2016年7月28日木曜日

とと姉ちゃん(100)宗吉と照代との再会~資金難の中、社長として決断を迫られる常子

<「あなたの暮し」は順調に売り上げを伸ばしましたが
第3号第4号では思うように販路を拡大できないまま
会社設立から1年半が過ぎていました> 

昭和二十三年秋(創刊から一年半) 

<戦後の混乱期の中、出版業界は群雄割拠の時代を迎え
経営基盤の小さい出版社は次々と淘汰されていきました> 

桑原印刷前
「申し訳ありませんでした」と支払いをする常子(高畑充希) 
桑原「次は期日までに頼むよ」 
「本当にすみませんでした」と頭を下げる苦しい表情の常子 

タイトル、主題歌イン 

谷(山口智充)「すまん…この甲東出版を閉める事にした
許してくれ」(と頭を下げる)
五反田(及川光博)が谷に礼で返す(相田、富樫、他一名もそれにならう)

<甲東出版は大手出版社(四谷出版)に吸収合併される事になったのです>

あなたの暮し社
机の上に大量に雑誌が積まれている
緑(悠木千帆)「3号が804部で4号が707部」
美子(杉咲花)「合わせて1,511部か…」
鞠子(相楽樹)「まだ書店から返品の連絡が来てるわ」
水田(伊藤淳史)も沈んだ表情だ
「ただいま」と常子が戻る
(一同)「お帰りなさい」
美子「遅かったね」
常子「うん、桑原印刷さんに寄ってきたの
支払い済ませてきました、お願いします」(と水田に領収書を渡す)
それをのぞき込む美子「4万円か…」
(一同)「…」
一同を見ながら常子(七五調で)「増えるのは~出費と在庫の山ばかり…」
一同が常子を見る
常子「和ませようとしただけじゃない
ため息で部屋が充満してたから」(と顔の前の空気を払うように手を振る)
水田「…あの…印刷代節約できませんかね?」
常子「えっ?」
水田「やはり一冊当たりの単価を下げるべきかと…」
常子「そうなると今のようにふんだんに写真やイラストが使えなくなって
雑誌の質が落ちてしまいます」
水田「ですがこのまま売り上げが落ち込めば
予算不足で雑誌を出す事も難しくなりますよ」
常子「それは私も感じていますが…」
鞠子「ねえ…やっぱり広告を載せた方が…」
常子「だからそれは花山さんに…」

(回想)常子「広告を載せてみてはどうかと思うんです」
花山のデスクの前に立つ常子、鞠子、美子、水田
美子「広告?」
常子「うん、他のどの雑誌も載せています
それでやりくりしていると言っても過言ではありません
数千部の売り上げがあれば載せたいという会社もあると思うんです」
鞠子「それならやりくりが楽になるわね」
美子「賛成」
水田「ええ」
花山「論外だな、分からないのか?広告を載せるという事は
雑誌の一部を売り渡す事になる、そんな無責任な事はしたくない」

常子「鞠ちゃんだって納得してくれてたじゃない」
鞠子「そうだけど…」
美子「まあ…何か策は考えなきゃね」
水田「僕も経理の立場から考えてみます」
常子が「あっ」と水田が持つ領収書を見る
水田の手に力が入って領収書は握りしめられくしゃくしゃになっている
水田「あっ!」
鞠子「何やってるんですか水田さん!」
水田「すみません」
今度はそれを伸ばそうとして破ってしまう水田「あっ!」
(一同)「あっ!」
鞠子「もう水田さん!」(と腕を叩く)
水田「すみません」
美子と顔を見合わせ笑う常子
と、「常子さん、次号の表紙が出来上がったぞ」と花山が部屋から出てくる
イラストを受け取り見つめる常子
花山「どう思う?」
その街並みを描いた絵に常子「あぁ…いいですね」(とうなずく)
花山が常子の手からイラストを取り「書き直す」
常子「えっ?」
花山「すばらしいものを見た時の君の顔はそれではない
待っていなさい」(と部屋に戻る)
常子「あ…」

帰路の3姉妹
美子「花山さんってとと姉ちゃんの事頼りにしてるわよね」
常子「そう?」
美子「うん、だって表紙のイラスト必ずとと姉ちゃんだけに見せて
反応うかがうじゃない?」
常子「ん~そういう役回りってだけよ」
鞠子「そうかなあ」
美子「ねえ」
常子「えっ?」
鞠子「あれだけペンを握らないって言ってた花山さんが腰を上げたんだもん
とと姉の事信頼しているのは間違いないでしょ」
常子「う~ん…だといいけど、フフフ」
と、家に着き「ただいま帰りました」と玄関を開ける
すると家の中から懐かしい笑い声が聞こえる
鞠子「宗吉さん!」
常子「(へっ)…!?」
美子「照代さん!」
宗吉(ピエール瀧)「お~お前ら!」
照代(平岩紙)「お久しぶりねえ!」
常子「お久しぶりです」
照代「あら~」
常子「お久しぶりです」
宗吉「お~美子も随分と大人になったなあ」
美子「宗吉さんもその…」
照代「老けたでしょ?」
宗吉「もっとマシな言い方があんだろうよ!渋みが増したとかよ!」
常子「フフフフ、心配してたんです音沙汰がなかったから」
照代「ああ…高崎の家が空襲で焼かれてしまって…」
常子「そうだったんですか…」
宗吉「そこから生活を立て直すのに大変だったもんでな」
照代「ここの住所は控えてたから
いつか知らせなくちゃとは思ってたんだけど…ごめんなさいね」
君子(木村多江)「いいえ、ご無事で何よりです」
鞠子「富江ちゃんは?お元気ですか?」
照代「ええ」
美子「長谷川さんも?」
宗吉「ハハハ、あいつはしぶといねえ
召集されて北支に行ったもんだから二度と会えねえと覚悟したんだがなぁ
生きて戻ってきやがった!」
常子「あ~よかったです」
美子「お孫さんももうだいぶ大きく…」
照代「そうねもう7つだもの」
常子「もう7つですか」
鞠子「名前は確か…」
照代「まつ吉」
(一同)「そうそうそうそう!」
鞠子「恐らくまつさんと宗吉さんの名前をとってかと」
宗吉「そのとおり」
照代「かわいいわよ、どっちにも似てなくて」
宗吉「おいおいおいおい、耳の形は俺に似てんだろ!」
鞠子「まつさんはお変わりないんですか?」
宗吉「う~ん…それがな…」
照代「戦争が終わってすぐ体調を崩してしまって…」
宗吉「あのまま深川に残ってたら空襲で焼け死んじまったろうからな…
まあ…長生きしてくれたほうだ
…ああ、青柳の女将さんは?」
君子「母も戦争中に木曽で…」
宗吉「…そうかい…」
照代「もう一度お会いしたかったわ」
美子「私もまつさんに会いたかった…」
君子「落ち着いたらみんなでお墓参りに伺いましょう」
3姉妹が「はい」とうなずく
宗吉「母ちゃんも喜ぶと思うからな…そうしてやってくれ…」(頭を下げる)
礼を返す小橋一家
君子「…お二人はまた東京にお住まいになるんですって」
3姉妹「えっ?」
照代「ようやく疎開した人が都市に戻っていいって事になったでしょ?」
宗吉「どううせなら生まれ育った東京でもうひと花咲かせたくてな」
照代「洋食屋を開きたいんだって」
鞠子「洋食?」
君子「お弁当屋さんじゃないんですか?」
宗吉「いやぁ、洋食はいいぞ~
高崎に行くまでな、さっぱり分からなかったんだけどなぁ
今じゃすっかり魅せられちまってなあ…
飲食店の個人営業停止ももうじき廃止になるしな」
美子「おいしいものに飢えてるからいいと思います」
宗吉「うん…あっ、今度食べに来てくれよ」
常子「是非是非」
君子「ええ」
宗吉「…にしても驚いたぞぉ、お前ら誰も嫁に行ってねえんだな」
君子「ええ…はい…」
宗吉「あ~?浮いた話はねえのか?」(と常子たちをそれぞれ指さす)
照代「あなた!」
宗吉「何だよ」
美子「まり姉ちゃんになら」
鞠子「は?」
照代「そうなの?」
鞠子「いえいえ」
美子「同僚の男性がまり姉ちゃんに思いを寄せてるんです」
照代「あら」
鞠子「だからって別に何もないです
おつきあいしてる訳じゃありませんし」
常子「ん~鞠ちゃん次第ですかね」
鞠子「もうとと姉まで!」
照代「そうか、3人一緒のお勤めなのよね」
常子「はい」
照代「見てるわよ、あなたの暮し」
常子「えっ?」
「ほらっ」と照代があなたの暮し第一号を取り出す
君子「毎号買って下さってるんですって」
常子「え~ありがとうございます」
照代「お礼を言うのはこっちよ
いつも楽しみにしてるんだから」
宗吉が照代から本をひったくり「俺も読んでるぞ」
3姉妹が笑う
鞠子「宗吉さんも?」
美子「婦人雑誌なのに?」
宗吉「関係ねえよ、こう見てるとな…何だか胸が熱くなってくんだよ
お前らがこんな立派な雑誌なんか作って…」
照代「自分の事のように誇らしいわ」
少し照れたような3姉妹と胸がいっぱいになったような君子
宗吉「…で、どうだ?経営も順調なんだろ?」
顔を見合わせる3姉妹
常子「ええ、はい」
鞠子と美子「…はい」
宗吉「ずっととと姉ちゃんなんだなぁ…」
常子「どうですかねえ、鞠子も美子も大人ですから」
宗吉「社長って意味でだよ」
常子「えっ?」
宗吉「社長って事は社員を抱えてるって事だろ
とと姉ちゃんが守る家族が大きくなったって事だろ…頑張れよ」
常子「…ええ」

事務所
常子が「今月分です」と水田に八月分と書かれた給料袋を手渡す
常子「少なくて申し訳ありません」
水田「とんでもない、ありがとうございます」
常子が緑に給料を渡している間、手の中の給料袋を見つめている水田
「常子さんたちのお給金は足りていますか?」
常子「私たちの事は気になさらないで下さい
家族4人食べていけるだけの分はありますから」
水田「僕なりにこの資金難を乗り越える策を考えたのですが…」
常子「何か思いつきましたか?」
水田「僕がここを辞めるべきかと…」
一同が水田を見る
水田「人件費削減が手っ取り早くお金を作る事になります」
常子「お断りします
水田さんが経理を担当して下さったからこそここまで来られたんです
でなければ今頃倒産していたかもしれません」
水田「それは光栄ですが…僕が辞める以外にはやはり広告しかありません
広告を載せれば11万円の増収が見込めます!」
鞠子「でも花山さんが…」
水田「はっきり言います
次号が爆発的に売れない限りその次を出すのが精いっぱい
このままでは…倒産します」
鞠子「そんな…」
水田「あなたの暮しが出版できなくなってしまってもいいんですか?」

<このあとの常子の選択が大きな波紋を広げる事になるのです>

行き詰まった表情の鞠子と美子
そして何かを決断しなければならない迷い顔の常子

(つづく)

順調に売り上げを伸ばしているのになんで経営が苦しくなるんだw
よくわからないが常子はずっとお金に苦労するみたいだ

甲東出版はあっさり吸収されたね
潰れた訳じゃないから谷たちは今後も
四谷出版の社員として登場するのかな?

前回から一年ちょっと話が飛んだけど鞠子と水田は相変わらずだ
常子と星野も毎週おしるこデートしてたけど
話が飛んだ2年の間はなんにも進展しなかったのと同じだね

玄関を開けて宗吉たちを見た時の3姉妹の表情が良かった
鞠子の弾けるような笑顔もいいし
美子の「信じられない…」といった驚きの表情もいい
常子は懐かしさと嬉しさと驚きがからみあったように徐々に笑顔になっていく

宗吉たちの老けメイクが絶妙
年をとると毛髪にコシがなくなりペチャッとする感じがうまく出てたと思う

宗吉が「驚いたぞ」と言ったから雑誌の事かと思ったら
「誰も嫁に行ってない」に笑った
常子と鞠子は28と27くらいだろうから当時なら立派な行き遅れなのだろう
まあ戦争で適齢期の男子が減ってしまったからそんな人も多かっただろうが

宗吉に社長としてとと姉ちゃんとして頑張れと励まされた常子だけど
自分を信頼してくれて理想も共有している花山と
会社のために自身が退職するとまで言ってくれる水田との間で
板挟みみたいになっちゃったね
広告を載せるべきなのか…
今週のタイトルは「花山と断絶する」だから
常子がどうするのかなんとなくわかるような気もするが
またすばらしいアイデアでも思いついてミラクルに解決するのだろうか?

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