」

昭和二十一年七月

<雑誌を作ると決意した日から数か月がたち
ついに スタアの装ひ は完成したのです>

ちゃぶ台の上に積まれた雑誌を手に感慨深気な姉妹たち
鞠子「これが私たちの雑誌…」
美子「ついに出来たのね」
君子「よく頑張ったわね」
鞠子と美子が「やった~!」とはしゃぐ
常子「…喜ぶのはまだ早いわ
私たちはこれを目指してきた訳じゃないですからね
ここが始まりですから
これを売って次も作るの
お金さえあればもっと自分たちのやりたい事できるようになるから…
だから…頑張って売っていきましょう!」
妹たちがうなずく「はい」

甲東出版で雑誌を見せて評価してもらっている常子
「どうでしょうか?こちらで培った事を反映して作ったつもり…」
谷(山口智充)「気に入らないな」
常子「そんなに駄目でした?」
谷「いや…雑誌の事じゃない…この服だ」
常子「えっ?」
谷「破廉恥すぎるじゃないか、けしからん」
常子「ああ…あ~服の事は置いといてどうですかね?誌面構成とか…」
谷「それは…それはだね君…」(困っている様子)
五反田「要するに僕らはよく分からないんだよ」
常子「えっ?」
五反田「文芸誌一筋で…こういう雑誌を作った事がないから」
常子「ああ…」
谷「すまんな」
常子「あっ、いえ」
五反田「でも女の人らしいかわいげのある雑誌だと思うよ」

自宅に戻った常子に妹たちが駆け寄る「どうだった?」
常子「一応褒めて頂いたわよ、かわいげのある雑誌だって」
君子「あ~専門家が言うんなら安心よね」
鞠子「書店の方は?回っていいって?」
常子「あ~それが…書店に置くのは少し厳しそうなの
売れる確証がないと置かないんだって、実績重視みたい」
美子「じゃあどこで売るの?」
常子「場所代は高いけど叔父さんが見つけてくれた所」

どこかの闇市の古本屋の店先だろうか
小橋一家が通りの台の上に雑誌を並べて露店販売している
君子「さあさあお立ち会い!新雑誌スタアの装ひ!」
常子「スタアの装ひ入荷致しました!新発売です!
よかったらお手に取ってみて下さい」
鞠子「ちまたで話題のスタアの装ひたったの7円です!」
美子「いかがですか?スタアの装ひです」
と、立ち止まった女性が「7円なら買ってみましょうか1冊頂戴」と売れ
感激する3姉妹
美子「1冊売れた…」
鞠子「私の文章がお金になった…」
常子「よかった!」
君子「ほら、喜んでる暇はないわよ」
見るとたくさんの女性が雑誌を手に取って眺めている
そして次々に雑誌が売れていく

<この日売り出した スタアの装ひ は日が暮れる頃には
300冊全てが売り切れたのです>

夜、小橋家
鉄郎「すげえじゃねえか、完売したのか」
美子「そうよ」
鉄郎が「おお…おぉ~」と、ちゃぶ台の上の缶に入った金に手を伸ばす
その手をはたく美子
鉄郎「痛っ!何すんだよ!」
美子「あっ、ごめんなさい…盗られるかと思わず」
皆が笑う
鞠子「叔父さん信用ないから」
鉄郎「けっ!そんなはした金要らねえよ」
(一同)「え~!」
鞠子「叔父さんがお金に目もくれないなんて…」
常子「熱でもあるんですか?」
「俺は俺のビジネスで稼ぐから要らねえって言ってんだよ…」
と、リュックからデニムを取り出す鉄郎
君子「木綿のズボン?」
常子「何だか変わったズボンですね」
鞠子「随分と分厚い生地だし」
鉄郎「いいか?これはジーンズっていうんだよ」
(一同)「ジーンズ?」
鉄郎「うん、今進駐軍のPX(売店)からの横流し品として出回ってるんだ
もともと作業着として作られたものらしく丈夫で物がいい
こいつが必ず日本で大流行する日が来る間違いねえ!
これを売りさばいて大もうけしてやる」
鞠子「…私たちも負けてられないわ
雑誌をもっと刷ってもっと売りましょうよ」
鉄郎「俺もそれがいいと思うぞ、波が来てる時は攻めの一手だ」
常子「そうね…あっという間に売り切ったし…
今回が300部だったから次は500?」(ほくそ笑む)
鞠子「いや、1000部でしょ」
常子「1000部も刷って売れる?」
鞠子「私にはそのくらいの自信がある」(ドヤ顔)
鉄郎が「ほうほう…」と鞠子を見る
常子たちも同じだ
鞠子「何?その顔」
君子「鞠子ってそういう面もあったのね…意外と大胆なところ」
鞠子「そぉお?」
常子がうなずく
鉄郎「この調子なら次も売れんだろ
金持ちになんのも夢じゃねえぞ」
美子「お金持ちか…」

(美子の妄想)
長い膳の上には肉、卵、揚げ物、チキンなど
そしてすき焼きの鍋を2つも並べて肉を頬張り
口に手を当てて笑う美子「オ~ホッホッホッホッ」

(鞠子の妄想)
編集者「先生すばらしい 感動しました 直川賞決定ですよ」
おしとやかに微笑む鞠子「そうかしら…ホホホホホ…」

(常子の妄想)
「オ~ホッホッホッホッ」と口元の金歯が光る
扇を手に豪華な籐椅子に座り笑い続ける常子

鞠子「いいわねえ…」
美子「昔よりも想像力が豊かになった気がする」
常子「私あんまりいいの浮かばなかった…」
と、「フフフ…ウフフフフ!」とまだ妄想の世界にいる君子!

(君子の妄想)
舞踏会で使うような仮面を手にドレス姿で笑う君子「アッハハハハ!」
踊るように手を広げその場を回り続けて笑っている

「アハハアハハ…アハハハ!」と妄想から抜けきらない君子
常子「かか」
君子「えっ?」
皆が君子を見ている
君子「あ…何でもないわ…さあ1000部頑張って売り切りましょう!
(一同)「…はい!」と笑っている

<2週間後、常子たちは増刷した スタアの装ひ 1000部を担ぎ
闇市に繰り出しました>

常子「こんにちは」
男「お~あんたら待ってたよ」
君子「またお世話になります」
男「あ~いいからいいから
あの…売り場空けといたからすぐ置いてくれ」
常子「あ~すみませんあの…前回同様300部置かせて下さい
残りは他の書店を回ろうと思って」
男「うちにももっと置いてくれよ、すぐ売れちまうんだから」
君子「すみません、新宿や渋谷の闇市にも置こうって話し合ったんです」
男「そいつは残念だ」
と、何やら気になるものを見つけたような美子が場を離れる
販売の準備をする鞠子たち
鞠子「早く2冊目が作りたいわ」
常子「もう鞠ちゃん気が早いんだから」
鞠子「1冊作って創作意欲が更に湧いてきた」
常子「お~」
と、「とと姉ちゃん、ちょっとこれ見てよ」と
美子が隣の売店から呼ぶ声がする
その店に並べられているものを見て顔色を変える鞠子たち

<そこで目にしたのは驚くべき光景でした>

我が目を疑うといった表情の常子

(つづく)

今回も絶好調モードの鞠子を冷やかす家族の描写は幸せそうでいい
常子を見送る綾の笑顔も何だか良かった

五反田の「いえ…他意はありません」は
ドラマ的には他意があるという事だろう
花山が引きこもっている理由はなんとなくわかる
戦争のスローガンを作っていたのだから戦争責任というか
自責の念にでもかられているのかな
だから出版に関わらない事が自分への罰というか
戒めみたいなものだと思う
五反田の他意は強く生きている常子を花山に見せて
花山に立ち直ってほしいという事ではないだろうか?
あるいは常子を助けてやってほしいとも思っているかもしれない
自分の小説の挿絵の話は断られるのが最初から分かっていての口実で
本題は常子の事を花山の耳に入れたかったのではないだろうか?
だとしたら五反田ってかっこいい

雑誌はすぐに売れちゃったね、歯磨きの時と同じだ
あの時の売り上げは鉄郎の借金で取られちゃったから
今回の売り上げに手を伸ばした鉄郎が美子にはたかれたのは因果応報

妄想シーン後の美子が「昔よりも想像力が豊かに…」と言ったのは
41話の妄想シーンの事を言っているのだと思うが
あの時はスイーツばかり並んでいたのに今回は肉ばっかりだった
これは杉咲花の中華のCMのイメージも演出に影響したんじゃないかなw
(41話は根岸姫奈ちゃんだった)
常子の「私あんまりいいの浮かばなかった…」に笑った
あの金歯はないよね










2016年7月7日木曜日

とと姉ちゃん(82)三姉妹(…と鉄郎)で始動するKT出版~完全復活の鞠子に一目惚れの水田

小橋家で一家がすいとんを食べている 
美子(杉咲花)「辞めた?」 
驚き慌てたような鞠子(相楽樹)「何で?何で辞めちゃったの?」 
常子(高畑充希)「女の人の役に立つ雑誌を出版しようと思って」 
(鞠子と美子)「はぁ?」 
常子「さんざん悩んだんだけど…人生賭けてみようと思って」 
鉄郎(向井理)「うん、よく言った、それでこそ俺の姪だ
人に使われているうちは金持ちにはなれねえからな」 
常子「はい」 
鞠子「ちょっと叔父さん!」 
常子「で…どう?私たち3人でやってみない?」 
美子「えっ?」 
鞠子「私たちも?」 
常子「うん」 
美子「一緒に?」 
常子「うん」 
鉄郎「面白えじゃねえか、資金は俺が調達してやる」 
常子「ありがとうございます!」 
鞠子「待って待って待って」 
美子「そんないきなり言われても…かかもとと姉ちゃん止めて下さい」 
最初は驚いていたようだがとぼけた顔で答える君子(木村多江)
「私は…応援します」 
(鞠子と美子)「えっ?」 
鞠子「どうして?」 
君子「いや…心配は心配だけど…
でもあの長かった戦争を生き抜いてきた訳じゃない?
この先どんな失敗があったとしてもあれよりつらい事はないと思うの
だから常子…やってみたいならやりなさい!」 
嬉しそうにうなずく常子「はい!」 

タイトル、主題歌イン 

<常子は戦時中おしゃれをする事ができなかった女性のために
最新の洋服やその作り方を載せた雑誌を作る事にしました>

常子がちゃぶ台で鞠子と美子に紙面作りの説明をしている
ノートに簡単なレイアウトを書き込み
「これを雑誌の1ページだとした時に
ここによっちゃんが描いた洋服の絵が入る」
妹たちがうなずく
常子「うん…で、ここにその洋服の作り方が入る」
鞠子「…作り方はよっちゃんが考えてそれを私が文章に起こす(?)」
常子「そう…で、鞠ちゃんはここに入る見出しを考える
爽やかな夏服…みたいな
この洋服がどういうものかひと言で分かるような文言ね」
笑顔でうなずく鞠子「はい」
常子「全部で32ページだから編集後記、目次、奥付…
28種類の洋服を紹介したいの」
美子「28種類も…」
ワクワクしたように鞠子「やりがいあるわ」
美子も楽しそうに笑っている
台所からきて席につく鉄郎「なあ俺は俺は?手伝わせろよ」
常子「じゃあ叔父さんには闇市で紙を探してきてほしいんです」
鉄郎「紙?」
常子「それが一番大事かも」
鉄郎「紙なんて…んなもん印刷所行きゃあんだろ」
常子「このご時世とにかく手に入らないんです
印刷所にも私たちが用意した紙を持ち込んで
印刷してもらう必要があるんです」
鉄郎「うん…よっしゃ、じゃあ明日早速探してきてやる」

闇市を歩く3姉妹
美子「あっ、いたいた…どうです?叔父さん」
男に金を渡している鉄郎
「お~ばっちりばっちり…じゃあな…案内するからついてこい」
(3人)「はい」と歩き出す
と、紙幣を数えていた男が鉄郎を呼び止める「あの…」
鞠子「あっ、叔父さん」
鉄郎「えっ?」
男を指さす鞠子「あの方、何か言いたそうです」
鉄郎「何だよ、金は払っただろ?」
気弱そうに呟く男「5円足りない…」
鉄郎「あん?」
男「いや…5円足りない…」
男の声が小さいためか通訳するような鞠子「5円足りないって言ってます」
笑い出す鉄郎「あれ?悪い悪い5円な、はい」と男に金を渡す
常子「叔父さんまさかごまかそうとしたんじゃ…」
鞠子と美子も冷たい目で鉄郎を見る
鉄郎「する訳ねえだろ、露天商組合の人間だますなんて」
常子「ぁ…組合の方なんですね」
男「ええ、水田といいます」
きちんと挨拶する3姉妹
鉄郎「経理担当みたいだから店出す時いくらかかるとか聞いてたんだよ
まあ金取られたけどな」
美子「そんな奥ゆかしい性格でちゃんと集金できてます?」
常子「よっちゃん…」
水田(伊藤淳史)「ああ、いえ…向いてないのは分かってますから」
と鞠子を見て「お嬢さん、呼び止めてくれてありがとう」
笑って首を振る鞠子「いえ」
その笑顔の虜になったような様子の水田「はぁ…」
鞠子は(何だこの人?)という表情
鉄郎「よし、行くぞ」と歩き出す
鞠子が「さよなら」と水田に頭を下げて挨拶する
水田「さよなら…」と、鞠子の後ろ姿を見て癒されたように微笑む

<地味ではありますがこれが小橋三姉妹と水田の出会いでした
今後、常子たちはこの水田によって大いに助けられる事になるのです>

鉄郎が露店の男に紙を800枚ほど買いたいと告げる
常子たちを値踏みするように見た男が「1週間待てっかい?」
常子「はい、お願いします」

美子「え~そんなんじゃ駄目よ」
常子「え~いいじゃない 洋服探訪」
小橋家の縁側に並んで座り話し合う3姉妹
どうやら雑誌の名前を考えているようだ
目の前の菜園では君子がネギを引っこ抜いている
鞠子「もっとかわいらしい方がすてきだと思うけど
常子「じゃあ…洋服便り?」
美子「違う」
常子「おしゃれ万歳」
鞠子「やぼったい!」
常子「だったら2人とも考えてよ」
美子「無理無理、売れそうな雑誌の名前なんて浮かばないもん」
一段落して腰を伸ばした君子が縁側に座る
「もっと品のある名前がいいんじゃない?」
姉妹「品?」
君子「私くらいの年の人が手に取っても恥ずかしくないものがいいわ」
常子「どうしたもんじゃろのぉ…」
鞠子「装ひ…ってどう?」
3人が鞠子を見る
鞠子「あ…駄目?やっぱり」
君子「いいわね」
鞠子「えっ?」
美子「うん」
常子「いい、すごくいい」
鞠子「本当?」
「いいや、それじゃあ地味すぎる!」と、横の戸を開ける寝間着姿の鉄郎
常子「聞いてたんですか?」
鞠子「叔父さんもうお昼ですよ…何時まで寝るつもりだったん…」
それを手で制する鉄郎
「いつの時代も映画でも歌でもスタアがもてはやされてるだろ?
だったらその流行に乗っかるべきだ」
常子「どうやって?」
鉄郎「簡単な話だ、スタアって文字を入れりゃいいんだ」
常子「え?」
鉄郎「雑誌、スタアの装ひ」
(一同)「え~」
鉄郎「いいか、KT出版が放つ雑誌第1号は スタアの装ひ だ」
常子「ちょちょちょ…ちょっと待って下さい
今サラッと出版社の名前決まってませんでした?」
鉄郎「お前が出す本なんだからKT出版でいいだろ」
常子「勝手に決めないで下さい」
鉄郎「いいじゃねえか」
常子「名前が会社だなんて恥ずかしいわぁ…」
鞠子「私はKTでいいと思う」
常子「えっ?」
美子「私も」
常子「えっ?」
君子「そうね」
「…そう?」と少し笑う常子
美子「まんざらでもなさそう」
君子「フフフフ」
「何か スタアの装ひ もよく思えてきた」
と、ご機嫌な常子と家族の笑い声

<このころ街なかでは米軍将校や外交官の家族が闊歩し
外国から来た目新しいファッションに人々は憧れを抱いていました
美子はおしゃれなファッションを見つけてはすかさずスケッチしていきました>

美子に「引き止めて」と頼まれ
歩き出した外国人に適当な英語で話しかける常子「ハ~イハ~イ…ハロー」

ちゃぶ台でそれぞれの作業をしている3姉妹
洋服のイラストを眺めていた鞠子がはたとペンを走らせる
常子「どう?見出し思いついた?」
鞠子「自信作よ…」とノートに書き込む
それを読む美子「その一瞬は永遠だから」
腕を組みドヤ顔でうなずく鞠子
湯飲みを運んできた君子「どういう意味?」
嬉々と説明する鞠子「この服、若い人向きな感じがしたので
少しでも若々しさが続くように願いを込めてみたんです」
3人の反応は鈍い「ふ~ん…」
鞠子「いや、これは対義結合っていってね
相反する言葉を結び付けて興味をかきたてる手法なの」
(3人)「ふ~ん…」
常子「…さすがね、鞠ちゃん」
美子「うん、あ…じゃあこの服の見出しは?」と別のイラストを見せる
鞠子「これは…これ」
読んでみる常子「その彩りが時を止める」
またも微妙な反応の3人
君子「えっと…意味は?」
鞠子「意味?…意味は…気にしないで下さい
言葉の響きと美しさが大事だと思うの」
(一同)「あ~」
美子「言われてみるとそうかもね」
鞠子「うん」
常子「うん、さすがね鞠ちゃん」
腕を組み笑う鞠子「でしょ?」
君子「うん、何より鞠子が生き生きしてるのがうれしいわ」
「私もとてもやりがいを感じています
今まで学んできた全てを出すつもりだから」と家族の顔を見渡す鞠子
(一同)「ふ~ん」
鞠子「ちょおっとぉ!冷やかさないで」
常子も幸せそうに笑っている

闇市、新生マーケットの看板
露店の男を再び訪ねる3姉妹と鉄郎だが紙の値段が500円だと聞き驚く
値引きはできないという言う男に常子たちが困っていると
水田が現れそれは正規でも売っている仙花紙だと説明する
水田「わざわざここで10倍の値段で買う必要なんてないんです」
じゃあ正規ルートで買うかと一同が立ち去ろうとすると男が慌てる
泣きが入ったように「仕入れたもんは買ってもらわねえと困るんだよ…」
今度は逆に笑顔で足元をみる常子「う~ん…それは…値段次第です」

帰り道、紙の束を抱いて歩く姉妹たち
鞠子「まさか40円とは
言い値で売ってもらえるなんてありがとうございました」
水田「あっ、いやいやこの前は僕が助けて頂いたんで」
鞠子「助けたなんてそんな…」
水田「えっと…じゃあ」
鉄郎「おう」
会釈する3姉妹

<この水田、常子たちを大いに助けると言いましたが
この事ではありません、それはまだまだ先の話>

荷物を抱え陽気に歩く常子たち

(つづく)

冒頭の君子の「やりなさい!」が良い感じ
常子が楽天的な分鞠子と美子は心配性なところがあるが
常子の大胆なところは母親譲りなのかもね
なんたって君子は駆け落ちして家を捨てたほどの人だから

水田と出会うシーンの鞠子がキュートだ
水田が一目惚れするシーンなので男が好きそうな感じを考えた
演技プランなのだろうが話し方から歩き方まで子どもっぽくなっている
男はやっぱりああいうのに弱いよねw
自分も水田と一緒にやられてしまったよ…

水田はいい人そうだ
鞠子のお相手になるのかどうかは知らないが
もしそうなってもまあ…許そう

会議する3姉妹のシーンが楽しそうだった
対義結合って難しい言葉だねえ
つまり「一瞬」と「永遠」が相反する言葉という事か…
勉強になりますっ

常子が鞠子に「さすがね」を連発していたのは
ネガティブから復活した妹を大事に育てたいという思いからだろうか?
君子も鞠子が生き生きしてるのが何より嬉しいと言ってたね
戦中戦後と悲惨な時代の描写でネガい役回りだった鞠子には
また少女の頃のような常子を支える参謀のようになってほしい





2016年7月6日水曜日

とと姉ちゃん(81)悲惨な境遇の綾、いつか私も太陽に…~起業を決意する常子、大金持ちになれるかも!

ボロ家の玄関のような場所 
そこに置かれた木箱を前に向かい合って座る常子(高畑充希)と綾(阿部純子) 
常子「怖い大家さんね…」 
綾「しかたがないわよ、こっちが悪いんだから」 
常子「でもあんな言い方…」 
綾「あの方も戦争で旦那さんとお子さん亡くして
一人で生きていかなきゃいけないから必死なのよ」 
登志子(中村久美)「常子さん、本当にお久しぶり
お変わりなさそうで何よりです」と席につく 
常子「ありがとうございます」 
登志子「どうぞ、白湯しかありませんが」と湯飲みを置く 
常子「すみません、頂きます」 
綾「…今日はどうしたの?何か御用が?」 
「あ…あの…これを渡そうと思って」と木綿の束を取り出し台の上に置く常子 
「よかったら太一君のおむつに使って」 
綾が傍らで眠る太一を見る 
そしてうつむき木綿を手に取り胸に抱き「ありがとう」と頭を下げる 
綾は少し涙ぐんでいるようだ
綾「お母様、少しいい?常子さんと2人でお話ししたいの」
「ええ」と常子に会釈して登志子が席を立ち表へ出ていく
(長い沈黙)
常子「どうしたの?」
「…本当はあなたに」と、うつむいていた綾が少し顔を上げて
「うちに来てほしくなかった…」
常子を正視できないのか目が泳いでしまっている
哀しそうに綾を見つめる常子
綾「こんなに惨めな暮らしをしてるってあなたに見られたくなかったの…
母だってもうずっとあんな感じよっ
口数は減っていつも暗い顔して口を開けば口論になるばかり
…こんなつらい状況で何のために必死になって生きてるのか…」
言葉もなく聞いているしかできない常子
「ごめんなさい…」と立ち上がった綾が
荷物の中からボロボロの雑誌を取り出し常子に見せる「これ覚えてる?」
常子「青鞜…綾さんまだお持ちだったの」
綾「ええ…あの日、東堂先生が教えて下さったのよね…」

(回想シーン)
教壇に立つ東堂(片桐はいり)
「元始 女性は実に太陽であった
真正の人であった
今 女性は月である…」

綾「あれからもう10年近くたつけど私はいまだこの言葉のとおり…
太陽じゃなくて月のままだわ…
だけどこの言葉があるから頑張れているわ
女はもともと太陽だったって思うと
いつか私も太陽にって元気が出てくるの」
やっと笑顔を見せた綾に少しだけ常子も微笑む
「おかげですっかりボロボロだけど…」と手にした青鞜を眺める綾
「私にとってこれが唯一の心のよりどころ…」
綾と青鞜を見つめている常子

闇市の雑踏を歩く常子
(鉄郎の言葉 お前の稼ぎで一家を養ってんだぞ
もっと金稼ぐ事を真剣に考えろ
綾の言葉 私にとってこれが唯一の心のよりどころ)

自宅で机に向かい何かを書いている常子
机に立てた3つの目標を見る

朝、仏壇に手を合わせる常子
君子の声がする「常子、遅れるわよ」
「は~い」と答えた常子が目を開けて竹蔵の写真を見つめ「行ってきます」

甲東出版の仕事終わり
皆が帰り支度をする中、常子が切り出す
「あの…皆さんにお話があります」
谷(山口智充)「どうした?改まって」
常子「私…甲東出版を辞めさせて頂きたいんです」
五反田(及川光博)「え?おいおい何の冗談だい?」
「冗談ではありません」と席に戻り
バックから退職願を取り出した常子が谷にそれを手渡す
谷「どうして?」
常子「理由は2つあります
まず1つ目は…お金です」
相田「お金?」
うなずく常子「はい、時代が目まぐるしく変わっていく中
今、母と妹は職がなく私一人の稼ぎで暮らしていくのはとても厳しいです
このままでは私はみんなを守れません、だから…
そして2つ目は…本を作りたいからです」
五反田「うん?」
常子「五反田さん以前、作りたい雑誌を作ろう…とおっしゃいましたよね」
五反田「うん…ああ、うん」
常子「あの日以来、私ずっと自分が作りたいものは何か考えていたんです
それで今までの自分の人生を振り返って
頭の中で思いを巡らせていたらようやく答えに…」
谷「いや…ちょっと待ってくれ
だったら辞めずにここで本を出せばいいじゃないか」
常子「雇って頂いている立場ではたとえ本が売れても稼ぐ事ができません」
谷「何だよ…どういう事だ?」
常子「自分で会社を作って出版しようと思うんです」
五反田(はぁ?)
谷「こりゃあ驚いた…」
五反田「教えてくれ…君が作りたい本ってのは一体…」
常子「女の人の役に立つ雑誌です」
谷「女の人の役に…」
常子「戦争が終わった今
たくましく前を向いて必死に生きている女の人がいる一方で
戦争に翻弄されて苦しんでいる女の人が
日本にはまだ数多くいらっしゃると思うんです
物がない、お金がない、どうやって生きていけばいいのかわからない
こんな状況で戦争によってひどい目に遭った女の人の手助けをしたいんです
だから…」
谷「そんな彼女たちの役に立つ雑誌か」
常子「はい」
五反田が納得したようにうなずく
谷「しかし女の君にそんな事が本当に…
第一、会社を起こすお金はあるのか?」
常子「いえ、蓄えはあまりありません
なのでまずは小規模の雑誌になると思います」
相田「女が出版社起こすなんて聞いた事もない…
失敗する可能性もあるんだよ」
「それは分かってます
でも…このご時世もう既に失敗してるようなものじゃないですか」
と笑う常子に男たちが顔を見合わせる
常子「黙って配給を待っていたら餓死してしまうような世の中ですよ
闇市に行けば私たち女のお給金と同じかそれよりも高い値段で
お米や日用品や食料品が売られています
このまま何もしない方が怖いと思ったんです
…それにもしこの賭けに出て当たれば大金持ちになれるかもしれない
今まで苦労かけてきた家族を喜ばす事ができるかもしれない」
五反田「ハハッ、大金持ちか」
嬉しそうに常子がうなずく
五反田(谷に)「どうやら覚悟は決まってるようですよ」
「ああ」と谷がうなずく
「今までたくさんお世話になったのにすみません」と頭を下げる常子
谷「確かに世間がメチャクチャな今こそ好機かもしれん」
驚いたように顔を上げた常子が谷を見る
谷「君がそう思ったならやれるだけやってみろ
失敗したらまた戻ってくればいい」
笑顔で「はい」と何度もうなずいた常子が鼻をすすり上げる
「皆さんに教わった事を糧にして一生懸命頑張ります!」
と晴れやかな笑顔でもう一度うなずく常子

(つづく)

綾の「うちに来てほしくなかった」はよくわかる
惨めな暮らしを同級生とかに見られたくないよね
綾はお金持ちでしかも優秀だったからなおさらだろう
あるよね…同窓会に行きたくないな~って時w

小橋姉妹は朝出かける時に仏壇に手を合わせるのが日課のようだが
常子の人生の節目の時にこの描写があるようだ

常子が退職の理由にまず、お金ですとハッキリ言ったのは良かった
綺麗事の理想みたいな話じゃなくて雑誌を売って自分で儲けたいと
これはドラマとしても劇中としても両方の意味で

2つ目の理由は作りたい雑誌を作るためと言ったけど
「辞めずにここで作れば…」と言う谷に
「雇って頂いている立場ではたとえ売れても稼ぐ事ができません」
と答えているから実質お金の問題だけだよねw

現実の世界でも独立話がこじれる事はよくあるけど
やっぱりお金が絡むと人間ガチで向き合う事になるからね
谷はさっぱりとしたいい人で円満退社できそうなので良かった
常子のよき理解者である五反田も後押ししてくれた
(どうやら覚悟は決まってるようですよ)

しかしあの場で「大金持ちになれるかも」発言はすごいねw
これはドラマならではで現実ではちょっとないだろうなぁ…
よほど雇用主と良好な人間関係じゃないと言えないよね

ああ、それと常子に少しだが蓄えがあると聞いてビックリ
もっとカツカツの生活だと思っていたが常子は意外にしっかり者だ
そういえばキャラメルも最後の一粒を残していたっけ…


2016年7月5日火曜日

とと姉ちゃん(80)時代に翻弄される女たち…逆にチャンス?と揺れる常子

小橋家で挨拶する綾(阿部純子)「ご無沙汰しております」 
君子(木村多江)「お久しぶりです」 
鞠子(相楽樹)「お子さんですか?」 
膝に小さな男の子を抱えた綾「ええ、太一といいます」 
美子(杉咲花)「こんにちわ」 
太一が笑ったようで一同も笑う 
常子(高畑充希)が湯飲みを運んでくる「ごめんなさいねお白湯しかなくって」 
綾「ううん」 
鉄郎(向井理)「常子の友達かい?」 
常子「あっ、叔父さん初めてでしたっけ?」 
鉄郎「うん」 
綾「村野綾と申します、叔父様のうわさはかねがね聞いておりました」 
鉄郎「どうせろくな話じゃねえだろ?」 
綾「はい、おっしゃるとおりです」 
鉄郎「そんなはっきり言うなよ」 
(一同の笑い声) 
鉄郎が「太一っつうのか、よっしゃおっちゃんと遊ぶか」と子どもを預かる 
綾「すぐにお会いしに来たかったんだけどそうもいかなくて」 
常子「あっ、どうしてここが?」 
常子からの手紙を取り出す綾
「これ、引っ越しする時くれたでしょ?住所書いてあったから」 
常子「ああ…」 
君子「名古屋にいらしたのよね?」 
綾「はい」 
鞠子「旦那様は軍医だって…」 
美子「大陸にいらしたんですよね?」 
綾「ええ、だけど戦争中病で亡くなりまして
一度は名古屋に戻ったんです、でもすぐに満州にまた…
最後は向こうでしたので死に目にもあえず」
常子「ご苦労なさったのね…」
綾「なんとか息子と2人で実家に帰ったんだけど空襲で焼けちゃっててね
何にも残ってなかったわ…
母は無事だったんだけど父は最期まで家を守ろうとしたらしく
焼けた家とそのまま…」
常子「そうだったの…」
君子「ご愁傷さまでございます」と、挨拶する一家
綾も手をついて「お心遣いありがとうございます」と返す
「今は母と3人で蒲田近くに間借りして暮らしています」
常子「お仕事は?」
首を振る綾「なかなか見つからなくて…
焼け残った帯留めや指輪を売ってなんとか…
太一のためにも頑張らないといけないんだけど」
常子「…何かお力になれる事はないかしら…必要なものとか」
綾「…お言葉に甘えさせてもらうなら布とか浴衣の余りはないかしら」
常子「布?」
綾「私の浴衣も母の浴衣ももうおむつになってしまっていて…」
常子「お安い御用よ浴衣くらいは」
綾「いいの?」
常子「もちろん、フフフ」
君子たちも笑顔でうなずいている
綾「ありがとうございます」
君子「そうだわ綾さん、すいとんぐらいしかないけど召し上がってらして」
常子「そうよ、一緒にどう?」
綾「ありがとうございます」
太一を抱いた鉄郎「よし、夕食はすいとんだってさ、よかったな」

夜道、太一を背負った綾を送る常子
綾「本当にいいのに」
常子「いいのいいのそこまで見送らせて」
綾「やはり訪ねてよかったわ」
常子「ん?」
綾「久しぶりに笑ったわ、持つべきものは学友ね」
常子「私も久々に綾さんにお会いできてよかったわ
それにかわいい太一君にも会えて」
綾「…あのころには想像もできなかったものね…こんなふうになるなんて」
常子「綾さん?」
笑顔を見せる綾「ここまででいいわ」とカバンから布地を取り出し
「これ、本当にありがとうございます」
常子「ううん、困った時はお互いさまでしょ
あっ、そうだ…今度お母様にご挨拶に伺わせてくれない?」
綾「いえ…結構よ」
常子「でも…」
綾「いいの、あなたもお仕事で忙しいでしょ?私も子育てで大変だから」
常子「だったら住所だけでも教えて…お手紙のやり取りくらいしましょうよ」
綾「…うん」

常子が家に戻る
君子「綾さん、元気そうでよかったわね」
常子「はい」
食器を拭いている鞠子「私はつらくなっちゃった」
常子「ん?」
鞠子「綾さんみたいにお金持ちできれいで頭がよかった人でも
苦労してると思うと何だか…やっぱり女って損ね
戦時中、産めよ増やせよで結婚推奨されて子どもつくって
でも夫は戦死、子どもと残されて…そんな人だらけじゃない
大学出してもらってもこうやって仕事にも就けない女もいるし」
君子「何言ってるのよ鞠子
こんな時代になるなんて誰も思わなかったのよ」
鞠子「ごめんなさい…」
常子(明るく)「鞠ちゃん、しまうね」
鞠子「ありがとう」
君子が針に糸を通すのに苦労している
美子が「かか、私が」と針と糸を受け取る
君子「駄目ねえ、もう老眼がひどくなって…」
君子の後ろに座る常子「かか…ごめんなさい」
振り向く君子「常子も何?」
常子「ずっとかかを働かせてしまって…
本当はもう楽させなきゃいけないのに
いくつになっても苦労かけて」
君子「何言ってるのよ、苦労だなんて思ってないわよ」
妹たちもしんみりとした顔になる
横になり顔に本を被せて眠っていたような鉄郎が起き上がる
「おい常子、明日ちょっとつきあえ」
「はい…」と怪訝そうな常子

闇市の雑踏を歩く2人
常子「叔父さん、用って何ですか?
また余計なものでも仕入れようとしてるんじゃ…」
鉄郎「バカ、そんなんじゃねえよ
こいつらの顔見せようと思ってよ」
常子「えっ?」
鉄郎「こいつらこいつら…俺はこれ見ると胸が高鳴るんだ
みんな生きてるって感じがするじゃねえか」
常子「はい」
鉄郎「それにもう一つ胸が高鳴る事がある…女だよ」
常子「女?」
闇市で声を張って商売している女性たちが周りにたくさんいる
鉄郎「みんな男に言われるままじゃねえ
言い返したり文句言ったりしてんだろ
そんな様子見てたら笑えんだ
戦争の間、男は戦地に行っちまって女だけで守り抜いたって事が
自信っつうかよ、強さにつながったのかもしんねえな
時代は変わったんだ常子
こんなゴチャゴチャな世の中だから女でもやりたい事ができるようになった
女にもチャンスが巡ってきたんだ
今だったらお前も大金つかめるかもしれねえんだぞ
そしたら家族に楽させてやれる」
闇市で働く女性たちを見まわし鉄郎の言葉に何かを思う常子

甲東出版では皆が精力的に活動している
五反田(及川光博)「久々なのに順調順調」
常子「新世界、売れるといいですね」
五反田「「売れれば君の企画も通りやすくなるしね」
「そうですね」と生返事のような常子を気にする五反田
何かを迷っているような常子

<常子の気持ちは大きく揺れ始めていました
このまま甲東出版で働くべきかそれとも…>

闇市を歩く常子に女性たちの姿が映る
赤子を背負って働いている女もいる
屋台では40円だという口紅に高いと文句を言う客の女たち
売り手も女だ「高くないよ!あんた隣の闇市行ってごらんよ
50円で売ってんだよ」
常子を見つけたらしい鉄郎がやって来る
「おい常子、おい常子、仕事帰りに何やってんだ?」
常子「いや…もし出版社を辞めたら何をしようか参考にと思いまして」
鉄郎「おぉ~そうか、ついにお前も!」
常子「まだ決めた訳じゃないんです、もしそうなったらという話です」
鉄郎「まあ、そう考え始めただけでも大きな一歩じゃねえか
連れ出したかいがあったな」
と、鉄郎が脇に抱えたものを見る常子「叔父さん、それって…」
鉄郎「ああ…木綿だよ、偶然安く手に入ったんだ」
常子「その木綿、少し分けて頂けませんか?」
鉄郎「ん?」
常子「綾さんにあげたいんです」
鉄郎「いや…いくら何でも人がよすぎんだろぉ
友達だからって何でもくれてやる義理はねえぞ」
「あるんです、女学校の時…」と試験不正のエピソードを話す常子
「私、恩返しするって言ったのに何もできなくて…だからせめて…」
「…半分だけだぞ」と鉄郎が木綿を渡す
「ありがとうございます!」と笑顔の常子

バラック建てのような粗末な小屋が並ぶ通り
常子がメモの住所を頼りに綾の住まいを探している
「坂梨」という表札の下に「村野」と書いた貼り紙のある家に辿り着く
と、中から女の怒鳴り声が聞こえてビクッとなる常子
「何回言ったら分かるんだい!こっちの部屋に入れんじゃないよ!」
常子がガラス戸に近づき中を覗く

綾「すみませんでした」
「またお漏らしまでしやがって、さっさと洗濯しな!」と女が
玄関すぐの土間に正座している綾と
並んで太一を抱いている登志子(中村久美)に着物を投げつける
それが体に当たるが土下座するように頭を下げている綾
女「今度やったら出ていってもらうからね!」
登志子「申し訳ございませんでした」
女が奥に去り綾が投げつけられた着物を手に立ち上がり振り向いて
戸の向こうに立つ常子と目が合う
力なく会釈する常子と驚いてそして目をふせる綾
綾の悲惨な境遇を目にして動揺しているような常子

(つづく)

今回も鞠子はネガティブ全開だ
綾のように時代に翻弄された女はいっぱいいる…女は損だと語り
最後には大学出ても就職できない…と自虐まで入って
君子にたしなめられてたね
まあ常子が能天気な前向きキャラだから
その分鞠子がネガい描写を引き受けるという事だろう

小心者の常子は怒鳴り声を聞くと勘違いしてすぐに謝ってしまったりするが
このビクッとした時の常子がいちばん可愛い
ビクつき美人だね

それにしても綾の現実はショックだ
あの玄関みたいなところで暮らしているのかな?
24話で森田屋2階の常子たちの狭い部屋を訪ねた綾が
「私には絶対に無理な生活」だと言ったのも伏線だったみたい
中田登志子って…綾の母親は中村久美さんだったっけ?
まあ綾の件も常子が起業を決意する理由のひとつになるのだろう

 

2016年7月4日月曜日

とと姉ちゃん(79)戦後も食糧難が続く小橋一家~懐かしい人々と再会を果たす常子だが…

昭和二十一年二月 

<長かった戦争が終わったあの夏の日から半年 
国民は新たな戦いを強いられていました 
食糧や物資などありとあらゆるものが不足していたため
闇市に人々が群がり一日一日を必死に生きていました 
それは常子たちも同じで…> 

闇市に繰り出した小橋一家 
常子「鞠ちゃんとよっちゃんはあっち探してきて…
とにかく食糧を手に入れましょう 
かかと私はあっち探しましょう」 

鞠子(相楽樹)と走る美子(杉咲花)「小麦かお米が手に入るといいけど」 

店前で押し合う人の群れを前に君子(木村多江)「常子、行きましょう」 
常子「はい」と、突入する2人 
君子が弾き飛ばされて転ぶ「あ~っ!痛っ…」 
必死で頑張る常子だが目の前で品物が無くなる 

「とと姉、かか!」と、鞠子たちがやって来る 
常子「どうだった?」 
鞠子「向こうも売り切れてしまったわ…そっちは?」 
常子「全然駄目…」 
美子「はぁ…今日も買えなかった」 
君子「他、あたりましょう!」
娘たちが「はい!」とうなずき歩き出す小橋一家 

タイトル、主題歌イン 

<このころ戦争で職を失った人や外地からの引き揚げ者
そして復員兵など日本各地で職を求める人々があふれ返っていました
この影響を受けたのが女性たちで大学を出た鞠子といえども
勤め先は見つかりませんでした
君子と美子は着物の仕立て直しや縫製の仕事を請け負っていましたが
稼ぎはあまりありませんでした
一家を支えていたのは常子が貸本業で得た僅かな収入でした>

闇市の食堂で2椀の汁を4人で分け合う小橋一家
美子が椀を回すが「いいからもっと食べなさい」と返す君子
美子「でもそしたらもう無くなってしまいます…」
君子「いいの、ほら」
しゃもじですくった汁の具を見つめる鞠子
「やっと食べ物にありつけても何が入ってるか分からないシチュー…」
常子「しかたないわよ…お金もないんだし食べられるだけでよしとしなきゃ」
鞠子「私がちゃんと仕事見つけられたらな…はい」と常子に椀を回す
常子「焦らなくて大丈夫よ」
と、「お~お~おい、ここにいたのか」と鉄郎(向井理)が現れる
常子「あっ、どうでした?」
美子「食べ物は?」
「ああ、金もねえしこれが精いっぱいだほら」
とリュックの中のサツモイモや缶詰を見せる鉄郎
君子「鉄郎さん、ありがとうございます」
常子「ありがとうございます」
鞠子「でも…何日もつかな」
不安そうな妹にかける言葉が出てこない常子
鉄郎「…どうすりゃいいんだろうなあ
大蔵大臣は1000万の国民が餓死するかもって言ってたしよ
律儀に配給を待ってた大学教授が餓死したって話もあるらしい
戦時中から国の呼びかけ守って闇の食糧には手をださず
配給と庭の野菜だけで生きようとしてたらしい」
美子「配給なんか知らせが回ってきてもお店に行ったら売り切れだから…」
鉄郎「…常子、いい加減やめろ貸本なんて」
常子「え…何ですか?急に」
鉄郎「あんなちっぽけな稼ぎのために続ける必要なんかねえだろ」
常子「でも私は甲東出版を守るっていう約束がありますから」
鉄郎「んな事言ったってな食えなきゃ死ぬんだぞ」
鞠子「けど仕事探そうったって見つからないんですよ」
鉄郎「んなもん本気で探しゃ…」
立ち上がり大声を出す鞠子「叔父さんは男だから分からないんです!
女が働く場所はほとんどないんです
仕事に就いていた人も復員してきた男の人たちに職を奪われて…
簡単に仕事やめろなんて言わないで下さい」
鉄郎「分かったよ!うるせえな…」

と、「入ったよ!早いもん勝ちだ~!」と雑誌売りの声が市に響く
女性のイラストが表紙の「東京ユーモア」という雑誌などが
飛ぶように売れていく

美子「カストリ雑誌でもあんなに…」
鞠子「今は内容どうこうより本全般が売れてるらしいわ」
君子「みんな娯楽に飢えてるのね」
鉄郎「常子」
常子「はい」
鉄郎「出版社にいてよかったなあ」
常子「えっ?」
鉄郎「何でもいいから本作って出せ」
鞠子「さっきはやめろって言ったのに」
鉄郎「俺が言ったのはみみっちい商売はやめろって話だ
見てみろよ、今本出しゃ売れんだぞ、早く出版再開しろ」
常子「そうは言っても今は私一人ですから…」

<寒さ厳しいある日の朝…>

出勤した常子が鍵を持ち表の扉を開けようとしている
後ろから近づいた男が常子の目を両手で塞ぎ「静かにしろ」と脅す
鍵を落とす常子
男「金を出せ」
「五反田さん?…そうですよね!」と、振り向く常子
五反田(及川光博)「何だ、分かっちゃったか」
常子「戻ってらしたんですね!お帰りなさい」
五反田「ああ、ただいま…一人で留守番させて悪かったね」
笑顔の常子「ご無事で何よりです」
「まあ年だったのが救いだったよ、体は苦しかったけどね」と鍵を拾い
扉を開けて中に入った五反田が懐かしそうに社内を見渡す
「ずっと青森の大湊の基地にいたんだ
編集者って事で速記要員にさせられて
それ以外の時間はずっと上官のために風呂の準備さ、フフッ…
社長も相田も間もなく戻ってくる」
常子「えっ」
五反田「富樫は療養中だがいずれ復帰すると手紙が来た」
少し声が詰まる常子「皆さん…ご無事だったんですね」
「おいおい、泣くなら僕の胸で…」と手を広げる五反田に
両手でストップの仕草をして「結構です、フフフ」と笑う常子
五反田「…これで作りたい雑誌を作れるね」
「はい」と元気よく答えた常子が五反田に社判を返す
それを見つめる五反田「ありがとう」
笑顔の常子がうなずく

一か月後

貸本のビラを剥がす常子「いよいよか…」

<ひとつき後には相田、続いて谷が復員しました>

社判を見つめる谷(山口智充)「何だか妙な感じだな」
机を囲む五反田、常子、相田、谷の4人
常子「また皆さんとこうやって話し合える日が来るなんて…」
谷が入院中に読書に救われたエピソードを披露する
常子「私も実感しました
闇市で本に殺到する方々や戦時中本を借りに来て下さる方々を見ていて」
「だから雑誌を出すのは早い方がいい…7月の発刊を目指す!」と谷
五反田「えっ…いやしかし紙もなければ原稿も何もなし
昔世話になった先生の多くは戦死か行方不明で…」
谷「お前の小説があるじゃないか」
五反田「はい?」
常子「小説?」
谷「こいつ本当は小説家志望なんだよ」
常子「えっえっえっ?」
谷「こう見えてロマンチックで美しい物語書くんだよ」
「え~」と口を手で押さえて笑顔の常子
谷「書きためてあるのは知っとるぞ
どうだ?自分の作品を世の中にそろそろ出してみては…
編集の仕事をしながらでもお前だったらできるだろう
是非、うちで連載してくれ」
「ありがとうございます」と決意したようにうなずく五反田
常子も嬉しそうに笑っている
谷「よし決まりだ!他にも数人話はつけてある
新世界の再開に向けてすぐさま動き出そう!」
(五反田と相田)「はい」と席を立つ
残った常子が谷に「あ…あの…
新しい企画を立ち上げる訳ではないんですよね?」
谷「ああ、まずは今までやってきた
文芸誌新世界ここにありというとこを見せつけねば」
常子「確かにそうですよね…」
常子の表情を気にしているような五反田

小橋家
鞠子は新聞の求人欄をチェックしている
常子「いよいよなんです!いよいよ!
皆さんが戻ってくるのを待ってたかいがありました」
君子「よかったわね、また雑誌が出せる事になって」
君子と美子は縫い物をしている
美子「闇市で見たようにワ~ッて売れるんだろうね」
常子「えっ…どうしようそんなに売れちゃったら、フフフッ」
足の爪を切っている鉄郎がはしゃいでいる常子を横目で見る
と、膝に手を置き目をつむる鞠子
常子「鞠ちゃんどうかした?具合悪い?」
鞠子「大丈夫よ、こうしてるとお腹空いてつらいのが紛れるから」
(常子たち)「…」
鉄郎「なあ常子」
常子「はい」
鉄郎「雑誌出せるって喜んでるが売れたらお前に金が入んのか?
給料が倍になんのか?」
常子「それは…」
鉄郎「いいか?お前の稼ぎで一家を養ってんだぞ
もっと金稼ぐ事を真剣に考えろ」
常子「…」

と、「ごめんください」と戸を叩く音がする
常子が表に出ると小さな子どもを連れた女が立っている
「お久しぶりです」
常子「えっ?」
「卒業式の日以来だからもう9年ね」と親し気に笑う女性
常子「綾さん?綾さんなのね?あ~!」と抱きしめる
「え~元気だった?」
綾(阿部純子)「常子さんもお変わりなくて」
もう一度綾の顔を確認して満面の笑みで抱きしめる常子「綾さんだ!」

(つづく)

冒頭のシーンの君子が元気だ
髪に白いものが増えているが群衆に弾かれ転ばされながらも
食糧獲得のために娘たちを引っ張るように歩き出す

それに比べて鞠子がネガく描かれている
前回も栄養不良から湿疹に苦しんでいたが
今回は就職できない事から自信を失くしてイライラしているのかもしれない

それにしても汁の具にケチをつけてそのまま常子に渡すなよ鞠子
これから常子が食べるんだからw
あの具は丸い練り物のように見えたけど何だったんだろ?
(追記:2ちゃんのぞいたらあれは人参のヘタだと書き込みがあった)

カストリ雑誌とは太平洋戦争終結直後の日本で
出版自由化(但し検閲あり)を機に発行された大衆向け娯楽雑誌
これらは粗悪な用紙に印刷された安価な雑誌で
内容は安直で興味本位なものが多く
エロ(性・性風俗)・グロ(猟奇・犯罪)で特徴付けられる
具体的には、赤線などの色街探訪記事、猟奇事件記事、
性生活告白記事、ポルノ小説などのほか、
性的興奮を煽る女性の写真や挿絵が掲載されたものとのこと(wikiより)

五反田との再会のシーンは良かった
セクハラ→断る で一気にあの頃に戻れたような2人はいい関係だ

五反田が小説家デビューしそうだけど
ついでに鞠ちゃんもどさくさでデビューさせちゃえ常子

新世界を再開するという谷に「新しい企画を立ち上げる訳では…」と問う
常子の表情を心配しているのも五反田が良き理解者であるからだろう
出征する時に常子と交わした約束
「戦争が終わった後はどんな雑誌にするか考えておいてくれ」の事もある
このあたりは常子が出版社を起ち上げる伏線になるのかな

伏線といえば鉄郎の「もっと金稼ぐ事考えろ」もそうなのだが
お前には言われたくないよとツッコミたくなるよね
いや鉄郎はいつもそう考えてきたか…結果が出なかっただけでw

綾は制服と昔の髪型が似合っていなかったのか
今回のやつれた姿のほうがかわいく見えた