2016年5月26日木曜日

とと姉ちゃん(46)ささやかな心がけを大切にして

鳥巣商事の就職試験 
常子(高畑充希)の前には3人の男が座っている 
山岸(田口浩正)「何でタイピストを志望したのかな?」 
常子「はい、手先が器用なのでお役に立てるのではないかと思った事が一つと
技術を身につけたかったのが一つです 
でも一番の理由は正直に申しますと高給取りになりたかったからです」 
山岸「女のくせに高給取りって」 他の2人は失笑している 
男1「こりゃいいや」 
男2「全くだ」 
常子「…」 
男1「では女学校時代に何か特別な事をやったりしましたか?」 
常子「あ…歯磨きを作って売りました」(気を取り直して明るく) 
山岸「歯磨き?」 
常子「はい」 
山岸「何だそれ?」 
常子「人のお役に立てるのではないかと思って作ったんですが破裂してしまって」
山岸「破裂?」
常子「はい、失敗してしまって」
山岸「それは大変だったね」(もう興味がないという感じであっさりと)
常子「はい」
山岸「じゃあ質疑応答はこれまで」
面接官たちの態度に焦った様子の常子

<このままでは不採用になってしまう
常子は実技試験で挽回しようと思いました、しかし…>

山岸「もう帰っていいよ」
常子「えっ?」
山岸「じゃあ次の人を呼んで」
常子「えっ、ちょっと待って下さい、実技試験は?」
山岸「今年からやめにしたんだよ、わざわざ試験しなくても
うちに推薦で来る子はみんなうまいからね」
常子「そんな…これだけは聞いて下さい!」と、立ち上がる
「熱意は誰にも負けません!必ず皆さんのお役に立ってみせます
だからどうか私を雇って下さい、お願いします!」と、頭を下げる
山岸「はい分かった、分かりましたよ、山田君、次の人呼んじゃって!」
顔を上げて茫然としている常子
山岸「何突っ立ってんの?もうおしまい、帰っていいよ」

森田屋居間
一同の前で報告している常子「就職試験で…笑われました」
(一同)「えっ?」
常子「何を答えても滑稽そうに笑われて…」
まつ(秋野暢子)「バカにされたのかい?」
富江(川栄李奈)「でもタイプの腕は見せつけたんでしょ?」
長谷川(浜野謙太)「そうだよ」
照代(平岩紙)「あんなに練習したんだし」
常子「今年から…実技試験はないそうです」
まつ「ないって…じゃあ練習の成果は?」
首を振る常子
まつ「え~…」
常子「鞠ちゃんごめんね、大学行かせてあげるって約束したのに…ごめん」
首を振る鞠子(相楽樹)
君子(木村多江)「常子はやるだけの事はやったんだから」
美子(根岸姫奈)「頑張ったもん」
(一同)「うん」
まつ「頑張った頑張った」
星野(坂口健太郎)「大丈夫、常子さんは採用されるから大丈夫です、うん」
皆に慰められて泣きそうな顔の常子

<2週間が過ぎても常子はふさぎ込んだままでした>

お部屋で机に頬杖をつく常子
鞠子「とと姉、いつまで暗い顔してるつもり?」
常子「ごめん…」
美子(悪戯っぽく)「こっち向いて、暗い顔のお姉ちゃん描いちゃうから」
振り向いた常子(しょんぼりと)「ごめんね、気遣わせて」
顔を見合わせる鞠子と美子「…」
常子が美子の筆入れを見る「よっちゃん、その筆入れどうしたの?」
美子「いいでしょ、おばあちゃまがね…」
鞠子「はぎれで作って下さったんだって」
常子「おばあ様が?」と、筆入れを手に取って「何だかいいわね
飾りもかわいいし、そういう事なさるおばあ様もとってもすてき」
美子「とと姉の笑ってる顔久しぶりに見た」
鞠子「そうね」
と、君子が部屋に飛び込んでくる「常子!常子常子常子!あっあっあっ…
おめでとう!」と、常子の前に座る
常子「えっ?」
君子「たった今これが」と、常子に葉書きを見せる
葉書きを手に取り「採用」の文字を見る常子「採用!?」
鞠子と美子「とと姉!」と、葉書きを覗きにくる
常子「えっ、何で?だって全然駄目だったのに」
君子「あなたのよさが伝わったのよ!頑張ったわね常子!」
常子「あ~!」と君子と抱き合う「よかった~…」

星野の下宿前
鉢植えの植物に水をやっている星野
葉書きを手に大喜びの常子が駆けて来る
「星野さ~ん!これ、これ、これ見て下さい!」
葉書きを手に星野「えっ、えっ、え~!」
常子「アハハ!無事に就職が決まりました」
星野「よかった~実は駄目かと諦めてました」
常子「えっ?星野さん絶対大丈夫だ採用されるって」
星野「あ…それは…」
常子「もしかして思ってもないのにおっしゃったんですか?」
星野「あっ、いやあの時は励まそうと…」
星野を疑うように目を細くして見る常子
星野「ごめん!もう二度とうそはつきません!」
星野の手から葉書きを取り「ハハハハ!」と、笑いだす常子

<常子が女学校を卒業する日がやって来ました
同じ教室で過ごしてきたクラスメートたちは今日からそれぞれの道を歩んでいく
それがうれしくもあり少し寂しくもありました>

常子と綾(阿部純子)が廊下の窓から中庭の満開の桜を見ている
綾「私たちは涙を見せずにお別れしましょうね」
常子「えっ?」
常子を見る綾「だって今日はお互い新しい未来に向かって歩きだす
おめでたい日でしょ?」
微笑む常子

<中でも綾との思い出は常子にとって忘れられないものばかりでした>

東堂(片桐はいり)に挨拶している2人
常子「先生のおかげでタイピストになれました」
東堂「ですからそれは小橋さんの努力のたまもの」
常子「フフ…」
綾「私は先生のおかげで女としての生き方を意識する事ができました」
東堂「私にではなくらいてうに感謝して下さい、そしてこの青鞜に」
と、カバーがかかった雑誌を掲げる
常子「先生」
東堂「どうしました?」
常子「そのカバー」
東堂「これですか?こうしておくと大事な本が汚れませんから
見場もよいでしょう?」
常子「はい、少しだけ見せて頂いてもよろしいですか?」
東堂「どうぞ」と、常子に雑誌を渡す
綾「この紙、元は帝国百貨店の包み紙ですね?」
東堂「そう!きれいな包装紙を頂いた時は工夫して本のカバーにしているの」
常子「へえ~」
東堂「私のささやかな心がけです」
東堂を見る常子
綾「いいですね、私もやってみようかしら?」
東堂「是非やってごらんなさい、ささやかですがこうした心がけが
小さな幸せを生むと私は思っています
そんな瞬間を大事にしていく人でありたいと
…おっと、おしゃべりは嫌われますね」
綾「フフフ…いえ」
東堂の話に感じ入ったのか少し口が開いたままの常子
綾「常子さん?」
東堂「そんなに私の話が胸に刺さって?」
笑顔でうなずく常子「はい!ささやかな心がけってすてきな言葉ですね
昔からそういう感じ方を大事にしてきたんですが
何て言葉にしていいか分からなくて
あ…先日祖母が妹の筆入れにはぎれで作った飾りをつけてくれたんです
妹はお古の筆入れが自分だけのものになったってもうすっごく喜んで…
だから私もそんなふうにささやかな心がけを大切にして
小さな幸せを見いだせるような人になりたいと思います
東堂先生、ありがとうございました!」
東堂「思わぬところで感謝されました」
綾も笑っている
常子「いえ、ありがとうございました」と、何度も笑顔でうなずく

森田屋居間
富江「常子さんが卒業か」と、卓を拭いている
まつ「ああ…あっという間だったね」
富江「あっ、ねえねえ、伝統ある森田屋としては盛大にお祝いするんでしょ?」
まつ「当たり前だよ、青柳の女将驚かしてやろう、ハハハハハ!」

厨房
照代「あらそう、じゃあ常子ちゃん泣かなかったの?」
君子「ええ全く、卒業証書もらう時も凜としたものでした」
照代「フフッ、あの子らしいわ」
「お待たせしやした!」と、長谷川がざるに鯛を持って帰って来る
刺身ですか?と聞く長谷川に祝い事は鯛の尾頭付きに決まってると宗吉
「それより一番でけえのにしたんだろうな?」
長谷川「そりゃあもう、ハハッ」と、ざるにかかった布を取る
宗吉(ピエール瀧)「お~」 君子「まあ立派!」
まつ「まあね、常子は孫みたいなもんだから景気よく祝ってやらなきゃ」
富江「三姉妹の誕生日もあるしね」
君子「本当にありがとうございます」
まつ「気にしない気にしない、こんな金魚に、アハハ!」
すると表で「ごめんくださいまし!」と、滝子の声

表に出る宗吉「こりゃあ青柳の女将さんに若旦那、お待ちしておりました」
滝子(大地真央)「この度はお招き頂きありがとうございます」
まつも出て来る「わざわざ足をお運び頂き申し訳ございません」
滝子「いいえ」
そこへ築地に買い出しに行っていたという隈井(片岡鶴太郎)がやって来るが
まつが鯛ならあると見せるとそれを見た滝子が金魚みたいな鯛だと言いだし
隈井の鯛を見せたところその大きさに驚くまつと宗吉
滝子「さあどうぞ、こちらを尾頭付きにしてそのちっちゃい方は
お刺身か煮つけにしちゃどうです?」
まつ「いえいえ…うちのを尾頭付きにしますんで」
滝子「いえいえ、大きい方が尾頭付きによろしいいんじゃございません?」
まつ「いえいえ、こっちの方が身が引き締まってございますから」
滝子「まあご冗談を!何をおっしゃいますやら」
と、そこへ招かれてやって来た星野が滝子の鯛を大きい
森田屋の鯛を普通だと言い…ふくれて店に入るまつ

<この日、常子の卒業と就職、そして三姉妹の誕生日を祝う宴が
森田屋で始まろうとしていました>

卒業証書の入った筒を手に楽しそうに語り合い歩く常子と綾

(つづく)

常子が面接で手先が器用とか言ってたけど嘘だよねw
鞠子に不器用過ぎて見てらんない…とか言われてたよね歯磨き作りで

そして実技試験ないのかよw
前回ラストで試験に向かう常子のあの右手のイメージトレーニングが
間抜けに思えて笑えてくる

お部屋のシーンで美子が常子に「暗い顔のお姉ちゃん描いちゃうから」
ここで美子が「とと姉」と呼ばないのは
美子的には明るく元気な常子じゃないと「とと姉」じゃないって事かな?
直後に笑顔を見せた常子に「とと姉の笑った顔久しぶりに…」と言ってるし

常子と星野のシーンはよくドラマにある主人公カップルの
将来は奥さんの尻に敷かれるんだろうなあ…という描写にも見える
嘘をついていた星野が浮気したのがバレた亭主みたいになってたね

ささやかな心がけのシーンの常子(高畑)は良かった
長セリフは役者の力量が試される
前回の滝子の筆入れの飾りはこのシーンの伏線だったんだね
そこから東堂への感謝の言葉と卒業の挨拶にきれいに繋げた脚本も良い

三姉妹は誕生日が近くてみんな春に生まれた設定のようだ
なんだか発情期のある人間以外の動物みたいだねw

滝子とまつが相変わらずの関係で良かった
あの2人にはずっとやりあってもらって仲直りなんかはやめてほしい
鯛の件は次回もひきずるのだろうか?





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