2016年6月18日土曜日

とと姉ちゃん(66)常子、出版と出会う

青柳家で挨拶する小橋一家 
神妙な顔の常子「本日からお世話になります、何とぞよろしくお願い致します」 
君子(木村多江)鞠子(相楽樹)美子(杉咲花)「お願い致します」 
清(大野拓朗)「ちょっとちょっと堅苦しいよぉ!」と、笑う 
滝子(大地真央)「ここは元からあんたらの家なんだから
何の遠慮もいらないよ」 
隈井(片岡鶴太郎)「ねえ…」と、滝子も隈井も笑顔だが一同が隈井を見る 
隈井「うん?何ですか?あっしの顔に何かついてますか?」 
清「いや~泣かないのかと思ってねえ
やっど君子ざんだちが帰っでぎで…って(泣きまねの仕草)
いつもなら感激しそうなのに」
滝子「泣きたきゃ泣いていいんだよ」
隈井「何言ってんですか、3つや4つのガキじゃあるまいしね
しょっちゅうビービービービー泣いたりしませんよ!」
美子「それに今までも会ってたし私たちが戻ってきたからって
感激するような事じゃないわよ」
常子「でもぉ離れていても隈井さんが気遣って下さっていたからこそっ
今の私たちがあるんですものねえ~」と、君子を見る
君子(気持ちを込めて)「そうね、隈井さんには感激してもしきれないわよね」
鞠子(やはり気持ちを込めて)「ええ、本当に」
「ううっ…」と、泣きかけた隈井
「やめて下さいよ!あっしを泣かそう泣かそうとすんのは!全くもう!」
(一同笑う)
清「あっ、それはそうと常子ちゃん働き口はどうするの?」
常子「あ…早々に見つけるつもりです」
滝子「…昔だったら一つや二つ見繕ってあげられたんだが…」
常子「ご心配いりません
曲がりなりにも3年間職業婦人として勤めてきたんです
きっと私を必要としてくれる職場もあると思います」
隈井「ううっ…偉いねえ…けなげじゃありませんか…」と、泣いている
清「え~!」(そこで泣くのかよ!)
(一同笑う)

小橋一家の新しい部屋だろうか
欄間に竹蔵の家訓を掲げる常子「よし…」
と、踏み台を降り「あ…ミシン運んじゃいましょうか」と家族に振り向く
3人は座って常子を見つめている
常子「えっ、何?みんな」
君子「心配してたのよ、鞠子も美子も…
あなたが仕事を失ってからいつになく落ち込んでたから」
常子「ああ…」
君子「でも、もう大丈夫そうね」
美子「さっきのとと姉ちゃん、とと姉ちゃんみたいだった」
常子「え?私はいつも私よ」と、笑う
鞠子「そんな事なかったよ」
常子「あっ…そう?う~ん…じゃあ多分
富江ちゃんと長谷川さんの祝言だったり
森田屋の皆さんとのお別れの中で元気になれたんだと思う」
君子「そう」
常子「真っすぐに生きても報われない事ばかり…
(早乙女の言葉…でも負けないで下さい)
私が会社をクビになった時
はなむけとして贈られたんですが受け止めきれなくて…
でも今ならあの言葉にうなずく事ができます…ようやく」
君子「そう」
鞠子「私ね、こんな日が来ると思って
とと姉のために用意してたものがあるの」
常子「えっ、何?」
美子「私も」
常子「えっ、何何何?何?」
鞠子「私はこれ」と、手書きのノートを見せる
「新聞毎日見て求人広告控えてたの
こっちはタイピストでこっちはそれ以外」と、ページをめくる
「せっかくタイピストの技術があるんだから
それを生かせた方がいいかなあと思って」
常子「ありがとう、こんなにたくさん」
鞠子「いえいえ、よっちゃんは何?」
美子「あ…いや…」と、モノを隠すそぶり
鞠子「何尻込みしてるのよ」
常子「ん?」
前に出た美子が「はい」と、常子に紙包みを手渡す
常子が開けてみると中身は求人広告の切り抜きだ
美子「まり姉ちゃんと全く一緒…
私も求人広告切り抜いてきた」
家族で可笑しそうに笑う
常子「ありがとう、よっちゃん」
君子「姉妹そろって考える事は同じね」
鞠子「もう~まねしたでしょ」
美子「違うよ!」

<翌日から常子の仕事探しは始まりました>

面接を受ける常子「和文タイプの経験は3年6か月です」
担当者「今は英文しかいらないよ」

別の会社の面接を受ける常子「タイプだけでなく書類の整理も…」
担当者「必要ないね」

また別の…常子「え~っと…」
担当者「不採用!」
常子「え?」

<タイピストの枠は埋まっていたり
経営状況の悪化で雇い入れをやめていたりと
常子を雇う会社は見つかりません
常子はこだわるのをやめ
タイピスト以外の職種にも手を延ばすのですが…
それでも厳しい答えしか返ってきませんでした
戦争が長引いたため以前と比べ女性の就職は
厳しい状況だったのです
とうとう鞠子と美子が探してくれた会社も最後の1か所>

面接を受ける常子「雇って下さるんですか?」
担当者「事務仕事だけどねえ…」と、立ち上がり部屋のドアを閉め
「明日からでも入ってくれる?」
常子「よかった…もうこちらに断られたらどうしようかと…」
担当者が常子の後ろに回り「で、雇う代わりと言ってはなんだけど…」
常子「はい…」
担当者「給金は月11円ね」と、席に戻る
常子「11円?」
担当者「うん」
常子「えっ、ちょっと待って下さい、求人には確か月30円と」
担当者「本当の給金書いたら誰も応募してこないでしょお」
常子「月11円じゃ家族4人暮らしていけません」
担当者「嫌ならいいんだよ
けど何もないよりマシじゃないかなあ?」
常子「考えさせて下さい…」

部屋のちゃぶ台に突っ伏した常子「11円…ん~…」
と、自分が立てた3つの目標に目をやり「ん~…」と畳にだれる
「う~ん…」と考え込んでから何かを思いだしたように座り直し
傍らの新聞包みを台に置く
包みを開く常子「最後の一個か…」
と、包装紙を開いてキャラメルを口に放り込む
笑顔になる常子「フフフ…」と台にもたれていると
新聞包みの求人広告が目に留まる
「事務員急募 男女問はず 月二十五圓 住所… 甲東出版」
慌てて立ち上がり新聞紙を持ったまま家を飛び出す常子

求人広告の住所を見ながら道を走る

レンガ造りの建物の前で立ち止まる常子「ここか…」
「甲東出版」の看板が見える「出版…」

扉を開き中に入る常子「ごめんくださ~い」
扉を閉めて「あの~すみません」
返事はない
と、すごい勢いで外から扉を開けて男(五反田・及川光博)が入ってくる
机の書類を手に取る男「あった…やはりここだったか、あ~あ」
常子「あの…」
男「うおおおっ!」と驚いてから常子を見て
「あっ…もしかして君、求人見て来た?」
常子「はい」
男「ちょうどいい、ついてきて」

奥の倉庫のような部屋
本のページを探し出した男「この項、検閲で削除が出たんだ」
と常子に見せ「ここを全部切り取ってこの紙を挟み込んでくれ」
と一枚の紙を見せる
常子「えっ?これ全部ですか?」
目の前には山のように本が積まれている
男「よ~し、やるぞ~…急な話で困ってたんだよ」
常子「あの…私は…」と求人広告を見せる
壁の時計を見ていた男「4時までにやらなきゃいけないんだ」
(時刻は1時30分)「早くしよう」
常子「…分かりました」

本のページに定規を当てて破り取る男と常子
そこに紙を挟み込む

壁の時計は3時47分
男「おい、そっちはどうだい」
常子「あ~あと20部ほどで終わります」
時計を見る男「うん、なんとか時間に間に合ったな
君のおかげで助かったよ」
常子「はい、お役に立ててよかったです」
常子を見る男「あれ?」
常子「何でしょう?」
「あれ~?」と眼鏡に手をやり机を回って常子に近づく男
「慌てていて気付かなかったけれど
君、よく見るとかわいらしい顔をしているな」
常子「はっ?」
男「言われるだろ?」
常子「いえ全然」
男「ふ~ん…君の周りにいた男は見る目がないんだねえ
こんなにもすてきな女性を見逃すなんてさ」
「フフフフ」と、含み笑いのような常子
恰幅のいい男(谷・山口智充)が部屋に入ってくる
谷「五反田!そういうのは終わってからにしろ」
五反田「しゃ…社長」
谷「聞いたぞ、削除が出たって
女なんか口説いてたら間に合わんだろうが」
五反田「ご安心下さい、この子のおかげでなんとか」
谷「ああ…手伝って頂いてたんですか
てっきり五反田が連れ込んだ女かと…これは申し訳ない」と頭を下げ
(五反田に)「で、どちらのお嬢さんだ?」
五反田「あっ、そういえば君名前は?」
谷「何だお前、名前も聞かずに手伝わせてたのかよ」
常子「あ…小橋常子と申します」
谷「社長兼編集長の谷です」
五反田「僕は五反田一郎です…
彼女、うちの求人広告を見て来てくれたんですよ」
谷「そうかい!」
常子「出版のお仕事は初心者なんですが
一生懸命頑張りますので雇って頂けないでしょうか?」と、頭を下げる
谷「あっ…上げて、上げて上げて!
お願いしたいのはこっちの方なんだから」
常子「えっ?」
谷「求人広告見て何人か来てくれたんだけど
みんなすぐ辞めちゃってねえ困ってたんだよ」
常子「あっ…じゃああの…雇って頂けるんですか?」
谷「もちろん」
常子「おぉ~」と、満面の笑みで机を叩き「あ…あのあのあの…」
と慌てたように新聞紙を手に取り机に広げ
「お給金ってこの求人に書いてたとおりですか?」
五反田「当然でしょ」
常子「よかった…」
谷「ただうちは人使いが荒いから覚悟してね」
常子「はい、一生懸命切り取ります!」
苦笑する谷「あ…それは困るんだなあ
なるべく検閲で削除なんか出したくないんだから」
常子「あ…ああ…そうか」
(一同笑う)
五反田「おっ、いかんいかん」と作業に戻る
谷「じゃあよろしく」
常子「お願いします」

<これが戦後常子の一生の仕事となる出版との出会いでした>

はつらつと作業に戻る常子

(つづく)

隈井を泣かせようとするシーン
珍しく君子がコントに乗っかってたね
ここのところ落ち込んでいた常子を心配するカットが多かった君子は
「ねえ~」と振ってくる常子が元気になってきてるのが嬉しくて
柄にもなく乗っちゃったのかなw

早乙女の最後の言葉にネガティブで返したのは気になってたんだけど
復調した常子を描くときのためにあれはあったのかもね

30円で募集しといて11円はないわあ~
なんかドアを閉めて常子の背後に回るから
セクハラみたいな事するのかと思ってたら…

鞠子と美子の集めた広告は全滅だったのに
坂田のくれたキャラメルを包んだ新聞紙に当たりがあるとは…
あのキャラメルはきっと妹たちや富江にでもあげたんだろうと
想像していたんだけど少なくとも一個は残していたんだねw

五反田はいかにもミッチーがやりそうな役だ
常子を口説くようなそぶりだったけど
常子は軽く受け流しているように見えた
清に初めて会った時に「かわいい」と言われた時に比べたら
常子も随分と大人になったもんだなあと思った


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