2016年7月2日土曜日

とと姉ちゃん(78)小橋家に珍客が~終戦を知った常子はその時…

<激しい空襲が続き全国民の衣食住その全てが戦争の犠牲となった毎日 
沖縄の戦いでも多数の死者を出し日本の敗色がもはや決定的になる中…> 

家の前を常子(高畑充希)がほうきで掃いている 
そこへ三宅(有園芳記)が通りかかり挨拶する常子「おはようございます」 
だが常子に気が付かないといった感じで放心したように通り過ぎる三宅 
その後ろ姿を訝しげに見つめる常子 

<隣組の組長三宅のもとに息子の戦死を伝える知らせが届いたのは
桜が満開に咲き誇る頃でした> 

タイトル、主題歌イン 

昭和二十年初夏 

常子が鞠子(相楽樹)の首筋にベビーパウダーのようなものをつけている
鞠子「よっちゃん、そんな顔しないでよ」
美子(杉咲花)「だって見てるだけで痒そうなんだもの」
鞠子「まあ痒いは痒いけど」
常子「具合は?どう」
鞠子「まだだるい」
常子「そっか」
頭を掻いた鞠子が自分の手を見る「またこんなに抜けた…」
手には束になって抜けた髪の毛
常子「栄養が足りてないだけよ…精のつくもの食べればすぐによくなるわ」
美子「少しくらい何かないかな?栄養あるもの」
常子「どうかな…かかなら知ってるかも」

美子が探すと君子(木村多江)は表でせつ(西尾まり)と立ち話をしている
美子の栄養のあるもの…にせつ「ああ…蜂の子なんていいらしいわよ」
君子「蜂の子?」
せつ「山岡さんのお宅もね、体の悪いお父さんのために
なんとか工面してきたって言ってたもの
でも…この間の警報で盗られちゃったみたいで」
君子「盗られちゃったってどういう事ですか?」
せつ「あら小橋さん知らないの?はやってんのよ」
美子「何がですか?」

汁一椀の食事を囲む一家
常子「泥棒?」
美子「そう、最近横行してるみたい
空襲警報で防空壕に避難してる間に
家に上がって食べ物とかを盗っていくんだって」
常子「ひどい…」
鞠子「敵は米英だけじゃないって事か」
常子「あ…じゃあ食べ物どこかに隠さなきゃ」
君子「ああ…そうね」
美子「食べ物だけならいいけど」
常子「だけ…って?」
美子「泥棒に入るような人なのよ…もし見つかったら何されるか…」
鞠子「そうよね…」
常子「…そんな顔しないでよ
もし誰か来てもこっちは4人いるんだから大丈夫よ…うん?」
君子「そうよね…」

甲東出版 
本にはたきをかけている常子

<その日は本を借りに来る客は一人もいませんでした
早めに出版社を閉め家路を急いでいた時の事です>

空襲警報が鳴り響く中、帰宅した常子も壕へと入る

<再び市街地にB29による爆撃が始まったのです>

壕の中で呼吸の荒い鞠子「はぁ…」
常子「鞠ちゃん大丈夫?」と背中をさする

そのまま夜になり虫の声が聞こえる
美子「もう平気かな?随分たったよね」
うなずく常子たち
頭を掻こうとする鞠子を常子が止める「鞠ちゃん」
君子「もう少しの辛抱よ、そろそろ解除されるわ」
美子「でもこのままだと脱水症状起こして…」
常子「しっ!今、音しなかった?」
美子「音って空襲の?」
常子「違う…ほら…」
4人に聞こえる人の足音
鞠子「誰かいるの?」
美子「もしかして…」
常子「…まさか」
美子「じゃあ誰よ」
犬の鳴き声が聞こえる中、壕の蓋を少し上げて外を覗く常子
国民服のような足元が見える…
蓋を閉め家族に振り向いた常子「誰か…男の人」
美子「やっぱり泥棒だよ」
鞠子「やめてよ!」
美子「だって…」
常子「静かにしなさい」
もう一度蓋を開けて覗いた常子が振り向く「こっち来る」
体を寄せ手を握り合う4人
常子の脳裏に竜子の言葉が甦る「力ずくでやられたよ女なんて弱いもんだ」
鞠子「とと姉…」
美子「とと姉ちゃん…」
常子「大丈夫大丈夫」
男の手が壕の蓋にかかる
目を閉じる常子
そして蓋が開けられ顔を上げた常子たちが見たのものは鉄郎の姿だった
常子「叔父さん…」
鉄郎(向井理)「おう、久しぶり」
安堵のため息をつき力が抜けてしまったような4人
鉄郎「おい、早く出てこいよ」
立ち上がろうとした常子「ちょっ…あっ…」と動けない
鉄郎「ん?どうした?」
常子「すいません、こ…腰抜かしてしまって…」

ちゃぶ台を囲む5人
鉄郎「お前ら大変だったんだな」
鞠子「もう暑いやら怖いやらで…」
鉄郎「まあ…みんな生きてて安心した」
常子「叔父さんもご無事で何よりです」
鉄郎「しっかし大きくなったなあ美子」
美子「叔父さんは老けましたね」
君子「美子っ」
鉄郎「いいんだいいんだ俺みたいな苦労人は
人よりも早く老けちまうのかもしれねえからな」
鞠子「叔父さんの苦労は身から出た錆でしょ」
鉄郎「お前…栄養足りてねえのに口だけは相変わらず達者だな」
(一同の笑い)
鉄郎「あっ、そうそう…ほい」と君子にリュックを渡す
中を覗いた君子「この野菜!どうしたんです?」
鉄郎「ん~自慢じゃねえがことごとく事業が失敗して
知り合いの農家で手伝いしてたんだ、そこで貰った」
美子「卵がこんなに…」
常子「いいんですか?そんなに」
鉄郎「ああ」
美子「まり姉ちゃん、栄養いっぱいとれるね」
鞠子「うん…ありがとう叔父さん」
君子「助かります」
鉄郎「いいって事よ、数少ねえ身内なんだから…
心配だからしばらくここにいてやろうかな
もう年だからな、今更兵隊に引っ張られる心配もないし
男手があった方が何かと便利だろ」
君子「ええ、それはもちろん」
常子「いいんですか?」
鉄郎「ああ、頼まれたら断れねえたちだからよ」
鞠子「そんな事言って他に行く当てがないんじゃないですか?」
鉄郎「まあ…それもあるな」
美子「やっぱり」
常子も笑っている

<この混乱した世の中で
男の人が家庭にいると安心できる事を常子は実感したのです>

縁側で鉄郎の作った鍋を囲む3姉妹
常子「本当においしいんですか?」

<毎日不安を感じていた常子たちは
鉄郎が来てから少し気持ちが楽に過ごせるようになりました>

鉄郎と防空壕にいる小橋一家

鉄郎と薪割りをしている常子

<2か月が過ぎた頃…8月6日広島に9日には長崎に原子爆弾が落とされ
次は東京ではないかと恐怖に震えていました
その一方でこれで戦争が終わるかもしれないという噂も流れていました>

昭和二十年八月十五日

屋根の修理をしている鉄郎と梯子を押さえている常子
三宅がやって来て「小橋さん、正午にラジオを聴くように
重大発表があるそうだ」と言って去る

(ラジオからの玉音放送)「世界の大勢と帝国の現状とに鑑み
非常の措置を以て時局を収拾せむと欲し…」
正座して聴いている5人
美子「よく分からないんだけど…」
鞠子「しっ!」
鉄郎「負けたんだ…」
鉄郎を見る常子「えっ?」
鉄郎「日本が負けた…だから戦争は終わりだ」
神妙な顔の君子
少し不安そうな鞠子
戸惑っているような美子
そして思いつめるような表情の常子

通りに置いたラジオを聴くせつ、稲子、三宅たちは泣き、震えている

美子「日本はどうなるの?」
鞠子「アメリカの軍隊に占領されちゃうのよ」
鉄郎「…まあ、なるようになるだろ
さあて今日中に雨どいも直しちまうか」と席を立つ
鞠子「気楽な人」
美子「…とと姉ちゃんも怖いよね?」

<常子の胸の中で2つの気持ちがせめぎ合っていました
戦争に負けた悲しみと戦争が終わった喜びとが>

突然立ち上がる常子
君子「常子?」
やかんの水を湯飲みに注ぎ飲み干す

<結果、不謹慎だと思いつつも…>

「よ~し…できる…できるわよ!できる!」と妹たちを抱きしめ
「できるできるできるできる!」と笑顔で連呼する常子

<これからはやりたい雑誌をようやく作る事ができるかもしれない
その喜びが体じゅうを駆け巡ったのです>

妹たちにじゃれかかりはじけるように笑い続ける常子と
つられて笑顔になる鞠子と美子

また別の屋外で玉音放送を聴く一団の中
うつむき歯をくいしばるような花山(唐沢寿明)の姿

(つづく)

三宅は可哀想だった
すっかり力を落してしまったようだが…

壕の中で腰を抜かして立てなくなってしまった小心者な常子だけど
妹たちを心配させまいといつも強がっているのが健気だ

超久しぶりの鉄郎の「しっかし大きくなったなあ美子」には笑った
そりゃそうだ、歯磨き事件以来なのだから
美子はあの時はまだ姫奈ちゃんだったw
寅さんだって1年に2回くらいは帰ってくるというのに鉄郎ときたら…

浜松時代にも泥棒出没の噂とともに現れた鉄郎だが
米を勝手に食べて小橋家を食糧危機に陥れたあの時とは違い
逆に食料を持ち込んだね
やっと小橋家を救った鉄郎は髪に白いものが混じっていた(君子も少し前から)

終戦を知って日本が負けた悲しみよりもやりたい事をやれる喜びに
はしゃいでいるような常子だったけど、まあこれはドラマだからこれでいいと思う
実際、当時の日本人がどういう心境だったのか自分にはわからないが
サッカーの日本代表が負けただけで泣きそうになる自分なら多分…


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