2016年6月24日金曜日

とと姉ちゃん(71)青柳商店に危機が…滝子を心配する常子と君子

昭和十六年十二月八日 

青柳家のラジオに音楽が鳴っている 

廊下で「ふぁ~ふぁふぁ」と大きなあくびをする清(大野拓朗) 
常子(高畑充希)「お疲れですね」 
清「このところ会社の方が忙しくてねぇ~」 
常子「ああ…お体気を付けて下さいね」 

美子(杉咲花)「おばあちゃま、今日は朝食どちらで召し上がりますか?」 
布団に起き上がっている滝子(大地真央)
「じゃあ、みんなと一緒に食べようかね」 

居間、青柳家が揃っている朝食の席 
一同がラジオの方を見ている 
(ラジオ)「臨時ニュースを申し上げます 臨時ニュースを申し上げます 
大本営陸海軍部 12月8日午前6時発表 
帝国陸海軍部は本8日未明 西太平洋において
アメリカ・イギリス軍と戦闘状態に入れり…」 
驚いて口を開ける常子「アメリカやイギリスとも戦争が始まるの?」 
君子(木村多江)「終わるどころかどんどん大きくなっていくわ」 
滝子「私たちはどうなっちまうんだろうね」 

<12月8日日本軍の真珠湾攻撃により
ついに太平洋戦争が始まったのです> 

不安気な表情の青柳家の面々 

タイトル、主題歌イン 

<昭和17年4月東京川崎名古屋など日本本土に初の空襲があり
戦争は激化の一途をたどっていきました> 

昭和十七年春

<政府からの締めつけや検閲はより厳しくなり
甲東出版では国の顔色をうかがって
出版せざるをえない状況が続いていました>

赤ペンを持って原稿をチェックしていた常子が席を立ち
五反田(及川光博)のところへ持っていき「確認お願いします」
原稿に目を落とした五反田がすぐに机に投げ宙を見る
常子「私の赤字どこかおかしかったですか?」
五反田「いや、そうじゃないよ
こんな戦意高揚の退屈な読み物ばかりじゃ
読者もつまらんだろうと思ってさ」
谷(山口智充)「めったな事言うんじゃない」
五反田「いや、でも読んでみて下さいよ
愚痴も言いたくなりますよ」
谷「そうは言っても出版禁止になったら飯は食えん」
相田「しかし…この質の悪い紙はどうにかなりませんかねえ」
谷「紙を回してもらうだけでもありがたい
どの業界も物資不足は深刻なんだ…」

「長い間お世話になりました!」と、青柳の半纏を隈井に返す職人
隈井(片岡鶴太郎)「すまねえな…達者でな」
どうやら最後に残っていた職人も店を去ったようだ

滝子の部屋
布団に起き上がった滝子の傍らに君子
そして清と隈井が正座している
清「ご気分はすぐれませんか?」
滝子「私の事はいいから用件を言いな」
清「…私は情けない男です
お母さんからこの青柳商店の事を任せられたのに
結局、私一人では決める事ができませんでした
200年の伝統を誇る青柳商店の看板を背負うのに
私の器は堪えきれなかったんです…
これから私たちがどうするかお母さんが決めて下さいませんか?」
滝子「一体…何をだい?」
清「2か月後、深川の木材商は…個人営業を禁じられる事になりました」
隈井「個人営業ができねえって事は
個人じゃなきゃ営業はできるって事ですかい?」
清「陸軍の下請けでお国のための営業なら
続けてもいいと検討されているらしい
でもそれを拒むなら…店を畳むしかない」
滝子「青柳を潰すか…続けるか…私に決めてほしいっていう事かい?」
清がうなずく
隈井「悩む事なんかありませんよ!
何でもいいから続けていきましょうよ!
何があってもこの青柳、潰す訳にはいかねえんだ!」
考えながらもうなずく滝子「ああ…そうしよう」
隈井「ええ」
清「はい」

常子「青柳商店が陸軍の下請けになるんですか?」
君子「ええ、おばあ様がご自分でお決めになった事なの」

滝子の部屋を訪ね、眠っている祖母を見ている常子

常子「おばあ様は本当にこの店を続ける気がおありなんでしょうか?」
君子「あなたの気持ちは分かるけど今はそっとしといてあげて」
常子「でも陸軍の下請けって何もかも陸軍の言うとおりにするだけで
おばあ様や清さんは何もできなくなるのではありませんか?
そんなふうに続けてもおばあ様はきっと傷つかれてしまいます」
君子「200年守り続けたこの店をやめるという事は
とってもつらい決断なの
お体の悪いおばあ様を苦しめる事はよくない事だと思うわ」

滝子と約束した浴衣を仕立てている美子

滝子の部屋へ往診に来た医者「問題ないでしょう」
君子「そうですか、よかった…
このところ職が細くなっていたので心配していたんです」
滝子「ほら言ったとおりじゃないか、心配性なんだよ君子は」

医者を君子と隈井が玄関まで送る
医者「さっきはご本人の前なのでああ言いましたがね…
あんまり思わしくないですね」
隈井「どれだけ…悪いんですか?」
医者「もう少し様子を見てみますが…」
動揺したような君子

雷鳴が響く中、寺で手を合わせる君子
振り返ると傘を差した滝子が歩いてくる
君子「お母様!…大丈夫なんですか?」
滝子「フフフ…私の事を祈ってたんだとしたら…やめとくれよ
こんなにピンピンしてるからねえ祈るのがもったいないよ」
と、来た道を戻り始める
君子「お母様はお祈りされないんですか?」
滝子「祈りに来たんじゃないんだ…ただ懐かしくてねえ…
最近やたらと昔の事を思い出しちまって
こういうなじみの場所に来たくなるんだ
ここには君子と何度も来たねえ」
君子「はい…覚えてます?おみくじ」
滝子「おみくじ?」
君子「ええ、私が大凶引いたらお母様が
安心おし、私が守ってやる…って」
滝子「ああ…そんな事も言ったねえ
フフフ…格好つけもいいとこだねえ
もうろくした今となっちゃ、そんな事もかなわなくなっちまった
フフフフ…嫌だねえ年を取るってのは」

2人が店に戻ると帳場に隈井が座って待っている
滝子「どうした?怖い顔して」
隈井「先ほど組合を通じて陸軍からの通達がありました」
君子「通達?」
隈井「裏に工場があり広さも立地も好条件なので
この青柳を個人営業の停止に伴い事務所として借り入れたいと」
滝子「冗談じゃないよ…店は閉めないよ
陸軍の下請けとして店を続けていけるって話だったじゃないか」
隈井「どうやら陸軍のもとで営業が許されるって先日の話も
正式にまだ決まった話じゃないようです
深川の木材商は間もなく
お国が全て廃業にするといううわさです
あくまでもうわさですが…」
君子「そんな…」

<青柳をどうするのか、滝子は決断を迫られていました>

茫然と立ち尽くす滝子

(つづく)

今回は戦争が激化する中で
国による締めつけが厳しくなっていく様子が描かれた

常子が青柳商店を続けていく事に否定的なのは
前回、帳場に座って気持ちの整理をつけているような滝子を見ているし
陸軍の言うとおりに~何もできず~傷つかれるだけ…と言っているように
滝子の心を心配しているからだろう
思うように雑誌作りができない自分を重ねてもいるかもしれない

対して君子はお体の悪いおばあ様を苦しめる事はよくない…と
滝子の体を心配しているようだ
あるいは青柳商店の存在が滝子の心の張りで
それがなくなってしまえば病状も悪くなると思っているのかも

14話で「おばあ様ってどんな方なんですか?」と訊ねる常子に
隈井が「青柳家そのもの」だと答えている
青柳商店がなくなる時、やはり滝子もそうなるのだろう…



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