2016年7月5日火曜日

とと姉ちゃん(80)時代に翻弄される女たち…逆にチャンス?と揺れる常子

小橋家で挨拶する綾(阿部純子)「ご無沙汰しております」 
君子(木村多江)「お久しぶりです」 
鞠子(相楽樹)「お子さんですか?」 
膝に小さな男の子を抱えた綾「ええ、太一といいます」 
美子(杉咲花)「こんにちわ」 
太一が笑ったようで一同も笑う 
常子(高畑充希)が湯飲みを運んでくる「ごめんなさいねお白湯しかなくって」 
綾「ううん」 
鉄郎(向井理)「常子の友達かい?」 
常子「あっ、叔父さん初めてでしたっけ?」 
鉄郎「うん」 
綾「村野綾と申します、叔父様のうわさはかねがね聞いておりました」 
鉄郎「どうせろくな話じゃねえだろ?」 
綾「はい、おっしゃるとおりです」 
鉄郎「そんなはっきり言うなよ」 
(一同の笑い声) 
鉄郎が「太一っつうのか、よっしゃおっちゃんと遊ぶか」と子どもを預かる 
綾「すぐにお会いしに来たかったんだけどそうもいかなくて」 
常子「あっ、どうしてここが?」 
常子からの手紙を取り出す綾
「これ、引っ越しする時くれたでしょ?住所書いてあったから」 
常子「ああ…」 
君子「名古屋にいらしたのよね?」 
綾「はい」 
鞠子「旦那様は軍医だって…」 
美子「大陸にいらしたんですよね?」 
綾「ええ、だけど戦争中病で亡くなりまして
一度は名古屋に戻ったんです、でもすぐに満州にまた…
最後は向こうでしたので死に目にもあえず」
常子「ご苦労なさったのね…」
綾「なんとか息子と2人で実家に帰ったんだけど空襲で焼けちゃっててね
何にも残ってなかったわ…
母は無事だったんだけど父は最期まで家を守ろうとしたらしく
焼けた家とそのまま…」
常子「そうだったの…」
君子「ご愁傷さまでございます」と、挨拶する一家
綾も手をついて「お心遣いありがとうございます」と返す
「今は母と3人で蒲田近くに間借りして暮らしています」
常子「お仕事は?」
首を振る綾「なかなか見つからなくて…
焼け残った帯留めや指輪を売ってなんとか…
太一のためにも頑張らないといけないんだけど」
常子「…何かお力になれる事はないかしら…必要なものとか」
綾「…お言葉に甘えさせてもらうなら布とか浴衣の余りはないかしら」
常子「布?」
綾「私の浴衣も母の浴衣ももうおむつになってしまっていて…」
常子「お安い御用よ浴衣くらいは」
綾「いいの?」
常子「もちろん、フフフ」
君子たちも笑顔でうなずいている
綾「ありがとうございます」
君子「そうだわ綾さん、すいとんぐらいしかないけど召し上がってらして」
常子「そうよ、一緒にどう?」
綾「ありがとうございます」
太一を抱いた鉄郎「よし、夕食はすいとんだってさ、よかったな」

夜道、太一を背負った綾を送る常子
綾「本当にいいのに」
常子「いいのいいのそこまで見送らせて」
綾「やはり訪ねてよかったわ」
常子「ん?」
綾「久しぶりに笑ったわ、持つべきものは学友ね」
常子「私も久々に綾さんにお会いできてよかったわ
それにかわいい太一君にも会えて」
綾「…あのころには想像もできなかったものね…こんなふうになるなんて」
常子「綾さん?」
笑顔を見せる綾「ここまででいいわ」とカバンから布地を取り出し
「これ、本当にありがとうございます」
常子「ううん、困った時はお互いさまでしょ
あっ、そうだ…今度お母様にご挨拶に伺わせてくれない?」
綾「いえ…結構よ」
常子「でも…」
綾「いいの、あなたもお仕事で忙しいでしょ?私も子育てで大変だから」
常子「だったら住所だけでも教えて…お手紙のやり取りくらいしましょうよ」
綾「…うん」

常子が家に戻る
君子「綾さん、元気そうでよかったわね」
常子「はい」
食器を拭いている鞠子「私はつらくなっちゃった」
常子「ん?」
鞠子「綾さんみたいにお金持ちできれいで頭がよかった人でも
苦労してると思うと何だか…やっぱり女って損ね
戦時中、産めよ増やせよで結婚推奨されて子どもつくって
でも夫は戦死、子どもと残されて…そんな人だらけじゃない
大学出してもらってもこうやって仕事にも就けない女もいるし」
君子「何言ってるのよ鞠子
こんな時代になるなんて誰も思わなかったのよ」
鞠子「ごめんなさい…」
常子(明るく)「鞠ちゃん、しまうね」
鞠子「ありがとう」
君子が針に糸を通すのに苦労している
美子が「かか、私が」と針と糸を受け取る
君子「駄目ねえ、もう老眼がひどくなって…」
君子の後ろに座る常子「かか…ごめんなさい」
振り向く君子「常子も何?」
常子「ずっとかかを働かせてしまって…
本当はもう楽させなきゃいけないのに
いくつになっても苦労かけて」
君子「何言ってるのよ、苦労だなんて思ってないわよ」
妹たちもしんみりとした顔になる
横になり顔に本を被せて眠っていたような鉄郎が起き上がる
「おい常子、明日ちょっとつきあえ」
「はい…」と怪訝そうな常子

闇市の雑踏を歩く2人
常子「叔父さん、用って何ですか?
また余計なものでも仕入れようとしてるんじゃ…」
鉄郎「バカ、そんなんじゃねえよ
こいつらの顔見せようと思ってよ」
常子「えっ?」
鉄郎「こいつらこいつら…俺はこれ見ると胸が高鳴るんだ
みんな生きてるって感じがするじゃねえか」
常子「はい」
鉄郎「それにもう一つ胸が高鳴る事がある…女だよ」
常子「女?」
闇市で声を張って商売している女性たちが周りにたくさんいる
鉄郎「みんな男に言われるままじゃねえ
言い返したり文句言ったりしてんだろ
そんな様子見てたら笑えんだ
戦争の間、男は戦地に行っちまって女だけで守り抜いたって事が
自信っつうかよ、強さにつながったのかもしんねえな
時代は変わったんだ常子
こんなゴチャゴチャな世の中だから女でもやりたい事ができるようになった
女にもチャンスが巡ってきたんだ
今だったらお前も大金つかめるかもしれねえんだぞ
そしたら家族に楽させてやれる」
闇市で働く女性たちを見まわし鉄郎の言葉に何かを思う常子

甲東出版では皆が精力的に活動している
五反田(及川光博)「久々なのに順調順調」
常子「新世界、売れるといいですね」
五反田「「売れれば君の企画も通りやすくなるしね」
「そうですね」と生返事のような常子を気にする五反田
何かを迷っているような常子

<常子の気持ちは大きく揺れ始めていました
このまま甲東出版で働くべきかそれとも…>

闇市を歩く常子に女性たちの姿が映る
赤子を背負って働いている女もいる
屋台では40円だという口紅に高いと文句を言う客の女たち
売り手も女だ「高くないよ!あんた隣の闇市行ってごらんよ
50円で売ってんだよ」
常子を見つけたらしい鉄郎がやって来る
「おい常子、おい常子、仕事帰りに何やってんだ?」
常子「いや…もし出版社を辞めたら何をしようか参考にと思いまして」
鉄郎「おぉ~そうか、ついにお前も!」
常子「まだ決めた訳じゃないんです、もしそうなったらという話です」
鉄郎「まあ、そう考え始めただけでも大きな一歩じゃねえか
連れ出したかいがあったな」
と、鉄郎が脇に抱えたものを見る常子「叔父さん、それって…」
鉄郎「ああ…木綿だよ、偶然安く手に入ったんだ」
常子「その木綿、少し分けて頂けませんか?」
鉄郎「ん?」
常子「綾さんにあげたいんです」
鉄郎「いや…いくら何でも人がよすぎんだろぉ
友達だからって何でもくれてやる義理はねえぞ」
「あるんです、女学校の時…」と試験不正のエピソードを話す常子
「私、恩返しするって言ったのに何もできなくて…だからせめて…」
「…半分だけだぞ」と鉄郎が木綿を渡す
「ありがとうございます!」と笑顔の常子

バラック建てのような粗末な小屋が並ぶ通り
常子がメモの住所を頼りに綾の住まいを探している
「坂梨」という表札の下に「村野」と書いた貼り紙のある家に辿り着く
と、中から女の怒鳴り声が聞こえてビクッとなる常子
「何回言ったら分かるんだい!こっちの部屋に入れんじゃないよ!」
常子がガラス戸に近づき中を覗く

綾「すみませんでした」
「またお漏らしまでしやがって、さっさと洗濯しな!」と女が
玄関すぐの土間に正座している綾と
並んで太一を抱いている登志子(中村久美)に着物を投げつける
それが体に当たるが土下座するように頭を下げている綾
女「今度やったら出ていってもらうからね!」
登志子「申し訳ございませんでした」
女が奥に去り綾が投げつけられた着物を手に立ち上がり振り向いて
戸の向こうに立つ常子と目が合う
力なく会釈する常子と驚いてそして目をふせる綾
綾の悲惨な境遇を目にして動揺しているような常子

(つづく)

今回も鞠子はネガティブ全開だ
綾のように時代に翻弄された女はいっぱいいる…女は損だと語り
最後には大学出ても就職できない…と自虐まで入って
君子にたしなめられてたね
まあ常子が能天気な前向きキャラだから
その分鞠子がネガい描写を引き受けるという事だろう

小心者の常子は怒鳴り声を聞くと勘違いしてすぐに謝ってしまったりするが
このビクッとした時の常子がいちばん可愛い
ビクつき美人だね

それにしても綾の現実はショックだ
あの玄関みたいなところで暮らしているのかな?
24話で森田屋2階の常子たちの狭い部屋を訪ねた綾が
「私には絶対に無理な生活」だと言ったのも伏線だったみたい
中田登志子って…綾の母親は中村久美さんだったっけ?
まあ綾の件も常子が起業を決意する理由のひとつになるのだろう

 

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