2016年5月24日火曜日

とと姉ちゃん(44)常子、タイピストを目指す!

歯磨きチューブが次々に破裂して大混乱の森田屋を訪れた
星野(坂口健太郎)「うわっ!うわ~!あっ」
と、床の大鍋を手にして飛んでくる練り歯磨きから顔をガードする 
常子(高畑充希)「星野さん!」と、隣に来る 
星野「アルミ製のチューブを使ったんですか?」 
常子「はいはいはい」 
星野「アルミと歯磨きが反応して気体を発生させたんです
つまりその気体が原因でこの破裂…」 
常子「ああ、もうなな…なんとかして下さい!」 
星野「そう言われましても…」 

やっと破裂が収まった現場
それぞれ顔を歯磨きで汚し力なくチューブの残骸を囲んでいる一同
突然、常子が笑い始める「フッ…フフッ…」そして口を押えて「ハハハ…」
鞠子(相楽樹)「とと姉?」
星野「どうしました?」
常子「いや…失敗しちゃいました、ハハハ…」と、可笑しそうに笑う
照代(平岩紙)「うん、見れば分かる」と、笑いだす一同
まつ(秋野暢子)「滑稽だねえ!ハハハ!」
長谷川の顔を指す宗吉(ピエール瀧)「お前ものすごい顔してんな!」
君子(木村多江)も「全員ですよ!」と、笑っている

<失敗はしましたが常子は後悔していませんでした
歯磨き作りに夢中になったこの1か月は
それはそれは刺激的な日々だったのです>

帰っていく滝子(大地真央)たち

居間で森田屋の面々が滝子はかっこよかったなどと話していると
鉄郎(向井理)が「いや~すまんすまん、ヘヘッ」と、ひょっこり帰って来る
(一同)「あ~!」
「よお」と、左手を上げて「何だよみんなして怖い顔して~
ここは優しくお帰りなさいって迎えるとこだろ?」
借金押し付けて森田屋さんにまで迷惑かけて…と口々に非難する一同
鞠子「よく戻ってこれましたね今更」
「へいへいへいへい」と、常子の前にいき「ほらよ」と封筒を置く鉄郎
常子が中身を確かめると札束が入っている「これは?」
鉄郎「方々頼み込んでかき集めたんだよ
もうお前らには迷惑かけねえよ」
借金の件は片が付いたと一同が説明する
鉄郎「…んだよもう!もっと早く言ってくれよ!
大変だったんだぞ、さんざん頭下げてさぁ」
鞠子「叔父さん、逃げたんじゃなかったんですね」
鉄郎「当たりめえだろお前!俺が逃げる男に見えるか?」
長谷川(浜野謙太)「見えるよ」
鉄郎「見えるよなあ、それは俺もわかってた、うん
でもそこを見えないって言ってほしかった俺のいじらしさ…」
立ち上がり「俺だけはよ信じてたぜ鉄ちゃんの事をよ!」
と、鉄郎と肩を組む宗吉
鉄郎「お~宗吉っつぁん!」と、宗吉の頭をなでる
常子「あれ~?確か叔父さんの事
腹巻きバカとか言ってませんでしたっけ?」
確かに言ってたという一同に少しすねる鉄郎
宗吉「言う訳ねえじゃねえかよそんな事よ、ハハハッ」

辺りが暗くなって鉄郎が森田屋から出ていく
追いかけてきた常子たちが戸を開ける「叔父さん!またどこかへ?」
腹を押さえる鉄郎「ああ…仲間の大事な金だからすぐに返してやんねえと」
常子「そっか…」
鉄郎「その名残惜しさを次会う時の笑顔に変えてくれ…あばよ」
と、ちょっと気障に夜空を見上げたりしながら言って去っていく
鞠子「何?今の」
首を振る君子「さぁ…」

美子(根岸姫奈)が眠っている部屋
ちゃぶ台を囲む常子鞠子君子
常子「鞠ちゃんごめんね」
鞠子「うん?何が?」
常子「本当は歯磨きで一山当てて
鞠ちゃんの大学進学のお金に充てようと思ってたんだけど…」
君子「進学?」
鞠子「何でその事…」
常子「東堂先生に問い詰めて教えて頂いたの」
鞠子「そっか」
君子「鞠子、どういう事?」
君子に向き直る鞠子「私…大学へ行きたいんです」
君子「大学?」
鞠子「黙っていてごめんなさい!何度も迷ったんだけど
どうしても大学で文学を勉強したくて」
常子「私は応援するわよ」
君子「私は賛成できないわ」
常子「どうしてですか?」
君子「当たり前でしょう、学費がいくらかかるか分かってるの?」
常子「お金なら私が」
君子「常子、お金を稼ぐというのは容易な事ではないんです」
鞠子「初めてなんです!」
鞠子を見る2人
鞠子「平塚らいてうの文を読んで今まで感じた事がないぐらい
胸が熱くなりました、自分もこんなふうに人の心を熱く焦がせるような
女の人の生き方を後押しできるような文章を書きたい
私の文章でたくさんの女の人を勇気づけたいってそう思ったんです!
だからもっと勉強がしたい…
私も内職するし今以上におうちのお手伝いもやります
だからかか…許して下さい、お願いします」
常子「私からもお願いします
鞠ちゃんの夢をかなえさせてあげて下さい」
頭を下げる2人の娘を見て君子「確かに初めてね…」
顔を上げて母を見る鞠子
君子「いつもみんなに合わせてばかりの鞠子がこんなわがまま言うの…
分かったわ、ただし常子がきちんと仕事を見つける事が条件よ」
何度もうなずく常子
ほっとした顔の鞠子「本当?」
君子「鞠子には立派な文豪になってもらって
いずれ家でも建ててもらいましょうか」と、軽口を言う
常子「かか…アハハハ」
鞠子「かか、ありがとうございます」と、礼を言い
常子に向き直る「とと姉、よろしくお願いします」と、頭を下げる
常子「うん、頑張ってお給金のいい勤め先見つけないと~」
鞠子「私も勉強頑張る」
常子「うん、歯磨き作りも終わっちゃったし頑張ってよ勉強」
鞠子「そっか、明日からもう歯磨き作らないのか」
常子「またいつか家族みんなでやれる事があるといいわね」

<将来また家族で仕事をする日が来る事を
この時は誰も想像していませんでした>

女学校で常子は東堂に歯磨き作りが失敗に終わった事を話し
事業を起こすよりも堅実な就職をと思いまして…と
就職先を紹介してほしいと相談する
タイピストの職に推薦が決まっていた後藤が急きょ結婚する事になり
推薦が取り消され枠が空いたためタイピストを目指す事になる常子
ただタイプライターの技術を習得するのはとても困難で
東堂でも苦しんだほどだという
東堂「小橋さん、あなたにその覚悟はおあり?」
常子「はい!」
東堂「タイプライターには英文と和文の2種類あります
推薦する社は文具などを扱う商社なので
英文タイピストの方が多数ですが推薦枠は和文タイピストです」
和文タイプライターの前に座る常子
「これを使って書類を作成する訳ですね」
東堂「いいえ、基本的には男性社員の作った書類を
会議出席者に配る資料として清書する…
それがタイピストの仕事です」
常子「手書きじゃ駄目なんですか?」
東堂「想像なさい」
目を閉じる常子
東堂「手書きで何十枚も清書する苦労を
来る日も来る日も文字を書き続け腱鞘炎になって…
ところが!」
驚いて目が開いてしまう常子
東堂「このタイプライターではカーボン紙なるものを挟んでタイプすれば
なんと一度に6枚分も作成できるのです」
口を手で押さえる常子「お~!じゃあこれを使えば
あっという間に清書ができる訳ですね」
東堂(淡々と)「はい、夢を見るのはここまで」
常子「えっ?」
東堂「和文タイプライターはアルファベットの鍵盤を両手で打つだけの
英文タイプライターとは全く違います
右手は本体のレバーを左手は文字盤のハンドルを
それぞれ操作して打ちたい文字を探す
見つけたら右手のレバーを下げて文字を打つ
ここには平仮名片仮名常用漢字など2273文字あります」
目を丸くする常子「2273文字?」
東堂「タイピストは時間が勝負ですからどこにどの文字があるのか
きちんと把握していなければなりません
つまりこの文字の並びを全て暗記して頂きます」
またもや目を丸くする常子「暗記?」
東堂「いちいち驚いている時間はありません、即刻覚えましょう」
常子「はい!」
東堂「ではまず平仮名から…さくらがさいた」
常子「さ…さ…さ…ありました!」と、文字を打つ
東堂「報告はいいから…」

<鞠子を大学に入れるため思いがけずタイピストという職に
飛びついた常子。その試練の日々が始まりました>

「ありました、さ…さ…さ…あっ」と、ちょっと楽しそうな常子

(つづく)

一度失敗しただけで歯磨き事業から撤退するのはもったいない
ような気がするけど、君子が出した条件が就職だから事業を諦めて
鞠子のために常子はタイピストを目指す事にしたんだろうね
それにしても2273文字の場所を覚えるなんて気が遠くなる…
昔の人はすごかったんだね

金を持って戻ってきた鉄郎が株を上げたみたいな展開だったけど
みんな甘すぎるだろw
結局、常子たちが肩代わりしたようなものなんだから

夜になってからそっと鉄郎が出ていくのはいかにも「寅さん」だった 
それっぽい事を言って気障に去っていく鉄郎に
君子たちが首をひねるのも無理はない
なぜなら君子たちは「寅さん」を知らないのだからw
このあたりのユーモアはいい演出だったと思う

0 件のコメント:

コメントを投稿