2016年8月4日木曜日

とと姉ちゃん(106)常子と花山…2人じゃないと作れないもの

花山家居間 
三枝子(奥貫薫)が出してくれた水を飲む美子(杉咲花) 
花山(唐沢寿明)「慣れない酒など飲んで…」 
美子「酔ってはいません」 
花山「酔っ払いほどそう言うんだ…(三枝子に)先に休んでいなさい」 
三枝子「はい…失礼します」 
三枝子が部屋を出ると花山「君の言いたい事などわかる
あなたの暮しが最後になるかもしれないから最後に私と…という事だろう?
君らの思い出作りに協力する気などない」
谷(山口智充)「あなたの暮しは花山さんにとっても大事な雑誌でしょう?」
花山「何を言われようが私に戻る気は…」
美子「自分でおっしゃった事は守って下さい」
花山「何?」
美子「花山さん教えて下さいましたよね?
自分が出した企画は最後まで責任を持てと…
だったら最後までやり遂げて下さい
次の企画は花山さんが出した小麦粉の新しい料理なんですから」
花山「小麦粉…?まさか君たちは私の企画を盗んだのか?」
美子「私が悪いんです…花山さんの考えた企画が掲載される事になれば
とと姉ちゃんと花山さんがもう一度話し合う機会が出来ると思ったんです
でも…その…花山さんの企画だと明かす前に
次の出版が最後になりそうになって…
出版の準備をしているとやっぱりとと姉ちゃんには
花山さんが必要だと思ったんです
あなたの暮しは花山さんがいらっしゃらないと成り立たないんだって
だからお願いします…戻って企画を完成させて下さい!」(と頭を下げる)
腕を組みうつむき目を閉じ話を聞いていた花山
「随分勝手な言いぐさだな…断る」
顔を上げた美子「…分かりました…諦めます」
谷「おい、いいのか?」
美子がバックから新品の鉛筆を2本取り出し膳の上に置く
花山「これは?」
美子「闇市で探されていた鉛筆です
私が気に入ったものを2本選びました
お気に召さなければ誰かにあげて下さい
(谷に向き直り)谷さんわざわざありがとうございました」
そして「失礼します」と立ち上がり部屋を出て行く
谷「おい…おい君!」
花山は動かない
ため息をつく谷「花山さんの気持ちも分かりますが
広告も載せない事になったんだし戻ってやってもいいんじゃないですか?
やりたい事を全部やれる編集長なんていません
それに小橋君のところ以上に好きな事をやらせてくれる環境なんか
ないでしょう…
花山さんは小橋君とだから
小橋君は花山さんとだからあなたの暮しはできるんだ」
花山「おっしゃる事は分かります
…が、あの子が気持ちを改めない限り…」
それを聞いて一計を案じたような表情の谷「ああ…それなら
もう小橋君は気持ちを改めてますよ」
花山が谷を見る
目を逸らせて谷「あ…実は妹さんだけじゃなく小橋君からも
泣きつかれてるんですよ…
どうしても花山さんを説得してほしいと」
花山「彼女が?」
谷「ええ、自分の過ちに気付いて謝罪したいらしいんですよね
今になって花山さんの言ってた事が身にしみて分かったんでしょうねえ
あっ、だいぶん泣き腫らした顔してましたよ」
花山「そうですか…」

あなたの暮し社
原稿を確認する宗吉「よし、ホットケーキの作り方はこれで間違いねえ」
鞠子(相楽樹)「そうですか…」
常子(高畑充希)「ご苦労さまでした…」
宗吉「お~いお前ら!お通夜みてえな顔すんじゃねえよ!」
ため息をついた美子のそばにいき宗吉「どうした?美子
まだ廃刊と決まった訳じゃないだろ?ん?」
と、「よう」と谷が現れる
常子「谷さん!どうされたんですか?」
谷「まあ…ちょっとね」と廊下に振り向き「皆さんおそろいですよ」
すると入口に花山が姿を見せる
水田(伊藤淳史)「え~!」
目を伏せる常子
美子が前に出る「花山さん」
花山「しばらく来ない間にここも変わったな」
常子(強がる感じで)「そうですか?特には変わりないと思いますが」
部屋を指さし花山「あそこの机が曲がってる!そこの机も
私が毎日帰る前に直していたのに」
常子「私はあまりそういう事は気にしませんので」
花山「広告を載せないと決めたそうだね」
常子(毅然と)「はい」
花山「だから最初から言ったんだ!結局君はその場しのぎの考えで
余計に事態を悪化させただけじゃないか」
常子「申し訳ありません、ただ…
私は社長として最善の方法を選んできたつもりです
わざわざそんな事をおっしゃりにここまでいらしたんですか?」
花山「何を言っている!君が私に謝罪したいというから
ここに来たんじゃないか」
常子「何で私が謝らなければならないんです?」
花山「私に戻ってきてほしいからだ」
常子「何をおっしゃってるんですか?誰がそんな事…」
花山「やせ我慢をするな、私に戻ってきてほしいと
谷さんに泣きついたんだろ?泣き腫らした顔をして!」
常子「そんな事は言ってません!」
花山(谷に)「言ってた話と違うじゃないか!」
谷「あ…脚色だよ…脚色
(常子と花山を指でさし)お互い素直になれないから俺なりのプレゼント」
花山「全く不愉快だ!失礼する」
美子「待って下さい」
常子「お帰りになる前にお伝えしたい事があります
次の号でものすごくいい企画を美子が思いついたんです
私たちだけでも今まで以上の雑誌を作ってみせますから…」
美子「それは違うの…小麦粉の企画は花山さんの発案なの」
驚いて美子を見る常子「どういう事?」
美子「私が花山さんから企画の話を聞いててそれをみんなに…ごめんなさい」
常子「…」
谷「あ…それで…その小麦粉を使った料理ってのは?」
鞠子「ホットケーキです」
花山「ホットケーキ?」
宗吉「ああ…パンの代用品になってどの家庭でも簡単に作れる」
花山「ああ…確かにいいアイデアだな…結局私は何も思いつかなかった」
水田「そうか…花山さんでもそうなんですね…
ホットケーキには2人じゃなきゃたどりつけなかったって事ですよね」
鞠子「うん、やっぱり2人じゃなきゃ作れないって事ですね」
美子「花山さんお願いします…戻ってきて下さい
(常子の背中を押し)とと姉ちゃんからもお願いして」
宗吉「あ~辛気くせえのは嫌なんだよ
ま~るく収めようぜ、ホットケーキみてえによ」
谷「小橋君…折れるべき時には折れる事も社長業の秘訣だよ」
常子「私は折れません」
鞠子「とと姉!」
常子「花山さん……この度は申し訳ありませんでした!(と頭を深く下げる)
あなたの暮しの理念を決して折らないためには
花山さんがどうしても必要なんです
今回の出版が最後になってしまうかもしれませんが
どうかもう一度だけ帰ってきて頂けませんか?お願いします!」
鞠子と美子も「お願いします!」と並んで頭を下げる
水田となぜか宗吉までが頭を下げる
花山「うん…まあ…そこまで言われてはしかたがないね」
一同が顔を上げる
涙ぐむ常子「今…花山さんがおっしゃっていた広告をとる事の恐ろしさを
身にしみて感じております
ですがあの時あの判断をしなければ5号でおそらく潰れていたでしょう
私はこの会社と雑誌を守らなければなりません
ですからこれからぶつかる事もあるとは思いますが
私は販売拡大と管理に一生懸命努力していきたいと思います
花山さんは一切の妥協をせずによりよい雑誌作りに集中して下さい」
花山「分かった」
常子「今後ともよろしくお願いします!」
(鞠子と美子)「お願いします」
花山「こちらこそぉ」
常子が笑顔になる
美子「谷さん、ご尽力頂きありがとうございました」
谷「何言ってんだ…礼なんていらないよ」
美子(常子たちに)「ゆうべ一緒に花山さんを説得しに行って下さったの」
常子「そうだったんですか、ありがとうございました」
谷「本当にもういいって、礼ならもう貰ってるしね」
美子「えっ?」
谷「君が買った一本…あの鉛筆…そしてもう一本は
花山さんが気に入ったんだとさ」
「そうなんですか?」と嬉しそうに笑う美子
花山は余計な事を言うなという感じでしかめ面だ
谷「小橋君、皆さん、これからも応援してますよ」
礼を言う一同

会議の席
どっかりと腰を下ろす花山「さあ時間がない、作業はどこまで進んでる?」
鞠子がドヤ顔でホットケーキの原稿を見せるが「これでは駄目だ」と花山
鞠子「えっ?」
花山「やはり私がいなくては何もできないようだねぇ」
鞠子「どうしてです?どこが悪いか具体的に言って下さい」
花山「どこ…ではない、全部駄目だ!」
鞠子「そんな…」
水田「ひどいなあ…そんな言い方…」
緑(悠木千帆)「何か久しぶり…この感じ」
美子たちも微笑む「やっぱりこれがないと我が社じゃないわ」
宗吉(小声で)「そうなのか?常子」
常子「ええ」
宗吉を見る花山「あなたは?」
宗吉「ああ…俺ですかい、こいつらとは昔からの知り合いで」
常子「近所にお店を出される料理人の森田宗吉さんです
料理記事の監修もして頂いてます」
花山「そうでしたか…突然で申し訳ない、今からお店へ伺っても?」
宗吉「今からですかい…?構わねえけど…」
花山「それから…君にも協力してもらおう」
水田「え…僕ですか?」

<花山が何を企んでいるのか…常子は戸惑いながらも
ワクワクとした思いが込み上げているのを感じていました>

穏やかな笑顔で花山を見つめている常子

(つづく)

思慕する花山が会社に戻るようにと頑張った美子には少し酷だが
花山が戻る気になったのは常子が泣き腫らした顔で謝りたいと泣きついた
…という谷の嘘だったね
常子にとってそうであるように花山にとって常子は特別な存在のようだ

花山が事務所に登場するシーンはとても面白かった
まず強がる常子が可愛い!
最初はバツが悪くて目を伏せるが心の中では嬉ションしてただろうにw
そして花山が部屋を指して机の位置がどーのこーの言うの笑った
花山らしいし彼なりの照れ隠しなのかもしれない

谷に「折れる事も…」と言われた常子が
「私は折れません」と意外な事を言ったのは後のセリフから
「あなたの暮し」の理念を折る事はできません…という意味だろうね
(これは花山への謝罪になっている)

最終的には常子が詫びて花山は復職した訳だが
あのあたりは花山よりも常子の方が大人なのかなあと感じた

ラストシーンでまた以前のように
一同が花山に振り回される終わり方も良かった



0 件のコメント:

コメントを投稿