2016年6月20日月曜日

とと姉ちゃん(67)常子、雑誌の企画に悩む

青柳家 
「本日…見事採用となりました!」と、就職の報告をする常子(高畑充希) 
歓声を上げて喜ぶ一同 
滝子(大地真央)「よかったねぇ~」 
常子「ご心配おかけしてすみません 
すぐに働き始めますからご安心を」 
鞠子(相楽樹)「大丈夫?すぐにクビになるとこじゃない?」 
美子(杉咲花)「まり姉クビの心配するの早すぎる」 
隈井(片岡鶴太郎)「大丈夫ですよ、こんなご時世に
あえて雇うぐらいなんだからそう簡単にクビにゃなりゃしませんよ」 
清(大野拓朗)「ともかく久々によい知らせを聞くと
それだけで元気になりますね」 
滝子「そうだねえ、私も寝込んでばかりいないで働かなくちゃね」 
「はい」と、笑顔でうなずく常子 

<滝子は再生不良性貧血という病を患い
寝て過ごす事が多くなっていました>

帳場を掃除している3姉妹
常子「鞠ちゃん、いずれ会社の人紹介してあげるね」
鞠子「えっ?」
常子「ほら、作家へのきっかけになるかもしれないじゃない?」
鞠子「ああ…ありがとう…でも、落ち着いてからでいいわ」
常子「ほんと?」
鞠子「まずはとと姉がお仕事覚えなきゃ」
常子「そうよね~」
美子「ねえ出版ってどんな仕事なの?」
「え~っとね… … …分かんない!アハハハ!」とバカ笑いの常子

タイトル、主題歌イン

昭和十六年

甲東出版
谷(山口智充)「これが丹下先生の原稿だ
丹下先生は筆が早いから締め切りに間に合わない事はめったにない
ただ、すごいクセ字なんだよ
例えばこれとか読めるか?」
ペンとメモを手にした常子「あ~読めません」
谷「これ ゆうぼう って読むんだ」

<作家から原稿を受け取ったら読みにくい字を赤で書き直し
文字数を確認します>

谷「一枚のページの中に見出し、本文、挿絵をどの配置にするか
それを決める作業の事を割り付けっていうんだ」
「はい」とメモをとる常子
谷「特に挿絵は重要だ
いい挿絵はその作品の世界観を表し読者を引き付ける事ができる」

<出来上がった雑誌の一部は印刷所から運び込まれ
定期購読者に向けて発送していきます>

封筒に雑誌を詰めている常子たち

<そしてすぐさま編集会議を開いて先の号の内容を決めていくのです>

会議をしている常子を含む5人
谷「他にないのか?このままだと出版できなくなるぞ」
他の社員の顔を窺っているような常子
と、立ち上がり机の上の湯のみを盆に集める
谷「何をしている?」
常子「あっ、皆さんにお茶のお代わりをと思いまして」
相田「ありがとう」
富樫「気が利くね」
笑顔の常子「いえ当然です」
谷「何が当然だ!今は会議中だぞ
雑誌の内容を考える時間だ、他の事は考えなくていい!」
固まっている常子
相田「お茶、要りません」
富樫「俺も」
常子「いや、でも…」
谷「小橋君も何かないのか?」
常子「何か…ですか?」
谷「会議中、控えを取ってばかりじゃないか
君の意見はないのか?」
常子「私の意見…ですか?」
谷「何を驚いてる?」
常子「いや、あの…女がしゃしゃり出て意見なんか出してもいいんですか?」
五反田(及川光博)「フフッ、当たり前じゃないか
ここじゃ男も女もない
君の考えを素直に言っていいんだよ」
谷「君が作りたいと思う企画が浮かんだら是非聞かせてくれ」
笑顔になってうなずく常子「はい!」

青柳家 夕食の席
「もう~びっくりしました!夢にも思ってませんでしたから
私が雑誌の企画を考えてもいいだなんて!
あ~女性でもそういう仕事任せてもらえたりするんですね」
と、一気に喋って食事にむせる常子
君子(木村多江)「もう、食べながらしゃべるからよ」
鞠子が「お茶お茶お茶…」と、湯飲みを持たせる
湯飲みを手に喉のあたりをたたく常子「こ…興奮してしまって」
鞠子「女性でも企画ができるなんてタイピストの頃とはまるで違うのね」
常子「うん」
美子「そんな事ってめったにないんでしょ」
常子「そうだと思う」
清「えっ、で…どんな企画考えたんだい?」
常子「それが…まるで浮かばなくて」
滝子「せっかく多くの人が目にするんだ
人の役に立つものがいいんじゃないか?」
常子「役に立つもの?」
滝子「私もこの40年ずっと同じ仕事を続けられたのも
そういう自負があったからさ
常子も役に立つ雑誌の方が作る励みになるだろ?」
「はい、そう思います」と笑顔でうなずく常子

会社で頬杖をついて思案中の常子
五反田が後ろからポンと肩を叩く
常子「あ…」
五反田「悩め若人よ」
谷「そう簡単にいい企画なんて浮かぶもんじゃないさ」
常子「はい…何かこう人の役に立つような事を
雑誌でできないかなあと思ってるんですけど」
谷「人の役に立つ?具体的には?」
常子「それが思いつかなくて…」
相田「じゃあ悩みを解消する特集ってできませんかね」
谷「う~ん…それはそれで難しそうだなあ
悩みなんて皆違うだろう」
考え中で宙を睨み下唇が突き出ている常子

<確かに悩みは人それぞれで…
鞠子は進路について悩んでいました>

どこかのベンチに座る鞠子と木戸(白州迅)
「そうか…それが君の出した結論か」
鞠子「…ええ…大学を出たら工場にお勤めに出ようと思ってます」
木戸「残念だな…鞠子君ならいい物書きになれると思っていたんだが」
鞠子「いえ、決して作家の道を諦めた訳ではありません
仕事が終わったらきちんと毎日書き続けるつもりです」
木戸「朝から晩まで働いて疲れて帰ってきてから
本当にいいものが書けるのかい?」
鞠子「それは…」と、目を伏せる
木戸「僕は文学の道を突き進むよ
またどこかで会えるといいね、じゃあ」と立ち去る
木戸の後ろ姿を目で追う鞠子

<こちらの悩みは…>

帳簿を見て「参ったなあ…」と天を仰ぐ清
隈井を呼んで「このひと月で売り上げが3割減だ」
隈井「3割も…」
清「もう少し切り詰めないとなあ…」
隈井「これ以上何を切り詰めればいいって言うんですか?」
清「はぁ…人を減らすか」
隈井「またですか?もう職人1人と小僧2人しか残っちゃいませんよ」
清「仕方ないんだ…小僧たちに故郷に帰るよう伝えてくれ…頼む」
隈井「分かりやした」

<青柳商店は経営難のため営業規模を大幅に縮小していました…
皆が鬱屈した思いを抱えた中
常子はこの時世において人の役に立つものは何かを
ずっと考え続けていました>

考え事をしながら歩く常子が人の声に驚く
「あなた!」
振り向く常子
見ると割烹着にタスキをかけた婦人が若い女性を叱っている
婦人「そんな派手な化粧をして!」
女性「すみません」
婦人「ぜいたくは敵です
ぜいたくをするような人間は日本国民の敵なんですよ!」
無表情でそれを見ていた常子が歩き始めると
「あなた!」と声がする
再び驚く常子
見ると別の婦人が常子に向かってくるではないか
やはり「大日本婦人會」のタスキをしている
常子「私ぜいたくなんてしてませんよ」
婦人「堂々と道を歩き過ぎです」
常子「えっ?」
婦人「若い女性が堂々と道の真ん中を歩くもんじゃありません
もっとつつましく端を歩くべきです」
常子「どこを歩こうが私の勝手です」
婦人「まあ!目上の者になんて口を!」
「失礼します」と頭を下げながらも不機嫌な顔でその場を去る常子

常子が旧森田屋の前を通りかかる
足を止めガラス戸の前に立ち面々を思い出す
と、郵便配達員がやって来て自分宛の手紙を受け取る常子
常子「村野…」
配達員「村野…綾さんですね」
常子「綾さん…」

大急ぎで部屋に戻り手紙を読む常子
(お寒さ厳しき折から常子様にはいかがお過ごしでいらっしゃいますか
結婚して名古屋に参りましてからは
常子様にお目にかかる機会も少なくなってしまって
本当に寂しく存じております
嫁ぎ先に入ってしまいますと女学校の時とは勝手が違い
自由が利きませんの トホホ
実は病院勤めだった主人がこの度軍医として召集され
満州へ赴く事になりました
覚悟はしておりましたが後方の病院勤務とはいえ
内地と違い危険がない訳ではありません
やはり不安が募ります
何事も先の事ははっきりとは分からず
今は主人の身をただただ案ずるばかりです
お手紙を差し上げようとあなた様の事を考えた途端に
女学校時代の日々が走馬灯のように思い出されて
懐かしさと楽しさと喜びで胸がいっぱいになりました
どうかどうかお元気でいらして下さいませ)

<戦争の影がすぐそばまで近づいている事を実感する常子でした>

手紙を手に、綾の身を案じて晴れない表情の常子

(つづく)

甲東出版での仕事はタイピスト時代よりやり甲斐のあるものになりそうだ
なにしろ出版は生涯の仕事になるみたいだから当たり前か

鞠子と木戸は「またどこかで会えるといいね」とあっさり別れたw
でも鞠子がこのまま工場に勤めるとも思えないから
まだなんともいえないかなあ…
鞠子の悩みは進学の時と同じく経済的なものだろうか
常子の給金はおそらく月40円から25円に下がっているはずだし
家計を助けたいという事なのかな?

青柳商店に残る職人はあと1人って…
そういえば木材も並んでなくてガランとしてたけどそこまでだったとは
リストラするならおそらく給金の一番高い隈井を切らなきゃ駄目だよねw

ラストの婦人の件と綾の手紙は
常子が思案中の企画作りのヒントになるのだろう

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