2016年5月19日木曜日

とと姉ちゃん(40)常子、練り歯磨きを作る

綾の屋敷 
本を手に机に向かう綾(阿部純子)「それでうちに?」 
綾の自室の調度品を調べている常子(高畑充希)
「そう、綾さんの家で舶来品を見たとき感激したの」 
綾「そんなものを見て人の役に立つ商品なんて思いつくのかしら」 
常子「う~ん、分からないけど挑戦だからいいの」 
本を置き振り向く綾「挑戦?」 
綾を見て生き生きと常子「女だからって恐れずに挑戦する事が大事って
東堂先生がおっしゃってたの、だから私も」 
立ち上がった綾「こ~んなに影響受けやすい人初めて見たわ」
と、常子のメモを取り上げて読み「フフッ!フフフ…」と笑う 
「そんなに笑う事ないでしょ」
と、メモを取り返す常子「あっ…ねえ、あれは何?」 
綾「それは文鎮ね」 
手に取って眺めてみる常子「文鎮…へえ~かわいらしい形ね」 
ノックの音がして綾の母・登志子が入ってくる 
挨拶する常子 
登志子「綾から常々お話は…」 
常子「あ~」 
女中がティーカップと洋菓子をテーブルに置く 
登志子「どうぞ召し上がって」 
常子「ありがとうございます」 
登志子「そうそう綾さん、例の雑誌なんだけれど…」 
綾の目が流れる 
登志子「方々探したんだけどなかなか置いてなくて」 
綾「お母様、その話は後で」 
登志子「どうして?平塚らいてうの青鞜」 
常子の口元が緩む 
登志子「今、神田の敬信堂に問い合わせてるところだから
もう少し待ってちょうだいね」
綾「はい」
女中が退席する「失礼します」
登志子「ありがとう」
綾の顔をゆっくりと覗き込んでいる常子
綾「何よ」
モノマネしてる口調の常子「こ~んなに影響受けやすい人初めて見たわ、フフフ」
綾「私はそういうのじゃありません、ただ勉強のために」
常子「ふ~ん、勉強ねえ…」
綾「常子さん!意地が悪いわ!」
常子「あ~おいしそう」
登志子「仲がおよろしいこと」と、常子と2人で笑う 口を結ぶ綾
すると「イッタ~!」と、登志子が右頬を押さえる
歯槽膿漏だと聞いてまつを思い出す常子
登志子「女の人に多いそうなのよ歯槽膿漏」
常子「女の人に?」

大澤歯科医院の前
メモを手に物影に隠れて玄関を見張っている常子
女が出てくる
「すみません」と、近づき「今日は虫歯の治療ですか?」と聞く常子
女「いいえ、歯槽膿漏なもので…」
常子「お~!ありがとうございます」と、笑顔でメモを取る
その後も出てくる女たちに訊ね、歯槽膿漏と聞くたびに喜んでいる常子
赤子を背負った女が出てくる
常子「すみません、あの…奥様も歯槽膿漏ですか?」
女「ええ…」
「すごい!」と、まるで奇跡を目の当たりにしたようにメモを口に当てる常子
女「あなた、人が歯槽膿漏なのがそんなに嬉しいの?」
常子「いや、興味深いなと」と、笑顔でメモしている
「興味深い!?どこまで失礼な方なの?」と、女が詰め寄る
通りかかってその様子を見ていた星野(坂口健太郎)が「妹が無礼な事を…
後できつく叱っておきますので失礼!」と謝り、常子の手を取って走って逃げる
女「待ちなさい!こらっ、あなた!」
走りながら常子「すみません!」

路地裏まで逃げてきた2人が握った手を見てぎこちなく離す
(長い間)息を整える2人
星野「あ…ごめんなさい妹なんて…
そうでもしないと場が収まらなさそうだったので」
常子「あ…こちらこそすみませんでした」
星野「いえ…それにしても歯医者さんで何を?」
常子「ああ…女性に歯槽膿漏が多いかどうか検証していたんです」
星野「あ~…」
常子「かなりの方が苦しんでいるようでした」
星野「女の人は更年期障害だったり子どもを産むから」
常子「えっ、えっ?」
星野「妊娠すると体に栄養を蓄えるようになる、歯槽膿漏はその時とり過ぎた
栄養であったりホルモンバランスがおかしくなるのが原因だといわれています」
常子「よくご存じですね」
星野「母がかかった事があったのでね」
常子「お母様が?」
星野「ええ、陸軍病院の歯科医に診てもらっていました
でもその方が外地に派遣されるようになり、その後は練り歯磨きを作って」
常子「練り歯磨き?」
星野「ええ、それで毎食後にしっかり歯磨きをしたらよくなりましたよ」
常子「え…お母様ご自身で作られてたんですか?」
星野「はい、その先生から作り方だけ教わって」
目が動く常子「それだ」と、笑顔になる
星野「えっ?」
「それですよ星野さん!ありがとうございます!」
と、星野の手を両手で握り飛び跳ねる
そして握った手に気づいてパッと放す
笑っている2人

<常子は星野から教わったとおりに練り歯磨きを作ってみる事にしました>

常子たちの部屋
美子(根岸姫奈)がちゃぶ台のすり鉢を押さえ
材料を入れた常子がすりこぎで混ぜる
美子「ねえ、まだ?」
常子「もうちょっと」
美子「出来たらなめさせてね」
常子「いいけどこれ食べ物じゃないのよ」
鞠子(相楽樹)が部屋に入って来る
美子「あっ、まり姉ちゃんも一緒に味見しよう」
常子「だから食べ物じゃないって、あっ、鞠ちゃん
皆さんまだ下にいらっしゃった?」
鞠子「うん、お茶の間にいたけど」
「よ~し」と手を止め「はい!」と鉢を持ち上げて部屋を出ていく常子
「ちょっととと姉ちゃんまってよ」と、追いかける美子
部屋に残った浮かない顔の鞠子

居間
宗吉(ピエール瀧)「へえ~歯磨きねえ」
照代(平岩紙)「毎食後に歯を磨くの?」
常子「はい、歯槽膿漏もよくなるそうです」
宗吉「毎朝塩で磨いてるじゃねえか、それじゃ駄目なのか?」
常子「1日1回ではなく毎食後これで磨く事が大切なんです」
まつ(秋野暢子)「それでこれ(歯槽膿漏)治るのかい?」
常子「はい」
富江(川栄李奈)「え~!ちょっとなめてみてもいい?」
常子「もちろんもちろん、皆さんちょっと試してみてください」
長谷川(浜野謙太)「じゃあ遠慮なく」と、一同が指につけてなめるのだが
美子「うげぇ…」と、せきこむ
宗吉「何じゃこら」
まつ「何か気持ち悪いねこれ」
富江「ヒリヒリする」
照代「油っぽいわ」
口をパクパクさせている長谷川を指さす宗吉
「ハハハッ!言葉にできねえほどまずいってよ」
「えっ?そんなに駄目ですか?」と、なめた常子を含め一同「ん~…」
常子「すいません、作り直します」
歯磨きを作って売るつもりだと言う常子に驚く森田屋の面々
常子「今、女の人に歯槽膿漏が増えてるそうなんです
でも歯医者さんに通って治療するのも大変じゃないですか
ただ、この歯磨きがあればその苦労も…なくなる」
(一同)「う~ん…」
宗吉「まあ~分からねえ話でもねえけどよ…」
長谷川「わざわざ金払ってまで口ん中おかしくなるもん買うやつはいねえよ」
常子「だからそれは改良して…」
まつ「まあよしときな、商売なんてそんな甘いもんじゃないよ」と、立ち上がる
常子「ん~でも…」
照代「無駄な努力になるんじゃない?」
宗吉「そんなもんに時間とられてこっちがおろそかになるのも参るしな
よし、明日も早いしチャッチャと寝るか」と、去っていく森田屋の面々
常子「無駄な努力…かかもそう思いますか?」
君子「私の事より常子はどう思うの?」
常子「私は…やってみたい」
君子「じゃあ、おやりなさい!挑戦する事が大事なんでしょ?」
「はい」と、笑顔でうなずく常子
美子「私も手伝う」
常子「おっ!よっちゃんありがとう」

自室に戻って改良を続ける常子と美子、だがうまくいかない…
「疲れちゃった、ご不浄行ってくる」と、美子が部屋を出る
常子「う~ん、ちゃんと星野さんが書いて下さったとおりに
やってるんだけどなあ…」
机に向かって読書をしている鞠子に味見させる常子だが
鞠子「ん~…油っぽいし後味悪い」
常子「う~ん…」
鞠子「今日は諦めて明日また星野さんに聞いてみたら?」
首を振る常子「いや、もう一回」
また作業に戻る常子を見て鞠子「とと姉は偉いね」
常子「うん?何が?」
鞠子「東堂先生に言われた事もう実践して…新しい事に挑戦するの怖くないの?」
常子「う~ん、分からないけどその方が性に合ってるのよ
先生がおっしゃってたとおり、できないって決めつけるより
やってみた方が楽なのよ」
常子の言葉に何かを感じて考える鞠子
と、常子が材料の入ったお椀をひっくり返す
立ち上がる鞠子「もう!貸して!不器用で見てらんない」と、隣に座る
常子「そんな言い方…」
星野が書いたメモを見る鞠子「癖のある字ね」
「達筆なのよ」と笑う常子
鞠子「このとおりに作ってるのよね?」
常子「うん、材料も全部そろえてるし…」
鞠子「う~ん…でもこの歯磨き何か足りないような気がする…あれ?」
と、メモの字を指さし「これも材料なんじゃない?これこれこれ」
常子「え~?それ書き損じてグチャグチャって消した跡なんじゃないの?」
鞠子「いや、字よ…え~っと…薄いって字かな?…こっちは荷物の荷?」
何かに気づいた鞠子「あっ」と、常子を見る
顔を見合わせる2人「薄荷だ!」
鞠子「とと姉、薄荷は?」
常子「ない」
顔をしかめる鞠子「えっ?何で?」
常子「いや、ないよ」

<妹まで巻き込んだ歯磨き作り、果たしてどうなる事やら?>

ちゃぶ台であれやこれやと相談している常子と鞠子

(つづく)

歯医者の前で張り込みしてる常子はちょっと怪しかった
鳩を捕まえる件もそうだったけど何かに夢中になると常子はおかしくなる
まあ走りながらだけど、ちゃんと最後に謝ってたけどね

路地裏で星野と手を離す件は、やっと異性として意識し始めたって感じかな?
寺で貧血の星野に抱きつかれた時はビックリしただけだったように思う

宗吉が塩で磨いてる…て言ってたけど前々回の常子鞠子の歯磨きシーンも
何気に説明的な伏線だったんだね

常子の起業に宗吉たちは否定的な意見だったけど
常子がやりたいんだったらやりなさい…と言ったのは君子らしい考えだね
自分自身の思いを大事にして生きている人だから

「明日星野さんに聞いてみたら…」と、鞠子の言う事はいつも正しい
なのに夢中になってる常子は止まらない
そんな常子に巻き込まれて手伝ううちに悩んでたはずの鞠子も元気になるのかな?










 

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