2016年7月1日金曜日

とと姉ちゃん(77)お竜との再会~戦争が終わったらしたい事とは?

「お竜さん?」と、駆け寄る常子(高畑充希)
「お竜さん…お竜さん!あ…あの…私です…昔銀座で…」 
竜子(志田未来)「銀座?」 
常子「はい…ビアホールで…」 
竜子「ああ…マフラーの」 
常子「そうです…」 

タイトル、主題歌イン 

小橋家で常子が竜子の右腕に包帯を巻いている
竜子の幼い妹と弟も一緒だ
常子「それじゃあ川崎の親類のところに?」
竜子「ああ、他に頼るところもなくて妹たちと向かってたんだ…あ、痛っ」
常子「あっ、ごめんなさい…この怪我も空襲の時に?」
竜子「まあ…そんなところさ…」
「ねえ、きれいにしてあげるからおねえちゃんのところにおいで」
と、美子(杉咲花)が竜子の妹たちを呼ぶ
竜子「ほら、行ってきな」
鞠子(相楽樹)「さあ、こっちよ」
竜子たちは焼け出されて顔も服も随分と汚れている
君子(木村多江)「その節は娘がお世話になったようでありがとうございました」
少し恥ずかしそうな竜子「お世話なんかしてないよ」
常子「助けて下さったじゃないですか…
あ…よっちゃんがくれたマフラー無くした時もね届けて下すったの」
美子「お世話になりました」
竜子「もうよしとくれ」
「よかったら召し上がって」と君子が椀を3つ出す
「こんな時だから大したもの出せないけど」
椀の中には葉が少し浮いているだけで汁も透明だが喜ぶ竜子
「そんな事ないよ、あたいらにはごちそうさ!」
弟(庸蔵)と妹(和子)が「頂きます!」と汁をすする
竜子「空襲以降…何も口にしてなかったからね」
美子「下町の方はひどかったと聞きました」
竜子「警戒警報が解除されて安心しきったところで…
急に始まったんだ空襲が…
あたいは必死にこいつらに頭巾かぶせて防空壕へ放り込んだ
その直後…家に焼夷弾が落ちてきてね
とてもバケツなんかじゃ消せない火の海だった
このまま庭の防空壕にいたんじゃ焼け死ぬと思って
こいつらと一緒に逃げ出したんだ
どこもかしこもひどい有り様さ…火と煙と死体と悲鳴…
どこに行ってもそれが付きまとう
しまいには何とも思わなくなっちまったけど…」

夜、鞠子と美子が庸蔵と和子を抱いてあやしている
それを見ている竜子「あと何年続くんだろ…」
常子「えっ?」
竜子「戦争さ…あの子たちだっていつか兵隊にされて
どっか遠くに行かされる日が来るんじゃないかって…そう思うと…」
涙ぐんだ竜子が「悪い…」と表に出ていく

常子が様子を見にいくと竜子は家の前の石段にぽつんと座っている
隣に腰を下ろす常子「お竜さん」
竜子「おっかないんだ…去年の空襲で父親が死んだんだ
あたいまで死んじまったら弟や妹は…
そう考えるとおっかないんだ」
常子が間を詰めて身を寄せる「私も…焼け出された人たちを見て
同じ事考えました…私たちもいつどうなるかわからないって
明日焼夷弾が降ってくるかもしれないって…
もしそうなったら何としてでも私が家族を守らなきゃって」
竜子「あたいだって…守れるもんなら守ってやりたいよ…
ここに来るまでに庸蔵と和子に何か食わせてやりたくて
やっとの思いで食い物を恵んでもらったんだ
でも2人のところに行き着く前に奪われちまったよ…
男の2人組だったね…力ずくでやられたよ
この腕はその時の怪我さ」
常子「ひどい…」
竜子「今まで男に負けないつもりでいたけど
本気で来られたらとてもじゃないが太刀打ちできない
女なんて弱いもんだ…
そう考えるとあたい一人であいつらを守ってやれるか…」

常子と竜子が戻ると家の中では
戦争が終わったら何をしたいかという話をしていたらしい
常子「あ~庸蔵君と和子ちゃんは何がしたい?」
庸蔵「前にお姉ちゃんに連れてってもらった上野の動物園に行きたい」
和子「私も!」
竜子「ああ…いくらでも連れてってやるよ」
2人「やった~!」
常子「みんなは?何て言ったの?」
鞠子「私はそりゃあ好きなだけ小説を書く事よ」
美子「私はかわいいお洋服をいっぱい作って着たいなあって」
庸蔵「お姉ちゃんは?」
竜子「あたいは…特にないよ、戦争が終わってくれりゃ十分さ」
鞠子「…最後はとと姉」
常子「ん?」
鞠子「とと姉は何?」
常子「あぁ…う~ん私は…やっぱり雑誌作りかな
五反田さんと約束したの、みんなが戻ってきたら好きな雑誌を作ろうって
女の私でも自由にやりたい事を考えてそれを実現する雑誌をやりたい
フフッ、やりたいばかりだけど」
竜子「あんた、本を作る仕事なんかやってんだ」
常子「あ…以前お会いした時はタイピストでしたよね
私、今雑誌の編集者やってるんです」
美子が雑誌「新世界」を渡すが少し見てすぐにページを閉じる竜子
常子「あ…興味なかったですか?」
竜子「ああいや…」
庸蔵と和子が眠いと言いだして床につく一同

<その夜、常子はなかなか寝つく事ができませんでした
もし自分が生き残り戦争が終わる日を迎える事ができたなら
自分がやりたい事ができる雑誌を作りたいと本気で思い始めていたのです>

朝、部屋の障子を開けて廊下を見渡す常子

<翌朝目を覚ますとお竜と妹たちの姿はありませんでした>

戸を開けて表に出る常子
「おはよう」と竜子が声をかける
常子「あっ、おはようございます」
ほうきとちりとりを持った庸蔵と和子も元気に挨拶する
常子「えっ、何を?」
ほうきを手に竜子「見りゃ分かるだろ掃除だよ、泊めてくれたお礼にさ」
常子「ああ…ありがとうございます
黙って行っちゃったのかと思いました」と笑う
笑顔の竜子「そんな失礼な事するもんかい、あたいを誰だと思ってんだよ」

家の前で鞠子と美子が庸蔵と和子に縄跳び遊びをさせている

縁側に座り新世界を広げる竜子
常子がやってくる「お竜さん、西の方は電車が走っているそうなので
川崎まで行くには渋谷まで行くといいそうです」
竜子「そろそろ出ようかと思ったんだけどこいつが目に留まってさ」
常子が隣に腰を下ろす
竜子「なあ…これは何て題名だい?…悪いけど字が読めないんだ
仮名はなんとか読めても漢字はさっぱり…
ガキの頃から母親がいなかったもんで学校にも行かず
家の手伝いやらあいつらの面倒を見てきたもんだから…」
常子「…これは新世界という雑誌です」
竜子「新世界か…あのあと考えたんだけど
あたいは戦争が終わったらいろんな事を知りたいね」
常子「いろんな事?」
竜子「字もそうだけどさ
普通の人が当たり前のように知っている事を知りたい
あんたが羨ましいよ…
あんたはあたいが知らない事をたくさん知ってんだから」
常子「そんな事ありません
今まで働いてお金を稼ぐ事ばかり考えてきましたから…
私も知らない事がいっぱいあって
知りたい事や見たい事がまだまだたくさんあるんです」
ほっとしたように笑う竜子「そっか…あんたも一緒か」
笑顔でうなずく常子「はい」

竜子たちを見送る小橋一家

<この時お竜と語り合った事こそが
戦後の常子を大きく動かす事になるのです>

(つづく)

前回、防空壕から出て家屋の無事を確認し「よかった…」と呟いた常子だが
焼け出されたのが竜子だ(もうひとりの常子)
放ってはおけず家で休ませてあげたねエライよ常子

竜子はキャラなのか君子にもちゃんとした敬語は使えないんだけど
庸蔵と和子はきちんと挨拶できるし厳しくしつけられてる感じだった

鞠子の「…最後はとと姉」ってどういう事?
君子にも聞いてあげて!(常子たちがいない間に語ったかもしれないが…)

一晩考えた竜子は戦争が終わったらいろんな事を知りたいと言う
普通の人が当たり前のように知っている事を…
これが戦後に常子が作る雑誌の着想の原点みたいなものなのかな


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