2016年5月16日月曜日

とと姉ちゃん(37)東堂チヨ登場~らいてうに傾倒する常子

昭和十一年春 
仏壇の父の写真に手を合わせ「行ってきま~す」と囁く常子(高畑充希) 
表では妹たちが常子を待っている 
美子(根岸姫奈)「相変わらず遅いなあとと姉ちゃん」 
鞠子(相楽樹)「今日も全力で走らないといけないか…」 
階段を下りてきた常子が厨房で働く森田屋の面々に挨拶する「行ってまいります!」 
(一同)「行ってらっしゃい!」 
玄関を出る常子 
美子「もう、とと姉ちゃん遅い!」 
常子「あ~ごめんごめん」 
鞠子「教科書忘れてない?」 
常子「あ~大丈夫」 
美子「お弁当は?」 
常子「あ~大丈夫」 
「常子、ハンカチ忘れてない?」と、君子(木村多江)が厨房から出てくる 
常子「大丈夫です」 
「筆入れは?」と、誰かの声 
常子「大丈夫…あっ」 
すると滝子(大地真央)がそこに歩いてくる「おはようさん」 
(一同)「おはようございます」 
滝子「ようやく制服もあつらえられたようだね」 
嬉しそうな常子「はい、おばあ様のおかげです」 
滝子「ま…それにしても馬子にも衣装とはよく言ったもんだねえ」 
常子「えっ?」 
滝子「アハハハハ!」 
含み笑いの鞠子と美子 
常子「えっ?えっ?私ってそんなに…」 
(一同)「ハハハハハ!」 
常子「え~?」 
滝子「ほらほら、あの…遅れるよ、急ぎな」 
常子「あ、あ、あ…ちょ…行ってまります!」と、走っていく3姉妹 
滝子「あっ、頂き物のお菓子がある、後で取りにおいで」と、君子に声をかける 

<君子と滝子は今までの時間を取り戻すかのように平穏な日々を過ごしていました
そしてこの春、常子は女学校の五年生です、最終学年を迎えました> 

タイトル、主題歌イン 

女学校の五年二組の教室
教室のあちらこちらでお見合いや結婚の話をする学生たち

<この時代、ほとんどの女学生は卒業後お嫁に行きました
ですが常子は…>

「白田屋の販売員が32円で岩本商事の事務員が30円で…」
と、自分で新聞の求人広告を切り抜いて作った求人ノートを見ている常子

<僅かな職業婦人の求人情報を集めていました>

綾(阿部純子)「そんなにお安いの?全て男の人の半分以下じゃない」
常子「しかたないわ、男の人とは違うもの」
「これは?タイピスト、月に40円」と、綾がノートを指さす
常子「駄目よ、それは枠が埋まっちゃってるから」
綾「枠?」
常子「先生に聞いたの、我が女学校からのタイピストの推薦枠は
一組の後藤さんに決まったんだって」
綾「残念ね、常子さんもいっその事
職業婦人なんて目指さないでお見合いでもなさったら」
常子「駄目駄目、なんとかして稼がないと、みんなの食いぶちを…
あ~どうしたもんじゃろのぉ…」
教室に鐘の音が鳴り新しく着任した女教師(片桐はいり)が入ってくる
黙って学生たちを見渡した後、「よろしい…では皆さん、まず床に座って下さい」
(ざわめく教室)
学生「あの…床にですか?」
教師「ええ、その場であぐらをかいて下さい」
(戸惑う学生たち)
教師「どうしました?できませんか?」
「いえ…あの…」
「何をおっしゃってるの?」
「そんな事できる訳ないじゃない」という学生たちの声
すると教師は履物を脱ぎ、教壇の前にあぐらをかいて座り目を閉じる
目を開いた教師が目の前の学生に訊ねる
「あなたはなぜ、あぐらをかかなかったのですか?」
学生「それは…お行儀が悪いからです」
教師「なるほど…では質問を変えましょう
あなたは男性があぐらをかいている姿を見てお行儀が悪いと思いますか?
お行儀が悪いとは一体誰が決めた事でしょう?」
立ち上がり履物をはく教師「皆さんは周囲の考える、女性とはこうあるべきだ…
という定義を疑った事がありますか?誰でもができる事を
女性だからできない、してはいけないと決めつけてはいませんか?」
教師を見つめる常子

<まさにこの先生の言うとおり常子は女だからと
最初から枠を作って仕事を選ぼうとしていたのです>

教師「その事を考えてほしくて意地悪をしてしまいました
今日からは女だからと境界線を引かないで
自分の気持ちに正直に挑戦する毎日にしていきましょう

元始、女性は実に
太陽であった。
真正の人であった。
今、女性は月である。
他に依って生き、
他の光によって輝く、
病人のやうな
青白い顔の月である。

そう高らかに語った女性たちがいました
この言葉の意味を皆さんと考えていけたらと思っています
五年二組の担任になります東堂チヨです、どうぞよろしく」
(一同)「よろしくお願いします…」
東堂「それでは授業を始めます、教科書を出して」
綾が常子に「何だかすごいわね」と囁く
「うん」とうなずき、東堂を見つめている常子

授業が終わり、廊下で東堂に声をかける常子と綾
常子「先生!今日の授業とても感銘を受けました」
東堂「それはよかった」
常子「あの…女性は太陽…っておっしゃった方って…」
東堂「その名は平塚らいてう(らいちょう)」
常子「平塚らいてう…」
東堂「ご興味がおありなららいてうが作った雑誌が1冊あります、お貸ししましょうか?」
「はい!是非お願いしま…」と、頭を下げてから綾を振り向く常子
綾「私は結構、気になさらないで」
常子「本当?」
東堂「ついてらっしゃい」
常子「はい!」
そんな常子を楽しそうに見送る綾

雑誌「青鞜」を読みながら一人の帰り道
常子「さてここに青鞜は産声を上げた、現代の日本の女性の頭脳と手によって
はじめてできた青鞜は産声を上げた
女性のなす事は今はただ嘲りの笑いを招くばかりである
私はよく知っている
嘲りの笑いの下に隠れたるあるものを
そして私は少しも恐れない
しかしどうしよう
女性みずからがみずからの上に
更に新たにした羞恥と汚辱の惨ましさを
女性とはかくも嘔吐にあたいするものだろうか
否々、真正の人とは…
私どもは今日の女性として出来るだけの事をした
心のすべてを尽くしてそして産み上げたその子供がこの青鞜なのだ」
常子は雑誌に目を落としたまま帰宅して
照代(平岩紙)や富江(川栄李奈)に声をかけられても気付かない
夕食で卓についてもそのままだ
君子「常子、いつまで読んでるの?いい加減に…」
読み終わったのか、やっとパタンと雑誌を閉じた常子が
「はぁ…」と、幸せそうな顔をする
そんな常子に解せない様子の小橋一家
周りに気付く常子「あっ…お待たせしてごめんなさい」
一同「頂きます」と食事が始まるが
食べながら「ん~!フフフフフ!」と一人ご機嫌な様子の常子
森田屋の面々のヒソヒソ声
まつ(秋野暢子)「大丈夫かい?常子のやつ」
富江「ずっと雑誌読んでたけど」
長谷川(浜野謙太)「勉強に目覚めた?」
宗吉(ピエール瀧)「鞠子なら分かるけどな」
照代「ねえ」
まつ「かわいそうに…慣れない事やるからおかしくなっちまったんだねえ」

<こんな皆の戸惑いも常子の耳にはまるで入っていませんでした>

部屋に戻っても上機嫌で鼻歌を歌い浴衣を畳む常子

<常子は目に入るもの全てがこれまでと違って見え
太陽の光を浴びたようなすがすがしい気持ちになっていました>

そんな常子を見た君子が、その隣で生気なく浴衣を畳む鞠子に目を止める

翌、桜の花が咲く路地で将棋を指す宗吉と隈井(片岡鶴太郎)
長谷川が「一杯引っ掛けやすか?」と、酒を持ってくる

居間では照代と富江が手仕事をしている
まつがラジオをつける
「今回の不祥事に関して寺内陸軍大臣は
陸軍は大いに反省自戒し今後は真に軍民一体の体制を確立し
国防体制をますます強化するため地方行政の…」

厨房で天ぷらを揚げる君子
キャベツを切っている常子
美子もお手伝いをしているようだ

2階で一人机に向かう鞠子
ノートに「進学…」という文字を書こうとして黒く塗りつぶしため息をつく
そのまま仰向けに畳に寝て何か悩んでるような鞠子

<鞠子のこのため息が常子の将来に大きく関わっていく事になるのでした>

(つづく)

冒頭の常子は家族からいろいろ突っ込まれてたね
とと姉ちゃんというよりも手のかかる末っ子キャラみたいになってた
さらに滝子の「馬子にも…」は25話の綾の「妹さんのを見たらそう思った」
に続く、常子の不器量設定描写だろうか
本人も「私ってそんなに…」と言ってたが

一組の後藤さんはわざわざ回想シーンみたいな演出で顔を見せていたが
今後、物語に登場するキャラなのだろうか?
と思ったらあれは「おのののか」とのこと
どおりでかわいいわけだ、どこかで登場するのだろう

思春期の常子が新しく知った価値観や思想に傾倒していく様子が
よく描写されていたと思う
誰でもあの年頃はあんなふうになった憶えがあるよね

宗吉が隈井の事「隈じい」て呼んでたねw
桜が散る路地で平和に将棋を指してるシーンの後に
ラジオの音声で時代背景の描写もあった
昭和を描くのに戦争は避けて通れないもんね
(あのニュースは二・二六事件に関してのものらしい)

このドラマは常子の表情で終わる事が多いけど
今回は珍しく鞠子エンドだった
鞠子の悩みが常子の将来に関わってくるというナレだったが…

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