2016年6月4日土曜日

とと姉ちゃん(54)常子が遂に星野にデレる~常子に不満が募る美子

昭和十四年十月 
鏡台の前でごわごわした髪を触る美子(杉咲花)が後ろを振り向く 
「お願いとと姉ちゃん、三つ編み直してくれない?」 
ちゃぶ台で書類を確認している常子(高畑充希)「あ~今忙しい」 
美子「え~」 
常子「ちょっと直すくらい自分でできるでしょ?」 
美子「やってもらう方がきれいなの」 
常子「美子ぉ、見た目に気を遣うのもいいけど学生の本分は勉強でしょ」 
美子「また始まった、もういい」 
「2人ともまだ?」と、鞠子(相楽樹)が顔を出す 
常子「あ~ちょっと待って」 
鞠子「遅刻嫌だから先行くね」 
常子「えっ!」 
美子「私も!」と、立ち上がり部屋を出ていく 
書類をしまいながら常子「あ~待って待って待って…」 

玄関を飛び出す鞠子「今日も走らないと間に合わないよ」
美子と常子も続いて出てくる
常子「走れば間に合うから大丈夫」と、戸を閉める
外には見送りの君子(木村多江)まつ(秋野暢子)
照代(平岩紙)富江(川栄李奈)
まつ「また鞠子大荷物だね」
書籍の束を抱えた鞠子「今日は研究会の発表があるので」
富江「それ全部読んだの?」
鞠子「もちろん!」
照代「常子ちゃんも重そうね」
書類の詰まった大きな封筒を抱えた常子「今日までの作業があって」
まつ「それに比べて美子は軽そうだねぇ~」
照代「お弁当しかないんじゃない?」
「一応教科書も入ってますぅ~」と、ペラペラのカバンを掲げる美子
常子「一応ってどういう事?ちゃんと勉強…」
話を最後まで聞かずに「行ってきます」と、笑顔で振り向き駆けだす美子
常子「あっ、ちょっ…こら!」と、後を追う
鞠子も「行ってきます」と、2人を追う
君子「気を付けるのよ」

青柳商店前
常子「ちょっとよっちゃん待ちなさい!」
美子「待ちません~!」
「とと姉待って!」と、つまずく鞠子
「あっ、ちょっと鞠ちゃん…頑張れ~鞠ちゃん走って!」
と、懸命に走っている常子

タイトル、主題歌イン

<常子がタイピストとなって2年半
今では大きな戦力として認められていました>

タイピングをしている常子の横に来て諸橋(野村麻純)
「小橋さん、それが終わったら原稿の整理手伝って頂けない?」
常子「かしこまりました」
諸橋「ありがとう」と、去る
隣でタイピングする多田(我妻三輪子)
「あ~取られたかぁ、私もお願いしたかったのに」
常子「あ~…終わったらお手伝いしましょうか?」
多田「本当に?3時までなんだけど大丈夫?」
壁の時計は2時20分
常子「どうしたもんじゃろのぉ…」
早乙女(真野恵里菜)「悩んでる暇があったら手を動かしなさい
小橋さんなら間に合うでしょ?」
笑顔になってうなずく常子「はい!」

鞠子「今挙げたいくつかの点において与謝野晶子が提言した独立とは…」

<帝都女子大学に進学した鞠子は早稲田大学の文学研究会で
満たされた時間を過ごしていました>

発表を終えた鞠子が席に戻る
隣に座る木戸稔(白洲迅)「小橋君の発表は相変わらず出来がいいな」
少し照れたような鞠子「木戸さんにそう言ってもらえると光栄です」
笑顔の木戸「君の後に発表するのが憂鬱だよ」
笑顔で首を振る鞠子

<一方、美子は…>

女学校の教室
教師に呼ばれ前に出る美子
返された国史の試験の採点は64点
それを見てほっとしたように笑う美子
教師「喜べる点数ですか?
常子さんでも、もう少しいい点数でしたよ
鞠子さんに関しては90点以下など一度もありませんでした」
「すみません」と、頭を下げた美子がしょんぼりと席に戻る

学校の帰り、元気のない美子が青柳商店へと入る

陽当たりのいい縁側で縫い物をしている美子
滝子(大地真央)「うまいもんだねえ」
美子「おばあちゃまを見習ってやってるだけです」
滝子「私よりも縫い目もきれいだし色合いもいいよ」
隈井(片岡鶴太郎)「大した腕前だあ」
美子「はいできた、膝なので二重にしておきました」と、服を小僧に渡す
小僧「お~こりゃいいや、ありがとうございます」
美子「次は…」
別の小僧「あっしのお願いしやす」と、服を渡す
隈井「またお前穴開けたのか?」
小僧「美子さんに直してもらえるんで張り切っちゃいやして」
滝子「ったく…」と、笑っている
笑顔の美子

<美子もまた充実した時間を過ごせる場所を見つけていました>

縁側に姿を見せた清(大野拓朗)が小声で滝子と隈井を呼び3人は奥に行く
少し気になるような顔をする美子

<昭和14年9月 ヨーロッパで第2次世界大戦が勃発
一方、日本では日中戦争の打開のために国家総動員法が成立
戦時に際した人・物の国家統制が進んでいました
暗い時代の足音は常子たちの暮らしに迫ってきていたのです>

森田屋居間
宗吉(ピエール瀧)「しばらくの間、松弁当を作るのを見合わせようと思う」
(一同)「えっ…」
照代「竹弁当だけにするって事ですか?」
宗吉「しかたねえだろ、国が決めた値段で売ってるものなんか
すぐに売り切れちまって回ってきやしねえ」
長谷川(浜野謙太)「みんな軍に取られちまうんですかねえ」
照代「しかたないですよ、そういうご時世なんですから」
まつ「はぁ…お国が大変なんだ、辛抱のし時だよ今」
唇をかんでいるような常子
まつ「でもなあ、深川からも兵隊さんとられ始めてんだ
あんたにもいつ赤紙が来るか…」と、長谷川を見る
長谷川「え~!?ちょっと…やめて下せえ!」
富江「早く支那との戦争が終わればいいのに」
宗吉「心配すんな、日清日露世界大戦と勝ち続けてきた大日本帝国だ
この戦争もすぐに勝って終わっちまうさ」
長谷川「そうっすね」
宗吉「それまでの我慢だ」
まつ「そうだ」
君子「あの…木材の方は大丈夫なんでしょうか?」
常子「おばあ様のお店の事ですか?」
君子「ええ」
美子「みんな深刻そうに相談してた」
常子「うん?」
君子「えっ?」
鞠子「何で知ってるの?」
常子「あ~美子また縫い物しにおばあ様のところに行ってたの?」
美子「頼まれるんだからしかたないでしょ」
常子「縫い物もいいけどちゃんと勉強もしなさいよ」
美子「勉強なんかしたって成績上がらないもん」
鞠子「そんな事ないわ、勉強はした分だけ結果は出ます」
美子「私はまり姉とは違うの」
君子「やめなさい」

<星野は帝国大学の大学院に進み植物の研究を続けていました>

甘味屋でノートを広げて今週の出来事を確認する星野(坂口健太郎)「よし…」
(弟からの葉書・今日こそ常子さんに必ず傳える)
常子が来て2人は例によってお汁粉を注文する
常子「早速ですが今週はいかがでした?」
星野「もうですか?まだお汁粉も来てないのに」
笑顔の常子「すみません、楽しみでつい」
ノートを確認する星野「戦地にいる弟から葉書が届きました」
常子「本当ですか?」
星野「はい、体は元気なので心配はするなと
向こうの生活にも慣れてきたみたいです」
常子「それはよかった」
星野「僕も安心しました」と、ノートの(弟からの葉書)の部分に線を引く
常子「でも心細い事には変わりないですね
遠く離れた戦場で家族と離れて暮らすなんて
私には想像もできません」と、心配そうな常子を見た星野
ノートに目を落とすが「以上です、今週はそれだけでした」

お汁粉を食べて店を出た2人
星野「今日も楽しかったです」
常子「星野さんいつもそればかり」と、笑顔でうつむく
星野「いやぁ、本心なんですがね…」
と、立て看板の貼り紙(町内会決議に依り)に目を止める常子
「あ…パーマネントのお方は当町通行を御遠慮下さい」
星野「ご時世ですね、大阪では外灯も自粛して夜は暗いそうですよ」
常子「へえ~この辺はまだ明るいのに」
星野「砂糖も節約しなくてはいけませんからねぇ
あのお汁粉も食べられなくなるかもしれません」
常子「えっ?」
星野「ああ…あくまでも、かもしれません…という話です」
常子「え~…」
と、「おい貴様ら!」と背広姿の男が2人に近づいてくる
背広「時局を何と心得るか!
大陸では皇軍将兵が東亜の安寧のために戦っているという時に
乳繰り合い風紀を乱し恥ずかしいと思わんか!」
常子「いやあの…わ…私たち」
背広「口答えするのか」
常子の前に出る星野「やめて下さい!」
背広「何だぁ貴様!」
驚いたように星野の背中を見ている常子
星野「ご気分を害されたのなら謝ります、ただ…
僕たちは乳繰り合っていた訳ではありません」
常子を庇うように大きく手を広げる星野
背広「何?」
星野「乳繰り合うとは男女が密に会って情を交わし合う事を意味します
情を交わし合うとはすなわち…性行為を意味している訳です」
口を手で押さえる常子
背広「何言ってんだお前?」
星野「つまりそのような事が一切ない僕らに対して乳繰り合っていると言うのは
お門違いであり全くもって間違った言葉の使い方であると言えます
間違った言葉遣いをする事こそ風紀の乱れにつながるのではないでしょうか!
以上です!」
背広「うるさい!全く最近の若いやつは…もういい!」と、去っていく
常子は口を手で押さえたままだ
星野「失礼、卑わいな言葉を…」
「いや…ありがとうございます」と、星野の顔を見れない常子
星野「はぁ…でもよかった…常子さんを守る事ができて」
と、ほっとしたように笑う
そんな星野を見て笑顔になる常子「私もよかったです」
星野を見つめる常子「頼もしい星野さんを見る事ができて」
笑い合う2人

お部屋で刺繍をしている美子「とと姉ちゃんさぁ
最近口うるさいと思わない?あれしろこれしろって」
読書をする鞠子「口うるさいのは昔からよ」
美子「働き始めてから変わったわよ
お金出してるの鼻にかけてやけに自分の考え押しつけてくるっていうか」
鞠子「まあまあ、いろいろ大変なのよ」
美子「月に一度のお出掛けだってそうよ
みんなもう大人なんだし家訓だからって毎月律儀に守らなくたって…」
鞠子「大人って…あっ、帰ってきたかな」と、戸の方を見る
慌てて刺繍をしまい勉強してるふりをする美子
戸を開けて入ってきた常子は何か様子が変だ
「お帰り」と言う2人にただいまも言わず「フフフフ…」と笑い
机の前に座ると思い出したようにまた「フフッ…」と笑い
両手で頬杖をつくと頬を手でピタピタしたり首を傾げたりニヤついたままだ
そんな常子の背中を見ている鞠子と美子

下宿に戻った星野にちょうど電話がかかってきている
受話器を取った星野の顔が曇る
「あ…申し訳ありません
もう少しだけお時間下さい、まだ決心がつかないんです」

常子の背中を不満気に見ている美子
常子の背中から本に目を戻す鞠子

<この時はまだ人生を左右する大きな決断を迫られる事に
常子は気付いていませんでした>

相変わらず夢見るようにニヤついたまま幸せそうな常子

(つづく)

冒頭、鞠子と美子は「行ってきます」と言っているが常子は言っていない
これはラストで浮かれて帰ってきた常子が「お帰り」と言う2人に
「ただいま」を言わないのと揃えたのかな?
ほんとに細かい演出だ

常子が就職して2年半てナレだから
前回ラストからさらに1年半経過したようだ

なんか鞠子のお相手みたいな男の人が登場したね

女学校のシーン
美子が最初にほっとして笑ったのは赤点(60点以下)を免れたから?
教師の「常子さんでも、もう少しいい点数…」ってw

2年半も常子と星野は毎週会っていたみたいだ
でも今回の後半で初めて常子は星野を男性として意識したようだね
常子を庇う星野の背中と広げられた手
それに、もしかしたら卑わいな言葉もトリガーだったのだろうか?
とにかく星野への常子のデレ描写が遂に描かれた(部屋に帰ってから)
もうそれは滑稽なほどのデレデレぶりなのだがw

弟の件で哀しい空気になったので星野は予定を変更したが
常子に今日こそ伝えたかった言葉とは
次週予告にあったあの言葉なのだろう
妹思いの常子は(とと姉ちゃん的には娘なのかもしれないが)
星野の弟の事をとても心配していたね

今回は常子に対する美子の反発を中心に描かれたが
これは抑圧しようとする父親と娘の関係なのだろう
常子と1歳違いの鞠子と違って美子は歳が離れている
思春期になった美子がとと姉ちゃんに対して反発するのは
自然な事なのかもしれない
常子はととの代わりになろうとしているのだから



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