2016年6月27日月曜日

とと姉ちゃん(73)食べ物にも困窮する時代の中、美子の小さな決心

<昭和19年、常子たちが深川を離れ2年余りの歳月が流れていました> 

満員の汽車に揺られている常子(高畑充希)と鞠子(相楽樹) 

<開戦から3年ほどを経た太平洋戦争は
アメリカ軍が既にフィリピンまで迫り日本は窮地に立たされていました 
国内の物資不足も深刻化し常子たちは物々交換で農作物をもらおうと
千葉へ出かけていきました> 

大きなリュックを背負い農村を歩くもんぺ姿の常子と鞠子 

薪を割る男「着物なんか要らないよ、仕事の邪魔だ」 

別の農家で頭を下げる2人 
常子「着物と食べ物交換して頂けませんか?」 
煮炊きしている女「どうせ安物でしょう?」 
鞠子「着物だけじゃなくて万年筆もあります」 
女「そんなの要らないわよ
みんないろいろ持ってくるから有り余ってんのよ」 
言葉もなく無力な顔の常子 

タイトル、主題歌イン 

また別の農家を訪ねる2人
小さな女の子が貝殻を重ねて遊んでいる
常子「ねえねえ何してるの?面白そうね」
女の子「全然面白くない、他に遊ぶものないだけ」
常子「そっか…」
と、女の子の祖父が現れるがやはり着物や小物は要らないとのこと
老人「そうだなあ…孫が喜ぶようなおもちゃはないか?」

帰り道、農村を歩く2人
常子「どこもかしこも厳しいわね」
鞠子「ねえ…うちにあるあれなら交換してもらえるんじゃない?」
常子「あれって何の事?」
鞠子「おままごと道具よ」
常子「ああ…でもあれはよっちゃんがおばあ様に頂いた大切な…」
鞠子「けど…他に何かある?」
常子「…よっちゃんが何て言うか…」

東京 目黒

庭で草を摘んで匂いを嗅ぐ美子(杉咲花)「これ食べられるかなあ」
花壇のような家庭菜園をいじる君子(木村多江)「それ雑草よ」
美子「でも昔、星野さんは食べられる雑草もあるって言ってたわ」
君子「ああ…でも私たちには区別が…」
と、雑草を口に入れた美子が「苦っ…」
君子「アハハハハもう!本当に食いしん坊ね」
「のんじゃいました」と言う美子と2人で笑っていると
「おい不謹慎だぞ!」と木戸を開けて男が入ってくる
男(三宅)「戦地では帝国陸海軍が命を懸けて戦っているというのに
笑い声を上げるとは何事だ!」
頭を下げる君子「すみません組長さん」
三宅「慎みたまえ!」

縁側に座り白湯を飲む君子と美子
君子「最近組長さんよく顔出されるわね」
美子「あの人嫌い…目が蛇みたい」
君子「そんな失礼な事言うんじゃないの」
美子「どうしてあんな人が隣組の組長さんなんでしょう」
君子「う~ん…他はお年寄りばかりだもの
男の人はあの人ぐらいしか残ってないからね」
美子「かかが一番失礼な事言ってる気がする」
と、笑っていると再び木戸が開きビクッとする2人
帰ってきたのは常子と鞠子だ
何も成果が無かった事を報告する常子
残念がりながらも君子「仕方ないわ、ご苦労さまでした」
鞠子「よっちゃん…あのね…」
美子「ん?」

居間でちゃぶ台を囲む4人
美子「嫌よ、これだけは絶対に嫌!」
鞠子「私だって嫌よ、けど他に交換できるものがないんだから…」
美子「おままごと道具を手放すなんて…
とと姉ちゃんもまり姉ちゃんも冷たすぎるよ!」
常子「よっちゃんの気持ちは分かるけど…でももう他に方法がないの」
美子「これはおばあちゃまとの思い出が詰まった大事なものなのよ」
常子「…」
君子「美子が嫌がるのならやめましょう
庭のお野菜もあるしなんとかやっていけるわよ」
鞠子「でも…」
美子「私が食べる分減らします…だからお願いこれだけは勘弁して」
美子を見つめている常子

<戦況が悪化する中
常子が勤める甲東出版は細々と営業を続けていました>

机に向かい作業している常子
外から戻った五反田(及川光博)「その後ろ姿たまらないね」
常子「お帰りなさい、次の号の見本出来ましたか?」
「ああ」と、カバンから冊子を取り出す五反田
常子「あ~随分薄くなりましたねえ~」
五反田「仕方ないさ、紙が回ってこないんだから
それに僕たち2人で作るにはこのぐらいが限界だ」

<既に五反田以外、全員召集されていたのです>

常子「まさか社長まで…」
五反田「兵隊が足りなくなって年寄りまで召集し始めたのは知っていたが
社長までとられるなんてな…
まあ僕もいつお呼びがかかるか分からないんだけどね」
常子「そんな事おっしゃらないで下さい…
私一人じゃ雑誌を作っていけません」
「すまんすまん」と笑う五反田

<毎日の暮らしをなんとか守り続けるのが精いっぱいでした
それは他の皆も同じで…
鞠子は工場で事務の仕事を始めて既に3年余りがたち…
女学校を卒業した美子も縫製工場に働きに出て
日々、軍服作りにいそしんでおりました>

同僚たちと弁当を囲む美子
皆が美子の弁当をすてきだと褒めるのだが
ふかしたさつまいもの上に桜の花を型どったにんじんをのせただけのものだ
美子「母が工夫して詰めてくれるの」
と、ひとりの女工が食欲がないと言う
聞くと兄に赤紙がきたらしい
他の女工の兄も2か月前に召集されたという
また別の女工「うちは父が…」
美子のところは?と聞かれるのだが
美子「うちは女ばかりの家族だから…」
女工「よかったわね、その心配がなくて」

考え込むように歩く美子が帰宅すると女たちの声が聞こえる

おおきなタライを囲み洗濯している君子とご近所らしい稲子とせつ
稲子「やだ!じゃあお宅も組長さんから注意受けたの?」
君子「ええ、不謹慎だと」
稲子「三宅さんねえ…息子さんが出征されてから人が変わったわよねえ」
せつ「ええ」
君子「息子さんがいらっしゃるんですか?」
せつ「そうか…小橋さん越してくる前だったものねえ」
稲子「もう何年たつかしらねえ…今頃は北支か南方かしら」
君子「そうなんですか…」
せつ「多分…息子さんが戦ってる分
ご自分たちもお国のために何かをって思うんでしょうね」

三宅の息子の話に思うようなところのある表情の美子

夜、見回りの声が響く「火の用心!米英撃滅!」

小橋一家
美子だけが布団に入り眠っている
常子「先に寝ちゃうなんて具合でも悪いのかしら」
鞠子「疲れてるんじゃない?工場忙しいらしいから」
今月の「新世界」を読み終わったと言う鞠子に常子
「戦争の事ばかりで面白みもなかったでしょう」
鞠子「まあ…」
常子「最近は検閲が厳しくて戦意高揚の内容じゃないと出版できないのよ」
鞠子「不満がたまるわね…作りたい雑誌も作れないなんて」
常子「私も五反田さんに同じ事言ったわ…」
君子「…辛抱しましょう
今はお仕事があるってだけでもありがたい事なんだもの」
常子と鞠子「はい」
と、窓の戸を叩く音がする
常子が窓を開けると三宅が顔を出す
「おい何をしている、ここから明かりが漏れているぞ!」
常子「あ…」
三宅「そんな不用心な事で敵機に狙われたらどうするつもりか!
気持ちがたるんでいるぞ!」
常子「すみません、気を付けます」と頭を下げる
三宅「しっかり閉めておけ!」
「はい…失礼します」と、窓を閉めカーテンを閉じる常子
鞠子「…こんな時間まで見回りしてるなんて…」
美子がむっくりと布団に起き上がる
常子「ああごめんねよっちゃん、起こしちゃったね」
美子「ううん…考えてたの」
常子「え?」
布団から出てちゃぶ台の前に座る美子
「あのね…やっぱりあのおままごと道具、食べ物と換えて下さい
みんな我慢したり苦しんだりしてるのに
うちは家族を兵隊にとられる心配もないし
こうしてみんな元気に暮らしていられる…
それだけで十分よね」

<大切にしてきたものまでもはや手放すしかないのかと
常子は悲しく思いました>

美子の決心に小さくうなずく君子と
物憂げな表情の鞠子と常子

(つづく)

冒頭の常子と鞠子が並んで歩く2ショットに懐かしい感じがした
浜松時代はいつも一緒に駆けていたし
森田屋初期ではリヤカーで一緒に弁当配達もしていたが
その後はヒロイン常子の就職、失恋、失業に
先週は青柳商店閉店と、滝子との絡みの薄い鞠子不足だったからなあ…

久しぶりにセリフらしいのを喋った鞠子は相変わらず合理的だ
美子のおままごと道具を放出するべしとの事だが
これは滝子との思い出の品…
やはり美子は納得しないのだが
同僚たちの家族の出征の話や
バカにしていた三宅にも苦しんでいる事があると知り
自分だけが子どものままではいられないと思ったのかもしれないね

ところで常子は五反田と2人きりで大丈夫だろうか?
「その後ろ姿たまらないね」と、相変わらずソフトなセクハラを続けているが
五反田は言うだけで満足できる「口だけセクハラ男」だといいのだが



0 件のコメント:

コメントを投稿