2016年9月27日火曜日

とと姉ちゃん(152)戦時中の市井の人々の暮しの記録を残したいと語る花山

花山のデスクの書類の山に自分が書いた原稿を重ねる常子(高畑充希) 
水田(伊藤淳史)「4日も留守だと書類もたまってきますね」 
常子「そうですね…帰っていらしたらバリバリ働いて頂かないと」 
美子(杉咲花)「花山さん今日戻られるんでしょ?」 
常子「うん…そのはずなんだけど…」 
と、受話器を持つ島倉「常子さん…常子さん!」 
常子「はい、どうしたの?そんな大きい声出して」 
島倉「花山さんの奥様から…花山さんが東京駅で倒れたそうです…」 
受話器を取る常子「もしもし…」 

タイトル、主題歌イン 

常子と美子が駆けつけると花山(唐沢寿明)は病室のベッドの上で
書きものをしている「やあお二人さん」
驚く常子たち
三枝子(奥貫薫)「常子さん美子さん…この度はお騒がせ致しました」
(と茜と2人で頭を下げる)
常子「あ…あの…花山さんあの…お体は?」
花山「問題ない落ち着いてるよ」
三枝子「ごめんなさい…電話した時は私も動転してしまっていて…
容体も分かっていなかったものですから」
花山「倒れたなんて大げさなんだ
例の…あ~!(と腕を上げたため点滴の針を気にする)
例の胸のあれでね、少し苦しくなったから腰を下ろしただけだ」
美子「本当に平気なんですか?」
花山「ああ、このとおりさ」
安心してため息をつく常子「はぁ…もう心配かけないで下さいよ
みんな病院に駆けつけるって言って大変だったんですから」
(美子がうなずく)
花山「それはすまなかった」
茜(水谷果穂)「だから止めたのよ、それなのに無理して広島に向かうから」
花山「ああ」
茜(常子たちに)「そんなに急ぎの原稿があるんですか?」
常子の顔を見る美子「いや…私たちは取材の事は何も…」
花山「…戦争中のね…人々の暮らしの記録を記事にしたいんだ」
常子「戦争…」
花山「ただの戦争の記録じゃない
名もない市井の人々がどのような暮らしをしていたのか
戦争の記録を残したいんだ
歴史的な大きな事件ではなくあの戦争の中での日々を残しておこうと」
美子「いつからそんな事を?」
花山「以前から探していたんだよ…
あなたの暮しがこれから世に提案すべきものは何なのか」
常子「それが戦時中の暮らしの記録ですか?」
花山「ああ…これからは世の中から忘れ去られないように訴えていくのも
この雑誌の役割だと思ってね…
あの戦争は我々庶民の暮らしをメチャクチャにした
戦争の経過などは正確な記録が残されているが
あの戦争の間ただ黙々と歯を食いしばって生きてきた人たちが
何を食べ何を着てどんなふうに暮らしていたか
それについて具体的な事はほとんど残されていない…
それを残したいんだ
私は終戦を迎えたあの日以来ずっと考えていた
もし一人一人が自分の暮らしを大切にしていたら
もし守らねばならない幸せな家族との豊かな暮らしがあったなら
あの戦争は起きなかったのではないかとね…
二度と戦争が起きぬようにあの戦争に関わってしまった人間として
戦後生まれの人にもきちんと伝えたいんだ」
常子「それで広島へ…」
花山「ああ…だが思うようにはいかなかった
つらい記憶だ…皆口が重くてね
戦争中の事は話したがらない
今更蒸し返してほしくないとも言われた」
美子「では取材は失敗ですか?」
花山「また行くさ、来週にでも」
美子「来週?」
花山「1週間もあれば退院できるだろう」
美子「退院できたからといって病気が治った訳ではないんですよ」
花山「治るまで待ってはおれん」
美子「でしたら花山さんの代わりに私が」
花山「駄目だ!従軍経験がある私でなくてはできん!
じかに人々の声を聞いて記事にしてみたいんだよ!」
茜「いい加減にしてよお父さん!
こんなに皆さんが心配して下さってるのにどうして分からないの?
お父さんはもう年なのよ…お仕事よりもお体をもっと大事にして」
三枝子「私も茜に賛成です
もし今度倒れたらと思うと私も生きた心地はしません
お願いします…どうかお考え直し下さい」
花山「…死んでも構わん
私は死ぬ瞬間まで編集者でありたい
その瞬間まで取材し写真を撮り原稿を書き
校正のペンで指を赤く汚している現役の編集者でありたいんだ!
(とペンをかざし)常子さん…君なら分かるだろう!」
目を伏せる常子「…私は…
(と花山を見て)取材に賛成する事はできません」
花山「…」
常子「奥様や茜さんが反対してらっしゃるのに認める訳にはいきません」
三枝子「常子さん…ありがとうございます」 茜「ありがとうございます」
常子「いえ…」
ベッドの上で無念そうにうつむく花山

夜、常子の家
鞠子(相楽樹)「それで花山さんは納得したの?」
美子「多分ね…それっきり黙ったままだったから…」
鞠子「そう…」
水田「お医者さんは何と?」
美子「もちろん安静ですよ
たとえ1週間で退院できたとしてもすぐに仕事や
ましてや広島に出かけるなんてとても許可できないって」
たまき(吉本実優)「それでも花山さんは取材なさりたいでしょうね…
(一同がたまきを見る)あっ…ごめんなさい…」
鞠子「とと姉はまだ迷ってるのね」
常子「うん?」
鞠子「本当に止めてよかったのか」
常子「うん…」
鞠子「奥様と茜さんのお気持ちを考えると
とても許可なんてできないわよね」
美子「私は今日の花山さんのお姿を見ただけで…
もうそれだけでうなずけなかった」
水田「最近は昔じゃ考えられないような老け込みようですからね」
『死ぬ瞬間まで編集者でありたい…』と言った花山を思い出す常子

病室で女性看護師に脈をとられている花山が常子たちを睨みつけている
「私が勝手に抜け出さないか見張りに来たのか」
美子「そんな…」
水田「違いますよぉ」
茜「せっかくお見舞いに来て下さったのに」
三枝子「お花とてもきれい…ありがとうございます」
美子「いえ…」
看護師「怒ったりしたら駄目ですよ、血圧また上がりますから」
花山が看護師を挑発するように睨む
(退室する看護師に茜と三枝子)「ありがとうございました」
常子「花山さん…
取材をなさりたいという気持ちにお変わりはありませんか?」
花山「…もちろんだよ」
常子「あれからいろいろ考えたんですが
やはり花山さんがなさろうとしている企画は続けるべきだと思うんです」
(美子と水田)「…!?」
茜「待って下さい、父は仕事ができる状態じゃ…」
常子「ええ…ですからこれ以上の取材を認める事はできません」
花山「どういう事だ?取材しなければ戦争体験者の声を集められんだろう」
常子「あなたの暮しで戦時中の暮らしについて書いて下さいと
読者の方から募集するのはいかがでしょうか?」
美子「募集?」
常子「そう…原稿用紙1枚でも…それよりも短くたっていいんです
皆さんが書いて下さったものをまとめる事ができたら…」
水田「あっ…それなら取材に出向かずとも
多くの声を集める事ができますよね」
花山「だが本当にそれで質の高い記事に?」
立ち上がり花山の顔をのぞき込むような常子
「読者を信じてみませんか?
商品試験の時も信じて応援して下さったんです
新しい雑誌が日々生まれる中で買い続けて下さっているような方々です
我々の思いに共感して戦時中の暮らしについて
ありのままに語って下さるはずです
奥様と茜さんはいかがでしょうか?
これだと花山さんのお体に負担をかけず
記事を作る事ができると思うんですが」
三枝子「ご配慮ありがとうございます」 茜「ありがとうございます」
空(くう)を見つめる花山に常子「花山さんは…いかがです?」
花山「募集文は私に書かせてくれ」
微笑む常子「はい」

病室のベッドで原稿を書く花山
『その戦争は昭和十六年に始まり昭和二十年に終わりました
それは言語に絶する暮しでした
その言語に絶する明け暮れのなかに
人たちはやっとぎりぎりで生きてきました
親兄弟、夫や子、大事な人を失い
そして青春を失い
それでも生きてきました
そして昭和二十年八月十五日戦争はすみました
まるでうそみたいでばかみたいでした
それから二十八年がたってあの苦しかった思い出は
一片の灰のように人たちの心の底ふかくに沈んでしまって
どこにも残っていません
いつでも戦争の記録というものはそういうものなのです
あの忌わしくて虚しかった戦争の頃の「暮し」の記録を
私たちは残したいのです
あの頃まだ生まれていなかった人たちに戦争を知ってもらいたくて
貧しい一冊を残したいのです
もう二度と戦争をしない世の中にしていくために
もう二度とだまされないように
どんな短い文章でも構いません
ペンをとり私たちの元へお届けください』

二ヵ月後

「おはようございます」と出社する常子たちに
「常子さ~ん!」と慌てて階段を下りてくる島倉
常子「はい」
島倉「大変です!」
常子「どうしたんですか?島倉さん」
島倉「(あっ…)もういいから来て下さい早く!」(と階段を上がっていく)
島倉の様子に驚きながらも後に続く常子

(つづく)

花山は看護師を睨みつけたりとか元気ありすぎだろw

取材を広島から始めたのは被爆体験は外せないからだろうか?

今回は花山のセリフに力のあるものが多かったし募集文も美しかった
「…もし一人一人が自分の暮らしを大切にしていたら
もし守らねばならない幸せな家族との豊かな暮らしがあったなら
あの戦争は起きなかったのではないかとね…」
などは本当にそうではないかと思う
もちろん戦争はどちらが悪でどちらが正義とかそんな単純なものではないが
日本やドイツの国民が軍部やナチスによる被害者だというのは違うと思う
おそらく国民の少なくとも一部は戦争を望んだはずだ
格差が広がり生活は苦しく結婚する事も難しくて子どももいなければ…
もういっその事戦争でも起こってガラガラポンしてくれないかと
考えてしまう人たちが増えても不思議ではないだろう
今の日本のネトウヨと呼ばれる人たちがそうではないのか?…とちょっと思う


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