2016年6月13日月曜日

とと姉ちゃん(61)経営が苦しくなる森田屋~不良にからまれた常子は絶体絶命!?

昭和十五年十月 
洗面所で並んで歯磨きをする3姉妹 
君子(木村多江)が顔を出す
「美子、ハンケチ洗濯に出てないけどカバンの中じゃない?」 
美子(杉咲花)「おばあ様のとこに忘れてきたかも」 
鞠子(相楽樹)「また行ってたの?」 
美子「小僧さんに足袋繕ってって頼まれたから」 
鞠子「もうすぐ試験でしょ?毎日裁縫ばかりじゃ…ねえ?」 
常子(高畑充希)「うん?そんなにガミガミ言わなくても
よっちゃんだって分かってるわよ」と、歯を磨き終わり2階へ向かう 
鞠子「前だったら勉強しなさいって頭ごなしに怒ってたのに」 
美子「とと姉ちゃん大人になったんだね」 
鞠子「生意気言って」 
常子の姿を目で追っている君子 

2階のお部屋で仏壇の父に手を合わせる常子「行ってきます」 
そして立ち上がり机の上の3つの目標を見る 

タイトル、主題歌イン 

浄書室
タイプを終えた常子が隣の多田(我妻三輪子)を見る
「終わったのでお手伝いしましょうか?」
多田「手伝うもなにも原稿がないのよ」
常子「あっ…でもさっきこう手をこう…」
多田「ああ…何もしてないと眠くなっちゃうから練習してたの」
常子「あ~…最近めっきり仕事減りましたよね」
多田「相当苦しいってうわさよ
戦争のせいでアメリカへの輸出が禁止になったでしょ?」
常子「ええ」
多田「このままじゃこの中の誰かがクビを切られるかも…」
常子「やめて下さいよ」と笑う
多田「だってどう考えても真っ先にクビを切られるのは女からだわ」

<時代のせいでそれまでどおりにいかなくなっているのは
常子の会社だけではありません>

田畑乾物店前
宗吉(ピエール瀧)「5倍の値段じゃねえかよ!」
田畑「表のは全部売れちまったんだからしかたないだろ」
宗吉「何が売れちまっただよ
どうせ公定価格に回す方はちょっとにして
最初から高く売りつけようって魂胆だったんだろ!」
田畑「言っとくけどな、お上の決めた値段どおりやってたら
商売になんねえんだよ
このご時世5倍でも買うやつはいる
気に入らないんならほか当たってくれよ」
慌てる宗吉「そんな事言うやつじゃなかったじゃねえかよ、え?
ただでさえ材料が入ってこねえでうちはせっぱ詰まってんだよ
頼む…俺とお前の仲じゃねえか」
田畑「うちだってな、もうけがなけりゃ家族食わしていけねえんだ
根元んとこみてえに廃業しちまうんだ
このままじゃ明日は我が身だよ」

<日中戦争が長期化し食糧や生活に必要な物資が
全て軍事優先となったため庶民は欠乏していました
政府は経済統制のため価格等統制令を発布し
国が定めた価格以上での物資の販売を禁止します>

食堂で酒を注文する宗吉
店主「このご時世で昼間っから酒なんか出せる訳ねえだろ」
と、皿を置く
宗吉「何だよこれ?」
店主「うどん寿司だよ、米も出せねえし商売上がったりだ
あんたんとこでもどうよ」
宗吉「こんなもん出せる訳ねえだろ!」

<しかしどの業界も裏で闇価格での販売を行う者も少なくありませんでした
それは木材業界も同様で…>

青柳商店
滝子(大地真央)「お国に盾つこうってのかい!?」
清(大野拓朗)「お母さん声が大きいですよ誰かに聞かれでもしたら…」
滝子「人に知られてまずいような商売するんじゃないよ!」
清「ですからそれは産地で高い値で仕入れた材を国の…」
滝子「お縄にでもなったら200年守ってきた青柳の信用はガタ落ちさ!」
隈井(片岡鶴太郎)「…女将さん…生意気申しますが
清さんは間違っちゃいねえと思います
今年に入って3人も兵隊にとられうちもかなり混乱しています
おっしゃっている事も重々分かりますが…」
滝子「青柳の看板を背負ってるのは私だよ…
私に従ってもらう」
店の者が部屋に来る「女将さん、組合長の小谷さんがお呼びです」
滝子「後にしておくれ」
「いや、どうやら陸軍からの通達があるようでして」
滝子の表情が変わる

帰宅した常子が森田屋前の田丸履物店の閉店の挨拶の貼り紙を見る
沈んだ気持ちになった常子が元気を出して「ただいま帰りました!」
と、戸を開けると目の前に宗吉とまつ(秋野暢子)が座っている
常子「えっ?」
まつ「えっ?」
宗吉「あ…ハハハハ…待ってたぜ常子…ちょっとな話があるんだ」

居間には小橋一家に富江(川栄李奈)と長谷川(浜野謙太)もいる
宗吉「いや~大事な話でよ、全員がいる前で話してえんだ」
鞠子「じゃあ照代さんは?」
美子「朝から出払ったままですか?」
宗吉「いや~…あいつはいいんだ」
まつが宗吉にうながす「ほら早くしな」
宗吉「ん~…」
まつ「ほら!」
(長い間)
まつ「ほら!」
居住まいを正した宗吉が「すまねえ!」と、頭を下げる
隣のまつも一緒に頭を下げている
宗吉「今月の給金しばらく待ってほしいんだ」
君子「えっ?」
長谷川がお茶をこぼす「あっ、あっ…」
(一同)「あ~!」
常子「しばらくって…いつまでですか?」
宗吉「それが…何ともな…」
畳に手をついているまつ「急な事で申し訳ないと思ってるよ」
宗吉「仕入れができねえとろくな弁当も作れねえ
そうなると余計注文も減るってな具合でな…
情けねえ話だがここの家賃も払いきれてねえありさまでよ…」
まつ「いや、今までどおり賄いは用意する
だから…せめて給金だけでも…」
顔を合わせるまつと宗吉「なあ?」と、頭を下げる
君子「分かりました」
顔を上げる宗吉「本当かい?」
常子「私も同じ気持ちです」
まつ「本当にすまないねえ」と、手を合わせて一家を拝む
宗吉「心配かけちまって悪いなあ」
君子「いいえ」
宗吉「よしじゃあ…飯にするか」
まつ「あっ、そうだなごはんにしよう」
宗吉「そうだ、アハハハハ…」

一家のお部屋 4人で布団を作りながら
美子「本当にいいの?かかタダ働きになっちゃうのよ」
君子「クビになってもおかしくないの
置いてもらえるだけでもありがたい事じゃない」
鞠子「私も心配」
常子「心配いらないわ、私が働いてちゃんと稼ぐから、トォッ!」
と、布団を投げる
美子「頼もしい!」
鞠子「お~!」

<常子は一家の大黒柱としてこれまで以上に仕事に励みました>

タイムカードを打って帰ろうとする常子を多田が呼び止める
「待って小橋さん!」
常子「あっ、私何か忘れ物でもしました?」
多田「違うの、あの…これからビアホールでもどう?」
常子「あ~…行きたいところですが
今ちょっとぜいたくはできなくて」
多田「そう…弟の事で相談がしたかったんだけど」
常子「弟さん?」
多田「下の5人が反抗的でさぁ」
常子「あ~うちの妹も少し前までそうでした」
多田「最近はうまくいってるの?」
笑顔の常子「このマフラーも妹が編んでくれたんです」
多田「へえ~羨ましいなあ…
ねえ、どうすればいいか聞かせてくれない?
憂さ晴らしも兼ねて…どうしても駄目?」
常子「…少しだけなら」
多田「ありがとう!じゃあカバン取ってくるからここで待ってて」

浄書室に戻った多田が備室での上司の会話を聞いてしまう
佃部長(斉藤洋介)「山岸君、ちょっとお願いがあってね」
山岸課長(田口浩正)「はい、お願いですね」
佃「上野常務から姪っ子頼まれていたんだ」
山岸「えっ、頼まれたとおっしゃいますと?」
佃「うちに採用しろって事だよ」
山岸「ああ…しかし現在は人員削減も叫ばれており…」
佃「そんな事は分かってる、そこをなんとかするのが君の仕事だろう」
山岸「あぁ…はい…」
佃「だったら誰か切りゃあいいじゃないか」
山岸「あぁ…」

常子のところに足取りも重く戻る多田
常子「随分日も短くなりましたよね、もう薄暗い…多田さん?」
多田「あ…お待たせしてごめんなさい、行きましょうか」
常子「はい…」

ビアホールの2人
常子「こんなに賑わってるなんて知りませんでした
お弁当屋さんは苦しいのに」
多田「どんなご時世でもお酒がある場所に人が集まるんじゃない?
むしろ苦しい時こそかも」
常子「分からなくはないかも…
でも今日は一杯だけにしておきます」
と、ジョッキのビールを飲む2人
すると2人連れの若い男がからんでくる
帽子の男「いいご身分だなあ!女のくせにビールで乾杯か」
横分けの男「おねえちゃんたちさては職業婦人様か?」
常子(多田に)「気にしないで飲みましょう」
多田「でも…」
「女だったらこっち来て酌でもしろよ」
「お~い聞こえねえのか?」
横分け「それとも女じゃねえのかな?」と、多田の体に触る
多田「あっ、やめて下さい!」
横分け「一丁前に嫌がるんじゃねえよ!」
常子が立ち上がり「やめて下さい」と男を突き飛ばす
横分け「生意気に…少しばかり賃金がいいからって図に乗るんじゃねえよ」
常子「図に乗ってなど…」
帽子「おしゃれなどする余裕がよくあるもんだなあ」
常子「ぜいたくはしていません」
帽子「これだってそうじゃねえか…これも」
と、椅子に置いてある常子のカバンとマフラーをつまみ床に落とす
常子「やめて下さい」と、男ともみ合いになる
男の足がマフラーを踏みつける
マフラーを拾い上げ胸に押し当てる常子
男「きったねえマフラーがそんなに大事か?」
と、常子からマフラーを取り上げる帽子の男
常子が男に平手打ちをする
ビアホールがどよめく
男が「何だてめえ!」と常子を突き飛ばす
「返して…返して…」と、帽子の男に向かっていく常子
横分けが常子を羽交い絞めにする
常子「ちょっと…」
多田が逃げ出す
男「女のくせにふざけやがって!表でかわいがってやる!」
「やめて!」と、絶体絶命の常子

(つづく)

青柳商店の経営が立ちいかなくなるフラグが立ったね
下の者の話を聞かずに自分の主張を通したら
ドラマでは大体ダメになるよね

照代はどうしたんだろ?
宗吉は言葉を濁してたけど…
富江の表情も暗かったし大事なければいいのだが
長谷川がお茶をこぼしたのはシーンの緊張をほぐす演出的なもので
深い意味はないのだろうと思う
それにしても森田屋の面々は人が良く描かれている
君子が言っているように「置いてもらえるだけでもありがたい」
というのが本当のところだろう

常子の営業課の手伝いの件では救世主のような佃部長だったが
今回はブラックな一面を見せていた
彼自身も上司から無理を押し付けられて困っている立場なのだろうが…

ビアホールの不良は最悪
常子が大事にしているマフラーを踏みつけるなんて…
今まで辛いときや迷った時に常子は竹蔵との約束を思い出していたが
星野との別れを決意した前週
常子は「とととの約束は関係ありません」と言っている
もしかしたらマフラーは竹蔵との約束の代わりに
常子がとと姉ちゃんとして今後生きていく
新しい心の支え(理由)になったのかもしれない
もしそうなら星野との別れを決意させた決定的な要因は
美子のくれたマフラーなのかもしれないね


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