2016年6月28日火曜日

とと姉ちゃん(74)戦争のせいで苦しむ家族を想う常子は雑誌作りを…

<常子は再び千葉の農家を訪ねました、今回は美子もともに> 

満員の汽車に座り込み揺られている3姉妹 
美子(杉咲花)は風呂敷に包まれた大きな箱を胸に抱えている 

農家で包みを開けて老人と女の子に箱の中のおままごと道具を見せるが
言葉が出てこずにうつむいてしまう美子  
常子(高畑充希)「よっちゃん」 
女の子を見て微笑みを作る美子「楽しんで使ってね」
女の子「うん、ありがとう」 
美子「どういたしまして…見てこれ、蓋が開くの…すごいでしょ」 
女の子「すご~い」 
女の子に説明を続ける美子を辛そうに見ている常子 

タイトル、主題歌イン 

帰り道、それぞれが野菜を手に抱え農村を歩く3姉妹
美子「よかったよかった、かかも喜ぶわね」
「うん」 常子と鞠子(相楽樹)がうなずく
鞠子「でもこんなにもらえるなんて思わなかったね」
常子「そうねぇ」
と、うつむいた美子の足が止まる
鞠子「よっちゃん?」
美子が座り込む
常子もしゃがんで「うん?」
美子「おばあちゃまは…私たちのために下さったのに…
いろんなものが無くなっちゃった…
森田屋の皆さんは高崎に行っちゃったし…
おばあちゃまはお店をやめてしまったし…
まり姉ちゃんだって小説家諦めて工場で働いて…
全部戦争のせいよ」
常子「よっちゃん…」と、泣いている美子の髪を撫でる
美子「ごめんなさい…泣かないつもりだったのに」
優しい顔で首を振る常子「ううん」
背中のあたりをさすられ常子にすがりつくように泣く美子
鞠子も美子の頭を撫で、抱き合う3姉妹
遠くを見るような目で美子の背中をさすり続ける常子

縁側に座り、膝の上に新聞紙を置き鉛筆を削っている鞠子
常子が来て声をかける「どこまで削るつもり?」
鞠子「あっ…短くなっちゃった」
鞠子の隣に腰を下ろす常子「気にしてるの?よっちゃんに言われた事」
鞠子「えっ?」
常子「小説家諦めて働いてるって」
鞠子「ううん、それは前も話したとおり
今はそうするのが一番と思ってるから…ただ…」
常子「ただ…?」
鞠子「とと姉…戦争っていつ終わるのかな?
もしもこの先10年20年と戦争が続いたら
私はそれまでずっと工場で働いてるんだよね
家族に無理させて女子大まで行かせてもらったのに今の私には何もない
手に職もないしお金をたくさん稼ぐ事だってできない…ごめんんさい」
常子「何言ってるの」
鞠子「けなげに振る舞ってるよっちゃん見てたら情けなくなっちゃって
…だから私決めた
せめて次女としてみんなを支えられるようになるって」
励ますように笑顔でうなずく常子

<このころ東京をはじめ日本各地は
米軍のB29爆撃機による空襲を受けるようになっていました>

一椀だけの夕食をすする君子(木村多江)と鞠子と美子
鞠子「とと姉随分遅いね」
君子「常子は原稿が届くから遅くなるかもしれないって」
美子「ごちそうさまでした…ねえ、畑のニンジンそろそろ食べられるかな」
鞠子「まだまだよ、やっとこのぐらいの大きさになった頃よ」と、指を広げる
美子「は~あ…デパートでチキンライス食べたあの日が懐かしい…
またどこか行きたいな」
君子「ずっと行けてないものね…お出掛け」
3人が竹蔵の家訓を眺める

甲東出版
小さな明かりの中、机に向かう常子と五反田(及川光博)
「はぁ~疲れた…原稿が読めなくなってきたよ
やっぱり日中にやっておくべきだったな」
常子「お手伝いしましょうか?」
五反田「いや、君は帰っていいよ僕もそろそろ切り上げるから」
常子「あ…でもきりのいいところまで」
常子を見る五反田「常子君」
常子「どうしました?」
五反田「実は…」
常子「はい」
五反田「いや…やはりいい、やめとこう」
常子「え~何ですか?おっしゃって下さい」
五反田「…分かった」と、立ち上がり常子のそばに行き
「君にはちゃんと話そう…実は…」
すると空襲の警報が鳴り響き2人は防空壕へと向かう

鞠子「空襲よ!かかは?」
美子「ご不浄」
鞠子「よっちゃんは早く防空壕に」
美子「でも…」
鞠子「いいから急いで!」
「はい」と、庭にある壕の蓋を開け中に入る美子
家の中に戻る鞠子「かか!」
君子「鞠子、美子は?」
鞠子「防空壕です、急いで下さい」と、防空頭巾を渡す
君子「はい」と、頭巾を被りながら庭に出る
君子の背中を押すように「かか早く!」と庭に降りた鞠子が大きく転ぶ
君子「鞠子!」
美子「まり姉ちゃん大丈夫?」と、壕から出てくる
君子「しっかりつかまって」と2人で鞠子を助け起こす
鞠子は苦痛に顔を歪めている

警報が鳴る中、五反田が常子の手を引いて走る「よし、ここに入ろう」
後ろを振り向く常子「私やっぱり家に戻ります」
手を離さない五反田「今は駄目だ避難しろ、さあ早く!」

壕の中で鞠子と美子の肩を抱く君子「大丈夫よ、ねっ」
鞠子が右足首をさする

大勢の人がいる壕に並んで座る常子と五反田
常子は家族を心配しているようだ

<空襲は長く続きました>

朝、壕から出た常子「五反田さん
私、家に帰らせてもらいます、家族が心配で」
五反田「ああ、お帰り…気を付けて」

<空襲の影響で電車は動かず常子は家まで走りました
一刻も早く家族の無事を知りたいその一心で>

「帰りました!かか!」と家に飛び込む常子
美子「とと姉ちゃん!」
常子「ああ!よっちゃん!」
君子「常子!無事だったのね!」
常子「かか!無事でよかったです…鞠ちゃんは?」
君子と美子が顔を見合わせる

縁側に座り右足首に布をあて押さえている落ち込んだ表情の鞠子
常子が来て隣に腰を下ろす「鞠ちゃん…大変だったわね」
鞠子「とと姉…」
常子「うん?」
鞠子(涙声)「駄目だったよ…とと姉の代わりになろうって思ったけど
私全然駄目だった…足くじいてみんなに迷惑かけるし
怖くて何もできなくて…」
常子「…鞠ちゃん…」

<この時、常子の気持ちは固まりました>

甲東出版で机に向かう常子
五反田がやって来る「おっ、今日は随分早いんだね」
立ち上がる常子「あ…昨日はありがとうございました」
五反田「ご家族は大丈夫だったかい?」
常子「はい、おかげさまで…五反田さんは?」
五反田「うん、家内も息子も無事だったよ」
常子「ああ…よかった」
五反田「しかし…亡くなった方も大勢いたらしい」
常子「…」
五反田「そんな悲しい顔は美人には似合わないよ」
小さく微笑みうなずく常子「…五反田さん」
五反田「うん?」
常子「ずっと悩んでいたんですが…
お国を守るために戦争をしなければならないのはしかたのない事です
軍人さんが命を懸けて戦って下さっているのもよく分かっています
ただ…戦争をたたえるような雑誌を作る事が私にはどうしても苦しくて…
いろいろなものを奪っていくような戦争をたたえ
国民をあおるような雑誌を作りたいという気持ちにはどうしてもなれないんです
なんとかして違う内容の雑誌を作る事はできないでしょうか」
考えを巡らせているような五反田が立ち上がり常子のそばに来る
「じゃあ僕がその苦しみから解放して進ぜよう」
常子「えっ?」
五反田「もう雑誌は作らなくていいんだ」
常子「どうしてですか?」
五反田「…僕に赤紙が来た」
五反田を見上げたまま目を見開く常子「そんな…」

(つづく)

鞠子が転ぶシーンに笑った(ごめんなさい!)
あのこけかたはどんくさい感じが出ててよかったと思う
鞠子は常子と違って運動が苦手な設定なんだよね

それにしても転んだくらいであんなに落ち込まなくてもw
家に戻った常子が「鞠ちゃんは?」と聞いた時の君子と美子の様子から
そうとう凹んでたんだろうな…というのは想像できる

まあ美子に小説家を諦めたって指摘されて無力な自分を思い
じゃあせめて次女として家族を支えようと思った矢先に
転んでしかも空襲の恐怖で何もできなくて更に無力感を味わったのかな…

そんな鞠子を見て常子の気持ちは固まったとの事だが
戦争讃美の雑誌は作りたくないという常子に
「もう作らなくていい…僕に赤紙が来た」と五反田
五反田がなんだかちょっとかっこよく見えた

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