2016年6月3日金曜日

とと姉ちゃん(53)常子の恩返し~美子は女学校に、鞠子は大学に…

なにやら包みを抱えて小走りに帰宅する常子(高畑充希) 

森田屋居間 
常子が包みを開けると大量の肉 
それを覗き込んでいる森田屋一同「すき焼き!?」 
常子「はい!給料日なのでみんなで外食もいいかなと思ったんですけど
やっぱりここで食べる方がいいなあって」 
照代(平岩紙)「それでお肉を?」 
常子「これだけあれば皆さんで食べられますもんねえ」 
皆は大喜びで、宗吉(ピエール瀧)が「おめえはよく出来た娘だなあ」
と、常子の背中を叩き「よ~し、じゃあこの肉はチャッチャと俺がおいしく…」
と、肉に手を伸ばすのだがまつがその手を叩く 
宗吉「痛えな…何すんでい?」 
まつ(秋野暢子)「うちの今日の夕飯はイワシと煮物だ
すき焼きにする訳にはいかないね…
下ごしらえだってしちまってんだ、今更変更なんかできやしないよ」 
宗吉「そんなもん明日食やぁいいだろう、せっかく常子がこうやってよ…」 
まつ「この肉は常子が懸命に働いて初めてもらった給料で買った肉だ
うちのもんが食べる道理はないよ」と、そっぽを向く 
まつを見る常子 
照代「お母さん…」 
富江(川栄李奈)と長谷川(浜野謙太)もしんみりとしている 
「まあ…母ちゃんの言うとおりだ」と、言った宗吉の腹が鳴り笑う一同 

小橋一家の部屋 
「今月分のお給金です」と、常子が君子(木村多江)に給料袋を渡す
君子の後ろには鞠子(相楽樹)と美子(根岸姫奈)も正座している
常子「おばあ様には返済してきたので残りは生活費に充てて下さい」
君子「ありがとう…お勤めご苦労さまです」と、頭を下げると
鞠子と美子もそれに倣う
常子「フフッ!いえいえそんな、あっ、でもあの…
一つお願いしてもいいですか?」
君子「なあに?」
常子「あれ、再開しません?」
(3人)「あれ?」
常子「月に一度のお出掛け」

壁に掛けられた竹蔵の家訓三か条

常子「ほかの家訓は続けられたけど
毎月お出掛けするような余裕はなかったからずっと気になってて
どうでしょう?これを機会に再開してみませんか?」
君子「いいわね」と、笑う
鞠子と美子も笑顔でうなずく
常子「よかった」と、ほっとしたように笑う

君子が仏壇に給料袋を供える
後ろには3姉妹
君子「竹蔵さん、常子が初めてもらったお給料です」

ちゃぶ台の上に炭の入った?大きな箱を置き、その上に鉄鍋
お部屋ですき焼きの肉を頬張る一家
常子「ん~!勝って手にした肉は美味じゃのう!」
鞠子「美味じゃ美味じゃ」
美子「美味じゃ美味じゃ」
君子「美味ねえ、フフフフ…」

深川
地図を手に道に迷っているふうの東堂(片桐はいり)
「こちらに行くべきか、はてまたこちらか…
おお、逆境は豊かに人を利する、いざ行かん」と、前に進むと
「東堂先生!」と、常子が嬉しそうに駆けて来る
東堂「小橋さん、お元気そうね」
常子「今日はありがとうございます、こちらです」と、案内する
歩き出す2人
常子「あっ、お荷物お持ちしましょうか?」
東堂「いいえ結構」
常子「さっき道に迷われてませんでした?」
東堂(さらっと)「いいえとんでもない」

<常子は就職先を世話してもらったお礼に東堂を家に招きました>

森田屋居間でお茶を飲む東堂
その前に並んで座る森田屋の面々はなんだか様子が変だ
常子「どうしたんですか?いつもどおりお話しを…」
宗吉「だってよ、インテリの先生なんだろ?
しゃべってバカがバレたら恥ずかしいじゃねえか、なあ」
富江「それに厳しいらしいし…」
東堂「は?」
まつ「あの…雷に向かってお静かに…とおっしゃったとか…」
東堂「それは申しました」
「あ~」と、うなずいて押し黙る面々
笑ってしまう常子「だから黙ってしまわずに」
長谷川が周りを見て手を上げる「じゃあ先生」
東堂「はい」
長谷川「あの…誰かの名言って教えて頂けます?」
東堂「名言?」
長谷川「ええ、人の印象がよくなるような」
宗吉「長谷川、てめえそうやってまた受け売りを増やそうって魂胆だな?」
長谷川「ヘヘッ…バレました?」
宗吉「先生、こんな質問より俺のに答えて下せえ」
東堂「どうぞ」
宗吉「あの…俺はよく このろくでなし! なんて言われるんですがね
よくよく考えると意味が分からねえ
この ろく っていうのは何なんですかい?」
東堂「ろく というのはもともと 陸 という字を書いて平らな土地を意味し
物や性格がまっすぐな事を申しました
それが ろくでない という表現になりますと
性格がひねくれている人を表していたのですが
それが更に転じて役に立たない人を指すようになったといわれております」
(一同)「お~」と、感心する
君子「さすが何でも知ってらっしゃるのね」
富江が手を上げる「じゃあ先生、夜寝る時天井を見ていると
木目が人の顔に見えてくるんですが、それは何かの暗示ですか?」
東堂「いえ、それは気のせいでは?」
間髪入れずにまつ「先生様、どうしたらうちはもうかりますかね?」
東堂「それはご自身でお考え下さい」
長谷川「双葉山は勝ちますか?」
東堂「存じません」
宗吉「天狗の捕まえ方は?」
東堂「存じません!」
照代「最近疲れがとれなくて…」
東堂「何だと思ってらっしゃるんですか私を!」と、怒り出す
(面々)「すいません…」と、しょんぼり頭を下げる
東堂「疲れがとれないと言われましても…」と、ハンカチを口にあて笑う
小橋一家も笑っている
美子「先生に教えて頂くのは私なんですからね」
と、東堂のそばまで行って座り「先生、来年から女学校に上がります
お世話になります」とキチンと挨拶する
東堂「こちらこそ、お二人の妹さんならかわいがりようがあるわね」
君子「先生、鞠子はどうですか?」
東堂「順調でございます
このまま進めれば大学合格は間違いございません」
(一同)「お~」
嬉しそうな鞠子「先生の行き届いたご指導のおかげです」
東堂「いいえ」
常子「私が会社で働けるのも先生が尽力して下さったおかげです」
東堂「いえいえ」
君子「お世話になりっ放しで何とお礼を申し上げていいか…」
東堂「いえいえいえ」
話はこれくらいにしてお食事でも…となるのだが
招かれたお返しをしたいと言い出す東堂
持ってきたカバンを探る東堂に常子が「いやそんな頂けません」と言うが
東堂「いいえ、是非受け取って頂きたいの」
常子「いやでも…」
と、東堂が台本を取り出すと立ち上がり隣の間へと歩いていく
(一同)「えっ?」
東堂「では始めます」
鞠子「始める?」
突如顔つきも声も変わる東堂「存うるか存えぬかそれが疑問じゃ
残忍な運命の矢石をひたすら堪え忍うでおるが大丈夫の志か
あるいは海なすかん難をむかえ撃って戦うて根を絶つが大丈夫か
死は眠りに過ぎぬ」
長谷川「何だろう?これ」
富江「さあ…」
鞠子「ハムレットっていうお芝居だと思う…」
君子「お芝居?」
照代「これがお礼って事?」
常子「恐らく…」
東堂「眠る!ああ…」
宗吉「いつもああなのか?」
まつ「やっぱり変わった先生様だなあ」
美子「女学校に行くの不安になってきた」
東堂「やすやすとこの世が去られるものを
誰がおめおめとしのうでおろうぞ…」と、東堂の芝居は続いている…

<幼いと思っていた美子が女学校に通う年齢に…
常子は妹の成長の早さに驚きつつも幸せを感じていました>

一年後、昭和十三年四月

満開の桜の下を駆ける美子(杉咲花)
常子「ちょっと待ってよっちゃん!」
立ち止まり振り向く美子
「先に行って切符買ってくる、みんなゆっくり来ていいよ」
常子「あっ、ちょっと…フフ…行っちゃった」と、君子と鞠子と笑う

<この春、美子は女学校に
鞠子は帝都女子大学に無事進学しました>

デパートの食堂
お子様ランチを頬張る美子「ん~!おいしい!」
一家の笑い声

美子は中座している
常子「今月のお出掛けはデパートにして正解ね」
常子を拝む鞠子「職業婦人様様です」
常子「フフッ、おだてないで
あ~でもよっちゃん、お子様ランチでよかったのかな?
遠慮したんじゃない?」
鞠子「本当に食べたかったみたい、まだまだ子どもね」
常子「こんな調子で大丈夫かしら、女学校に上がったっていうのに」
君子「まあ、美子は心配ないわ
鉄郎さんと同じにおいっていうの?」
2人「えっ?」
君子「たくましいというか要領がいいというか」
常子「そう…ですかね?」
ハンカチを手に戻ってくる美子「何の話?」
常子「ううん、何でもない」
と、テーブルに君子の食事についていたいちごの皿が残っている
君子が娘たちにくれたのだが2粒しかない
常子が美子にすすめる
「本当?ありがとう」と、いちごを食べる美子「ん~おいしい…」
残りを常子は鞠子にすすめるが
「ううん、とと姉のお金で来たんだからとと姉が」と鞠子
常子「いいのいいの鞠ちゃん食べて」と皿を押す
「ううんとと姉が…」「いいから鞠ちゃん…」「いいから…」
と、皿を押し合う2人
それを見ていた美子
「よし!そんなにもめるんだったら私がなんとかしてあげる」
常子と鞠子「えっ?」
と、美子が残りの1粒に手を伸ばして食べてしまう
口を開けて驚く常子と鞠子「あっ」
家族を見渡し美子「これで丸く収まるでしょ?」
笑いだす一同
鞠子「たくましいこと」
美子「えっ?」
美子を見据えて常子「たくましいこと」
美子は怪訝な表情

<この美子が小橋家に新しい風を巻き起こしていくのです>

(つづく)

君子が仏壇に給料袋を逆さまに供えて、あれっ?て思ったんだけど
ちょこっと調べたら両方あるみたいだね
逆さまが正しいって意見が多かったかもしれないが
宗派によって違うという意見もあった

肉を食べた常子が「勝って手にした…」と言ったのは
最初意味がわからなかったんだけど
あれは10話の二人三脚で玉置兄弟に勝って手に入れたお米を食べた夜に
「勝って手にした米は美味じゃのう」と言ったのを踏襲したんだね
鞠子も美子もそれを覚えていたから美味じゃ美味じゃと応じたのだろう
それにしてもあの肉の量は4人では食べごたえがあったと思う
姫奈ちゃんも最後にお肉を食べれて良かったね

東堂が道に迷ってたのをさらっと隠すところ笑った

森田屋の面々が東堂へくだらない質問を繰り出す間が良かった
まつから始まって東堂が怒り出すまで秀逸

中座してた美子は君子の「(美子は)たくましい…要領がいい…」
を聞いていないから怪訝な表情だったね
いちごのエピソードは新登場の
(杉咲)美子の茶目っ気を印象づけたシーンだった




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