2016年6月2日木曜日

とと姉ちゃん(52)所詮この世には男と女しか…~一家の大黒柱になる常子

滝子の部屋 
考えをまとめるように瞬きの多い常子(高畑充希)「あの…
男性と女性が尊敬し合って働くのは難しい事なんでしょうか?」 
滝子(大地真央)「うん?」 
常子「その早乙女さん、男性に見下されまいという思いが
とても強いように思うんです」 
滝子「だから甘く見られないように
男から頼まれた雑用はするなって、そういう事かい?」 
常子「恐らく…早乙女さんのおっしゃる事も分からなくはないのですが
困っている方を助けないというのも…
どうするべきか思い悩んでしまって」 
滝子「フフフ…悩む事なんてこれっぽっちもないさ」 
心もとない顔で滝子を見ている常子 
滝子「そうやっていがみ合うから余計互いに受け入れられなくなる
男が悪いだ女は駄目だの言ったところで
所詮この世には男と女しかいないんだよ
だったらうまくやっていくしかないだろう」 
常子「そうか…」と、目の前が開けたような笑顔になる 
常子「そうですよね!」  
滝子「アハハハハ!」 
常子「おばあ様のおかげで胸のつかえが取れました
ありがとうございました!失礼します」と、急いで部屋を出ていく 
滝子「あ…常子?」
隈井(片岡鶴太郎)が茶菓子を運んでくるが 
常子「あっ、失礼します」と、走るように去る 
そんな常子を見て楽しそうに笑っている滝子 

総務部 
大福餅を口に入れる山岸(田口浩正)
常子「確かに私は半人前です、タイプライターの技術も他の方には及びません
だからこそ私にできる事をやって皆さんのお役に立ちたいんです
手書きの資料でも机の片づけでも誰かの役に立つのであれば
会社のためにもなるのではないでしょうか」
茶をすする山岸「そうねえ…」
常子「禁止されてしまったら私は何もできなくなってしまいます
どうか考え直して頂けませんでしょうか?課長!」
指についた粉をなめながら面倒くさそうに山岸
「ん~分かった分かった、禁止令はもう取り消そう」
常子「ありがとうございます!失礼します!」と、笑顔で去る
山岸(小声)「うるっせえなあ…」

常子がタイプ室に入ると男性社員が2名いて常子に仕事を依頼する
例によって部屋が静まり返る
早乙女(真野恵里菜)は余裕の表情だ
常子「分かりました、準備して営業部に伺います」
早乙女が常子を見る
男たちが部屋を出ていくと早乙女が「あなた!」と、立ち上がる
常子に詰め寄る早乙女「一体どういう神経をなさっているの?」
他の女たちも立ち上がり常子を囲む
常子「私は…たとえ雑用でも必要とされるなら受けるべきだと思うんです」
諸橋(野村麻純)「ふざけないで、それは先日禁止令が出たじゃない」
他の女「そうよ、課長に言われたばっかりじゃない」
常子「先ほど課長にお許しを頂きました」
(女たち)「…」
常子「男子社員を拒絶しても私たちの立場がよくなる訳では…」
早乙女「甘いのよ!いいように使われてるのが分からないの?
私たちがこれまでどれだけ理不尽な思いをしてきたか…
雑用を押しつけられ失敗の責任をなすりつけられ
何の評価も得られない!女だというだけで…
昨日今日入ってきたあなたには分からないでしょうけど」
常子「昨日今日入ったからこそできる事なのかもしれません
男性に諦めを抱かずどんな事も引き受ける事で
女性の評価を上げるきっかけになれば…」
早乙女「どうせ無駄なのよ!
昨日だって見たでしょ?向こうは言いなりになってほしいだけ
女に有能さは求めてないの
雑用を手伝っても当然だと思ってる
どんなに苦労しても努力しても誰も見向きもしないわ!」
常子「私は困っている人がいたら助けたいと思います
少しでも力になれるのであれば」
部屋の様子を窺っていたような山岸が入ってくる
「もうちょいちょいちょいちょい…困るよ職場でもめ事は」
早乙女「課長!禁止令を撤回したというのは本当ですか?
この件は私に一任して下さったはずじゃなかったんですか?」
山岸「それは言葉のあやでしょう
君がもう少しうまくやってくれると思ったからさぁ」
諸橋「では課長は早乙女さんが間違っているとおっしゃるんですか?」
「そうですよ」「言葉のあやってなんですか?」「ちゃんと言って下さい」
女たちの集中砲火を浴びた山岸が態度を変える「小橋君が悪い」
常子「えっ?」 他の女たちも「えっ?」
山岸「君は新人なんだから文句を言わず早乙女君たちの指示に従ってよ」
常子「そんな…」
山岸「手書きの清書は一切必要なし!
ね?今後は仕事全部早乙女君の指示に従いなさい、分かったね?」
と、「ちょっとお邪魔するよ」と総務部長の佃がドアを開けて入ってくる
山岸「部長!」
佃(斉藤洋介)「何だ、取り込み中だったのか」
山岸「いやいやいやもう何の問題もございませんよ
ただの意見交換でして、ええ」
佃「小橋常子君ってのは?」
常子「あ…私ですが」
山岸「小橋君来なさい!」
常子「はい」と、部長の前にいく
佃「君か?この書類を清書したのは」と、手にした書類を見せる
確認する常子「はい」
佃「これを作ったのはどんな子か知りたかったんだ
こんなにたくさんの書類を手書きなんかで書いて…」
部長の話を聞いている女たち
心配そうな多田(我妻三輪子)
佃「しかし見やすさはタイプライターに何ら劣っていない
こちらの書類も見やすくて分かりやすい
すばらしいよ」
少し驚いたような多田
息をのんだような早乙女たち
佃「これからもお願いすると思うからその時は頼むよ」
常子「あ…はい」
「では」と、退室する佃
山岸「うん、うんうん、まあ…そういう訳だから
これからは小橋君の思ったように動いてごらんなさい
期待してるよ」
常子「はぁ…」と、顔が少し引きつる
「一件落着」と、部屋を出ていく山岸
早乙女「小橋さん」
常子「はい」
早乙女「上の決定ですので雑用を受ける事もタイプの使用も認めます」
常子「ありがとうございます」
早乙女「ただし、私とは考えがまるで違います
そこは譲るつもりはありませんから」
常子「はい」
他の女たちも口は挟まない
多田は少し嬉しそうな顔をしている
早乙女「皆さん、早急に仕事に戻って下さい」
「はい」と、席に戻る女たち
早乙女「小橋さん」
「はい」と、呼ばれた常子が早乙女の席の前まで行くと
「これを4部、今日の4時までにお願いします」と、原稿を差し出す早乙女
常子「はい、かしこまりました」と、原稿を受け取る
自分の席に戻りタイピングを始める常子

<この出来事をきっかけに常子はようやくタイピストとして歩み始めました
常子の丁寧で懸命な仕事ぶりは
少しずつ早乙女たちにも認められていったのです>

手書きで原稿を書く常子

営業部へ書類を届けに駆け込む常子

常子の書類を確認している早乙女「確かに受け取りました」
「ありがとうございます」と、笑顔の常子

甘味屋でお汁粉を食べている常子と星野(坂口健太郎)
「そうですか、お仕事は順調ですか、それはよかった」
常子「すみません、ご心配おかけして」
星野「いえ、僕は僕で論文の執筆などがあり
森田屋さんにも伺えなかったもので」
常子「論文?」
星野「はい、もう最終学年になりましたのでそろそろ卒業の準備をと」
常子「そうですか、星野さんもご多忙だとなかなかこうして会えなくなりますね」
星野「ああ…そういう事になりますね…」
(沈黙)
寂しい表情になった常子が壁の貼り紙に目をやる
(来週より毎週日曜日 お汁粉半額)
常子「あっ、ではこうしませんか?」
星野「はい?」
常子「このお店は来週から毎週日曜日にお汁粉の値下げを始めるそうです
ですから毎週日曜日にこの時間にここでお会いして
一週間にあった出来事を報告し合うというのはいかがでしょう?」
星野「えっ?」
常子「あ…嫌ですか?」
星野「ああ…いえいえ」と、笑顔で首を振る
星野「喜んで、是非そう致しましょう」
常子「フフッ、よかった」

<タイピストになり3週間が過ぎたこの日
常子のもとに待ち望んだものがやって来ます>

足取りも軽くタイプ室に入る常子
部屋の中央に机を寄せて輪になって昼食の女たち
早乙女の弁当を覗く常子「きれいですね!」
早乙女「何です?唐突に」
他の女たちも笑っている
常子「色合いも美しいしきれいです
お弁当屋さんに住んでいる私が言うんですから間違いありません」
早乙女「早起きして手間をかけてますから」(少し照れているのかもしれない)
感心したように常子「はぁ~心がけが詰まってるんですね」
早乙女「私の事はいいですから
早く食べないとお昼の時間がなくなりますよ」
常子「そうですね、失礼します」と、席につき弁当の蓋を開ける
隣の多田「何かいい事でもあった?」
常子「えっ?」
多田「朝から嬉しそうだから」
常子「分かります?フフフ、出ちゃってました?アハハ」

<そう、この日は常子にとって初めてのお給料日>

タイピストたちが並び立つ中、部長に名前を呼ばれて前に出る常子

<そしてついに…>

四月分と書かれた給料袋を受け取り、それを眺めて笑みをこぼす常子

帰路、給料袋の入ったカバンを大事に胸に抱えるあまり
中腰になってしまっている常子が青柳商店へと入る

滝子の部屋
緊張した面持ちの常子が畳に封筒を置き手をつく
「おばあ様、今月から少しずつですがお金をお返し致します
ありがとうございました」
封筒を取った滝子が真面目な顔で「確かに受け取ったよ」
緊張が解けたように一気に崩れる常子「ああ~!ひと仕事終えた~!」
滝子「何だい、大げさだねえ、アハハハ」と、笑う2人
なぜか横で大泣きしている隈井
滝子「お前もだよ、隈井!」
隈井「だって女将さん…」
滝子「うん?」
涙でまともに喋れない隈井「づねござんがはじめてのぎゅうりょうを…」
滝子「分かった分かった分かった、分かった!」
と、常子に「耳が慣れて聞き取れちまう自分が恨めしいよ」
常子「アハハハ!」
滝子「ホホホホ!」
「はぁ…」と、ため息をついた滝子がしみじみと
「これで名実ともにとと姉ちゃんってやつになったんだねえ」
照れたような笑顔の常子
滝子「自分の力で金を稼いで家族を養う…
常子は一家の大黒柱って事だよ」
常子「大黒柱…」

<それは常子が長い間待ち望んでいた言葉でした>

(つづく)

山岸は今回もひどかった、言葉のあやってw
言うことがコロコロ変わるからみんなビックリしてたね
でも禁止令の撤回を常子に告げた後でこれはまずいかなと思って
タイプ室の様子を見に来たのかも
案の定もめてたから止めに入ったけど逆に集中砲火w
それで態度を変えるが部長が常子を褒めたからまたも態度を変える
もう山岸のクズっぷりから目が離せないw

早乙女は上の決定だからタイプの使用も雑用の手伝いも認めると言ったが
それだけではないのだろう
女だからというだけで仕事をしても評価の対象にならない事に苦しんできた
早乙女は、部長に「すばらしい」と評価された常子を見て
心の中の何かが救われたのかもしれない
それは他の女たちも同じだったのだろう
お弁当のシーンで常子に対して女たちが好意的になっているように見えたのは
そういう訳だと思う
何はともあれイジメ問題が解決したようなので良かった良かった

常子と星野は定期的に会う約束をしたのだから
もう完全につきあってるよね?
星野が常子に恋してる描写はふんだんにあるが常子のそれは無い
これは常子のモデルの人が生涯独身だったらしいから
描き方が難しいという事なのかな?
いや、ととの代わりのとと姉ちゃんなんだから
普通の娘のような恋をしたりはしないという事かな…

滝子の「聞き取れちまう自分が恨めしい」には笑った


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