2016年7月4日月曜日

とと姉ちゃん(79)戦後も食糧難が続く小橋一家~懐かしい人々と再会を果たす常子だが…

昭和二十一年二月 

<長かった戦争が終わったあの夏の日から半年 
国民は新たな戦いを強いられていました 
食糧や物資などありとあらゆるものが不足していたため
闇市に人々が群がり一日一日を必死に生きていました 
それは常子たちも同じで…> 

闇市に繰り出した小橋一家 
常子「鞠ちゃんとよっちゃんはあっち探してきて…
とにかく食糧を手に入れましょう 
かかと私はあっち探しましょう」 

鞠子(相楽樹)と走る美子(杉咲花)「小麦かお米が手に入るといいけど」 

店前で押し合う人の群れを前に君子(木村多江)「常子、行きましょう」 
常子「はい」と、突入する2人 
君子が弾き飛ばされて転ぶ「あ~っ!痛っ…」 
必死で頑張る常子だが目の前で品物が無くなる 

「とと姉、かか!」と、鞠子たちがやって来る 
常子「どうだった?」 
鞠子「向こうも売り切れてしまったわ…そっちは?」 
常子「全然駄目…」 
美子「はぁ…今日も買えなかった」 
君子「他、あたりましょう!」
娘たちが「はい!」とうなずき歩き出す小橋一家 

タイトル、主題歌イン 

<このころ戦争で職を失った人や外地からの引き揚げ者
そして復員兵など日本各地で職を求める人々があふれ返っていました
この影響を受けたのが女性たちで大学を出た鞠子といえども
勤め先は見つかりませんでした
君子と美子は着物の仕立て直しや縫製の仕事を請け負っていましたが
稼ぎはあまりありませんでした
一家を支えていたのは常子が貸本業で得た僅かな収入でした>

闇市の食堂で2椀の汁を4人で分け合う小橋一家
美子が椀を回すが「いいからもっと食べなさい」と返す君子
美子「でもそしたらもう無くなってしまいます…」
君子「いいの、ほら」
しゃもじですくった汁の具を見つめる鞠子
「やっと食べ物にありつけても何が入ってるか分からないシチュー…」
常子「しかたないわよ…お金もないんだし食べられるだけでよしとしなきゃ」
鞠子「私がちゃんと仕事見つけられたらな…はい」と常子に椀を回す
常子「焦らなくて大丈夫よ」
と、「お~お~おい、ここにいたのか」と鉄郎(向井理)が現れる
常子「あっ、どうでした?」
美子「食べ物は?」
「ああ、金もねえしこれが精いっぱいだほら」
とリュックの中のサツモイモや缶詰を見せる鉄郎
君子「鉄郎さん、ありがとうございます」
常子「ありがとうございます」
鞠子「でも…何日もつかな」
不安そうな妹にかける言葉が出てこない常子
鉄郎「…どうすりゃいいんだろうなあ
大蔵大臣は1000万の国民が餓死するかもって言ってたしよ
律儀に配給を待ってた大学教授が餓死したって話もあるらしい
戦時中から国の呼びかけ守って闇の食糧には手をださず
配給と庭の野菜だけで生きようとしてたらしい」
美子「配給なんか知らせが回ってきてもお店に行ったら売り切れだから…」
鉄郎「…常子、いい加減やめろ貸本なんて」
常子「え…何ですか?急に」
鉄郎「あんなちっぽけな稼ぎのために続ける必要なんかねえだろ」
常子「でも私は甲東出版を守るっていう約束がありますから」
鉄郎「んな事言ったってな食えなきゃ死ぬんだぞ」
鞠子「けど仕事探そうったって見つからないんですよ」
鉄郎「んなもん本気で探しゃ…」
立ち上がり大声を出す鞠子「叔父さんは男だから分からないんです!
女が働く場所はほとんどないんです
仕事に就いていた人も復員してきた男の人たちに職を奪われて…
簡単に仕事やめろなんて言わないで下さい」
鉄郎「分かったよ!うるせえな…」

と、「入ったよ!早いもん勝ちだ~!」と雑誌売りの声が市に響く
女性のイラストが表紙の「東京ユーモア」という雑誌などが
飛ぶように売れていく

美子「カストリ雑誌でもあんなに…」
鞠子「今は内容どうこうより本全般が売れてるらしいわ」
君子「みんな娯楽に飢えてるのね」
鉄郎「常子」
常子「はい」
鉄郎「出版社にいてよかったなあ」
常子「えっ?」
鉄郎「何でもいいから本作って出せ」
鞠子「さっきはやめろって言ったのに」
鉄郎「俺が言ったのはみみっちい商売はやめろって話だ
見てみろよ、今本出しゃ売れんだぞ、早く出版再開しろ」
常子「そうは言っても今は私一人ですから…」

<寒さ厳しいある日の朝…>

出勤した常子が鍵を持ち表の扉を開けようとしている
後ろから近づいた男が常子の目を両手で塞ぎ「静かにしろ」と脅す
鍵を落とす常子
男「金を出せ」
「五反田さん?…そうですよね!」と、振り向く常子
五反田(及川光博)「何だ、分かっちゃったか」
常子「戻ってらしたんですね!お帰りなさい」
五反田「ああ、ただいま…一人で留守番させて悪かったね」
笑顔の常子「ご無事で何よりです」
「まあ年だったのが救いだったよ、体は苦しかったけどね」と鍵を拾い
扉を開けて中に入った五反田が懐かしそうに社内を見渡す
「ずっと青森の大湊の基地にいたんだ
編集者って事で速記要員にさせられて
それ以外の時間はずっと上官のために風呂の準備さ、フフッ…
社長も相田も間もなく戻ってくる」
常子「えっ」
五反田「富樫は療養中だがいずれ復帰すると手紙が来た」
少し声が詰まる常子「皆さん…ご無事だったんですね」
「おいおい、泣くなら僕の胸で…」と手を広げる五反田に
両手でストップの仕草をして「結構です、フフフ」と笑う常子
五反田「…これで作りたい雑誌を作れるね」
「はい」と元気よく答えた常子が五反田に社判を返す
それを見つめる五反田「ありがとう」
笑顔の常子がうなずく

一か月後

貸本のビラを剥がす常子「いよいよか…」

<ひとつき後には相田、続いて谷が復員しました>

社判を見つめる谷(山口智充)「何だか妙な感じだな」
机を囲む五反田、常子、相田、谷の4人
常子「また皆さんとこうやって話し合える日が来るなんて…」
谷が入院中に読書に救われたエピソードを披露する
常子「私も実感しました
闇市で本に殺到する方々や戦時中本を借りに来て下さる方々を見ていて」
「だから雑誌を出すのは早い方がいい…7月の発刊を目指す!」と谷
五反田「えっ…いやしかし紙もなければ原稿も何もなし
昔世話になった先生の多くは戦死か行方不明で…」
谷「お前の小説があるじゃないか」
五反田「はい?」
常子「小説?」
谷「こいつ本当は小説家志望なんだよ」
常子「えっえっえっ?」
谷「こう見えてロマンチックで美しい物語書くんだよ」
「え~」と口を手で押さえて笑顔の常子
谷「書きためてあるのは知っとるぞ
どうだ?自分の作品を世の中にそろそろ出してみては…
編集の仕事をしながらでもお前だったらできるだろう
是非、うちで連載してくれ」
「ありがとうございます」と決意したようにうなずく五反田
常子も嬉しそうに笑っている
谷「よし決まりだ!他にも数人話はつけてある
新世界の再開に向けてすぐさま動き出そう!」
(五反田と相田)「はい」と席を立つ
残った常子が谷に「あ…あの…
新しい企画を立ち上げる訳ではないんですよね?」
谷「ああ、まずは今までやってきた
文芸誌新世界ここにありというとこを見せつけねば」
常子「確かにそうですよね…」
常子の表情を気にしているような五反田

小橋家
鞠子は新聞の求人欄をチェックしている
常子「いよいよなんです!いよいよ!
皆さんが戻ってくるのを待ってたかいがありました」
君子「よかったわね、また雑誌が出せる事になって」
君子と美子は縫い物をしている
美子「闇市で見たようにワ~ッて売れるんだろうね」
常子「えっ…どうしようそんなに売れちゃったら、フフフッ」
足の爪を切っている鉄郎がはしゃいでいる常子を横目で見る
と、膝に手を置き目をつむる鞠子
常子「鞠ちゃんどうかした?具合悪い?」
鞠子「大丈夫よ、こうしてるとお腹空いてつらいのが紛れるから」
(常子たち)「…」
鉄郎「なあ常子」
常子「はい」
鉄郎「雑誌出せるって喜んでるが売れたらお前に金が入んのか?
給料が倍になんのか?」
常子「それは…」
鉄郎「いいか?お前の稼ぎで一家を養ってんだぞ
もっと金稼ぐ事を真剣に考えろ」
常子「…」

と、「ごめんください」と戸を叩く音がする
常子が表に出ると小さな子どもを連れた女が立っている
「お久しぶりです」
常子「えっ?」
「卒業式の日以来だからもう9年ね」と親し気に笑う女性
常子「綾さん?綾さんなのね?あ~!」と抱きしめる
「え~元気だった?」
綾(阿部純子)「常子さんもお変わりなくて」
もう一度綾の顔を確認して満面の笑みで抱きしめる常子「綾さんだ!」

(つづく)

冒頭のシーンの君子が元気だ
髪に白いものが増えているが群衆に弾かれ転ばされながらも
食糧獲得のために娘たちを引っ張るように歩き出す

それに比べて鞠子がネガく描かれている
前回も栄養不良から湿疹に苦しんでいたが
今回は就職できない事から自信を失くしてイライラしているのかもしれない

それにしても汁の具にケチをつけてそのまま常子に渡すなよ鞠子
これから常子が食べるんだからw
あの具は丸い練り物のように見えたけど何だったんだろ?
(追記:2ちゃんのぞいたらあれは人参のヘタだと書き込みがあった)

カストリ雑誌とは太平洋戦争終結直後の日本で
出版自由化(但し検閲あり)を機に発行された大衆向け娯楽雑誌
これらは粗悪な用紙に印刷された安価な雑誌で
内容は安直で興味本位なものが多く
エロ(性・性風俗)・グロ(猟奇・犯罪)で特徴付けられる
具体的には、赤線などの色街探訪記事、猟奇事件記事、
性生活告白記事、ポルノ小説などのほか、
性的興奮を煽る女性の写真や挿絵が掲載されたものとのこと(wikiより)

五反田との再会のシーンは良かった
セクハラ→断る で一気にあの頃に戻れたような2人はいい関係だ

五反田が小説家デビューしそうだけど
ついでに鞠ちゃんもどさくさでデビューさせちゃえ常子

新世界を再開するという谷に「新しい企画を立ち上げる訳では…」と問う
常子の表情を心配しているのも五反田が良き理解者であるからだろう
出征する時に常子と交わした約束
「戦争が終わった後はどんな雑誌にするか考えておいてくれ」の事もある
このあたりは常子が出版社を起ち上げる伏線になるのかな

伏線といえば鉄郎の「もっと金稼ぐ事考えろ」もそうなのだが
お前には言われたくないよとツッコミたくなるよね
いや鉄郎はいつもそう考えてきたか…結果が出なかっただけでw

綾は制服と昔の髪型が似合っていなかったのか
今回のやつれた姿のほうがかわいく見えた

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