2016年8月29日月曜日

とと姉ちゃん(127)星野一家と別れ傷心の常子は子どもがいる康恵や鞠子の話に…

ビルから出てくる康恵(佐藤仁美)と見送りの常子(高畑充希)と美子(杉咲花) 
康恵「今時の若い男性はアイロンもろくに使えないんだねえ」 
美子「本当ですね」 
康恵「情けないねえ…あっ、私入れて10人ね」 
常子「お骨折り頂きありがとうございます」 
康恵「いいんだよっ、それにあんたらもアイロン使える主婦の当てなんて
ろくにないだろ?結婚してないんだから」 
苦笑いの常子「そうですね…」 
少し慌てる康恵「あ…あっ、悪気があって言った訳じゃないんだよ」 
常子「いえいえ…」 
康恵「私だってつい最近まで戦争未亡人だった訳だから…」 
美子「…ずっと気になってたんですけど
どこで知り合った方なんですか?お相手の方って」 
康恵「カフェーの時の客でね…気に入られてさ」 
美子「へえ~」 
康恵「全然好みじゃなかったんだけど(と右手の親指と人差し指で円を作り)
金は持ってたから」 
常子と美子が顔を見合わせて笑う 
康恵「それに向こうの連れ子が懐いちゃってさ
それが何だかかわいくてねえ…」 
康恵の話に星野一家の事を思い出してしまったような常子 

康恵の申し出により雇う事になった一般の主婦のテスターに説明している常子
「え~今回皆さんにこちらにある10台のアイロンを使って
試験して頂きたいのはアイロンの使いやすさです
一日50枚のワイシャツにアイロンをかけて頂く事になるのですがその際
こちらの取っ手の持ちやすさ、重さ、細かい部分のシワの伸びやすさなど
どんな点が使いやすくどんな点が使いづらいのか…」

<康恵が集めてきた主婦の仲間たちは早速働き始めました>

「どうですか?」と声をかける常子
康恵(アイロンを手に持って)「これすぐ熱くなるんだけど冷めるのも早くてね」
常子「それだと頻繁にコードを抜き差ししないといけませんね」
康恵「ああ、こりゃ面倒だね」
主婦1「こっちは先っぽが全然熱くならなくて細かいところのシワが伸びないわ」
主婦2「こっちのは持ち手がすぐ熱くなってやりづらいわ」
常子「皆さん、気を付けて下さいね」

<彼女たちの声により具体的な試験項目が固まっていきました>

主婦たちが帰ったあとも基礎的な試験を進めるスタッフ一同
資料を見る花山(唐沢寿明)「うん…どこも温度の上昇は早いみたいだな」
常子「ああ…外国製よりも小さく設計されてるからですかね」
緑(悠木千帆)「皆さん、夜食用のお握り置いときま~す」

<底板全体に均一に熱が行き渡るかを調べる試験や
電源を入れたまま置いておくとどれだけ柄が熱くなるかを測る試験
正確な結果を導き出すために試験は何度も繰り返し行われます
アイロンの商品試験は連日深夜まで及び2か月にわたって行われました>

昭和三十一年九月

常子「皆さん適宜休憩とって下さいね」
(主婦たち一同)「はい」
康恵「ぼちぼち終わりが近づいてきたねえ」
常子「そうですね、でもこんなに長い間お母さんを拘束してしまって
お子さんたちが寂しがってないか心配で…」
康恵「そんな事ないよ、うちに帰ったら飛んできて
今日は何したの?…って聞いてきてさ」
常子「あら」
康恵「勝手にあなたの暮しを読んだりして…
母親が関わってる事が誇らしいみたい
私も気分よくなって話しちゃうんだけどね
そしたら目キラッキラさせて聞き入っちゃってさ」
常子「かわいいですね」
康恵「まあね、フフフフ」
その話題に星野家から離れた常子の心中を察し目を伏せる美子
と、花山が階段を降りて来て「あ~常子さん」
常子「はい」
花山「印刷所に文句言ったら金の話になった
私じゃ分からないから話をつけてくれないか?」
「またですか?はい至急!」と駆け出す常子

<その日常子は料理記事の確認のため森田屋に向かいました>

店に駆け込む常子「こんにちは」
宗吉(ピエール瀧)「おう」
封筒から書類を取り出す常子「すみません、あの原稿の…」
と、「あっ、おばちゃま!」と青葉の声がする
見ると星野一家が客席に座っている
「おばちゃま!」と青葉が常子に抱きつく
常子「こんにちは、青葉ちゃん…大樹君もこんにちは」
大樹「こんにちは」
星野(坂口健太郎)「たまにはみんなで外食しようかと」
常子「そうですか」
星野「はい」
青葉「ねえおばちゃま、何でもうおうちに来てくれないの?」
常子「それは…」
青葉「次はいつ来られるの?クリスマスは?私の誕生日は?」
常子「…」
立ち上がり青葉のそばにきて星野「青葉…常子さんはお忙しいんだから
無理を言ってはいけないよ」
青葉の右手を握る常子「ごめんね」
宗吉「何だよ、つれねえ事言うなよ、それとも何か?
葉っぱのあんちゃんのところに行けねえ事情でもあんのか?」
お互い気まずそうな常子と星野
常子「…いえ…」
場の空気を察したような南(上杉柊平)「あっ、大将」
宗吉「ん?どうした?」
南「常子さんの持ってきた原稿確認しないでいいんですか?」
宗吉「お~そうだったそうだった」
常子「お願いします」(と原稿を渡す)
星野がうなだれる青葉を連れて席に戻る
「オムライス食べようか…青葉…大樹は何食べる?」
視界の中の星野一家から目を逸らせる常子
大樹「カレーライスかな」
星野「カレーライスにする?」
慰めるように青葉の髪を撫でる星野が常子の方をそっと見る

「ありがとうございました」と店を出る常子(宗吉「おう、またな」)
少し動揺したような泣き出しそうな顔で道を歩いていく

あなたの暮し出版前
帰っていく主婦たちを見送るスタッフ一同
常子「皆さん本当に今日はありがとうございました」
扇田「ありがとうございました」
(主婦たち)「さようなら」
「さっ、仕事!」と扇田たちが部屋に戻る
康恵「あ~一生分のアイロンがけをやってる気がするよ」
常子「すみません」
康恵「アハハ、いいんだよ
おかげで最近アイロンかけるのがうまくなったって旦那に言われてさ
前の結婚の時はアイロンなんてあんまりかけなかったから
前の死んだ亭主はそういうの無頓着な人だったからねえ…
再婚したからって前の人を忘れた訳じゃないんだよ
今の結婚だって随分悩んだんだから…
…ってあんたに言い訳してもしかたないんだけどね」
常子「いえ…亡くなったからといって忘れられる訳ありませんから」
康恵「ただ…子どもがいるからね
私が生きている以上前向きにさ、幸せになろうって思うようにしたのさ」
康恵の話にうなずく常子
と、「とと姉おばちゃん!」とたまきが駆けて来る(その後ろに鞠子)
常子「あ~たまき!たまき!」
鞠子(相楽樹)「ごめんなさい、近くを通りかかったものだから
突然でお邪魔だった?」
常子「ううん、全然大丈夫」
鞠子「康恵さん、お久しぶりです」
康恵「久しぶりだねえ(と、たまきの顔をのぞき込み)
あんたがたまきちゃんかい?かわいいね」
たまき「おばさんは何してるの?」
康恵「常子さんに頼まれてどのアイロンが一番いいか調べてるんだよ」
たまき「とと姉おばちゃんに?」
康恵「そうだよお、この人はとっても偉いんだから」
常子「偉いだなんてそんな…」
鞠子「本当よ、とと姉おばちゃんはすっごく偉いのよ」
常子「鞠ちゃんまでやめてよ」
「いいえ、たまきにはきちんと教えたいの」
と、たまきに言い聞かせるように鞠子「いい?
女の子がやりたい事をやって生きていくというのはとても大変な事なの
もしもたまきが大きくなって
たまきがやりたい事ができるような世の中になっていたとしたらそれはきっと
とと姉おばちゃんみたいな人がいろいろと頑張ってくれたおかげだと思うの」
たまき「そっかあ」
常子「大げさよ」
康恵「いいや、私も鞠子さんに一票だね」
常子「一人でどうこうなんてそんな…
鞠ちゃんとみんながいてくれたおかげよ」
鞠子「私もとと姉がいてくれたから好きな事ができたの
大学にも行けたし文章を書く仕事もできた
そういう時期があったからこそ今こうして結婚して
子どもを育てて生活していく事のよさも分かるの」
鞠子の話を聞いている常子
「あっ、赤トンボだ!」とたまきが走り出す
「あっ、こら!」と鞠子が常子たちに会釈をして「勝手に駄目よ!」と後を追う
幸せそうな鞠子の後ろ姿を眩しそうに見ている常子

紙に包まれた花束を持って帰宅する星野「ただいま~」
子どもたちが「お帰りなさい」と玄関に出迎える
星野「2人ともいい子にしてたか?」
(2人)「うん」
星野「何してたんだ?」
大樹「本読んであげてたの」
星野「大樹が読んであげてたの?」
大樹「そう」
なみ「お帰りなさい、今日は早かったですね」
星野「ええ、仕事が早く終わったものですから
なみさんももう上がって結構ですよ」
なみ「そうですか、じゃあお言葉に甘えて」
上着を脱いだ星野が仏壇の加奈子の写真に手を合わせる
と、玄関のブザーが鳴り「私が」となみが向かう
大樹「こんな時間に誰だろう?」
星野「誰かなあ」
青葉「…かなあ」
なみ「旦那様、お客様です」
「はい」と立ち上がり玄関に出る星野「お義父さん…」
弓岡柳生(志賀廣太郎)「久しぶりだね、武蔵君」

(つづく)

康恵は何だかぶらりと常子たちを手伝いにやって来たりしていたが
経済的に余裕のある男と結婚していたんだね

綾はテスターに入ってなかったけどよく考えたら綾は専業主婦じゃなかったw
それに今回は星野たちを失った常子が普通に結婚をして
子どもを育てている女性たちの生き方に心を揺さぶられるようなお話だったから
仕事を持っている綾は登場しない方が自然だね

感謝の意味も込めて常子を持ち上げる鞠子だったけれど
今の常子にはつらい内容の話だったかもしれない
仕事でキャリアを積む事と普通の結婚生活の両方を経験した鞠子は
常子には眩しく見えたのではないかな?

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