2016年6月15日水曜日

とと姉ちゃん(63)失業する常子と高崎移転を決める森田屋

浄書室 
机のタイプライターに布カバーをかけた常子(高畑充希)が前に出る 
同僚たちに一礼する常子「お世話になりました」 
立ち上がり一礼を返す早乙女(真野恵里菜)「ご苦労さまでした」 
常子「早乙女さんのおかげでここまでやってくる事ができました」 
早乙女「このご時世、まっすぐに生きていても報われない事ばかりだと思うの
でも負けないで下さい…決して」 
常子「今の私はその言葉を受け止める事ができません…失礼します」
と、礼をして部屋を出る 

廊下で給仕の坂田(斉藤暁)が声をかける「聞いたよ」
と、常子に新聞紙の包みを手渡す 
開けてみるとキャラメルの粒が20程あるだろうか 
坂田「ありったけのキャラメル集めたんだ」 
ほんの少し微笑む常子「いつもありがとうございました」
と、頭を下げて振り向き廊下の先を歩いていき角を曲がる…

タイトル、主題歌イン 

お寺で気持ちを落ち着けるように木の壁にもたれている常子
鐘の音が聞こえる
「よし…」と呟いた常子が歩きはじめる

森田屋厨房
うなだれるように腰かけている宗吉(ピエール瀧)
「はぁ~分かった…俺が話す」
照代(平岩紙)「あなた…」
宗吉「もうそれしかねえだろ」
うなずく照代
と、戸が開く音がして「ただいま帰りました~!」と常子が戻ってくる
驚いたような照代「お帰りなさい」
宗吉「お~お帰り」
照代「今日は早いのね」
常子(明るく可笑しそうに)「はい、会社クビになっちゃったんで」
(2人)「えっ!?」

居間での夕食
大きく開けた口にナスの煮物を入れる常子
小橋一家は箸を止めて常子を見ている
まつ(秋野暢子)「ひっどい話だねえ、そんな理由で…」
常子「考え方によっちゃよかったんです
これ以上悪くなりようがありませんから、フフッ」と笑う
しかし一同は沈んだ面持ちで食事が進まないようだ
常子「もう!皆さん暗くならないで下さい
必ず、次の働き口見つけてみせます」
美子(杉咲花)「無理しないでよとと姉ちゃん」
常子「うん?」
美子「とと姉ちゃんが一番つらいはずだもん
無理して振る舞わなくたって…」
常子「ううん、そんな事ないよ、意外にへっちゃらでさ、フフッ」
美子「私働く、学校やめて」
常子「うん?」
鞠子(相楽樹)「私も」
常子から笑顔が消える「それだけはやめて
それじゃあ何のためにここまで…」
笑顔に戻る常子「お願い、うん?」
と、大きく口を開けて一人おいしそうに食事に戻る

<常子が会社を辞めてから10日がたちました>

常子が青柳商店に滝子(大地真央)を訪ねると
陸軍に呼び出されて不在だという
そこにちょうど戻ってきた滝子が倒れ込んでしまう

布団に寝かされた滝子
その横に座る常子、清(大野拓朗)、隈井(片岡鶴太郎)
隈井「陸軍からの通達って…何かあったんですか?」
滝子「お国のために死んでくれとさ…
支那との戦争が長引いたせいで大陸では軍用資材として使われる木材が
慢性的に不足してるらしくてね
統制価格の半額で木材を供出するよう強制されたよ」
清「半額!?」
隈井「メチャクチャな…」
常子「おばあ様たちはそれを承諾されたんですか?」
滝子「軍に逆らう事ができるかい?…
そうだこうしちゃいられない…商店会の寄り合いが」
と、布団に起き上がる
皆が止めるが「いいや、深川で商いする者たちの寄り合いだよ
私が行かないでどうするんだい!」

寄り合いの席
商店主たちに混ざって常子も座っている
宗吉「えっ?あの女将さんが心労で?」
常子「ええ、心配でついてきてしまいました」
まつ「私だっていつ卒倒するか分かりゃしないよ」
宗吉「母ちゃん…」
滝子「え~幹事月なので今日は青柳が仕切らせてもらいます」
清「はい…問題は多々ございますが
こうして深川で商いをやっているのも何かの縁
この厳しいご時世の中皆さんで助け合って…」
と、出席者から陸軍の通達には対応できないので
商売替えするとの申し出がある
そんな事をするとあちこち飛び火して深川全体が沈むという声
場は言い合う声で混乱するが
材木商の飯田が店を畳むと報告する
まつ「ご冗談を末五郎さん
この界隈一の老舗がそんな弱気でどうするんですか」
飯田「冗談であってほしいのはわしもだよ、だがこのご時勢では…」
まつ「うちの最後の五八様なんですよ!」
宗吉がまつを止める「母ちゃん」
飯田「まつさん、あんたんとこにゃ世話になったが
これで終わりにさせてもらうよ、本当にすまねえ」
照代が宗吉に促す「あなた、あの話…」
宗吉「えっ?…いや…とてもじゃねえが今は…」
滝子「他に商売替えを考えている者は?…いないかい…それじゃあ…」
照代「待って下さい!…うちも店を畳もうと思っております」
常子「えっ?」
目を見開いて驚くまつ「えっ?…な…何だって?」
照代「森田屋はこの深川から高崎に移転するつもりです」

森田屋厨房
まつ「こんな話があるかい!」
照代「お母さん!」
君子(木村多江)「何があったの?」
常子「寄り合いで森田屋が高崎に移転すると照代さんがおっしゃって…」
君子「えっ…本当なんですか?」
照代「突然でごめんなさい…それしかもう私たちには…」
まつ「勝手な事言うんじゃないよ!」
照代「お母さん、聞いて下さい!」
まつ「誰がお前の話なんか聞くもんか…私の承諾なしに勝手に…」
照代「お母さんは反対なさると思っていました
だから強引でもこうするしか…」
まつ「私は認めないよ!」と照代を押しのけて宗吉に詰め寄る
「照代に何吹き込まれたか分かんないけど…目覚ましとくれよ
お前は母ちゃんの気持ち分かってくれるよな?」
宗吉「俺は照代に賛成だ」
まつ「宗吉…」
宗吉「もとより母ちゃんに言わねえで
寄り合いで言いだそうって決めたのも俺だ
本当は俺が話すつもりだったんだが土壇場で意気地なくしちまって…
見かねた照代が代わりに…」
まつが宗吉の頬を3回平手で張る
「この親不孝もん!不孝もん!不孝もん!」
後ろを振り向くまつ「富江…長谷川…あんたらも知ってたのか?」
富江(川栄李奈)「うん…」
長谷川(浜野謙太)「昨日大将から…」
泣き出すまつ「あ~やだやだぁ~!長生きはしたくないもんだ…
この年になって一族郎党に裏切られるなんて…
あぁ~思いもしなかったよ~!」
照代「お母さんお願いします!ここの家賃すら払えないんですよ
続けていくのはもう無理なんです!
高崎のある群馬は今、軍需産業で景気がいいんです
働き盛りの人が大勢いてあっちなら弁当を買ってくれる人も多いし
大口の注文だって増えるはずです」
宗吉「はら、章男さん…照代の兄貴の
あの人向こうで洋食屋開いて大当たりしてるのさ
その店手伝ってほしいって俺たちに
時流が変わりゃまた東京でやれる日も戻ってくらぁな
それまで一旦高崎に引っ込もうや」
照代(小橋一家に)「皆さんも相談もなしにごめんなさいね」
常子「いえ…」
君子「うちはごやっかいになっている身ですから」
宗吉「…悪いな」
鞠子「でも私たちはどこへ行けば…」
照代「それなんだけどこれから手を尽くして空き家を…」
君子「いいえ、おばあ様のところにごやっかいになりましょう」
常子「私たちの事は心配なさらないで下さい」
照代「ありがとう」
宗吉「すまねえ」
まつ「移転が決まったみたいな事言うんじゃないよ
はぁ~驚いた、あたしゃ行くなんて言ってないのに」
宗吉「母ちゃん!いい加減へそ曲げるのやめろよ!」
まつ「あ~今の言葉でもっともっとへそが曲がったね!
どうしても高崎行きたいんだったら私殺してから行きな!」
照代「お母さんお願いします!
どうしても今行くべきだと思うんです!」
まつ「高崎が景気がいいだのこの森田屋には関係ないよ!
高崎の た の字も聞くのは嫌だ!嫌だ!」
照代「今…照代のお腹には赤ちゃんがいるんです」
まつが振り向いて照代を見る
宗吉も「?」と照代を見る
小橋一家が富江を見る「えっ?」
宗吉「おい、今何つった?」
照代「みごもってるんですよ富江」
まつ「えっ…」
常子「本当なの?」
難しそうな顔でうなずく富江「はい」
宗吉「そんなの聞いてねえぞ!相手はどこのどいつだ!え?」
困った顔の富江
長谷川が突然「すいやせん大将~!」と、頭を下げて調理帽子を取り
土下座をして「富江さんと結婚さして下せえ!」
混乱しているのか茫然としているような顔の宗吉
目をまるくして口が半分開き驚いた顔の常子

(つづく)

冒頭のシーン、多田の姿はなかった
不在だった理由はいろいろ想像できるけど(劇中で)
それよりも常子が去っていくあのシーンにはいないほうがいいという
演出的な判断のように思う
常子に励ましの言葉を贈る早乙女だけど
常子はネガティブで返したねw
キャラメルおじさんは最後までいい人だった

お寺で気持ちを切り替えて帰宅した常子の
「はい、会社クビになっちゃったんで」は何度観てもいい
予告で観た時はえらい軽いなあ~と思ってたんだけど
そうじゃなかったんだね
その後の夕食のシーンでも元気に振る舞ってた常子は
やっぱり前向きなとと姉ちゃんだ

照代の謎が解けたね
ここのところ不在だったのは高崎に行っていろいろ準備してたのだろう
前回の「いえ、私たちの家の事ですから」も
もしかしたら君子たちの事が邪魔なのかなあと思ってたんだけど
たぶんそうじゃなくて
森田屋と小橋一家は別々の道を歩かなくてはいけないという
照代の気持ちというよりはドラマの展開上の予告演出というか
レトリックみたいなものだったんじゃないかな?

それにしても森田屋さんは相変わらず人が良い
君子たちに何度も頭を下げて「これから手を尽くして空き家を…」
とまで言ってた
これはすごい考えすぎかもしれないけど
NHKって左寄りだってよく耳にするでしょ
労働者の権利はそれほど大切なのであ~る…と言いたいのかなあと
ちょっと思ったw

富江の妊娠
そうきたか…
長谷川が食事中とかに富江に関して変な事言う時に
富江が宗吉の様子を横目でそっと窺ってたのはこういう事だったんだね











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