2016年7月6日水曜日

とと姉ちゃん(81)悲惨な境遇の綾、いつか私も太陽に…~起業を決意する常子、大金持ちになれるかも!

ボロ家の玄関のような場所 
そこに置かれた木箱を前に向かい合って座る常子(高畑充希)と綾(阿部純子) 
常子「怖い大家さんね…」 
綾「しかたがないわよ、こっちが悪いんだから」 
常子「でもあんな言い方…」 
綾「あの方も戦争で旦那さんとお子さん亡くして
一人で生きていかなきゃいけないから必死なのよ」 
登志子(中村久美)「常子さん、本当にお久しぶり
お変わりなさそうで何よりです」と席につく 
常子「ありがとうございます」 
登志子「どうぞ、白湯しかありませんが」と湯飲みを置く 
常子「すみません、頂きます」 
綾「…今日はどうしたの?何か御用が?」 
「あ…あの…これを渡そうと思って」と木綿の束を取り出し台の上に置く常子 
「よかったら太一君のおむつに使って」 
綾が傍らで眠る太一を見る 
そしてうつむき木綿を手に取り胸に抱き「ありがとう」と頭を下げる 
綾は少し涙ぐんでいるようだ
綾「お母様、少しいい?常子さんと2人でお話ししたいの」
「ええ」と常子に会釈して登志子が席を立ち表へ出ていく
(長い沈黙)
常子「どうしたの?」
「…本当はあなたに」と、うつむいていた綾が少し顔を上げて
「うちに来てほしくなかった…」
常子を正視できないのか目が泳いでしまっている
哀しそうに綾を見つめる常子
綾「こんなに惨めな暮らしをしてるってあなたに見られたくなかったの…
母だってもうずっとあんな感じよっ
口数は減っていつも暗い顔して口を開けば口論になるばかり
…こんなつらい状況で何のために必死になって生きてるのか…」
言葉もなく聞いているしかできない常子
「ごめんなさい…」と立ち上がった綾が
荷物の中からボロボロの雑誌を取り出し常子に見せる「これ覚えてる?」
常子「青鞜…綾さんまだお持ちだったの」
綾「ええ…あの日、東堂先生が教えて下さったのよね…」

(回想シーン)
教壇に立つ東堂(片桐はいり)
「元始 女性は実に太陽であった
真正の人であった
今 女性は月である…」

綾「あれからもう10年近くたつけど私はいまだこの言葉のとおり…
太陽じゃなくて月のままだわ…
だけどこの言葉があるから頑張れているわ
女はもともと太陽だったって思うと
いつか私も太陽にって元気が出てくるの」
やっと笑顔を見せた綾に少しだけ常子も微笑む
「おかげですっかりボロボロだけど…」と手にした青鞜を眺める綾
「私にとってこれが唯一の心のよりどころ…」
綾と青鞜を見つめている常子

闇市の雑踏を歩く常子
(鉄郎の言葉 お前の稼ぎで一家を養ってんだぞ
もっと金稼ぐ事を真剣に考えろ
綾の言葉 私にとってこれが唯一の心のよりどころ)

自宅で机に向かい何かを書いている常子
机に立てた3つの目標を見る

朝、仏壇に手を合わせる常子
君子の声がする「常子、遅れるわよ」
「は~い」と答えた常子が目を開けて竹蔵の写真を見つめ「行ってきます」

甲東出版の仕事終わり
皆が帰り支度をする中、常子が切り出す
「あの…皆さんにお話があります」
谷(山口智充)「どうした?改まって」
常子「私…甲東出版を辞めさせて頂きたいんです」
五反田(及川光博)「え?おいおい何の冗談だい?」
「冗談ではありません」と席に戻り
バックから退職願を取り出した常子が谷にそれを手渡す
谷「どうして?」
常子「理由は2つあります
まず1つ目は…お金です」
相田「お金?」
うなずく常子「はい、時代が目まぐるしく変わっていく中
今、母と妹は職がなく私一人の稼ぎで暮らしていくのはとても厳しいです
このままでは私はみんなを守れません、だから…
そして2つ目は…本を作りたいからです」
五反田「うん?」
常子「五反田さん以前、作りたい雑誌を作ろう…とおっしゃいましたよね」
五反田「うん…ああ、うん」
常子「あの日以来、私ずっと自分が作りたいものは何か考えていたんです
それで今までの自分の人生を振り返って
頭の中で思いを巡らせていたらようやく答えに…」
谷「いや…ちょっと待ってくれ
だったら辞めずにここで本を出せばいいじゃないか」
常子「雇って頂いている立場ではたとえ本が売れても稼ぐ事ができません」
谷「何だよ…どういう事だ?」
常子「自分で会社を作って出版しようと思うんです」
五反田(はぁ?)
谷「こりゃあ驚いた…」
五反田「教えてくれ…君が作りたい本ってのは一体…」
常子「女の人の役に立つ雑誌です」
谷「女の人の役に…」
常子「戦争が終わった今
たくましく前を向いて必死に生きている女の人がいる一方で
戦争に翻弄されて苦しんでいる女の人が
日本にはまだ数多くいらっしゃると思うんです
物がない、お金がない、どうやって生きていけばいいのかわからない
こんな状況で戦争によってひどい目に遭った女の人の手助けをしたいんです
だから…」
谷「そんな彼女たちの役に立つ雑誌か」
常子「はい」
五反田が納得したようにうなずく
谷「しかし女の君にそんな事が本当に…
第一、会社を起こすお金はあるのか?」
常子「いえ、蓄えはあまりありません
なのでまずは小規模の雑誌になると思います」
相田「女が出版社起こすなんて聞いた事もない…
失敗する可能性もあるんだよ」
「それは分かってます
でも…このご時世もう既に失敗してるようなものじゃないですか」
と笑う常子に男たちが顔を見合わせる
常子「黙って配給を待っていたら餓死してしまうような世の中ですよ
闇市に行けば私たち女のお給金と同じかそれよりも高い値段で
お米や日用品や食料品が売られています
このまま何もしない方が怖いと思ったんです
…それにもしこの賭けに出て当たれば大金持ちになれるかもしれない
今まで苦労かけてきた家族を喜ばす事ができるかもしれない」
五反田「ハハッ、大金持ちか」
嬉しそうに常子がうなずく
五反田(谷に)「どうやら覚悟は決まってるようですよ」
「ああ」と谷がうなずく
「今までたくさんお世話になったのにすみません」と頭を下げる常子
谷「確かに世間がメチャクチャな今こそ好機かもしれん」
驚いたように顔を上げた常子が谷を見る
谷「君がそう思ったならやれるだけやってみろ
失敗したらまた戻ってくればいい」
笑顔で「はい」と何度もうなずいた常子が鼻をすすり上げる
「皆さんに教わった事を糧にして一生懸命頑張ります!」
と晴れやかな笑顔でもう一度うなずく常子

(つづく)

綾の「うちに来てほしくなかった」はよくわかる
惨めな暮らしを同級生とかに見られたくないよね
綾はお金持ちでしかも優秀だったからなおさらだろう
あるよね…同窓会に行きたくないな~って時w

小橋姉妹は朝出かける時に仏壇に手を合わせるのが日課のようだが
常子の人生の節目の時にこの描写があるようだ

常子が退職の理由にまず、お金ですとハッキリ言ったのは良かった
綺麗事の理想みたいな話じゃなくて雑誌を売って自分で儲けたいと
これはドラマとしても劇中としても両方の意味で

2つ目の理由は作りたい雑誌を作るためと言ったけど
「辞めずにここで作れば…」と言う谷に
「雇って頂いている立場ではたとえ売れても稼ぐ事ができません」
と答えているから実質お金の問題だけだよねw

現実の世界でも独立話がこじれる事はよくあるけど
やっぱりお金が絡むと人間ガチで向き合う事になるからね
谷はさっぱりとしたいい人で円満退社できそうなので良かった
常子のよき理解者である五反田も後押ししてくれた
(どうやら覚悟は決まってるようですよ)

しかしあの場で「大金持ちになれるかも」発言はすごいねw
これはドラマならではで現実ではちょっとないだろうなぁ…
よほど雇用主と良好な人間関係じゃないと言えないよね

ああ、それと常子に少しだが蓄えがあると聞いてビックリ
もっとカツカツの生活だと思っていたが常子は意外にしっかり者だ
そういえばキャラメルも最後の一粒を残していたっけ…


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