2016年9月21日水曜日

とと姉ちゃん(147)娘たちにそれぞれ言葉を贈る君子~小さな幸せの積み重ねで今の幸せがある…

君子の部屋 
常子(高畑充希)が「どうぞ」とお茶を置く 
花山(唐沢寿明)「ありがとう」 
布団の上に半身を起こした君子(木村多江)が肩掛けを掴む 
「あ~かか」と常子がそれを羽織らせる 
花山「お加減はいかがですか」 
君子「今日は少し気分がよくて…常子…」 
常子「はい」 
君子「少し2人にしてもらえるかしら」 
常子「…ええ…では」(と部屋を出る) 
花山の顔を見る君子 

タイトル、主題歌イン 

君子「わざわざお越し頂きありがとうございます(花山が礼で返す)
ず~っとね…花山さんにお礼を申し上げたいと思っていたの」
花山「礼ですか?」
君子「娘たちを立派に育てて頂き感謝しております」
花山「感謝なんてとんでもない…私は…
私は常子さんにとって本当にこれでよかったのかと
考えてしまう時があるんです」
君子「なぜ?」
花山「『雑誌を作るならば人生を賭けます』と
常子さんは全てをなげうってあなたの暮しに打ち込んでくれました
ですが常子さんにはもっと別の人生があったのではなかろうかと…
お母様としても思うところがあるのではないですか?
ただ仕事だけに邁進させてしまって申し訳ありません」(と頭を下げる)
君子「いいえ…常子は幸せなのだと思います
自分で選んだ道ですし…何より
そんなふうに思って見守って下さる方がいるんですもの」
花山「…」
君子「あの子は幼い頃からずっと無理をして生きてきたように思えます
人に頼るのが下手で何でも一人で抱えて…
花山さんに出会って叱られてようやく
常子は心から誰かに頼って生きる事ができたんだと思います
本当にありがとうございます」
花山が頭を垂れる
君子「よかった…お伝えできて…」
花山「…長居してお体に負担をかけてはいけませんね
この辺で失礼します」
君子「花山さん…これからも娘たちをよろしく…お願い致します」
うなずいて礼を返した花山が立ち上がり「失礼致します」と部屋を出る
一人になって何か心のつっかえがとれたようにうなずく君子

玄関を出た花山を3姉妹が見送る
常子「今日はわざわざすみませんでした」
美子(杉咲花)「ありがとうございました」
(常子と鞠子)「ありがとうございました」
鞠子(相楽樹)「花山さんにお会いでき母もとても喜んでいると思います」
花山「こちらこそだよ…すばらしいお母さんだね」(と背を向け歩いていく)

君子が仏壇に手を合わせている
常子「かか、よろしいですか?」
君子「ええどうぞ」
3姉妹が部屋に入り君子の前に並んで座る
常子「花山さんをお送りしてきました」
君子「ありがとう…どうしたの?3人そろって」
美子「ちょっとかかと話したくなっちゃって」
君子「な~に?」
鞠子「ととへご挨拶ですか?」
君子「ええ、ちょっとね…さあ何を話そうかしら?」
顔を見合わせる3姉妹「ん~フフフ…」
美子「こう改まると特には…」
常子「フフフ…そうね」
鞠子(常子に)「あっ、よっちゃんが電話で言い間違えた話は?」
常子「えっ?」
美子「えっ?」
鞠子「ほら会社で電話受けて『少々お待ち下され』って言ったらしいじゃない」
美子「ちょっとどうして言うのよ」
常子「ごめんね、何だか愛らしいなと思っちゃって…フフフ」
美子「もう恥ずかしいわ」
常子「ごめんごめんごめん」
美子「もう…」
常子「フフフフ」
笑い合う娘たちを笑顔で眺めている君子「あなたたちがいてくれたから
幸せだったわ」
鞠子「かか…どうされたんです?」
君子「……美子」
美子「はい」
君子「美子はいつも私たちを和ませて笑わせてくれている
あなたが笑うと私たちみんな幸せな気持ちでいっぱいになるのよ…
いつも伸びやかで美子には笑っていてほしいわ」
美子が「はい」とうなずく
君子「……鞠子」
鞠子「はい」
君子「鞠子はね…いつもさりげなく心配りしてくれる
だからみ~んな甘えてしまうの
おかげで私は安心していられる」
鞠子が微笑んでうなずく
君子「……常子」
常子「はい」
君子「あなたはいっつも一生懸命でみんなの幸せのために走り続けて…
どんな時でも私を支えてくれた
本当にありがとう」
潤んだ瞳で母を見つめる常子が小さくうなずく
立ち上がった君子が(美子に体を支えられ)
押し入れから小さめのつづらを取り出す(つづらは美子から常子へ)
君子「それ…私の宝箱なの」
美子「宝箱?」
常子「開けていいですか?」
君子「ええ」
常子が蓋を開けると中にはいろいろなものが収められている
「あ…うわぁ…これ」と常子が布で作った桜の花びらを手に取る
思い出される竹蔵とのエピソード
鞠子が「懐かしい…」と『KT歯磨』と書かれた小袋を手に取る
思い出される森田屋での練り歯磨きの破裂騒ぎ
君子「一つ一つが愛おしくてね…つい取って置きたくなるの
小さな幸せっていうのかしら…その積み重ねで今の幸せがあるのね」
常子「ととも昔おっしゃってましたね」
君子「…みんな…本当にありがとう…
あなたたちは私の自慢の娘よ」
3姉妹も目が潤んでいる
君子「ああ…明日の昼…久しぶりに常子の親子丼が食べたいわ」
「フフフ…」と顔を崩して笑った常子が
こぼれる涙をぬぐい「はい、ご用意しますね」とうなずく
君子が仏壇に向かい竹蔵の写真を納得したような笑顔で見つめる
母の背中を見つめている3姉妹

<君子が亡くなったのは10日後の事でした>

(つづく)

花山が言う常子の別の人生とはもちろん
結婚したり子どもをもうけたりという生き方の事だろう
ここは視聴者的にとても気になるところでそのモヤモヤを
作者が君子のセリフを借りて説明したといったところだろうか
もちろん結婚しないと幸せになれない訳ではない
現実には結婚した事で逆に不幸になる人もいるだろう
けれどもこれはドラマでそれも朝ドラだ
朝ドラのヒロインには現実を生きる我々の普通の人生よりももっとこう
「輝かしい何か」を自分は期待してしまう
星野を諦めとと姉ちゃんとして生きた常子の物語は美しいし
ドラマも面白かった
モデルの大橋鎭子さんの人生も素晴らしいと思う
けれどもやはり朝ドラのヒロインには好きな相手と結ばれてほしい…
と個人的には思ってしまう

常子は時々親子丼を作っているみたいだ
長谷川に教えてもらった親子丼だけが常子の得意料理なのかもしれないね

君子が竹蔵や滝子と同じくナレ死した
この臨終を描かないスタイルはいいと思う
朝から死に別れで泣き叫ぶシーンとか見たくないから


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