2016年7月11日月曜日

とと姉ちゃん(85)的確な指摘をする花山を常子は編集長に迎えたいと思うが…

昭和二十一年七月 

雨が降る中、傘をさした常子(高畑充希)がメモの住所をたよりに家を探している 
「花山」の表札を見つける常子 
「はいはいお手紙届いてるかなあ?」と腕に抱いた女の子に話しかけながら
三枝子(花山の妻・奥貫薫)が玄関の戸を開ける 
常子を見る三枝子「どちら様?」 
常子「あっ…あの…私」 

タイトル、主題歌イン 

花山家居間
常子「茜ちゃん2歳…3歳ですか?」
三枝子「3歳です…ほらきちんとご挨拶なさい」
常子「うん?」
茜は常子の方を見ないで三枝子に抱きつく
「フフフフ…」と幸せそうに笑っている三枝子
常子「照れ屋さんなんですね」
三枝子「甘えん坊でいつもこんな感じで」
と、「ただいま」と花山(唐沢寿明)が帰ってくる
挨拶する常子「お邪魔しております
私、5年前に一度お目にかかった事がある…」
部屋の入口で仁王立ちの花山「覚えてる、甲東出版の小橋常子だ」
常子「あ…ああ…でも今はそちらを辞めて…」
花山「知ってる、何だ?用件を言いたまえ」
封筒から「スタアの装ひ」を取り出す常子
「あの…私、雑誌を作ったんです母と妹2人で
ですが…思うように売れずどうしたらいいか行き詰ってしまって
五反田さんに相談したところ花山さんを紹介して頂いたんです
お力を貸して頂けないでしょうか」
花山「力など貸さん帰れ、五反田も余計な事を」
三枝子「あなた…」
花山「(三枝子に)お前も素性の分からぬ者を勝手に家に上げるな
強盗や詐欺の類いだったらどうする?
(常子を見て)ああいう害のなさそうなまぬけ面でも油断するな」
三枝子「(常子に)ごめんなさいね」
常子「いえ」
三枝子「今お茶いれますね」
常子「あっ、ありがとうございます」
三枝子が部屋を出ていき、雑誌を手に立ち上がった常子が
「あの…せめてこの雑誌の駄目なところを一度だけでも見て頂けませんか?」
花山「駄目なところしかない」
常子「そんな見もしないで…」
花山「たまたま闇市で買ったんだ」
常子「えっ?どうして…」と笑顔になり「そうなんですか?」
花山「買った事を後悔したよ
何を見せたいんだ?文章か?洋服か?テーマは何だ!?
どのページを見ても同じような割り付けで飽き飽きする
紙も劣悪で手触りも悪い
こんなものに7円払うならちり紙を100枚買う事を勧めるね!
そもそも君は読者を想像できていない
外国人や一握りの令嬢が着るような浮世離れした洋服を見せて何になる?
周りを見てみろ!
焼け野原の中、食う物も着る物も最低限しかない中で生きてるんだ
作り方を載せたところで材料などどうやって手に入れる?
型紙も載せないで読者が本当に作れると思うのか?」
ぐうの音も出ないというよりはそんな事考えもしなかったという顔の常子
花山「もういいだろ…帰れ」

五反田(及川光博)「でもよかったじゃないか、結局助言はもらえたんだろ?」
常子「的確で圧倒されました」
五反田「才能は抜群だ、ただ…僕が仕事の依頼をした際言われたんだ…
二度とペンは握らないとね」
常子「どうしてですか?」
五反田「何だか疲れたって濁された…
今は品川で珈琲屋を始めたらしい」
常子「花山さん…私たちの編集長になって下さいませんかね…」

小橋家
「どうしたもんじゃろのぉ…」と呟く常子
君子(木村多江)「花山さんって方の事?」
常子「ええ」
鞠子(相楽樹)「いいんじゃないの?無理して編集長をやって頂かなくても」
常子「う~ん…でも花山さんの指摘ってすごく的を射ていると思わない?」
美子(杉咲花)「う~ん…確かに」
鞠子「けど、私の文章のよさが分からないだけかもしれないし
そもそもその方は断ったんでしょ?」
常子「まあ…そうなんだけどね」
ちゃぶ台の上に受けた鉢に雨漏りの滴が落ちる
天井を見上げる常子「晴れたら雨漏りの修繕しないとね」
君子「いいのいいの、うちの事は私に任せて
あなたは花山さんのところに伺ったら?」
常子「ん?」
君子「どうしても諦められないんでしょ?」
笑顔になって「はい」と答える常子

花山家の食卓
立ち上がった花山が柱にかかった花差しを微調整する
三枝子「あ…すみません」
花山「いや」
三枝子「昼間いらっしゃった小橋さんって…」
花山「うん?」
三枝子「お母様と妹さん…女だけで雑誌を作ってるっておっしゃってましたけど
それで暮らしていけるんですかね?」
花山「人の心配している余裕などないだろ」
三枝子「そうですけど何だか気になって」
調整に満足した花山が花差しを指さし「よし」
席に戻った花沢「今度、長澤に会おうと思う」
三枝子「長澤さん?」
花山「古くからの知人だ
一緒に衣料の事業をやらないかと誘われている」
三枝子「事業をなさるの?」
花山「まだ決めた訳じゃない、話を聞いてみるだけだ」
三枝子「そうですか」
花山「どのみち今の暮らしはもう少しよくせねばな
今のままの貧しい食事では茜が不憫でね」

<鞠子と美子は売れ残った雑誌を手に闇市に向かったのですが…>

書店の男「あんたらか、またあの雑誌かい?
懲りないね、あんなに売れ残ったのに」
美子「7円から4円に値下げすればまだ売れると思うんです」
鞠子「なので置いて頂けませんか?」
男「安くするのは構わねえがこっちがもらう額は変わんねえよ」
鞠子「じゃあ今までどおり3円って事ですか?
そんなに払ったら利益なんてないんです…3円なんて…」
男「嫌なら置き場所はない、帰んな!」

住所のメモを手に花山の珈琲屋を訪ねる常子
壁には花山が描いたようなかわいらしい家のイラストが飾ってある
「ああ、いらっしゃい」と老人(関元・寺田農)が顔を出す
関元「あっ、好きな席にどうぞ」
カウンターの前の席に腰かける常子
関元「うちはコーヒーしかないから」
常子「あ…はい…あの…花山さんはいらっしゃいますか?」
関元「ん?ああ…マスター!お客さんだよ」
花山が現れる「また君か…」
関元「お水持ってきますね」
花山「接客など結構です、客じゃありませんから」
関元「えっ?」
常子「すみませんコーヒーを1つ」
花山「何?」
常子「注文しましたから私はもう客です」
関元「ホホホ…コーヒーね…フフフ」と外に出る
花山「昨日の話なら何度来ても同じ事だ」
棚の食器が気になるような花山
常子「昨日の話ではありません
昨日は雑誌の助言を頂きたく伺いました
今日は雑誌の編集長として入って頂きたく参ったんです」
花山「どういう頭を持てばそうなる?
助言するのを断った人間が編集長になる訳などなかろう!」
常子「ですからそこを説得しようと」
花山「無駄だ帰れ」
常子「帰りません…
花山さんとお会いするといつもこのやり取りですね…
最初にお会いした時も先日のお宅でも」
花山「君が来てほしくない時に来るからだ」
常子「ではいつ伺えば?」
花山「私の葬儀だ」
常子「えっ?」
花山「死んでいれば君の話を聞かなくて済む」
常子「はぁ…」

外にも話が聞こえたようで湯を沸かしている関元が笑う

常子「本当に失礼な物言いをなさいますね」
棚に並べた食器の微調整が終わり「よし…」と外へ向かう花山
常子「二度とペンを握らないのはなぜなんですか?」
花山の足が止まる
常子「本当の理由を…教えて頂けませんか?」
振り向く花山「聞いてどうする?」
常子「どうしても花山さんと一緒に雑誌を作らせて頂きたいんです」
花山「そんな事は知らん、大体君は身勝手すぎる何度も押しかけてきて」
常子「申し訳ございません…
でも花山さんほどの才能がありながらご自身で身を引かれる…」
花山「帰れ目障りだ」
常子「花山さん…」
花山「何も話す気はない出ていけ!」
ふてぶてしく席に座る常子
うなずく花山「分かった、君が帰らんのなら私が帰る」
立ち上がる常子
外の関元に「あとは頼みます」と声をかけ花山が店を出ていく
黙ってその後ろ姿を見つめ途方に暮れる常子

(つづく)

害のなさそうなまぬけ面w
花山うまい事言う!

花山が妻子に優しいのはなんだか意外だった
もっと亭主関白で妻にモラハラとか言葉責めしてそうなイメージだが

「私の文章のよさが分からないだけかも…」
心配性で冷静な鞠子だけど自分の才能には絶対の自信を持ってるんだなw

書店の男は場所代で7円の中から3円も取っていたのか!

花山は内務省のシーンでも壁に張った標語を微調整していたが
あの指さして「よし」はこれからもずっとやるんだろうか?
あんな神経質な人がいたら鬱陶しいしドラマで毎回見せられるのも…
あの癖みたいなの治ってくれないかなあ

初対面の69話では常子が「賭け」の話で一本取ったんだけど
今回は「葬儀」の話で花山の勝ちかな
この2人のとんち合戦みたいなのもずっと続くのだろうか?

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