2016年5月25日水曜日

とと姉ちゃん(45)あすなろとしてちゃんと育てば…

「行ってまいります!」と、常子(高畑充希)が慌ただしく出ていく 
(一同)「行ってらっしゃい」 
宗吉(ピエール瀧)「あれ?学校行くには早くねえかい?」 
君子(木村多江)「ああ、練習ですタイピストの」 
まつ(秋野暢子)「タイペスト?」 
富江(川栄李奈)「タイピスト」 
まつ「タイ…」 
富江「…ピスト」 
まつ「まあいいわいいわ、それよりそれはそんなお給金いいのかい?」 
照代(平岩紙)「そりゃあ職業婦人の花形ですから」 
富江「専門的な技術がいるから誰でもなれる訳じゃないのよ」 
まつ「で…常子は大丈夫なのかい?」 
君子「あ~…」と、困ったように首をかしげて笑う 

東堂(片桐はいり)に指導を受けている常子
タイプライターを前に悪戦苦闘している
それをもどかしそうに見ている東堂「小橋さん、ひょっとして暗記は苦手?」
常子(明るく)「はい」
困ったように目を閉じる東堂
常子「何かこの…文字列を覚えるコツってありますか?」
東堂「ありません、とにかく慣れて下さい」
常子「でもタイプライターが空いてないと練習できません」
東堂「そうね、ではこの文字の並びを紙に書き写して覚えたらどうかしら?」
常子「2273文字?」
東堂「当然です」
常子「わかりました、やってみます」

教室の机を二つ並べた上に広げられた巨大な紙
綾(阿部純子)「2273文字
これがあればいつでもタイプの練習ができるって訳ね」
常子「うん…」
綾「どうしたの?元気ないじゃない」
常子「ゆうべやっと完成して朝まで練習したんだけど」
綾「朝まで?」
常子「全然上達しないの」
綾「試験まであと半年あるわ、大丈夫、慌てないで」
常子「ありがとう」

常子たちのお部屋
タイプの練習をする常子と勉強している鞠子(相楽樹)
うちわで扇いでくれる美子(根岸姫奈)に2人が
「ほっといてごめんね、一緒に遊ぼうか?」と言うのだが
美子「いいの、私の事は気にしないで…それより2人ともがんばって」

滝子(大地真央)の部屋
滝子「どうなんだい?常子と鞠子の勉強の方は」
美子「この調子なら2人とも大丈夫だと思います」と、カステラにかぶりつく
滝子「あっ、そんなに慌てたら胸につかえちまうよ」
美子「早くお絵描き完成させたいんだもの」
美子の筆入れを手に取る滝子「随分と年季の入った筆入れだねえ」
美子「お姉ちゃんたちのお古だから」
滝子「そうなのかい」
美子「洋服でも何でも私のは全部お古
破れたらかかがいつも直してくれるから新しいものなんて一つもないの」
気になるような表情の滝子

女学校の廊下であくびをする常子
綾「ちゃんと寝てるの?あなたの事だからどうせ徹夜で…」
常子「12月までの勝負だもん、入社試験までは無理してでも」
(他の生徒たちの話し声)「あのお見合いうまくいったのね?」
常子「結婚か~どんな気持ちなんだろう」
綾「特に何も変わらないわ」
笑う常子「今のはおかしいわ、まるで結婚する方の気持ちを知ってるみたい」
綾「だって知ってるもの」
常子「えっ?どういう事?」
綾「実は…私も結婚が決まったの」
常子「ええ!?聞いてないけど」
綾「だって言ってないもの、特に聞かれなかったから」
常子「いや、えっ、聞かないでしょ普通…
ねえ結婚なさる?…聞かない聞かない」
綾「でもいいじゃない、今こうして言ったんだから」
常子「え~…でもお相手はどんな方なの?」
綾「医大生って事以外は何も、親が決めた結婚だから」
常子「お会いするのが楽しみね」
綾「うん…少し怖い」
常子「怖い?」
綾「だって顔も知らない人に自分の人生を委ねるって事でしょ
それって何だか…」
綾を見つめている常子
綾「常子さんがそんな顔する事ないでしょ」
常子「でも…」
綾「大丈夫、お相手に会えば不安もなくなるわよ
それよりあなたの方が心配だわ…体壊さないように気を付けてね」
常子「うん、ありがとう」

森田屋の店先でタイプの練習をする常子と
それにつきあっている星野(坂口健太郎)
そんな2人を見た君子が微笑む

青柳商店前
隈井(片岡鶴太郎)「ありがとうございました、お気を付けて」
紳士「あっ、女将がいたらちょいと挨拶したいんだがな」
隈井「ああ、女将さんちょっと先客がありやしてね」
紳士「先客?」
隈井「ええ」

滝子の部屋
お絵描きしている美子
滝子「よし、出来た…さあ美子、見てごらん」
と、りぼん?が結ばれた筆入れを渡す
美子「とってもすてき」
滝子「こうすれば常子とも鞠子とも違う美子だけの筆入れだろ?」
美子「ありがとうおばあちゃま!」
筆入れを眺める美子「かわいい」

疲れて首のこりをほぐしながら朦朧と帰宅する常子「ただいま帰りました」
まつ「あ~常子!お使い頼まれてくれないかい?」
常子「あ~…」
まつ「手違いでお重のお弁当余っちまって、ヘヘッ
葉っぱのあんちゃんに食わしてやろうと思って」
常子「星野さんに?」

とある民家の前
おそらく住所が書かれた紙片を見ながらお重を抱えた常子
「あっ、すみません、あの…こちらに星野武蔵さんっていらっしゃいます?」
鉢植えの世話をしている女「驚いた~」
常子「えっ?」
女「葉っぱの学生さんにも女友達なんてものがいたんだねえ」
常子「はぁ…」
女「部屋にいますよ、どうぞ」

星野の部屋の前
廊下に座り声をかける常子
「すみません、常子です、まつさんのお使いで来ました」
返事はない
常子「星野さん?…星野さん大丈夫ですか?開けますよ」
と、襖を開けると目隠しして耳を押さえてうずくまり花を見ている星野の姿が…
常子「えっ?…星野さん…?」
星野の肩を叩く常子「星野さ…」
星野「あっ!」と、驚いて身を起こし目隠しを取る星野
常子「んあ!んあ!」
星野「ああっ…あ~常子さんか…」

きちんと座り説明している星野「植物の香りを調べていたんです
視覚と聴覚に左右されないよう目と耳を覆い…」
常子「ああ~」
なんだか気まずそうな様子の星野が「あっ」と立ち上がり
隣の部屋の襖を開ける
常子「えっ?」
星野「みょ…妙齢の女性と二人きりですから誤解を招かぬよう念のため」
常子「ああ…すみません」と、少し目が動き意識した表情
星野「あ…その後タイプライターの練習はいかがです?」
常子「紙を使った練習で一応順調に」
星野「それはよかった」
沈黙
星野「順調…なんですよね?」
常子「あ~…練習…は?…でも不安でいっぱいです」
星野「不安?」
常子「いくら必死に練習しても
今まで長い間特訓してきた人に勝てるのかどうか…
不採用になったらほかに働く所が見つかるかどうかもわかりませんし
仕事が決まらなければ妹を大学に行かせてあげられない…
星野さんが羨ましいです、植物の研究というしっかりとした目標があって」
星野「実は…先日、実家にいる弟が兵隊に行きました」
常子「それは…おめでとうございます…」
星野「ありがとうございます…本当は大学院に進学して
まだまだ研究を続けたいところですが、こうなった今
就職して弟の代わりに親を支えるべきなのではないかとも考えたり
卒業後の進路を決められないでいるのが現状です」
常子「はぁ…」
星野「ああ、すみません、僕の話にすり替わってしまって」
常子「あ~いえいえいえ」
星野「常子さんの話を聞いてあすなろを思い出しました」
常子「うん?あすなろ?」
星野「はい、檜に似ている樹木です
(明日は檜になろう)そう願っているのになれないので
翌日の翌に檜と書いて翌檜(あすなろ)と
呼ばれるようになったという説があります」
常子「へえ~…でも何だかかわいそう」
星野「そんな事はありませんよ、うん
あすなろはあすなろで立派な樹木で僕も大好きです
だから常子さんも他と比べて自分を卑下する必要はないんです
あすなろとしてちゃんと育てば檜にだって負けない立派な樹木になる」
うなずく常子「あ…そうですね」
星野「常子さんなら必ずタイピストになれます」
嬉しそうにうなずく常子「はい、ありがとうございます」

昭和十一年十二月

<12月になり、いよいよ就職試験の日>

仏壇の前で手を合わせる常子「とと、行ってきます」

玄関で常子を見送る小橋一家
常子「それでは行ってまいります」
君子「車にひかれないようにね」
鞠子「道に迷わないようにね」
美子「指、つらないようにね」
うなずいた常子が振り向いて歩き出す
宙に右手の人差し指を動かせてイメージトレーニングしながら…

(つづく)

東堂は初登場の時はかっこよくて熱意のあるキャラだったけど
鞠子の秘密を喋った件とか常子にタイプを教える件とか
間抜けだったり投げやりだったりイメージ崩れてきたw
まあ片桐はいりが演るんだからこれがあたりまえか

綾が常子に結婚の事をあえて話さなかったのは
常子がタイプの練習で大変だったからだろうか?(結局話したが)
「少し怖い」と言う綾は本当は常子に相談したかったのかもしれないが
常子が心配そうな顔をすると「あなたの方が心配、体壊さないで…」
綾の結婚の件は今後、何か展開があるのかもしれない

隈井が「先客」と言ったのは美子の事だろうが
これは単に隈井が滝子の孫との時間を大切にしたくて気を利かせた?
このドラマには役者を登場させるために余分なシーンを
作る事があるが、まあ他に意味がなければそれでいいのだが

滝子が美子に新しい筆入れを買うのではなくて
りぼんをつけてあげたのは君子への配慮なのかもしれないが
君子たちの暮らしや生き方を尊重するという
滝子自身の変化なのかもしれないね

帰ってきた常子にまつが待ってましたとお使いを頼んだのは
もしかしたら気を利かせた?
常子の級友たちの結婚話もあったが常子はそういう歳だ(当時では)
君子が星野を気に入ってるような描写もあった
常子と星野の件は周りは応援ムードなのかもしれない

星野も常子をはっきりと意識している
常子の事を「妙齢の女性」と言ってたし
さらにあすなろを大好きだと言った上で常子をあすなろに例えた
これはもう愛の告白といってもいいのかもしれない
(28話の漱石の月の件は違っていたが…)

「あすなろ」という言葉にはその木の特性から「まっすぐに成長する」
というような意味(イメージ)があるようだ

ラストの小橋一家は常子を侮り過ぎだろw
車に轢かれるなとか道に迷うなとか小学校低学年扱いだ


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