2016年7月20日水曜日

とと姉ちゃん(93)使う布地も少なく簡単に作れる洋服とは?

常子(高畑充希)「あ…あの…私…」 
梢(佐藤仁美)「あれ?あんた昨日店の前で…」 
常子「えっ?」 
梢「店の前でボサ~ッと」 
常子「あ…確かにそうです…えっ、えっ?」 
立ち上がる梢「私だよ、分かんないのかい?」と着物を体にあて
「この赤い着物着てた」 
常子「あっ!」 
 
(常子の回想) 
「しげさんの事、奥さんからとっちゃおうかな~」と客にキスをしている梢 

常子「あの時の!…すみません気付きませんで」(頭を下げる) 
梢「失礼な女だね、化粧なしじゃ別人だってのかい!」 
別の女給「梢ねえさんのは化粧じゃなくて変装ですから」 
梢「うるさいよ!」 
女給たちの笑い声と少しだけ緊張が解けたような3姉妹 

タイトル、主題歌イン 

綾(阿部純子)「こちらがお話しした雑誌を作っている
小橋常子さんと妹の鞠子さん美子さんです」
3人「よろしくお願いします」
梢「雅の同級生なんだって?あんたらもいいとこの子か」
常子「いえ、私たちは普通の…」
お蝶(早織)「雑誌作ってるなんて余裕がなきゃできないだろうさ」
常子「余裕はありませんが女の人の役に立つ雑誌を作ろうと
奮闘している次第です」
艶子(谷澤恵里香)「女性の役に立つなんていいじゃないか!」
美子がカバンからスタアの装ひを取り出す
「先日作った雑誌です、ご一読頂けますか?」
美子が艶子に渡そうとするが梢がそれをかっさらう
ページをめくる梢「へえ~」(他の女給たちが後ろから雑誌をのぞき込む)
「洋服の作り方が載ってるのかい」
美子「はい、そうなんです」
艶子「毎日もんぺじゃ嫌になっちまうからねえ
洋服なんか着ておしゃれしてみたいよ」
常子「私たちもそう思いましてこういう雑誌を」
さくら(森絵梨佳)「雑誌なんか買う余裕ないの…
私みたいな戦争未亡人にゃ夢のまた夢です」
美子「ご主人はじゃあ…」
梢「戦争未亡人なんてごまんといるよ
うちじゃあ私とさくらと艶子…雅もだったね」
綾「はい」
弓子(寺島咲)「私ら売れ残りも苦しいですわね」
お蝶「ああ、嫁ぐつもりで花嫁修業ばかりしてたのに
肝心な時に結婚する男はみんな兵隊にとられて
気付いたらこの年で嫁のもらい手もないし手に職もなし」
さくら「婦人雑誌作りたいなら男に聞いた方がいいんじゃないかしら」
常子「えっ?」
さくら「婦人雑誌なんて名ばかりで男が男に都合よく作ったものだもの」
鞠子「そうでしょうか…」
お蝶「殿方の喜ぶ献立…とか、殿方に好まれるおもてなし…とか
男から見た女の記事だよね」
常子「私たちの雑誌はそうではありません、女の人の役に立つように…」
梢「同じだよこれも…確かにこんな洋服着てみたいとは思ったけど
私らには手の届かないもんだ」
美子「そんな事ありません、雑誌では自分の手で洋服が…」
さくら「一体何で作れっていうの?
家にある布地なんてとっくに米に換わってます」
お蝶「手に入る布地なんてスフくらいさ」
(ステープルファイバー 当時安価で手に入った化学繊維)
さくら「あんな貧相な化学繊維で作ったってゴワゴワして着づらいし
洗ったら使いもんになりゃしません」
弓子「軍隊の放出品の布地なんて手を出せる額じゃないですしね」
艶子「だから店でも洋服なんか諦めて…(立ち上がり着物を肩にかける)
着物着るしかないのさ」
お蝶「ちょっと艶子、そろそろ臭ってきたね」
艶子「皆も臭いじゃないか!」
弓子「確かに」
綾「私も皆さんも毎日同じ着物を着るしかないの…それしかないから」
梢「これで分かったろ?服が欲しい気持ちは切実だけど
手に入るかどうかは別問題、女の人の役に立つ雑誌って言ったって
私らには実際役に立ってないんだよ」
美子「でも布地ならカーテンか何かの布地で代用…」
梢「分かんない子だね、布地だけの問題じゃないんだよ」
さくら「服を作る技術すら私らにはないんです」
弓子「私も家さえ焼け残ってたら洋裁学校に行けたのに」
常子「洋裁学校ですか?」
梢「私も家さえ焼けなきゃ通う金くらい工面できたのにな」

日の出洋裁学校
校長・小山内節子(ふせえり)「へえ~新しい雑誌をねえ」
花山(唐沢寿明)「雑誌の名前も出版社の名前も
いまだ決まっていないのですが」
小山内「何だかうさんくさいけど
会社を銀座に構えておいでのようなので信用致しましょう」
花山「恐れ入ります」
小山内「こちらにとっても悪い話ではないですからね
我が校を雑誌で紹介して下さるなんて」
花山「お約束はできません、あくまでも面白ければ載せるという事で」
小山内「どういう事?取材を受けても掲載されないの?」
花山「その可能性はあります」
小山内「じゃあさっさと済ませて下さる?」
花山「では…現在いくつかの洋裁学校が再開されていますが
こちらの学校の特色を挙げるなら何でしょうか?」
小山内「そうねえ…我が校では高級仕立ての洋服作りに
対応できる技術を教えています
海外からの服飾事情もいち早く取り入れておりますので
是非ご入学下さい…これで書いてちょうだい」
花山「なるほど…どうりで授業料も高い訳だ」(年額700円)
小山内「高級な生地を使った方が仕上がりもよく生徒の反応もいいんです」
花山「それでは通えない人もたくさんいるのでは?」
小山内「慈善事業ではありませんから」
授業をのぞく花山
型紙で切り取られた布地は大量に端切れを生み出している

事務所で花山に報告している3姉妹
美子「皆さんがおっしゃるにはとにかく余裕などないと」
鞠子「作り方が書いてあってもそもそも洋裁の技術がないし
布地も手に入りづらいとも言っていました」
常子「布地をそれほど使わず
難しい技術もなく作れる洋服ってないものなんですかね…」
花山「私も同じ事を考えていた
洋服を作るためにはどうしても布地を無駄にしてしまう」
美子「でも洋服は曲線が多く複雑なので
型紙どおり裁断するとはぎれは出てしまうものですよ」
鞠子「じゃあどうすれば…」

小橋家
ちゃぶ台で型紙を作っている美子
君子「頑張ってるわね」
美子「はい…作りがいのある雑誌というのもありますしそれに…」
君子「それに?」
美子「花山さんに認めてもらいたいんです…
口は悪いけどやっぱりすごいと思うんです
今はただあの人に認めてもらえるよう頑張ってます」
君子「…そう」
美子「ゃ…恋心やそういう気持ちではありませんよ…
どちらかというと、ととに褒めてもらいたいのに近いのかな…」
君子「とと?」
美子「はい、私とととの思い出ほとんどないから
だから代わりに褒めてもらいたいのかもしれません」
君子「そう」
美子「はい」
2人で「フフフ…」と笑う

事務所で机に両肘をつき掌にあごを乗せ
「どうしたもんじゃろのぉ…」と呟く常子
鞠子「ねえ、とと姉」
常子「うん?あっ、新しいアイデア浮かんだ?」
鞠子「あっ、ごめん違うの…水田さんの事なんだけど」
常子「うん」
鞠子「経理で迎えられないかな?」
常子「えっ?」
鞠子「水田さん、一緒に雑誌作りたいって言ってくれたの
お給金安くてもいいからって…」
常子「あ…申し訳ないけど今うちも余裕がなくて…」
鞠子「そうよね…」
常子「ん…?鞠ちゃんもしかして水田さんの事…」
慌てる鞠子「あっ、全然全然!そうじゃないの!
いい方なのは分かるからもし力になれるならと思っただけ
それに…

(鞠子の回想)水田「今、世の中に必要な雑誌だと」

それがうれしくてね…
こういう方と一緒に作るべきだと思って」
笑顔でうなずく常子「うん」
鞠子「けどっ、今は雑誌を売って経営を安定させる事の方が先よね」
常子(笑顔のまま)「ん~…」
鞠子「簡単に作れる洋服か…」

自宅でも知恵の輪をしている花山
三枝子(奥貫薫)は鼻歌で♬「赤いリンゴに口びるよせて~」
と歌いながら縁側で茜の髪を切りそろえている
と、カットケープの代わりに茜が頭を通した
真ん中をくりぬいただけの新聞紙を見て花山が何かをひらめく
すぐに机に向かい資料を漁りデッサンを始める花山

小橋家、型紙を布地に当てている美子

デッサンに色付けしている花山

闇市で働く女性に取材している鞠子「今一番知りたい事は何ですか?」

雑貨店のような店を取材する常子「どんな服が人気ですかね?」


天気のいい早朝、花山が小橋家を訪ねる

居間
常子「花山さん、どうなさったんですか?」
帽子を取り挨拶する花山「おはようございます!」
(一同)「おはようございます」
花山「分かったんだ」
常子「えっ?簡単に作れる洋服ですか?」
花山「ああ!」
3姉妹「え~!」
「しかも一着に使う布地は…これだけだ」
と、ちゃぶ台に布地をひろげる花山
君子「着物1枚分の半分もないですね」
花山「お母さん、裁ち台をお借りできますか?」
「はい」と席を立つ君子
鞠子「和服を作るんですか?」
花山「寝ぼけた事を言うな!これがすぐさま洋服になる!」(ご機嫌)
驚いて花山とちゃぶ台の布地を見比べる常子

(つづく)

花山が「雑誌の名前も出版社の名前も決まっていない」と言ってたけど
KT出版はボツになったのだろうか?
ドラマのモデルになった雑誌と同じように
雑誌名と会社名を同じにする展開なのかもしれない

美子はやっぱり花山に父を見ていたんだね
俗にいうファザコンってやつかな
常子と花山の恋愛的なものはもしかしたらあるかなあと思っていたが
さすがに美子はないだろうな
やるべきじゃないし、このドラマはそんなドロドロしたものにはしないだろう
もしかしたら会社内で花山・美子と水田・鞠子の
対立軸みたいなものを作る下地なのかな?

鞠子が常子に水田の件を相談したね
恋愛的なものじゃないと否定していたけどもう好きになっているのだろう

花山はいつも常子たちに高圧的な態度なのに
なぜか朝の「おはようございます」の挨拶だけは
礼儀正しく元気に頭を下げるねえ
何か理由でもあるのだろうか?

今回は女給として働かなければいけない身の上の梢たちと
高い授業料を払える生徒が通う日の出洋裁学校が登場したが
これは「あなたの暮し」の立ち位置を明確にするためだろう
(目玉企画のアイデアが誕生するための要素でもあるが)
もちろん梢たちのような貧しい女性に寄り添う雑誌になるのだろう
だから劇中でも花山があらかじめ校長に断っている通り
日の出の取材記事はボツになるかな

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