2016年8月20日土曜日

とと姉ちゃん(120)安定した経営か?値打ちのある企画か?二択を迫られた常子は…

<常子は台所の取材に協力してもらった家を一軒一軒お礼をして回りました> 

最新号を手にする最初に協力してくれた女「へえ~この歯ブラシの商品試験も
とっても面白いわ」 
嬉しそうな常子(高畑充希)「ありがとうございます」 

タイトル、主題歌イン 

星野の家に着いた時にはもう辺りは暗くなっている 
玄関のブザーを押し、中から出てきた星野を見て驚く常子「うわっ!」 
「えっ?…ああ…」と顔につけた赤鬼の面を取る星野(坂口健太郎)
「すみません常子さん、節分なので子どもたちと豆まきを」 
常子「ああ…」 
星野「慌てて出たのでお面を外すのをすっかり…」 
常子「あの…雑誌の最新号をお持ちしました」 
星野「あっ、ありがとうございます、どうぞ」 
常子「お邪魔します」 

子どもたちと常子に追いかけられ豆をぶつけられている星野「痛い、痛い…」
大樹「福は内!」
常子「福は内!」
大樹「鬼は外!」
星野「痛いよ~」
豆をぶつけていた青葉の手が止まる「もうやめよう」
星野「どうして?」
青葉「お父さんがかわいそう」
星野「いや青葉…全然痛くはないんだよ」
青葉「もういいの」
常子「よし、じゃあ投げたお豆一緒に拾おうか」
子どもたち「はい!」
豆を拾いながら星野「すみません、つきあって頂いて」
常子「いえいえ楽しいです」
青葉「ねえねえ後でおしゃれおばちゃまにこの前買ったお洋服見せてあげる」
常子「本当に?楽しみだなあ」
2人を星野が笑顔で見る
と、部屋の明かりが突然消えてしまう
大樹「あれ?」
青葉「消えちゃった…」
星野「大樹青葉、動かないでじっとしていなさい」
(廊下の明かりは点いている)
常子「停電ではないみたいですね」
星野「多分…電球ですね…この前換えたばっかだっていうのに
最近はこういうのが多いなあ…ええと電球電球…」
消えてしまった電灯を見上げる常子

水田家でも青鬼の面を被った水田(伊藤淳史)が
たまきと鞠子(相楽樹)に追いかけられている
「うわ~!イタタタタタ…」と一度転び「うわ~!」と起き上がり驚かそうとするが
たまきの姿が見えず「あれ?」と面を外す水田
鞠子「たまき?」
箪笥の引き出しから画用紙を取り出したたまきがちゃぶ台にきて
「鬼さんやめちゃ駄目!」
水田「ああ…うわ~!」
たまき「そのままでいて、お絵描きするの」
「ああ…うわっ!」とポーズをとる水田
たまきが描こうとするが紙に色がつかずに「あれ?」と鉛筆を舐める

<この時代の鉛筆は芯の質が悪く滑らかに濃く書くためには
先をなめて湿らす事もしばしばでした>

片足を上げたポーズのままの水田「まだ?」
たまき「ま~だ、だってまだ書けないんだもん」
と、バランスを崩して転んでしまった水田にたまき「動かないで!」

書斎で机に向かい本を読んでいる花山
「鬼は外!福は内!」と茜が後ろから豆をぶつけるが花山はピクリとも動かない
茜「お父さん、ちょっとは反応してよ」
花山(振り向きもせず棒読みで)「あぁやられた~」

「お父さん忙しいみたい…」と茜は居間に戻る
三枝子(奥貫薫)「そうね」
茜「お母さんパンは?」
三枝子が「そろそろ焼けたかしら」と立ち上がり
「あなた、お食事ですよ~」と花山に声をかける
花山が居間に来ると三枝子は縁側の下に置いた七輪でパンを焼いている
食卓につく花山「茜はパンが好きか?」
茜「えっ?うん好きだけど」
花山「そうか…まさかここまでパン食が根づくとはなあ…」
「あ~あ焦がしちゃった」と三枝子が皿にのせたパンを見せる
花山「ああ…」
茜「あ~あ…トースターがあれば失敗しないんじゃない?」
花山「だったら買えばいいじゃないか」
三枝子「それが…どれを買ったらいいのか分からなくて…
里崎さんのお宅でもトースターを買ったらしいんですけど
うまく焼けないとこぼしてましたし」
腕組みをして考え込むような花山

企画会議
寿美子(趣里)がボードに商品試験の候補を書き並べている
松永「電球、鉛筆にトースターか…これは迷いますね」
島倉「一見どれもよさそうですが」
緑(悠木千帆)「うちも買ったばかりの電球がすぐに切れた事があります」
本木「あ~」(一同もあるあるという感じ)
松永「鉛筆もすぐ割れたりひどいものが多いですしね」
寿美子「私はちょうどトースターを買いたかったので…」
一同が笑う
美子(杉咲花)「次は何の商品試験に取りかかろうか迷いますねえ」
各々が活発に意見を出し「俺ねトースターがいいと思うんですよ
だってさ、実験の後に食べれるじゃないか」と言う扇田に笑ってしまい
「食べたいだけじゃないですか」とつっこむ常子
と、深刻な顔をした花山と水田が部屋にやってくる
常子「花山さん?」
デスクで腕組みをして座る花山「うん…やはりもう一度きちんと話し合おう
本当にやるべきかどうか」
寿美子「商品試験をやるかどうかですか?」
花山「今水田君とも話したんだがやはり相当な覚悟が必要なようだ」
常子「お金に関してはいくら費用がかかってもやろうと決めたじゃありませんか」
花山「あの時は具体的な金額が出ていなかった
水田君に改めて試算してもらったんだ」
水田「これから電化製品をメインに商品試験を1年間継続した場合
年間1,300万円かかります…
あくまでもこれは低く見積もってです」
花山「商品試験そのものにもまだまだ問題は含まれている」
松永「…と言いますと?」
花山「そもそも商品の判定基準をどこに置くのかが難しい
例えばタイマーは正確だが汚れのあまり落ちない洗濯機と
タイマーは不正確だが汚れのよく落ちる洗濯機があるとする
もし点数を平均すればどちらも同点になるが
本当の評価から言えば汚れの落ちる洗濯機の方が
洗濯機としてははるかに優れている
だから平均点で伝えるのではなくこの項目において
この商品はよい、こちらは悪いと伝えねばならん」
本木「そうなりますと試験をやる人間の価値基準も問われますね」
「確かに…汚れが落ちたかどうかの基準が人によって違えば
結果自体に統一とれませんよね」
花山「更にもう一つ理由がある
検査をする人間は誰でもいい訳じゃない
体重計を試験するとする
大塚さん、君ならどんな試験をする?」
寿美子「えっ…正確に重さを表示するかどうかです」
花山「他には?」
寿美子「他に…?」
花山「実際に体重計を使った事がある者なら
浴室の近くに体重計を置く場合が多く湿気でさびやすい事を知っている
そこでさびにくいかどうかも試験する項目に付け加える事を忘れないだろう
つまりその者の商品に対する目の深さ、社会に対する考えの広さ
そういったものまで検査をする側に求められるんだ
だから人を選ばないといけない
人件費もそれなりの額になるだろう」
考え込む一同
花山「高価な電化製品を使った事がない人もまだまだ多い
たった一回の高い買い物の基準を我々が提示するんだ
間違った結果は出せない
しかも1年後に発表するための実験をしている間
何も記事にできないのではこの企画の印象が薄れてしまう!
あなたの暮しには毎号何らかの商品試験が載っている必要がある
つまり…それはどういう事だ!?」
島倉「同時にいくつもの実験をしなくてはいけないという事ですか?」
花山「ご名答!」
水田「そうすると月ごとに莫大な金額が動いていくという事になります」
花山「商品試験を失敗したらあなたの暮しは潰れるだろう…
それでもやるか?常子さん」
常子は花山を凝視している
水田「現在あなたの暮しは毎号15万部の売り上げを維持しています
バックナンバーの売り上げもバカにできず
初版1万部だった創刊号が版を重ね10万部をこれまで売りました
それを全て注ぎ込めば商品試験を始められるだけの資金はあります
ただ…ここで無茶をしなければ安定した経営を続けていけるという事です
本当にいいんですか?」
水田の話を聞き一同を見渡した常子が花山に向かい
「戦争が終わったあと私たち姉妹と花山さんは女の人のために雑誌を作って
何もなかった時代に暮らしを取り戻すお手伝いをしようと誓いました
今その願いはたくさんの女の人たちに届いて
あなたの暮しを買って下さっています
でも彼女たちのお財布は決して膨らんではいません
バッグの中に大切にしまってあるお財布を取り出しその中から160円出し
私たちの雑誌を買って下さっています(一同を見ながら)
これは大変な事です
旦那さんが働いて稼いだ大切なお金をお財布から取り出させるほどの
値打ちのある企画を私たちは考えなければなりません
商品試験にはそれだけの値打ちがある…と私は考えます
世の女の人や子どもにお金の値打ちに見合った
安全でいいものが届くように私たちがお手伝いする
これは今の時代にどうしてもやらなければならない企画なのではないでしょうか
と長々話しましたが…商品試験…純粋にやってみたいんです!
いばらの道になるかと思います
でも今まで、なんとかなるさ…でやってきました
これからも、なんとかなるさ…と信じて力を合わせて成し遂げましょう!」
美子と緑が「はい」と立ち上がる
他の社員たちからも「やりましょう」と声が上がる
(一同)「やりましょう!」
「なんとかなる!」
「常子さん、やりましょう!」
微笑む常子の目が潤んでいる
水田も笑っている
花山も…
「やりましょう!」と叫ぶ常子

(つづく)

前半の豆まきエピはコミカルだった
豆をぶつけられて「痛い痛い」と泣く父を「かわいそう」と言うやさしい青葉と
鬼を描こうとしているのに動いてしまう父を「動かないで!」と叱るたまき

そして問題なのは花山家だ
上の2人に比べれば大きい茜(10歳くらい?)が豆をぶつけるが父は無視する
「反応してよ」と苦情を言うと面倒そうに棒読み喋り
娘はあきらめて部屋を出て行ったが自分も意外だった
なぜなら今まで花山は家庭では家族思いのよき父として描かれていたからだ
花山が家族に素っ気なく冷たい態度をとったのは初めて見た気がする
だがこれは星野家→水田家→花山家で豆まきの3段オチをやりたかっただけで
特別なのかもしれない
その後の居間のシーンでは花山は娘と笑顔で会話をしているからだ

花山の「茜はパンが好きか?」というセリフはちょっと胸熱だった
103話ですいとんやうどんばかり食べさせられて
(戦後で米が手に入り難かったから)食欲をなくした茜のために
花山が小麦粉を持ち込んでパンを焼いてもらって帰り
茜がそれをおいしそうに食べていたのを思い出してしまったからだ

後半の会議のシーン
お金の件は今更だし花山が商品試験に反対する根拠もなんだか弱い
基準がどうの項目がどうのと言っているが全ての商品は
企画会議で検討してから試験するのだから何が問題なのかよく分からない
まあ花山と水田が反対の立場をとったのは脚本的な理由で
ヒロインの常子に経営の安定か値打ちのある企画かの二択を迫り
あの演説をさせるためのお膳立てだったのだろう

せっかくいい演説をしたのに何で最後に「何とかなるさ」で締めちゃうんだろうw
ちょっとバカっぽいほうが常子らしいからだろうか?

常子は会社を起こした頃は貧しかったから
家族を守るためにお金お金と言っていたが
ここのところはもう理念一色だ
そうあるべきだよね
ある程度豊かになったのにさらに金、金、金と言われたら引くよねw
そんなヒロインは見たくない

2016年8月19日金曜日

とと姉ちゃん(119)自前の実験室を設ける「あなたの暮し出版」~本格的な商品試験の第1弾は歯ブラシ

青葉を背負い大樹を連れた星野(坂口健太郎)と常子(高畑充希)が夜道を行く 
常子「森田屋さんはね卵焼きもおいしいんだよ」 
大樹「食べたい」 
常子「ねっ」 
自宅に到着して礼を言う星野「常子さん、今日はお世話になりました」 
常子「いえ」 
そして「あっ…」とバッグから手帳を取り出し「お洋服の事…」 
星野「ああ、いけない…本末転倒になるところでした」 
「いくつか書いておきましたので」と常子が洋服店の所在を記したメモを渡す 
星野「ありがとうございます」 
常子「以前そこで姪の洋服を購入した事があるんです
そのお店のものでしたらきっと青葉ちゃんも喜んでくれると思います」
星野「どうもすみません」
常子「これからも何かお力になれる事がありましたら
何でもおっしゃって下さいね」
「ありがとうございます…あっ、僕も何か常子さんのお力になれる事があれば…」
と星野が胸ポケットから名刺を取り出し常子に渡す
名刺(総務課係長)を見る常子「光和医薬品社…」
星野「堅い社名ですが医薬品だけではなく
洗剤などの日用品も取り扱っているので
常子さんのお仕事のお役に立てる事があるかもしれません」
常子「ありがとうございます」
大樹「また今度遊びに来てね」
常子「うん、またね」(そして星野の背で眠る青葉に)「青葉ちゃんもまたね」
星野「では」
常子「では」
星野たちが入っていった家を見て幸せそうな笑顔の常子

昭和三十年十一月

<11月、常子たちはビルの1階に商品試験を行うための実験室を設けました>

社員たちが引っ越し作業をする中をたまきが駆けまわる
父の水田(伊藤淳史)と追いかけっこのようになり常子に助けを求めるたまき
「とと姉おばちゃん助けて!」
常子「はいはいはい、とと姉おばちゃんですよ~」
美子(杉咲花)「とと姉おばちゃん…ってととなのか姉なのか
おばちゃんなのか分からないわね」
寿美子(趣里)「本当ですね」
常子(たまきに)「いい子にしてたら後でおやつ買ってあげるからね」
たまき「食べたいけど…」
常子「うん」
たまき「お口虫歯になっちゃって痛いの」
常子「そうなの?」
鞠子(相楽樹)「たまき、大事なお荷物たくさんあるからもうやめようね」
たまき「は~い」
水田に抱き上げられたたまき「ねえお父さんこれ何?」
水田「これはね顕微鏡っていって小さいものを見る時に使うんだよ」
たまき「じゃあこれは?」
水田「これ?これはね天秤っていって重さを量れるんだ」
花山(唐沢寿明)「好奇心旺盛なじゃじゃ馬だな、どっかの誰かにそっくりだ」
鞠子「そうなんです」
常子「何か言いました?」
「誰か私の事を呼んだかな?」と花山がどこかへ行く
笑う常子「花山さん…」

実験室を見渡す鞠子「たった4人から始まったのに大きくなっちゃって」
美子「ん~そうねえ」
鞠子「けどこんなに大きなところの社長だなんて
ますますとと姉に男の方が近づきにくくなるんだろうな」
美子「フフフ!それは言える、星野さんもそういう方じゃないしな~」
鞠子「星野さんって?」
ハッとなる美子「そうなのよ、あの星野さんがね今東京にお住まいなの」
鞠子「えっ?」
美子「とと姉ちゃんがひょっこり再会して…
ご結婚なさったんだけど奥さんがご病気で亡くなられて
今は一人で2人のお子さんを育ててるみたい」
鞠子「そう…星野さん…」
美子「とと姉ちゃんも再会できてうれしそうだったわよ」

夜、黒板を設置する水田「花山さんこれでいいですか?」
花山「うん、いい感じだな」
水田「やっと片づいた」
大きく手をたたく常子「皆さんちょっと集まって下さい」
「はい」と集まった一同に常子
「え~本当に皆さんのおかげです、ご苦労さまでした」
「とんでもないです」
寿美子「ここでこれからたくさんの試験が行われるんですね」
「うん、そうだよな」
「新企画の門出を祝ってみんなで乾杯でもしませんか?」と言う扇田に
一同が盛り上がるが
花山「その前に聞いてほしい事がある
我々は何にも邪魔されない完全な試験スペースを手に入れた
ここで商品試験を行い、その結果を誌面で発表する
先日のようにメーカーの名前が発表できないなどという事は
もう二度とあってはならない
今夜は我が社始まって以来の一大計画の幕開けだ」
(一同)「はい!」
花山「私はいずれ電化製品を扱っていく必要があると考えている」
美子「電化製品の実験ですか?」
花山「ああ、洗濯機や冷蔵庫掃除機…家庭電化時代が間もなくやって来る
これから間違いなくこの3つは進化を遂げ
安価でごく普通の家庭でも手が届くようになる
どんな性能がありどこのメーカーのものが優れ
どこのメーカーのものが買うべき価値のないものなのか
実際に私たちがあちこちのメーカーから出ている電化製品を
買いそろえて使ってみてその答えを示したい
これは人々の暮らしを守るための戦いであり我々の使命なんだ」
緑(悠木千帆)「やっぱり何だかすごい事が始まるんですね」
常子「ええ」
一同が目を輝かせる
「お言葉ですが…」と神妙な顔をした水田が手を挙げる
「いきなり洗濯機や冷蔵庫を取り上げるのは危険なのではないでしょうか?」
花山「それは金を気にしてか?」
水田「はい…読者の反応を見てからの方が危険は少ないかと」
花山が常子を見る
常子「水田さんのおっしゃる事ももっともです」
花山がうなずく「分かった」
水田「あっ、じゃあ…まず手軽な日用品から始めませんか?」
常子「手軽な日用品?」
水田「はい」
一同がそれぞれ考える中、何か思い当ったような常子「あっ」

会議の席
常子「いろいろ検討してきましたが今回の商品試験で取り上げるのは
これにします(とボードの歯ブラシの文字を指す)
毎日の生活に寄り添う歯ブラシですから
きっと読者の方も喜んで下さると思います」
花山「歯ブラシを買う時にどれを選べばいいのか
何らかの指標になるものがあれば大いに助かるはずだ」
常子「簡単な事ではありませんが皆さんで力を合わせて
精いっぱいいい記事にしましょう!」
(一同)「はい!」

<本格的な商品試験の第1弾として歯ブラシを取り上げる事にしました
4つのメーカーの歯ブラシで柄と毛先の形、毛の密集度を調べ
使いやすさを比較します>

黒紙の上に並べた歯ブラシの毛を観察したり数えたりしている一同
島倉「常子さん、ラフレの歯ブラシの毛の本数は全部で1,823本
一束当たりの平均は40から67です」
常子「40から67…だいぶばらつきがありますね」

一同に歯ブラシの使い方を説明している花山

<力のかけ方や磨く回数などを細かく決めてブラシの耐久性を調べます>

花山「これを1か所につき8回繰り返す、やってみよう…1、2、3、4、…」

朝、小橋家の洗面所で歯を磨く常子と美子と君子(木村多江)「1、2、3、4、…」
(洗面所の鏡の横には貼り紙があり
歯磨きの量から磨く場所の順序まで細かく決められている)

水田家でも水田、鞠子、たまきが「1、2、3、4、…」

<常子たちはおよそ3か月かけて延べ300本の歯ブラシを実際に使い
毛の痛み具合を比較しました>

美子たちが顕微鏡で毛を観察している
常子「よっちゃんどう?」
美子「う~ん…麗風堂のは特に傷みが激しいみたい」
使用後の顕微鏡写真を持ってくる水田
「どうやらナイロンと豚毛の歯ブラシとでは耐久性に差があるようです」

<商品試験と同じく次号の目玉企画である台所の特集も大詰めを迎え…>

扇田と打ち合わせをする常子が資料の中に星野宅の台所を見つけ微笑む

<星野をはじめさまざまな家庭の台所の事例が集まりました
こうして台所の特集と商品試験という
あなたの暮しの代名詞となる看板記事が生まれました>

編集長室で最新号(36号)をチェックする花山が満足そうに微笑みうなずく

<あなたの暮し最新号は評判となり売り切れる書店が続出しました
商品試験を続けていけるだけの売り上げも確保し
常子たちは手応えを感じていました>

常子に報告する水田「このまま増刷分も売れれば
日用品以外の商品試験もできるかもしれませんね」
笑顔でうなずく常子「そうですね、お願いします」

(つづく)

星野は研究者とかじゃなくて総務課の係長なんだ
理系の帝大卒(大学院も?)なのにもったいない
以前のような植物のうんちく話みたいなのもまだしていないと思うが
この事と何か関係があるのだろうか?
変わっていないように見える星野だがもしかしたら…

青葉だけじゃなくて大樹もかなり常子に懐いているようだ
常子は姪のたまきの事も随分と可愛がっているみたいだから
子どもの扱いがうまいのかもしれないね
(歳の離れた妹の美子がいたからかも)

たまきは初登場時はよくしつけられている印象だったけど
今回は手のかかる幼児だった
それでも「とと姉おばちゃん」はネタだろうw
確かに幼児は皆が呼んでる呼び名で人を覚えるけれど…

星野の噂話を聞いて常子の事を見つめる鞠子だったけど
2人の事で鞠子が何か活躍してくれるのかな?

花山が電化製品の試験をぶち上げる件で水田に反対されて
常子の「水田さんの…もっともです」にあっさりと引き下がったのは意外だった
花山は独裁者のイメージがあったが長く仕事をするうちに常子たちを信頼して
今では常子、花山、水田のトロイカ体制みたいな感じなのかな?

2016年8月18日木曜日

とと姉ちゃん(118)メーカー名を公表する事ができず悔しがる常子たちは…

<メーカー名を公表すべきか、商品試験の結果を優先すべきか…
常子と花山は決断を迫られたのでした> 

タイトル、主題歌イン 

数日後 

<結局メーカー名は公表せず商品試験の結果のみを掲載した
最新号が発売されました> 

編集長室に常子(高畑充希)と美子(杉咲花)と水田(伊藤淳史)がやってくる 
花山(唐沢寿明)「悔しがっている顔でも見に来たか?」 
美子「悔しいのは私たちも一緒です」 
常子「これでは商品試験の意味がありません、
何のためにこの企画を始めたのか…」 
花山「出来上がったあなたの暮しを読んで
こんなに苦い気持ちになった事はないよ…
毎号我々は戦ってきたじゃないか!一切の妥協も許さず!
だのに…こんななまぬるい記事を載せる事になるなんて…
(机の上に置かれたあなたの暮し35号)
これではいけないよ常子さん!
読者に事実をありのままに伝えよう!
次号は必ずメーカー名を公表した記事にしよう!」
常子「はい」
美子「はい」
水田「僕もそう思います…思うのですが…」
3人が水田を見る
水田「今後、商品試験を続けるとなれば
またどこかの検査機関を頼らざるをえなくなります」
美子「それではまた同じ問題が…」
水田「はい、ですから
理想どおりの商品試験を続ける事は難しいのではないかと…」
(一同)「…」
花山「私たちでやろう」
水田「えっ?」
花山「全て私たちだけで試験する…検査機関には頼らない」
美子「それがいいと思います、それなら横やりも入ってこないだろうし
ねっ?とと姉ちゃん」
常子「…」
水田「僕は反対です…常子さんも僕と同じ事を懸念してるんじゃないですか?」
常子「多分…」
水田「花山さんは我々だけで商品試験をするとなると
相当な費用がかかると承知の上でおっしゃってるんですか?」
花山「無論だ」
水田「会社が傾く可能性だってあります」
美子「そんなにかかるものなんですか?」
水田「今回の石けんのように成分の分析等
専門性の高い知識や経験が必要とされる商品の試験をする場合
検査器具も一からそろえなければなりません
それだけで相当な費用になります
会社内で商品試験ををするとなると今の会社の広さでは限界があり
もっと広い場所も必要になる」
美子「そうか…」
水田「ざっと挙げただけですが
実際に商品試験を始めればまだまだ問題は出てくるでしょう」
花山「それは分かっている、だが…
商品試験には我々が追い求めていた
あなたの暮しの全てがある気がするんだよ!」

(常子の回想)
「衣服だけでなく衣食住にまつまる全ての中で
毎号私たちが大切だと思うものを調べて
実際にその生活の知恵を実験してみて体験した事を読者に伝えて
皆さんの生活が今日よりも明日と少しでも豊かになるような雑誌」
まだ焼け跡が残るバラック街で花山に語る常子
「もう間違えないようにしませんか?」

常子「そうですね」
水田「えっ?」
常子「やりましょう…
私たちはそのためにこの雑誌を作ったんです」
花山が小さくうなずく
美子「2人がやる気なら私も賛成です」
3人が水田に目を向ける
水田「…今ならこのビルの1階が空いてます…
家賃も安くできそうだと大家さんから聞きました」
美子「調べてたんですか?」
水田「花山さんと常子さんが
自分たちで商品試験をすると言いだす予感はしていたので」
常子「…じゃあ水田さんも…」
水田「社長が決めた事なら異論ありません」
常子「ありがとうございます!
では早速みんなに発表しましょう」
花山「よし!」

タライの中の洗濯板で青葉の洋服を洗う星野(坂口健太郎)
「う~ん…何度やっても駄目だ、この染みは落ちないな
分かった分かった、新しいのを買ってあげるから泣かない泣かない」
縁側に座る青葉「うん…」
大樹は洗濯物を庭の物干し竿にかけている
星野「どんなのがいいかな?」
青葉「う~んとね…かわいいの」
星野「かわいいのか…お父さん男だから
女の子のかわいいがよく分かんなくて…」
青葉「あっ、おしゃれおばちゃまみたいなお洋服がいい」
星野「おしゃれおばちゃま?」
部屋に戻った青葉が先日常子が着ていた緑色の服を着た女性の絵(青葉が描いた)
を持ってきて星野に見せる
星野「常子さんか…」
青葉が星野の膝の上に座る(大樹も隣にきて絵を見る)
星野「じゃあ…聞いてみようか」
青葉がうなずく
星野「大樹も会いたい?」
大樹「うん」

夜、あなたの暮し出版
常子「こんばんは」
大樹と青葉「こんばんは」 星野「こんばんは」
常子「どうかされたんですか?」
星野「お願いがありまして」
常子「はい」
星野「実は先日娘のよそ行きの服が汚れてしまい
何度も洗ったんですがどうにも色が落ちなくて」
常子「あの傘の色が落ちた時の?」
星野「そうです!」
青葉「でもお父さんが新しいの買ってくれるって」
常子「フフフ、そうなの?…じゃあお買い物の帰りですか?」
星野「あっ、いやそれが…どこに女の子のかわいらしい服が売っているのか
また、どのような服が幼児にかわいらしい服として認知されているのか
僕には理解不可能で…」
常子「ああ…」
大樹「だから青葉がおしゃれおばちゃまみたいな服がいいって言ったの」
青葉「うん」
常子「私の事?フフッ、そうだったの」
星野「お忙しいところすみません
常子さんの着ている服に似た子ども服はどこに売っているか
ご存じないでしょうか?」
常子「しばしお待ちを…今調べます」(と手帳を開く)
青葉「知ってるの?」
常子「うん?おしゃれおばちゃまは何でも知ってるよ」
青葉「すご~い!」
常子「え~っと…」
星野「皆さまはお元気ですか?」
常子「えっ?」
星野「お母様はお変わりなく?」
常子「はい、少し白髪が増えましたけど」
星野「鞠子さんや美子さんは?」
常子「美子は今も同じ会社で働いています
鞠子は結婚して娘が1人」
星野「おっ、鞠子さんに娘さんが?おいくつですか?」
常子「今4つです」
星野「4つか…青葉の1つ下か
では森田屋の皆さんや青柳商店の皆さんはそのあと…」
常子「フフフ…あっ、少しお時間ありますか?」

キッチン森田屋
照代(平岩紙)「じゃあこれから美子ちゃんも常子ちゃんも忙しくなるわねえ」
美子「そうなんです、これまで以上に」
宗吉(ピエール瀧)「それじゃあタイショウと会ってる暇なんかねえなぁ」
美子「いいえ、それはなんとかします」
宗吉「ア~ハハハハ~!愛されちゃってんなタイショウ!おい!」
南(上杉柊平)「ええ、はい」
宗吉「か~!ええ、はい…だとよ~」
照代(美子と南に)「ごちそうさま」
宗吉「ハハハ、本当だよなあ」
と、表の戸が開き「こんばんは~」と常子が店にやってくる
美子「あれ?とと姉ちゃん」
宗吉「おう」
常子「こんばんは」
照代「いらっしゃい」
常子が入口に向かって「どうぞ」と声をかける
現れる星野「どうも…ご無沙汰しております」
美子「星野さん…」
宗吉「葉っぱのあんちゃん!」(照代は硬直している)
星野「皆さんお変わりありませんねえ」
照代「本物よね?」
星野「ええ、本物の星野武蔵です」
宗吉「おい、生きてやがったかこの野郎!」
星野「このとおり!」
照代「何だかまだ信じられない」

店のテーブルでお絵描きをする青葉と読書をする大樹
南「ここで遊んでようか、ホットケーキでも焼いてくるから」
青葉「ホットケーキ好き!」
大樹「僕も!」
隣のテーブルから振り向く星野「すみません…
(子どもたちに)2人ともいい子にしてるんだぞ」
照代「すっかりお父さんなのね」
宗吉「ああ、あの妙ちきりんな葉っぱのあんちゃんが
いい子にしてるんだぞ…なんてな」
星野「いや…やめて下さい
お二人に言われると照れくさいです」
常子「そういえば当時手紙を差し上げたのですが
お返事がなくて心配していたんです」
星野「それは申し訳ない、もう内地にいなかったもので」
常子「そうだったんですね」
宗吉「遠くに飛ばされたのか?」
星野「南方です、スマトラ島でした
僕のいた部隊は油田地帯の警備についており
僕はずっと本部で書類仕事をやらされていました」
照代「さすがに帝大卒ですものね」
星野「現地の人に農業を教えた事がきっかけで仲よくなったり
そんなに悪い事ばかりでもありませんでした
しかし…やはりスマトラも敵の空襲を受けて上官や戦友が大勢死にました
親しかった現地の人たちも巻き込まれて…
爆撃がほんの少しずれていれば
僕もこうして皆さんとお話ししてはいなかったと思います」
宗吉「…で、復員はいつだ?」
星野「スマトラはその後現地が混乱した事もあって
復員できたのは21年の12月の事でした」
宗吉「ああ…そりゃ随分遅くなったなぁ」
照代「終戦から1年以上もたってるじゃない」
星野「ええ」
美子「でもご両親はお喜びになったでしょう」
星野「はい、涙を流し喜んでくれました
それからしばらくして大阪の大学に帰ったんですが
研究室にはもう別の方が雇用されており僕の居場所はありませんでした」
宗吉「はあ…それもついてねえ話だなあ」
照代「それでどうなさったの?」
星野「帝大時代にお世話になった教授に相談して
今の仕事を紹介してもらったんです」
美子「植物関係のお仕事ですか?」
星野「あっ、いえいえいえ
どんな仕事でもいいですからとお願いして入れたのが
医薬品を扱っている会社でした」
宗吉「ああ…葉っぱのあんちゃんが薬のあんちゃんか」
笑う星野「そうですね…妻と出会ったのもその会社です」
宗吉「お~今日、女房はどうした?逃げられたんじゃねえだろうな?え~?」
星野「それが…妻は亡くなりまして」
宗吉「…悪い事聞いちまったな」
星野「あっ、いえいえいえ、もう亡くなったのは4年も前の事ですので」
それぞれにおとなしくしている青葉と大樹
宗吉「…それより今日は飲もうぜ、聞きたい事も山ほどあるしな」
星野「はい」
照代「今お持ちしますね」
星野「はい」
宗吉「葉っぱのあんちゃんも今日はつきあえよ」
星野「ええ頂きます、昔よりは飲めるようになったんですよ」
宗吉「お~そう来なくっちゃな!アハハハハ!」

<15年たっても変わらない星野の人柄に懐かしさを覚える常子でした>

星野と朗らかに語り合う常子

(つづく)

ビックリした
メーカー名を公表するかしないかでいろいろあって
かっこいい常子が見られると思っていたから
それが冒頭のナレ2連発で全部説明されてしまい
さらにその後の展開も編集長室の1シーンだけで完結してしまった
何かがおかしい…
これは自分の想像だがもしかすると星野の再登場は当初予定になく
それを描くためにこっちのエピソードが端折られてしまったのではないだろうか?
そうとでも考えないとどうにも腑に落ちない
なぜならあのシーンの4人のセリフはなんだか説明的だし
水田は花山と常子のセリフに二度も「えっ?」と返しているのに
あの場での話の流れを全て想定して
1階の空き部屋の家賃まで調べていた事になっている
まあ「えっ?」と驚いてみせたのは演劇的なレトリックとしてありだとは思うが
このドラマのこれまでの流れからどうしても違和感をおぼえる
そして常子が最後に「早速みんなに発表しましょう」と言ったのも
メーカー名を公表できなかった事で編集部員たちの士気が下がってしまう描写が
本来あったからではないかと思ってしまうのだ

子どもたちに「じゃあ聞いてみようか?」「大樹も会いたい?」と尋ねる星野だが
本当は自分が常子に会いたかったんだろうね
常子が手帳を見ているのに「皆さまは…」「お母様は…」と質問が止まらないw
察した常子が森田屋に連れて行く流れは自然でよかった
星野はナレにもあった通り昔と変わっていなくてホッとしたのだが
それでは星野は何のために再登場させられたのだろう?
常子が幸せなエンドを迎えるためにだろうか?
それとも常子はまたも何かと引き換えに星野を失う事になるのだろうか?



2016年8月17日水曜日

とと姉ちゃん(117)星野との再会~民間機関の石けんの検査は意外な結果に…

<石けんの商品試験は6つの項目で比較します 
まず汚れの落ち具合を調べます 
一定量汚れをつけた布を用意しその重さを量ります 
そして洗った後の重さを量り前後の重さの差から
どれだけ汚れが取れたのかを調べる方法です> 

並んで座る一同が「いちに、いちに」の掛け声のもと
タライの中で布を洗っている 
花山(唐沢寿明)がタライの中に温度計を差し込み「湯が1度ぬるい、やり直せ」 
水田(伊藤淳史)「え~?」 
花山「つべこべ言わずにさっさとやれ!」 
水田「はい!」 
常子(高畑充希)「ではここの回やり直します」 
(一同)「はい」 
花山「きちんとやらないと正確な結果が得られないからそのつもりで頼むぞ!」 
(一同)「はい!」 

<常子たちは商品試験と並行して各家庭の台所の取材も行っていました>

道を行く常子と本木と扇田の3人
青葉が「この前のおばちゃまだ!」と駆け寄る(大樹も)
常子「あっ、この間傘で遊んでた…」
青葉「うん、青葉」
常子「あっ、そうだ青葉ちゃんだ」
青葉「ねえねえ今日お父さんいるよ」
常子「本当?」
青葉「うち来てうち来て」
常子「いいの?」
青葉「いいよね?お兄ちゃん」
大樹「うん」
常子「ありがとう」
青葉が「こっちこっち」と常子の手を引っ張る
本木「こいつはさい先がええで」

子どもたちが家に入りほどなくして青葉を抱いた父親が現れる
常子「お休みの日にすみません、私あなたの暮しという…」
振り向いた父親の顔を見て常子「星野さん?」

タイトル、主題歌イン

星野(坂口健太郎)「常子さん?」
言葉が出てこない常子に扇田「お知り合いですか?」
常子「あっ、以前…」
扇田「以前…?」
星野「ええ、ご近所だったものですから」
常子「ええ…」
本木(せきばらいをして)「ご主人」
星野「はい」
本木「実は台所を見せてもらえまへんか?」
星野「台所ですか?」
本木「はい」
うなずいた常子が雑誌を取り出し星野に差し出す
「あの…私あの…あなたの暮しという雑誌を作っておりまして」
青葉を降ろして雑誌を受け取る星野「ああ…(雑誌のページを眺め)すごいな」
常子「いえ…あ…で…台所の取材をさせて頂いて
記事を書いているところなんです」
星野「それでうちのを…ですか?」
扇田「ええ、お願いできませんか?」
星野「汚いですがうちでよかったら(子供たちに)なあ?」
本木「ほんまでっか!ありがとうございます」

扇田が星野に台所について取材し本木が写真を撮る
青葉はちゃぶ台でお絵描きを、大樹は読書をしている
扇田「今日は奥様はお出かけですか?」
星野「それが先立たれまして」
扇田「失礼しました」
星野「いえ」
常子が仏壇にある星野の妻だったらしい女性の写真を見る
青葉「おばちゃま、今日もお洋服きれいね」
常子「本当?ありがとう」
青葉「うん、そのスカートとってもきれい」
常子「フフフ…」
本木「常子さん」
常子「はい」
本木「まずはこっちから撮っときます」
常子「そう…そうですね(星野が撮影のために移動する)すみません
そうですねこっちから撮ってそのあと引いて全体をお願いします」
本木「引いて全体ですね、分かりました…じゃあまずはこのショットから」
常子「はい、それが終わったら収納も」
本木「収納ですね」
常子「はい、収納も端から…そうですね」
スタッフに指示を出す常子の横顔を眺める星野

玄関前
常子「ありがとうございました、助かりました」
星野「そうですか、何の変哲もない台所ですがお役に立てたでしょうか?」
「はい」と常子たちがうなずく
見つめ合う常子と星野
扇田「常子さん、バス来ちゃいますよ」
常子「はい、(星野に)では失礼します」
大樹「また今度遊びに来てね」
常子「またね、またね(子供たちに)」

夜、小橋家の夕食
元気なさげな常子が大皿のコロッケを箸でつまむ
君子(木村多江)「無理して食べなくていいのよ…
美子がいると思って夕飯作り過ぎちゃったの」
常子「ああ…」
君子「このところ毎日のように南さんとデートなのね」
常子「かか…」
君子「うん?」
常子「今日…星野さんにお会いしました」
君子「星野さん?(と、驚いて)星野さん!?」
うなずいて笑う常子「私も驚きました
偶然取材に伺ったお宅が星野さんのおうちだったんです
…15年ぶりにお会いした星野さんは少し痩せられたようにも見えましたが
お元気そうでした
ご結婚されてお子さんも2人いて」
君子「そう…」
常子「もしかしたら戦争で…と思っていたので
今ああして幸せそうな星野さんを見る事ができてただただホッとしました」
君子「星野さんも今の常子を見て驚かれたでしょうね
まさか社長さんだなんて」
「どうですかね」と常子が笑う
君子「うれしいんじゃないかしら」
常子「…だといいですけれど
せっかく取材させて頂いたんですからいい記事にしないと」

石けんの試験を進める一同
木立「昨日から石けんの匂いに囲まれてますから鼻がきかなくなってしまって」
常子「実は私も…」
花山「やはりな…そんな事を言いだすだろうと予想はしていた」
松永「だったら他の方法を…」
「フッ」と笑った花山が腕の時計を見る
美子が「こちらです」と案内してきた2人を見て常子「綾さん!康恵さんも」
綾(阿部純子)「お声がけ頂いてうれしいわ」
梢改め康恵(佐藤仁美)「ああ、大好きなあなたの暮しに協力できるなんて
光栄だよ」
松永「協力?」
花山「我々と交代で石けんの匂いを嗅いでもらおうと思ってね
今日は2人ともよろしく頼むよ」
常子(綾に)「本当にいいの?太一君は?」
綾「太一は母が面倒見てるから昼間仕事がない日だったら来られるわ
それに引っ越したからここまでも近いのよ」
常子「そう言って頂けてうれしいわ」
康恵「このところあなたの暮しは新鮮味がなくなってきてるからねぇ
商品試験なんてなかなかいい企画だと思うよ」
美子「康恵さん手厳しいですね」
康恵「当たり前だよ、私は創刊号からのつきあいだよ
誰よりも厳しく誰よりも愛情を持ってあなたの暮しを読んでるつもりさ」

<石けんに含まれる手荒れの原因になる成分は
民間の検査機関に分析を依頼しました>

検査機関社員岸野「よろしくお願いします」
常子と花山「よろしくお願いします」

一か月後

<およそ1か月かけて1社につき50個
延べ300個の石けんの試験を行いました>

興奮した様子で岸野を伴いやってくる花山「常子さん、石けんの試験結果が出た
面白い結果が出たぞ」と資料を常子に渡す
それを見る常子「汚れの落ち具合、香り、肌への刺激…
どれを取っても麗風堂の石けんが一番評価が低いんですね」
(一同)「えっ?」
面白そうに花山が笑う
美子「麗風堂って最大手じゃないの?」
水田「うちで使ってるのもこれですよ」
松永「僕もです」
本木「で、評価が高いのは?」
常子「高いのは…」
机からひとつの石けんを取り上げる花山「この初音石鹸という会社のものだ」
「えっ、初音?」
扇田「そんな石けん売ってるのほとんど見た事ないですよ」
常子「無名の会社のものが一番評価が高いなんて…」
花山「どうだ?面白い結果だろ?」
松永「これは読者も驚きますね」
花山「では本木さん、どの会社のものか分かるように
石けんの写真撮って頂けますか?」
本木「はい、分かりました」
それまで黙っていた岸野「それは困ります!」
水田「岸野さん?」
岸野「我が検査機関による検査を基に
メーカー名を公表するのはどうかおやめ下さい!」
花山「それでは試験結果を公表する意味がない!」
常子「そうですよ、検査結果が分かっても
メーカー名が分からなければ読者は商品を選べません」
岸野「どうしてもメーカー名を公表するというのであれば
この試験結果は取り下げます」
(一同)「…」
花山「なぜメーカー名を公表したらあなたたちが困るんだ?
中立な民間機関のはずだろ!」
岸野「麗風堂はうちが古くからおつきあいさせて頂いている会社です
その麗風堂の顔に泥を塗る訳にはいかないんです
もともと麗風堂の宣伝になると思ってお引き受けしたんです
それがこんな結果になってしまっては…」
花山「だったらどうしろと?」
岸野「手荒れ成分の数値等を誌面で公表するならば
社名を伏せA社B社として頂きたいです(花山が横を向いてしまう)
もし発表するのであればうちの検査結果は掲載しないで頂きたい!」
常子「検査結果が出せなければ実験の正当性が失われます」
岸野「…どちらを選ぶかはお任せするしかありません」
困り顔の一同と目を剥いて岸野を見ている常子

(つづく)

冒頭の汚れた布を洗う前後で重さを量って汚れの落ち具合を調べるってマジ?
どれだけ精度の高い量り器があればそんな事ができるのだろう…

星野は懐かしい…いい感じの老けメイクだ
常子より4~5年上だと思うので40前後くらいだろうか?
あの当時の40歳は今と違ってあれくらい落ち着いた雰囲気だろうと思う

扇田の「今日は奥様は…」はナイス
おかげで現在の星野は独身だと知る事ができた

青葉は5歳にしては賢すぎる
前回、常子に傘がかわいいと言われたのでお返しに洋服を褒めたのだろうか?
青葉が妙に常子に懐いているようだがやはり星野とは恋が再燃するのかな…

別れ際に見つめ合って黙り込む2人だけど
常子と星野に昔何かあったのは本木と扇田にはバレバレだろうねw

綾も久しぶりに登場した
公式の登場人物に雑誌作りを手伝い始める…とあるので
あなたの暮し出版に入社するのだろうと思っていたのだが
手伝う…ってこういう事なのかな?
たしかに「手伝って」いるけどw
引っ越したって言っていたからあの玄関間借り生活からは抜け出せたみたいだ

梢は康恵になっていたけどそうか…梢は源氏名だったんだw
梢と呼ばれなくなったのは多分カフェー勤めをやめたからなのだろう

中立の民間機関に検査を依頼したはずが大手企業のひもがついていたね
常子はまた社長として決断を迫られる事になるのだろう
今週はかっこいい常子が見れそうだ

2016年8月16日火曜日

とと姉ちゃん(116)商品試験を発案し仕事に邁進する常子

常子(高畑充希)「あ…ねえ、おうちの人はいる?」 
玄関のドアが開き「何か御用ですか?」と婦人が顔を出す 
常子「あ…お母様ですか?」 
婦人「いえ、私は手伝いの者で」 
常子「そうですか…あっ、あの…私
あなたの暮しという雑誌の小橋と申します 
台所を取材させて頂ければと思ったのですが」 
婦人「ああ…今は旦那さんが留守なもので勝手な事は…」 
常子「そうですか…無理言ってすみません」 
と、青葉が「あっ!」と声を上げるので 
見ると青葉の白い洋服が赤く汚れている 
婦人「ああ…こんなになっちゃって…」 
大樹「僕、悪くないよ」 
婦人「怒ったりしませんよ、水で傘の色が落ちちゃったのね
全くひどいもん売りつけて…」 
青葉「汚れちゃった…」 
婦人「かわいそうにね、お気に入りの洋服だったのに…
中でふきましょう、ねっ、(常子に)失礼します、すみません」 
婦人と子どもたちは家の中へと入る 
本木「今日は戻ろうか?」 
常子「ええ」 

『星野』の表札 

タイトル、主題歌イン 

常子たちが戻るとちょうど、美子が新しい黄色のミシンを試運転させるのだが
ミシンの針が飛んで寿美子(趣里)が目の下を切ってしまう
花山(唐沢寿明)「危うく目が傷つくところじゃないか!」

電話をかけている花山「君が責任者なのか?はっきりと言いなさい!
用件ならさっき電話に出た者に伝えただろ!
君の会社で販売しているミシンの事だ…あれは欠陥商品だろ?
危うく失明するところだったんだぞ!
担当に代わるって君は担当じゃないのか?おい!」
美子が寿美子を手当てして常子たちも心配そうに見守る
花山が「話にならん!」と受話器を置く
水田(伊藤淳史)「とんだ粗悪品だったな」
緑(悠木千帆)「最近の製品はそんなのばっかりね」
「危なかった、しばらくミシン触るのも嫌だ」
常子の頭の中に前回の花山の言葉
(あなたの暮しが読者に提供すべき知識は何なのか…)
粗悪品のミシン…
青葉の服を汚した赤い傘…
常子「試験をしましょう!」
花山が常子を見る
ドタドタと部屋の奥に走った常子がボード(黒板)に『商品試験』と書く
そして皆に振り向き「あなたの暮しで商品の試験をするの」
美子(杉咲花)「商品を試験?」
常子「物が出回ってきた時代だけどその反面
あのミシンのような粗悪品もたくさんあります
そんな粗悪品を買わされる消費者のためにもいろいろな商品を実験して
その商品のいいところと悪いところを伝えてはどうかと思うんです」
緑「でもそういう実験ならもうメーカーの方でやっているのでは?」
常子「…メーカーの検査をうのみにしてもいいんでしょうか?
その検査が正しければあのミシンのような事は起こらないと思います」
扇田「確かに…」
常子「私たちがこの手で実際に品質を確かめて
その結果を伝える事が大切だと思うんです
それにほら…うちは広告を載せていませんからどこに気兼ねする事もなく
公正な目で見て真実だけを伝える事ができます」
水田「そうか…そうですよね、いろいろありましたけど
あの一件以降広告を載せずにやってきましたもんね」
美子「ええ」
常子「これは私たちだからこそできる事だと思うの
花山さん、この商品試験はこれからのあなたの暮しが
読者に提供すべき大切な情報だと思うんです」
黙って腕を組み話を聞いていた花山「洪水のようだと思わないか?」
松永「はい?」
花山「好景気で物があふれだした世の中がだよ…
大量生産された商品はまるで洪水のように私たちに襲いかかってくる」
寿美子「洪水のように…ですか?」
花山「しかし(と立ち上がり歩き出す)全ての商品が幸せを運んでくれはしない
あのミシンのように…
だからこそ、このアイデアはすばらしい!」(と常子が書いたボードを叩く)
一同から安堵の笑い声が漏れる
常子も会心の笑顔だ
花山「やるからには常子さんの言うとおりただの商品紹介ではなく世間に対し
危ないものはこれだ…と教えるものにしよう!」
常子「はい!」
花山「全て実名を出し問題のある商品は
どこが危険なのかを読者に届けよう!」
(一同)「はい!」
花山「早速企画会議を始める」
(一同)「えっ?」
花山「何から取り上げるべきだ?衣料か?食品か?ほら早く言いなさい!」
一同が慌てて立ち上がりメモを手に会議用の長机に集まる
美子「日用品とか…日用品」
「日用品?」
美子「私たちも手探りで始める企画ですのでまずは手に取りやすい
身近なものがいいのではないかと」
本木「だったら石けんはどうですか?
こないだ嫁が買った石けんが粗悪品で肌荒れを起こしたんです」
常子「いいかもしれません
老若男女問わず日常で接するものですし
毎日の暮らしに欠かせないものです」
花山「よし、第1回の商品試験は石けんにしよう」
(一同)「はい」
水田「いや…しかし我々だけで調べるには限界があるんじゃないでしょうか」
松永「石けんの成分なんかはメーカーに問い合わせて
聞けばいいんじゃないですか?」
花山「駄目だ!それでは広告を入れるのと同じ事になってしまう
成分などの分析は民間の検査機関に頼もう
我々がすべき事は使い勝手や使い心地等の試験と検証だな
それを視覚的にも読者に深く訴えかけるものにしなければ」
常子「はい」
美子「汚れの落ち具合を試験前と後で比較してみるのはどうでしょう?」
本木「ほならええ写真撮りまっせ」
(笑い声)
常子「お願いします」
「石けんは国内メーカーに限るのはどうでしょうか?」
花山「よし、早速明日から取りかかろう」
(一同)「はい!」

風呂上りのたまきの髪をふく鞠子(相楽樹)「へえ~商品試験?」
水田「うん、これは多分すごい企画になると思うな
おかあさんにも社内の熱気を見せてあげたかったよ」
鞠子「私に?」
水田「そう、花山さんも興奮した様子でさぁ」
たまき「たまきも見たかった!」
水田「おっ、そうか!たまきも大きくなったらお父さんの会社入るか?」
たまき「入る入る!」
水田「入るか、ハハハ…じゃあ一緒に働くか」

宗吉夫婦に最新号を届ける常子
「今回も監修して頂きありがとうございました」(美子と2人で頭を下げる)
宗吉(ピエール瀧)「ああ…ああ…ああ…それよりわざわざ来るの大変だろう
取りに行くのに…」
常子「いいんです、お世話になった方に自分の手で配りに行くのは
私の中の決め事ですから」
宗吉「ふ~ん、決め事ねえ」
美子が店の奥をチラチラと覗いている
宗吉「ん?美子、何やってんだ?」
美子「ああ…いえ何も」
宗吉「あっ…ハハハハ…タイショウならな、もう帰ったぞ」
「ええっ!」と奥に向かった美子が出てきたコックとぶつかりそうになる
コック・南大昭(上杉柊平)「お~!」
美子「南さん…」
南「どうかした?」
宗吉を見る美子「えっ?」
宗吉「ハハハ!引っ掛かってやんの」(と美子を指さす)
照代(平岩紙)「ウフフフフ!」

<美子はキッチン森田屋に勤める南大昭(ひろあき)と
交際を始めたばかりでした>

南「大将、仕込み終わりました」
宗吉「お~そうか、ご苦労タイショウ」
南「タイショウやめて下さいって大将」
宗吉「いいじゃねえかよ、おめえの名前音読みすればタイショウだろ?」
南「紛らわしくて」
宗吉「うっせえな俺はな、お前の腕を見込んでゆくゆくはこの店の
大将にしようと思ってんだ、今から慣れとけタイショウ」
南「はあ………常子さんどうも」
常子「こんばんは」
美子「もう終わりですか?」
南「ああ、あとは仕込みだけだったから」
美子「ああ…そうなの」
常子「よっちゃん今日もう終わっていいわよ」
美子「えっ、でも…」
常子「新しい企画も動き出すしたまには羽伸ばしてらっしゃい」
南を見て微笑む美子「はい」
照代「羽伸ばすんだったらたまには外で食べてきたら?」
美子「えっ?」
宗吉「おいおい、飯だったら俺が…」
照代「ここじゃできない話もあるでしょ?ねえ?」
美子「そんな事ありません…」
南「じゃあそうします…勉強にもなるし(美子に)着替えてくる」
美子「うん」
「じゃあ私失礼しますね、ごゆっくり」と常子が帰っていく
宗吉「はあ…あとは常子だけだな」
照代「どこかにいい人いるといいけど」
宗吉「うん…」
美子「う~ん…いい人がいたとしても
とと姉ちゃんにその気がなさそうですから」
宗吉「どうしたもんじゃろのぉ」
照代「…もんじゃろのぉ…フフフフ」
美子「どうしたもんじゃろのぉ…」

小橋家に飾られた鞠子の結婚写真と鞠子・たまき・水田の3ショット写真
君子(木村多江)「それじゃあ南さんとうまくいってるのね」
常子「それはそれは仲むつまじく」
君子「フフフフ、そう…でもコックさんとおつきあいするとは
食いしん坊の美子らしいわね」
常子「そうですね、フフフフ」
君子「どんな方なの?南さんって
ほら私…お会いした事ないから」
常子「あ~そうですね…男らしくて芯のある方ですかね」
君子「あら」
常子「私も森田屋さんでしかお会いした事ないですけど
よっちゃんを引っ張っていって下さっている気がします」
君子「そうなのね…ハハハハハ!」
台所の卓に石けんを置きノートに何かを書き込む常子
君子がそれをのぞき込む
常子「あ…商品を試験する企画を始めるんです…まずは石けんで
その参考になればとうちの石けんの事もメモしておこうと思って」
(とメモを続ける)
君子「お仕事楽しい?」
常子が君子を見る
君子「私の頃はみんな…常子のようにやりたい事を仕事にするなんて
考えはなかったからどんな気持ちなのかなと思って」
常子「そうですね…苦労はありますけど…今はただ純粋に楽しいです」
君子「そう…フフフフ」

ボードの前で一同に説明する花山「石けんの商品試験は汚れの落ち具合、
溶け具合、肌荒れ、香り、包装、泡立ち、以上6つの項目で比較し評価する
作業工程はそれぞれ手分けしてやってもらう事になるがまずは扇田君」
扇田「はい」
花山「石けん液の中で布を洗う係を頼む」
扇田「分かりました」
花山「美子さんはその布をよく絞って水けを切り
そのあとはしわがないようにしっかり広げて干してくれ」
美子「はい」
花山「布が完全に乾いたらその香りを調査するんだ」
(一同)「はい」

<こうして花山の指示のもと商品試験がついに始まったのです>

(つづく)

前回、常子が「かわいいね、その赤い傘」とわざわざ言ったので
赤い傘に何か意味でもあるのかな?と思っていたらまさか色落ちするとは!
だから目立ちやすい赤がよかったというだけの事かな
それにしても水で色落ちする傘なんてありえないだろw

ミシン怖いわ!
あんな体験したら一生、ミシン見るたびに思い出すよね
前回、古いミシンを壊してしまった寿美子はミシンに祟られた?

美子の恋愛はもう始まっていたのか
出会いからやるのかと思っていたがナレであっさり説明されてしまったw
ちょっとかわいそう…

あの時代で結婚もしないで仕事を続ける常子の事を
周囲の人たちはどう思っているのか?
ずっと気になっていたが今週はそのあたりもテーマのようだ
星野の再登場とも関連しているのだろう
宗吉夫婦と美子は「どうしたもんじゃろのぉ」と嘆き
君子は「お仕事楽しい?」と娘に訊ねる
君子は星野との別れの経緯も知っているはずだ(常子は家族を選んだ)
だから口が裂けても常子に「早く結婚しろ」などとは言えないだろう
君子自身、親に結婚を強いられて駆け落ちした人だし…



2016年8月15日月曜日

とと姉ちゃん(115)躍進を続けるあなたの暮し出版~台所の取材に出た常子はそこで…

昭和三十年八月 

路地で子どもたちが三輪車に乗ったりベーゴマやメンコで遊んでいる 
その中を駆けるまだ小さな女の子 
『水田』の表札の家に「ただいま帰りました」と入っていく 
鞠子(相楽樹)「お帰りなさい」 
君子(木村多江)「お帰りなさい」 
脱いだ靴をそろえた女の子が「おばあ様こんにちは」とキチンと挨拶をする 
君子「こんにちは」 
女の子は箪笥の上の万華鏡を掴むと畳に座りそれを眺めはじめる
(模様が見えるのが不思議なのか筒の先に手をかざしてみたりしている) 
君子が女の子の肩に手をかけ「どう?きれいでしょう?」 
女の子・たまき「触れない、とってもきれいなのに」 
君子「あっ…きれいなのはこの筒の中に入っていて
それは取り出せないし触れないのよ」 
たまき「でも触りたい!」(と万華鏡をのぞく) 
君子「何だかちっちゃくなった常子みたい」 
鞠子「そう、だんだん似てきてて…
この前なんか虹を近くで見たいって屋根に上ろうとしたんです」 
君子「まあ!本当そっくりね」 

街並みを歩く大人びた常子(高畑充希) 

タイトル、主題歌イン 

<このころ日本は敗戦直後のどん底の時代がうそのように
未曾有の好景気を迎えていました>

電器店の店先のテレビに人が集まっている
『あなたに逢いまショー』の司会者「本日は現代の源氏物語だと話題の
恋愛小説 蒼い葡萄 の作者五反田一郎さんにお話を伺います」
五反田(及川光博)「どうぞよろしく」

ペンとメモを手にテレビをのぞき込む常子

司会者「え~まず直川賞を受賞した心境をお聞かせ下さい」
五反田「ハハッ、そうですね、大変光栄に思っています
恋とは一人で落ちるもの…愛とは二人で育むもの」

相変わらずの五反田に常子が微笑む
女1「この作家さんすてきじゃない?」
女2「え~キザよ」

五反田「つまり僕が表現したかったのは依存ではなく
共存の美という事なのです」

<ちまたには物があふれ始め洗濯機、冷蔵庫、テレビの
いわゆる 三種の神器 も登場
給料の何倍もする新商品の発売合戦が過熱し
日本は大量消費の時代へとさしかかっていたのです
しかし利益のみを優先させた粗悪で危険な国産品や食品が出回る事も多く
消費者にさまざまな被害が及ぶ事もありました>

新編集室に元気よく入る常子「おはようございます!」
(一同)「おはようございます!」

<あなたの暮し出版は創立から9年
発行部数は15万部を超えビルの2階全てを借り切るほどに好調でした>

デスクで怒鳴る花山(唐沢寿明)「なってない!何度言わせるんだ!
よい文章というのは読んで分かりやすいかどうかだ
妙に凝った表現など…」
松永「自分に酔っているだけ…ですよね」(隣に立つ木立が松永を肘でつつく)
花山「分かってるならやりなさい!」
松永「すみません」
花山「君もだぞ!一度出したプランを二度出すな」
木立「はい」
花山「やり直し!」
仕事に励む花山を見て常子が微笑む
緑(悠木千帆)「常子さん、今回もうれしいお便りたくさん頂きましたよ」
葉書を受け取る常子「愛媛の宮地さんですね、いつもありがたいですね」
水田(伊藤淳史)「早速、愛読者カードにまとめておきますね」

<これは常子の意見で取り入れられた愛読者カードです
定期購読者の情報をまとめたもので発売前の宣伝はもちろん
季節ごとの挨拶も送り読者と交流を図る事で
雑誌の売り上げの安定につながっていました>

旧編集室改め研究室に入る常子「おはようございます」
(一同)「おはようございます」
常子「寿美子さん仕事は慣れた?」
寿美子「はい、憧れのあなたの暮しに携われてとても光栄です」
常子「ありがとう、頑張ってね」

<社員の数も20人近くに増え
新人だけでなくベテランも含め多くの人材が集まっていました>

編集長室
花山「万物が目まぐるしく変化していく今
台所に注目してみてはどうかと思うんだ」
常子「台所ですか?」
花山「今まで台所は家の隅っこや薄暗い場所に追いやられていたが
主婦が大半の時間を過ごす場所だろ?
本来もっと明るく家庭の中心にあるべき場所なんだ
台所をもっとこうしたい…この方が便利なのに…
という思いを多くの主婦の読者たちが抱えてる気がする」
常子「確かに」
花山「そこで方々の台所を取材し蛇口や流しの形など
どのような台所が使いやすいのかを記事にしたらどうかと思うのだが
常子さん、担当してくれないか?」
常子「はい、是非やってみたいです
すぐに手はずを整えて取材してまいります」
花山「ああ、頼むよ」
「はい」と部屋を出ようとした常子が立ち止まって振り返り
「花山さん、ありがとうございます」
花山「ん?」
常子「一緒に雑誌作りを始められて本当によかったと思ってるんです」
花山「具合でも悪いのか?」
常子「いいえ、フフフッ、先日読者の方から自分は家庭に入る道を選んだが
出版社の社長、編集者、モデルとして働く小橋さんに
自分を重ねて応援しているとお手紙を頂いたんです
ありがたい事ですよね…そんなふうに思って頂けるのは」
花山「うん、そうだな」
常子「若い頃は男性社員のお手伝いをする事が
女性に与えられた仕事だと思っていました
だからこうやって自分が思いついた事ややってみたい事を実現できているのは
とても恵まれているなと感じているんです
でもそれは全て花山さんのおかげです
いつも時代の先を見ている花山さんとだから
こうやって世の中に受け入れて頂けたんです」
花山「だが油断はできんぞ(と立ち上がり)
我々は戦後、物のない状況の中
庶民の豊かな暮らしを取り戻そうと雑誌を作った
それが今少しずつ実を結び豊かで美しい暮らし方を読者にきちんと
提供する事ができたという自負がある
だからこそ次の一手が肝心だ
住まいも衣服も食べ物も
あらゆる物が行き渡るようになった新しい時代に
あなたの暮しが読者に提供すべき知識は何なのか
それを見つけられない限りすぐに読者に飽きられるぞ」

ミシンの指導をする美子(杉咲花)「すみちゃんもはみ出ないようにね」
寿美子「はい」
常子たちは取材に出る準備をしている
と、寿美子が「あっ!」と声を上げる
ミシンを調べる美子「あ~壊れちゃったわ」
寿美子「すみません、私が厚地の生地ばかり縫ったから…」
常子「そうじゃないわ、年代物だものこうなるのも時間の問題だったのよ」
美子「浜松にいた頃からのものだしね」
常子「うん」
寿美子「どうしましょうか?作業上1台だけでは…」(ミシンは計2台ある)
常子「これは修理に出してもう一つ新しいのを買いましょう」
美子「いいの?」
常子「洋服作りに欠かせないものでしょ?
新製品も出たみたいだしそろそろ新しいのを買わなくちゃね」
美子「じゃあ私が選んでくるわね」
常子「うん」
常子「慎重にお願いね」
美子「はい」
寿美子「すみません…」
常子「大丈夫大丈夫」

主婦に戸をぴしゃりと閉められた扇田に本木と常子が近づく
本木「あかんなあ扇田君、断られてばっかりやないか!」
扇田「いやだって普通に台所を見せてほしいと言っても警戒されるばかりで…」

庭先で植木をいじる女をのぞき込む常子
女「あの…何か?」
常子「お庭のお花がとてもきれいでしたので」
女「あらそう?」
常子「はい、見とれてしまいます」
女「フフッ、こんな花でよかったらいくらでも見ていって」(と門を開ける)
「ありがとうございます、失礼します」と花を眺める常子「きれいですね」
女「そうかしら?」
常子「ええ」
本木と扇田が感心したように後ろから見ている
常子「うちの庭にもこんなお花植えてみたいですが
仕事の合間だとお手入れって難しいですかね」
女「あら、お仕事されてるの?」
「はい、あ…あの私」と茶封筒から雑誌を取り出す常子
「あなたの暮しという雑誌を作っておりまして」
雑誌を手に女「ああ…はいはい」
常子「台所の取材でこの辺りを回っていたんですがどこも断られてしまって…」
女「それはお気の毒ね…うちでよかったらどうぞ」
常子「本当ですか?ありがとうございます」
女「さあ、どうぞどうぞ」

本木「さすがや」

住宅地を歩く3人
本木「一時はどうなるかと思ったけど社長様々やな」
常子「運がよかっただけです」
扇田「この辺りに来て正解でしたね」
常子「ええ、新しい家も多いですし台所も新しいところが多かったですね」
本木「日本も豊かになってきたという証拠かな」
扇田「本当ですね」

<こうして新企画の台所特集の取材は少しずつ進んでいきました>

扇田「もう戻ります?」
常子「う~ん…あ…じゃああと一軒だけ」
本木「常子さん」
常子「はい」
「あそこはどうやろ?」と本木が一軒の民家を指さす
その家の前ではベンチに上りじょうろで水を浴びせる男の子と
下で傘を差してそれを受けて女の子が遊んでいる
「はい」と返事をした常子が子どもたちに近づく
「かわいいね、その赤い傘」
女の子「いいでしょう、青葉のお気に入りなの」
常子「青葉ちゃんていうの?(男の子を見て)お兄ちゃんは?」
メガネをかけた男の子「大樹」
常子「いい名前だね、大樹君はいくつ?」
大樹「8歳」
青葉「青葉はね…」(と左手を開いて常子に見せる)
常子「5歳?フフッ、5歳か」

<この子どもたちとの出会いが
あなたの暮しの代名詞となる企画の誕生につながっていくのです>

子どもたちと話す笑顔の常子

『星野』の表札

(つづく)

前週のエピソードは昭和二十五年なので5年お話が飛んだようだ
常子は35歳くらいになっているはず(美子は29歳くらい)
ちなみに第1話冒頭のシーンは昭和三十三年なのでこれより3年後

鞠子の娘のたまきは常子に似ているという設定のようだ
万華鏡を覗いたり「屋根に上ろうとした」と紹介されていたが
第1話で常子は物干し台に上り
「やっぱり上ってよかった、万華鏡の中にいるみたい!」と言っているんだね

鞠子が妄想の中で欲しがっていた直川賞を五反田が受賞していたなんて!

愛読者カードの件で常子がわざわざ
「愛媛の宮地さん」と名前を出したのが気になる
何かの伏線だろうか?

戦時中に供出させられそうになったが鞠子が守ったあのミシンを
会社に持ち込んでまで使っていたとは…
まあ昔の機械はシンプルだから部品を交換すれば長く使えたんだろうね

「じゃあ私が(ミシンを)選んでくるわね」と言う美子に
常子の「慎重にお願いね」はいい前フリだ
絶対買い物に失敗するよねw

上手く主婦の警戒を解いて取材を進める常子だが
女学生時代に歯槽膿漏の調査をしていた時とは段違いだねw
常子も大人になったもんだ

大樹と青葉はさすが植物オタクの星野が名付けそうな名前だ
大樹がメガネをかけているところも完璧w
赤い傘は星野絡みで何かあったんだろうか?