2016年9月13日火曜日

とと姉ちゃん(140)そして洗濯機の公開試験が始まる

社長室に掛けられた町工場の写真を見る赤羽根(古田新太)「村山」 
村山(野間口徹)「はい」 
赤羽根「あの工場を覚えてるか?」 
村山「ええ」 
赤羽根「12年前あの小さな町工場から始まってようやくここまで来たんだ
いつ潰れてもおかしくない町工場をなんとか必死にやりくりして
這い上がる機会を待ち続けた
お前らはあの頃の貧しかった暮らしに戻りたいか?」
酒井(矢野聖人)「いえ」 
村山「とんでもないです」 
赤羽根「俺もごめんだ…あの戦争をなんとか生き抜き帰ってきたんだ
焼け野原の中ろくな食い物がない中でも生きてきたんだ
戦争では負けたがな、日本は今かつてない黄金の国になろうとしている
世界一の経済大国も夢ではない
庶民の手の届く夢を与える事が経済成長を生み
日本を世界に負けない豊かな国にする
我々はそれに貢献しているんだ!
金持ちになる事が幸福なんだ
これは我が社の正しさを証明する戦いだ、絶対に負けられん」

タイトル、主題歌イン 

<メーカー各社との電気洗濯機公開試験は6月末に行われる事が決まり
あなたの暮し出版では洗濯機の商品試験が佳境を迎えていました
そして万全を期すため新たに数多くのテスターを招いていました
その中にはもちろんこの2人も>

洗濯機を試験する2人を見て笑顔になって駆け寄る常子(高畑充希)
「康恵さんも綾さんもお二人ともありがとうございます」
康恵(佐藤仁美)「聞いたよ、公開試験だって?」
常子「はい」
康恵「新聞記者だか何だか知らないけど疑り深いやつもいるもんだねえ」
美子(杉咲花)「ええ」
康恵「さっさと対決して敵の鼻を明かしてやろうじゃないか」
(常子と美子)「フフフフ」
綾(阿部純子)「康恵さんったら熱くなっちゃって」
康恵「何言ってんだい、あんただって『悔しい』って歯ぎしりしてたじゃないかい」
常子「そうなの?」(康恵がうなずく)
綾(とぼける感じ)「私は別に…」
康恵「してたんだよ」
綾(康恵に)「早く脱水して下さい」
常子が楽しそうに笑う

福助人形の飾られた森田屋
美子「休みの日にもかかわらずお集まり頂きありがとうございます」
客席に座る君子(の膝に上にたまき)、鞠子、康恵、綾、照代
康恵「一体全体こんなに集めて何しようってんだい?」
美子「はい、あの…皆さんにお願いしたい事があって(と用紙を配り)
主婦の方々の一日の時間の使い方を調べるのを手伝ってほしいんです
用紙を見る照代(平岩紙)「一日の時間の使い方…」
美子「はい、朝起きてまず何をするのか…
それが終ったら次に何をするのかなど」
康恵「まずは朝ごはんの支度だろ?」
綾「私は…家の前の掃除…そうしないと一日が気持ちよく始まらないの」
鞠子(相楽樹)「うちはたまき次第、私よりも先に起きちゃう事もあるから」
照代「私は商売やってるから皆さんとは少し違うかも」
美子「はい、人によってそれぞれだと思います
主婦の方が一つ一つの家事にどれだけの時間を費やすのか
あらゆる年代の主婦の方々に伺ってみたいんです
ここ数年便利な電気製品が増えて昔は一日中家事に追われていたのが
少しずつその時間が減ってきたと思うんです」
君子(木村多江)「なるほど、興味あるわ」
鞠子「そう言われてみると昔のかかは
一日中家事をしていた姿しか思い浮かばないわ」
たまき「おばあ様大変だったの?」
君子「そうね…今と違って時間がかかったわね」
(南が厨房から出て来てお茶を配る)
美子「それで皆さんのお知り合いの主婦の方々にもご協力頂きたいんです」
康恵「お安い御用さ、みんなに聞いてみるよ」
綾「私も喜んで協力するわ」
君子と鞠子もうなずく
照代「私もできるだけ聞いてみるわ」
美子「ありがとうございます!」
南(上杉柊平)「また忙しくなりそうだな」
美子「うん」
南「頑張れよ」
美子「ありがとう」
南「おう」
一同から2人を冷やかすような笑いが漏れる
照れて退散する南とまんざらでもない感じの美子

厨房で卵焼きを焼く宗吉(ピエール瀧)「美子のやつ張り切ってるみてえだな」
南「まあ」
宗吉「タイショウよ、気取ってねえでたまには泣きついてみたらどうだ?」
キャベツを切っている南が宗吉を見る
宗吉「『さみしいよ~早く結婚してくれ~』ってな」
笑う南「そんな柄じゃないですよ
それに落ち着いたらぼちぼちって話はしてますから」
宗吉「そうかい」
南「はい」

電器店を手伝う村山と酒井
酒井「では社長はその事を…」
村山「わざわざ知らせる必要はないだろう」
酒井「しかしあなたの暮しが試験の中で
気付いてしまう可能性はないのでしょうか」
村山「何年も使って初めて異変が出てくるくらいだ
商品試験ごときで分かるもんじゃない
社長にはうちの洗濯機に不備はないと思ってもらったままの方がいいだろう」
酒井「…」(とうなずく)
奥から出てくる赤羽根「おい酒井」
酒井「はい」
赤羽根「お買い上げだ」
(村山と酒井)「ありがとうございます」
赤羽根「来月出る商品のカタログもおつけしろ」
酒井「はい」(と奥に走り)「さあさあこちらへ」
赤羽根「公開試験もいよいよだな」
村山「ええ、今も洗濯機はこれだけ店頭で売れているんですから
客はうちを選んでいるという事です
我が社の勝利は間違いありません」
赤羽根「これまでの分、あなたの暮しには恥をかいてもらわねばな」
村山「おっしゃる通りです」

洗濯機の試験場(屋外)
扇田「それでは本日2回目、666回目の試験を行います
今回は1キロの衣類、15分の洗濯時間、洗剤はアリオスです」
(一同)「はい」
扇田「では洗剤入れて下さい」
試験を進めていく一同
と、花山が現れ「扇田君、何回目だ?」
扇田「666回目、1キロ15分で試験しています…何か?」
花山「いや…さっきと回っている音が違うと思わないか?」
扇田「そうですか?」
するとバチッという大きな音がしてスタッフから悲鳴が上がる
見ると洗濯機から伸びたコンセントから白い煙が上がっている
花山「みんな下がりなさい!扇田君どいた!」
コンセントを見つめる花山「扇田君工具箱!」
扇田「はい!」
コンセントを調べる花山に島倉「危ないですよ、感電します」
花山「大丈夫だ」
コンセントを抜き工具で解体して中を調べる花山「これは…」
花山の一連の作業を本木がカメラに収める
コンセントが異常をきたしたのはアカバネ製の洗濯機…

編集部で風呂敷包みを2つ置く照代
水田(伊藤淳史)「これって…」
照代「美子ちゃんに頼まれていた
主婦の一日の過ごし方について聞き取ったものよ、はい」(と包みを開ける)
美子「こんなにたくさんどうやって?」
照代「私…主婦の知り合いがあまりいないから
お店に来るお客さんに声をかけてみたのよ」
美子「そこまでして下さったんですか」
照代「お料理を待っている間いい時間潰しだって
皆さん喜んで協力して下さったわ」
常子が笑顔でうなずく
照代「主婦の方にも近くで働いている方にもいろんな方に聞けたわ
少しでもお役に立つといいのだけど」
美子「ありがとうございます、とってもいい資料になります」

<美子と照代が用意したこのアンケートは公開試験の秘策となるのです
そして数か月がたち、いよいよ公開試験の当日>

昭和三十三年六月

屋外試験場
国実(石丸幹二)「それではこれより電気洗濯機の公開試験を始めたいと
思います、まず私から質問致しますので澄浦、広海、トーチク、ニッカデン、
アカバネのメーカー5社、それとあなたの暮し出版はそれぞれ各項目に対して
どのような試験を行っているのか発表して下さい
疑問や意見などある方は随時発言して頂いて構いません
よりしいでしょうか?」
(メーカー5社担当一同)「はい」
常子「はい」(花山もうなずく)
関係者席から赤羽根が余裕の笑みで常子を睨んでいる
ゆっくりと目を逸らし前を向く常子
花山「気負う事はない、これまでやってきた事をありのまま伝えるだけだ」
常子「はい」
社員たちの他に康恵と綾も常子と花山を見守っている

国実「試験はスジ(SJI)規格の定める必須検査項目を基準に行います
まずは洗浄率について
スジ企画では35%以上の洗浄率が義務づけられています
この点、各社いかがでしょうか?
まずは澄浦さんからお聞かせ下さい」
(澄浦)「はい、え~我が社の洗濯機の売りは
何と言いましても他社製品より洗濯時間が短い事です
渦の強度を強める事でたった5分で
たった5分で規定の洗浄率35%を達成できるよう設計されています」
国実「なるほど…では広海さんはいかがですか?」
(広海)「はい、え~我々は汚染布の汚しの材料として…」
国実「ちょっと待って下さい…汚染布というのは?」
(広海)「ああ…洗濯機の実験で使用する故意に汚す布です」
国実「布?実際のシャツなどで実験する訳ではないんですか?」
(広海)「ええ…こういったものですね(と汚染布を掲げ左右を見回し)
他のメーカーさんもそうですよね?」
同意する各メーカー担当
国実「なるほど…この布は何で汚したものなんですか?」
(広海)「炭やベビーオイル、牛脂などです
我が社はこれだけでなく(と別の汚染布を取り出し掲げ)
しょうゆ、泥、コーヒー、口紅、ケチャップなど
生活上想定しうる全ての汚れを試し
規定数値の倍である洗浄率70%を確保してます」
メモをとる常子
(トーチク)「我が社は泥の洗浄については特に力を入れておりまして
汚染布だけではなく(と作業着を取り出し)地方から実際に使った
農作業着を送ってもらって草の染みや泥が滞りなく落ちるかも試験して
スジ規定を上回っております」
(ニッカデン)「私たちは市販されている全て(と洗剤を取り出し)
10種類の洗剤を試して試験しています
更には井戸水と水道水、湯冷ましなどの水を使用して試験し
洗浄率35%を守っています」
興味深く話を聞く美子たち(水田がメモをとる)
国実「アカバネさんはいかがですか?」
(アカバネ)村山「ああ…うちは大容量でも洗浄率45%を保持しております」
国実「なるほど…あなたの暮し出版さんは洗浄率に対して
どのような事を行っていますか?」
常子「はい(と立ち上がり)え~私たちは…」

<こうして公開試験は始まっていったのです>

(つづく)

あなたの暮しが侮辱されて康恵の前では「悔しい」と漏らしたらしい綾だが
常子の前ではそれをとぼけたのは
女学校時代からの友人である常子に対して照れ臭かったのだろう
常子に張り合っているという訳ではないだろうが
お嬢様だった頃のクールな自分を知られているからかもしれない
常子はすごく嬉しそうだったね

村山が赤羽根に隠している洗濯機の不備は
おそらく花山たちが発見したコンセントの事なのだろう
もうアカバネが惨敗するフラグが立ってしまった…

なのに公開試験で常子をニッタリと見ている赤羽根が哀れだ
村山の答弁も他社の担当に比べたら弱いし…

冒頭で「絶対負けられん」と意気込んでいた赤羽根は
負けたらどうなるのだろう?
冒頭の長セリフから自分がどこかで間違ってしまった…
ぐらいの反省はありそうだが
急にいい人になってしまうのだけはやめてほしい

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