2016年6月6日月曜日

とと姉ちゃん(55)家訓のお出掛けを大事にする常子とすれ違う妹たち…

昭和十四年十一月 

<タイピストとして収入を得るようになって2年が過ぎ
常子は名実ともに小橋家の大黒柱になっていました> 

朝、物干しに布団を干して大きく伸びをする常子(高畑充希) 
鞠子(相楽樹)は畳をほうきで掃いている 
鏡台の前に座り櫛で髪をすく美子(杉咲花)「あっ、痛っ…もう毎日毎日…」
と、髪に引っかかったボロボロに歯の欠けた櫛を見る 
常子が後ろから声をかける「そろそろ新しいの買わないとね」 
美子「ううん大丈夫、まだまだ使える」 
常子「そう」 
笑顔で鏡に向かって髪をすく美子 

<そして家訓も守っていたのですが…> 

タイトル、主題歌イン 

森田屋居間で朝食を食べる一同
みそ汁をすすった常子があくびをする
長谷川(浜野謙太)「ゆっくり寝てりゃいいんだよ
会社までまだまだだろ?俺だったら確実に布団の中だね」
常子「家族そろって朝ごはんを食べるのは家訓ですから」
と、誇らしげに語る
常子を見て微笑み少しだけ目が揺れる鞠子と
目を閉じて常子から視線を落とす美子
富江(川栄李奈)「ゆうべも遅くまでお仕事してたんでしょ?」
常子「うん…社員の方が徴兵で減ってしまって
また資料整理頼まれちゃって」
常子が美子に試験も近いから滝子のところに寄り道しないで
勉強するようにと諭す
美子「分かってる」
常子「好きな縫い物もいいけど、ちゃあんと勉強頑張ってよ」
と、大きな口を開けてごはんを食べる
美子「うん、分かってる…」
微妙な表情の君子(木村多江)

<このころ日本では国家総動員や価格等統制令など
国による統制が始まり国民は質素な生活を求められていました>

浄書室で輪になって昼食のタイピストたち
皆の弁当には梅干しがひとつあるだけだが
諸橋のものにはサケの切り身から煮物に卵焼きまで入っている
常子「お~豪華」
多田(我妻三輪子)「日の丸じゃないんですか」
諸橋(野村麻純)「時代がどうあれ私はこうしたいの
パーマネントだってやめたくないわ」
多田「でも周りがいろいろ言いません?
ぜいたくはやめましょうって」
諸橋「言わせておけばいいの
私たちは世の女性憧れの職業婦人なのよ
私はこれからもたくさん稼いで思う存分おしゃれをして
恋だって山ほどするつもり
じゃなきゃ何のために働いてるか分からないじゃない
ねえ?早乙女さん」
早乙女(真野恵里菜)「働く理由は人それぞれでは?」
諸橋「…ですよね」と、常子たちに「あなたたちは?」
多田「私は5人の弟たちを食べさせなきゃいけないので」
常子「私も同じです、家族を支えるためにこの仕事を」
諸橋「それでよくそんな頑張れるわね…嫌にならないの?」
常子「なりませんよ、だってそれが私の役目ですから」

夜、小橋家のお部屋
洗濯物を畳んでいる4人
美子「う~ん別にどこでもいいわ」
常子「何?その言い方
みんなでお出掛けするんだからみんなで話し合うべきでしょ」
美子「でも…」
鞠子「あ~なげやりに言ったんじゃなくて
とと姉のお薦めだったらどこでもいいって事じゃない?」
(少しの間)
美子「うん…そう」
常子「ふ~ん…そう
では、四越百貨店の東亜美術展に行きましょう」
美子「うん、それでいい」
常子「それ で ?」
鞠子(美子に)「それ が いいんでしょ?」
美子(常子に)「うん、そう」
常子「ふ~ん、分かった」
常子が君子に来週の日曜日でいいかと訊ねるが
鞠子「あ~来週は大学の集まりが…」
じゃあ再来週の日曜日に…と言う常子に
鞠子「あ~…国文学の小論文もあって勉強したいから午後からだったら」
常子「ん~分かった、では24日の1時で」
鞠子「うん」 君子「いいわ」
常子「うん…よっちゃんは?」
美子「いいわ」
常子「うん、じゃあ決まり!」と、嬉しそうに鼻歌を歌う
そんな常子に目をやる美子

甘味屋の常子と星野(坂口健太郎)
星野のノートの今週の出来事の最後の行には
(今日こそ常子さんに告げる)
常子がお出掛けで美術展に行くと話すのだが
星野「常子さんはなぜそんなに家訓を大切にされているんです?」
常子「なぜ…?あ~そう改めて聞かれると…
亡くなった父が大切にしていたものでしたし、約束したので」
星野「約束?」
常子「はい、妹たちを守ると…
それで私も父が私たちにしてくれたようにしなきゃって
だから自然と家訓は必ず守るべきものなんだと」
星野「常子さんにとってお父様の存在はとても大きいんですね
すてきな方だったんだろうなあ…」
常子「何だか少し星野さんに似ている気がします
名前が同じってだけじゃなくてこう…眼鏡の感じとか優しい口調も
だからなのかな、星野さんが身近に感じるのは」
星野「え…」
常子「あ…アハハ」と、微妙に笑い合う2人

大学の講義室
鞠子「朗読会ですか?」
木戸(白洲迅)「そう、三好達治の詩を朗読する集いなんだ
急きょ決まってね、小橋君も来るだろ?」
鞠子「あ~…来週の日曜日はその…」
木戸「おいでよ、きっといい刺激になるよ」
「はい」と、笑顔でうなずく鞠子

青柳家
美子「来週の日曜ですか?」
滝子(大地真央)「ああ、お仕着せは毎年女中総出で縫っているんだけど
国家総動員法のおかげで人手が足りなくてねえ
年の瀬も迫ってるっていうのに…」
「これを小僧さんたちの人数分…」と布を手に取る美子
隈井(片岡鶴太郎)「ええ、小僧たちにとっちゃ喜ばしい事でしてねえ
盆暮れの里帰りは何よりの楽しみですから」
美子「あれ?この布地…」と、別の布地を見る
滝子「ああ、私の着物だよ
本当はいいものを買って着せてあげられればいいんだけれど
今は布地も簡単に手に入らないだろ」
清(大野拓朗)「下手な布地でやる訳にはいかないからね
お仕着せの出来不出来は店の沽券に関わるし
きちんといい身なりで里に帰してやって
うちがいい奉公先だと親御さん安心させないと」
美子「へえ~」
滝子「どうだい?手伝ってくれないかい?」
美子「来週の日曜…」と、目が上を向く
滝子「先約があったかい?」
美子「…いえ平気です、やります」
滝子「はぁ~そうかい、助かるよ
その分、礼はさせてもらうからね」
うなずく美子

一家のお部屋
勉強している鞠子の万年筆のインクが出ない
「あ~もう…割れちゃったのかなあ」
それを後ろから気にするように見ている常子
美子「とと姉ちゃん」
常子「うん?」
美子「お出掛けの日なんだけど…」
常子「うん」
美子「ちょっと予定が入ってしまって…」
常子「どうして?前もって言ってあったじゃない
そんなに大事な事なの?」
美子「うん、知恵子ちゃんのおうちでお勉強会しようってなっちゃって」
常子「何もお出掛けの日に入れなくたって…」
美子「ごめんなさい…なんとか早く終わらせるように頑張るけど
1時までには帰れないかも」
君子「まあ、お勉強会なんだからしかたないんじゃない」
常子「はい」と、困った顔になる
常子「では駅前のお寺に集合ね、私とかかと鞠ちゃんは…」
鞠子「ごめん」
常子「うん?」
鞠子「私もお寺でいい?」
常子「どうして?」
鞠子「実は私も同好会の集まりが」
常子「同好会?」
鞠子「文学同好会…
いろんな大学の方が集まって文学について語ったりするの」
常子「そんなの入ってるなんて聞いてないわ」
君子「あら知らなかったの?」
常子「かか知ってたんですか?」
君子「ええ」
美子「私も知ってたわよ」
常子「え~…」
鞠子(気まずそうに)「とと姉お仕事大変そうだから話す機会なくて…ごめん」
「ん~…」と、眉間にしわが寄る常子「では、2時に、お寺に、集合ね」
と、美子と鞠子を見る
(3人)「はい」
常子(ちょっと不機嫌に)「はい」

<こうして迎えたお出掛けの日>

君子「なんだか雨降りそうね、傘持って行きましょうか」
常子「そうですね」と、家を出る2人

同好会の集まり
時刻は1時20分
鞠子「あっ、すいません私そろそろ」
木戸「待って、次の詩がどうしても君に聞かせたいやつなんだ
あと少しだけいいだろ?」
可愛い笑顔でうなずく鞠子「はい」

青柳家で滝子たちと縫い物をしている美子
置時計の時刻は1時55分

傘を差してお寺の境内を歩いてくる常子と君子
手を合わせお寺の軒下で鞠子たちを待つ

<年の瀬も迫ったその日は小雨まじりのとても冷たい風が吹いていました>

風が吹き寒さに首をすくめる2人
常子「お~」

(つづく)

今回は竹蔵との約束を守り続けていく事に迷いのない常子と
成長していく鞠子と美子の心のすれ違いみたいなものが描かれた

朝食でバカみたいに大口を開けて目を横に向けてごはんを口に入れるのも
お出掛けの予定を決めてひとり呑気に鼻歌を歌うのも
妹たちの微妙な心の変化に気付いていないという描写なのだろう

美子の欠けた櫛と鞠子のインクの出にくい万年筆は
物が不足している時代だという描写なのだろうが
それだけではないような気がする
常子との関係においてのそれぞれ何かのメタファーなのではないかな?
欠けた歯が何なのかはハッキリとはわからないけど…
いや違うか、櫛や万年筆など目に見えるものには気付くけど
心の変化といった目に見えないものには気付かないという
対比の演出なのかもしれない

鞠子の同好会の件を常子だけが知らなかったのは
現代の我々の家庭で父親だけが疎外されている感じだろうか
君子が勉強会なら仕方ないと言ったのも
美子の嘘に気付いた上で厳しい父親から末娘を庇ったのかもしれないね

美子の嘘は常子に青柳で縫い物するより勉強しろと
くぎを刺されたからだろうが
お仕着せの手伝いは立派な理由だろう
それに比べて鞠子ときたら…
絶対不純なもの(色恋)があるように思うw
鞠子、おさげ髪だった頃を思い出すんだ!

しかしいつもながら鞠子(相楽樹)の目の演技は微妙で味わい深い


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