2016年8月6日土曜日

とと姉ちゃん(108)あなたの暮し社は順調に成長する~水田にプロポーズされた鞠子は…

営業中のキッチン森田屋 
カウンターの席に座る常子(高畑充希)が新聞を読んでいる

昭和二十五年 

<常子にとって毎日、新聞にくまなく目を通す事は
雑誌作りのための大事な習慣になっていました> 

照代(平岩紙)「どう?気になるニュースはあった?」 
常子「ん~…今日は…後楽園球場でナイター設備を完備…ですかね」 
照代「そんな事まで気にするの?」 
常子「はい、あなたの暮しに直接関係なくても
流行を知れば読者が気になる事が分かりますから
それにこのニュース、戦時中の灯火管制があった頃からしたら
もう考えられません」 
照代「そうよねえ…」 
宗吉(ピエール瀧)「随分と変わってきたよな
食材だっていろいろ手に入るようになってきたしな」 
照代「少しずつ暮らしが変わりつつあるのねえ」 
宗吉「お前んとこの雑誌が一役買ってんじゃねえか?」 
常子「いやそんな…お役に立ててればうれしいですけど」 
照代「立ってるわよ!みんな毎号楽しみにしてるんだもの
部数だって伸びてるんでしょ?」 
笑みがこぼれて新聞で口元を隠す常子
「宗吉さんが料理監修して下さっているおかげです」 
宗吉「よせやい、そんなおだてなくても頑張ってやるよ」 
「よろしくお願いします」と頭を下げた常子が腕の時計を見て
「あっ…あ~いけないもうこんな時間だ…原稿取りに行かないと」
と店を飛び出す 
バックを手に道を駆ける常子 

タイトル、主題歌イン 

<「あなたの暮し」の出版部数は順調に推移して社員も増やし
(扇田弘栄と島倉勝)経営も確固たるものになってきておりました>

デスクの電話が鳴り応対する常子

<順調なのは売り上げだけではなく…>

水田(伊藤淳史)「常子さん受話器相手にあんなに頭下げちゃって…」
鞠子(相楽樹)「あら、水田さんだっていつもあんな感じですよ」
水田「え…いつもって…鞠子さんそんなに僕の事を見てたんですか?」
鞠子「何ですか!意地悪言わないで下さい」
2人を観察している美子(杉咲花)
水田「いや…意地悪なんてそんなとんでもない」
常子も2人を見て口を手で押さえる

夜、食事中の小橋家(鞠子は不在)
美子「まだなのかしら」
常子「まだって?」
美子「まり姉ちゃんの結婚…もうおつきあいして随分たつわ
水田さんがそろそろはっきりするべきよ」
君子(木村多江)「美子…」
常子「水田さんには水田さんの考えがあるのよ」
美子「いや、こういう時はやっぱり周りの配慮が肝心だと思うの
しっかり背中を押してあげないと…」
常子と君子が笑う
君子「もう余計な事はよしなさいよ
周囲がとやかく言う事じゃないんですから」
美子「じゃあかかは2人がいつまでも結婚しないままでいいんですか?」
君子「それは…」
美子「まり姉ちゃんだって待ってると思うの…水田さんの言葉」
「うん…」と常子がうなずく

夜道を歩く鞠子と水田
「あの…ずっと言おうと思っていた事があるんですけど…」
少し緊張する鞠子「はい…」
2人の足が止まり見つめ合う(小橋家玄関前に到着)
水田(鞠子の足元を見て)「あ…その赤い靴すてきですね」
鞠子「えっ…?ああ…あっ、これですか?ありがとうございます
実は水田さんと『赤い靴』を見に行ったあと、つい買っちゃったんです」
水田「あの映画で赤い靴がはやっているらしいですからね」
鞠子「男の方なのによくご存じですね」
水田「鞠子さんのおかげです
鞠子さんとおつきあいしてからいろいろな事を知るようになりました」
鞠子「私もそうです…水田さんのおかげで楽しく過ごす事ができています
いつもありがとうございます」
水田「あ…いえ………鞠子さん」(息が荒い)
鞠子「はい」
水田「……おやすみなさい」
鞠子「…おやすみなさい」
うなだれるように礼をして帰っていく水田と横目で見送る鞠子

事務所で美子と水田がお弁当を食べている
美子「昨夜は何を食べに行ったんですか?」
水田「昨日は鞠子さんの好きなおそばを」
美子「おいしかったですか?」(常子も弁当を手にやってくる)
水田「鞠子さんと一緒ならどんなものでもおいしいです
常子と美子が口を押えて笑う
美子「仲のいいこと……だったらそろそろ結婚…」
常子「よっちゃ…!よっちゃん」
常子を見て美子が「はい…」とうなずく
水田「どうしました?」
美子「いえ、何でもありません」
と、編集長室のドアが開き出てきた花山(唐沢寿明)
「水田君、鞠子さんとの結婚はいつだ?」
せきこむ水田「えっ?いや…」
花山「次号で新婚女性に役立つ家事のやり方を伝えようと思ってね」
水田「そうですか…あの…ですが僕たちはまだ…」
美子「結婚したくないんですか?」(常子も興味津々で水田を見る)
水田「いえ、もちろんしたいですよ、今すぐにでも!」
美子「だったら求婚すればいいじゃないですか」
気迫の表情で常子「ええ!」
水田「でももし断られたらと思うと…」
美子「そんな事ありませんよ!ねえ緑さん」
緑(悠木千帆)「ええ、お似合いの2人だと思います」(常子もうなずく)
美子「ほらもう絶対大丈夫ですって
花山さんもそう思いますよね?」
花山「そんなもの知らん
本人が断られると思うならそうなんじゃないのか?」
「はぁ…やっぱり…」と水田がうなだれる
美子が花山の前に行きジェスチャアで(水田をなんとかしろ)
花山「大丈夫じゃないか?君たちは好き合ってるように見える」
水田「えっ…本当ですか!?」
「何度も言わせんでくれ忙しいんだ!」と花山が部屋に戻る
水田「いつも冷静な花山さんが言うなら間違いないですよね
何だか勇気が湧いてきました…」
美子「よかった…」
水田「早速今晩、鞠子さんにプロポーズします!」
思わず立ち上がる常子「今晩!?」
水田「はい…!思い立ったが吉日…ですから」
気合の表情の美子「頑張って下さいね」

並んで歩く鞠子と水田
鞠子「今月小津安二郎の新作が公開になるんです
姉妹の話なので見てみたいのですがご興味あれば一緒に…水田さん?」
「はい」と立ち止まる水田
笑う鞠子「どうかしました?ずっとうわの空で」
言いよどむ水田「……鞠子さん」
鞠子「はい」
水田「僕と夫婦になって下さい…僕と結婚して下さいませ!
あっ!ませ…なんて気取った口調にするつもりなかったのに…
すみません……でも…どうですか?お受け頂けませんか?…鞠子さん」
鞠子「…いいんですか?…私なんかで」
水田「なんか…って…鞠子さんほどすてきな方はいません!」
首を振る鞠子「嘘です…私なんかどこがいいんでしょうか」
水田「あなたの全てを愛しています」
鞠子「……水田さん」
水田「はい」
鞠子「少し考えさせてもらってもいいですか?」
水田「…」
鞠子「…今は…お返事する事ができません…すみません」(と去っていく)
ため息をつく水田

小橋家
美子「まり姉ちゃんどんな顔して帰ってくるかなあ」
常子「ニヤニヤじゃない?」
美子「そうよねえ」
常子「ねっ」
美子「私ですらそうなんだもん」
常子「フフフ」
料理を運んでくる君子(木村多江)「あなたたちが盛り上がってどうするのよ
まだ正式に結婚が決まった訳じゃないんだから」
常子(料理の巻き寿司を見て)「…それにしては今日豪勢じゃないですか?」
美子「結婚のお祝いみたい」
君子「ついつい…ねえ」
常子「おいしそう」
「ただいま帰りました」と鞠子が帰ってくる
鞠子「遅くなってすみません」
常子「まあまあまあまあ、座って座って座って(と鞠子の腕を引っ張り)
鞠ちゃんが帰ってこないと話にならないんだから」
鞠子「何が?」
美子「それでどうだった?」
鞠子「どうって何が?」
美子「だから私たちに何か言う事あるでしょ?」
鞠子「…ただいま…?」
美子「じゃなくて…」
鞠子(料理を見て)「あっ、どうしたの?いつもより…
何かおめでたい事でもありました?」
君子「えっ…あ~そういう訳じゃないんだけど…(かなりとぼける)」
「おいしそう~着替えてまいります」と鞠子が部屋を出る
常子「あれ?…えっ、どういう事?」
顔を寄せ合う3人
君子「求婚されたようには見えなかったわ」
美子「もしかして水田さん言えなかったんじゃ…」
常子「ええっ~…」

事務所でそろばんをはじく水田「はぁ…」
美子「ため息なんかついて幸せが逃げちゃいますよ」
水田「もうとっくに逃げてますから」
美子「またそんな悲観的な事…」
水田「実は…昨日鞠子さんに求婚をして…」
美子「したんですか?」(常子も目がまんまる)
水田「はい」
常子「で…で…鞠ちゃんは」
水田「少し考えさせてほしい…と」
美子「どうして…」
水田「僕と人生を共にしていいのか不安になったんでしょう
僕なんか気が小さくて頼りなくて何をやらせても下手くそな男ですから
僕がきっと嫌になったんです…だから鞠子さんは…」
常子「考え過ぎですって、そんな事気にしてたら
そもそもおつきあいしてませんから」
水田「ではどうして…すぐに返事してくれなかったんでしょうか?」
常子「それは…」

ぼんやりと道を歩く鞠子が女の子連れの3人家族を見て微笑む

<鞠子の気持ちは大きく揺れていたのです>

家族連れの背中を見つめている鞠子

(つづく)

冒頭のシーンで「あなたの暮し」の部数が伸びてるんでしょ?と聞かれて
口元を隠していやらしく笑う常子が可愛い
まだ大金持ちではないかもしれないが余裕はできたのだろう
常子はずっとお金で苦労してきたからもうそろそろ楽になってほしい

鞠子の恋の進展にやきもきする美子と冷静を装う君子と常子
が、実は気が気じゃなかった常子とごちそうを作ってしまう君子
このあたりの常子の表情やとぼける君子が面白い

「気が小さくて頼りなくて何をやっても下手くそ…」と自虐の水田に
「考え過ぎですって、そんな事気にしてたらそもそもおつきあいしてませんから」
と言う常子のセリフはよく考えたら失礼だよね
普通なら「そんな事ありませんよ、みんな水田さんを頼りにしています」
と言いそうなところだが「そんな事気にしてたら…」では
水田の自己否定を肯定する事になってしまっているw
常子はこういうところが間抜けで可愛い

あの時代なら結婚するなら順番からいって
姉の常子が先に…と家族なら考えそうなものだが
常子は妹を嫁に出すと公言しているからそれは問題ないのかな
だから鞠子が返事を保留した理由もそれではないと思う
ではなぜ鞠子はすぐに返事が出来なかったのだろう?

3姉妹のイメージカラーは常子が青、鞠子が赤、美子が桜色
映画の影響で鞠子が赤い靴を履いていたのは不自然ではないが
何かそれ以上の意味があるのだろうか?
『赤い靴』は1948年のイギリス映画で
童話の赤い靴のバレエ劇に主演する少女が恋愛とバレエの間で悩むが
成功して劇中の少女のようにバレエを続けなければ
(踊り続けなければ)ならなくなる悲劇的なお話らしい
これを今の鞠子に当てはめると雑誌が成功を続ける事と恋の成就は
両立しないという事なのだろうか?

もうひとつのヒントはラストシーンで
家族連れを見送る鞠子の寂しそうな表情だろう
父を早くに亡くした事が何か関係しているのだろうか?
例えばどんなに幸せな結婚をしても
相手がととのように突然死んでしまうかも…
心配性な鞠子はそれが怖くて結婚に踏み出せないとか…
そんな時は水田が走ってくるトラックの前に飛び出して
「僕は死にましぇん!」と叫んだら神ドラマだけどね!

次週予告は鞠子、鞠子、鞠子、鞠子、最後だけ常子
タイトルも「鞠子、平塚らいてうに会う」w
もう来週から鞠子がヒロインじゃん!
過去の朝ドラで結婚しなかったヒロインはいないらしいから
次週だけ鞠子を主役にして伝統を守るって算段なのだろうか?

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